(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065833
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】テープ材貼付け機
(51)【国際特許分類】
B29C 65/50 20060101AFI20220421BHJP
B65H 35/07 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
B29C65/50
B65H35/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174566
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】519033845
【氏名又は名称】株式会社テクノオリンパス
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 稔
(72)【発明者】
【氏名】伊東 弘素
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
【テーマコード(参考)】
3F062
4F211
【Fターム(参考)】
3F062AA05
3F062BA08
3F062BC01
3F062BC08
3F062BE02
3F062BE08
3F062BF12
3F062BF17
4F211AA31
4F211AR06
4F211AR08
4F211TA04
4F211TJ12
4F211TJ13
4F211TJ16
4F211TJ29
4F211TQ03
(57)【要約】
【課題】テープ材を貼付けることができるワークの範囲を広げることができ、かつ、テープ材を貼付ける作業効率を良くすることができるテープ材貼付け機を提供すること。
【解決手段】ロボットの先端に取付けられており、テープ材を巻取るためのリール70と、ロボットの先端に取付けられており、リール70から繰り出されたテープ材の表面を押圧することにより、テープ材をワークに押し付けて貼付けるローラ90と、制御部と、を備えており、制御部は、ロボットを制御することにより、リール70をワークに設定された貼付け経路に沿って移動させ、かつ、ローラ90により、テープ材を貼付け経路に押圧して貼付ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に接着層を有するテープ材をロボットによりワークに貼付けるテープ材貼付け機であって、
前記ロボットの先端に取付けられており、前記テープ材を巻取るためのリールと、
前記ロボットの先端に取付けられており、前記リールから繰り出された前記テープ材の表面を押圧することにより、前記テープ材を前記ワークに貼付けるローラと、
制御部と、を備えており、
前記制御部は、
前記ロボットを制御することにより、前記リールを前記ワークに設定された貼付け経路に沿って移動させ、かつ、前記ローラにより、前記テープ材を前記貼付け経路に押圧して貼付けることを特徴とするテープ材貼付け機。
【請求項2】
前記リールから繰り出された前記テープ材を前記ローラに案内する案内部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のテープ材貼付け機。
【請求項3】
前記ローラは、
円柱形状に形成された胴体と、前記胴体の両端の各周縁からそれぞれ外方に張り出した一対のフランジと、を備えており、前記テープ材の表面が前記胴体の周面に接触し、かつ、前記テープ材の長手方向の両側面のうち、少なくとも両側面の各上縁が前記一対のフランジ間に収まるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のテープ材貼付け機。
【請求項4】
前記ローラを前記リールの外周面と対向する第1位置と、その第1位置から退避した第2位置とに切替えるローラ位置切替え装置を備えており、
前記制御部は、
前記ローラ位置切替え装置を制御することにより、前記テープ材を前記リールに巻取るときは前記ローラを前記第2位置に切替え、前記リールから繰り出された前記テープ材を前記ワークに押圧して貼付けるときは前記ローラを前記第1位置に切替えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機。
【請求項5】
前記制御部は、
前記ロボットを制御することにより、前記テープ材が前記貼付け経路に沿って繰り出されるように前記リールと前記貼付け経路との位置関係を調節することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機。
【請求項6】
前記リールを回転させるモータを備えており、
前記制御部は、
前記ローラが前記テープ材を前記貼付け経路に沿って貼付ける速度と、前記テープ材が前記リールから繰り出される速度とが同期し、かつ、前記ローラが前記貼付け経路に沿って前記テープ材を貼付けるように前記ロボットおよび前記モータを制御することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機。
【請求項7】
前記制御部は、
前記ロボットおよび前記モータを制御することにより、前記リールから繰り出された前記テープ材を前記ワークに貼付けるときの前記ワークおよび前記リール間の前記テープ材の張力を調整することを特徴とする請求項6に記載のテープ材貼付け機。
【請求項8】
前記制御部は、
前記ロボットを制御することにより、前記ローラが前記テープ材を前記ワークに押圧する力を調節可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機。
【請求項9】
前記貼付け経路が曲線の場合は、前記テープ材を押圧して貼付ける貼付けポイントが前記貼付け経路に複数箇所設定されており、
前記制御部は、
前記ロボットを制御することにより、
前記貼付けポイント間では前記ローラおよび前記テープ材を前記ワークから上昇させ、
前記貼付けポイントでは前記ワークから上昇した前記ローラおよび前記テープ材の姿勢を前記貼付け経路に沿った方向に変化させ、前記姿勢が変化した前記ローラおよび前記テープ材を下降させ、前記姿勢が変化したローラにより、前記姿勢が変化したテープ材を前記貼付けポイントに押圧して貼付けることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機。
【請求項10】
前記テープ材は、
ウレタン樹脂により形成されたウレタン樹脂層と、
前記ウレタン樹脂層の裏面に形成された前記接着層と、を備えており、
前記接着層は前記ウレタン樹脂層よりも弾性率が大きいことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ材をワークに自動で貼り付けるテープ材貼付け機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多関節ロボットに設けられた円形のハンドの外周面にテープ材を吸着して巻取り、ハンドの外周面をワークに押し付けながら回転させることにより、テープ材をワークに貼付けるという技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来の技術は、テープ材をハンドの外周面に吸着して巻取る構成であるため、テープ材の貼付け経路に、ハンドの径よりも小径の角部が形成されている場合、ハンドの外周面が角部から浮いてしまい、テープ材を角部に押圧して貼付けることができない。
また、ハンドの径を小さくすると、ハンドに巻取ることができるテープ材が短くなってしまうため、テープ材を貼付ける作業と、テープ材をハンドに巻取る作業とを繰り返さなければならず、作業効率が悪くなる。
つまり、前述した従来の技術は、テープ材を貼付けることができるワークの範囲が狭く、かつ、テープ材を貼付ける作業効率が悪いという問題がある。
【0005】
そこで、本願発明は、上述した諸問題を解決するために創出されたものであり、テープ材を貼付けることができるワークの範囲を広げることができ、かつ、テープ材を貼付ける作業効率を良くすることができるテープ材貼付け機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1に係る発明)
前述した目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明では、
裏面に接着層(302(
図8))を有するテープ材(300)をロボット(10(
図1))によりワーク(40)に貼付けるテープ材貼付け機(1)であって、
ロボット(10)の先端に取付けられており、テープ材(300)を巻取るためのリール(70(
図2))と、
ロボット(10)の先端に取付けられており、リール(70)から繰り出されたテープ材(300)の表面を押圧することにより、テープ材(300)をワーク(40)に押し付けて貼付けるローラ(90(
図3))と、
制御部(500(
図19))と、を備えており、
制御部(500)は、
ロボット(10)を制御することにより、リール(70)をワーク(40)に設定された貼付け経路(R1,R2(
図15))に沿って移動させ、かつ、ローラ(90)により、テープ材(300)を貼付け経路(R1,R2)に押圧して貼付けることを特徴とする。
【0007】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明では、請求項1に記載のテープ材貼付け機(1)において、
リール(70)から繰り出されたテープ材(300)をローラ(90)に案内する案内部材(100(
図3))を備えていることを特徴とする。
【0008】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明では、請求項1または請求項2に記載のテープ材貼付け機(1)において、
ローラ(90)は、
円柱形状に形成された胴体(91(
図8))と、胴体(91)の両端の各周縁からそれぞれ外方に張り出した一対のフランジ(92,92)と、を備えており、テープ材(300)の表面が胴体(91)の周面(91a)に接触し、かつ、テープ材(300)の長手方向の両側面(301a,301a)のうち、少なくとも両側面(301a,301a)の各上縁(301b,301b)が一対のフランジ(92,92)間に収まるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明では、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機(1)において、
ローラ(90)をリール(70)の外周面と対向する第1位置(
図4)と、その第1位置から退避した第2位置とに切替えるローラ位置切替え装置(80(
図4))を備えており、
制御部(500)は、
ローラ位置切替え装置(80)を制御することにより、テープ材(300)をリール(70)に巻取るときはローラ(90)を第2位置(
図6)に切替え、リール(70)から繰り出されたテープ材(300)をワーク(40)に押圧して貼付けるときはローラ(90)を第1位置に切替えることを特徴とする。
【0010】
(請求項5に係る発明)
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機(1)において、
制御部(500)は、
ロボット(10)を制御することにより、テープ材(300)が貼付け経路(R1,R2)に沿って繰り出されるようにリール(70)と貼付け経路(R1.R2)との位置関係を調節することを特徴とする。
【0011】
(請求項6に係る発明)
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機(1)において、
リール(70)を回転させるモータ(67(
図3))を備えており、
制御部(500)は、
ローラ(90)がテープ材(300)を貼付け経路(R1,R2)に沿って貼付ける速度と、テープ材(300)がリール(70)から繰り出される速度とが同期し、かつ、ローラ(90)が貼付け経路(R1,R2)に沿ってテープ材(300)を貼付けるようにロボット(10)およびモータ(67)を制御することを特徴とする。
【0012】
(請求項7に係る発明)
請求項6に記載のテープ材貼付け機(1)において、
制御部(500)は、
ロボット(10)およびモータ(67)を制御することにより、リール(70)から繰り出されたテープ材(300)をワーク(40)に貼付けるときのワーク(40)およびリール(70)間のテープ材(300)の張力を調整することを特徴とする。
【0013】
(請求項8に係る発明)
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機(1)において、
制御部(500)は、
ロボット(10)を制御することにより、ローラ(90)がテープ材(300)をワーク(40)に押圧する力を調節可能であることを特徴とする。
【0014】
(請求項9に係る発明)
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機(1)において、
貼付け経路(R2)が曲線の場合は、テープ材(300)を押圧して貼付ける貼付けポイント(P2~P4(
図15))が貼付け経路(R2)に複数箇所設定されており、
制御部(500)は、
ロボット(10)を制御することにより、
貼付けポイント(P2~P4)間ではローラ(90)およびテープ材(300)をワーク(40)から上昇させ、
貼付けポイント(P2~P4)ではワーク(40)から上昇したローラ(90)およびテープ材(300)の姿勢を貼付け経路(R2)に沿った方向に変化させ、姿勢が変化したローラ(90)およびテープ材(300)を下降させ、姿勢が変化したローラ(90)により、姿勢が変化したテープ材(300)を貼付けポイント(P2~P4)に押圧して貼付けることを特徴とする。
【0015】
(請求項10に係る発明)
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のテープ材貼付け機(1)において、
テープ材(300)は、
ウレタン樹脂により形成されたウレタン樹脂層(301(
図8))と、
ウレタン樹脂層の裏面に形成された接着層(302)と、を備えており、
接着層(302)はウレタン樹脂層(301)よりも弾性率が大きいことを特徴とする。
【0016】
なお、上記各括弧内の符号および図番号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0017】
(請求項1に係る発明の効果)
請求項1に係る発明のテープ材貼付け機によれば、テープ材をリールに巻取り、ローラがリールから繰り出されたテープ材をワークに押圧して貼付ける構成であるため、必要な長さのテープ材をリールに巻取っておくことができるので、テープ材の長さに応じてリールの径を変更する必要がない。
しかも、貼付け経路に角部が存在する場合であっても、その角部に外周面を押し付けることができる径のローラを用いることができる。
さらに、ロボットを制御することにより、リールをワークに設定された貼付け経路に沿って移動させ、かつ、ローラにより、テープ材を貼付け経路に押圧して貼付けることができる。つまり、テープ材をワークの貼付け経路に自動的に貼付けることができる。
【0018】
(請求項2に係る発明の効果)
請求項2に係る発明のテープ材貼付け機によれば、リールから繰り出されたテープ材は、案内部材によってローラに案内されるため、ローラとテープ材との位置関係が一定するので、テープ材をワークに精度良く貼付けることができる。
【0019】
(請求項3に係る発明の効果)
請求項3に係る発明のテープ材貼付け機によれば、ローラは、円柱形状に形成された胴体と、胴体の両端の各周縁からそれぞれ外方に張り出した一対のフランジと、を備えており、テープ材の表面が胴体の周面に接触し、かつ、テープ材の長手方向の両側面のうち、少なくとも両側面の各上縁が一対のフランジ間に収まるように構成されている。
従って、テープ材がローラから外れないので、テープ材を貼付け経路に沿って精度良く貼付けることができる。
【0020】
(請求項4に係る発明の効果)
請求項4に係る発明のテープ材貼付け機によれば、テープ材をリールに巻取るときは、ローラをリールの外周面と対向する第1位置から退避した第2位置に切替えることができるため、テープ材をリールに巻取るときにローラが邪魔にならない。また、ローラを第1位置および第2位置間で切替える手作業を行う必要がないため、作業効率を良くすることができる。
【0021】
(請求項5に係る発明の効果)
請求項5に係る発明のテープ材貼付け機によれば、テープ材が貼付け経路に沿って繰り出されるようにすることができるため、テープ材を貼付け経路に沿って精度良く貼付けることができる。
【0022】
(請求項6に係る発明の効果)
請求項6に係る発明のテープ材貼付け機によれば、ローラがテープ材を貼付け経路に沿って貼付ける速度と、テープ材がリールから繰り出される速度とが同期しているため、ワークとローラとの間に存在するテープ材の張力が変化しないようにすることができるので、ワークに貼付けられたテープ材の形状が変化しないようにすることができる。
しかも、ローラが貼付け経路に沿ってテープ材を自動的に貼付けることができるので、テープ材をワークに貼付ける作業効率を良くすることができる。
【0023】
(請求項7に係る発明の効果)
ワークの種類によってテープ材に要求される弾性、密度などの特性が異なる。一方、ワークに貼付けるときのテープ材の張力により、貼付けられたテープ材の特性、テープ材の厚さが変化するため、貼付けた後のテープ材が、要求されている特性を維持している必要がある。
そこで、請求項7に係る発明によれば、ワークおよびリール間のテープ材の張力を調整することができるため、貼付けた後のテープ材が、要求されている特性を維持するようにすることができる。
【0024】
(請求項8に係る発明の効果)
ワークの種類によってテープ材に要求される弾性、密度などの特性が異なる。また、接着層の成分によって接着力が異なる。このため、テープ材を最適な状態でワークに貼付けるためには、テープ材をワークに押圧する力をテープ材の特性に応じて最適な大きさに調節することが望ましい。
そこで、請求項7に係る発明によれば、ローラがテープ材をワークに押圧する力を調節可能であるため、テープ材を最適な状態でワークに貼付けることができる。
【0025】
(請求項9に係る発明の効果)
貼付け経路が直線である場合は、ローラをワークから上昇させないでテープ材を貼付けて行くことができる。
しかし、貼付け経路が曲線の場合、その曲線に沿ってローラを転動させながらテープ材を貼付けると、ワークに貼り付いた接着層がローラの転動方向に追従して方向を変え難いため、貼付け経路を逸脱したり、貼付けられたテープ材の姿勢がワークに対して傾いたりするという症状が出易い。
特に、請求項10に記載するように、テープ材がウレタン樹脂により形成されたウレタン樹脂層と、ウレタン樹脂層の裏面に形成された接着層と、を備えており、接着層がウレタン樹脂層よりも弾性率が大きい(腰が強い)場合は、曲線の貼付け経路において、ウレタン樹脂層はローラの転動方向に追従して変形し易いが、接着層は変形し難いため、前述した症状がより一層出易い。
【0026】
そこで、請求項9に係る発明によれば、テープ材を押圧して貼付ける貼付けポイントが貼付け経路に複数箇所設定されており、制御部は、ロボットを制御することにより、貼付けポイント間ではローラおよびテープ材をワークから上昇させる。そして、貼付けポイントではワークから上昇したローラおよびテープ材の姿勢を貼付け経路に沿った方向に変化させ、姿勢が変化したローラおよびテープ材を下降させ、姿勢が変化したローラにより、姿勢が変化したテープ材を貼付けポイントに押圧して貼付けることができる。
つまり、テープ材がワークに貼付けられた状態でテープ材の姿勢を変化させるのではなく、テープ材がワークから上昇した状態でテープ材の姿勢を変化させ、その状態で貼付けポイントに貼付けるため、テープ材を貼付け経路に沿って正確に貼付けることができるし、貼付けられたテープ材の姿勢がワークに対して傾いたりするおそれもない。
【0027】
上述したように、本願発明によれば、テープ材を貼付けることができるワークの範囲を広げることができ、かつ、テープ材を貼付ける作業効率を良くすることができるテープ材貼付け機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係るテープ材貼付け機の斜視図である。
【
図2】
図1に示すテープ材貼付け機を構成するロボットの先端に装着されたテープ材貼付けユニットの拡大斜視図である。
【
図3】
図2に示すテープ材貼付けユニットの拡大斜視図である。
【
図4】
図3に示すテープ材貼付けユニットを異なる方向から見た斜視図である。
【
図5】テープ材貼付けユニットに備えられたリールおよびテープ材クランプ装置の正面図である。
【
図6】テープ材貼付けユニットに備えられたローラスイング機構およびテープ材クランプ装置の斜視図であり、ローラがリールの外周面と対向する位置から退避した状態を示す斜視図である。
【
図7】テープ材貼付けユニットに備えられたローラスイング機構およびテープ材クランプ装置の斜視図であり、ローラがリールの外周面と対向する位置に進出した状態を示す斜視図である。
【
図8】ローラおよびテープ材の説明図であり、(A)はローラの拡大説明図、(B)はテープ材の拡大説明図、(C)はテープ材を挾持したローラの拡大説明図である。
【
図9】テープ材クランプ装置の説明図であり、(A)は正面拡大図、(B)は(A)の左側面図である。
【
図10】
図9に示すテープクランプ装置の一部を示す説明図であり、(A)はテープ材をクランプする構造の正面拡大図、(B)は(A)の右側面図、(C)は(A)に示すカムの斜視図である。
【
図11】ローラがリールから繰り出されたテープ材をワークに押圧して貼付けている状態を示す説明図であり、テープ材貼付けユニットの一部を省略して示す説明図である。
【
図12】ローラがリールから繰り出されたテープ材をワークに設定された曲線の貼付け経路に沿って貼付けている状態を示す説明図であり、テープ材貼付けユニットの一部を省略して示す説明図である。
【
図13】ローラがリールから繰り出されたテープ材をワークに設定された曲線の貼付け経路に沿って貼付けている状態を示す説明図であり、(A)はローラおよびテープ材がワークから上昇した状態を示す説明図、(B)は上昇したローラおよびテープ材が貼付け経路に沿った方向に姿勢を変化させた状態を示す説明図である。
【
図14】ローラおよびテープ材の姿勢の変化を示す模式図であり、(A)はローラがテープ材をワークに押圧している状態、(B)はローラおよびテープ材がワークから上昇した状態、(C)は上昇したローラおよびテープ材が貼付け経路に沿った方向に姿勢を変化させた状態を示す。
【
図15】(A)は、ローラが曲線の貼付け経路に沿って姿勢を変化させる様子を示す模式図であり、(B)は、ローラの姿勢を変化させるときの角度を示す説明図である。
【
図16】(A)はテープ材セット治具およびテープ材固定装置の斜視図であり、(B)はテープ材の側面図である。
【
図17】(A)は、
図16(A)に示すテープ材セット治具の一端およびテープ材固定装置の拡大斜視図、(B)は正面図、(C)はテープ材の剥離紙の始端がロック固定された状態を示す説明図である。
【
図18】テープ材が貼付けられたワークの斜視図である。
【
図19】
図1に示すテープ材貼付け機の主な電気的構成をブロックで示す説明図である。
【
図20】
図19に示す制御ユニットに備えられたCPUが実行する主な処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態に係るテープ材貼付け機について図を参照しつつ説明する。
[主要構成]
最初に、本実施形態のテープ材貼付け機の主要構成について図を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態のテープ材貼付け機1は、ロボット10と、テープ材貼付けユニット60と、テープ材セット治具34とを備えている。ロボット10は、第1軸11~第6軸16を有する垂直多関節6軸ロボットである。第2軸12と第3軸13とは下腕部17によってリンクされており、第3軸13と第4軸14とは上腕部18によってリンクされている。また、第5軸15と第6軸16とは手首部19によってリンクされている。手首部19の先端には、一般的に垂直多関節6軸ロボットにおいて使用されるロボットハンド(図示せず)を装着するためのハンド部20が取付けられている。ハンド部20の先端、つまりロボット10の先端には、テープ材貼付けユニット60が装着されている。
【0030】
テープ材貼付け機1は、基台30を備えており、その基台30には治具基台33が設けられている。治具基台33の上には、テープ材300(
図16(B))を所定位置にセットするためのテープ材セット治具34が設けられている。テープ材セット治具34の両端には、テープ材300の両端をテープ材セット治具34に固定するためのテープ材固定装置50A,50Bがそれぞれ設けられている。また、基台30には治具基台31が設けられており、その治具基台31の上には、ワーク40を所定位置にセットするためのワークセット治具32が設けられている。
【0031】
[テープ材貼付けユニットの構成]
次に、テープ材貼付けユニット60の構成について図を参照しつつ説明する。
テープ材貼付けユニット60は、テープ材300をワーク40に押圧しながら貼付け経路R1,R2(
図15)に沿って貼付けるための装置である。
図3ないし
図6に示すように、テープ材貼付けユニット60は、リール70、ローラ90、ガイド100、ローラスイング機構80およびテープ材クランプ装置200A,200B(
図5)などを備えている。
【0032】
(リールの構造)
リール70は、テープ材300を巻取り、かつ、巻取られたテープ材300を貼付け経路R1,R2(
図15)へ繰り出すための部材である。
図6に示すように、リール70の外周面には、巻取ったテープ材300を嵌合するためのテープ材嵌合溝71が形成されている。テープ材300は、テープ材嵌合溝71に嵌合された状態となるようにリール70に巻取られる。テープ材嵌合溝71の全長は、テープ材300の全長L(
図16(B))と同じ長さとなるように形成されている。テープ材300の全長Lがテープ材嵌合溝71(
図6)の円周の長さよりも長い場合は、テープ材嵌合溝71は、リール70の外周面に1周以上形成される。テープ材300の全長Lがリール70の円周よりも長い場合は、テープ材嵌合溝71をリール70の外周面に螺旋状に形成し、巻取られたテープ材300同士が接着しないようにする。つまり、テープ材300はリール70に螺旋状に巻取られる。
【0033】
また、テープ材嵌合溝71の深さは、テープ材300がリール70の外周面から僅かに突出するか突出しない程度の深さであるが、テープ材300の始端304(
図16(B))が嵌合される部分は、テープ材300の高さT(
図8(B))よりも浅くなっており、
図5に示すように、リール70に巻取られたテープ材300の始端304がリール70の外周面から突出した状態になる。これにより、テープ材300の始端304をワーク40に貼付けるときに、始端304が最下部にある状態でリール70をワーク40に下降させることにより、始端304をワーク40に押圧して貼付けることができる。なお、後述するが、始端304をワーク40に貼付けた後は、ローラ90がテープ材300をワーク40に押圧して貼付ける。リール70の外径は、巻取るテープ材300の全長Lによって決定し、かつ、テープ材300をワーク40に貼付ける際にリール70がワーク40やロボット10に接触しないように決定する。
【0034】
図4に示すように、リール70には回転軸64が挿通固定されており、その回転軸64は、軸受け62,63に回転可能に軸支されている。各軸受け62,63は、ロボット取付部61の裏面にそれぞれ取付けられている。ロボット取付部61は、テープ材貼付けユニット60をロボット10のハンド部20(
図2)に取付けるための部材である。ロボット取付部61の裏面には、リール70を回転駆動するためのモータ67が取付けられている。モータ67の回転軸にはピニオン66が軸支固定されている。リール70に挿通固定された回転軸64の一端は、歯車65の回転中心に挿通固定されており、歯車65は、モータ67のピニオン66と回転可能に噛み合っている。つまり、モータ67が駆動すると、ピニオン66が回転し、歯車65が回転することにより、リール70が回転する。
モータ67はサーボモータであり、その回転数、回転角度および回転速度は制御ユニット500(
図19)によって制御される。つまり、モータ67は、ロボット10の第7軸として機能する。ピニオン66および歯車65のギヤ比は、テープ材300をワーク40に貼付ける速度、貼付け経路R1,R2(
図15)の形状、テープ材300に必要な張力などにより決定することができ、設計変更することができる。ピニオン66および歯車65は、カバー68により覆われている。
【0035】
(ローラおよびテープ材の構造)
ローラ90は、リール70から繰り出されたテープ材300をワーク40に押圧して貼付けるための部材である。
図6に示すように、ローラ90は、軸受け89に回動自在に軸支されている。
図8(A)に示すように、ローラ90は、円柱形状の胴体91と、胴体91の両端の各周縁からそれぞれ外方に張り出した一対のフランジ92,92とを備えている。本実施形態では、JIS規格でA7075と称されるアルミニウム合金(超々ジュラルミン)により形成されており、高い強度を有する。また、各フランジ92は、それぞれJIS規格でSUS304と称されるステンレス鋼により形成されており、高い耐腐食性を有する。
【0036】
図8(B)に示すように、テープ材300は、テープ材本体301と、テープ材本体301の裏面に形成された接着層302と、接着層302の裏面に接着された剥離紙303とを有する。図では、テープ材300の構造を分かり易くするために、接着層302および剥離紙303の各厚さを実際よりも厚く描いてある。剥離紙303は、テープ材300をリール70に巻取るときにテープ材300から剥離される。また、
図16(B)に示すように、テープ材300の始端304からは剥離紙の始端303aが図面の左方に突出しており、テープ材300の終端305からは剥離紙の終端303bが図面の右方に突出している。後述するが、剥離紙の始端303aは、テープ材セット治具34にセットされたテープ材300をテープ材固定装置50Aによって固定ロックする際に用いる部分であり、剥離紙の終端303bは、テープ材セット治具34にセットされたテープ材300をテープ材固定装置50Bによって固定ロックする際に用いる部分である。
本実施形態では、テープ材本体301はウレタン樹脂により形成されており、接着層302はアクリル系接着剤により形成されている。本実施形態では、ローラ90の胴体91の幅W1は7mmであり、外径φ2は8mmである。各フランジ92の外径Φ1は、それぞれ14mmであり、肉厚Dは、それぞれ0.5mmである。また、各フランジ92が胴体91の周面91aから突出する高さHは3mmである。テープ材本体301は、本発明のウレタン樹脂層の一例である。
【0037】
また、テープ材300の幅W2は7mmであり、剥離紙303を除いた高さTは10mmである。また、テープ材300の全長L(
図16(B))は、貼付け経路R1,R2(
図15(A))の長さと同一であり、例えば、2,200mmである。ローラ90の胴体91の幅W1とテープ材300の幅W2は同一であるため、
図8(C)に示すように、ローラ90の各フランジ92がテープ材300を隙間無く挾持することができ、テープ材300が各フランジ92で移動しない(ガタが発生しない)ようになっている。また、各フランジ92が胴体91の周面91aから突出する高さHが3mmであるのに対してテープ材300の高さTは10mmであるため、
図8(C)に示すように、テープ材300が各フランジ92間に挾持された状態では、テープ材300は、各フランジ92の周面から下方に7mm突出した状態になる。
【0038】
このように、テープ材300が各フランジ92間に挾持された状態では、テープ材300は、各フランジ92の周面から下方に突出した状態になるため、ローラ90がテープ材300をワーク40に押圧すると、テープ材300がローラ90の胴体91とワーク40との間で圧縮され、テープ材300をワーク40に押圧することができる。また、テープ材本体301が圧縮されたときに、ローラ90の各フランジ92がワークに接触しないようにすることができる。ローラ90は、テープ材300の表面が胴体91の周面91aに接触し、かつ、テープ材300の長手方向の両側面301aのうち、少なくとも両側面301a,301aの各上縁301b,301bが一対のフランジ92,92間に収まるように構成すれば良い。このように構成することにより、ローラ90によってテープ材300をワーク40に押圧しながら貼付けるときに、テープ材300が一方のフランジ92から外方へ離脱しないようにすることができるため、テープ材300を貼付け経路R1,R2(
図15(A))に沿って正確に貼付けることができる。ローラ90の胴体91の幅W1、外径Φ2、各フランジ92の外径Φ1などの寸法は、押圧対象であるテープ材300の幅W2、高さTおよび材質などに応じて変更することができる。
【0039】
(ガイドの構造)
図7に示すガイド100は、リール70から繰り出されたテープ材300をローラ90の胴体91の周面91a(
図8(C))に案内するための部材である。ガイド100は、テープ材300の表面に接触する上部101と、この上部の両側縁からそれぞれ下方に形成された一対の側部102,102と、上部101の先端からテープ材300の繰り出し方向に形成された先端部103とを有する。上部101の裏面は、テープ材300の表面の形状に対応した形状に形成されている。各側部102,102は、相対向しており、テープ材300の両側面301a,301a(
図8(B))を挟むように設けられている。先端部103は、リール70から繰り出されたテープ材300を上部101へ案内する役割をする。
図7および
図11に示すように、先端部103は、緩やかに上方に沿った形状、換言すると、下方にやや膨らんだ曲面に形成されており、先端部103の先端とテープ材300の表面との摩擦が大きくならないようになっている。つまり、テープ材300を上部101に滑らかに案内できるようになっている。
【0040】
図7および
図11に示すように、ガイド100は、軸受け89に装着されたねじりコイルバネ105により、上方、つまり、テープ材300を押圧する方向に付勢されている。これにより、ガイド100の姿勢が安定するため、リール70から繰り出されたテープ材300を安定してローラ90へ案内することができる。また、軸受け89には、ガイド100の上方への回動を阻止するための押え部104が取付けられている。この押え部104が、ねじりコイルバネ105により上方に付勢されたガイド100の上方への回動を阻止し、ガイド100を一定の姿勢に維持する。
リール70から繰り出されたテープ材300の表面は、先端部103および上部101の各裏面に接触し、ローラ90の胴体91の下側の周面91aに接触する。つまり、リール70から繰り出されたテープ材300は、ガイド100の先端部103および上部101の各裏面を通過してローラ90の胴体91の下側の周面91aに案内される。このとき、上部101の裏面を通過するテープ材300は、相対向する側部102によって挾持された状態になるため、テープ材300は、ガイド100から離脱することなく、安定してローラ90に供給される。ガイド100は、ローラ90の胴体91またはフランジ92と同じ材料により形成することができる。ガイド100は、本発明の案内部材の一例である。
【0041】
(ローラスイング機構の構成)
ローラスイング機構80は、ローラ90およびガイド100をリール70の外周面と対向する第1位置と、その第1位置から退避した第2位置とに切替えるための装置である。ローラスイング機構80は、テープ材300をリール70に巻取るときはローラ90およびガイド100を第2位置に維持し、リール70から繰り出されたテープ材300をワーク40に押圧して貼付けるときは、ローラ90およびガイド100を第2位置から第1位置に切替える。
【0042】
図3および
図4に示すように、ローラスイング機構80は、エアシリンダ81と、このエアシリンダ81のピストンロッド82の先端に連結された連結部材83と、この連結部材83に回動可能に連結されたカム84と、このカム84に挿通固定された回転軸87(
図4)と、この回転軸87を軸支する軸受け85,86と、回転軸87に軸支固定された腕部88と、この腕部88に取付けられた軸受け89とを備えている。軸受け85,86は、リール70の回転軸64を軸支する軸受け62に取付けられている。
図6に示すように、リール70にテープ材300を巻取る前は、ピストンロッド82はエアシリンダ81の内部に退避しており、カム84および腕部88は、上方に回動し、ローラ90およびガイド100は、リール70の外周面と対向する第1位置から退避した第2位置に維持された状態になっている。これにより、リール70がテープ材300を巻取るときに、ローラ90およびガイド100が邪魔になることがない。
【0043】
また、リール70が巻取ったテープ材300をワーク40に貼付けるときは、リール70をワーク40に下降させ、リール70の外周面から突出したテープ材300の始端304(
図5)をワーク40に押圧して貼付ける。そして、
図4、
図7、
図11ないし
図13に示すように、エアシリンダ81からピストンロッド82が伸長し、カム84が下方に回動し、カム84の回動に伴って腕部88が下方に回動し、ローラ90およびガイド100が、リール70の外周面と繰り出されたテープ材300との間に入り、リール70の外周面と対向する第1位置になる。これにより、ガイド100はリール70から繰り出されたテープ材300をローラ90に案内し、その案内されたテープ材300をローラ90がワーク40に押圧して貼付けることができる。つまり、ローラスイング機構80は、テープ材300の始端304がワーク40に貼付けられた後に作動し、ローラ90およびガイド100が第2位置から第1位置に移動する。ローラスイング機構80は、本発明のローラ位置切替え装置の一例である。
【0044】
(テープ材クランプ装置の構成)
図5に示すように、テープ材クランプ装置200A,200Bは、リール70に設けられており、リール70に巻取られているテープ材300をクランプする(掴む)ための装置である。
図5においてリール70の最下部に配置されたテープ材クランプ装置200Aは、テープ材300の始端304(
図16(B))をクランプするための装置であり、リール70の斜め右上に配置されたテープ材クランプ装置200Bは、テープ材300の終端305(
図16(B))をクランプするための装置である。
テープ材クランプ装置200A,200Bは、同じ構成であるため、テープ材クランプ装置200Aの構成を代表にして説明する。
図9に示すように、テープ材クランプ装置200Aは、テープ材300をクランプするためのクランプ金具201および押さえ金具202と、クランプ金具201をクランプ動作およびアンクランプ動作させるためのカムフォロワ216と、このカムフォロワ216を動作させるためのカム215と、このカム215を回動させるためのエアシリンダ203と、相対向するフレーム211,212などを備えている。
【0045】
クランプ金具201は、フレーム211に設けられており、縦断面がL字形状を呈しており、その上端が回動軸217に回動可能に軸支されている。
図7に示すように、クランプ金具201の先端は、鋸歯形状に形成されており、クランプしたテープ材300が外れないようになっている。クランプ金具201がテープ材300をクランプした状態になったときのクランプ金具201の先端と対向する箇所には、板状の押さえ金具202が設けられている。押さえ金具202は、フレーム212の下端から突出形成されている(
図7)。クランプ金具201の先端および押さえ金具202によってテープ材300をクランプする。
図9に示すように、回動軸217には、ねじりコイルバネ218が捲回されており、そのねじりコイルバネ218によってクランプ金具201がアンクランプ方向に付勢されている。クランプ金具201の上端には、カムフォロワ軸216aが垂直姿勢で取付けられおり、そのカムフォロワ軸216aの先端には、カムフォロワ216が回転可能に軸支されている。
【0046】
フレーム211には、カム215がカム回動軸214によって回動可能に軸支されている。
図10(C)に示すように、カム215の表面の右下には、平坦な平坦部215aが形成されており、その平坦部215aの左側には、凹部215bが形成されている。凹部215bは、カムフォロワ216が入り込む(落ち込む)大きさに形成されている。
図9に示すように、フレーム211,212の各上端には、エアシリンダ203が設けられている。エアシリンダ203の後端(図面左側)は、フレーム211,212に挿通された回動軸205に回動可能に軸支されている。エアシリンダ203のピストンロッド204の先端には、カム215の基端が連結軸213によって回動可能に軸支されている。フレーム211,212の上端には、ピストンロッド204の可動範囲を調節するための可動範囲調節ネジ210がピストンロッド204に向けて設けられている。可動範囲調節ネジ210の先端は、ピストンロッド204の先端と対向しており、可動範囲調節ネジ210の突出長さを調節することにより、ピストンロッド204の伸長可能な範囲を調節し、カム215の回動範囲を調節することができる。
【0047】
エアシリンダ203には、ピストンロッド204の後端(
図9では左端)がエアシリンダ203の前端(
図9では右端)に存在する、つまり、ピストンロッド204が伸長状態にあることを検出する前端検出センサ(図示せず)が設けられており、その前端検出センサには、その前端検出センサの検出信号を制御ユニット500(
図19)へ出力するための前端検出センサ出力ケーブル206が接続されている。また、エアシリンダ203には、ピストンロッド204の後端(
図9では左端)がエアシリンダ203の後端(
図9では左端)に存在する、つまり、ピストンロッド204が退避状態にあることを検出する後端検出センサ(図示せず)が設けられており、その後端検出センサには、その後端検出センサの検出信号を制御ユニット500(
図19)へ出力するための後端検出センサ出力ケーブル207が接続されている。また、エアシリンダ203には、ピストンロッド204を動作させるためのエアを吸排気するエアポート208,209が設けられている。
【0048】
図9(A)において二点鎖線で示すように、ピストンロッド204が退避しているときは、カム215は二点鎖線で示す位置に回動しており、カムフォロワ216がカム215の凹部215b(
図10(C))に入り込み、フレーム212の方(
図9(B)では右方)に傾いた姿勢になっている。この状態では、クランプ金具201は、
図9(B)に示すように、ねじりコイルバネ218の付勢力によって押さえ金具202から離反した状態、つまり、テープ材300をクランプしないアンクランプ状態になっている。
また、ピストンロッド204が伸長すると、カム215は、
図9(A)において破線で示す位置に回動し、カムフォロワ216が凹部215bから離脱し、回転しながら平坦部215aに転動するため、カムフォロワ216が起立姿勢に変化し、クランプ金具201は、テープ材300をクラン部する状態になる。再度、ピストンロッド204が退避すると、カムフォロワ216がカム215の凹部215bに入り込み、クランプ金具201は、ねじりコイルバネ218の復元力により、アンクランプ状態に復帰し、クランプしていたテープ材300をワーク40に貼着できる状態になる。
図6および
図7に示すように、リール70の外周面の内側には、クランプ金具201および押さえ金具202を配置するための切欠部72が形成されており、クランプ金具201の動作範囲が確保されている。
【0049】
[テープ材セット治具およびテープ材固定装置の構成]
次に、テープ材セット治具およびテープ材固定装置の構成について、
図16および
図17を参照しつつ説明する。
図16(A)に示すように、テープ材セット治具34の一端(図では左端)には、テープ材300の剥離紙の始端303a(
図16(B))をロック固定するためのテープ材固定装置50Aが設けられており、テープ材セット治具34の他端(図では右端)には、テープ材300の剥離紙の終端303b(
図16(B))をロック固定するためのテープ材固定装置50Bが設けられている。また、テープ材セット治具34の一端の側方には、テープ材セット治具34にセットされたテープ材300の始端304を検出するためのテープ材検知センサ400Aが配置されており、また、テープ材セット治具34の他端の側方には、テープ材セット治具34にセットされたテープ材300の終端305を検出するためのテープ材検知センサ400Bが配置されている。
【0050】
図17(A)に示すように、テープ材セット治具34には、テープ材300を挿入するためのテープ材挿入ガイド34aが長手方向に形成されている。テープ材300は、剥離紙303(
図8(B))の裏面がテープ材挿入ガイド34aの内部底面と接触するようにテープ材挿入ガイド34aに挿入される。また、テープ材挿入ガイド34aの一端(図では左端)には、テープ材挿入ガイド34aにセットされたテープ材300の始端304(
図16(B))を上方に露出させるための切欠部34bが形成されており、テープ材300をリール70に巻取るときに、始端304をクランプするテープ材クランプ装置200A(
図5)が、露出した始端304をクランプできるように構成されている。
また、テープ材挿入ガイド34aの他端(図では右端)には、テープ材挿入ガイド34aにセットされたテープ材300の終端305(
図16(B))を上方に露出させるための切欠部34cが形成されており、テープ材300をリール70に巻取るときに、終端305をクランプするテープ材クランプ装置200B(
図5)が、露出した終端305をクランプできるように構成されている。
【0051】
テープ材挿入ガイド34aの内部底面には、テープ材挿入ガイド34aに挿入されたテープ材300を吸着するための吸着孔(図示せず)が長手方向に沿って複数設けられている。各吸着孔は、テープ材吸着装置406(
図19)と接続されており、テープ材吸着装置406が作動すると、各吸着孔からエアが吸引され、テープ材300が各吸着孔に吸着される。これにより、テープ材挿入ガイド34aに挿入されたテープ材300の変形が補正され、テープ材300が一直線上に延びた状態が維持される。また、リール70がテープ材300を巻取るときに、テープ材300を緩み無く巻取ることができ、テープ材300の終端305(
図16(B))をクランプするテープ材クランプ装置200B(
図5)が、テープ材300の終端305を正確にクランプすることができる。
【0052】
テープ材固定装置50A,50Bは同じ構造であるため、ここではテープ材固定装置50Aを代表にして説明する。
図17(A)に示すように、テープ材固定装置50は、剥離紙の始端303a(
図17(C))を押えるためのテープ材押さえ部材51と、このテープ材押さえ部材51を自動的にアンクランプ状態にするための自動アンクランプ機構57と、テープ材押さえ部材51を手動でクランプ状態にするための手動クランプレバー58とを備えている。テープ材押さえ部材51は、略へ字状に形成されており、その屈曲部51aはロッド52の先端(図では右端)に設けられたボルトによって押し付けられている。ロッド52の後端には、リンク部材52aの先端(図では右端)が回動軸52bにより回動可能に軸支されている。リンク部材52aの後端(図では左端)には、回動軸58aにより、手動クランプレバー58の下端が回動可能に軸支されている。手動クランプレバー58は、相対向する一対のリンク部材59,59と、各リンク部材59の前端間に軸支された当接部材59aと、各リンク部材59の略中央間に軸支された回動軸59bとにより枠状体が形成されており、その枠状体の内方から手動クランプレバー58が上方に突出するように配置されている。また、手動クランプレバー58は、起立した状態のときに、反時計回りに回動する当接部材59aによって押されて倒れる位置に配置されている。
【0053】
回動軸59bは、相対向する一対の支持部材59f,59fに軸支されており、各リンク部材59の後端は、相対向する一対の連結部材59dの上端間に取付軸57cによって回動可能に軸支されている。各連結部材59dの下端には、単動式のエアシリンダ57aのピストンロッド57bの先端が取付けられている。エアシリンダ57aは、回動軸57cによって、相対向する一対の取付部材59eに回動可能に軸支されている。
テープ材押さえ部材51の後端(図において屈曲部51aの斜め左下方の部分)は、回動軸53aによって、相対向する一対の支持部材53に回動可能に軸支されている。テープ材押さえ部材51の後端のうち、回動軸53aにより軸支されている部分よりも後ろ側には、係止部材54が取付けられており、係止部材54の後方には、係止部材56が配置されている。係止部材54には、コイルスプリング55の一端が係止されており、係止部材56には、コイルスプリング55の他端が係止されている。
【0054】
図17は、手動クランプレバー58を手動操作することにより、テープ材300の剥離紙の始端303aがロック固定された状態を示す。左方に倒れていた手動クランプレバー58を、手動で図示のように起立姿勢になるまで回動させると、リンク部材52aがロッド52を図面右方へ押し、テープ材押さえ部材51が回動軸53aを回動中心にして時計回りに回動する。これにより、
図17(C)に示すように、テープ材300の剥離紙の始端303aをテープ材挿入ガイド34aに押圧し、ロック固定する。また、エアシリンダ57aのピストンロッド57bは伸長した状態になっている。
【0055】
同様に、テープ材セット治具24の右端に設けられたテープ材固定装置50Bの手動クランプレバー58を手動で操作し、テープ材300の剥離紙の左端303bをテープ材挿入ガイド34aに押圧し、ロック固定する。
このように、各テープ材固定装置50A,50Bにより、テープ材300の剥離紙の始端303aおよび剥離紙の終端303bをテープ材挿入ガイド34aにそれぞれロック固定することができるため、テープ材挿入ガイド34aにセットされたテープ材300をリール70が巻取るときに、テープ材300から剥離紙303が剥離され、剥離紙303が剥離された状態のテープ材300がリール70に巻取られる。
【0056】
リール70がテープ材300の巻取りを終了すると、各ロック装置50A,50Bのエアシリンダ57aが動作し、ピストンロッド57bが退避する。これにより、各リンク部材59が回動軸59bを回動中心にして反時計回りに回動し、当接部材59aが手動クランプレバー58を反時計回りに回動させて倒す。これにより、リンク部材52aが回動軸52bを回動中心にして時計回りに回動し、ロッド52が後方(図では左方)へ移動する。これにより、テープ材押さえ部材51が回動軸53aを回動中心にして反時計回りに回動し、剥離紙の始端303aおよび終端303bをロック固定していないアンクランプ状態になる。また、テープ材押さえ部材51の反時計回りに回動した状態は、コイルスプリング55のバネ力によって維持される。また、エアシリンダ57aは単動式であるため、内蔵されたスプリングによってピストンロッド57bが伸長し、手動クランプレバー58を手動操作可能な状態になる。
【0057】
[テープ材貼付け機の主な電気的構成]
次に、テープ材貼付け機1の主な電気的構成について、それをブロックで示す
図19を参照しつつ説明する。
テープ材貼付け機1は、制御ユニット500を備えており、その制御ユニット500には、ロボット10が電気的に接続されている。ロボット10にはテープ材貼付けユニット60が電気的に接続されており、テープ材貼付けユニット60は制御ユニット500と電気的に接続されている。制御ユニット500は、ロボット10の動作を制御し、かつ、ロボット10を介してテープ材貼付けユニット60の動作を制御する。ロボット10およびテープ材貼付けユニット60の制御状態は、制御ユニット500にフィードバックされる。
【0058】
制御ユニット500は、CPU501および記憶部502を備えている。記憶部502は、RAM、ROM、NVRAM、SDRAMなどのメモリを備えている。ROMには、CPU501がロボット10およびテープ材貼付けユニット60を制御するための制御プログラムが記憶されている。
また、制御ユニット500には、テープ材検知センサ400A,400B、テープ材ロック検知センサ401A,401B、ワーク検知センサ402、エリアセンサ403、ドアスイッチ404、操作盤405、テープ材固定装置50A,50B、テープ材吸着装置406、ランプ表示装置407、モニタ408、ティーチングペンダント409などが電気的に接続されている。テープ材ロック検知センサ401Aは、テープ材固定装置50Aにより、テープ材300の剥離紙の始端303a(
図16(B))がロック固定されているか否かを検知するセンサであり、テープ材固定装置50Aに設けられている。テープ材ロック検知センサ401Bは、テープ材固定装置50Bにより、テープ材300の剥離紙の終端303b(
図16(B))がロック固定されているか否かを検知するセンサであり、テープ材固定装置50Bに設けられている。
図16(A)では、テープ材ロック検知センサ401A,401Bは図示されていない。
【0059】
ワーク検知センサ402は、ワーク40がワークセット治具32(
図1)の所定位置にセットされているか否かを検知するセンサである。
図1では、ワーク検知センサ402は図示されていない。エリアセンサ403は、テープ材貼付け機1の作業エリア内に人や物が存在するか否かを検知するセンサである。ドアスイッチ404は、テープ材貼付け機1が設置されている作業部屋に設けられたドアの開閉を検知するスイッチである。操作盤405には、テープ材貼付け機1を起動させるためのスタートボタン(起動スイッチ)、非常停止ボタン、自動制御から手動に切替えるための手動切替えボタンなどの操作スイッチ類が設けられている。ランプ表示装置407は、テープ材貼付け機1の状態をランプにより表示する装置であり、例えば、制御状態が正常であるときは、ランプを緑色で点灯させ、テープ材貼付け機1が動作中のときは、ランプを黄色で点灯させ、テープ材貼付け機1に異常が発生したときは、ランプを赤色で点灯させる。モニタ408は、制御ユニット500の処理内容、制御プログラム名、テープ材貼付け機1の現在位置、速度、各センサからの情報など、テープ材貼付け機1の状態などを表示する。
【0060】
ティーチングペンダント409は、テープ材貼付け機1にティーチング(教示)を行うための装置であり、テープ材貼付け機1の状態を液晶などで表示する表示部、第1軸11~第6軸16(
図1)を動作させるための動作軸キー、教示プログラムや各種作業条件の設定などを行う数字キー、教示内容を記憶部502に記憶させるためのキーなどを備えている。ティーチングペンダント409を用いてテープ材貼付け機1にティーチングを行う作業者は、テープ材300がワーク40に設定された貼付け経路に沿って貼付けられるようにテープ材貼付け機1にティーチングを実行し、そのティーチング内容をティーチングデータとして記憶部502に記憶させる。ティーチングデータには、テープ材300を貼付け経路に貼付けるときの押圧力の大きさ、テープ材300を貼付ける速度、テープ材300を貼付ける方向などのパラメータが含まれている。作業者は、ティーチングペンダント409を用いて貼付け経路の要所要所において上記の各パレメータを得るためのティーチングを行い、その得たパラメータをティーチングデータとして記憶部502に記憶させる。CPU501は、本発明の制御部の一例である。
【0061】
[テープ材の貼付け経路]
図18は、テープ材300を貼付け経路に沿ってワーク40に貼付けた状態を示す。図示のように、ワーク40に設定された貼付け経路は、様々な形状の経路により構成されている。図示の例では、貼付け経路は、直線状の貼付け経路である直線部41、S字曲線状の貼付け経路であるS字曲線部42、曲率半径が相対的に小さい貼付け経路である小R部43、平坦な部分から傾斜した貼付け経路である傾斜部44、段差状の貼付け経路である段差部45により構成されている。ワーク40によって各貼付け経路の組合わせが異なり、貼付け経路の全長も異なる。作業者は、ティーチングペンダント409を用いて各貼付け経路毎にティーチングを行い、ティーチングデータを記憶部502に記憶させる。作業者が、貼付け経路に沿ってティーチングを行うポイントの数は、ワーク40の大きさや形状もしくはテープ材300の全長やテープ材300の材質などの要因によって異なる。テープ材貼付け機1は、ティーチングにより記憶部502に記憶されたティーチングデータに基づいてテープ材300をワーク40に自動的に貼付ける。ワーク40は、例えば、自動車などの車両に設けられ、ワーク40を車両の所定箇所に取付けることにより、ワーク40と取付部位との間にテープ材300が介在された状態になる。このとき、テープ材300は、ワーク40の取付部位から塵芥の浸入を防ぐ防塵部材としての役割をする。
【0062】
[テープ材の貼付け方法]
次に、テープ材300の貼付け方法について図を参照しつつ説明する。
図11に示すように、直線の貼付け経路R1では、リール70からテープ材300が貼付け経路R1に沿って繰り出され、ローラ90は、貼付け経路R1に沿って転動し、リール70から繰り出されたテープ材300を貼付け経路R1に沿って押圧しながら連続して貼付けて行く。これにより、直線の貼付け経路R1には、テープ材300が連続して貼付けられる。前述したように、ローラ90はリール70に取付けられているため、ローラ90の転動方向および姿勢は、リール70の姿勢を制御することにより決定される。また、リール70が貼付け経路に向けて下降することにより、ローラ90がテープ材300を貼付け経路に押圧する構造であるため、ローラ90がテープ材300を押圧する押圧力は、リール70が下降してテープ材300を圧縮する程度によって決定される。つまり、テープ材貼付けユニット60が取付けられたロボット10を制御することにより、ローラ90の転動方向およびテープ材300に対する押圧力が決定される。
【0063】
曲線の貼付け経路では、直線の貼付け経路とは異なる制御を行う。貼付け経路が曲線の場合、その曲線に沿ってローラ90を転動させながらテープ材300を貼付けると、ワーク40に貼り付いた接着層302(
図8)がローラ90の転動方向に追従して方向を変え難いため、貼付け経路を逸脱したり、貼付けられたテープ材300がワーク40に対して傾斜したりするという症状が出易い。特に、テープ材300のテープ材本体301は、ウレタン樹脂により形成されており、接着層302がテープ材本体301よりも弾性率が大きい(腰が強い)ため、曲線の貼付け経路において、テープ材本体301はローラ90の転動方向に追従して変形し易いが、接着層302は変形し難いため、前述した症状がより一層出易い。
【0064】
そこで、本実施形態では、上記の症状が出ないように以下の制御を行う。
図15(A)に示すように、曲線の貼付け経路R2には、テープ材300を押圧して貼付けるための貼付けポイントP2,P3,P4が設定されている。貼付けポイントの数は、ティーチングを行うときに、貼付け経路R2の曲率半径や曲線の長さ、さらには、テープ材300の材質などに応じて決定することができる。制御ユニット500は、ローラ90が直線の貼付け経路R1の終端P1に到達したときに、ロボット10を制御し、テープ材貼付けユニット60をワーク40から上昇させ、
図13(A)および
図14(B)に示すように、ローラ90およびテープ材300をワーク40から上昇させる。そして、制御ユニット500は、ロボット10を制御し、ローラ90を貼付けポイントP2の上方に移動させ、
図13(B)および
図14(C)に示すように、ローラ90およびテープ材300の姿勢を上昇した状態で貼付け経路R2に沿った方向に変化させる。つまり、貼付けポイントP2に到達するまでは、直直線の貼付け経路R1に沿う方向であった姿勢を曲線の内側に傾ける。
【0065】
例えば、
図15(B)に示すように、直線の貼付け経路R1では矢印F1で示す方向に転動していたローラ90の姿勢を、曲線の貼付け経路R2の貼付けポイントでは、矢印F2で示す方向にθ度変化させる。矢印F2が示す線分は、曲線の貼付け経路R2の貼付けポイントP2における接線と等しい。このように、ローラ90の姿勢をθ度変化させることにより、ローラ90のよって挾持されているテープ材300もθ度捻られた状態になる。
そして、制御ユニット500は、貼付けポイントP2の上方において姿勢をθ度変化させた状態のローラ90を貼付けポイントP2まで下降させ、θ度捻られた状態のテープ材300を貼付けポイントP2に押圧して貼付ける。続いて、制御ユニット500は、ローラ90およびテープ材300を貼付けポイントP2から上昇させ、その上昇させたローラ90およびテープ材300を次の貼付けポイントP3まで移動させる。そして、制御ユニット500は、貼付けポイントP3における曲線の接線方向にローラ90の姿勢を変化させ、その状態でローラ90を貼付けポイントP3に下降させ、テープ材300を貼付けポイントP3に押圧して貼付ける。制御ユニット500は、次の貼付けポイントP4においても同様の制御を行い、テープ材300を貼付けポイントP4に押圧して貼付ける。
【0066】
つまり、制御ユニット500は、各貼付けポイントでは、ローラ90がワーク40から上昇した状態でローラ90およびテープ材300の姿勢を曲線に沿った方向に変化させ、その姿勢が変化したローラ90およびテープ材300を貼付けポイントに下降させ、姿勢が変化したローラ90により、姿勢が変化したテープ材300を貼付けポイントに押圧して貼付けるという制御を実行する。
【0067】
上述したように、本実施形態では、テープ材300を押圧して貼付ける貼付けポイントが曲線の貼付け経路R2に複数箇所設定されており、制御ユニット500は、ロボット10を制御することにより、貼付けポイント間ではローラ90およびテープ材300をワーク40から上昇させる。そして、貼付けポイントではワーク40から上昇したローラ90およびテープ材300の姿勢を貼付け経路R2に沿った方向に変化させ、姿勢が変化したローラ90およびテープ材300を下降させ、姿勢が変化したローラ90により、姿勢が変化したテープ材300を貼付けポイントに押圧して貼付けることができる。
従って、テープ材300がワーク40に貼付けられた状態でテープ材300の姿勢を変化させるのではなく、テープ300材がワーク40から上昇した状態でテープ材300の姿勢を変化させ、その状態で貼付けポイントに貼付けるため、
図12に示すように、テープ材300を貼付け経路R2に沿って正確に貼付けることができるし、貼付けられたテープ材300がワーク40に対して傾斜したりするおそれもない。
【0068】
ところで、ワーク40に貼付けているときのテープ材300に掛かる張力が適正値よりも大きいと、テープ材300が長手方向に伸びるため、ワーク40に貼付けられたテープ材300の形状が変形したり、テープ材300の終端305(
図18)の貼付け位置がずれたりするおそれがある。また、テープ材300に掛かる張力が適正値よりも小さいと、テープ材300が貼付け経路から逸脱したり、テープ材300の終端305の貼付け位置がずれたりするおそれがある。
しかし、本実施形態のテープ材貼付け機1では、ローラ90がテープ材300を貼付け経路R1に貼付けて行く速度と、リール70がテープ材300を繰り出す速度とを同期させており、ローラ90とリール70との間におけるテープ材に掛かる張力が最適な大きさになるように制御されている。
従って、貼付けたテープ材300が変形したり、テープ材300が貼付け経路から逸脱したり、テープ材300の終端305の貼付け位置がずれたりするおそれがない。
【0069】
[テープ材貼付け処理]
次に、制御ユニット500のCPU501(
図19)が実行するテープ材貼付け処理の流れについて
図20を参照しつつ説明する。以下の説明では、CPU501が実行する処理ステップをSと略す。
【0070】
CPU501は、テープ材貼付け機1を起動するためのスタートボタン(起動スイッチ)がONしたか否かを判断し(S1)、ONしたと判断した場合は(S1:Yes)、ドアスイッチ404(
図19)がONしているか否かを判断する(S2)。ここで、CPU501は、ドアスイッチ404がONしていると判断した場合は(S2:Yes)、エリアセンサ403(
図19)がONしているか否かを判断し(S3)、ONしていないと判断した場合は(S3:No)、テープ材検知センサ400A,400B、テープ材ロック検知センサ401A,401Bおよびワーク検知センサ402の各センサがONしているか否かを判断する(S4)。ここで、CPU501は、各センサがONしていると判断した場合は(S4:Yes)、テープ材300の巻取りを実行する(S5)。
【0071】
ここで、テープ材300を巻取るための制御内容について説明する。CPU501は、ロボット10(
図1)を制御し、テープ材貼付けユニット60を、テープ材セット治具34(
図1)にセットされているテープ材300の始端304(
図16(B))の上方まで移動させる。このとき、テープ材300の始端304をクランプするテープ材クランプ装置200A(
図5)が、テープ材300の始端304と対向する姿勢になる。続いて、CPU501は、テープ材貼付けユニット60を下降させ、テープ材クランプ装置200Aのエアシリンダ203(
図9)を駆動し、クランプ金具201(
図6)により、テープ材300の始端304をクランプする(掴む)。続いて、CPU501は、ロボット10を制御し、リール70をテープ材300の終端305(
図16(B))に向けて回転させながら移動させ、テープ材300をリール70に巻取る。このとき、テープ材貼付けユニット60のモータ67(
図4)をリール70の回転と同期するように駆動させる。テープ材300の剥離紙の始端303aは、テープ材固定装置50A(
図16(A))によって固定ロックされているため、リール70が回転することにより、剥離紙303(
図8(B))がテープ材本体301から剥離される。これにより、テープ材300は、接着層302を外側に向けた状態でリール70に巻取られる。
【0072】
そして、CPU501は、テープ材300の終端305(
図16(B))をクランプするテープ材クランプ装置200B(
図5)が、テープ材300の終端305と対向する位置に到達したときにロボット10を制御してテープ材貼付けユニット60の移動を中止させ、かつ、モータ67の駆動を停止する。テープ材クランプ装置200Bが終端305と対向する位置になってときのモータ67の回転数、ロボット10の各軸の回転数などは、ティーチングデータとして記憶部502に記憶されている。続いて、CPU501は、テープ材クランプ装置200Bのエアシリンダ203を駆動し、クランプ金具201により、テープ材300の終端305をクランプする(掴む)。
【0073】
そして、CPU501は、リール70がテープ材300を正常に巻取ったか否かを判断する(S6)。この判断は、2つのテープ材検知センサ400A,400B(
図16(A))がOFFになっているか否かに基づいて行う。つまり、テープ材クランプ装置200Aがテープ材300の始端304(
図16(B))をクランプしていない場合は、始端304を検知するテープ材検知センサ400AがONした状態であり、テープ材クランプ装置200Bがテープ材300の終端305をクランプしていない場合は、終端305を検知するテープ材検知センサ400BがONした状態になるため、テープ材検知センサ400A,400Bの両方がOFFになっている場合は、リール70がテープ材300を正常に巻取ったと判断し(S6:Yes)、テープ材検知センサ400A,400Bの両方がOFFになっていない場合は、リール70がテープ材300を正常に巻取っていないと判断する(S6:No)。
【0074】
ここで、CPU501は、リール70がテープ材300を正常に巻取ったと判断した場合は(S6:Yes)、各テープ材固定装置50A,50Bによるテープ材300のロック固定状態を解除し(S7)、記憶部502に記憶されているティーチングデータに基づいて、テープ材300をワーク40に貼付ける処理を実行する(S8)。CPU501は、ロボット10を制御してリール70をワーク40に下降させ、テープ材300の始端304(
図16(B))をワーク40に押し付ける。そして、ローラ90およびガイド100が、リール70から繰り出されたテープ材300とリール70の外周面との間を通過可能な状態になると、ローラスイング機構80のエアシリンダ81(
図3)を駆動し、リール70の外周面と対向する位置から退避していたローラ90およびガイド100を、リール70の外周面と対向する位置へ進出させる。つまり、
図11に示すように、リール70から繰り出されたテープ材300をガイド100がローラ90へ案内し、その案内されたテープ材300をローラ90が押圧することができる状態にする。そして、CPU501は、記憶部502に記憶されているティーチングデータに基づいて、ロボット10およびテープ材貼付けユニット60を制御し、テープ材300を貼付け経路に沿ってワーク40に自動で貼付けて行く。そして、CPU501は、テープ材300の貼付けを終了すると、ロボット10およびテープ材貼付けユニット60を制御開始前の初期位置に戻す。
【0075】
また、CPU501は、リール70がテープ材300を正常に巻取っていないと判断した場合は(S6:No)、テープ材貼付け機1の制御を停止する(S9)。このとき、作業者が、操作盤405(
図19)を操作し、テープ材貼付け機1の制御を自動から手動に切替え、リール70からテープ材300を取り外し、ティーチングペンダント409を操作し、テープ材貼付け機1を制御開始時の初期位置に戻す。
また、CPU501は、ドアスイッチ404がONしていないと判断した場合は(S2:No)、テープ材貼付け機1が設置されている作業部屋に設けられたドアが開いた状態であり、他者が作業部屋に入る危険性があるため、ドアが閉まり、ドアスイッチ404がONするまで待機する。また、CPU501は、エリアセンサ403がONしていると判断した場合は(S3:Yes)、テープ材貼付け機1の作業エリア内に人や物が存在する危険性があるため、エリアセンサ403がOFFになるまで待機する。また、CPU501は、各センサがONしていないと判断した場合は(S4:No)、テープ材300がテープ材セット治具34(
図16(A))にセットされていない、または、正しくセットされていない状態、あるいは、ワーク40がワークセット治具32(
図1)にセットされていない、または、正しくセットされていない状態であるため、各センサがONするまで待機する。
【0076】
[実施形態の効果]
(1)上述した実施形態に係るテープ材貼付け機1によれば、テープ材300をリール70に巻取り、ローラ90がリール70から繰り出されたテープ材300をワーク40に押圧して貼付ける構成であるため、必要な長さのテープ材300をリール70に巻取っておくことができるので、テープ材300の長さに応じてリール70の径を変更する必要がない。
しかも、貼付け経路に角部が存在する場合であっても、その角部に外周面を押し付けることができる径のローラ90を用いることができる。
さらに、ロボット10を制御することにより、リール70をワーク40に設定された貼付け経路に沿って移動させ、かつ、ローラ90により、テープ材300を貼付け経路に押圧して貼付けることができる。つまり、テープ材300をワーク40の貼付け経路に自動的に貼付けることができる。
【0077】
(2)さらに、前述した実施形態に係るテープ材貼付け機1によれば、リール70から繰り出されたテープ材300は、ガイド100によってローラ90に案内されるため、ローラ90とテープ材300との位置関係が一定するので、テープ材300をワーク40に精度良く貼付けることができる。
【0078】
(3)さらに、前述した実施形態に係るテープ材貼付け機1によれば、ローラ90は、円柱形状に形成された胴体91と、胴体91の両端の各周縁からそれぞれ外方に張り出した一対のフランジ92,92と、を備えており、テープ材300の表面が胴体91の周面91aに接触し、かつ、テープ材300の長手方向の両側面301a,301aのうち、少なくとも両側面301a,301aの各上縁301b,301bが一対のフランジ92,92間に収まるように構成されている。
従って、テープ材300がローラ90から外れないので、テープ材300を貼付け経路に沿って精度良く貼付けることができる。
【0079】
(4)さらに、前述した実施形態に係るテープ材貼付け機1によれば、テープ材300をリール70に巻取るときは、ローラ90およびガイド100をリール70の外周面と対向する第1位置から退避した第2位置に切替えることができるため、テープ材300をリール70に巻取るときにローラ90およびガイド100が邪魔にならない。また、ローラ90およびガイド100を第1位置および第2位置間で切替える手作業を行う必要がないため、作業効率を良くすることができる。
【0080】
(5)さらに、前述した実施形態に係るテープ材貼付け機1によれば、テープ材300が貼付け経路に沿って繰り出されるようにすることができるため、テープ材300を貼付け経路に沿って精度良く貼付けることができる。
【0081】
(6)さらに、前述した実施形態に係るテープ材貼付け機1によれば、ローラ90がテープ材300を貼付け経路に沿って貼付ける速度と、テープ材300がリール70から繰り出される速度とが同期しているため、ワーク40とローラ90との間に存在するテープ材300の張力が変化しないようにすることができるので、ワーク40に貼付けられたテープ材300の形状が変化しないようにすることができる。
しかも、ローラ90が貼付け経路に沿ってテープ材300を自動的に貼付けることができるので、テープ材300をワーク40に貼付ける作業効率を良くすることができる。
【0082】
(7)さらに、前述した実施形態に係るテープ材貼付け機1によれば、ワーク40およびリール70間のテープ材300の張力を調整することができるため、貼付けた後のテープ材300が、要求されている特性を維持するようにすることができる。
【0083】
(8)さらに、前述した実施形態に係るテープ材貼付け機1によれば、ローラ90がテープ材300をワーク40に押圧する力を調節可能であるため、テープ材300を最適な状態でワーク40に貼付けることができる。
【0084】
(9)さらに、前述した実施形態に係るテープ材貼付け機1によれば、曲線の貼付け経路R2には、テープ材300を押圧して貼付ける貼付けポイントが複数箇所設定されており、CPU501は、ロボット10を制御することにより、貼付けポイント間ではローラ90およびテープ材300をワーク40から上昇させる。そして、貼付けポイントではワーク40から上昇したローラ90およびテープ材300の姿勢を貼付け経路R2に沿った方向に変化させ、姿勢が変化したローラ90およびテープ材300を下降させ、姿勢が変化したローラ90により、姿勢が変化したテープ材300を貼付けポイントに押圧して貼付けることができる。
つまり、テープ材300がワーク40に貼付けられた状態でテープ材300の姿勢を変化させるのではなく、テープ材300がワーク40から上昇した状態でテープ材300の姿勢を変化させ、その状態で貼付けポイントに貼付けるため、テープ材300を貼付け経路R2に沿って正確に貼付けることができるし、貼付けられたテープ材300の姿勢がワーク40に対して傾いたりするおそれもない。
【0085】
(10)上述したように、前述した実施形態に係るテープ材貼付け機1によれば、テープ材を貼付けることができるワークの範囲を広げることができ、かつ、テープ材を貼付ける作業効率を良くすることができるテープ材貼付け機を提供することができる。
【0086】
[他の実施形態]
(1)ワーク40の種類によっては、垂直多関節ロボットに代えて水平多関節ロボットを用いることもできる。
(2)各エアシリンダに代えてソレノイドやピエゾアクチュエータを用いることもできる。
(3)貼付けたテープ材300が貼付け経路から逸脱していることを検出するセンサ(例えば、画像センサなど)をテープ材貼付け機1に設け、そのセンサの検出結果を報知する報知装置(例えば、ランプ、警報音出力装置など)を設けることもできる。
【符号の説明】
【0087】
1・・・テープ材貼付け機
10・・・ロボット
40・・・ワーク
50A,50B・・・テープ材固定装置
60・・・テープ材貼付けユニット
61・・・ロボット取付部
64・・・回転軸
67・・・モータ
70・・・リール
71・・・テープ材嵌合溝
72・・・切欠部
80・・・ローラスイング機構
81・・・エアシリンダ
90・・・ローラ
100・・・ガイド
200A,200B・・・テープ材クランプ装置
201・・・クランプ金具
203・・・エアシリンダ
215・・・カム
216・・・カムフォロワ
300・・・テープ材
301・・・テープ材本体
302・・・接着層
303・・・剥離紙
304・・・始端
305・・・終端
400A,400B・・・テープ材検知センサ
409・・・ティーチングペンダント
500・・・制御ユニット
501・・・CPU
502・・・記憶部
R1・・・直線の貼付け経路
R2・・・曲線の貼付け経路