(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066023
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】通気管路の連結機構
(51)【国際特許分類】
A62B 9/04 20060101AFI20220421BHJP
A62B 18/08 20060101ALI20220421BHJP
F16B 21/04 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A62B9/04
A62B18/08 Z
F16B21/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174919
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】000162940
【氏名又は名称】興研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002882
【氏名又は名称】白浜国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 章博
【テーマコード(参考)】
2E185
3J037
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA07
2E185CB07
2E185CC12
3J037AA01
3J037BB01
3J037CA14
3J037CA17
(57)【要約】
【課題】
第1通気管路と第2通気管路との連結状態が正常であることを容易に確認することができる連結機構の提供
【解決手段】
第1通気管路11と第1端部と第2通気管路12の第2端部とがバヨネット機構によるロック作用によって離脱可能に連結される。第1通気管路11の第1周壁部16aと第2通気管路12の第2周壁部12pのうちのいずれか一方の周壁部には弾性変形可能なアーム25が形成される。もう一方の周壁部には周方向からアーム25を挟むことのできる一対のストッパー40が形成される。第1端部と第2端部とを互いに逆方向へ回転させようとすると、アーム25とストッパー40とが衝接して、その回転を阻止する。一対のストッパー40の間には、アーム25に符合可能な目印を付けることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通気管路の第1端部と第2通気管路の第2端部とを通気可能かつ分離可能に連結して前記第1通気管路と前記第2通気管路とによる一連の通気管路を形成するための連結機構であって、
前記第1端部は、断面が円形の管路を画成している第1周壁部と、前記第1周壁部の内側にあって、前記第1周壁部の径方向における中央部から前記第1周壁部に向かう方向に延びて、前記第1周壁部の周方向へ間欠的に並ぶ複数の第1係合爪を有し、
前記第2端部は、断面が円形の管路を画成している第2周壁部から前記第2周壁部の径方向の内側に向かって延びていて、前記第2周壁部の周方向に間欠的に並ぶ複数の第2係合爪を有し、
前記第1端部と前記第2端部とは、それら両端部を突き合わせて互いに逆方向へ回転させると、前記第1係合爪と前記第2係合爪とが重なり合って形成するバヨネット機構でのロック作用が働いて、分離可能に連結して前記一連の通気管路を形成し、
前記一連の通気管路を形成したときの前記第1周壁部および前記第2周壁部のうちのいずれか一方の周壁部には、その外側に延出して前記いずれか一方に対するもう一方の周壁部に接触するとともに前記もう一方の周壁部から離間する方向へ弾性変形可能なアームを形成し、
前記もう一方の周壁部の外側に形成した一対のストッパーによって前記もう一方の周壁部の周方向から前記アームを挟むことによって、前記第1端部と前記第2端部とを互いに逆方向へ回転させようとすると前記アームと前記ストッパーとが衝接してその回転を阻止し、前記アームを前記もう一方の周壁部から離間する方向へ弾性変形させて前記ストッパーによって挟まれた状態から解放すると、前記第1端部と前記第2端部とを互いに逆方向へ回転させることができて、前記バヨネット機構による前記ロック作用の解除と、前記第1端部と前記第2端部との分離とが可能になることを特徴とする前記連結機構。
【請求項2】
前記第1係合爪および前記第2係合爪のうちの少なくとも一方には、前記一連の通気管路に並行する方向の透孔が形成されている請求項1記載の連結機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流側通気管路と下流側通気管路とを分離可能に連結するための連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルターカートリッジを面体の通気口に着脱できる構造の呼吸マスクはよく知られている。また、その着脱のために、フィルターカートリッジと面体の通気口との間にアダプターを介在させる技術もよく知られている。フィルターカートリッジにおけるアダプターへの取り付け部は上流側の通気管路であり、アダプターにおけるフィルターカートリッジへの取り付け部は下流側の通気管路である。
【0003】
このような通気管路を有する従来技術の一例には、特許文献1に記載の吸収缶取り付けアダプターがある。特許文献1に記載の一例によれば、吸収缶の口金部はねじ式の係合構造を有し、アダプターの内側にはその係合構造に係合する雌ねじが作られている。
【0004】
また、特許文献2に記載の脱着コネクターは、呼吸装置の面体とフィルターとの間に介在させるもので、フィルターの接続には、バヨネット式接続機による接続動作と、ロック機構によるロック動作とを採用する。面体に対してフィルターを回転させると面体とフィルターとの接続動作が終了する時点においては、面体に取り付けられているピンがフィルターに取り付けられた弾性帯状体に形成されている穴に嵌合し、フィルターは面体に対して回転することのない取り付け状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4-65558号公報
【特許文献2】特許第6172829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の従来技術では、アダプターに対する吸収缶の取り付け状態が正常であるか否か、すなわちアダプターに対する吸収缶の取り付け状態にゆるみがないか否かを目視によって判断することが難しい。また、アダプターに対するマスクの取り付け状態が自然にゆるむという事態の発生を防ぐ手段もない。
【0007】
特許文献2に記載の脱着コネクターによれば、脱着コネクターに対する面体の取り付け状態が正常であるか否かを目視によって判断することができる。また、ピンが穴に嵌合することによって、脱着コネクターに対してフィルターはゆるむことがない。しかしながら、この技術では、上流側の通気管路となるフィルターに対してフィルターとは別体の弾性帯状体を取り付けなければならず、脱着コネクターは、その分だけ部品点数が多くなり、組立コストもかさむようになる。
【0008】
そこで、本発明では、フィルターユニットを一例とする第1通気管路の端部と、呼吸マスクに取り付けられた吸気用のアダプターであるフィルターホルダーを一例とする第2通気管路の端部とを分離可能に連結する連結機構であって、連結状態が正常であることを容易に確認することができる簡易な構造の連結機構の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明が対象とするのは、第1通気管路の第1端部と第2通気管路の第2端部とを通気可能かつ分離可能に連結して前記第1通気管路と前記第2通気管路とによる一連の通気管路を形成するための連結機構である。
【0010】
かかる連結機構において、本発明が特徴とするところは、以下のとおりである。すなわち、前記第1端部は、断面が円形の管路を画成している第1周壁部と、前記第1周壁部の内側にあって、前記第1周壁部の径方向における中央部から前記第1周壁部に向かう方向に延びて、前記第1周壁部の周方向へ間欠的に並ぶ複数の第1係合爪を有する。前記第2端部は、断面が円形の管路を画成している第2周壁部から前記第2周壁部の径方向の内側に向かって延びていて、前記第2周壁部の周方向に間欠的に並ぶ複数の第2係合爪を有する。前記第1端部と前記第2端部とは、それら両端部を突き合わせて互いに逆方向へ回転させると、前記第1係合爪と前記第2係合爪とが重なり合って形成するバヨネット機構でのロック作用が働いて、分離可能に連結して前記一連の通気管路を形成する。前記一連の通気管路を形成したときの前記第1周壁部および前記第2周壁部のうちのいずれか一方の周壁部には、その外側に延出して前記いずれか一方に対するもう一方の周壁部に接触するとともに前記もう一方の周壁部から離間する方向へ弾性変形可能なアームを形成する。前記もう一方の周壁部の外側に形成した一対のストッパーによって前記もう一方の周壁部の周方向から前記アームを挟むことによって、前記第1端部と前記第2端部とを互いに逆方向へ回転させようとすると前記アームと前記ストッパーとが衝接してその回転を阻止する。前記アームを前記もう一方の周壁部から離間する方向へ弾性変形させて前記ストッパーによって挟まれた状態から解放すると、前記第1端部と前記第2端部とを互いに逆方向へ回転させることができて、前記バヨネット機構による前記ロック作用の解除と、前記第1端部と前記第2端部との分離とが可能になる。
【0011】
本発明の実施態様の一例において、前記第1係合爪および前記第2係合爪のうちの少なくとも一方には、前記一連の通気管路に並行する方向の透孔が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る連結機構によれば、第1通気管路の第1端部と第2通気管路の第2端部とをバヨネット機構を使用して連結すると、第1端部と第2端部とのうちの一方に形成された弾性変形可能なアームが、第1端部と第2端部とのうちのもう一方に形成された一対のストッパーに挟まれるから、挟まれているアームに符合する目印を一対のストッパー壁の間に設けておけば、第1通気管路と第2通気管路との連結状態が正常であることを目視によって容易に確認することができる。また、そのような状態にある第1通気管路と第2通気管路との連結状態は、弾性変形可能なアームとストッパー壁とが衝接することによってゆるむことがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は、本開示に係る本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
【
図3】一部分を省略して示す
図1のIII-III矢視図。
【
図5】フィルターユニットとフィルターホルダーとの組立手順を示す図。
【
図6】(a)と(b)とによって、フィルターホルダーとホルダー受けリングとの取り付け手順を説明するための図。
【
図7】フィルターケースの態様を例示するフィルターケースの斜視図。
【
図8】弾性アームの態様を例示する
図2と同様な図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照して、本発明に係る連結機構の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0015】
図1は、本発明に係る連結機構が採用されているフルフェイス型呼吸マスク1の斜視図である。マスク1は、透明な硬質プラスチック材料で形成された透視部2と、柔軟弾性材料で形成された顔面被覆部3と、顔面被覆部3の横方向中央部に取り付けられた排気ユニット4とを含む面体5を有し、面体5の両側部のそれぞれには吸気ユニット10が取り外し可能な状態で取り付けられている。吸気ユニット10と顔面被覆部3との間には、本発明に係る後記連結機構が含まれている。顔面被覆部3の周縁部からは、後方に向かって、マスク1の着用者(図示せず)の後頭部に向かって長さ調節可能なヘッドバンド6が延びている。排気ユニット4の中央部には、伝声器ユニット7が組み込まれている。マスク1の着用者が呼吸を繰り返すと、マスク1の外側の空気が吸気ユニット10を通過するときに後記ろ材18によってろ過されて着用者の口許に吸気となって届く。また、着用者の呼気は、排気ユニット4を通り、マスク1の外に出る。吸気ユニット10において、矢印Aで示す方向は前方であり、矢印Bで示す方向は後方である。その前方は、面体5から遠ざかる方向であり、後方は、面体5に接近する方向である。
【0016】
図2は、
図1のII-II線矢視図であって、吸気ユニット10の内部構造を示している。後記
図3を併せて参照することによって明らかなように、吸気ユニット10は、後記フィルターホルダー12に通じた上流側通気管路となる第1通気管路11aの形成されているフィルターユニット11と、フィルターユニット11と面体5との間に介在してフィルターユニット11を着脱可能に連結させることができ、フィルターユニット11の第1通気管路11aと顔面被覆部3の内側とに通じた下流側通気管路となる第2通気管路12aの形成されている円筒状のフィルターホルダー12とを有する。フィルターホルダー12は、顔面被覆部3に形成されている後記取り付け穴8(
図4参照)における周縁部8aに顔面被覆部3の内面側から密着しているホルダー受けリング9に取り外し不能な態様で嵌合し、いわゆる嵌め殺しの状態にある。フィルターユニット11とフィルターホルダー12との間には第1Oリング13が介在し、フィルターホルダー12と顔面被覆部3との間には第2Oリング14が介在している。このような状態にあるフィルターユニット11とフィルターホルダー12とは、第1通気管路11aと第2通気管路12aとが一連の通気管路となって面体5に通気可能な状態で取り付けられる。このようなフィルターユニット11の構造は、本発明に係る第1通気管路とその管路における第1端部とを提供するものの一例であり、フィルターホルダー12の構造は、本発明に係る第2通気管路とその通気管路における第2端部とを提供するものの一例である。また、フィルターユニット11とフィルターホルダー12とは、それら第1通気管路と第2通気管路とによる一連の通気管路を提供するものの一例である。なお、フィルターホルダー12は、超音波溶接や接着剤の使用等によって、被覆部3に対して気密状態で一体化させることが可能であって、そのような場合のフィルターホルダー12では、第2Oリング14が不要になる。
【0017】
フィルターユニット11は、フィルターケース16とフィルターカバー17とを有する。これらフィルターケース16とフィルターカバー17とは、互いの環状周壁部16aと17aとにおいて接着または溶着によって分離不能に接合して、第1通気管路11aを形成するとともに、仮想線で示すろ材18を収容する空間を形成している。周壁部16aと周壁部17aとは、本発明においての第1周壁部となるものである。ろ材18は、フィルターであって、そのろ材18を含むフィルターユニット11は、フィルターカートリッジと呼ばれることもある。フィルターケース16の後方部分には、第1通気管路11aの一部分であって、後記するようにフィルターホルダー12につながる通気部16eが形成され、その通気部16eでは、フィルターケース16の径方向R
1において、内側から外側へ向かう方向に延びる係合用の第1係合爪20が、フィルターケース16の周方向C(
図1,4参照)に複数形成されている。
【0018】
フィルターホルダー12は、面体5の顔面被覆部3から前方Aへ延びて第2通気管路12aを形成している円筒状部12pと、円筒状部12pの外周面に形成されたフランジ部12bとを有する。円筒状部12pは、本発明における第2周壁部に相当する部位であって、円筒状部12pの前端部分12cは、フィルターケース16が着脱可能に形成され、後端部分12dはフィルターホルダー12が顔面被覆部3を介してホルダー受けリング9に対して嵌め殺しの状態で取り付けられることを可能にする後記弾性爪部12e,12fを有する(
図6参照)。嵌め殺しの状態にあるフィルターホルダー12では、フランジ部12bが第2Oリング14を介して顔面被覆部3に気密状態で圧接している。円筒状部12pの前端部分12cでは、フィルターホルダー12における径方向R
2の内側に向かって係合用の第2係合爪30が延びている。第2係合爪30は、フィルターケース16の着脱を可能にするためのもので、フィルターケース16の第1係合爪20と協働してバヨネット機構を形成している。そのような第2係合爪30を有するフィルターホルダー12は、バヨネットマウントと呼ぶこともできる。
図2においては、第2係合爪30が第1係合爪20に前方から重なる態様にあって、フィルターホルダー12とフィルターユニット11とを分離可能に連結している。このときの第1Oリング13は、フィルターホルダー12とフィルターユニット11とに圧接して、これら両者の連結が気密状態となるように作用している。
【0019】
図2にはまた、フィルターホルダー12に形成されたロックレバー25と、フィルターユニット11に形成されていてロックレバー25に対して作用する壁状のストッパー40とが見えている。ロックレバー25は、円筒状部12pと一体的に形成されていて、矢印Sで示す方向への弾性的な旋回運動とその反対方向への弾性的な復帰運動、換言するとフィルターケース16への接触と離間を反復するような弾性的な変形が可能なものであって、フィルターユニット11がフィルターホルダー12に取り付けられているマスク1の常態にあっては、図示の如く観察したときに、フィルターケース16の周壁部16aに接触するとともにストッパー40と重なる状態にあって、フィルターユニット11をフィルターホルダー12に対して回転させようとすると、ロックレバー25とストッパー40とが衝接して、その回転を阻止し、フィルターユニット11とフィルターホルダー12との分離を防ぐように作用する。しかし、ロックレバー25を周壁部16aから離間する方向へ、すなわち矢印Sで示す方向へ弾性変形させると、ロックレバー25とストッパー40との衝接の可能性が解消し、フィルターユニット11とフィルターホルダー12とを互いに逆方向へ回転させて、フィルターユニット11をフィルターホルダー12から外すことができる。矢印Sは、第1通気管路11aと第2通気管路12aとが作る一連の通気路の延びる方向である。このように作用するロックレバー25を一体的なものとして有するフィルターホルダー12は、熱可塑性プラスチック材料を射出成形することによって得ることができる。
【0020】
図3は、
図1のIII-III線部分矢視図であって、フィルターユニット11がフィルターホルダー12に取り付けられている状態の詳細を示している。ただし、ろ材18を含む一部分の構造については、図示が省略されている。
図3からは、第1係合爪20が後記円環状のリブ16gから垂下するとともに、第2係合爪30と重なり合い、フィルターユニット11とフィルターホルダー12との間にバヨネット機構におけるロック作用が働いている状態を見て取ることができる。
【0021】
図4は、吸気ユニット10の分解組立図であるが、顔面被覆部3の一部分とホルダー受けリング9も併せて示してある。
図4のフィルターユニット11において、フィルターカバー17は、その外面部分が中心部17cから放射状に延びる複数条のリブ17dと、一つの円環状のリブ17eとによって形成されていて、これらリブ17d,17eによって、外気を取り込むための多数の通気孔17fが画成されている(
図1を併せて参照)。後記
図5を併せて参照すると、フィルターケース16は、周壁部16aを有し、周壁部16aは後壁部分16bを含んでいる。周壁部16aには、ロックレバー25の作用位置を示す目印16mが画かれている。後壁部分16bは、円環状を呈する非通気性の部分であって、後壁部分16bの径方向における内側には第1通気管路11aの一部分である円形の通気部16eが画成されている。通気部16eは、その中心部16cから放射状に延びる複数の直状リブ16fと、直状リブ16fと交差して延びる環状リブ16gとによって、複数の通気孔16hに分画されている。直状リブ16fは、周壁部16aにまで延びている(
図2参照)。環状リブ16gでは、その回り方向に複数の第1係合爪20が形成されている(
図2参照)。
【0022】
図4におけるフィルターホルダー12では、円環状のフランジ部12bの前方に位置する部分の円筒状部12pからフィルターホルダー12における第2通気管路12aに進出するように、すなわち径方向の内側に向かって延びるように複数の第2係合爪30が形成されている。第2係合爪30は、円筒状部12pの周方向において互いに離間するように形成されるものであるが、フィルターホルダー12の好ましい一例においては、後記
図5に例示の如く第2係合爪30が円筒状部12pの周方向において互いに離間し、径方向において対向する一対の爪によって構成される。また、好ましい一例においては、第2係合爪30に、少なくとも1つの通気孔30aが形成され、より好ましい一例においては、複数の通気孔30aが図示例の如く周方向へ並ぶ態様で形成される。かかる態様の通気孔30aは、
図1のマスク1において、フィルターユニット11から進入して面体5の内側に向かう吸気用の空気の流れが第2係合爪30によって邪魔されることを軽微にして、スムーズな流れとなるように作用する。このように作用する第2係合爪30は、第2通気管路12aにおいて、径方向の内方に向かって大きく進出しても、第2通気管路12aにおける通気の妨げになり難いというものになる。
【0023】
図5は、
図4におけるフィルターホルダー12に対するフィルターユニット11の取り付け、取り外し手順を示すための図であるが、フィルターユニット11については、
図4に示されたフィルターユニット11のうちのフィルターケース16のみが平面図で示されている。また、
図5のフィルターホルダー12の円筒状部12pにおいて、前端部分12cに形成された一対の第2係合爪30は、参照符号30aと30bとによって区別されているが、第2係合爪30aと30bとは、円筒状部12pの中心(図示せず)に関して対称なものであって、同形同大であり、周方向の長さがMであり、周方向において距離Nだけ離間している。
【0024】
図5のフィルターケース16では、円環状のリブ16gに対して4個の第1係合爪20が一体的に形成されている。4個の第1係合爪20は、参照符号20a,20b,20c,20dによって区別されているが、好ましくは同形同大のものであって、第1係合爪20aと20b、および第1係合爪20cと20dは、円環状のリブ16gの回り方向において互いに接近して一群を成しているが、放射状のリブ16fの幅よりも僅かに大きい距離だけ離間している。また、好ましいフィルターケース16においては、円環状のリブ16gの中心である中心部16cに関して、第1係合爪20aと第1係合爪20cとが対称となるように、第1係合爪20bと第1係合爪20dとが対称となるように形成されている。また、一群を成す第1係合爪20aと第1係合爪20bの長さ、および一群を成す第1係合爪20cと第1係合爪20dの長さはmであり、それら一群どうしの離間距離はnである。第1係合爪20と第2係合爪30との間においては、m<Nという関係にある。また、一連の通気路においては、m<Mにするとともに、第1係合爪20が第2係合爪30における透孔31を極力塞ぐことがないようにすることができる。さらには、第1係合爪20にも通気孔を形成することができる。
【0025】
第1係合爪20と第2係合爪30とがこのような関係にあるフィルターケース16とフィルターホルダー12との間において、第1係合爪20と第2係合爪30とは、いわゆるバヨネット機構を形成するものであって、そのバヨネット機構によるロック作用によって、フィルターケース16をフィルターホルダー12に着脱することができる。換言すると、フィルターユニット11は、そのバヨネット機構を採用することによって、面体5に気密状態で取り付けたり、面体5からスムーズに外したりすることができる。
図5において、そのフィルターケース16をフィルターホルダー12に取り付けるには、フィルターケース16を矢印AR1で示す方向へ移動させて、通気部16eをフィルターホルダー12の円筒状部12pに一致させる。すると、第1係合爪20は、一群を成す第1係合爪20aと20bとが仮想線で示すように、フィルターホルダー12の周方向において第2係合爪30aと30bとの間に納まり、第1係合爪20のうちの一群を成す第1係合爪20cと20dとが仮想線で示すように、フィルターホルダー12の周方向において第2係合爪30aと30bとの間に納まる。そこで、第1Oリング13を圧縮するように、フィルターケース16をフィルターホルダー12に押し付け、静止させたフィルターホルダー12を中心に、例えば反時計方向AR2へ回転させる。換言すると、フィルターケース16とフィルターホルダー12とが互いに逆方向へ回転するように、例えばフィルターケース16を矢印AR2で示す方向へ回転させる。すると、図において、第1係合爪20が第2係合爪30の下側(後方)に来て、第1係合爪20と第2係合爪30とが重なり合い、ロックレバー25が一対のストッパー40の間に納まって、フィルターユニット11の回転が止まり、フィルターケース16を含むフィルターユニット11がフィルターホルダー12に対して回転することがなく、また抜き取ることができない態様で、フィルターホルダー12に、換言すると面体5に取り付けられる。
【0026】
フィルターユニット11をフィルターホルダー12から外すには、ロックレバー25を
図2において矢印Sで示している方向へ変形させて、ロックレバー25とストッパー40とが衝接することがないような状態で、フィルターケース16を矢印AR2とは反対の方向へ回転させ、第1係合爪20と第2係合爪30との重なりを解けばよい。
【0027】
図5と
図2,3とを参照して明らかなように、フィルターケース16では、第1係合爪20が放射状に延びる複数のリブ16fどうしの間にあって、
図3においては円環状のリブ16gから垂下する状態にある。このような状態にある第1係合爪20を有するフィルターケース16は、いわゆるアンダーカット構造がないもので、それを熱可塑性プラスチックの射出成形によって作る場合には、金型構造が比較的簡単なものになって、金型の製作とフィルターケース16の成形とが容易なものになるというメリットを発揮する。
【0028】
図6の(a),(b)は、
図2において連結状態にあるフィルターホルダー12とホルダー受けリング9それぞれの平面形状を示す図である。ただし、フィルターホルダー12は、
図2において後方から前方を見たときの形状が示され、ホルダー受けリング9は前方から見たときの形状が示されている。したがって、フィルターホルダー12とホルダー受けリング9とは、顔面被覆部3を介した状態で図に現れている面どうしを向かい合わせて、嵌め殺しとなるように組み付けることができる。
【0029】
図6(a)のフィルターホルダー12において、第2通気管路12aを形成している円筒状部12pには、ホルダー受けリング9に対して嵌め殺しの状態となるように嵌合する弾性爪12e、12fが周方向に間隙12g,12hをあけて並んでいる。円筒状部12pの周方向において、弾性爪12fは弾性爪12eよりも周方向の寸法が短く、間隙12hは間隙12gよも狭く作られている。ホルダー受けリング9は第2通気管路12aに通気可能につながる環状の部材で、環の内周面には第1突起9aと第2突起9bとが形成されている。第1突起9aどうし、第2突起9bどうしは径方向において対向している(
図4参照)。図におけるフィルターホルダー12を矢印AR3で示す方向へ反転させて、ホルダー受けリング9に重ねて押圧すると、フィルターホルダー12における間隙12gと12hとのそれぞれに、ホルダー受けリング9の第1突起9aと9bとのそれぞれが進入して、フィルターホルダー12とホルダー受けリング9との位置関係が決まる。次いで、フィルターホルダー12をさらに押圧すると、弾性爪12e,12fのそれぞれが弾性変形しながら、ホルダー受けリング9の内周縁部9cの下側に入り、フィルターホルダー12とホルダー受けリング9とが嵌め殺しの状態になる(
図2参照)。ホルダー受けリング9における第2突起9bは、フィルターホルダー12に対する位置決め手段であり、フィルターホルダー12は、図示の状態から180度回転させた状態でもホルダー受けリング9に取り付けることができる。
【0030】
図6(b)において、フィルターホルダー12は、
図6(a)における間隙12gと同じ間隙12gをあけて周方向に並ぶ6個の弾性爪12eを有する。また、ホルダー受けリング9には、第1突起9aのみが周方向へ等間隔で形成されている。このようなフィルターホルダー12は、矢印AR3で示す方向へ反転させてホルダー受けリング9に嵌め殺しの状態で組み付けることができるだけでなく、時計方向または反時計方向へ60度ずつ回転させる毎に、ホルダー受けリング9に組み付けることができるようになる。
【0031】
図7は、フィルターケース16の斜視図であって、フィルターケース16におけるストッパー40の態様を(a),(b)によって例示している。
図7(a)のストッパー40は、
図2のストッパー40と同じものであって、一部分が仮想線で示されているロックレバー25をフィルターケース16の周方向における両側から挟むことができるように、その周方向において対向する一対のものとして形成されている。ただし、本発明においてのストッパー40は、フィルターケース16における周壁部16aの一部分である後壁部分16bに形成された一対の隆起部41にあって、ロックレバー25を介して互いに対向している壁面の部分を意味しており、ストッパー40と呼ぶことに代えてストッパー壁40と呼ぶことがある。そのフィルターケース16の周壁部16aでは、一対のストッパー40,40の間に目印16mがあって、フィルターケース16をフィルターホルダー12に対してロックしているときのロックレバー25が納まるべき位置を示している。すなわち、ロックレバー25が目印16mに符合しているときは、ロックレバー25が一対のストッパー40の間に位置しているときであって、フィルターユニット11がフィルターホルダー12に対して正しく取り付けられた状態にあることを意味している。マスク1では、それが着用されているときであっても、ロックレバー25が目印16mに符合していることによって、マスク1がその状態にあることを知ることができる。また、ロックレバー25の長さがフィルターケース16の周面16aから延出する長さを有している場合には、ロックレバー25と目印16mとの符合を特に容易に確認することができる。
図7(a)のストッパー40を採用する場合のフィルターユニット11では、それを
図5に例示のフィルターホルダー12にセットするときには、
図2に仮想線で示すように、ロックレバー25をフィルターケース16とフィルターホルダー12とが作る通気路の長さ方向へ弾性変形させて、ロックレバー25と隆起部41との衝突を回避しながら、フィルターユニット11をフィルターホルダー12に対して回転させる必要がある。
【0032】
図7(b)に例示のストッパー40では、ストッパー40を形成するための隆起部41が
図7(a)の隆起部41とは異なり、フィルターケース16の周方向に延びる斜面42を有する。フィルターユニット11を
図5に例示の手順でフィルターホルダー12にセットするときには、ロックレバー25に手を触れることなく、フィルターユニット11を回転させれば、ロックレバー25は自動的に弾性変形しながら斜面42を登るように変形して、一対のストッパー40の間に納まり、目印16mに符合する状態となる。なお、本発明では、フィルターケース16に隆起部41を作ることに代えて、フィルターケース16の後壁部分16bに径方向へ延びる溝を作り、その溝にロックレバー25を納めるようにして、溝の側壁をストッパー40として使用し、その側壁にロックレバー25を衝接させることでフィルターユニット11の回転を止めるようにしてもよい。いずれの場合においても、ロックレバー25は、その先端部分がフィルターケース16の周壁部16aのどこかに接触して、好ましくは圧接して、フィルタユニット11の不必要な回転を防ぐように作用するとともに、ロックレバー25自体が振動することを防ぐように作用するものであることが好ましい。
【0033】
図8は、ロックレバー25についての実施態様の一例を示す
図2と同様な図である。
図8におけるロックレバー25は、フィルターユニット11におけるフィルターケース16の径方向の内側から外側に向かって延びている。フィルターホルダー12には、ロックレバー25を介して対向することができるように形成された一対のストッパー40があるが、図では一対のうちの一方のストッパー40のみが示されている。
図2,7の例示から明らかなように、ロックレバー25は、空気の流れの上流側における通気性ユニットであるフィルターユニット11に設けることもできるし、下流側における通気性ユニットであるフィルターホルダー12に設けることもでき、それに合わせて、ストッパー40はフィルターホルダー12に設けることもできるし、フィルターユニット11に設けることもできる。
【0034】
図9は、本発明の一実施態様であるフィルターユニット111とフィルターホルダー112とに使用する連結機構の一例を示すための
図4と同様な図である。フィルターユニット111とフィルターホルダー112とは、
図2~4に記載のフィルターユニット11とフィルターホルダー12と同様な部材であるが、以下に記載する点において相違している。ただし、
図9と
図2~4とにおいて互いに共通する部分については、
図2~4で使用した参照符号と同じ参照符号が
図9において使用されている。そのような
図9においてのフィルターユニット111では、上流側通気管路111aの一部である通気管路116eを画成している円筒状の内側周壁部16jに一対の係合爪130、すなわち係合爪130aと130bとが形成されている。係合爪130aと130bとは、内側周壁部16jの周方向へ延びていて、径方向の内側に向かって、すなわち通気管路116eの中心に向かって突出する態様で対向している。また、フィルターホルダー112には、円筒状部112pの内側に、放射状のリブ112rと放射状のリブ112rと交差する環状のリブ112sとが形成され、その環状のリブ112sの周方向に並ぶ4つの係合爪120、すなわち係合爪120a,120b,120c,120dは、円筒状部12pにおける径方向の内側から外側に向かう方向へ突出している。係合爪120aと係合爪120bとは互いに接近して一群となり、係合爪120cと係合爪120dとは互いに接近して一群となっている。
【0035】
図9における係合爪120と係合爪130とは、
図2~4における係合爪20と係合爪30の場合と同様に、バヨネット機構を形成していて、
図9においてのフィルターケース116、換言するとフィルターユニット111、とフィルターホルダー112とを突き合わせて、互いに逆方向へ回転させると、係合爪120が前方に位置し、係合爪130が後方に位置する態様で重なり合うことによって、フィルターケース116とフィルターホルダー112との間にバヨネット機構におけるロック作用が働く。そのときに、フィルターホルダー112のロックアーム25は、フィルターケース116における一対のストッパー40の間に位置している。このように形成されている
図9の吸気ユニット110では、本発明においての第1係合爪となる係合爪、すなわち係合爪120を有していて、第1通気管路となる管路、すなわち通気管路112を提供するものは、吸気用エアーの流れの下流側に位置するフィルターホルダー112である。また、本発明においての第2係合爪である係合爪、すなわち係合爪130を有していて、第2通気路となる管路、すなわち通気管路111aを提供するものは、吸気用エアーの流れの上流側に位置するフィルターケース116、換言するとフィルターユニット111である。
【0036】
本発明に係る第1通気管路の第1端部と第2通気管路の第2端部とについての連結機構は、バヨネット機構を使用するものであるが、そのバヨネット機構は通気管路の内側に形成されるものであるから、例えば
図1に例示のマスク1を塵埃の発生する作業場において着用しても、バヨネット機構がそのじん埃で汚れて、フィルターホルダー12に対するフィルターユニット11の交換作業が手間取るものになるということがない。
【0037】
本発明に係る連結機構の一例においてはまた、バヨネット機構の一部分を形成する第1係合爪20が、フィルターケース16における通気管路16eの内側に形成されているが、通気管路16eにおける放射状のリブ16fと円環状のリブ16gとを利用して成形されるものであるから、既述のとおりその成形は容易である。加えて、一例としてフィルターホルダー12と一体的に形成したロックレバー25は、フィルターケース16と一体的に形成することもできる。
【0038】
マスク1の吸気路を形成しているフィルターユニット11とフィルターホルダー12、およびフィルターユニット111とフィルターホルダー112を例にとって説明した本発明に係る通気管路の連結機構は、上流側の通気管路であるフィルターユニット11と下流側の通気管路であるフィルターホルダー12、およびフィルターユニット111とフィルターホルダー112とを対象に、それら通気管路の内側においてバヨネット機構を使用し、そのバヨネット機構が正常な連結状態にあるときの上流側の通気管路と下流側の通気管路との位置を弾性変形可能なアームであるロックレバー25によって保持することを特徴とするものであったが、本発明に係る連結機構は、例示の如きマスク1に限らず、広く一般的に、第1通気管路における第1端部と第2通気管路における第2端部とを分離可能に連結して一連の通気管路を形成する場合の連結機構として使用することができる。この場合において、第1通気管路は上流側の通気管路であっても、下流側通気路であってもよく、第2通気管路は下流側の通気管路であっても、上流側の通気管路であってもよいことは、
図4と
図9との対比によって明らかになる。
【符号の説明】
【0039】
1 呼吸マスク
3 被覆部
5 面体
10 吸気ユニット
11 フィルターユニット
11a 第1通気管路(上流側通気管路)
12 フィルターホルダー(下流側連結部)
12a 第2通気管路(下流側通気管路)
12p 第2周壁部(円筒状部)
16 フィルターケース(上流側連結部)
16a 第1周壁部(周壁部)
16b 第1周壁部(周壁部、後壁部分)
16c 中心部
16e 第1通気管路(通気管路)
17a 第1周壁部(周壁部)
20 第1係合爪(上流側連結部)
25 アーム(ロックレバー)
30 第2係合爪(下流側連結部)
40 ストッパー(ストッパー壁)
111 フィルターユニット
111a 第2通気管路(通気管路)
112 フィルターホルダー
112a 第1通気管路
116 フィルターケース
116e 通気管路
120 第1係合爪(係合爪)
120a,b,c,d 第1係合爪(係合爪)
130 第2係合爪
130a,b 第2係合爪(係合爪)