(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066061
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】新規な含窒素環状化合物及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07D 403/04 20060101AFI20220421BHJP
A61K 31/515 20060101ALI20220421BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220421BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220421BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220421BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220421BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
C07D403/04 CSP
A61K31/515
A61P43/00 105
A61P13/12
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P9/12
A61P3/10
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174971
(22)【出願日】2020-10-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、橋渡し研究戦略的推進プログラム「医工連携を基盤としたオープン・イノベーション・プラットフォーム構築」「アロステリックPHD阻害によるHIF活性化剤の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】川口 真一
(72)【発明者】
【氏名】辻田 忠志
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC29
4C063DD22
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC44
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA81
4C086ZB21
4C086ZC41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低酸素誘導因子(HIF)活性剤である新規なピラゾリン誘導体を提供する。
【解決手段】下記の一般式(I)、(II)若しくは(III)で表されるピラゾリン誘導体又はその塩。(R
1は、置換又は非置換の5員環又は6員環からなる芳香環数1~2の単環構造、縮合環構造、又は多環構造のアリール基であり、R
2は水素原子又は置換若しくは非置換のアルキル基であり、R
3はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基である。但し、一般式(III)において、(R
1、R
2、R
3)の組み合わせが、各々、(フェニル基、メチル基、水素原子)、(フェニル基、メチル基、メチル基)、および、(フェニル基、エチル基、エチル基)である場合を除く。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表されるピラゾリン誘導体又はその塩。
(ただし、R
1は、置換又は非置換の5員環又は6員環からなる芳香環数1~2の単環構造、縮合環構造、又は多環構造のアリール基であり、R
2は水素原子又は置換若しくは非置換のアルキル基であり、R
3はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基である。但し、一般式(III)において、(R
1、R
2、R
3)の組み合わせが、各々、(フェニル基、メチル基、水素原子)、(フェニル基、メチル基、メチル基)、および、(フェニル基、エチル基、エチル基)である場合を除く。)
【化1】
【請求項2】
R1が1又は2つのフェニル基から構成される、
請求項1に記載のピラゾリン誘導体又はその塩。
【請求項3】
R2が炭素数1~5の低級アルキル基から構成される、
請求項1又は請求項2に記載のピラゾリン誘導体又はその塩。
【請求項4】
R3が炭素数1~6の直鎖又は環状アルキル基から構成される、
請求項1~3のいずれかに記載のピラゾリン誘導体又はその塩。
【請求項5】
ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はメソ体である、
請求項1~4のいずれかに記載のピラゾリン誘導体又はその塩。
【請求項6】
下記の一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表されるピラゾリン誘導体又はその塩を含有する組成物。
(ただし、R
1は、置換又は非置換の5員環又は6員環からなる芳香環数1~2の単環構造、縮合環構造、又は多環構造のアリール基であり、R
2は水素原子又は置換若しくは非置換のアルキル基であり、R
3はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基である。)
【化2】
【請求項7】
R1が1又は2つのフェニル基から構成される、
請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
R2が炭素数1~5の低級アルキル基から構成される、
請求項6又は請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
R3が炭素数1~6の直鎖又は環状アルキル基から構成される、
請求項6~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はメソ体である、
請求項6~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
プロリン水酸化酵素の活性阻害に使用する請求項6~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
プロリン水酸化酵素の活性阻害により治療可能な疾病に使用するための、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記疾病が、腎臓病、慢性腎疾患、虚血性疾患、高血圧、糖尿病、および動脈硬化からなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
態様が医薬品、医薬部外品、又は試薬である請求項6~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
経口投与用である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物を含有する経口投与用低酸素誘導因子活性剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含窒素環状化合物に関し、特に、研究試薬および薬剤等にも利用可能な含窒素環状化合物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
含窒素環状化合物は、医薬分野や農薬分野等で重要な化合物とされており、薬剤や植物病害防除剤等の各種用途で幅広く用いられている。
【0003】
含窒素環状化合物として例えばピラゾリン誘導体は、広い範囲で高い利用価値を有していることから、多くの研究者がその新規合成に取り組んでいる。例えば、医薬分野において、ある種のピラゾリン誘導体には、抗痙攣作用が確認されている(非特許文献1参照)。また、例えば、ピラゾリン誘導体の1つである2,3-ジアリール-ピラゾリジン誘導体には、神経ペプチド・ニューロテンシンを分解する酵素に対して阻害活性が確認されている(特許文献1参照)
【0004】
また、近年、医薬分野においては、低酸素誘導因子(HIF:Hypoxia inducible factor)活性剤(以下、HIF活性剤という)が、2019年のノーベル生理学・医学賞を受賞したウィリアム・ケリン医師によって明らかにされ、その有用な特性から注目を集めている。
【0005】
この低酸素誘導因子(HIF:Hypoxia inducible factor)とは、細胞や組織が低酸素状態に陥った際に発現し、血管新生を促進して低酸素状態を解消させる働きをもつタンパク質である。さらに低酸素誘導因子(HIF)は、赤血球生産ホルモンや血管内皮増殖因子など、多くの遺伝子の転写を促進する「マスター転写因子」であり、低酸素状態の解消に重要な役割を果たしている。
【0006】
しかし、低酸素誘導因子(HIF)は、プロリル水酸化酵素(PHD:Prolyl hydroxylase)中の鉄原子の働きにより水酸化され、これに続くフォンヒッペル・リンドウ(VHL:von Hippel-Lindau)タンパク質によるユビキチン化修飾を受けて、プロテアソームにより分解されてしまう。つまり、低酸素誘導因子(HIF)は、通常状態では、常に分解されて存在量は低く保たれることから負に制御されていることになる。
【0007】
そこで、プロリル水酸化酵素(PHD)の機能(活性)を阻害することで低酸素誘導因子(HIF)を活性化できれば、低酸素状態に対する組織の抵抗力を高められると考えられる。
【0008】
腎臓病、慢性腎疾患、虚血性疾患、高血圧、糖尿病、および動脈硬化などの生活習慣病の素因として抹消組織中での低酸素状態、すなわち虚血に関連すると注目されている。そのような虚血関連疾患の治療として、HIF活性剤の利用が考えられており、実際に臨床試験が進みつつある。
【0009】
特に慢性腎疾患の現在の治療では輸血やエリスロポエチンタンパク質の静脈注射が適用されるが、患者の経済的負担や通院頻度の増加によるQOL低下に影響することから、より負担の軽い経口治療薬が求められているところである。
【0010】
慢性腎疾患の治療薬としてのHIF活性剤としては、2-オキソグルタル酸(2-OG:2-oxoglutarate)骨格を有する化合物(2-OG類似化合物)が主成分として用いられている。2-OG類似化合物は、プロリル水酸化酵素(PHD)の活性中心部に配位し補因子として作用することから、その競合阻害作用によってプロリル水酸化酵素(PHD)を不活性化しようとする作用メカニズムである。
【0011】
従来からHIF活性剤として知られている化合物としては、ジメチルオキサロイルグリシン(DMOG:Dimethyloxaloylglycine)やIOX2(N-[[1,2-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-2-オキソ-1-(フェニルメチル)-3-キノリル]カルボニル]グリシン)等が挙げられ、いずれも2-オキソグルタル酸(2-OG)骨格を有する2-OG類似化合物である。
【0012】
さらに現在開発が進んでいるHIF活性剤としては、例えば、フィブロジェン社とアステラス製薬が共同開発したロキサデュスタット(FG-4592)が挙げられる(非特許文献2参照)。そのほかにも、田辺三菱製薬/アケビア(Akebia)社が開発するバダデュスタット(MT-6548)(特許文献2参照)、日本たばこ産業/鳥居薬品が開発するエナロデュスタット(JTZ-951)(非特許文献3参照)、グラクソ・スミスクライン が開発するダプロデュスタット(GSK-1278863)(特許文献3参照)などが挙げられる。いずれも、2-オキソグルタル酸(2-OG)骨格を有する2-OG類似化合物が使用されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開WO2003/078400号公報
【特許文献2】米国特許公開第20040254215号公報
【特許文献3】国際公開WO2007/150011号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Arzneimittel-Forschung/Drug Research, 2002, vol. 52, # 11, p. 787-791
【非特許文献2】Yeh, T. L. et al. Chem. Sci. 2017, 8 (11), 7651-7668)
【非特許文献3】Ogoshi, Y. et al. ACS Med. Chem. Lett. 2017, 8 (12), 1320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、非特許文献1や特許文献1等に例示される従来の含窒素環状化合物であるピラゾリン誘導体は、その合成反応が複雑なために高価な化合物となっており、例えば、医薬分野における薬剤をはじめ各種用途で十分に活用されているとは言えない。
【0016】
また、上述の従来のHIF活性剤も高価な薬剤となっている。これは、従来のHIF活性剤の主成分である2-OG類似化合物の合成反応が複雑なことも一因であり、安価な薬剤や試薬が望まれているが、現在のところ、そのような薬剤や試薬は見当たらない。
【0017】
本発明の目的は、研究試薬および薬剤等の広い用途に利用でき、簡便な反応工程により低コストで合成可能な新規な含窒素環状化合物を提供することにある。その用途の一つとして、プロリル水酸化酵素(PHD)の阻害作用を発揮して、HIF活性化能を奏する安価で安全性の高い組成物を提供することにある。例えば、経口用の慢性腎疾患治療薬としても利用可能な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、医薬にも応用できる新規な化合物について鋭意研究を重ねた結果、新規な含窒素環状化合物を見出した。さらに当該化合物が極めて簡便な反応工程で調製可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
かくして、本発明に従えば、上記課題を解決するものとして、下記の一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表される含窒素環状化合物又はその塩が提供される。
(ただし、R1は、置換又は非置換の5員環又は6員環からなる芳香環数1~2の単環構造、縮合環構造、又は多環構造のアリール基であり、R2は水素原子又は置換若しくは非置換のアルキル基であり、R3はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基である。但し、一般式(III)において、(R1、R2、R3)の組み合わせが、各々、(フェニル基、メチル基、水素原子)、(フェニル基、メチル基、メチル基)、および、(フェニル基、エチル基、エチル基)である場合を除く。)
【0020】
【0021】
さらに、本発明に従えば、上記一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表される含窒素環状化合物又はその塩を含む医薬組成物も提供される。(ただし、R1は、置換又は非置換の5員環又は6員環からなる芳香環数1~2の単環構造、縮合環構造、又は多環構造のアリール基であり、R2は水素原子又は置換若しくは非置換のアルキル基であり、R3はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基である。)
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例に係る化合物5aのNMRチャートを示す。
【
図2】本発明の実施例に係る化合物5a’のNMRチャートを示す。
【
図3】本発明の実施例に係る化合物5a”のNMRチャートを示す。
【
図4】本発明の実施例に係る化合物5c,5eのHIF転写活性能の測定結果を示す。
【
図5】本発明の実施例に係る化合物5f,5gのHIF転写活性能の測定結果を示す。
【
図6】本発明の実施例に係る化合物5b,5kのHIF転写活性能の測定結果を示す。
【
図7】本発明の実施例に係る化合物5j,5iのHIF転写活性能の測定結果を示す。
【
図8】本発明の実施例に係る化合物5ab,5acのHIF転写活性能の測定結果を示す。
【
図9】本発明の実施例に係る化合物5fbのHIF転写活性能の測定結果を示す。
【
図10】本発明の実施例に係る化合物5a,5a’のHIF転写活性能の測定結果を示す。
【
図11】本発明の実施例に係る化合物5aと従来のHIF阻害剤とのHIF安定化細胞間比較の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の含窒素環状化合物又はその塩は、以下の一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表される。(ただし、R1は、置換又は非置換の5員環又は6員環からなる芳香環数1~2の単環構造、縮合環構造、又は多環構造のアリール基であり、R2は水素原子又は置換若しくは非置換のアルキル基であり、R3はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基である。但し、一般式(III)において、(R1、R2、R3)の組み合わせが、各々、(フェニル基、メチル基、水素原子)、(フェニル基、メチル基、メチル基)、および、(フェニル基、エチル基、エチル基)である場合を除く。)
【0024】
【0025】
本発明者らは、本発明に係る含窒素環状化合物又はその塩を、上記の一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表される各々別個独立した化合物としてのピラゾリン誘導体もしくはピラゾリジン誘導体の合成に成功して本発明を導き出している。すなわち、上記の一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)の各々は、同一化合物の互変異体(ケト・エノール互変異体、エナミン・イミン互変異体)を便宜上表しているのではなく、独立したピラゾリン誘導体もしくはピラゾリジン誘導体として各々別個に合成された含窒素環状化合物を表している。
【0026】
上記「その塩」とは、上記の一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表される含窒素環状化合物の遊離酸又は遊離塩基の生物学的及び薬学的効果を保持した塩を指す。例えば、塩基から誘導された塩として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のカチオンを含む塩が挙げられ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、セシウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などとすることができる。本発明に係る含窒素環状化合物は、取り扱いの容易性から、塩形態、より好ましくはアルカリ土類金属を含む塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、セシウム塩とすることができ、取り扱いの容易さから、ナトリウム塩形態であることが好ましい。
【0027】
本発明に係る含窒素環状化合物は、不斉中心となる炭素原子を含有するため、光学的に純粋なエナンチオマーや、例えばラセミ体のような混合エナンチオマー、光学的に純粋なジアステレオマー、やその混合された混合ジアステレオマー、ジアステレオマーからなるラセミ体等の形態として存在することも可能である。
【0028】
R1は、好ましくは置換又は非置換の6員環からなる芳香環数1~2の単環構造、縮合環構造、又は多環構造のアリール基であり、例えば、(1)非置換のフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、ピリジン基、アンスラニル基等のアリール基;(2)トリル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、3,6-ジメチルフェニル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2-エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、オクチルフェニル基、2-メチル-1-ナフチル基、3-メチル-1-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基、5-メチル-1-ナフチル基、6-メチル-1-ナフチル基、7-メチル-1-ナフチル基、8-メチル-1-ナフチル基、1-メチル-2-ナフチル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-2-ナフチル基、5-メチル-2-ナフチル基、6-メチル-2-ナフチル基、7-メチル-2-ナフチル基、8-メチル-2-ナフチル基、2-エチル-1-ナフチル基等の低級アルキル基により置換されたアリール基;(3)トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロエチルフェニル基等の低級ハロアルキル基が置換したアリール基;(4)3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,3-ジメトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、2,5-ジメトキシフェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3,6-ジメトキシフェニル基、2,3,4-トリメトキシフェニル基、2,3,5-トリメトキシフェニル基、2,3,6-トリメトキシフェニル基、2,4,5-トリメトキシフェニル基、2,4,6-トリメトキシフェニル基、3,4,5-トリメトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、2-メトキシ-1-ナフチル基、3-メトキシ-1-ナフチル基、4-メトキシ-1-ナフチル基、5-メトキシ-1-ナフチル基、6-メトキシ-1-ナフチル基、7-メトキシ-1-ナフチル基、8-メトキシ-1-ナフチル基、1-メトキシ-2-ナフチル基、3-メトキシ-2-ナフチル基、4-メトキシ-2-ナフチル基、5-メトキシ-2-ナフチル基、6-メトキシ-2-ナフチル基、7-メトキシ-2-ナフチル基、8-メトキシ-2-ナフチル基、2-エトキシ-1-ナフチル基等の低級アルコキシ基により置換されたアリール基;(5)フェノキシベンジル基等のフェノキシ基により置換されたアリール基;(6)フェノール基、ナフトール基、クレゾール基等の水酸基により置換されたアリール基;(7)クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ブロモフェニル基、ジブロモフェニル基、ヨードフェニル基等のハロゲン原子により置換されたアリール基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
このR1は、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基であり、単環構造としてはフェニル基、縮合環構造としてはナフチル基、多環構造としてはビフェニル基若しくはフェノキシベンジル基が好ましく、さらに好ましくは、R1は、R1が1又は2つのフェニル基から構成されるものであり、より好ましくは、フェニル基又はビフェニル基からなる。
【0030】
R2は、好ましくは、置換若しくは非置換のアルキル基であり、好ましくは、炭素数1~5の低級アルキル基から構成され、より好ましくは、炭素数1~3の低級アルキル基から構成され、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
【0031】
R3は、置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基であり、好ましくは、炭素数1~6の直鎖又は環状アルキル基から構成されるものであり、直鎖アルキル基としては、より好ましくは、炭素数1~5の低級アルキル基から構成され、より好ましくは、炭素数1~3の低級アルキル基から構成され、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。また、R3は、環状アルキル基としては、好ましくは、炭素数3~10の環状アルキル基であり、特に限定されないが、例えば、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-プロピルシクロヘキシル基、4,4-ジメチルシクロヘキシル基、2,6-ジメチルシクロヘキシル基、3,5-ジメチルシクロヘキシル基、シクロへキシルメチル基、シクロプロピル基、2,3-ジメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、3-エチルシクロペンチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基、等が挙げられ、取り扱いの容易さから、シクロヘキシル基が好ましい。
【0032】
一般式(I)で表される本発明の含窒素環状化合物としてのピラゾリジン誘導体又はその塩は、次の反応式(A)で表される3段階の反応を用いて、製造することができる。
【0033】
【0034】
この3段階の反応(1)~(3)について、以下、反応工程をより詳細に説明する。一般式(II)および(III)の反応工程についても以下と同様である。
【0035】
(1)1段階目
以下の反応式(A-1)に示すように、先ず、アルデヒド基にR1が付加した化合物1に、R3を含むピリミジン骨格を有する化合物2を、ピペリジン触媒下で加熱してアルドール縮合反応により化合物3を得る。このアルドール縮合反応については、公知の手法を用いることが可能である(例えば、Gorovoy, A. et al. Synth. Commun. 2014, 44, 1296-1300.)
【0036】
【0037】
(2段階目)
次に、以下の反応式(A-2)に示すように、得られた化合物3に、ヒドラジン一水和物を加え、エタノール下で還流させてピラゾリジン骨格を有する化合物4を得る。還流の時間は特に限定されないが、1時間~数時間とすることができ、例えば、1時間とすることができる。このピラゾリジン形成反応については、公知の手法を用いることが可能である(例えば、Abdel Latif, N. et al. Bioorg. Chem. 2016, 67, 116.)。
【0038】
【0039】
(3段階目)
次に、以下の反応式(A-3)に示すように、得られた化合物4に、R2を含む炭酸エステル(酸無水物)とR2を含むカルボン酸の存在下で加熱してアルカノイル化(アシル化)反応させて、本発明に係るピラゾリジン誘導体5を得ることができ、実際にこの反応によって製造が確認されている(後述の実施例参照)。この加熱温度は、特に限定されないが、100℃~200℃とすることができ、例えば、125℃とすることができる。この加熱の時間は、特に限定されないが、1時間~10時間とすることができ、例えば、2時間とすることができる。このアルカノイル化(アシル化)反応については、公知の手法を用いることが可能である。
【0040】
【0041】
また、本発明の含窒素環状化合物又はその塩は、一般式(II)についても同様に、以下の反応式(B)で表される反応を用いて、製造することができ、この反応によって実際に製造が確認されている(後述の実施例参照)
【0042】
【0043】
すなわち、上記一般式(I)の3段階目に行う加熱が、R2を含むカルボン酸とR2を含む炭酸エステルの存在下であることに替えて、上記一般式(II)の3段階目では、R2を含むカルボン酸の存在下として同様に加熱を行う。
【0044】
また、本発明の含窒素環状化合物又はその塩は、一般式(III)についても同様に、以下の反応式(C)で表される反応を用いて、製造することができ、この反応によって実際に製造が確認されている(後述の実施例参照)
【0045】
【0046】
すなわち、一般式(III)に対する反応式(C)の3段階目の反応では、上記一般式(I)に対する上記反応式(A-3)においてR2を含むカルボン酸とR2を含む炭酸エステルの存在下で加熱することに替えて、R2を含むカルボン酸の存在下で加熱するものである。
【0047】
本発明の含窒素環状化合物は、ピラゾリン誘導体もしくはピラゾリジン誘導体又はその塩として、一般式(I)、(II)および(III)のいずれについても、極めて簡素な3段階の反応(1)~(3)によって得ることができる。
【0048】
このように、本発明に係る含窒素環状化合物は、上記の一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表される各々別個独立した化合物として得られる。すなわち、上記の一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)の各々は、同一化合物の互変異体(ケト・エノール互変異体、エナミン・イミン互変異体)を便宜上表しているのではなく、独立したピラゾリン誘導体もしくはピラゾリジン誘導体として各々別個に合成された化合物を表している(後述の実施例参照)。
【0049】
このように得られた一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表される含窒素環状化合物については、その遊離酸又は遊離塩基の生物学的及び薬学的効果を保持した塩形態を形成することが可能である。その塩の一例として、以下が挙げられる。
【0050】
【化9】
(但し、M
+は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のカチオンを表す。)
【0051】
このように、塩基から誘導された塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、セシウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などとすることができる。本発明に係る含窒素環状化合物は、取り扱いの容易性から、塩形態、より好ましくはアルカリ土類金属を含む塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、セシウム塩とすることができ、取り扱いの容易さから、ナトリウム塩形態であることが好ましい。
【0052】
上述のように、本発明に係る新規な含窒素環状化合物又はその塩は、ピラゾリン誘導体もしくはピラゾリジン誘導体又はその塩として、簡素な3段階の反応工程によって合成可能であり、従来よりも低コストで製造できる。
【0053】
このようにして得られた新規の含窒素環状化合物又はその塩の用途は多岐にわたる。
【0054】
例えば、その一例として、上述した以下一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表された新規の含窒素環状化合物およびその塩を含有する組成物が挙げられる。(ただし、R1は、置換又は非置換の5員環又は6員環からなる芳香環数1~2の単環構造、縮合環構造、又は多環構造からなり、R2は水素原子又は置換若しくは非置換のアルキル基であり、R3はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基である。)
【0055】
【0056】
本組成物に含まれる一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表される含窒素環状化合物については、上述したように、その遊離酸又は遊離塩基の生物学的及び薬学的効果を保持した塩形態を形成することが可能である。その塩の一例として、以下が挙げられる。
【0057】
【化11】
(但し、M
+は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のカチオンを表す。)
【0058】
このように、塩基から誘導された塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、セシウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などとすることができる。本発明に係る含窒素環状化合物は、取り扱いの容易性から、塩形態、より好ましくはアルカリ土類金属を含む塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、セシウム塩とすることができ、取り扱いの容易さから、ナトリウム塩形態であることが好ましい。
【0059】
本発明に係る組成物は、上述した新規の含窒素環状化合物又はその塩を含有するものであり、様々な用途に用いることが可能である。
【0060】
例えば、医薬分野においては、安価に製造できてプロリル水酸化酵素(PHD)の阻害作用を発揮する組成物があれば、その低酸素誘導因子(HIF)活性化作用によって、従来よりも安価なHIF活性剤及びその試薬の提供も可能となると考えられる。これにより、安価で使い勝手の良い優れた慢性腎疾患治療薬が実現される可能性も秘めているが、従来からそのような優れた組成物は存在していない。
【0061】
この点に関して、本発明者らは、本発明に係る上記組成物が、驚くべきことに、優れたプロリン水酸化酵素(PHD)の活性阻害能を発揮することも見出している。このプロリン水酸化酵素(PHD)の活性阻害能によって、低酸素誘導因子(HIF)を活性化することが可能となり、新たな基本構造をもつHIF活性剤が実現されるものとなる。
【0062】
事実として、本発明に係る組成物は、低酸素誘導因子(HIF)の活性作用を示すものとして、従来のHIF活性剤よりも優れた活性が確かに確認されている(後述の実施例参照)。
【0063】
このような用途への適合性を考慮すれば、より好適には、R1が1又は2つのフェニル基から構成されるか、及び/又は、R2が炭素数1~5の低級アルキル基から構成されるか、及び/又はR3が炭素数1~6の直鎖又は環状アルキル基から構成されるものが好ましい。
【0064】
R1としては、上述した通りではあるが、好ましくは置換又は非置換の6員環からなる芳香環数1~2の単環構造、縮合環構造、又は多環構造のアリール基であり、例えば、(1)非置換のフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、ピリジン基、アンスラニル基等のアリール基;(2)トリル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、3,6-ジメチルフェニル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2-エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、オクチルフェニル基、2-メチル-1-ナフチル基、3-メチル-1-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基、5-メチル-1-ナフチル基、6-メチル-1-ナフチル基、7-メチル-1-ナフチル基、8-メチル-1-ナフチル基、1-メチル-2-ナフチル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-2-ナフチル基、5-メチル-2-ナフチル基、6-メチル-2-ナフチル基、7-メチル-2-ナフチル基、8-メチル-2-ナフチル基、2-エチル-1-ナフチル基等の低級アルキル基により置換されたアリール基;(3)トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロエチルフェニル基等の低級ハロアルキル基が置換したアリール基;(4)3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,3-ジメトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、2,5-ジメトキシフェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3,6-ジメトキシフェニル基、2,3,4-トリメトキシフェニル基、2,3,5-トリメトキシフェニル基、2,3,6-トリメトキシフェニル基、2,4,5-トリメトキシフェニル基、2,4,6-トリメトキシフェニル基、3,4,5-トリメトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、2-メトキシ-1-ナフチル基、3-メトキシ-1-ナフチル基、4-メトキシ-1-ナフチル基、5-メトキシ-1-ナフチル基、6-メトキシ-1-ナフチル基、7-メトキシ-1-ナフチル基、8-メトキシ-1-ナフチル基、1-メトキシ-2-ナフチル基、3-メトキシ-2-ナフチル基、4-メトキシ-2-ナフチル基、5-メトキシ-2-ナフチル基、6-メトキシ-2-ナフチル基、7-メトキシ-2-ナフチル基、8-メトキシ-2-ナフチル基、2-エトキシ-1-ナフチル基等の低級アルコキシ基により置換されたアリール基;(5)フェノキシベンジル基等のフェノキシ基により置換されたアリール基;(6)フェノール基、ナフトール基、クレゾール基等の水酸基により置換されたアリール基;(7)クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ブロモフェニル基、ジブロモフェニル基、ヨードフェニル基等のハロゲン原子により置換されたアリール基等が挙げられ、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基であり、単環構造としてはフェニル基、縮合環構造としてはナフチル基、多環構造としてはビフェニル基若しくはフェノキシベンジル基がより好ましい。
【0065】
さらに組成物として優れた効能を発揮し得る点から、さらに好ましくは、R1は、フェニル基又はビフェニル基からなることが好ましい。
【0066】
この他にも、R1としては、置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基から構成することも可能であり、この場合には、R1は、好ましくは、炭素数1~6の直鎖又は環状アルキル基から構成されるものであり、直鎖アルキル基としては、より好ましくは、炭素数1~5の低級アルキル基から構成され、より好ましくは、炭素数1~3の低級アルキル基から構成され、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。また、R3は、環状アルキル基としては、好ましくは、炭素数3~10の環状アルキル基であり、特に限定されないが、例えば、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-プロピルシクロヘキシル基、4,4-ジメチルシクロヘキシル基、2,6-ジメチルシクロヘキシル基、3,5-ジメチルシクロヘキシル基、シクロへキシルメチル基、シクロプロピル基、2,3-ジメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、3-エチルシクロペンチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基、等が挙げられ、取り扱いの容易さから、シクロヘキシル基が好ましい。
【0067】
R2についても、上述した通りではあるが、好ましくは、置換若しくは非置換のアルキル基であり、好ましくは、炭素数1~5の低級アルキル基から構成され、より好ましくは、炭素数1~3の低級アルキル基から構成され、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
【0068】
R3についても、上述した通りではあるが、好ましくは、置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基であり、直鎖アルキル基としては、好ましくは、炭素数1~5の低級アルキル基から構成され、より好ましくは、炭素数1~3の低級アルキル基から構成され、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。また、R3は、環状アルキル基としては、好ましくは、炭素数3~10の環状アルキル基であり、特に限定されないが、例えば、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-プロピルシクロヘキシル基、4,4-ジメチルシクロヘキシル基、2,6-ジメチルシクロヘキシル基、3,5-ジメチルシクロヘキシル基、シクロへキシルメチル基、シクロプロピル基、2,3-ジメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、3-エチルシクロペンチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基、等が挙げられる。
【0069】
R3は、組成物として優れた効能を発揮し得る点から、メチル基、エチル基、もしくはプロピル基程度の分子量の小さな直鎖アルキル基であるか、またはシクロプロピル基、シクロペンチル基、もしくはシクロヘキシル基程度の分子量の大きさの環状アルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、またはシクロヘキシル基であることがより好ましい。
【0070】
本発明に係る組成物の態様としては、特に限定されないが、医薬品、医薬部外品、又は試薬として利用することができる。
【0071】
本発明に係る組成物は、医薬品又は医薬部外品として(すなわち医薬組成物として)使用する場合には、上述したようにプロリン水酸化酵素活性を阻害する作用によって、ヒトまたは動物の各種疾病を治療可能な薬剤(治療薬)として使用することができる。
【0072】
このような疾病としては、例えば、腎臓病、慢性腎疾患、虚血性疾患、高血圧、糖尿病、および動脈硬化などが挙げられ、例えば、慢性腎疾患(慢性腎炎)による虚血症状改善薬が挙げられる。
【0073】
また、本発明に係る組成物は、低分子化合物であることから、経口投与可能であり、例えば、経口投与用低酸素誘導因子(HIF)活性剤として利用することが可能である。この本発明に係る経口投与用低酸素誘導因子(HIF)活性剤は、皮下注射等の侵襲を回避できることから、患者の負担を軽減することができ、例えば、腎臓病治療用の経口投与用HIF活性剤として利用することが可能である。また最近ではパッチ等で持続的に痛みを軽減した皮下注射経路も開発されてはいるものの依然として一定の患者負担があり、いずれにしても、本発明に係る経口投与用低酸素誘導因子(HIF)活性剤によって、患者の負担を軽減することが可能となる。
【0074】
この点、従来のHIF活性剤では、上述したように、2-オキソグルタル酸(2-OG)骨格を有する化合物(2-OG類似化合物)が一般に使用されているが、本発明に係る組成物は、その構造式から2-オキソグルタル酸(2-OG)骨格に基づかない化合物と解される点から、従来のHIF活性剤とは構造が全く異なるものでありHIF活性の作用メカニズムも全く異なるものであることから、本発明に係る組成物をHIF活性剤として利用した際には、従来には無い新規なHIF活性剤となる。また、本発明に係る組成物は、上述の3段階の簡素な反応によって合成され、2-OG類似化合物を用いた従来のHIF活性剤より安価に製造可能となる。さらに、本発明に係る組成物は、従来のHIF活性剤よりもHIF活性の選択性が高いことが確認されている(後述の実施例参照)。
【0075】
本発明に係る組成物は、上記含窒素環状化合物又はその塩を目的に応じて任意の濃度で含有することができる。また、その濃度は、患者の年齢及び体重、疾病の種類や程度、並びに投与の経路に応じて自由に設計可能である。
【0076】
また、本発明に係る組成物は、その化学構造から、各種の官能基の導入が可能であることから、その溶媒特性に関して、水溶性を高めたり、脂溶性にふることも可能である。本発明に係る組成物のこの特性により、作用・投与経路を自在に変更させて容易に制御することが可能となる。
【0077】
本発明に係る組成物は、優れた低酸素誘導因子(HIF)の活性作用を示すことから、研究試薬として(すなわち試薬組成物として)利用することも可能である。
【0078】
この低酸素誘導因子(HIF)の活性作用については、話題性が高く世界中の多くの研究者によって研究が続けられており、研究試薬としてのニーズも高く、より安価で簡便な研究試薬が望まれているところである。本発明に係る組成物は、そのようなニーズを満たす優れた研究試薬として提供可能である。
【0079】
(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお分析は下記装置で実施した。
1H-NMR、13C-NMR:Varian製 NMR 400 MHz system
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):日本分析工業社製 LaboACE LC-5060
【0080】
ピラゾリン誘導体の製造
(実施例1)
5-(1-アセチル-5-フェニルピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5a)の調製
【0081】
【0082】
上記一般式(A)に従って、以下の合成反応を行った(R1=C6H5、R2=CH3、R3=CH3)。
【0083】
【0084】
還流管を取り付けた25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、4等量のベンズアルデヒド(ナカライテスク社製)、 5-アセチル-1,3-ジメチルバルビツール酸(東京化成工業製)5mmolを加え攪拌した。170度に加温したのち、ピぺリジン(ナカライテスク社製)を2滴滴下した。7分後反応を加熱を停止し、冷やすことで白色個体が得られた。エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥することでエノン(6-hydroxy-1,3-dimethyl-5-[(2E)-3-phenylprop-2-enoyl]-1,2,3,4-tetrahydropyrimidine-2,4-dione)が84%の収率で得られた。
【0085】
先に合成した中間体エノン化合物6-hydroxy-1,3-dimethyl-5-[(2E)-3-phenylprop-2-enoyl]-1,2,3,4-tetrahydropyrimidine-2,4-dione)1mmol、2 eqヒドラジン一水和物(ナカライテスク社製)、エタノールを加え攪拌した。反応終了後、エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥して化合物4を得た。構造は1H NMR及び13C NMR により決定した。
【0086】
次に、25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、0.3 mmolの化合物4、酢酸(ナカライテスク社製)0.5 mL、無水酢酸(東京化成製)0.5mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後はトルエンを加えてエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。その後ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分離し、純粋な化合物5として5-(1-アセチル-5-フェニルピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5a)を白色固体(収率80%)を得た。構造は1H NMRと13C NMRによりTMSをそれぞれ0ppm基準として決定した。
5-(1-acetyl-5-phenylpyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (5a):white solid; 1HNMR (400 MHz, CDCl3)δ1.94 (s, 3H), 3.27 (s, 3H), 3.37 (s, 3H), 3.99 (dd, J = 2.5, 19.5 Hz, 1H), 4.3 (dd, J = 10.9, 19.5 Hz, 1H), 5.4 (d, J = 8.16 Hz, 1H), 7.2 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.31-7.47 (m, 3H), 13.19 (br, 1H); 13C NMR(100 MHz, CDCl3)δ20.6, 27.7, 45.1, 58.6, 86.3, 125.0, 129.0, 129.7, 139.3, 151.6, 157.7, 162.1, 163.6, 164.3.
【0087】
【0088】
(実施例2)
1,3-ジメチル-5-(5-フェニル-1-プロパノイルピラゾリジン-3-イリデン)バルビツール酸(化合物5ab)の調製(一般式(A):R1=C6H5、R2=CH3、R3=CH3)
【0089】
【0090】
25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、0.3 mmolの化合物4、プロピオン酸(ナカライ製) 0.5 mL, 無水プロピオン酸(東京化成製)0.5 mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後はトルエンを加えてエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。その後ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分離し、純粋な化合物5として1,3-ジメチル-5-(5-フェニル-1-プロパノイルピラゾリジン-3-イリデン)バルビツール酸(化合物5ab)を白色固体(収率80%)を得た。構造は1H NMRと13C NMRによりTMSをそれぞれ0ppm基準として決定した。
【0091】
1,3-dimethyl-5-(5-phenyl-1-propanoylpyrazolidin-3-ylidene)barbituric acid (5ab): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.02-1.08 (m, 3H), 1.95-2.11 (m, 1H), 2.15-2.38 (m, 1H), 3.27 (s, 3H), 3.37 (s, 3H), 3.99 (d, J = 19.1 Hz, 1H), 4.29 (dd, J = 11.0, 18.6 Hz, 1H), 5.40 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 7.1 Hz, 2H), 7.31-7.48 (m, 3H), 13.70 (br, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ8.5, 26.3, 27.7(2C), 45.1, 58.2, 86.3, 125.0, 129.0, 129.7, 139.5, 151.6, 157.5, 162.2, 164.3, 167.2.
【0092】
【0093】
(実施例3)
5-(1-n-ブタノイル-5-フェニルピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5ac)の調製 (一般式(A):R1=C6H5、R2=CH2CH2CH3、R3=CH3)
【0094】
【0095】
25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、0.3 mmolの化合物4、酪酸(ナカライ製) 0.5 mL, 無水酪酸(東京化成製)0.5 mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後はトルエンを加えてエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。その後ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(日本分析工業社製 LaboACE LC-5060)によって分離し、純粋な化合物5として5-(1-n-ブタノイル-5-フェニルピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5ac)を白色固体(収率86%)として得た。構造は1H NMRと13C NMRによりTMSをそれぞれ0ppm基準として決定した。
【0096】
5-(1-n-butanoyl-5-phenylpyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (5ac): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ0.80 (s, 3H), 1.41-1.73 (m, 2H), 1.89-2.08 (m, 1H), 2.10-2.28 (m, 1H), 3.27 (s, 3H), 3.36 (s, 3H), 4.0 (d, J = 19.0 Hz, 1H), 4.29 (dd, J = 10.9, 19.2 Hz, 1H), 5.41 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 7.30-7.45 (m, 3H), 02 (br, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ13.6, 17.9, 27.7, 34.7, 45.1, 58.2, 86.3, 125.0, 129.0, 129.7, 139.6, 151.6, 157.6, 162.2, 164.3, 166.5.
【0097】
【0098】
(実施例4)
5-(1-アセチル-5-(4-フルオロフェニル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5b)の調製(一般式(A):R1=C6H4F、R2=CH2CH2CH3、R3=CH3)
【0099】
【0100】
還流管を取り付けた25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、4等量の4-フルオロベンズアルデヒド (アルドリッチシグマ製)、 5-アセチル-1,3-ジメチルバルビツール酸 (東京化成工業製)5mmolを加え攪拌した。180度に加温したのち、ピぺリジン(ナカライ製)を2滴滴下した。7分後反応を加熱を停止し、冷やすことで白色個体が得られる。エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥することでエノン5‐[(2E)‐3‐(4‐fluorophenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐oneが35%の収率で得られる。
25 mL容の二口フラスコに合成した中間体エノン化合物5‐[(2E)‐3‐(4‐fluorophenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐one 1mmol、2 eqヒドラジン一水和物(ナカライ製)、エタノールを加え攪拌した。反応終了後、エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥して化合物4b(5-(5-(4-fluorophenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid)を79%の収率で得た。構造は1H NMR及び13C NMR(Varian NMR 400 MHz system )により決定した。
【0101】
5-(5-(4-fluorophenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (4b): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ3.29 (s, 3H), 3.32 (s, 3H) 3.67-3.77 (m, 1H), 4.10 (dd, J = 18.5, 9.1 Hz, 1H), 4.85 (ddd, J = 7.8, 7.8, 7.8 Hz, 1H), 5.22 (d, J =7.3 Hz, 1H), 7.06 (t, J = 8.6 Hz, 2H), 7.31-7.39 (m, 2H), 12.01 (s, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ27.6, 27.8, 43.1, 58.8, 86.3, 115.9 (d, JC-F = 21.5 Hz), 128.0 (d, JC-F = 8.1Hz) 135.1 (d, JC-F = 3.18 Hz), 151.8, 162.3, 162.5 (d, JC-F = 245.8 Hz), 164.9, 165.8.
【0102】
【0103】
5bの合成 25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、0.3 mmolの化合物4b、酢酸(ナカライ製) 0.5 mL, 無水酢酸(東京化成製)0.5 mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後はトルエンを加えてエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。その後ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(日本分析工業社製 LaboACE LC-5060)によって分離し、純粋な化合物として5-(1-アセチル-5-(4-フルオロフェニル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5b)を白色固体(収率79%)として得た。構造は1H NMRと13C NMRによりTMSをそれぞれ0ppm基準として決定した。
【0104】
5-(1-acetyl-5-(4-fluorophenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (5b): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.94 (s, 3H), 3.27 (s, 3H), 3.36 (s, 3H), 3.96 (d, J = 19.2 Hz, 1H), 4.31 (dd, J = 10.9, 19.4 Hz, 1H), 5.39 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.12 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.24 (m, 2H), 13.7 (br, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ20.6, 27.7, 45.1, 58.0, 86.4, 116.8 (d, JC-F = 21.5 Hz), 127.0 (d, JC-F = 8.0 Hz), 135.2, 151.6, 157.5, 162.1, 162.7 (d, JC-F = 247.9 Hz) 163.5, 164.3.
【0105】
【0106】
(実施例5)
5-(1-アセチル-5-(4-フルオロフェニル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5c)の調製(一般式(A):R1=C6H4Cl、R2=CH3、R3=CH3)
【0107】
【0108】
還流管を取り付けた25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、4等量の4-クロロベンズアルデヒド (東京化成工業製)、 5-アセチル-1,3-ジメチルバルビツール酸 (東京化成工業製)2.5 mmolを加え攪拌した。180度に加温したのち、ピぺリジン(ナカライ製)を2滴滴下した。7分後反応を加熱を停止し、冷やすことで白色個体が得られる。エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥することでエノン5‐[(2E)‐3‐(4‐chlorophenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐oneが52%の収率で得られる。
25 mL容の二口フラスコに合成した中間体エノン化合物5‐[(2E)‐3‐(4‐chlorophenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐one 1mmol、2 eqヒドラジン一水和物(ナカライ製)、エタノールを加え攪拌した。反応終了後、エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥して化合物4c(5-(5-(4-chlorophenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid)を80%の収率で得た。構造は1H NMR及び13C NMR(Varian NMR 400 MHz system )により決定した。
【0109】
5-(5-(4-chlorophenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (4c): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ3.30 (s, 3H), 3.34 (s, 3H), 3.75 (dd, J = 6.5, 18.7 Hz, 1H), 4.10(dd, J = 8.9, 18.7 Hz, 1H), 4.81-4.91 (m, 1H), 5.06 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 7.29-7.39 (m, 4H), 12.00 (s, 1H); 13C NMR(100 MHz, CDCl3)δ27.6, 27.7, 43.0, 58.7, 86.4, 111.6, 127.6, 129.2, 134.2, 137.8, 151.8, 156.4, 162.2, 165.0, 166.1.
【0110】
【0111】
5cの合成 25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、0.3 mmolの化合物4c、酢酸(ナカライ製) 0.5 mL, 無水酢酸(東京化成製)0.5 mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後はトルエンを加えてエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。その後ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(日本分析工業社製 LaboACE LC-5060)によって分離し、純粋な化合物として5-(1-アセチル-5-(4-クロロフェニル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5c)を白色固体(収率98%)として得た。構造は1H NMRと13C NMRによりTMSをそれぞれ0ppm基準として決定した。
【0112】
5-(1-acetyl-5-(4-chlorophenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (5c): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.94 (s, 3H), 3.25 (s, 3H), 3.34(s, 3H), 3.93 (d, J = 19.0 Hz, 1H), 4.33 (dd, J = 10.8, 19.4 Hz, 1H), 5.41 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.40 (d, J = 7.5 Hz, 2H) 13.63 (br, 1H); 13C NMR(100 MHz, CDCl3)δ20.6, 27.7, 45.0, 58.0, 86.3, 126.6, 129.9, 135.0, 137.8, 151.5, 157.5, 162.0, 163.6, 164.3.
【0113】
【0114】
(実施例6)
5-(1-アセチル-5-(4-メチルフェニル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5e)の調製(一般式(A):R1=C6H4CH3、R2=CH3、R3=CH3)
【0115】
【0116】
還流管を取り付けた25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、4等量の4-メチルベンズアルデヒド (東京化成工業製)、 5-アセチル-1,3-ジメチルバルビツール酸 (東京化成工業製)2.5 mmolを加え攪拌した。180度に加温したのち、ピぺリジン(ナカライ製)を2滴滴下した。7分後反応を加熱を停止し、冷やすことで白色個体が得られた。エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥することでエノン5‐[(2E)‐3‐(4‐methylphenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐oneが85%の収率で得られた。
25 mL容の二口フラスコに合成した中間体エノン化合物5‐[(2E)‐3‐(4‐methylphenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐one 0.5mmol、2 eqヒドラジン一水和物(ナカライ製)、エタノールを加え攪拌した。反応終了後、エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥して化合物4e(5-(5-(4-methylphenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid)を82%の収率で得た。構造は1H NMR及び13C NMR(Varian NMR 400 MHz system )により決定した。
【0117】
1,3-dimethyl-5-(5-(4-methylphenyl)pyrazolidin-3-ylidene)barbituric acid (4e): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ2.34 (s, 3H), 3.29 (s, 3H), 3.32 (s, 3H), 3.87-3.77 (m, 1H), 4.09 (dd, J = 9.1, 18.9 Hz, 1H), 4.81 (ddd, J =8.0, 8.1, 8.1 Hz, 1H), 5.09 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.17 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.24 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 11.00 (s, 1H) ; 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ21.1, 27.6, 27.7, 42.8, 59.5, 86.2, 126.2, 129.7, 136.0, 138.3, 151.9, 162.3, 165.0, 166.2.
【0118】
【0119】
5eの合成 25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、0.3 mmolの化合物4e、酢酸(ナカライ製) 0.5 mL, 無水酢酸(東京化成製)0.5 mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後はトルエンを加えてエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。その後ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(日本分析工業社製 LaboACE LC-5060)によって分離し、純粋な化合物として5-(1-アセチル-5-(4-メチルフェニル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5e)を白色固体(収率87%)として得た。構造は1H NMRと13C NMRによりTMSをそれぞれ0ppm基準として決定した。
【0120】
5-(1-acetyl-5-(4-methylphenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (5e): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.93 (s, 3H), 2.35 (s, 3H), 3.26 (s,3H), 3.35 (s, 3H), 3.95 (dd, J = 3.1, 19.5 Hz, 1H), 4.31 (dd, J = 10.8, 19.5, 1H), 5.37 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.21 (d, J =7.7Hz, 2H), 13.66 (br, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ20.7, 21.2, 27.7, 45.2, 58.6, 86.3, 125.1, 130.3, 136.4, 139.0, 151.6, 157.8, 162.1, 163.7, 164.4.
【0121】
【0122】
(実施例7)
5-(1-アセチル-5-([1,1’-ビフェニル] -4-イル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5f)の調製(一般式(A):R1=C6H4C6H5、R2=CH3、R3=CH3)
【0123】
【0124】
還流管を取り付けた25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、4等量の4-フェニルベンズアルデヒド (東京化成工業製)、 5-アセチル-1,3-ジメチルバルビツール酸 (東京化成工業製)5 mmolを加え攪拌した。180度に加温したのち、ピぺリジン(ナカライ製)を2滴滴下した。7分後反応を加熱を停止し、冷やすことで白色個体が得られた。エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥することでエノン5‐[(2E)‐3‐(4-biphenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐oneが49%の収率で得られた。
25 mL容の二口フラスコに合成した中間体エノン化合物5‐[(2E)‐3‐(4‐biphenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐one 0.5mmol、2 eqヒドラジン一水和物(ナカライ製)、エタノールを加え攪拌した。反応終了後、エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥して化合物4f(5-(5-(4-biphenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid)を87%の収率で得た。構造は1H NMR及び13C NMR(Varian NMR 400 MHz system )により決定した。
【0125】
5-(5-([1,1’-biphenyl]-4-yl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (4f): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ3.29 (s, 3H), 3.33 (s, 3H), 3.79 (dd, J = 7.6, 18.9 Hz, 1H), 4.12 (dd, J = 9.2, 18.9 Hz, 1H), 4.88 (ddd, J = 7.9, 7.9, 8.3 Hz, 1H), 5.13(d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.35 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 7.40-7.47 (m, 4H), 7.53-7.82 (m, 4H), 12.02 (s, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ27.6, 27.7, 42.9, 59.3, 86.3, 126.7, 127.0, 127.6, 127.7, 128.8, 138.1, 140.2, 141.3, 151.8, 162.2, 165.0, 166.1.
【0126】
【0127】
5fの合成 25mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、0.3 mmolの化合物4f、酢酸(ナカライ製) 0.5 mL, 無水酢酸(東京化成製)0.5 mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後はトルエンを加えてエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。その後ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(日本分析工業社製 LaboACE LC-5060)によって分離し、純粋な化合物として5-(1-アセチル-5-([1,1’-ビフェニル] -4-イル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5f)を白色固体(収率96%)として得た。構造は1H NMRと13C NMRによりTMSをそれぞれ0ppm基準として決定した。
【0128】
5-(1-acetyl-5-([1,1’-biphenyl]-4-yl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (5f): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.99 (s, 3H), 3.26 (s, 3H), 3.35 (s, 3H), 4.02 (dd, J = 1.9, 19.2 Hz, 1H), 4,34 (dd, J = 10.9, 19.4 Hz, 1H), 5.45 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.29-7.40 (m, 3H), 7.45 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.56 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.62 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 13.68 (br, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ20.7, 27.7, 45.1, 58.4, 86.3, 125.5, 127.0, 127.8, 128.3, 128.9, 138.1, 139.8, 142.0, 151.5, 157.7, 162.1, 163.7, 164.3.
【0129】
【0130】
(実施例8)
5-(5-([1,1’-ビフェニル] -4-イル)-1-プロパノイルピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5fb)の調製(一般式(A):R1=C6H4C6H5、R2=CH2CH3、R3=CH3)
【0131】
【0132】
5-(5-([1,1’-biphenyl]-4-yl)-1-propanoylpyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (5fb): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.09 (s, 3H), 2.00-2.19 (m, 1H), 2.20-2.40 (m, 1H), 3.27 (s, 3H), 3.37 (s, 3H), 4.02 (d, J = 19.1 Hz, 1H), 4.20-4.40 (m, 1H), 5.45 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.37 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.45 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.56 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.61 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 13.65 (br, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ8.6, 26.4, 26.4, 27.7, 45.1, 58.0, 86.4, 125.5, 127.0, 127.8, 128.3, 128.9, 138.4, 139.9, 141.9, 151.6, 157.6, 162.1, 164.3, 167.3.
【0133】
【0134】
(実施例9)
5-(1-アセチル-5-(4-メトキシフェニル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5g)の調製(一般式(A):R1=C6H4OCH3、R2=CH3、R3=CH3)
【0135】
【0136】
還流管を取り付けた25mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、4等量の4-メトキシベンズアルデヒド(東京化成工業製)、5-アセチル-1,3-ジメチルバルビツール酸(東京化成工業製)5mmolを加え攪拌した。180度に加温したのち、ピぺリジン(ナカライ製)を2滴滴下した。7分後反応を加熱を停止し、冷やすことで白色個体が得られた。エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥することでエノン5‐[(2E)‐3‐(4-methoxyphenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐oneが89%の収率で得られた。
25 mL容の二口フラスコに合成した中間体エノン化合物5‐[(2E)‐3‐(4‐methoxyphenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐one 0.5mmol、2 eqヒドラジン一水和物(ナカライ製)、エタノールを加え攪拌した。反応終了後、エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥して化合物4g(5-(5-(4- methoxyphenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid)を78%の収率で得た。構造は1H NMR及び13C NMR(Varian NMR 400 MHz system )により決定した。
【0137】
5-(5-(4-methoxyphenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (4g): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ3.29 (s, 3H), 3.32 (s, 3H), 3.71 (dd, J = 7.9, 18.8 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H), 4.08 (dd, J = 8.9, 18.8 Hz, 1H), 4.80 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.28 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 11.98 (s, 1H) ; 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ27.7, 27.8, 42.8, 55.5, 59.4, 86.3, 114.5, 127.7, 131.0, 152.0, 159.7, 162.4, 165.1, 166.4.
【0138】
【0139】
5gの合成 25mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、0.3mmolの化合物4g、酢酸(ナカライ製)0.5mL,無水酢酸(東京化成製)0.5mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後はトルエンを加えてエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。その後ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(日本分析工業社製 LaboACELC-5060)によって分離し、純粋な化合物として5-(1-アセチル-5-(4-メトキシフェニル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物59)を白色固体(収率78%)として得た。構造は1HNMRと13CNMRによりTMSをそれぞれ0ppm基準として決定した。
【0140】
5-(1-acetyl-5-(4-methoxyphenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (5g): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.93 (s, 3H), 3.26 (s, 3H), 3.35 (s, 3H), 3.81 (s, 3H), 3.95 (dd, J = 2.6, 19.5 Hz, 1H), 4.29 (dd, J = 10.8, 19.5 Hz, 1H), 5.35 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.92 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.17 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 13.64 (br, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ20.6, 21.5, 27.7, 45.2, 55.4, 58.3, 86.2, 115.0, 125.3, 126.5, 128.2, 129.0, 131.2, 151.6, 157.7, 159.9, 162.1, 163.7, 164.3.
【0141】
【0142】
(実施例10)
5-(1-アセチル-5-フェニルピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジシクロヘキシルバルビツール酸(化合物5i)の調製(一般式(A):R1=C6H5、R2=CH3、R3=C6H5(c-Hex))
【0143】
【0144】
還流管を取り付けた25 mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、4等量のベンズアルデヒド (ナカライ製)、 5-アセチル-1,3-ビズシクロヘキシルバルビツール酸 (文献:Tetrahedron Lett. 2001, 42, 8435に記載の方法により調製)1.5 mmolを加え攪拌した。180度に加温したのち、ピぺリジン(ナカライ製)を2滴滴下した。74分後反応を加熱を停止し、冷やすことで白色個体が得られた。エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥することでエノン5‐[(2E)‐3‐phenylprop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐biscyclohexyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐oneが55%の収率で得られた。
25 mL容の二口フラスコに合成した中間体エノン化合物5‐[(2E)‐3‐phenylprop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐one 0.5mmol、2 eqヒドラジン一水和物(ナカライ製)、エタノールを加え攪拌した。反応終了後、エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥して化合物4i(5-(5-phenylpyrazolidin-3-ylidene)-1,3-biscyclohexylbarbituric acid)を97%の収率で得た。構造は1H NMR及び13C NMR(Varian NMR 400 MHz system )により決定した。
【0145】
1,3-biscyclohexyl-5-(5-phenylpyrazolidin-3-ylidene)barbituric acid (4i):: green oil; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.12-1.26 (m, 2H), 1.26-1.39 (m, 4H), 1.52-1.66 (m, 6H), 1.72-1.86 (m, 4H), 2.24-2.42 (m, 4H), 3.71 (dd, J = 18.9, 7.6 Hz, 1H), 4.02-4.14 (m, 1H), 4.62-4.75 (m, 2H), 4.81 (ddd, J = 8.0, 8.0, 8.0 Hz, 1H), 4.99 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.25-7.38 (m, 5H), 12.08 (s, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ25.4, 26.6, 29.3, 43.3, 53.8, 59.4, 76.7, 77.1, 77.4, 87.1, 126.3, 128.3, 129.0, 139.4, 151.1, 162.6, 165.4, 166.5.
【0146】
【0147】
5iの合成 25mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、0.3mmolの化合物4i、酢酸(ナカライ製)0.5mL,無水酢酸(東京化成製)0.5mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後はトルエンを加えてエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。その後ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(日本分析工業社製 LaboACELC-5060)によって分離し、純粋な化合物として5-(1-アセチル-5-フェニルピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジシクロヘキシルバルビツール酸(化合物5i)を茶色液体(収率99%)として得た。構造は1HNMRと13CNMRによりTMSをそれぞれ0ppm基準として決定した。
【0148】
5-(1-acetyl-5-phenylpyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dicyclohexylbarbituric acid (5i): brown oil; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.10-1.45 (m, 6H), 1.53-1.72 (m, 6H), 1.75-1.90 (m, 4H), 1.94 (s, 3H), 2.20-2.50 (m, 4H), 3.98 (d, J = 17.6 Hz, 1H), 4.28 (dd, J = 19.4, 10.8 Hz, 1H), 4.60-4.84 (m, 2H), 5.37 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.32-7.48 (m, 3H), 13.94 (br, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ20.6, 25.3, 26.5, 29.2, 45.4, 53.9, 58.5, 76.8, 77.1, 77.3, 77.4, 87.2, 124.9, 128.9, 129.7, 139.5, 150.9, 157.8, 162.6, 163.4, 164.6.
【0149】
【0150】
(実施例11)
5-(1-アセチル-5-ナフチルピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5j)の調製(一般式(A):R1=C10H8、R2=CH3、R3=CH3)
【0151】
【0152】
還流管を取り付けた25mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、4等量の3-ナフチルアルデヒド(東京化成工業製)、5-アセチル-1,3-ジメチルバルビツール酸(東京化成工業製)2.5mmolを加え攪拌した。180度に加温したのち、ピぺリジン(ナカライ製)を2滴滴下した。7分後反応を加熱を停止し、冷やすことで白色個体が得られた。エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥することでエノン5‐[(2E)‐3‐naphthylprop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐oneが73%の収率で得られた。
25mL容の二口フラスコに合成した中間体エノン化合物5‐[(2E)‐3‐naphthylprop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐one 0.5mmol、2eqヒドラジン一水和物(ナカライ製)、エタノールを加え攪拌した。反応終了後、エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥して化合物4j( 1,3-dimethyl-5-(5-naphthylpyrazolidin-3-ylidene)barbituricacid)を76%の収率で得た。構造は1HNMR及び13CNMR(Varian NMR400MHzsystem)により決定した。
【0153】
1,3-dimethyl-5-(5-naphthylpyrazolidin-3-ylidene)barbituric acid (4j): green solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ3.29 (s, 3H), 3.32 (s, 3H), 3.85 (d, J = 18.7 Hz, 1H), 4.18 (d, J = 18.7 Hz, 1H), 5.00 (s, 1H), 5.10 (s, 1H), 7.39-7.54 (m, 3H), 7.75-7.89 (m, 4H), 12.03(s, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ27.7, 27.8, 43.0, 60.1, 86.6, 124.0, 125.5, 126.6, 126.8, 127.9, 128.1, 129.3, 133.4, 133.5, 136.6, 152.0, 162.5, 165.3, 166.5.
【0154】
【0155】
5jの合成 25mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、0.3mmolの化合物4j、酢酸(ナカライ製)0.5mL,無水酢酸(東京化成製)0.5mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後はトルエンを加えてエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。その後ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(日本分析工業社製 LaboACELC-5060)によって分離し、純粋な化合物として5-(1-アセチル-5-ナフチルピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5j)を白色個体(収率76%)として得た。構造は1HNMRと13CNMRによりTMSをそれぞれ0ppm基準として決定した。
【0156】
5-(1-acetyl-5-naphthylpyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (5j): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.96 (s, 3H), 3.26 (s, 3H), 3.37 (s,3H), 4.06 (dd, J = 2.7, 19.5 Hz, 1H), 4.38 (dd, J = 10.9, 19.5 Hz), 5.56 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.33 (dd, J = 1.2, 8.5 Hz, 1H), 7.54 (t, J = 3.6 Hz, 2H), 7.69 (s, 1H), 7.84 (t, J = 8.1 Hz, 2H), 7.91 (d, J =8.5 Hz, 1H), 13.75 (br, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ20.7, 27.7, 27.8, 45.0, 58.8, 86.4, 122.2, 124.2, 127.0, 127.2, 127.85, 127.93, 130.3, 133.1, 133.2, 136.3, 151.6, 157.7, 162.1, 163.7, 164.4.
【0157】
【0158】
(実施例12)
5-(1-アセチル-5-4(フェノキシフェニル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5k)の調製(一般式(A):R1=C6H4OC6H5、R2=CH3、R3=CH3)
【0159】
【0160】
還流管を取り付けた25mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、4等量の4-フェノキシベンズアルデヒド(東京化成工業製)、5-アセチル-1,3-ジメチルバルビツール酸(東京化成工業製)2.5mmolを加え攪拌した。180度に加温したのち、ピぺリジン(ナカライ製)を2滴滴下した。7分後反応を加熱を停止し、冷やすことで白色個体が得られた。エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥することでエノン5‐[(2E)‐3‐(4-phenoxyphenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐oneが70%の収率で得られた。
25mL容の二口フラスコに合成した中間体エノン化合物5‐[(2E)‐3‐(4-phenoxyphenyl)prop‐2‐enoyl]‐6‐hydroxy‐1,3‐dimethyl‐2‐methylidene‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidin‐4‐one 0.5mmol、2eqヒドラジン一水和物(ナカライ製)、エタノールを加え攪拌した。反応終了後、エタノールで濾過を行い、濾物は真空乾燥して化合物4k(1,3-dimethyl-5-(5-(4-phenoxyphenyl)pyrazolidin-3-ylidene)barbituricacid)を76%の収率で得た。構造は1HNMR及び13CNMR(Varian NMR400MHzsystem)により決定した。
【0161】
(1,3-dimethyl-5-(5-(4-phenoxyphenyl)pyrazolidin-3-ylidene)barbituric acid (4k): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ3.27 (s, 3H), 3.29 (s, 3H), 3.72 (dd, J = 7.6, 18.8 Hz, 1H), 4.07 (dd, J = 9.1, 18.8), 4.81 (ddd, J = 8.0, 8.0, 8.3 Hz, 1H), 5.09(d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.93-7.00 (m, 4H), 7.10 (t, J = 7.4, 1H), 7.28-7.35 (m, 4H), 11.97 (s, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ27.7, 27.8, 43.0, 59.2, 86.4, 119.1, 119.2, 123.8, 127.9, 129.9, 133.8, 151.9, 156.8, 157.6, 162.4, 165.0, 166.2.
【0162】
【0163】
5kの合成 25mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、0.3mmolの化合物4k、酢酸(ナカライ製)0.5mL,無水酢酸(東京化成製)0.5mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後はトルエンを加えてエバポレーターで濃縮し、真空乾燥した。その後ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(日本分析工業社製 LaboACELC-5060)によって分離し、純粋な化合物として5-(1-アセチル-5-(4-フェノキシフェニル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5k)を白色個体(収率76%)として得た。構造は1HNMRと13CNMRによりTMSをそれぞれ0ppm基準として決定した。
【0164】
5-(1-acetyl-5-4(phenoxyphenyl)pyrazolidin-3-ylidene)-1,3-dimethylbarbituric acid (5k): white solid; 1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.97 (s, 3H), 3.28 (s, 3H), 3.36 (s, 3H), 3.99 (m, 1H), 4.3 (dd, J = 10.8, 19.5 Hz, 1H), 5.37 (d, J = 8.5, 1H), 7.01 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 7.15 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.20 (d, J = 8.6Hz, 2H), 7.36 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 13.64 (br, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ20.7, 27.7, 45.2, 58.2, 86.4, 119.4, 124.0, 126.6, 129.9, 133.6, 151.6, 156.2, 157.6, 158.1, 162.2, 163.6, 164.3.
【0165】
【0166】
(実施例13)
5-(1-アセチル-5-フェニル-2-ピラゾリン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5a’(ケト―イミン体))の調製
【0167】
【0168】
25mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、上記実施例1で合成した中間体エノン化合物6-hydroxy-1,3-dimethyl-5-[(2E)-3-phenylprop-2-enoyl]-1,2,3,4-tetrahydropyrimidine-2,4-dione0.5mmol、ヒドラジン一水和物(ナカライ製)2mmol、氷酢酸(ナカライ製)1mLを加え125oCで2時間攪拌した。反応終了後、エタノール(EtOH)で濾過を行い、濾物は真空乾燥し化合物5’aを得た。構造は1HNMR及び13CNMRにより決定した。白色固体の5-(1-アセチル-5-4(フェノキシフェニル)ピラゾリジン-3-イリデン)-1,3-ジメチルバルビツール酸(化合物5a’)を得た(収率80%)。
【0169】
(5a’): white solid; 1HNMR (400 MHz, CDCl3)δ1.94 (s, 3H), 3.31 (s, 6H), 3.90-4.02 (m, 1H), 4.28-4.36 (m, 1H), 5.40 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.22-7.42 (m, 5H); 13CNMR (100 MHz, CDCl3)δ20.6, 27.7, 45.1, 58.6, 86.3, 125.0, 129.0, 129.7, 139.2, 139.3, 151.6, 157.7, 163.6.
【0170】
【0171】
(実施例14)
5‐(1‐acetyl‐5‐phenyl‐4,5‐dihydro‐1H‐pyrazol‐3‐yl)‐6‐
hydroxy‐1,3‐dimethyl‐1,2,3,4‐tetrahydropyrimidine‐2,4‐dione(化合物5a”(エノール体))の調製
【0172】
【0173】
25mL容の二口フラスコをアルゴン雰囲気下でフレームドライをした後、中間体エノン化合物6-hydroxy-1,3-dimethyl-5-[(2E)-3-phenylprop-2-enoyl]-1,2,3,4-tetrahydropyrimidine-2,4-dione)0.6mmol、アセチルヒドラジン東京化成工業製0.6mmol、メタノール3mLを加え、バス温度80oCで18時間攪拌した。反応終了後、メタノール(MeOH)で濾過を行い、濾物は真空乾燥し白色固体の化合物5a”を得た。構造は1HNMR(DMSO)より決定した。
【0174】
(5a”): white solid; 1HNMR (400 MHz, DMSO)δ3.16 (s, 3H), 3.18 (s, 3H), 3.33 (s, 3H), 3.60-3.70 (m, 1H), 3.82-3.98 (m, 1H), 4.62 (s, 1H), 7.02-7.28 (m, 3H). 13Cは薄いため未観測
【0175】
【0176】
(NMRチャート比較)
上記各実施例で得られた化合物5a、化合物5a’および化合物5a”の各々のNMRチャートを
図1、
図2および
図3に示す。各NMRチャートを比較した。
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
上記NMRチャートの結果から、化合物5a’では3.31 (s, 6H)が等価に観測された(H1,H2に対応するプロトン)。化合物5a’では13CのC3、C4に相当するカルボニルが等価となるため、13Cの数が化合物5aに比べて1つ少ないという特徴が確認された。
【0181】
化合物5a”は、5員環のHを示す4.0~5.5ppmの領域のマルチプレット(多重線)の形状が、上記実施例の化合物5aおよび化合物5a’とは全く異なっていた。4.6ppm付近にOH由来のシングレット(単一線)が観測された。
【0182】
(溶解性比較)
上記実施例の化合物5aおよび化合物5a’はクロロホルムに易溶であったが、本実施例の化合物5a”はクロロホルムに難溶であった。
【0183】
以上の結果から、各実施例の化合物5a、化合物5a’および化合物5a”が、常温で異なる構造の化合物として各々別個独立して合成されたことが確認された。同様に、この他の各実施例のすべての化合物に関連する、前記一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表される異なる構造の化合物も、各々別個独立して合成することができる。
【0184】
(反応工程ごとの収率)
上記各実施例における各反応工程ごとの収率を以下にまとめた。
【0185】
(1)1段階目(アルドール縮合反応)
【0186】
【0187】
【0188】
(2)2段階目(ピラゾリジン形成反応)
【0189】
【0190】
【0191】
(3)3段階目(アルカノイル化(アシル化)反応)
【0192】
【0193】
【0194】
(実施例15)
本発明者らが以前開発したHREルシフェラーゼアッセイ系(Tsujita, T.; Kawaguchi,S-i.;Dan,T.;Baird,L.; Miyata,T.; Yamamoto,M.,Hypoxia-Sensitive Reporter System for High-Throughput Screening.Tohoku J. Exp. Med. 2015, 235 (2), 151-159)を用いて、上記各実施例の化合物について、HIFが活性化されたシグナルを示すかを測定し、HIF活性化能(HIF転写活性能)を測定した。比較例として上述した従来のHIF活性剤として知られているジメチルオキサロイルグリシン(DMOG;Dimethyloxaloylglycine)のHIF活性化能(HIF転写活性能)も測定した。
【0195】
HREルシフェラーゼアッセイ系はHIFの転写調節領域の調整下で、nano-Luc(プロメガ社)を発現する構築を安定的に導入したSK-N-BE(2)-C細胞(SKN:HER-NLuc)を用いた。SKN:HRE-NLucを384 ウェルプレート(コーニング社製)に7.0×103 cell/wellで播種し、16時間、37 ℃、5% CO2で前培養した。翌日100 μMから段階希釈した各種薬剤を含む培地に交換し、24時間培養した。刺激後培地の1/3量のルシフェラーゼアッセイ(NanoGlo Luciferase Assay、プロメガ社製)を添加したのち、吸光・蛍光・発光スペクトル測定用マルチモードマイクロプレートリーダー(SpectraMax i3x、モレキュラーデバイス社製)で発光強度を測定した。HIF転写活性に基づく、ルシフェラーゼ活性は1% DMSO刺激を1としたときの、各種薬剤の相対活性を求めた。
【0196】
SKN:HRE-NLucを384 ウェルプレート(コーニング社製)に7.0×103 cell/wellで播種し、16時間、37 ℃、5% CO2で前培養した。翌日100μMから段階希釈した各種薬剤を含む培地に交換し、24時間培養した。刺激後、細胞数測定キット(Cell Counting Kit-8、 同仁化学研究所製)を培地の1/10量添加し、インキュベーター内で30分~1時間呈色反応させた。その後、吸光・蛍光・発光スペクトル測定用マルチモードマイクロプレートリーダー(SpectraMax i3x、モレキュラーデバイス社製)で450 nmの吸光度を測定した。最後に1% DMSO処理の細胞を100%とした場合の各刺激における生存率を求めた。
【0197】
得られた結果を
図4~
図9に示すと共に、以下の表にまとめた。表中の5倍活性比とは、(市販品ロキサデュスタット(FG-4592、アステラス製薬/フィブロジェン社製)の5倍活性濃度)/(各化合物の5倍活性濃度)の比率を示す。また、表中のHIF転写活性能は、以下を示す。
+ 化合物5a(基準)以上
++ 5倍活性比 1以上
+++ 5倍活性比 10以上
【0198】
【0199】
さらに、上述の実施例1で得られた5a(ケト-エナミン体)と、実施例13で得られた5a’(ケト―イミン体)について得られたHIF転写活性能の測定結果を
図10に示す。
【0200】
得られた結果から、各実施例に係るすべての化合物は、高いHIF活性化能を発揮することが確認された。独立して合成された化合物であるケト-エナミン体、ケト―イミン体、エノール―イミン体のいずれについても高いHIF活性化能を発揮することが確認された。実施例1の化合物5aは、従来からHIF活性剤として知られている比較例のDMOGとほぼ同等の優れたHIF活性化能を発揮した。さらに、この他の各実施例に係る化合物のすべては、比較例のDMOGを大きく上回るHIF活性化能を示した。特に化合物5iについて非常に高いHIF活性化能が確認された。
【0201】
【0202】
細胞毒性については、化合物5iに若干の弱い細胞毒性が見受けられた程度であるが、この細胞毒性の数値については、活性の作用領域0.3μM以上に対して、LC50が24μM程度と100倍近く差があることから、かなり微弱な細胞毒性であり、一定の安全性が確認されている。その他の各実施例に係る化合物については細胞毒性は全く検出されず高い安全性が確認された。
【0203】
実施例1の化合物5aについて、市販品ロキサデュスタット(FG-4592、アステラス製薬/フィブロジェン社製)及び従来のHIF活性剤として知られているジメチルオキサロイルグリシン(DMOG)に対して、イムノブロット (immunoblot; IB)(別名ウエスタンブロッティング(Western Blotting:WB))を用いてHIF安定化細胞間比較を行った結果を
図11に示す。電気泳動によって分離したタンパク質を疎水性膜に転写し、抗体反応からバンド検出してターゲットのタンパク質であるHIF-1α、HIF-2α、α-チューブリンを検出した。得られた結果から、実施例1の化合物5aは、市販品ロキサデュスタットや公知のHIF活性剤(DMOG)よりも優れた安定性を示すことが確認された。
【手続補正書】
【提出日】2021-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表されるピラゾリン誘導体又はその塩。
【化1】
(上記一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)中、R
1は、置換又は非置換の5員環又は6員環からなる芳香環数1~2の単環構造、縮合環構造、又は多環構造のアリール基であり、R
2は水素原子又は置換若しくは非置換のアルキル基であり、R
3はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基である。
ここで、R
1
は、フルオロフェニル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基、若しくはフェノキシフェニル基のいずれかであるか、及び/若しくは、R
2
は、プロピル基であるか、及び/若しくは、R
3
は、シクロヘキシル基であるか、又は、(R
1
、R
2
、R
3
)の組み合わせは、(4-メトキシフェニル基、メチル基、メチル基)である。但し、一般式(III)において、(R
1、R
2、R
3)の組み合わせが、各々、(フェニル基、メチル基、水素原子)、(フェニル基、メチル基、メチル基)、および、(フェニル基、エチル基、エチル基)である場合を除く。
)
【請求項2】
ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はメソ体である、請求項1に記載のピラゾリン誘導体又はその塩。
【請求項3】
下記の一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)で表されるピラゾリン誘導体又はその塩を含有する
、プロリン水酸化酵素の活性阻害に使用する組成物。
【化2】
(上記一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)中、R
1は、置換又は非置換の5員環又は6員環からなる芳香環数1~2の単環構造、縮合環構造、又は多環構造のアリール基であり、R
2は水素原子又は置換若しくは非置換のアルキル基であり、R
3はそれぞれ独立して置換又は非置換の直鎖又は環状アルキル基である。)
【請求項4】
R1が1又は2つのフェニル基から構成される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
R2が炭素数1~5の低級アルキル基から構成される、請求項3又は請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
R3が炭素数1~6の直鎖又は環状アルキル基から構成される、請求項3~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、又はメソ体である、請求項3~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
プロリン水酸化酵素の活性阻害により治療可能な疾病に使用するための、請求項4~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記疾病が、腎臓病、慢性腎疾患、虚血性疾患、高血圧、糖尿病、および動脈硬化からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
態様が医薬品、医薬部外品、又は試薬である請求項3~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
経口投与用である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物を含有する経口投与用低酸素誘導因子活性剤。