IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ Green Planets株式会社の特許一覧

特開2022-65985殺菌装置及びそれを使用した哺乳動物の治療方法
<>
  • 特開-殺菌装置及びそれを使用した哺乳動物の治療方法 図1
  • 特開-殺菌装置及びそれを使用した哺乳動物の治療方法 図2
  • 特開-殺菌装置及びそれを使用した哺乳動物の治療方法 図3
  • 特開-殺菌装置及びそれを使用した哺乳動物の治療方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065985
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】殺菌装置及びそれを使用した哺乳動物の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20220421BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A61M25/10 510
A61L2/08 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174845
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】520405178
【氏名又は名称】Green Planets株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】奥野 敦史
【テーマコード(参考)】
4C058
4C267
【Fターム(参考)】
4C058AA28
4C058AA30
4C058BB06
4C058BB07
4C058DD16
4C058EE02
4C058JJ06
4C058JJ24
4C058KK01
4C058KK13
4C058KK23
4C267AA06
4C267BB28
4C267CC07
(57)【要約】
【課題】 近年、新型コロナウイルス等に感染した際の治療方法が求められている。治療薬の開発等が進められているが、いつ完成するか見通しが立たない状況である。そのため、治療薬ではなく、体内のウイルスを直接殺菌する殺菌装置を提供する。
【解決手段】 人体又は哺乳動物の体内に挿入して使用する殺菌装置であって、体内に挿入する側の一方端と体外に配置される他方端とを有するカテーテルチューブと、前記カテーテルチューブの一方端の近傍に設けられ伸縮可能なバルーンと、前記バルーンの表面に位置し400nm~450nmの波長の光を照射するLEDと、を備えることを特徴とする殺菌装置。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体又は哺乳動物の体内に挿入して使用する殺菌装置であって、
体内に挿入する側の一方端と体外に配置される他方端とを有するチューブと、
前記チューブの一方端の近傍に設けられ伸縮可能なバルーンと、
前記バルーンの表面に位置し400nm~450nmの波長の光を照射するLEDと、を備えることを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記LEDは、波長405nmの波長をピークとする光を照射することを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記LEDは、500ミクロン未満の大きさのチップで構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記バルーンは、保護カバーで覆われていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記チューブには、薬剤を噴霧するための側孔が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の殺菌装置。
【請求項6】
哺乳動物の体内に挿入する側の一方端と体外に配置される他方端とを有するチューブと、
前記チューブの一方端の近傍に設けられ伸縮可能なバルーンと、
前記バルーンの表面に位置し400nm~450nmの波長の光を照射するLEDと、を備える殺菌装置を使用する哺乳動物の治療方法であって、
前記哺乳動物の体内に前記チューブの一方端を挿入する工程と、
前記チューブの一方端を挿入した後、前記バルーンを膨らませる工程と、
前記バルーンを膨らませた後、前記LEDを照射しウイルスを殺菌する工程と、を有することを特徴とする哺乳動物の治療方法。
【請求項7】
前記LEDの照射中に薬剤を噴霧することを特徴とする請求項6に記載の哺乳動物の治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌装置に関し、より特定的には、人体又は哺乳動物の体腔内等に挿入し、400nm~450nmの波長の光を照射することで人体又は哺乳動物の体内のウイルスを直接殺菌する殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を奮っており、感染した際の治療方法が求められている。現状、治療薬等の開発等が進められているが、いつ完成するか見通しが立たない状況である。また、新型コロナウイルスは、アジア、南米、アメリカ、アフリカなどで遺伝子が変異して感染を広げているので、例えば、中国で感染を広げた新型コロナウイルスに適した治療薬やワクチン等を開発できたとしても、よその国で感染を広げているコロナウイルスに効果があるかどうか疑問である。そのため、治療薬等ではなく、外科的方法によって新型コロナウイルス等のウイルスを死滅させる治療方法が検討されている。なお、新型コロナウイルスは、イヌやネコなどの哺乳動物にも感染することが確認されているため、イヌやネコなどの哺乳動物にも適用できることが望ましい。
【0003】
外科的方法によって新型コロナウイルス等のウイルスを死滅させて治療する方法としては、カテーテル等の器具を用いる方法が考えられる。カテーテルは、人体に挿入する医療器具であり、体腔内等にチューブを挿入し、チューブの先端に設けた処置手段によって目的の臓器等を処置するためのものである。
【0004】
カテーテル等の器具を用いて新型コロナウイルス等のウイルスを死滅させるには、特許文献1のバルーンカテーテルを使用する方法が考えられる。特許文献1のバルーンカテーテルには、光照射部が設けられており、カテーテルを体内に挿入後、光照射部から照射される紫外光で殺菌治療をすることが可能な構造をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-81525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のバルーンカテーテルから照射される光は光ファイバーを通して照射される光であるため、光強度が低いものである。そのため、殺菌能力の高い紫外光を照射しなければ、十分な効果を得ることができないものであった。なお、紫外光は、人体や哺乳動物にとって有害な光である。治療のためとはいえ、紫外光を長時間照射すると皮膚がんや内臓がんを併発する可能性があり危険である。
【0007】
本発明は、かかる従来発明における課題に鑑みてされたものであり、本発明の目的は、安全性の高い400nm~450nmの可視光を照射するLEDであっても、十分な殺菌効果を発揮する殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。なお、以下の説明において、本発明の理解を容易にするために図面に示されている符号等を付記する場合があるが、本発明の各構成要素は、図面に示されているものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0009】
本発明の一局面に係る殺菌装置は、人体又は哺乳動物の体内に挿入して使用する殺菌装置であって、体内に挿入する側の一方端と体外に配置される他方端とを有するチューブと、前記チューブの一方端の近傍に設けられ伸縮可能なバルーンと、前記バルーンの表面に位置し400nm~450nmの波長の光を照射するLEDと、を備えることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る殺菌装置は、紫外光でなく、安全性の高い400nm~450nmの波長の光であっても体内のウイルスを死滅させることができる。これは、LEDがバルーンの表面に位置しているため、強度の強い光を患部に直接照射できるためである。なお、本発明において紫外光とは1~380nmの波長の光のことを指す。
【0010】
また、好ましくは、波長405nmの波長をピークとする光を照射することを特徴とする。
かかる構成により、より確実にウイルスを死滅させることができる。405nmの波長の光が特に、殺菌効果が高いためである。
【0011】
また、好ましくは、前記LEDは、500ミクロン未満の大きさのチップで構成されていることを特徴とする。
かかる構成により、バルーンの表面により確実に配置することができる。これは、500ミクロン以上のチップであると、バルーン表面に配置するのが困難となるためである。
【0012】
また、好ましくは、前記バルーンは、保護カバーで覆われていることを特徴とする。
かかる構成により、バルーン上のLEDを保護することができる。また、保護カバーによってLEDを囲っているので、より確実に漏電を防ぐことができる。
【0013】
また、好ましくは、前記チューブには、薬剤を噴霧するための側孔が設けられていることを特徴とする。
かかる構成により、LED照射中に薬剤を噴霧することで、より確実にウイルスを殺菌することができる。
【0014】
また、本発明の一局面に係る哺乳動物の治療方法は、哺乳動物の体内に挿入する側の一方端と体外に配置される他方端とを有するチューブと、前記チューブの一方端の近傍に設けられ伸縮可能なバルーンと、前記バルーンの表面に位置し400nm~450nmの波長の光を照射するLEDと、を備える殺菌装置を使用する哺乳動物の治療方法であって、前記哺乳動物の体内に前記チューブの一方端を挿入する工程と、前記チューブの一方端を挿入した後、前記バルーンを膨らませる工程と、前記バルーンを膨らませた後、前記LEDを照射しウイルスを殺菌する工程と、を有することを特徴とする。
かかる構成により、哺乳動物の体腔内等に存在するウイルスを殺菌することができる。なお、本明細書においては、哺乳動物には人を含まないものとする。
【0015】
また、好ましくは、前記LEDの照射中に薬剤を噴霧することを特徴とする。
かかる構成により、より確実にウイルスを殺菌することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、人体又は哺乳動物体内のウイルスを安全に殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る殺菌装置10を示す概略図である。
図2】チューブ20の断面を示す図である。
図3】拡張したバルーン30の断面を示す概略部である。
図4】バルーン30に保護カバー70を設けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る殺菌装置10を示す図である。殺菌装置10は、体内に挿入する側の一方端21と体外に配置される他方端22とを有するチューブ20と、チューブ20の一方端21の近傍に設けられ伸縮可能なバルーン30と、バルーン30の表面に位置し400nm~450nmの波長の光を照射するLED40を備えている。また、チューブ20の他方端22は、基部50と接続してある。基部50は、バルーン30を伸縮させるための空気を供給するバルーンファネル51と、ケーブル60を保護するためのケーブルファネル52と、薬剤を注入するための薬剤ファネル53を備えている。なお、ケーブル60の先端にはコンセント61が備え付けられており、バルーンファネル51の先端には空気の逆流を防ぐバルブ54が備え付けられている。なお、図示はしないが、バルーンファネル51のバルブ54の先には空気を送るためのシリンジが接続されており、薬剤ファネル53には薬剤を送るためのシリンジが接続されている。
【0020】
チューブ20は、トリプルルーメンタイプのカテーテルを使用している。詳細は後述するが、トリプルルーメンタイプのカテーテルには3つの内腔があり、3つの内腔は、ケーブル60が通る管、薬剤が通る管、空気が通る管となっている。
【0021】
チューブ20の一方端21の先端近傍には、薬剤を噴霧するための側孔23が設けられている。薬剤としては、アビガン、デミベシブルのような新型コロナウイルスのワクチンや、イソジン、葛根湯、ステロイドなどの薬剤である。なお、薬剤が固形状の場合は、溶解させて液体状にしてから使用する。なお、薬剤は拡散しやすいように霧状に噴霧される。
【0022】
バルーン30は、シリコン製の伸縮自在な素材で作成されており、チューブ20を覆うように円筒状に形成されている。また、バルーン30は空気が漏れないよう、気密的にチューブ20と接着している。なお、シリコン製に限らず、伸縮性を有した素材であれば適宜使用することができる。具体的には、ポリウレタン樹脂などの高分子材料等を使用することができる。
【0023】
バルーン30は、通常の状態であれば自然に収縮してチューブ20に張り付いた状態となっている。なお、図1で示したバルーン30は空気を送り込み、拡張させた状態で図示している。
【0024】
LED40は、マイクロLEDのチップをフレキシブル基板に実装したものを使用している。これにより、LED40をバルーン上により確実に配置することができる。LED40は、20ミクロン以下のものを約20万個以上敷き詰めて使用している。なお、LED40のチップの1つの大きさが500μm以上となると、バルーン30の表面に配置することができないため、使用するLED40の大きさは500μm未満であることが必要である。
【0025】
LED40は、波長が400~450nmの紫色の光を照射するものを使用している。なお、LED40は、波長400~420nmのものが好ましく、405nmの波長をピークとするものが特に好ましい。これは、405nmの波長の光は特に殺菌効果が高いためである。
【0026】
基部50は、バルーンファネル51、ケーブルファネル52、薬剤ファネル53を備えている。バルーンファネル51はバルーン30に空気を送るための管に繋がっており、ケーブルファネル52はケーブル60が配置される管に繋がっており、薬剤ファネル53は薬剤を送るための管に繋がっている。基部50はプラスチックで構成されているが、プラスチック以外の材料で構成されていても構わない。
【0027】
図2は、チューブ20の断面を示す図である。チューブ20は、トリプルルーメンタイプのカテーテルを使用しており、3つの内腔、つまり、遠位24、中間位25、近位26を有している。遠位24にはケーブル60が配置されており、中間位25は薬剤が通る管となっており、近位26は空気が通る管となっている。なお、必要に応じて配置を変更しても良い。具体的は、中間位25が空気を通る管、近位26が薬剤を通る管としても構わない。また、中間位25は、側孔23と繋がっている。
【0028】
図3は、拡張したバルーン30の断面を示す概略部である。バルーン30は、チューブ20の全周を覆うように接着しており、空気が漏れない構造となっている。また、バルーン30の表面にはLED40が配置されており、ケーブル60と接続してある。なお、図3においては、中間位25は図示していない。
【0029】
図4は、バルーン30に保護カバー70を設けた状態を示す図である。保護カバー70を設けることにより、バルーン30の表面上に配置したLED40をより確実に保護することができる。また、殺菌装置10ではバルーン30の表面上にLED40を設けているため、漏電する可能性が否定できないが、保護カバー70を設けると、より確実に漏電を防ぐことができる、これは、LED40とケーブル60とを接続する箇所が保護カバー70で覆われるためである。
【0030】
保護カバー70は、バルーン30と同様の素材で構成するのが好ましい。具体的には、バルーン30がシリコン製であれば、シリコン製の素材を使用するのが好ましい。なお、保護カバー70は、耐薬品性に優れ、体に害の無いフイルムで、且つ、透過度85%以上の透明なフイルムを使用するのが好ましい。
【0031】
次に、本発明の第1の実施形態に係る殺菌装置10を使用した使用方法について説明する。なお、以下で説明する殺菌装置10の使用方法については、人体及び哺乳動物のどちらにも適用することができる。なお、哺乳動物としてはイヌやネコ等である。
【0032】
本発明の第1の実施形態に係る殺菌装置10の使用方法は、バルーン30が収縮した状態でチューブ20の一方端21を体内の体腔等から挿入し、所定の箇所まで挿入する。所定の位置まで挿入後、バルーンファネル51から空気を送ってバルーン30を拡張させ、バルーン30の表面に配置されるLED40が患部の近傍に位置するように配置する。なお、LED40と患部とが接触しても構わない。また、チューブ20の一方端21を体内の体腔等から挿入する方法としては、胸腔鏡手術のように、体に小さな穴を開け、その箇所から挿入しても構わないし、鼻や口から挿入しても構わない。また、挿入する際、カメラと共に挿入し、テレビモニターに写しながら挿入すると、より確実に患部の近傍に配置できるため好ましい。
【0033】
患部近傍に拡張したバルーン30を配置後、LED40(400~450nmの波長の光)を照射して、患部のウイルス等を殺菌する。なお、LED40の照射中に薬剤ファネル53から薬剤を供給し、側孔23から薬剤を噴霧するとより効果が高まるため好ましい。照射時間としては、必要に応じて設定すればよいが、目安としては、5秒~60分程度である。
【0034】
なお、本発明の第1の実施形態に係る殺菌装置10は、胃カメラや内視鏡、腹腔鏡などにも適用することができる。具体的には、胃カメラや内視鏡、腹腔鏡のケーブルなどに取り付けても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る殺菌装置10は、体内のウイルスを直接400~450nmの波長の光によって殺菌できる。そのため、紫外光とは異なり、より安全に体内のウイルスを殺菌することができるため有用である。また、400~450nmの波長の光によって殺菌するため、アジア、南米、アメリカ、アフリカなどで遺伝子が変異した新型コロナウイルスに対しても有効である。つまり、地域を選ばずにより確実に新型コロナウイルスを死滅させることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 殺菌装置
20 チューブ
21 一方端
22 他方端
23 側孔
24 遠位
25 中間位
26 近位
30 バルーン
40 LED
50 基部
51 バルーンファネル
52 ケーブルファネル
53 薬剤ファネル
54 バルブ
60 ケーブル
61 コンセント
70 保護カバー

図1
図2
図3
図4