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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066047
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】荷物搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 67/02 20060101AFI20220421BHJP
【FI】
B65G67/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174951
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】591206500
【氏名又は名称】株式会社 ダイサン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小瀧 大蔵
【テーマコード(参考)】
3F076
【Fターム(参考)】
3F076BA01
3F076BA05
3F076CA01
3F076CA07
3F076DA02
3F076DA20
3F076DB09
(57)【要約】
【課題】作業員に負担を掛けず荷物を安定的に押すことができ、かつ、荷積ヤードの既存床面に敷設するだけで大掛かりな床面加工を要しない荷物搬送システムを提供する。
【解決手段】荷物搬送システム10は、荷積ヤード100の床面に設置され、載置された荷物Lが摺動可能な摺動部を備えた摺動部材12と、摺動部材12の両側に配置され荷物搬送方向Mに互いに平行に延設されたレール14と、レール14に沿って設けられたラック16と、摺動部材12の上に置かれた荷物Lに当接して荷物Lを押す押し台18と、押し台18に取り付けられ押し台18を荷物Lの方向に駆動するための動力を提供する駆動機構18Bと、押し台18に回転可能に支持され駆動機構18Bから回転力が伝達される駆動シャフトと、駆動シャフトの両端部分に取付けられレール14の上を走行する走行輪22と、駆動シャフトの両端部分に取付けられラック16と噛み合うギア24と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷積ヤードの床面に設置され、載置された荷物が摺動可能な摺動部を備えた摺動部材と、
前記摺動部材の両側に配置され、荷物搬送方向に互いに平行に延設されたレールと、
前記レールに沿って設けられたラックと、
前記摺動部材の上に置かれた前記荷物に当接して前記荷物を押す押し台と、
前記押し台に取り付けられ前記押し台を前記荷物の方向に駆動するための動力を提供する駆動機構と、
前記押し台に回転可能に支持され前記駆動機構から回転力が伝達される駆動シャフトと、
前記駆動シャフトの両端部分に取付けられ前記レールの上を走行する走行輪と、
前記駆動シャフトの両端部分に取付けられ前記ラックと噛み合うギアと、
を有する荷物搬送システム。
【請求項2】
前記駆動機構は、電動モータで構成され、前記電動モータには電流の流れを切り替え可能なスイッチが設けられている、
請求項1に記載の荷物搬送システム。
【請求項3】
前記摺動部材の前記摺動部は、上面に複数の突起が形成された板部材である、
請求項1又は2に記載の荷物搬送システム。
【請求項4】
前記荷積ヤードの床面は、昇降装置で支持された昇降ボードで構成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の荷物搬送システム。
【請求項5】
トラックの荷室又はコンテナの床面と前記荷積ヤードの床面との間に設けられ、前記トラックの荷室又は前記コンテナの床面と前記荷積ヤードの床面との隙間を塞ぐ架け渡し部材を有する、
請求項4に記載の荷物搬送システム。
【請求項6】
前記押し台には、前記レールの下面を走行するガイド輪が設けられている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の荷物搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷積ヤードにおける荷役作業として、例えばトラックの荷室や、海上輸送用コンテナ或いはトラックや列車等に積載されるコンテナ(以下、合わせて「コンテナ」とも称する。)の内側に、外側から荷物を積み込む荷積作業(バンニング)が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コンテナに荷物を積み込むための装置であり、荷物を載せた荷台が置かれる集積台を備える荷積装置が開示されている。この荷積装置では、荷物の搬送方向に沿って複数のリブが並設された板部材が集積台の天面と荷台の下面にそれぞれ設けられており、両方の板部材のリブが互いに噛み合っている。
【0004】
また、集積台には、集積台の傾斜角度を調節するための油圧シリンダと、荷物を載せた荷台を押し出すための押出板が設けられている。この荷積装置では、集積台を傾けた状態で作業者が押出板(押し台)を押して荷物を載せた荷台をコンテナ側へ押し出すことで、コンテナ内へ荷物を載せた荷台を簡単に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-88683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1の場合、集積台を傾けるために油圧シリンダ等の昇降装置が必要となるため、荷積装置の構造が複雑になり、コストや取り扱い負担が大きくなる。構造をより簡易にするため、水平に移動する押し台を用いて荷物を水平に押し出すことによって、荷物を傾斜させることなく搬送する荷積方法が考えられる。しかし、人力で荷物を押すのは、板部材にリブを設けることにより人力の軽減が図られてはいるが、摩擦抵抗を完全に無くすことはできないため、荷物が一定以上重くなると、どうしても作業員に大きな負担が掛かることになる。
【0007】
本発明は上記した問題に着目して為されたものであって、荷積み作業において作業員に負担を掛けず荷物を安定的に押すことができ、かつ、荷積ヤードの既存床面に敷設するだけで大掛かりな床面加工を要しない荷物搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の荷物搬送システムは、荷積ヤードの床面に設置され、載置された荷物が摺動可能な摺動部を備えた摺動部材と、摺動部材の両側に配置され、荷物搬送方向に互いに平行に延設されたレールと、レールに沿って設けられたラックと、摺動部材の上に置かれた荷物に当接して荷物を押す押し台と、押し台に取り付けられ押し台を荷物の方向に駆動するための動力を提供する駆動機構と、押し台に回転可能に支持され駆動機構から回転力が伝達される駆動シャフトと、駆動シャフトの両端部分に取付けられレールの上を走行する走行輪と、駆動シャフトの両端部分に取付けられラックと噛み合うギアと、を有する。
【0009】
上記構成によれば、荷積ヤードの床面には、摺動部を備えた摺動部材が設置されており、摺動部材に載置された荷物を押して搬送できる。摺動部材の両側には、荷物の荷物搬送先に向かってレールとラックが設けられている。レールの上には走行輪が配置され、ラックにはギアが噛み合っている。走行輪とギアには、押し台に回転可能に支持された駆動シャフトで回転力が伝達され、駆動シャフトには、押し台に設けられた駆動機構で回転力が伝達される。駆動機構の回転力を用いて荷物を押して搬送できるので、人力で押す必要がなく、作業員の負担を低減できる。また、レールと走行輪、及び、ラックとギアの組み合わせで、走行輪がスリップすることなく、押し台が荷物を荷物搬送先に向かって安定した状態で押していくことができる。
【0010】
請求項2に記載の荷物搬送システムでは、駆動機構は、電動モータで構成され、電動モータには電流の流れを切り替え可能なスイッチが設けられている。上記構成によれば、電動モータに供給する電力を調節することで、発生する駆動力を一定範囲で調節することができ、また、スイッチで電流の流れを逆転させることで、走行輪とギアの回転方向が逆転して押し台が待機位置と荷物搬送先の間を往復できる。例えば、押し台が荷物搬送先まで移動した後、作業者が押し台を待機位置まで引っ張り戻す手間を低減できる。
【0011】
請求項3に記載の荷物搬送システムでは、摺動部材の摺動部は、上面に複数の突起が形成された板部材である。上記構成によれば、荷物が載置される板部材の表面に、複数の突起が形成されている。このため、例えば、板部材の表面が平坦面である場合と比べ、荷物との接触面積を小さくできるので、荷物と板部材との間で生じる摩擦力が低減される。結果、荷物を比較的小さな力で搬送方向へ移動させることができるので、押し台の小型化を図ることができる。
【0012】
請求項4に記載の荷物搬送システムでは、荷積ヤードの床面は、昇降装置で支持された昇降ボードで構成されている。上記構成によれば、昇降装置で昇降ボードを上下させることで、トラックの荷室又はコンテナの床面高さと荷物の下面の高さを一致させ段差部をなくすことで、荷物を引っ掛けることなく、トラックの荷室又はコンテナに荷物を積み込むことができる。また、必要に応じて、自在ジョイントなどを介して昇降装置により昇降ボードに傾斜を与え、荷物の摺動による移動を補助することもできる。
【0013】
請求項5に記載の荷物搬送システムは、トラックの荷室又はコンテナの床面と荷積ヤードの床面との間に設けられ、トラックの荷室又はコンテナの床面と荷積ヤードの床面との隙間を塞ぐ架け渡し部材を有する。上記構成によれば、架け渡し部材によって、トラックの荷室又はコンテナの床面と荷積ヤードの床面との隙間が塞がれるので、隙間から荷物が脱落したり隙間に荷物が引っ掛かったりすることなく、荷室又はコンテナに荷物を円滑に荷積みできる。
【0014】
請求項6に記載の荷物搬送システムでは、押し台には、レールの下面を走行するガイド輪が設けられている。上記構成によれば、ガイド輪がレールの下面を走行することで、押し台の浮き上がりが抑制され、ラックからギアが外れることを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る荷物搬送システムによれば、荷積み作業において作業員に負担を掛けず荷物を安定的に押すことができ、かつ、荷積ヤードの既存床面に敷設するだけで大掛かりな床面加工を要しない荷物搬送システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る荷物搬送システムを、一部を切断して説明する平面図である。
図2】本実施形態に係る荷物搬送システムを、一部を切断して説明する正面図である。
図3】本実施形態に係る荷物搬送システムを、一部を切断して説明する側面図である。
図4】本実施形態に係る荷物搬送システムを用いた荷物方法を、一部を破断して説明する正面図である。
図5】第1変形例に係る荷物搬送システムを、一部を切断して説明する平面図である。
図6】第2変形例に係る荷物搬送システムを、一部を切断して説明する平面図である。
図7】第2変形例に係る荷物搬送システムの他の例を、一部を切断して説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
<荷物搬送システムの構造>
図1に示すように、本実施形態に係る荷物搬送システム10は、荷積ヤード100において、荷物Lを荷物搬送方向M(左右方向)に沿って押し出して、荷物搬送先であるトラック110の荷室112まで搬送するために使用される装置である。荷物搬送システム10は、摺動部材12と、レール14と、ラック16(平歯車)と、押し台18と、駆動機構18Bと、駆動シャフト20と、走行輪22と、ギア24と、を有する。なお、本実施形態では、図1中に破線で例示されているように、10個の荷物Lが一括して搬送されているが、本発明では、荷物の個数は、1個以上であればよい。
【0019】
(摺動部材)
摺動部材12は、荷積ヤード100の床面100Aに設置された板部材であり、上側に載置された荷物Lが摺動可能な摺動部12Aを備えている。また、トラック110の荷室112の床面にも、荷積ヤード100の床面100Aに設置された摺動部材12と同様の摺動部材12が設置されている。なお、本実施形態では、荷物Lは、摺動部材12の上に直接載置されているが、本発明では、これに限定されず、例えば、荷物Lが搬送用のパレット等の上に載置されると共に、このパレット等を摺動部材12の上に載置して、摺動させてもよい。
【0020】
摺動部材12は、長手方向が荷物搬送方向Mと平行になるように配置される。摺動部材12は、スライダーボード(表面の滑動性をよくするよう特に加工された単体板材)を用いて形成されており、床面100A上に荷物搬送方向Mの上流から下流に亘って配置されている。また、4枚の摺動部材12が、床面100Aの幅方向(図1中の上下方向)に沿って配置されている。
【0021】
本実施形態では、摺動部材12は、1枚のスライダーボードを用いて構成されている。スライダーボードは、例えば、ポリアセタールを主原料とする樹脂製ボードであり、その表面は特に滑動性をよくするための加工がなされている。なお、本発明では、これに限定されず、例えば、1枚の摺動部材12の板部材が、複数枚のスライダーボードを縦方向及び/又は横方向に連結することによって構成されてもよい。
【0022】
また、本実施形態では、床面100Aの幅方向(図1中の上下方向)に沿って、4枚の摺動部材12が配置されている。しかし、本発明は、これに限定されず、必要な領域を覆う面積を有する摺動部材12を1枚だけ配置してもよいし、或いは、比較的小面積の摺動部材12を必要な領域に必要な枚数だけ隙間なく敷き詰めるように配置してもよい。
【0023】
摺動部12Aは、図3に示されるように、板部材を形成するために用いられたスライダーボードの表面に形成されている複数のリブ状突部を有している。図1に示したように、摺動部12Aの突部は、摺動部材12の長手方向に沿って延びると共に幅方向に間隔をあけて形成されている。突部は、板部材の全長に亘って形成されている。
【0024】
図3に示すように、本実施形態における摺動部12Aの突部は、長さ方向に直交する横断面を見た場合、下側から上側に向かうに従って、左右方向の幅が縮径するように突出する三角形状である。なお、本発明では、突部の形状はこれに限定されず、例えば、頂部が丸められた円弧状、又は円錐状等、他の形状でもよい。また、突部は、突起の連なりで構成されてもよい。荷物Lの底面と摺動部材12とが面(面状)接触をすることなく、線(線状)或いは点(点状)接触をし、摩擦力が低減されればよい。
【0025】
なお、本発明では、摺動部が突部である場合、突部は、上記のように板部材の長手方向の一端から他端まで線状に連続する形状、鎖線状に離散的に配置された形状、点線状に配置された形状、又は鎖線状と点線状を組合せた形状等、どのような形状であってもよい。さらに、リブの頂部の断面形状も、エッジ状又は楔状に尖った形状等であってもよく、耐荷重や摺動性を考慮して適宜選択することができる。また、本実施形態では、摺動部材12は、板部材であり、摺動部12Aは、上面に形成された複数の突起であるが、本発明では、摺動部材12は、上面に突起が形成された板部材に限定されず、例えば、搬送ローラ等であってもよい。
【0026】
(レール)
レール14は、床面100Aで、摺動部材12の両側に配置され、トラック110の荷室112に向かって延設されている。本実施形態では、レール14は、H型鋼であるが、本発明では、形状や素材は適宜変更できる。
【0027】
(ラック)
ラック16は、レール14の上面上に、レール14に沿って延設されている。ラック16は、図2に示すように、平板状の棒部材であり、棒部材の上部に、一定の形状を有する歯が、左右方向(某部材の長手方向に直角な方向)に沿って繰り返し設けられている。ラック16の素材としては、スチール鋼等の金属や、樹脂、木材等を適宜採用できる。ラック16は、レール14に、ボルト止めや溶接等によって接合できる。
【0028】
(押し台)
押し台18は、レール14及びラック16の上に跨って載置され、筐体18Aと、駆動機構18Bと、押し部材18Cとを備える。筐体18Aは、図2に示すように、逆U字(コ字の開口部が下向きの形)状であり、スチール鋼等の金属板によって構成されている。筐体18Aの上部(逆U字の底部に相当する平坦な部分)の上面上には、駆動機構18Bが載置されている。筐体18Aの逆U字の内側となる下側には、駆動シャフト20が、不図示のベアリング等によって回転可能に支持されている。駆動シャフト20には、駆動機構18Bから回転力が伝達される。
【0029】
(駆動機構)
駆動機構18Bは、押し台18を荷物Lの方向に駆動するための動力を提供する。本実施形態では、駆動機構18Bは、電動モータで構成され、電動モータには電流の流れを切り替え可能なスイッチ(不図示)が設けられている。電動モータの駆動力が、ギアを介して駆動シャフト20に伝達されることによって、駆動シャフト20に取付けられた走行輪22が、レール14上を走行する。駆動機構18Bのギアの符号は省略する。
【0030】
また、電流の流れを切り替えることによって、電動モータの回転方向が反転し、それに伴って走行輪22の回転方向が切り替わり、結果、押し台18の移動方向が、荷物搬送方向Mにおいて、一方側(例えば、図1中の左側に向かう方向)と他方側(例えば、図1中の右側に向かう方向)とに切り替わる。なお、電動モータの駆動力を駆動シャフト20に伝えるためのギア比は、電動モータの性能及び荷物Lを押すための力や速度などを勘案して、適宜選定することができる。
【0031】
なお、駆動機構18Bの制御は、不図示のコントローラによって行われる。また、電動モータの駆動力は、ギアの代わりに、チェーンやベルト等を介して走行輪22に伝達されてもよい。また、本発明では、駆動機構は、電動モータに限定されない。押し台18を荷物搬送方向Mに押し出すことが可能である限り、駆動機構は、例えば、液体燃料や気体燃料の燃焼熱を利用する内燃機関等であっても、或いは、人間が電動アシストを併用してベダルを漕ぐような動力源であってもよい。
【0032】
(押し部材)
押し部材18Cは、板状部材であり、床面100Aから鉛直に立ち上がった状態で、筐体18AのU字の側面(図2中の左側面)に、例えばボルト止め等によって取り付けられている。押し部材18Cの素材としては、金属や木材等、任意に採用できる。押し部材18Cの筐体18Aと反対側の面(図2中の左側面)は、荷物Lに当接(接触)する。押し部材18Cは、押し台18の荷物搬送方向Mに沿った移動に伴って移動し、荷物Lを押し出す。
【0033】
なお、押し部材18Cの寸法や形状は、荷物Lの形状に応じて適宜変更できる。また、押し部材のような別部材を設けることなく、押し台18の筐体18Aの側面そのものを用いて荷物Lを押し出してもよい。
【0034】
(走行輪)
走行輪22は、本実施形態では、駆動シャフト20の一端側と他端側のそれぞれに、2個ずつ設けられている。2個の走行輪22は、ラック16を挟んで配置され、2個の走行輪22を貫通する駆動シャフト20は、ラック16の上側で水平方向に延びている。図示を省略するが、2個の走行輪22のそれぞれとラック16との間には、僅かに隙間が設けられており、2個の走行輪22は、ラック16と接触することなく回転可能である。また、2個の走行輪22がラック16を挟んで配置されることによって、駆動シャフト20の軸方向における2個の走行輪22の変位が、実質的に規制されている。このため、本実施形態では荷物搬送システム10の水平方向の横ずれを抑制できる。
【0035】
なお、本発明では、走行輪22の個数及び配置位置は、適宜変更できる。また、走行輪22は、駆動シャフト20に固定されていてもよく、または、駆動シャフト20とはベアリングなどを介して自由回転するようになっていてもよい。
【0036】
(ギア)
ギア24は、駆動シャフト20の両端部分に取付けられており、ラック16と噛み合うピニオンギアである。ギア24は、円板状の部材であり、円板の周縁には、ラック16の歯と噛み合う形状を有する歯が、繰り返し設けられている。ギア24の素材としては、スチール鋼等の金属や、樹脂、木材等を採用できる。なお、ギア24としては、ピニオン(小歯車)を用いることもできる。
【0037】
図1に示すように、本実施形態では、駆動シャフト20の一端側と他端側のそれぞれに、ギア24が1個ずつ配置されるように一対のギア24が設けられている。なお、本発明では、ギアの個数は、例えば駆動シャフト20の一端に2個ずつ等、適宜変更できる。
【0038】
(ガイド輪)
図1及び図2に示すように、本実施形態では、駆動シャフト20の一端における2個の走行輪22のうち外側の走行輪22の下側に、ガイド輪26が設けられている。ガイド輪26は、連結部材28を介して駆動シャフト20に連結されている。連結部材28は、板状部材であり、連結部材28の一端側には、駆動シャフト20が、回転自在に連結されると共に、連結部材28の他端側には、ガイド輪26の回転軸が、回転自在に支持されている。
【0039】
また、ガイド輪26の上部は、レール14の上首部の下面に接触している。ガイド輪26の上部をレール14の上首部の下面へ確実に接触させるために、連結部材28にスプリング機構を設けることもできる。ガイド輪26は、押し台18の移動に連動して移動することによって、レール14の下面を走行する。これによって、押し台18がレール14から万一外れて脱落することが防がれる。なお、本発明では、ガイド輪26は必須ではない。また、ガイド輪26の取付け位置や個数は、適宜変更できる。
【0040】
(従動部材)
また、図1に示すように、本実施形態では、押し台18に、従動シャフト30、従動輪32、及びガイド輪36が設けられている。従動シャフト30は、押し台18の筐体18Aの駆動シャフト20より押し部材18C側の位置に、筐体18Aに回転可能に支持されている。従動輪32は、従動シャフト30の両端に1個ずつ取り付けられ、従動輪32の下側には、連結部材38を介してガイド輪36が回転可能に支持されている。
【0041】
従動輪32の下側のガイド輪36及び連結部材38の構造は、走行輪22の下側のガイド輪26及び連結部材28の構造と同様である。本実施形態では、従動シャフト30、従動輪32及びガイド輪36によって、より安定性が高められている。なお、本発明では、押し台が荷物を押して移動できる限り、従動シャフト30、従動輪32及びガイド輪36は必須ではない。
【0042】
<荷物搬送方法>
次に、本実施形態に係る荷物搬送システム10を用いた荷物搬送方法を説明する。まず、図1に示したように、荷積ヤード100の床面100Aには、摺動部12Aを備えた摺動部材12が設置されている。摺動部材12の上には、荷物Lが載置されている。また、摺動部材12の両側には、荷物Lの荷物搬送先であるトラック110の荷室112に向かってレール14とラック16が設けられている。レール14の上には走行輪22が配置され、ラック16にはギア24が噛み合っている。押し台18は、図1中の荷積ヤード100の右側の位置(待機位置)に配置されている。
【0043】
そして、図4に示すように、押し台18に設けられた駆動機構18Bの電源を入れて電流を流すことによって、駆動機構18Bが回転すると、駆動機構18Bで生じた回転力が駆動シャフト20に伝達される。駆動シャフト20は、押し台18に回転可能に支持されているため、駆動機構18Bの回転力は、走行輪22とギア24に伝達される。走行輪22とギア24とが回転する。
【0044】
走行輪22がレール14の上を、ギア24がラック16の上を、それぞれ回転しながら、荷室112に向かって移動することによって、押し部材18Cが荷物Lに接触した状態で、押し台18が、荷物搬送方向Mに沿って荷室112側に荷物Lを押して移動する。押し台18に押されることによって、図4中の床面100Aの左端部を越えた荷物Lは、荷積ヤード100と荷室112との隙間を乗り超え、荷室112の床面上に設置されている摺動部材12の上に移載される。
【0045】
更に、押し台18が図4中の左側に移動し続けることによって、荷物Lは、荷室112内の所定の位置(搬送予定位置)に到達する。押し台18が搬送予定位置に到達した後、駆動機構18Bの電源を止めて、押し台18を停止させる。
【0046】
以上の工程によって、本実施形態に係る荷物搬送システムを用いた荷物搬送方法が実現される。なお、押し台18が搬送予定位置に到達した後、駆動機構18Bの電源を再び入れると共に、駆動機構18Bの電流の流れを搬送時とは逆に切り替えることで、走行輪22及びギア24の回転方向が切り替わる。走行輪22及びギア24の回転方向の切り替えによって、押し台18が荷室112内から荷積ヤード100側の待機位置に自走で復帰する。
【0047】
(作用効果)
本実施形態に係る荷物搬送システム10によれば、駆動機構18Bの回転力を用いて荷物Lを押して搬送できるので、人力で押す必要がなく、作業員の負担を低減できる。また、レール14と走行輪22、及び、ラック16とギア24の組み合わせで、走行輪22がスリップすることなく、押し台18が荷物Lを荷物搬送先に向かって安定した状態で押していくことができる。また、荷物搬送システム10を荷積ヤード100の既存の床面100Aに敷設するだけで済むので、大掛かりな床面加工を要しない。
【0048】
また、本実施形態では、駆動機構18Bは、電動モータで構成され、電動モータには電流の流れを切り替え可能なスイッチが設けられている。電動モータに供給する電力を調節することで、発生する駆動力を一定範囲で調節することができ、また、スイッチで電流の流れを逆転させることで、走行輪22とギア24の回転方向が逆転して押し台18が待機位置と荷物搬送先の間を往復できる。例えば、押し台18が荷物搬送先まで移動した後、作業者が押し台18を待機位置まで引っ張り戻す手間を低減できる。
【0049】
また、本実施形態では、荷物Lが載置される板部材の摺動部材12の表面に、複数の突起が摺動部12Aとして形成されている。このため、例えば、板部材の表面が平坦面である場合と比べ、荷物Lとの接触面積を小さくできるので、荷物Lと板部材との間で生じる摩擦力が低減される。結果、荷物Lを比較的小さな力で搬送方向へ移動させることができるので、駆動機構18Bとして比較的出力の低い小型で安価な駆動装置を用いることが可能となり、それに伴って押し台18の小型化を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態では、ガイド輪26がレール14の下面を走行することで、押し台18の浮き上がりが抑制され、ラック16からギア24が外れることを防止できる。
【0051】
<第1変形例>
図5に示すように、第1変形例に係る荷物搬送システム10では、トラック110の荷室112と荷積ヤード100との間に、T字型の架け渡し部材40が設けられてもよい。架け渡し部材40は、トラック110の荷室112の床面と荷積ヤード100の床面100Aとの隙間を塞ぐ。
【0052】
架け渡し部材40は、スチール鋼等の金属や木材等によって作製できる。架け渡し部材40の上面は、荷物との摩擦係数が小さくなるように、滑らかな平坦面であることが好ましい。架け渡し部材40の上面は、荷積ヤード100の床面100A上の摺動部材12の上面と、トラック110の荷室112の床面上の摺動部材12の上面と面一に揃えられている。なお、架け渡し部材40の上に摺動部材12が載置され、載置された摺動部材12の上で荷物Lが搬送されてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、架け渡し部材40の形状は、T字型であったが、本発明では、これに限定されず、平板状等、適宜変更できる。また、本発明では、架け渡し部材は、トラック110の荷室112と荷積ヤード100の床面100Aとの間に設けられる場合に限定されず、コンテナの床面と荷積ヤード100の床面100Aとの間に設けられ、床面同士の隙間を塞いでもよい。また、僅かに段差がある床面に架け渡すことで荷物が段差を乗り越えられるようにするのにも用いられる。第1変形例に係る荷物搬送システム10の他の構成については、図1図4に示した荷物搬送システム10における同名の部材と同様であるため、重複説明を省略する。
【0054】
第1変形例では、架け渡し部材40によって、トラック110の荷室112又はコンテナの床面と荷積ヤード100の床面100Aとの隙間が塞がれている。このため、隙間から荷物Lが脱落したり隙間に荷物Lが引っ掛かったりすることなく、荷室112又はコンテナに荷物Lを円滑に荷積みできる。第1変形例に係る荷物搬送システム10の他の効果については、図1図4に示した荷物搬送システム10の場合と同様である。
【0055】
<第2変形例>
図6に示すように、第2変形例に係る荷物搬送システム10では、荷積ヤード100の床面100Aは、昇降装置50で支持された昇降ボード52で構成されている。昇降装置50は、例えば油圧シリンダ等であるが、本発明では、高さ調整可能な装置であれば任意の装置を昇降装置として採用できる。昇降ボード52の上には、本実施形態に係る荷物搬送システム10が載置されている。
【0056】
昇降ボード52は、例えば、鉄板、スチール鋼板、形鋼材、木材及びそれらを組み合わせた構造物等によって作製できる。なお、本発明では、高さ調整可能な昇降装置は必須ではなく、一定の高さを有する支持装置又は支持部材によって、荷物搬送システム10が所望の高さに設置されてもよい。第2変形例に係る荷物搬送システム10の他の構成については、図1図4に示した荷物搬送システム10における同名の部材と同様であるため、重複説明を省略する。
【0057】
第2変形例では、昇降装置50で昇降ボード52を上下させることで、トラック110の荷室112又はコンテナの床面高さと荷物Lの下面の高さを一致させ、段差部をなくす。このため、荷物Lを引っ掛けることなく、トラック110の荷室112又はコンテナに荷物Lを積み込むことができる。第2変形例に係る荷物搬送システム10の他の効果については、図1図4に示した荷物搬送システム10の場合と同様である。
【0058】
なお、本実施形態では、昇降ボード52は水平に支持されていたが、本発明では、これに限定されない。例えば、図7に示すように、昇降ボード52は、昇降ボード52の待機位置側(図7中の右側)の高さが荷物搬送先側(図7中の左側)の高さより高くなるように傾斜した状態で支持されてもよい。昇降ボードの傾斜は、昇降ボード下部に複数配置された昇降装置を選択的に昇降させることで前後左右の何れの方向にでも得られる。
【0059】
傾斜した昇降ボードと直立した昇降装置の間に生じる角度のズレは、昇降ボードと傾斜装置の連接部に自在ジョイントなどを設けることなどで吸収可能である。昇降ボード52が傾斜することによって、重力を活用して、荷物Lをより容易に押し出すことができる。なお、昇降ボード52を傾斜させる場合には、押し出し速度が速くなり過ぎる場合を考慮して、例えば、荷物Lの速度測定装置や、測定された速度に応じて荷物Lの移動を停止させるストッパ機構等を、適宜設けることが好ましい。
【0060】
<その他の実施形態>
本発明は上記の開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。例えば、本実施形態では、荷積ヤード100で使用される荷物搬送システム10であったが、本発明に係る荷物搬送システムは、荷積ヤードに限定されず、実質的に荷積みが実施されるあらゆる場所に適用できる。
【0061】
また、図1図7中に示したそれぞれの荷物搬送システム10の構成を部分的に組み合わせて本発明を構成してもよい。本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0062】
10 荷物搬送システム
12 摺動部材
12A 摺動部
14 レール
16 ラック
18 押し台
18A 筐体
18B 駆動機構
18C 押し部材
20 駆動シャフト
22 走行輪
24 ギア
26 ガイド輪
28 連結部材
30 従動シャフト
32 従動輪
36 ガイド輪
38 連結部材
40 架け渡し部材
50 昇降装置
52 昇降ボード
100 荷積ヤード
100A 床面
110 トラック
112 荷室
L 荷物
M 荷物搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7