(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065899
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】吹付工法用装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20220421BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20220421BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20220421BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
E04G21/02 103B
E04G23/02 C
E21D11/10 D
B05B7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174695
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】長井 義徳
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 昌範
【テーマコード(参考)】
2D155
2E172
2E176
4F033
【Fターム(参考)】
2D155DB03
2E172AA06
2E172AA07
2E172DC03
2E172DC06
2E172DC08
2E172DC13
2E176AA01
2E176BB05
2E176BB29
4F033QA01
4F033QB03Y
4F033QB09X
4F033QB15Y
4F033QB20
4F033QD02
4F033QD15
4F033QE06
4F033QF07X
4F033QF07Y
(57)【要約】 (修正有)
【課題】材料が十分に混練され、吹付時の粉塵発生量が少なく、且つ、ホースやノズルにモルタルの付着が少なく、連続圧送性に優れる吹付工法用装置を提供する。
【解決手段】吹付材料供給部10から順に、材料輸送ホース20と、液体供給部材30と、混練用ホース60と、混練部材70と、吐出口を有する吹付ノズル80と、が接続され、液体供給部材30から吐出口までの長さが、65~210cmであり、混練部材70が、混練部材70の両端部の内径よりも混練部材70の内部の最大内径の方が大径である、吹付工法用装置100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付材料供給部から順に、材料輸送ホースと、液体供給部材と、混練用ホースと、混練部材と、吐出口を有する吹付ノズルと、が接続され、
前記液体供給部材から前記吐出口までの長さが、65~210cmであり、
前記混練部材が、該混練部材の両端部の内径のよりも該混練部材の内部の最大内径の方が大径である、吹付工法用装置。
【請求項2】
前記混練用ホースの長さが、30~180cmである、請求項1に記載の吹付工法用装置。
【請求項3】
前記混連部材が、複数の混練部材が連結してなる、請求項1又は2に記載の吹付工法用装置。
【請求項4】
前記吹付ノズルの長さが、10~50cmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の吹付工法用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付工法用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の劣化に伴い、それらの補修や改修工事が様々な方法によってなされている。中でも乾式吹付による補修は、長距離圧送性に優れ、日当たり施工量が大きく、トンネルや橋梁関係等の断面修復の大きい箇所に幅広く施工され、利用されている。また近年では、作業者の高齢化も含め、作業環境に考慮した環境負荷低減の施工が要望されている。
【0003】
乾式吹付工法は湿式吹付工法に比べて単位時間当たりの施工量が多いことが大きな特長である。一方で、乾式吹付工法は粉体材料と水を含む液体材料がノズル先で瞬時に交わり、圧縮空気と共に対象構造物に吹付けてモルタルを成型する工法であり、そのため施工時の粉塵発生量が多く、作業環境改善のための粉塵の低減が求められている。
【0004】
このような装置として、例えば、特許文献1には、乱流混練装置を備えた乾式吹付け工法用ノズル装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乾式吹付工法においては、吹付時のモルタルが十分に混練され均一性に優れていること、吹付時に発生する粉塵量が少ないこと等に加え、連続で長時間圧送した際にも安定的に吹付できることが重要である。しかしながら、従来の方法では、ホースやノズルに材料が付着してしまうことがあり、連続した作業性及び作業後の清掃性が低下することがあった。
【0007】
したがって、本発明は、材料が十分に混練され、吹付時の粉塵発生量が少なく、且つ、ホースやノズルにモルタルの付着が少なく、連続圧送性に優れた吹付工法用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、液体供給部材から吐出口までの距離及び混練部材の内径を調整することで、混練性、連続圧送性に優れ、吹付時の粉塵量も少ない吹付工法用装置が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の[1]~[4]である。
[1]吹付材料供給部から順に、材料輸送ホースと、液体供給部材と、混練用ホースと、混練部材と、吐出口を有する吹付ノズルと、が接続され、
前記液体供給部材から前記吐出口までの長さが、65~210cmであり、
前記混練部材が、該混練部材の両端部の内径よりも該混練部材の内部の最大内径の方が大径である、吹付工法用装置。
[2]前記混練用ホースの長さが、30~180cmである、[1]に記載の吹付工法用装置。
[3]前記混連部材が、複数の混練部材が連結してなる、[1]又は[2]に記載の吹付工法用装置。
[4]前記吹付ノズルの長さが、10~50cmである、[1]~[3]のいずれかに記載の吹付工法用装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、材料が十分に混練され、吹付時の粉塵発生量が少なく、且つ、ホースやノズルにモルタルの付着が少なく、連続圧送性に優れる吹付工法用装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の吹付工法用装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図2】
図2(a)、(b)、(c)及び(d)は、混練部材の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照しながら本発明の一実施形態について説明する。各図は模式図であり、各構成要素の大きさ等は図面に示されたものに限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の吹付工法用装置の一実施形態を示す模式図である。本実施形態の吹付工法用装置100は、吹付材料供給部10から順に、材料輸送ホース20と、液体供給部材30と、混練用ホース60と、混練部材70と、吐出口を有する吹付ノズル80と、が接続されている。
【0014】
吹付材料供給部10は吹付材料を供給する機材であればよく、例えば、モルタル吹付機、コンクリート吹付機等が挙げられる。吹付材料は用途に応じて適宜調整すればよく、例えば、セメント、骨材等を配合したセメント系材料、ロックウール等の耐火材料、発泡ウレタン等の被覆材料が挙げられる。吹付材料供給部10はコンプレッサー等の圧送手段が接続されており、空気圧送によって吹付材料が材料輸送ホース20に送られる。以下、吹付材料として、セメント系材料を用いた場合について説明する。
【0015】
材料輸送ホース20は耐圧ホースであれば特に限定されない。材料輸送ホース20の長さは、施工箇所までの距離に応じて適宜調整することができる。材料輸送ホース20は混練用ホース60と接続され、両者の間に液体供給部材30が配置される。
【0016】
液体供給部材30は材料輸送ホース20内に液体を供給できるものであればよく、例えば、シャワーリング、ウォーターリング、O-リング等と呼ばれる環の中心方向に液体が供給される環状部材が挙げられる。液体供給部材30には、液体が液体供給部40から液体供給ホース50を介して供給され、コンプレッサー等の圧送手段により圧送される。供給される液体は特に限定されるものではなく、例えば、水であってもよく、ポリマーや他の添加剤を含む水溶液であってもよい。
【0017】
液体供給部材30から供給する水等の液体の量は、使用目的、使用材料等の条件に応じて適宜調整することができる。水等の液体の量は、例えば、吹付材料100質量部に対して10~20質量部以下であることが好ましく、12~18質量部であることがより好ましく、14~16質量部であることが更に好ましい。
【0018】
材料輸送ホース20から圧送された吹付材料と、液体供給部材30から圧送された液体とは、合流して混練用ホース60内で吹付モルタルとなり、混合されながら圧送される。混練用ホース60は耐圧ホースであれば特に限定されない。混練用ホース60の長さは、吹付材料及び液体が十分に混練されモルタルの均一性が更に向上し、さらに粉塵も一層低減するという観点から、30~180cmであることが好ましく、35~165cmであることがより好ましく、40~150cmであることが更に好ましく、65~150cmであることが特に好ましい。混練用ホースの内径は、例えば、2~6cmである。混練用ホース60内で混練された吹付モルタルは混練部材70へと圧送される。
【0019】
図2は、混練部材70の一実施形態を示す模式断面図である。混練部材70は、混練部材70内において、混練部材の両端部の内径70aよりも混練部材内部の最大内径70bの方が大径である。
図2の(a)~(d)は混練部材70を例示するものであり、混練部材70の形態はこれに限定されるものではない。混練部材70は、
図2(a)のように中央部付近で最大径となってもよく、(b)のように中央部よりもやや端部に近い位置で最大径となってもよく、(c)のように略楕円形となってもよく、(d)のように混練部材自体は一律の外径であるが内径は(a)のような形状であってもよい。両端部の内径は、同一でも異なっていても良いが、これらの間に、これらより内径の大きい部分を有するものである。
混練部材70がこのような形状であることにより、圧送される吹付モルタル及び空気の均一性が乱れ、吹付モルタルがより一層混練されることになる。
混練部材70の材質は、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属製であってもよく、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の合成樹脂製であってもよい。
【0020】
混練部材70の長さは、10~25cmであることが好ましく、12~20cmであることがより好ましく、13~18cmであることが更に好ましい。混練部材70の両端部の内径70aは3~12cmであることが好ましく、4~10cmであることがより好ましい。混練部材の両端部の内径70aは、吐出方向に対して入口側の端部の内径と出口方向の端部の内径が同一でなくてもよい。混練部材内部の最大内径70bは3.5~16cmであることが好ましく、4.2~12cmであることがより好ましい。
混練部材の両端部の内径70aと混練部材内部の最大内径70bとの比率(70b/70a)は、1.05~1.5であることが好ましく、1.1~1.45であることがより好ましく、1.2~1.4であることが更に好ましい。混練部材の両端部の内径70aと混練部材内部の最大内径70bとの比率(70b/70a)が上記範囲内であれば、混練部材内で吹付材料及び液体が十分に混練されモルタルの均一性が更に向上し、さらに粉塵も一層低減する。
【0021】
混練部材70は連結部71を備えることで、複数の混練部材70を連結することができる。複数の混練部材70を連結することで、混練部材70による混練効果を更に高めることができる。混練部材70の数は1~5個であることが好ましく、1~4個であることがより好ましく、1~3個であることが更に好ましい。混練部材70の数が上記範囲内であれば、十分な混練効果を得つつ、吹付モルタルの付着等も少ない傾向にあり、連続圧送性が更に向上する。
【0022】
混練部材70から圧送された吹付モルタルは吹付ノズル80へと圧送され、吐出口から吹付が行われる。吹付ノズル80は通常吹付等に用いられるものであれば特に限定されない。吹付ノズル80の長さは、10~50cmであることが好ましく、15~40cmであることがより好ましく、20~35cmであることが更に好ましい。吹付ノズル80の長さが上記範囲であれば、吐出範囲が更に制御しやすく、発生する粉塵量も一層低減することができる。
【0023】
液体供給部材30から吹付ノズル80の吐出口までの長さは、65~210cmである。液体供給部材30から吹付ノズル80の吐出口までの長さが上記範囲外であると、混練が不十分なことで吹付モルタルの均一性が低下し、粉塵発生が十分に抑制できないおそれがあり、また混練部材や吹付ノズルに吹付モルタルの付着や詰りが生じやすくなり、連続圧送性が低下する。液体供給部材30から吹付ノズル80の吐出口までの長さは、吹付モルタルの均一性と連続圧送性を両立しやすいという観点から、75~200cmであることが好ましく、85~190cmであることがより好ましい。
【0024】
本発明の吹付工法用装置は、混練性に優れ、吹付時の粉塵量も少なく、且つ連続して圧送することができる吹付システムである。そのため、本発明の吹付工法用装置は、断面修復や壁面補修等の乾式吹付に好適に用いることができる。
【実施例0025】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
[吹付材料の調製]
普通ポルトランドセメント100質量部、珪砂200質量部、粉末樹脂7質量部をヘンシェルミキサーに投入し、混合して吹付材料を調製した。
普通ポルトランドセメント:太平洋セメント社製
珪砂:3号、4号、5号混合品
粉末樹脂:アクリル系樹脂
【0027】
[乾式吹付]
乾式吹付は、以下のシステムで実施した。
エアコンプレッサを介して乾式モルタル吹付機アリバ237を用い、吹付材料を耐圧ホースで30m空気圧送した。水は、一軸偏心ネジポンプで圧送し、吹付材料の空気圧送ホ-スの途中に設置したシャワーリングから、吹付材料100質量部に対して14~16質量部となるように圧入混合して、吹付モルタルとした。これを吹付ノズルの筒先より、実験用側壁に吹付を行った。吹付は吹付材料250kgを用いて連続して行った。吹付工法用装置の構成については表1に示す。
混練ホースの内径は4cm、混練部材は、
図2(a)の形状で、長さ16.5cm、両端部の内径は4cm、内部の最大内径は5.5cmのものを用いた。
【0028】
[各種性能評価試験]
表1に示す構成の吹付工法用装置を用い、以下に示す方法で、各種性能評価試験を行なった。結果を表1に併せて示す。
(粉塵評価)
吹付ノズルから2m後方の位置において、吹付時の粉塵発生状況を目視で確認した。吹付対象及び吐出モルタルが明確に目視で観察できるものを「◎」、多少粉塵は発生するが、吹付対象及び吐出モルタルは目視で確認できる状態であるものを「○」、発生粉塵により後方から吹付状況が確認できない状態であるものを「△」とした。
【0029】
(均一性評価)
吹付を行なった実験用側壁を確認し、付着したモルタルの状態を確認した。目視評価により粉体部、砂、モルタル、水が分離せず均一に混練されているものを「〇」、モルタル、粉、水が層状に分離している状態のものを「△」とした。
【0030】
(連続圧送性)
吹付中の挙動並びに吹付後のホース及びノズルを確認した。吹付時に吐出中のモルタルに詰りがなく、吹付後のホース及びノズル内にモルタルの固まり(ノロ)が発生していないものを「○」、吹付時に吐出中のモルタルに詰りが発生した、又は吹付後のホース及びノズル内にモルタルの固まり(ノロ)が発生したものを「△」とした。
【0031】
【0032】
実施例の吹付工法用装置を用いれば、連続して圧送しても吹付時及び吹付後においても問題が生じず、発生する粉塵を抑制しつつ均一なモルタルを吹付けることができる。一方、比較例の吹付工法用装置の場合、圧送過程で詰りやノロが生じる、発生する粉塵量が多い、モルタルが均一になっていない等の問題が生じた。