(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065851
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】環境試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20220421BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20220421BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20220421BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20220421BHJP
【FI】
G01N17/00
F24F13/02 D
F24F11/70
F24F11/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174599
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】000134730
【氏名又は名称】ナガノサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】占部 祥一
(72)【発明者】
【氏名】兼城 新一
(72)【発明者】
【氏名】石原 史一
【テーマコード(参考)】
2G050
3L080
3L260
【Fターム(参考)】
2G050AA07
2G050BA04
2G050BA10
2G050CA02
2G050EA01
2G050EA02
2G050EA05
2G050EC03
3L080AA02
3L080AA05
3L080AA06
3L080AA09
3L080AC01
3L260AA12
3L260AB07
3L260BA72
3L260FB42
3L260FB43
3L260FB44
(57)【要約】
【課題】人の出入りが可能な大型の試験室内における空調風の分配を広範囲で均一に近づけて試験環境を最適化する。
【解決手段】環境試験装置1は、試験室2の内側において正面壁21、一方の側面壁23、背面壁22、他方の側面壁24に沿って延びるように形成される室内ダクト部30を備えている。室内ダクト部30の中間部に接続ダクト部35が接続されている。室内ダクト部30における接続ダクト部35との接続部分近傍の断面積が、接続ダクト部35との接続部分と対向する部分の断面積よりも大きく設定されている。
【選択図】
図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも天井、正面壁、背面壁及び一対の側面壁が断熱材で構成された試験室内の少なくとも温度を含む環境パラメータを一定に保つ環境試験装置において、
前記試験室の前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のうち、少なくとも1つの壁に設けられた前記試験室への入室及び退室用の扉部と、
前記試験室の外側における前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のいずれかの壁に対応する前記断熱材近傍に設置され、前記試験室内の空気を吸い込む吸い込み部と、前記吸い込み部から吸い込んだ空気の一部または全部に対して加熱と冷却の少なくとも一方を行う温度調整部と、前記温度調整部で加熱と冷却の少なくとも一方が行われた空気を吹き出す吹き出し部とを備える空気調和機と、
前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のうち、前記空気調和機の前記吹き出し部が設けられる第1の壁に接した状態で前記試験室の内側に設けられるとともに、一端部が前記空気調和機の前記吹き出し部に接続されるとともに、他端部が前記第1の壁に沿って前記一端部より上方に延びる接続ダクト部と、
前記試験室の内側において、前記第1の壁の幅方向に延び、前記第1の壁の幅方向一端部に位置する第1端部と、前記第1の壁の幅方向他端部に位置する第2端部とを有するとともに、前記接続ダクト部の他端部に接続される接続部を有する第1のダクト部と、
前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のうち、前記第1の壁の幅方向の一端部に前記第1の壁に直交して接続される第2の壁の幅方向に延びるように形成されて前記試験室の内側に設けられ、前記第2の壁の幅方向一端部に位置して前記第1のダクト部の前記第1端部と接続される第3端部と、前記第2の壁の幅方向他端部に位置する第4端部とを有する第2のダクト部と、
前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のうち、前記第1の壁の幅方向の他端部に前記第1の壁に直交して接続される第3の壁の幅方向に延びるように形成されて前記試験室の内側に設けられ、前記第3の壁の幅方向一端部に位置して前記第1のダクト部の前記第2端部と接続される第5端部と、前記第3の壁の幅方向他端部に位置する第6端部とを有する第3のダクト部と、
前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のうち、前記第2の壁の幅方向の他端部及び前記第3の壁の幅方向の他端部に接続されて前記第2の壁に直交する第4の壁の幅方向に延びるように形成されて前記試験室の内側に設けられ、前記第2のダクト部の前記第4端部と前記第3のダクト部の前記第6端部との一方と接続される第7端部を有する第4のダクト部と、
前記第1から第4のダクト部の延びる方向に互いに間隔をあけて当該第1から第4のダクト部に設けられ、前記第1から第4のダクト部内の空気を前記試験室内に流出させる複数の流出口とを備え、
前記第1のダクト部の前記接続ダクト部に近接する部分の前記第1のダクト部内部の空気流れ方向に直交する断面積が、前記第4のダクト部の当該第4のダクト部内部の空気流れ方向に直交する断面積よりも大きく設定されていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の環境試験装置において、
前記第4のダクト部は、前記第2のダクト部の前記第4端部と前記第3のダクト部の前記第6端部との他方と接続される第8端部を有していることを特徴とする環境試験装置。
【請求項3】
請求項1に記載の環境試験装置において、
前記第2のダクト部の前記第4端部と前記第3のダクト部の前記第6端部との他方と接続される第9端部を有し、前記第4の壁の幅方向に延びる第5のダクト部を更に備えていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の環境試験装置において、
前記空気調和機は、前記吸い込み部から吸い込んだ空気の一部または全部に対して加湿と除湿の少なくとも一方を行う湿度調整部を更に備え、
前記試験室は、少なくとも温度と湿度を含む環境パラメータを一定に保つことを特徴とする環境試験装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の環境試験装置において、
複数の前記流出口は、
前記第1から第4のダクト部内の空気を前記第1から第4のダクト部から前記試験室内に向けて第1の方向に流出させる第1方向流出口と、
前記第1から第4のダクト部内の空気を前記第1から第4のダクト部から前記試験室内に向けて前記第1の方向とは異なる第2の方向に流出させる第2方向流出口とを含んでいることを特徴とする環境試験装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の環境試験装置において、
前記第4のダクト部の前記第7端部は、前記第2のダクト部の前記第4端部に接続されており、
前記環境試験装置は、
前記第1のダクト部の前記第1端部と前記第2のダクト部の前記第3端部とを接続する第1コーナー接続部と、
前記第2のダクト部の前記第4端部と前記第4のダクト部の前記第7端部とを接続する第2コーナー接続部とを更に備えており、
前記第2コーナー接続部には、前記第2コーナー接続部内の空気を前記試験室内に流出させる第2コーナー開口部が設けられていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項7】
請求項6に記載の環境試験装置において、
前記第1コーナー接続部には、前記第1コーナー接続部内の空気を前記試験室内に流出させる第1コーナー開口部が設けられ、
前記第2コーナー開口部の開口面積は、前記第1コーナー開口部の開口面積よりも大きく設定されていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の環境試験装置において、
前記第1のダクト部は、複数の第1モジュールが長手方向に接続されることによって構成されていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の環境試験装置において、
前記第4のダクト部は、複数の第2モジュールが長手方向に接続されることによって構成されていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項10】
少なくとも天井、正面壁、背面壁及び一対の側面壁が断熱材で構成された試験室内の少なくとも温度を含む環境パラメータを一定に保つ環境試験装置において、
前記試験室の前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のうち、少なくとも1つの壁に設けられた前記試験室への入室及び退室用の扉部と、
前記試験室の外側における前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のいずれかの壁に対応する前記断熱材近傍に設置され、前記試験室内の空気を吸い込む第1吸い込み部と、前記第1吸い込み部から吸い込んだ空気の一部または全部に対して加熱と冷却の少なくとも一方を行う第1温度調整部と、前記第1温度調整部で加熱と冷却の少なくとも一方が行われた空気を吹き出す第1吹き出し部とを備える第1空気調和機と、
前記試験室の外側における前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のいずれかの壁に対応する前記断熱材近傍において前記第1空気調和機から離れて設置され、前記試験室内の空気を吸い込む第2吸い込み部と、前記第2吸い込み部から吸い込んだ空気の一部または全部に対して加熱と冷却の少なくとも一方を行う第2温度調整部と、前記第2温度調整部で加熱と冷却の少なくとも一方が行われた空気を吹き出す第2吹き出し部とを備える第2空気調和機と、
前記第1空気調和機が設置された壁に設けられ、前記第1空気調和機の前記吹き出し部に一端部が接続され、前記第1吹き出し部から流入した空気を他端部から吹き出す第1接続ダクト部と、
前記第2空気調和機が設置された壁に設けられ、前記第2空気調和機の前記吹き出し部に一端部が接続され、前記第2吹き出し部から流入した空気を他端部から吹き出す第2接続ダクト部と、
前記試験室の内側において前記正面壁から一方の側面壁を経て背面壁の中間部まで延びた後、前記正面壁まで延びるように形成されるとともに、当該延びる方向の中間部に前記第1接続ダクト部の他端部が接続されており、前記第1接続ダクト部との接続箇所に近接する部分の空気流れ方向に直交する断面積が、前記第1接続ダクト部との接続箇所と対向する部分の空気流れ方向に直交する断面積よりも大きく設定された第1ループ状室内ダクト部と、
前記試験室の内側において前記正面壁から他方の側面壁を経て背面壁の中間部まで延びた後、前記正面壁まで延びるように形成されるとともに、当該延びる方向の中間部に前記第2接続ダクト部の他端部が接続されており、前記第2接続ダクト部との接続箇所に近接する部分の空気流れ方向に直交する断面積が、前記第2接続ダクト部との接続箇所と対向する部分の空気流れ方向に直交する断面積よりも大きく設定された第2ループ状室内ダクト部と、
前記第1ループ状室内ダクト部の延びる方向に互いに間隔をあけて設けられ、前記第1ループ状室内ダクト部内の空気を前記試験室内に流出させる複数の第1流出口と、
前記第2ループ状室内ダクト部の延びる方向に互いに間隔をあけて設けられ、前記第2ループ状室内ダクト部内の空気を前記試験室内に流出させる複数の第2流出口とを備えていることを特徴とする環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験物の環境試験に用いられる環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医薬品の長期保存時の安定性を評価するための安定性試験として、医薬品を一定の温度及び湿度で長期保存する環境試験が行われる。環境試験を行う際には、例えば特許文献1に開示されているような環境試験装置が用いられることがある。
【0003】
特許文献1に開示された環境試験装置は、医薬品が配置される槽内が区画壁によって試験室と空気通路とに区画されている。区画壁の上部には吹出口が開口し、区画壁の下部には吸込口が開口している。空気通路には、加湿装置、冷凍装置、加熱装置及び送風ファンを有する空気調和機の送風部が接続されており、空気調和機によって生成された空調風は、空気通路を経て吹出口から試験室に供給される。
【0004】
また、特許文献2には、降雪試験を行うための環境試験装置が開示されている。環境試験装置は、試験室と、試験室の外部に設置される空気調和機とを備えている。試験室内の上部には、空気調和機から送られた空調風が流通する空気通路が設けられている。空気通路に供給された空調風は、側壁に形成された空気供給口から試験室内に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-115205号公報
【特許文献2】特開2018-36069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、医薬品の安定性試験を行う環境試験装置として、人の出入りが可能な大型の試験室を有する、いわゆるウォークインチャンバータイプの環境試験装置が用いられることがある。このような大型の試験室では、温度を含む環境パラメータを設定範囲内となるように保たなければならない空間が広くなるので、空気調和機から送られた空気をダクトによって試験室の各部に供給する必要がある。
【0007】
ダクトを配設する方法としては、ダクトを試験室の壁の外方に配設する方法と、ダクトを天井の上方に配設する方法とが考えられる。前者の場合、ダクトが壁の外方に位置することになるが、試験室の壁の外方は、医薬品の搬送通路等として利用されることが多いので、ダクトを壁の外方に配設してしまうと邪魔になるおそれがある。
【0008】
一方、後者の場合、ダクトが試験室の天井の上方に位置することになるので、搬送通路の邪魔になることはない。その反面、ダクトの現場での施工性の面で問題があった。すなわち、人の出入りが可能な大型の試験室を有する環境試験装置は、試験室が複数の部材に分解された状態で既設の建物内に搬入されて組み立てられる。このとき、環境試験装置が設置される建物の天井高によっては、建物の天井と試験室の天井との間隔を広く確保できない場合がある。ダクトを天井の上方に配設するためには、作業者が建物の天井と試験室の天井との間に入り込んで作業を行う必要があるが、その間隔が広く確保できないということは、作業性が悪化するとともに、作業自体が困難なものになることがあった。
【0009】
そこで、例えば特許文献2のように、試験室の内部に空気通路を形成すれば、天井上での作業が不要になり、建物の天井と試験室の天井との間隔が狭くても問題とならない。ところが、空気調和機の設置位置によっては、試験室の特定の部分に空調風が届き難くなって試験室全体の環境パラメータが一定にならなくなるおそれがある。また、人の出入りが可能な大型の試験室は、設置される建物や顧客の要求に合わせて設計されるケースが多く、例えば幅や奥行きの寸法はもちろん、その比率も試験室ごとに異なり、空調風の分配を試験室ごとに調整する必要があった。空調風の分配を調整するといっても、空気調和機から試験室の左へ回るように空調風を供給する左経路と、右へ回るように空調風を供給する右経路とで通風抵抗が異なっていたり、左経路と右経路とで試験室のコーナー部に達するまでの距離が異なったりして、左右の分配を事前に予測するのは困難であった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、人の出入りが可能な大型の試験室内における空調風の分配を広い範囲で均一に近づけて試験環境を最適化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第1の開示は、少なくとも天井、正面壁、背面壁及び一対の側面壁が断熱材で構成された試験室内の少なくとも温度を含む環境パラメータを一定に保つ環境試験装置を前提する。この環境試験装置は、前記試験室の前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のうち、少なくとも1つの壁に設けられた前記試験室への入室及び退室用の扉部と、前記試験室の外側における前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のいずれかの壁に対応する前記断熱材近傍に設置され、前記試験室内の空気を吸い込む吸い込み部と、前記吸い込み部から吸い込んだ空気の一部または全部に対して加熱と冷却の少なくとも一方を行う温度調整部と、前記温度調整部で加熱と冷却の少なくとも一方が行われた空気を吹き出す吹き出し部とを備える空気調和機とを備えている。
【0012】
さらに、環境試験装置は、前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のうち、前記空気調和機の前記吹き出し部が設けられる第1の壁に接した状態で前記試験室の内側に設けられるとともに、一端部が前記空気調和機の前記吹き出し部に接続されるとともに、他端部が前記第1の壁に沿って前記一端部より上方に延びる接続ダクト部と、前記試験室の内側において、前記第1の壁の幅方向に延び、前記第1の壁の幅方向一端部に位置する第1端部と、前記第1の壁の幅方向他端部に位置する第2端部とを有するとともに、前記接続ダクト部の他端部に接続される接続部を有する第1のダクト部と、前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のうち、前記第1の壁の幅方向一端部に前記第1の壁に直交して接続される第2の壁の幅方向に延びるように形成されており、前記第2の壁の幅方向一端部に位置して前記第1のダクト部の前記第1端部と接続される第3端部と、前記第2の壁の幅方向他端部に位置する第4端部とを有する第2のダクト部と、前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のうち、前記第1の壁の幅方向の他端部に前記第1の壁に直交して接続される第3の壁の幅方向に延びるように形成されており、前記第3の壁の幅方向一端部に位置して前記第1のダクト部の前記第2端部と接続される第5端部と、前記第3の壁の幅方向他端部に位置する第6端部とを有する第3のダクト部と、前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のうち、前記第2の壁の幅方向の他端部及び前記第3の壁の幅方向の他端部に接続されて前記第2の壁に直交する第4の壁の幅方向に延びるように形成されており、前記第2のダクト部の前記第4端部と前記第3のダクト部の前記第6端部との一方と接続される第7端部を有する第4のダクト部と、前記第1から第4のダクト部の延びる方向に互いに間隔をあけて当該第1から第4のダクト部に設けられ、前記第1から第4のダクト部内の空気を前記試験室内に流出させる複数の流出口とを備えている。
【0013】
前記第1のダクト部の前記接続部に近接する部分の前記第1のダクト部内部の空気流れ方向に直交する断面積は、前記第4のダクト部の当該第4のダクト部内部の空気流れ方向に直交する断面積よりも大きく設定することができる。
【0014】
この構成によれば、試験室が入室及び退室用の扉部を備えているので、人の出入りが可能な大型の試験室とすることができる。そして、複数の流出口を有する第1~第4のダクト部が試験室の内側において広範囲に形成されているので、空気調和機からの空気を送るためのダクト部を天井の上方に配設する必要がなくなる。これにより、試験室を導入する建物の天井と、試験室の天井の間隔が狭くても試験室の建物内への設置が容易に行える。
【0015】
試験室の設置後、空気調和機の温度調整部によって温度調節された空気が吹き出し部から吹き出すと、接続ダクト部の一端部から他端部まで流れてから第1のダクト部に流入して互いに反対方向に向けて流れる。この第1のダクト部は、試験室の第1の壁部の幅方向に延びており、第1のダクト部の第1端部及び第2端部にはそれぞれ第2のダクト部及び第3のダクト部が接続され、さらに、第2のダクト部の第4端部と第3のダクト部の第6端部との一方には第4のダクト部が接続されている。さらに、第1から第4のダクト部には、複数の流出口が互いに間隔をあけて設けられているので、温度調節された空気が試験室の広範囲に供給される。
【0016】
このとき、第1のダクト部における接続ダクト部に近接する部分の断面積が、第1のダクト部と対向するように配置される第4のダクト部の断面積よりも大きいので、接続ダクト部から第1のダクト部に流入した空気を、第4のダクト部へ向けて流れ易くすることができる。これにより、接続ダクト部が接続された部分だけでなく、そこから離れた部分にも温度調節された空気を供給することができる。
【0017】
第2の開示では、前記第4のダクト部が、前記第2のダクト部の前記第4端部と前記第3のダクト部の前記第6端部との他方と接続される第8端部を有しているので、第1~第4ダクト部をループ状とすることができる。
【0018】
第3の開示では、前記第2のダクト部の前記第4端部と前記第3のダクト部の前記第6端部との他方と接続される第9端部を有し、前記第4の壁の幅方向に延びる第5のダクト部を更に備えているので、温度調節された空気をより一層広範囲に供給することができる。
【0019】
第4の開示では、前記空気調和機は、前記吸い込み部から吸い込んだ空気の一部または全部に対して加湿と除湿の少なくとも一方を行う湿度調整部を更に備えている。そして、前記試験室は、少なくとも温度と湿度を含む環境パラメータを一定に保つことができる。
【0020】
この構成によれば、環境パラメータとして温度だけでなく、湿度も含んでおり、試験室の温度と湿度の両方を一定に保って被試験物の安定性試験を行うことができる。
【0021】
第5の開示では、複数の前記流出口は、前記第1から第4のダクト部内の空気を前記第1から第4のダクト部から前記試験室内に向けて第1の方向に流出させる第1方向流出口と、前記第1から第4のダクト部内の空気を前記第1から第4のダクト部から前記試験室内に向けて前記第1の方向とは異なる第2の方向に流出させる第2方向流出口とを含んでいる。
【0022】
この構成によれば、第1から第4のダクトから互いに異なる方向へ向けて空気を供給することができるので、温度調節された空気をより一層広い範囲に行き渡らせることができる。第1の方向と第2の方向のうち、一方が下方向で、他方が水平方向または上方向であってもよい。また、第1の方向及び第2の方向と異なる第3の方向に空気を吹き出す第3方向流出口を含んでいてもよい。
【0023】
第6の開示では、前記第4のダクト部の前記第7端部は、前記第2のダクト部の前記第4端部に接続されており、前記環境試験装置は、前記第1のダクト部の前記第1端部と前記第2のダクト部の前記第3端部とを接続する第1コーナー接続部と、前記第2のダクト部の前記第4端部と前記第4のダクト部の前記第7端部とを接続する第2コーナー接続部とを更に備えている。前記第2コーナー接続部には、前記第2コーナー接続部内の空気を前記試験室内に流出させる第2コーナー開口部を設けることができる。
【0024】
この構成によれば、空気調和機から相対的に遠い第2コーナー接続部に第2コーナー開口部が設けられているので、温度調節された空気を空気調和機から遠い箇所にも供給することができ、試験室の温度分布を均一化することができる。
【0025】
第7の開示では、前記第1コーナー接続部には、前記第1コーナー接続部内の空気を前記試験室内に流出させる第1コーナー開口部が設けられている。前記第2コーナー開口部の開口面積は、前記第1コーナー開口部の開口面積よりも大きく設定することができる。
【0026】
この構成によれば、空気調和機に相対的に近い第1コーナー接続部に第1コーナー開口部が設けられているので、試験室の広い範囲に温度調節された空気が供給される。この場合に、空気調和機から相対的に遠い第2コーナー開口部の開口面積が第1コーナー開口部の開口面積よりも大きいので、温度調節された空気を空気調和機から遠い箇所に確実に供給することができる。
【0027】
第8の開示では、前記第1のダクト部は、複数の第1モジュールが長手方向に接続されることによって構成されている。
【0028】
この構成によれば、複数の第1モジュールを組み合わせることによって第1のダクト部を構成することができる。第1モジュールは必要に応じて所望長さに切断して使用することもできる。
【0029】
第9の開示では、前記第4のダクト部は、複数の第2モジュールが長手方向に接続されることによって構成されている。
【0030】
この構成によれば、複数の第2モジュールを組み合わせることによって第4のダクト部を構成することができる。第2モジュールは必要に応じて所望長さに切断して使用することもできる。
【0031】
第10の開示では、環境試験装置は、前記試験室の外側における前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のいずれかの壁に対応する前記断熱材近傍に設置され、前記試験室内の空気を吸い込む第1吸い込み部と、前記第1吸い込み部から吸い込んだ空気の一部または全部に対して加熱と冷却の少なくとも一方を行う第1温度調整部と、前記第1温度調整部で加熱と冷却の少なくとも一方が行われた空気を吹き出す吹き出し部とを備える第1空気調和機と、前記試験室の外側における前記正面壁、背面壁及び一対の側面壁のいずれかの壁に対応する前記断熱材近傍において前記第1空気調和機から離れて設置され、前記試験室内の空気を吸い込む第2吸い込み部と、前記第2吸い込み部から吸い込んだ空気の一部または全部に対して加熱と冷却の少なくとも一方を行う第2温度調整部と、前記第2温度調整部で加熱と冷却の少なくとも一方が行われた空気を吹き出す吹き出し部とを備える第2空気調和機とを備えている。
【0032】
さらに、環境試験装置は、前記第1空気調和機が設置された壁に設けられ、前記第1空気調和機の前記吹き出し部に一端部が接続され、前記第1吹き出し部から流入した空気を他端部から吹き出す第1接続ダクト部と、前記第2空気調和機が設置された壁に設けられ、前記第2空気調和機の前記吹き出し部に一端部が接続され、前記第2吹き出し部から流入した空気を他端部から吹き出す第2接続ダクト部と、前記試験室の内側において前記正面壁から一方の側面壁を経て背面壁の中間部まで延びた後、前記正面壁まで延びるように形成されるとともに、当該延びる方向の中間部に前記第1接続ダクト部の他端部が接続されており、前記第1接続ダクト部との接続箇所に近接する部分の空気流れ方向に直交する断面積が、前記第1接続ダクト部との接続箇所と対向する部分の空気流れ方向に直交する断面積よりも大きく設定された第1ループ状室内ダクト部と、前記試験室の内側において前記正面壁から他方の側面壁を経て背面壁の中間部まで延びた後、前記正面壁まで延びるように形成されるとともに、当該延びる方向の中間部に前記第2接続ダクト部の他端部が接続されており、前記第2接続ダクト部との接続箇所に近接する部分の空気流れ方向に直交する断面積が、前記第2接続ダクト部との接続箇所と対向する部分の空気流れ方向に直交する断面積よりも大きく設定された第2ループ状室内ダクト部と、前記第1ループ状室内ダクト部の延びる方向に互いに間隔をあけて設けられ、前記第1ループ状室内ダクト部内の空気を前記試験室内に流出させる複数の第1流出口と、前記第2ループ状室内ダクト部の延びる方向に互いに間隔をあけて設けられ、前記第2ループ状室内ダクト部内の空気を前記試験室内に流出させる複数の第2流出口とを備えている。
【0033】
この構成によれば、試験室の広さに対応するように第1空気調和機と第2空気調和機を設けることができる。第1空気調和機の第1温度調整部によって温度調節された空気が第1吹き出し部から吹き出すと、第1接続ダクト部から第1ループ状室内ダクト部に流入して互いに反対方向に向けて流れる。このとき、第1室内ダクト部における第1接続ダクト部との接続部分近傍の断面積が、第1接続ダクト部との接続部分と対向する部分の断面積よりも大きいので、温度調節された空気が第1接続ダクト部から離れた部分に流れ易くすることができる。これにより、第1接続ダクト部が接続された部分だけでなく、そこから離れた部分にも温度調節された空気を供給することができる。
【0034】
また、第2空気調和機の第2温度調整部によって温度調節された空気が第2吹き出し部から吹き出すと、第2接続ダクト部から第2ループ状室内ダクト部に流入して互いに反対方向に向けて流れる。このときも温度調節された空気が第2接続ダクト部から離れた部分に流れ易くなる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本開示によれば、試験室の内側に設けられるダクト部の断面積を適切に設定することで、人の出入りが可能な大型の試験室内における空調風の分配を広い範囲で均一に近づけて試験環境を最適化できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施形態に係る環境試験装置を上方から見た斜視図である。
【
図2】空気調和機の設置位置の別の例を示す
図1相当図である。
【
図5】環境試験装置の空気の流れを示すブロック図である。
【
図6】別の構造例に係る空気調和機内の空気の流れを説明する模式図である。
【
図7】従来例に係る環境試験装置を建物内に設置した状態を示す模式図である。
【
図8】実施形態に係る室内ダクト部を示す
図2相当図である。
【
図9】空気調和機を左寄りに設置した場合の
図8相当図である。
【
図10】分流調整部を接続ダクト部の内部に配設した場合を説明する図である。
【
図11】接続ダクト部の内部に配設した分流調整部の角度調整構造の一例を説明する図である。
【
図12】分流調整部を正面側室内ダクト部の内部に配設した場合を説明する図である。
【
図13】正面側室内ダクト部の内部に配設した分流調整部の角度調整構造の一例を説明する図である。
【
図15】第1ダクト構成部材を使用して形成した正面側室内ダクト部の断面図である。
【
図17】第2ダクト構成部材を使用して形成した正面側室内ダクト部の断面図である。
【
図18】第2ダクト構成部材の向きを変えて形成した正面側室内ダクト部の断面図である。
【
図20】第3ダクト構成部材を使用して形成した正面側室内ダクト部の断面図である。
【
図21】室内ダクト部を複数のモジュールで構成した例を示す図である。
【
図23A】第1モジュールの空気流れ方向に直交する断面図である。
【
図23B】第2モジュールの空気流れ方向に直交する断面図である。
【
図24】正面側室内ダクト部の断面積を拡大した例を示す
図8相当図である。
【
図25】正面側室内ダクト部と左側室内ダクト部との接続構造を示す斜視図である。
【
図26】正面側室内ダクト部と左側室内ダクト部との接続構造の別の例を示す斜視図である。
【
図27】空気調和機を2台設置した例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0038】
図1は、本発明の実施形態に係る環境試験装置1を上方から見た斜視図である。環境試験装置1は、例えば医薬品等の被試験物の長期保存時の安定性を評価するための安定性試験を可能にする装置である。安定性試験は、被試験体が置かれる環境の環境パラメータを一定に保った状態で所定期間保持し、その後、被試験体の変化の有無を測定する試験であり、環境試験とも呼ばれている。試験時の環境パラメータとしては、少なくとも試験室2内の温度(気温)が含まれており、必要に応じて試験室2内の湿度も環境パラメータに含まれる。
【0039】
環境試験装置1は、被試験物が収容される試験室2と、空気調和機6とを備えている。試験室2は、人の出入りが可能な大きさであり、例えば幅、奥行がそれぞれ数m以上、高さが1.5m以上の大型の試験室である。このような人の出入りが可能な試験室2をウォークインチャンバーと呼ぶことができる。
【0040】
試験室2は、天井20、正面壁21、背面壁22、右側面壁23、左側面壁24及び床25を備えている。この実施形態の説明では、各図に示すように、手前側を正面側、奥側を背面側、手前から見たときに右となる側を右側、手前から見たときに左となる側を左側と定義するが、これは説明の便宜を図るためだけであり、実際の使用時の方向を限定するものではない。試験室2の幅方向を左右方向とすることができる。
【0041】
正面壁21は、床25の正面側の縁部から鉛直かつ左右に延びる断熱材で構成されている。背面壁22は、床25の背面側の縁部から鉛直かつ左右に延びる断熱材で構成されており、正面壁21と略平行である。右側面壁23は、床25の右縁部から鉛直かつ奥行方向に延びる断熱材で構成されている。左側面壁24は、床25の左縁部から鉛直かつ奥行方向に延びる断熱材で構成されており、右側面壁23と略平行である。右側面壁23及び左側面壁24は、一対の側面壁である。
【0042】
正面壁21を第1の壁とし、右側面壁23を第2の壁とし、左側面壁24を第3の壁とし、背面壁22を第4の壁とすることができる。この場合、正面壁21の幅方向及び背面壁22の幅方向は試験室2の左右方向であり、右側面壁23の幅方向及び左側面壁24の幅方向は試験室2の奥行方向である。右側面壁23は、正面壁21の幅方向の一端部(右端部)に正面壁21に直交して接続される。また、左側面壁24は、正面壁21の幅方向の他端部(左端部)に正面壁21に直交して接続される。背面壁22は、右側面壁23の幅方向の他端部(奥側の端部)及び左側面壁24の幅方向の他端部(奥側の端部)に接続されて右側面壁23及び左側面壁24に直交している。
【0043】
また、天井20は、正面壁21の上縁部から背面壁22の上縁部まで延びるとともに、右側面壁23の上縁部から左側面壁24の上縁部まで延びており、断熱材で構成されている。床25は、断熱材で構成されていてもよいし、断熱材以外の部材で構成されていてもよい。上記断熱材は周知の部材であり、多層構造のものであってもよい。
【0044】
試験室2は、天井20、正面壁21、背面壁22、右側面壁23、左側面壁24及び床25によって閉空間とされている。環境試験装置1は、試験室2内の少なくとも温度を含む環境パラメータを一定に保つことで上記環境試験を行うことが可能になっている。この実施形態では、環境パラメータとして湿度も含まれており、よって、環境試験装置1は、湿度も一定に保つことができようになっているが、湿度の制御が行わなくてもよい。
【0045】
尚、温度や湿度を「一定に保つ」とは、厳密に1つの値に保ってもよいが、本実施形態では、ある許容範囲内に保つことも「一定に保つ」ものとする。例えば、温度の場合の一例を示すと、20℃を中央値としてプラスマイナス3℃の許容範囲が設定されている場合、17℃~23℃の範囲内に温度を保つことも一定に保つことの一例である。湿度の場合も同様である。
【0046】
図1に示す形態では、試験室2の正面壁21における左寄りの部分に試験室2への入室及び退室用の扉部26が設けられている。図示しないが、扉部26は、正面壁21の右寄りの部分、左右方向中央部に設けてもよい。また、背面壁22、右側面壁23及び左側面壁24のいずれかに扉部26が設けられていてもよい。この場合も各壁22、23、24の中央部に扉部26が設けられていてもよいし、どちら側かに偏位した部分に扉部26が設けられていてもよい。また、正面壁21、背面壁22、右側面壁23及び左側面壁24のうち、2以上の壁に扉部26が設けられていてもよい。
【0047】
正面壁21には、扉部26によって開閉される開口21a(
図1にのみ破線で示す)が形成されている。この開口21aは人の出入りが容易に行えるように大きな開口となっている。開口21aから被試験物の出し入れも可能である。扉部26は、閉状態で密閉可能なシール構造を有している。
【0048】
空気調和機6は、試験室2の外側における正面壁21、背面壁22、右側面壁23及び左側面壁24のいずれかの壁に対応する断熱材近傍に設置されている。いずれかの壁に対応する断熱材近傍とは、例えば試験室2の外側に対応する壁に隣接していることを意味する。
図1に示す形態では、試験室2が左右方向に比べて奥行方向に長い形状となっており、空気調和機6が試験室2の外側における右側面壁23に対応する断熱材近傍に設置されている。
図2に示す形態では、試験室2が左右方向に比べて奥行方向に短い形状となっており、空気調和機6が試験室2の外側における正面壁21に対応する断熱材近傍に設置されている。空気調和機6は、試験室2の外側における背面壁22に対応する断熱材近傍に設置されていてもよいし、試験室2の外側における左側面壁24に対応する断熱材近傍に設置されていてもよい。
【0049】
図3に空気調和機6の一例を示すように、空気調和機6は、試験室2内の空気を吸い込む吸い込み口(吸い込み部)60と、湿度調整部61と、温度調整部62と、送風ファン63と、試験室2内へ空気を吹き出す吹き出し口(吹き出し部)64とを備えている。空気調和機6の内部の空気の流れは
図5に示す通りである。さらに、
図4に示すように、空気調和機6は、各部を制御する制御部70も備えている。
【0050】
図3に示すように、湿度調整部61、温度調整部62及び送風ファン63は、空気調和機6が有する筐体65に収容されている。吸い込み口60は、筐体65の背面側の下部に位置しており、試験室2の壁を貫通して当該試験室2の下部に連通している。湿度調整部61は、吸い込み口60から吸い込んだ空気の一部または全部に対して加湿を行う部分であり、例えば水が供給される加湿皿61aと、加湿皿61a内の水を加熱蒸発させるシーズヒータ61bとを備えている。
図4に示すように、湿度調整部61のシーズヒータ61bは制御部70によって制御される。これにより、湿度調整部61による加湿能力が調整される。
【0051】
加湿皿61aには、図示しない水タンクから必要に応じて水が供給される。湿度調整部61の構成は上述した構成に限られるものではなく、他の方法で水を蒸散させて空気を加湿してもよいし、空気を除湿する除湿部を有していてもよい。除湿部は、例えばデシカント方式の除湿機で構成することができる。
【0052】
温度調整部62は、吸い込み口60から吸い込んだ空気の一部または全部に対して加熱と冷却の少なくとも一方を行う部分である。この実施形態の温度調整部62は、加熱と冷却の両方を行うことが可能に構成されているが、加熱のみ、または冷却のみ行うことが可能に構成されていてもよい。
【0053】
温度調整部62は、筐体65内の空気通路に配設される冷却器62aと加熱器62bとを備えている。冷却器62aは、例えば冷凍サイクル装置67(
図4に示す)の蒸発器で構成することができる。すなわち、空気調和機6は、図示しないが、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮器から流出した冷媒を減圧する膨張弁、及び上記冷却器62aとなる蒸発器とを有する冷凍サイクル装置67を備えている。冷凍サイクル装置67では、膨張弁を通過して減圧された冷媒が冷却器62aに流入して外部の空気から吸熱することによって空気を冷却することができる。冷却器62aから流出した冷媒が再度圧縮機に吸入される。冷凍サイクル装置67は、制御部70によって制御され、冷却器62aによる冷却能力を周知の手法によって調整することができる。尚、空気は冷却器62aを通過する際に除湿されるので、冷却器62aを除湿器と呼ぶこともできる。
【0054】
加熱器62bは、電気式ヒータ等で構成されており、制御部70によって制御される。これにより、加熱器62bによる加熱能力が調整されて所望温度の空気を生成できる。
【0055】
送風ファン63は、例えば遠心式ファン等で構成することができる。送風ファン63は、
図4に示すファンモータ63aによって駆動される。送風ファン63が回転すると、空気が吸い込み口60から吸い込まれて筐体65内の空気通路を流れて吹き出し口64から吹き出される。ファンモータ63aは制御部70によって制御され、送風量が調整される。送風ファン63の位置は特に限定されるものではなく、下であってもよい。
【0056】
図4に示すように、環境試験装置1は、試験室2内の所定箇所に設けられるセンサ(計測部)71を備えている。センサ71は、上記所定箇所における風速、圧力及び温度の少なくとも1つを計測するものであり、所定箇所の風速を計測する場合には風速センサ、所定箇所の空気の圧力を検出する場合には圧力センサ、所定箇所の空気の温度を検出する場合には温度センサで構成することができる。センサ71は、風速、圧力及び温度の全てを検出してもよいし、任意の1つまたは2つを測定してもよい。また、測定する項目に応じてセンサ71の数を変更することもできる。センサ71は、試験室2内の複数箇所にそれぞれ設置してもよい。
【0057】
制御部70には、センサ71が接続されており、センサ71の出力信号が制御部70に入力されるようになっている。センサ71で計測された風速、圧力及び温度の少なくとも1つの情報は、センサ71からの出力信号として制御部70に入力され、制御部70による空気温度及び湿度の調整制御に使用される。センサ71で計測された値は、例えば制御部70が有する記憶領域や別体の記憶装置(図示せず)に記憶させておくこともできる。
【0058】
また、環境試験装置1は、空気温度及び湿度の制御目標値となる環境パラメータを入力する操作調整部(入力部)72と、試験室2内の環境パラメータを表示可能な表示部73とを備えている。表示部73は、例えば液晶表示部等で構成されており、制御部70に接続されている。表示部73には、環境パラメータの入力値や、所定期間内における環境パラメータの変化等を表示させることができる。
【0059】
操作調整部72は、例えば感圧式のタッチ操作部等で構成することができる。表示部73上に表示されたボタン等の操作が操作調整部72によって検出され、その検出結果が制御部70に入力される。尚、操作調整部72の代わりに、押動操作可能なボタン等を設けてもよい。操作調整部72及び表示部73は、空気調和機6に設けてもよいし、試験室2から離れた所に設けることもできる。
【0060】
操作調整部72の操作により、環境パラメータの設定が可能である。例えば、試験室2内の温度及び湿度を操作調整部72の操作によって設定すると、制御部70は設定値(設定範囲)を受け付ける。制御部70は、センサ71の計測結果が設定値となるように、湿度調整部61、冷凍サイクル装置67、加熱器62b及びファンモータ63aを制御する。この制御アルゴリズムは従来から周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
図6は、別の構造例に係る空気調和機6の構成及び空気調和機6内の空気の流れを説明する模式図である。
図6の右側に吸い込み口60と、吹き出し口64とを示している。送風ファン63が回転すると、試験室2内の空気が吹き出し口64から筐体65内の空気通路に吸い込まれる。
図6中、2つのA部は同じ空間を示しており、また2つのB部は同じ空間を示している。吸い込み口60から吸い込まれた空気は、第1連通孔65aを流通して冷却器62a及び加熱器62bが配設されている第1空間R1に流入する。この第1空間R1で空気が必要に応じて加熱乃至冷却される。このとき、空気を冷却する過程で除湿も行われる。尚、冷却器62aにはファン62cが設けられている。このファン62cにより、空気を冷却器62aへ強制的に送ることができる。冷却器62aは複数設けることができる。ファン62cは省略してもよい。
【0062】
第1空間R1内の空気は、第2連通孔65bを流通して湿度調整部61が配設されている第2空間R2に流入する。この第2空間R2で空気が必要に応じて加湿される。また、第1空間R1内の空気は、第3連通孔65cを流通してA部、即ち送風ファン63が配設されている空間にも流入可能になっている。
【0063】
第2空間R2には、補助ヒータ62dも配設されている。
図4に示すように、補助ヒータ62dは制御部70に接続されており、必要に応じて加熱能力を発揮するように制御される。第2空間R2内の空気は、第4連通孔65dを流通してB部に流入する。B部は、吹き出し口64に連通しているので、B部に流入した空気は吹き出し口64から吹き出す。
【0064】
(従来の環境試験装置の設置)
ここで、
図7に基づいて、従来の環境試験装置100を建物に設置する場合について説明する。
図7中、符号700は建物の天井を示しており、符号701は建物の床を示している。人の出入りが可能な大型の試験室200を有する環境試験装置100は、試験室200が複数の部材に分解された状態で既設の建物内に搬入されて床701の上で組み立てられる。また、空気調和機600は試験室200の外側に設置されている。従来の環境試験装置100は、空気調和機600から吹き出した空気を、試験室200の天井の上方に配設したダクト703を介して試験室200の内部に導入している。
【0065】
ところが、建物の天井高によっては、建物の天井700と試験室200の天井201との間隔を広く確保できない場合がある。ダクト703を天井201の上方に配設するためには、作業者が建物の天井700と試験室200の天井201との間に入り込んで作業を行う必要があるが、その間隔が広く確保できないということは、作業性が悪化するとともに、作業自体が困難なものになることがあった。
【0066】
(実施形態の構造)
これに対し、この実施形態では、
図8に示すように、環境試験装置1は、試験室2の内側に室内ダクト部30を備えている。
図8に示す例では、空気調和機6が正面壁21の左右方向中央部近傍に設置されている。試験室2の内側に設けられる室内ダクト部30は、正面壁21、右側面壁23、背面壁22、左側面壁24に沿って延びるように形成されており、試験室2の上部に位置付けられている。室内ダクト部30は、正面壁21、右側面壁23、背面壁22、左側面壁24に沿っていなくてもよく、正面壁21、右側面壁23、背面壁22、左側面壁24から離れた所に配置されていてもよい。室内ダクト部30の位置は試験室2の上部だけでなく、例えば試験室2の下部や上下方向中間部に位置付けられていてもよい。
【0067】
室内ダクト部30は、空気調和機6が設置された正面壁21の内側に沿って左右方向(正面壁21の幅方向)に延びる正面側室内ダクト部(第1のダクト部)31と、右側壁面23の内側に沿って奥行方向(右側壁面23の幅方向)に延びる右側室内ダクト部(第2のダクト部)32と、左側壁面24の内側に沿って奥行方向(左側壁面24の幅方向)に延びる左側室内ダクト部34(第3のダクト部)と、正面壁21と対向する背面壁22に沿って左右方向(背面壁22の幅方向)に延びる奥側室内ダクト部(第4のダクト部)33とを備えている。
【0068】
正面側室内ダクト部31は、正面壁21に沿っていなくてもよく、正面壁21から試験室2内に離れていてもよい。正面側室内ダクト部31は、正面壁21の右端部(幅方向一端部)に位置する第1端部31dと、正面壁21の左端部(幅方向他端部)に位置する第2端部31eとを有している。
【0069】
右側室内ダクト部32は、右側壁面23に沿っていなくてもよく、右側壁面23から試験室2内に離れていてもよい。右側室内ダクト部32は、右側壁面23の手前側端部(幅方向一端部)に位置する第2端部32dと、右側壁面23の奥側端部(幅方向他端部)に位置する第4端部32eとを有している。
【0070】
左側室内ダクト部34は、左側壁面24に沿っていなくてもよく、左側壁面24から試験室2内に離れていてもよい。左側室内ダクト部34は、左側壁面24の手前側端部(幅方向一端部)に位置する第5端部34dと、左側壁面24の奥側端部(幅方向他端部)に位置する第6端部34eとを有している。
【0071】
奥側室内ダクト部33は、背面壁22に沿っていなくてもよく、背面壁22から試験室2内に離れていてもよい。奥側室内ダクト部33は、背面壁22の右端部(幅方向一端部)に位置する第7端部33dと、背面壁22の左端部(幅方向他端部)に位置する第8端部33eとを有している。
【0072】
正面側室内ダクト部31の第1端部31dに、右側室内ダクト部32の第3端部32dが接続されている。また、正面側室内ダクト部31の第2端部31eに、左側室内ダクト部34の第5端部34dが接続されている。また、奥側室内ダクト部33の第7端部33dに、右側室内ダクト部32の第4端部32eが接続されている。さらに、奥側室内ダクト部33の第8端部33eに、左側室内ダクト部34の第6端部34eが接続されている。これにより、正面側室内ダクト部31、右側室内ダクト部32、左側室内ダクト部34及び奥側室内ダクト部33が1つのループ状の室内ダクト30を構成する。
【0073】
正面側室内ダクト部31には、正面側室内ダクト部31内の空気を試験室200内に流出させるための複数の正面側流出口31aが設けられている。複数の正面側流出口31aは、正面側室内ダクト部31の延びる方向である左右方向に互いに間隔をあけて配置されている。また、右側室内ダクト部32には、右側室内ダクト部32内の空気を試験室200内に流出させるための複数の右側流出口32aが設けられている。複数の右側流出口32aは、右側室内ダクト部32の延びる方向である奥行方向に互いに間隔をあけて配置されている。また、奥側室内ダクト部33には、奥側室内ダクト部33内の空気を試験室200内に流出させるための複数の奥側流出口33aが設けられている。複数の奥側流出口33aは、奥側室内ダクト部33の延びる方向である左右方向に互いに間隔をあけて配置されている。さらに、左側室内ダクト部34には、左側室内ダクト部34内の空気を試験室200内に流出させるための複数の左側流出口34aが設けられている。複数の左側流出口34aは、左側室内ダクト部34の延びる方向である奥行方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0074】
正面側流出口31a、右側流出口32a、奥側流出口33a及び左側流出口34aの形状は水平方向に長い形状とすることができるが、これに限らず上下方向に長い形状であってもよいし、例えば円形、楕円形等であってもよい。また、正面側流出口31a、右側流出口32a、奥側流出口33a及び左側流出口34aの数は、特に限定されるものではなく、2以上の任意の数にすることができる。
【0075】
正面側流出口31a、右側流出口32a、奥側流出口33a及び左側流出口34aは、室内ダクト部30内の空気を室内ダクト部30から試験室2内に向けて水平方向(第1の方向)に流出させる第1方向流出口である。一方、正面側室内ダクト部31には、正面側室内ダクト部31内の空気を正面側室内ダクト部31から試験室2内に向けて下方向(第1の方向とは異なる第2の方向)に流出させる正面側下方向流出口(第2方向流出口)31bを設けることができる。このように、流出口には、正面側流出口31aと、正面側下方向流出口31bとを含むことができる。正面側流出口31aと、正面側下方向流出口31bとの一方を設けてもよい。
【0076】
また、右側室内ダクト部32には、右側室内ダクト部32内の空気を右側室内ダクト部32から試験室2内に向けて下方向に流出させる右側下方向流出口32bを設けることができる。また、奥側室内ダクト部33には、奥側室内ダクト部33内の空気を奥側室内ダクト部33から試験室2内に向けて下方向に流出させる奥側下方向流出口33bを設けることができる。さらに、左側室内ダクト部34には、左側室内ダクト部34内の空気を左側室内ダクト部34から試験室2内に向けて下方向に流出させる左側下方向流出口34bを設けることができる。
【0077】
環境試験装置1は、空気調和機6から吹き出した空気を室内ダクト部30に流入させるための接続ダクト部35を備えている。接続ダクト部35は、試験室2の内側に設けることができ、正面壁21に接した状態で当該正面壁21に沿って上下方向に延びている。空気調和機6の吹き出し口64(
図3に示す)は、試験室2の正面壁21の下部近傍において試験室2内に向けて開口しており、この吹き出し口64に、接続ダクト部35の一端部である下端部が接続されている。一方、接続ダクト部35の他端部である上端部は、正面側室内ダクト部31の左右方向中間部に接続されている。これにより、空気調和機6から吹き出した空気が接続ダクト部35を介して正面側室内ダクト部31に流入可能になる。
【0078】
図9は、空気調和機6が正面壁21の右寄りに設置されている例である。この例においても、正面側室内ダクト部31、右側室内ダクト部32、奥側室内ダクト部33及び左側室内ダクト部34を設けることができる。接続ダクト部35の上端部は、正面側室内ダクト部31の右寄りの部分に接続されているが、その接続箇所は、正面側室内ダクト部31の左右方向中間部に相当する。
【0079】
図10に示すように、環境試験装置1は、接続ダクト部35の内部に設けられた分流調整部40を備えている。
図10に示す例では、接続ダクト部35が上下方向に延びる筒状(内部に空間を有する閉断面形状)をなしている。一方、正面側室内ダクト部31の左右方向中間部には、左右方向に延びる筒状の接続部36が設けられている。この接続部36は、正面側室内ダクト部31の一部を構成する部材である。接続部36の左右方向中間部は下方へ突出するように形成されており、その下端面には、接続口36aが形成されている。接続口36aに接続ダクト部35の上端部が接続されている。
【0080】
分流調整部40は、空気調和機6から接続ダクト部35を介して正面側室内ダクト部31に流入した空気を互いに反対方向に向けて流れるように分流する部分である。すなわち、正面側室内ダクト部31が左右方向に延びていて、その左右方向中間部に接続ダクト部35が接続されているので、分流調整部40は、正面側室内ダクト部31に流入した空気を左方向及び右方向、即ち、正面壁21の幅方向一方及び他方に分流する。
【0081】
このような分流を可能にする分流調整部40としては、例えば板状の部材を挙げることができる。板状の部材からなる分流調整部40は、接続ダクト部35の内部において左右方向中間部に配設されており、上下方向及び奥行方向に延びる姿勢とされている。接続ダクト部35の内部に分流調整部40が位置していることで、分流調整部40よりも右側を流れる空気が正面側室内ダクト部31の右方向へ流れ易くなり、分流調整部40よりも左側を流れる空気が正面側室内ダクト部31の左方向へ流れ易くなる。
【0082】
分流調整部40は、正面側室内ダクト部31の右方向(一方)に流れる空気量と、左方向(他方)に流れる空気量の比率を調整可能な部材でもある。例えば、分流調整部40を接続ダクト部35の内部において右寄りに配置すると、分流調整部40よりも左側の通路が広がるので、正面側室内ダクト部31の左方向に流れる空気量が右方向に流れる空気量よりも多くなる。反対に配置すれば、正面側室内ダクト部31の右方向に流れる空気量が左方向に流れる空気量よりも多くなる。
【0083】
また、分流調整部40を傾けることによっても左右の空気量の比率を調整できる。分流調整部40が上に行くほど右に位置するように傾斜させると、空気が分流調整部40によって右へ案内されるので、正面側室内ダクト部31の右方向に流れる空気量が左方向に流れる空気量よりも多くなる。反対に傾斜させれば、正面側室内ダクト部31の左方向に流れる空気量が右方向に流れる空気量よりも多くなる。
【0084】
分流調整部40の左右方向の位置、傾斜角度は任意に設定することができる。正面側室内ダクト部31から右方向へ流れて右側室内ダクト部32を経て奥側室内ダクト部33に達する空気量(右回りで流れる空気量)と、正面側室内ダクト部31から左方向へ流れて左側室内ダクト部34を経て奥側室内ダクト部33に達する空気量(左回りで流れる空気量)とが略等しくなるように、分流調整部40の左右方向の位置及び傾斜角度を設定する。
【0085】
例えば、
図8に示す実施形態では、正面側室内ダクト部31から右側室内ダクト部32を経て奥側室内ダクト部33に達する通路長と、正面側室内ダクト部31から左側室内ダクト部34を経て奥側室内ダクト部33に達する通路長とが略等しいので、分流調整部40を左右方向中央部に配置して鉛直方向に延びる姿勢とすることで、右回りで流れる空気量と、左回りで流れる空気量とが等しくなり、右回りで流れる空気と、左回りで流れる空気とが奥側室内ダクト部33の左右方向中央部近傍で合流する。よって、試験室2の各部に空気を供給できる。
【0086】
一方、
図9に示す例では、空気調和機6が右寄りに設置されているので、正面側室内ダクト部31から右側室内ダクト部32へ至るコーナー部C1が、正面側室内ダクト部31から左側室内ダクト部34へ至るコーナー部C2に比べて接続ダクト部35に近い。このようなレイアウトの場合、接続ダクト部35からコーナー部C1までの距離がコーナー部C2よりも短い右回りの流れの方が、通風抵抗が大きくなる。この通風抵抗の差を考慮して、分流調整部40の位置及び傾斜角度を設定する。具体的には、分流調整部40を接続ダクト部35の左寄りに配置するか、分流調整部40を上に行くほど右に位置するように傾斜させる。これにより、通風抵抗が相対的に大きな右回りへの空気量が多くなるので、右回りに流れる空気量を確保できる。
【0087】
図11は、分流調整部40の傾斜角度を調整する構造の一例を示している。接続ダクト部35を構成する縦板部材35aには、左下貫通孔35b、左上貫通孔35c、右上貫通孔35d及び右下貫通孔35eが形成されている。右上貫通孔35d及び右下貫通孔35eは、左右方向に長い円弧状をなしている。一方、分流調整部40には、縦板部材35aと重なるように配置される固定板40aが設けられており、固定板40aと分流調整部40とは一体化されている。固定板40aには、縦板部材35aと同様に、左下貫通孔40b、左上貫通孔40c、右上貫通孔40d及び右下貫通孔40eが形成されている。左上貫通孔40cは左右方向に長い円弧状をなしている。
【0088】
縦板部材35aの左下貫通孔35bと、固定板40aの左下貫通孔40bをボルト及びナットのような締結部材によって締結することができる。同様に、縦板部材35aの左上貫通孔35cと、固定板40aの左上貫通孔40cを締結することができ、また、縦板部材35aの右上貫通孔35dと、固定板40aの右上貫通孔40dを締結することができ、また、縦板部材35aの右下貫通孔35eと、固定板40aの右下貫通孔40eを締結することができる。
【0089】
右上貫通孔35d、右下貫通孔35e及び左上貫通孔40cが左右方向に長い円弧状をなしているので、締結部材を緩めると、分流調整部40を左下貫通孔40b回りに傾動させることができる。分流調整部40が所定の傾斜角度になった段階で締結部材によって固定板40aを縦板部材35aに締結することにより、分流調整部40を所定の傾斜角度で保持できる。
【0090】
図12は、分流調整部40を正面側室内ダクト部31の内部に配設した例を示す図である。分流調整部40は、正面側室内ダクト部31の一部である接続部36の内部に配設することができる。分流調整部40による分流の原理及び作用効果は、接続ダクト部35に配設した場合と同様である。
【0091】
図13は、正面側室内ダクト部31の内部に配設した分流調整部40の傾斜角度調整構造を示す図である。接続部36の奥側の壁部には、左下貫通孔36b、左上貫通孔36c、右上貫通孔36d及び右下貫通孔36eが形成されている。右上貫通孔36d及び右下貫通孔36eは左右方向に長い円弧状である。接続部36の左下貫通孔36bと、固定板40aの左下貫通孔40bを締結部材によって締結することができ、また、接続部36の左上貫通孔36cと、固定板40aの左上貫通孔40cを締結することができ、また、接続部36の右上貫通孔36dと、固定板40aの右上貫通孔40dを締結することができ、また、接続部36の右下貫通孔36eと、固定板40aの右下貫通孔40eを締結することができる。この場合も分流調整部40を任意の角度に調整することができる。
【0092】
(分流調整部40の駆動構造)
分流調整部40は上述したように固定されていてもよいし、試験室2の状況に応じて自動で動かすようにしてもよい。分流調整部40を自動で動かす場合には、環境試験装置1に、
図4に示す駆動部78を設ければよい。駆動部78は、例えばサーボモータ、各種アクチュエータ等で構成されており、制御部70によって制御される。駆動部78の出力部を分流調整部40に連結しておくことで、分流調整部40の傾斜角度の変更や左右方向の位置変更を行うことができる。つまり、分流調整部40を駆動部78によって駆動することで右方向に流れる空気量と左方向に流れる空気量の比率を変更したり、調整することができる。
【0093】
分流調整部40の自動調整の際には、
図4に示すセンサ71の出力信号を利用することができる。センサ71は、試験室2内、室内ダクト部30内及び流出口31a、32a、33a、34a近傍の少なくとも1箇所に設けることができる。
【0094】
制御部70は、センサ71で計測された風速、圧力及び温度の少なくとも1つに基づいて、室内ダクト部30に流入した空気の分流状態が試験室2の全体の温度を均一化する分流状態となるように分流調整部40を駆動部78によって駆動させる。すなわち、センサ71を設けていることで、試験室2内、室内ダクト部30内及び流出口31a、32a、33a、34a近傍の少なくとも1箇所において、風速、圧力及び温度の少なくとも1つの情報を取得することができる。風速、圧力及び温度の少なくとも1つの情報に基づくことで、試験室2の全体の温度を均一化できる状態であるか否かを推定することができる。例えば、試験室2の右領域に供給される空気量が左領域に比べて少なければ、試験室2の右領域に供給される空気量が増えるように、駆動部78によって分流調整部40を駆動する。例えば試験室2の左右両側に圧力センサや風速センサを設けておくことで、試験室2の右領域に供給される空気量と左領域に供給される空気量とを差を取得できる。また、試験室2の右領域の温度が左領域に比べて高ければ、試験室2の右領域に供給される低温の空気量が増えるように、駆動部78によって分流調整部40を駆動する。このように、室内ダクト部30に流入した空気の分流状態が試験室2の全体の温度を均一化する分流状態となるように分流調整部40を駆動することで、右方向に流れる空気量と左方向に流れる空気量を最適な比率にすることができる。
【0095】
(室内ダクト部30の構成部材)
室内ダクト部30の一部は、例えば
図14に示す第1ダクト構成部材90で構成することができる。第1ダクト構成部材90は、例えば金属材や樹脂材等で構成されており、底板部90aと、縦板部90bとで構成されている。底板部90aの縁部には上方へ延びる底部側フランジ90cが形成されている。縦板部90bの上縁部には上部フランジ90dが形成されている。また、縦板部90bには、流出口となるスリット90eが形成されている。
図15に示すように、第1ダクト構成部材90を天井20及び正面壁21に固定することで、正面側室内ダクト部31を得ることができる。つまり、正面側室内ダクト部31は、第1ダクト構成部材90と、天井20の一部と、正面壁21の一部とで囲まれた空気通路Sを有する部分である。同様に、第1ダクト構成部材90を用いて、右側室内ダクト部32、奥側室内ダクト部33及び左側室内ダクト部34を構成することができる。
【0096】
図16は、第2ダクト構成部材91を示すものである。第2ダクト構成部材91は、第1板部91aと、第2板部91bと、第3板部91cとで構成されている。第1板部91aの縁部には第1フランジ91dが形成されている。第3板部91cの縁部には第2フランジ91eが形成されている。また、第2板部91bには、流出口となるスリット91fが形成されている。
図17に示すように、第2ダクト構成部材91を天井20及び正面壁21に固定することで、正面側室内ダクト部31を得ることができる。つまり、正面側室内ダクト部31は、第1ダクト構成部材90と、正面壁21の一部とで囲まれた空気通路Sを有する部分である。同様に、第2ダクト構成部材91を用いて、右側室内ダクト部32、奥側室内ダクト部33及び左側室内ダクト部34を構成することができる。
【0097】
また、第2ダクト構成部材91を
図18に示すように開放側が上に位置する姿勢で天井20及び正面壁21に固定することによっても、正面側室内ダクト部31を得ることができる。この場合、正面側室内ダクト部31は、第1ダクト構成部材90と、天井20の一部とで囲まれた空気通路Sを有する部分である。
【0098】
図19は、第3ダクト構成部材92を示すものである。第3ダクト構成部材92は、第1板部92aと、第2板部92bと、第3板部92cと、第4板部92dとを備えた筒状の部材で構成されている。第2板部92bには、流出口となるスリット92eが形成されている。
図20に示すように、第3ダクト構成部材92を天井20及び正面壁21に固定することで、正面側室内ダクト部31を得ることができる。この例では、正面側室内ダクト部31を第3ダクト構成部材92で構成することができ、この第3ダクト構成部材92の内部が空気通路Sとなる。
【0099】
図示しないが、上記第1ダクト構成部材90、第2ダクト構成部材91及び第3ダクト構成部材92に、空気通路Sの空気を下方へ流出させる流出口を設けることができる。
【0100】
(室内ダクト部を形成するモジュール)
室内ダクト部30は、複数の第1モジュールM1及び第2モジュールM2を使用して形成することもできる。室内ダクト部30の正面側室内ダクト部31は、空気調和機6が設置された正面壁21に沿って延びる空調機側ダクト部である。正面側室内ダクト部31は、複数の第1モジュールM1が長手方向に接続されることによって構成されている。
図22に示すように、第1モジュールM1は、
図14に示す第1ダクト構成部材90と同様な形状とされており、その長さは例えば1mである。第1モジュールM1は、
図16に示す第2ダクト構成部材91や、
図19に示す第3ダクト構成部材92のような形状にすることもできる。第1モジュールM1の長さは、1mに限られるものではなく、例えば0.5m~2mの間の任意の長さに設定することができる。
【0101】
正面側室内ダクト部31の長さによっては、第1モジュールM1の途中で切断して使用することもできる。
図21に示す例では、正面側室内ダクト部31の右端及び左端に配置される第1モジュールM1の長さは1m未満であり、例えば0.3mや0.4mの長さに切断した第1モジュールM1で構成されている。右側室内ダクト部32及び左側室内ダクト部34も第1モジュールM1が長手方向に接続されることによって構成されている。
【0102】
一方、奥側室内ダクト部33は、空気調和機6が設置された正面壁21と対向する背面壁22に沿って延びる対向ダクト部である。奥側室内ダクト部33は、第1モジュールM1とは異なる第2モジュールM2が長手方向に接続されることによって構成されている。第2モジュールM2は、
図14に示す第1ダクト構成部材90、
図16に示す第2ダクト構成部材91、
図19に示す第3ダクト構成部材92のような形状にすることができる。第2モジュールM2の長さは、第1モジュールM1の長さと同様に設定することができる。
【0103】
図23Aは、第1モジュールM1の空気流れ方向に直交する断面形状を示すものであり、
図23Bは、第2モジュールM2の空気流れ方向に直交する断面形状を示すものである。これら図に示すように、第1モジュールM1の空気流れ方向に直交する断面積は、第2モジュールM2の空気流れ方向に直交する断面積よりも大きく設定されている。具体的には、第1モジュールM1の高さ方向の寸法が第2モジュールM2の高さ方向の寸法よりも長く設定されている。また、第1モジュールM1の幅方向の寸法を第2モジュールM2の幅方向の寸法よりも長く設定してもよい。
【0104】
第1モジュールM1の断面積が相対的に大きくなっているということは、接続ダクト部35との接続箇所に近接する部分の空気流れ方向に直交する断面積が、接続ダクト部35との接続箇所と対向する部分の空気流れ方向に直交する断面積よりも大きく設定されることになる。すなわち、
図21に示すように、接続ダクト部35との接続箇所は、接続部36が設けられている箇所であり、この箇所に近接する部分は、相対的に断面積の大きな第1モジュールM1で構成されている。一方、接続ダクト部35との接続箇所(接続部36)と対向する部分は、奥側室内ダクト部33であり、この奥側室内ダクト部33は相対的に断面積の小さな第2モジュールM2で構成されている。これにより、正面側室内ダクト部31の空気流れ方向に直交する方向の断面積を大きくし、奥側室内ダクト部33の空気流れ方向に直交する方向の断面積を小さくすることができる。
【0105】
したがって、正面側室内ダクト部31における接続ダクト部35との接続箇所に近接する部分の断面積が奥側室内ダクト部33の断面積よりも大きいので、接続ダクト部35から室内ダクト部30に流入した空気を、正面側室内ダクト部31から離れた奥側室内ダクト部33に流れ易くすることができる。これにより、正面側室内ダクト部31だけでなく、そこから離れた奥側室内ダクト部33にも温度調節された空気を供給することができる。
【0106】
図21に示す形態では、正面側室内ダクト部31の右端部と、右側室内ダクト部32の手前側の端部とを接続する右手前コーナー接続部(第1コーナー接続部)95と、右側室内ダクト部32の奥側の端部と、奥側室内ダクト部33の右端部とを接続する右奥コーナー接続部(第2コーナー接続部)96とが設けられている。右手前コーナー接続部95及び右奥コーナー接続部96は、室内ダクト部30の一部である。さらに、正面側室内ダクト部31の左端部と、左側室内ダクト部34の手前側の端部とを接続する左手前コーナー接続部(第1コーナー接続部)97と、左側室内ダクト部34の奥側の端部と、奥側室内ダクト部33の左端部とを接続する左奥コーナー接続部(第2コーナー接続部)98とが設けられている。
【0107】
図24は、右側室内ダクト部32及び左側室内ダクト部34の空気流れ方向に直交する方向の断面積を奥側室内ダクト部33と同様に、正面側室内ダクト部31の断面積よりも小さくした例である。
図25に示すように、左手前コーナー接続部97により、正面側室内ダクト部31の左端部と、左側室内ダクト部34の手前側の端部とが接続されている。左手前コーナー接続部97は、正面側室内ダクト部31の底面から左側室内ダクト部34の底面まで延びる底壁部97aと、正面側室内ダクト部31の側面から左側室内ダクト部34の側面まで延びる側壁部97bとを備えている。底壁部97aは、正面側室内ダクト部31と左側室内ダクト部34との断面積の差(高さH1とH2との差)を吸収するために、左側室内ダクト部34に近づくほど上に位置するように傾斜した傾斜面97cを有している。右手前コーナー接続部95も同様に構成することができる。
【0108】
図26は、正面側室内ダクト部31と左側室内ダクト部34との接続構造の別の例を示すものである。この例では、正面側室内ダクト部31の幅W1が左側室内ダクト部34の幅W2よりも広く設定されている。底壁部97aは、正面側室内ダクト部31と左側室内ダクト部34との幅の差を吸収することができるように形成されている。
【0109】
図24に示すように、右奥コーナー接続部96には、右奥コーナー接続部96内の空気を試験室2内に流出させる右奥コーナー開口部(第2コーナー開口部)96dが形成されている。また、左奥コーナー接続部98には、左奥コーナー接続部98内の空気を試験室2内に流出させる左奥コーナー開口部98dが形成されている。
【0110】
また、右手前コーナー接続部95には、右手前コーナー接続部95内の空気を試験室2内に流出させる右手前コーナー開口部(第1コーナー開口部)95dが形成されている。また、左手前コーナー接続部97には、左手前コーナー接続部97内の空気を試験室2内に流出させる左手前コーナー開口部97dが形成されている。
【0111】
右奥コーナー開口部96dの合計の開口面積は、右手前コーナー開口部95dの合計の開口面積よりも大きく設定されている。同様に、左奥コーナー開口部98dの合計の開口面積は、左手前コーナー開口部97dの合計の開口面積よりも大きく設定されている。右手前コーナー開口部95d及び左手前コーナー開口部97dは、省略してもよい。また、右奥コーナー開口部96d及び左奥コーナー開口部98dは、それぞれ複数形成することができるが、1つであってもよい。また、右奥コーナー開口部96d及び左奥コーナー開口部98dの一部または全部を閉塞することによって空気の流出量を調整することができる。
【0112】
(空気調和機の複数台設置)
図27に示すように、1つの試験室2に対して第1空気調和機6及び第2空気調和機160を設置することができる。第2空気調和機160は、第1空気調和機6と同様に構成されている。第1空気調和機6及び第2空気調和機160は、環境試験装置1の一部である。
【0113】
試験室2の内側には、上記室内ダクト部30である第1ループ状室内ダクト部と、第2ループ状室内ダクト部130とが設けられている。第1ループ状室内ダクト部30は試験室2の左側に、第2ループ状室内ダクト部130は試験室2の右側にそれぞれ設けられている。第1ループ状室内ダクト部30及び第2ループ状室内ダクト部130は、環境試験装置1の一部である。
【0114】
第1ループ状室内ダクト部30は、正面壁21から左側面壁24を経て背面壁22の左右方向中間部まで延びた後、正面壁21まで延びるように形成されており、第1正面側室内ダクト部31、第1右側室内ダクト部32、第1左側室内ダクト部34及び第1奥側室内ダクト部33を備えている。第1ループ状室内ダクト部30には、複数の流出口(第1流出口)31a、32a、33a、34aが第1ループ状室内ダクト部30の延びる方向に互いに間隔をあけて設けられている。
【0115】
第2ループ状室内ダクト部130は、正面壁21から右側面壁23を経て背面壁22の中間部まで延びた後、正面壁21まで延びるように形成されており、第2正面側室内ダクト部131、第2右側室内ダクト部132、第2左側室内ダクト部134及び第2奥側室内ダクト部133を備えている。第2ループ状室内ダクト部130には、複数の流出口(第2流出口)131a、132a、133a、134aが第2ループ状室内ダクト部130の延びる方向に互いに間隔をあけて設けられている。
【0116】
第1ループ状室内ダクト部30の第1右側室内ダクト部32と、第2ループ状室内ダクト部130の第2左側室内ダクト部134とは左右方向に隣接している。第1右側室内ダクト部32と第2左側室内ダクト部134とを区画する区画壁150を設けることにより、1つのダクト構成部材を左右に区画することができる。これにより、第1右側室内ダクト部32及び第2左側室内ダクト部134を共通のダクト部材によって構成できる。尚、第1右側室内ダクト部32と第2左側室内ダクト部134とは左右方向に離れていてもよい。
【0117】
第1空気調和機6は、試験室2の外側における第1ループ状室内ダクト部30が設けられた側に対応するように設置されている。第1空気調和機6は、
図3等に示すように、第1吸い込み口(第1吸い込み部)60と、第1温度調整部62と、第1吹き出し口(第1吹き出し部)64とを備えている。
【0118】
また、第2空気調和機160は、試験室2の外側における第2ループ状室内ダクト部130が設けられた側に対応するように設置されている。第2空気調和機160は、図示しないが、第1空気調和機6と同様に、第2吸い込み口(第2吸い込み部)と、第2温度調整部と、第2吹き出し口(第2吹き出し部)とを備えている。
【0119】
第1空気調和機6には、第1接続ダクト部35が接続されている。第1接続ダクト部35の一端部は、第1空気調和機6の第1吹き出し口64に接続され、他端部は第1ループ状室内ダクト部30の延びる方向の中間部に設けられた第1接続部36に接続される。また、第2空気調和機160には、第2接続ダクト部135が接続されている。第2接続ダクト部135の一端部は、第2空気調和機160の第2吹き出し口に接続され、他端部は第2ループ状室内ダクト部130の延びる方向の中間部に設けられた第2接続部136に接続される。第1接続ダクト部35及び第2接続ダクト部135は、環境試験装置1の一部である。
【0120】
第1接続ダクト部35の内部には、第1分流調整部40が配設されている。第1分流調整部40は、第1ループ状室内ダクト部30に流入した空気を互いに反対方向に向けて流れるように分流するとともに、一方に流れる空気量と他方に流れる空気量の比率を調整する部材である。また、第2接続ダクト部135の内部には、第1分流調整部40と同様に構成された第2分流調整部140が配設されている。第2分流調整部140は、第2ループ状室内ダクト部130に流入した空気を互いに反対方向に向けて流れるように分流するとともに、一方に流れる空気量と他方に流れる空気量の比率を調整する部材である。第1分流調整部40及び第2分流調整部140による空気の分流作用及びそれによる効果は上述したとおりである。第1分流調整部40及び第2分流調整部140は、環境試験装置1の一部である。
【0121】
また、第1ループ状室内ダクト部30の第1正面側室内ダクト部31の空気流れ方向に直交する断面積は、第1奥側室内ダクト部33の空気流れ方向に直交する断面積よりも大きく設定されている。また、第2ループ状室内ダクト部130の第2正面側室内ダクト部131の空気流れ方向に直交する断面積は、第2奥側室内ダクト部133の空気流れ方向に直交する断面積よりも大きく設定されている。これにより、第1正面側室内ダクト部31及び第2正面側室内ダクト部131だけでなく、そこから離れた第1奥側室内ダクト部33及び第2奥側室内ダクト部133にも温度調節された空気を供給することができる。
【0122】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、試験室2が入室及び退室用の扉部26を備えているので、人の出入りが可能な大型の試験室2とすることができる。そして、複数の流出口31a、32a、33a、34aを有する室内ダクト部30が試験室2の内側において正面壁21、右側面壁23、背面壁22、左側面壁22に沿って延びているので、ダクト部を天井20の上方に配設する必要がなくなる。これにより、試験室2を導入する建物の天井と、試験室2の天井の間隔が狭くても試験室2の建物内への設置が容易に行える。
【0123】
環境試験装置1の設置後、空気調和機6によって温度調節された空気が接続ダクト部35を介して室内ダクト部30に流入した後、右方向及び左方向に向けて流れる。この室内ダクト部30は、試験室の正面壁21、右側面壁23、背面壁22、左側面壁22に沿って延びる長いものであるとともに、複数の流出口31a、32a、33a、34aが室内ダクト部30の延びる方向に互いに間隔をあけて設けられたものであるので、温度調節された空気が試験室2の広範囲に供給される。
【0124】
このとき、分流調整部40によって室内ダクト部30の右方向に流れる空気量と左方向に流れる空気量との比率を調整することができる。これにより、試験室2内における空調風の分配を広い範囲で均一に近づけて試験環境を最適化することができる。
【0125】
また、室内ダクト部30の正面側室内ダクト部31の断面積を奥側室内ダクト部33の断面積よりも大きく設定したので、接続ダクト部35が接続された部分だけでなく、そこから離れた部分にも温度調節された空気を供給することができる。このことによっても試験室2内における空調風の分配を広い範囲で均一に近づけて試験環境を最適化することができる。
【0126】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、正面側室内ダクト部31、右側室内ダクト部32、左側室内ダクト部34及び奥側室内ダクト部33の空気流れ方向に直交する断面積を全て同じにし、分流調整部40によって空気の分流を最適化してもよい。また、分流調整部40を省略し、正面側室内ダクト部31の断面積を奥側室内ダクト部33の断面積よりも大きく設定することによって空気の分流を最適化してもよい。
【0127】
(変形例1)
図28は、本発明の実施形態の変形例1を示すものである。変形例1では、奥側室内ダクト部33が、背面壁22の右端部から当該背面壁22の左右方向中間部まで延びており、左側室内ダクト部34まで達していない。奥側室内ダクト部33の左端部33eは、背面壁22の左右方向中央部近傍に位置していてもよいし、左右方向中央部よりも背面壁22の右端部寄りに位置していてもよいし、左右方向中央部よりも背面壁22の左端部寄りに位置していてもよい。
【0128】
(変形例2)
図29は、本発明の実施形態の変形例2を示すものである。変形例2では、奥側室内ダクト部33が、背面壁22の左端部から当該背面壁22の左右方向中間部まで延びており、右側室内ダクト部32まで達していない。奥側室内ダクト部33の右端部33dは、背面壁22の左右方向中央部近傍に位置していてもよいし、左右方向中央部よりも背面壁22の右端部寄りに位置していてもよいし、左右方向中央部よりも背面壁22の左端部寄りに位置していてもよい。
【0129】
(変形例3)
図30は、本発明の実施形態の変形例3を示すものである。変形例3では、室内ダクト部30が、右奥側ダクト部38と左奥側ダクト部39とを備えている。右奥側ダクト部38は、背面壁22の右端部から当該背面壁22の左右方向中間部まで延びており、本発明の第4のダクト部に相当する。右奥側ダクト部38の右端部38dは、本発明の第7端部であり、右奥側ダクト部38の右端部38dには、右側室内ダクト部32の第4端部32eが接続されている。右奥側ダクト部38には、流出口38a、38bが設けられている。
【0130】
左奥側ダクト部39は、背面壁22の左端部から当該背面壁22の左右方向中間部まで当該背面壁22の幅方向に延びており、本発明の第5のダクト部に相当する。左奥側ダクト部39の左端部39dは、本発明の第9端部であり、左奥側ダクト部39の左端部39dには、左側室内ダクト部34の第6端部34eが接続されている。左奥側ダクト部39には、流出口39a、39bが設けられている。
【0131】
右奥側ダクト部38の左端部38eと、左奥側ダクト部39の右端部39eとは、左右方向に間隔をあけて配置されている。右奥側ダクト部38の左端部38eと、左奥側ダクト部39の右端部39eとの間隔は、互いに接するくらいに狭くてもよい。尚、変形例3では、右奥側ダクト部38が本発明の第4のダクト部に相当し、左奥側ダクト部39が本発明の第5のダクト部に相当しているが、これに限らず、左奥側ダクト部39が本発明の第4のダクト部に相当し、右奥側ダクト部38が本発明の第5のダクト部に相当するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上説明したように、本発明に係る環境試験装置は、例えば医薬品の長期保存時の安定性を評価するための安定性試験を行う場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 環境試験装置
2 試験室
6 空気調和機
20 天井
21 正面壁(第1の壁)
22 背面壁(第2の壁)
23 右側面壁(第3の壁)
24 左側面壁(第4の壁)
26 扉部
30 室内ダクト部
31 正面側室内ダクト部(第1のダクト部)
31a 正面側流出口
31d 第1端部
31e 第2端部
32 右側室内ダクト部(第2のダクト部)
32a 右側流出口
32d 第3端部
32e 第4端部
33 奥側室内ダクト部(第4のダクト部)
33a 奥側流出口
33d 第7端部
33e 第8端部
34 左側室内ダクト部(第3のダクト部)
34a 左側流出口
34d 第5端部
34e 第6端部
35 接続ダクト部
39 左奥側ダクト部(第5のダクト部)
39d 左端部(第9端部)
40 分流調整部
60 吸い込み口(吸い込み部)
61 湿度調整部
62 温度調節部
64 吹き出し口(吹き出し部)
70 制御部
71 センサ(計測部)
78 駆動部
95 右手前コーナー接続部(第1コーナー接続部)
95d 右手前コーナー開口部(第1コーナー開口部)
96 右奥コーナー接続部(第2コーナー接続部)
96d 右奥コーナー開口部(第2コーナー開口部)
M1 第1モジュール
M2 第2モジュール