(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066114
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】ロープ懸け補助装置、ロープ懸け方法
(51)【国際特許分類】
B66C 1/12 20060101AFI20220421BHJP
B66C 1/66 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
B66C1/12 M
B66C1/66 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175053
(22)【出願日】2020-10-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】513102073
【氏名又は名称】有限会社ケンテックシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】小倉 健二
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004LC06
(57)【要約】
【課題】 対象物やその近辺にある部材を損傷する恐れがなく、高所にある対象物に確実にロープを懸けられるようにする。
【課題を解決するための手段】ロープを手前側から奥側に懸ける対象物の上に配置される跨ぎ越し部材11と、跨ぎ越し部材11に設けられて、跨ぎ越し部材11を支持するためのアーム部材12を含み、跨ぎ越し部材11は、対象物の上を跨ぐ方向にロープとロープに取着される錘が移動可能な通路部14と、通路部14からロープと錘が外れないように防止する外れ防止部16、18と、ロープ通し孔22を有し、ロープを挿通して2つの折りに掛けることが可能なロープガイド部18と備える。通路部14は入口から出口に掛けて上向きに凸に曲がっており、ロープガイド部18は通路部14の出口へ続く下り勾配に設けられるとともに、ロープ通し孔22に挿通されたロープの通過移動は許容し、ロープに取り付けられる錘は通過不能に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを手前側から奥側に懸ける対象物の上に配置される跨ぎ越し部材と、
跨ぎ越し部材に設けられて、跨ぎ越し部材を支持するためのアーム部材を含み、
跨ぎ越し部材は、
対象物の上を跨ぐ方向にロープとロープに取着される錘が移動可能な通路部と、
通路部からロープと錘が外れないように防止する外れ防止部と、
通路部に設けられてロープの案内をするロープガイド部と、
を備え、
通路部は一端側の入口から他端側の出口に掛けて上向きに凸に曲がっており、
ロープガイド部は、路部の出口へ続く下り勾配に設けられており、
かつ、ロープ挿通用間隙を有し、ロープを挿通して2つ折りに掛けることが可能であるとともに、ロープ挿通用間隙に挿通されたロープの通過移動は許容し、ロープに取り付けられる錘は通過不能に形成されていること、
を特徴とするロープ懸け補助装置。
【請求項2】
通路部の入口側に、錘の通路部への進入を誘導する進入誘導部を設けたこと、
を特徴とする請求項1記載のロープ懸け補助装置。
【請求項3】
ロープを手前側から奥側に懸ける対象物の上に配置される跨ぎ越し部材であって、対象物の上を跨ぐ方向にロープとロープに取着される錘が移動可能な通路部と、通路部からロープと錘が外れないように防止する外れ防止部と、通路部に設けられてロープの案内をするロープガイド部と、を備え、通路部は一端側の入口から他端側の出口に掛けて上向きに凸に曲がっており、ロープガイド部は、路部の出口へ続く下り勾配に設けられており、かつ、ロープ挿通用間隙を有し、ロープを挿通して2つ折りに掛けることが可能であるとともに、ロープ挿通用間隙に挿通されたロープの通過移動は許容し、ロープに取り付けられる錘は通過不能に形成された跨ぎ越し部材を用意し、
対象物の下方において、ロープを跨ぎ越し部材のロープガイド部のロープ挿通用間隙に通し2つ折りにして入口側ロープ部と出口側ロープ部をともに通路部に載せ、さらに通路部の入口から下方へ垂らすことにより跨ぎ越し部材にロープを掛け、かつ、出口側ロープ部の先端または途中に錘を取着し、
次に、ロープを掛けた跨ぎ越し部材を上方へ持ち上げて、入口側ロープ部と出口側ロープ部を上方へ延ばしていき、跨ぎ越し部材を対象物の上に手前側から奥側に跨ぐように配置し、
次に、入口側ロープ部を引き下げて、出口側ロープ部を錘とともに上昇させていき、錘が跨ぎ越し部材の通路部に入口から入って頂上を過ぎ、ロープガイド部と同じ高さ以下の位置に来るまで移動させ、
錘がロープガイド部と同じ高さ以下の位置に来たところで入口側ロープ部を引き上げて、通路部の出口から対象物の奥側へ落としながら、出口側ロープ部を対象物の奥側の下方へ垂下することにより、ロープを対象物の上に逆U字状に懸けるようにしたこと、
を特徴とするロープ懸け方法。
【請求項4】
通路部の入口側に、錘の通路部への進入を誘導する進入誘導部を設けたこと、
を特徴とする請求項3記載のロープ懸け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロープ懸け補助装置、ロープ懸け方法に係り、とくに手の届かない高所に在る梁、横木、ロープ等の対象物の上にロープを懸ける場合に好適なロープ懸け補助装置、ロープ懸け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場などで、手の届かない高所に横に渡された梁などの対象物の上にロープを逆U字状に懸けたい場合がある。従来は、ロープの一端に錘(ウエイト)を取り付け、この錘を対象物の上を横切りながら越えて落下するように投げることで、ロープが対象物の上に懸かるとともに、ロープの両側が対象物から地面に向けて垂れ下がった状態となるようにしていた。
【0003】
けれども、錘を対象物に向けて投げることは、対象物やその近辺にある部材を損傷する恐れが高かった。また、対象物の近くに障害物があるとき、投げた錘やロープが障害物に邪魔されて落ちて来なくなってしまう恐れがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑みなされたもので、対象物やその近辺にある部材を損傷する恐れがなく、高所にある対象物に確実にロープを懸けることのできるロープ懸け補助装置、ロープ懸け方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明では、
ロープを手前側から奥側に懸ける対象物の上に配置される跨ぎ越し部材と、
跨ぎ越し部材に設けられて、跨ぎ越し部材を支持するためのアーム部材を含み、
跨ぎ越し部材は、
対象物の上を跨ぐ方向にロープとロープに取着される錘が移動可能な通路部と、
通路部からロープと錘が外れないように防止する外れ防止部と、
通路部に設けられてロープの案内をするロープガイド部と、
を備え、
通路部は一端側の入口から他端側の出口に掛けて上向きに凸に曲がっており、
ロープガイド部は、路部の出口へ続く下り勾配に設けられており、
かつ、ロープ挿通用間隙を有し、ロープを挿通して2つ折りに掛けることが可能であるとともに、ロープ挿通用間隙に挿通されたロープの通過移動は許容し、ロープに取り付けられる錘は通過不能に形成されていること、
を特徴としている。
請求項3記載の発明では、
ロープを手前側から奥側に懸ける対象物の上に配置される跨ぎ越し部材であって、対象物の上を跨ぐ方向にロープとロープに取着される錘が移動可能な通路部と、通路部からロープと錘が外れないように防止する外れ防止部と、通路部に設けられてロープの案内をするロープガイド部と、を備え、通路部は一端側の入口から他端側の出口に掛けて上向きに凸に曲がっており、ロープガイド部は、路部の出口へ続く下り勾配に設けられており、かつ、ロープ挿通用間隙を有し、ロープを挿通して2つ折りに掛けることが可能であるとともに、ロープ挿通用間隙に挿通されたロープの通過移動は許容し、ロープに取り付けられる錘は通過不能に形成された跨ぎ越し部材を用意し、
対象物の下方において、ロープを跨ぎ越し部材のロープガイド部のロープ挿通用間隙に通し2つ折りにして入口側ロープ部と出口側ロープ部をともに通路部に載せ、さらに通路部の入口から下方へ垂らすことにより跨ぎ越し部材にロープを掛け、かつ、出口側ロープ部の先端または途中に錘を取着し、
次に、ロープを掛けた跨ぎ越し部材を上方へ持ち上げて、入口側ロープ部と出口側ロープ部を上方へ延ばしていき、跨ぎ越し部材を対象物の上に手前側から奥側に跨ぐように配置し、
次に、入口側ロープ部を引き下げて、出口側ロープ部を錘とともに上昇させていき、錘が跨ぎ越し部材の通路部に入口から入って頂上を過ぎ、ロープガイド部と同じ高さ以下の位置に来るまで移動させ、
錘がロープガイド部と同じ高さ以下の位置に来たところで入口側ロープ部を引き上げて、通路部の出口から対象物の奥側へ落としながら、出口側ロープ部を対象物の奥側の下方へ垂下することにより、ロープを対象物の上に逆U字状に懸けるようにしたこと、
を特徴としている。
請求項2、4記載の発明では、
通路部の入口側に、錘の通路部への進入を誘導する進入誘導部を設けたこと、
を特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ロープに取着した錘を投げることなく、手の届かない高所に横に在る梁、横木等の対象物にロープを確実に懸けることができ、対象物やその近辺にある他の部材を損傷する恐れがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るロープ懸け補助装置を用いて対象物にロープを懸けた状態を示す説明図である(実施例1)。
【
図2】
図1中のロープ懸け補助装置の一部省略した外観斜視図である。
【
図20】ロープ懸け補助装置の変形例を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の最良の形態を実施例に基づき説明する。
【実施例0009】
図面を参照して本発明に係るロープ懸け補助装置と、それを用いたロープ懸け方法を説明する。
図1は本発明に係るロープ懸け補助装置を用いて対象物にロープを懸けた状態を示す説明図、
図2は
図1中のロープ懸け補助装置の外観斜視図、
図3乃至
図6は
図2の一部破断した側面図、平面図、正面図、背面図である。
図1において、1は高所に横に渡されたロープを掛ける対象物の一例としての梁(縦断面)である。2は梁1の上を跨ぐようにして地上から逆U字状に懸けられたロープ2である。ロープ2はここでは梁1の右側が入口側ロープ部2a、左側が出口側ロープ部2bであり、出口側ロープ部2bの下端に鋼鉄製の錘3が取着されている。10はロープ懸け補助装置であり、ロープ2に取り付けた錘3を投げることなく、高所に在る梁1の上にロープ2を逆U字状に懸けられるようにするためのものである。
【0010】
ロープ懸け補助装置10は全体が鋼鉄製であり、
図2乃至
図6に示す如く、ロープ2を懸ける梁1の上を跨ぐように配置可能に形成された跨ぎ越し部材11と、跨ぎ越し部材1の基部側(入口側)に設けられて、跨ぎ越し部材11を支持するアーム部材12とからなる。
図1の場合、アーム部材12の基端部12aが伸縮自在な竿部材13の先端に着脱自在に装着されており、竿部材13を手で持って操作することにより、アーム部材12と一体になった跨ぎ越し部材11を所望位置へ移動可能になっている。なお、アーム部材12を竿部材13と一体としたものとしてもよく、また、竿部材13に代えて、伸縮式のクレーンアームの先端にアーム部材12を着脱自在に装着し、クレーンアームの伸縮、旋回等により跨ぎ越し部材11を所望位置へ移動するようにしても良い。
【0011】
跨ぎ越し部材11は、ロープ2を懸ける対象物である梁1の上を跨ぐ方向(
図1の紙面左右方向)にロープ2と錘3が摺動して移動可能な通路部14と、通路部14からロープ2と錘3が外れないように防止するため、通路部14を構成する床板15の左右端部からL字状に立ち上がった外れ防止部16、17と、通路部14の出口14bへ続く下り勾配の途中でロープ2の移動方向と直角な左右方向(梁1の延設方向である
図1の紙面前後方向、または
図4の上下方向)の中央に設けられたロープ2の案内をするロープガイド部18を備えている。ロープガイド部18はロープ挿通用間隙(
図2の符号22参照)を有し、ロープ挿通用間隙にロープ2を挿通して2つ折りに掛けることを可能とするとともに、通路部14の上でロープ2が通過移動する位置を固定する機能を有している。
【0012】
通路部14はロープ2が床板15の上を摺動する方向である
図1の右端側の入口14aから左端側の出口14bに掛けて上に凸に滑らかに曲げられている。具体的には、
図4の右側の入口側端部が山形に湾曲したのち、出口側端部近くまで略直線的な下り勾配の斜面となっており、出口側端部が略円弧状に下方へ曲がっている(
図4参照)。通路部14の入口側端部の床板15は、入口側から見て左右方向の中央部が斜め下方へ突設されて突設部19が形成されるとともに、突設部19と左右のロープ外れ防止部16、17の間の床板15が左右対称に略楕円弧状に切除されて進入誘導部としての切除部20、21が形成されている。切除部20、21は、錘3が入口14aの下方から上昇したとき、床板15の端縁15aに引っ掛かって通録部14の上に乗れなくなるのを防止し、通路部14への進入を誘導するためのものである。
【0013】
ロープガイド部18は、通路部14の出口へ続く下り勾配の途中で、左右方向の中央に設けられている。ロープガイド部18はここでは鋼製のリングキャッチを用いた場合を示すが、カラビナ等の他の種類の部材を用いることもできる。ロープガイド部18は通路部14の床板15の上面に溶接等で固着されており、内部にロープ挿通用間隙の一例としてのロープ通し孔22が開いている。ロープ通し孔22はロープ2の直径より大きく形成されており、ロープ2の通過移動は許容する一方、錘3よりは小さく、錘3の通過を阻止する大きさに形成されている。ロープガイド部18はリングキャッチのゲートナット18aを回すことで、ゲート18bを開閉自在になっている。
【0014】
アーム部12は、先端側の端部が通路部14の内、左右方向(梁1の延設方向)の中央において、入口からロープガイド部18までの間に沿った形状に曲げられるとともに溶接等で通路部14の床板15の上面に固着されており、手元側が通路部14の入口の突設部19から手前外側の斜め下方へ延設されている。
【0015】
次に、
図1と、
図7乃至
図17を参照してロープ懸け補助装置10を用いたロープ懸け方法を説明する。なお、ここでは、
図1に示すように、高所に在る梁1の上に右側から左側へ跨ぐようにして地上から逆U字状にロープ2を懸ける場合を例に挙げて説明する。
(1)準備作業
梁1の下方の地上において、作業者は巻回されたロープ2を収納したカゴ30からロープ2の一端側を取り出し、ロープ2の一端側(ここては、後述するように出口側ロープ部2bの側)の先端(なお、出口側ロープ部2bの途中でも良い)に、錘3を取着する。錘3は上部がお結び形に細くなっており、跨ぎ越し部1材1の床板15の入口側の端縁(すなわち、通路部14の入口)に引っ掛かり難い形状になっている(
図7参照)。
【0016】
次に、錘3から見てロープ2の他端寄りの途中部分をロープガイド部18のゲートナット18aを緩めてゲート18bからロープ通し孔22に通したあとゲートナット18aを締めてゲート18bを閉じ、ロープ通し孔22からロープ2が抜けないようにし、更にロープ2をロープガイド部18で2つ折りの状態とし、2本のロープ部をロープガイド部18と通路部14の入口の間の床板15に這わせ、更に入口から外側に垂らすことで、ロープ2を跨ぎ越し部材11に掛ける。この際、錘3は地上に着いた状態としておく(
図7参照)。なお、ロープ2はロープ通し孔22より細くロープ通し孔22の中を自在に移動できるが、錘3はロープ通し孔22より大きいためにロープガイド部18に干渉されて通過不能である。
ロープガイド部18で2つ折りされた2本のロープ部は、カゴ30の側が入口側ロープ部2aとなり、錘3の側が手口側ロープ部2bとなる。
なお、ロープ2を先に跨ぎ越し部材11に掛け、あとで出口側ロープ部2bの先端または途中に錘3を取着するようにしても良い。
【0017】
(2)ロープ懸け補助装置の上昇
梁1の手前側(ここでは
図1の右側とする)の下方の地上で、竿部材13の先端部にロープ懸け補助装置10のアーム部材12の基部12aを着脱自在に装着する(
図8参照)。竿部材13を上方へ持ち上げ、ロープ懸け補助装置10を梁1に近づけていき、跨ぎ越し部材11が梁1のすぐ上に来たところで停止し、梁1の上を横に手前側(
図1の右側)から奥側(
図1の左側)に跨ぐように配置する(
図9参照。この際、跨ぎ越し部材11を梁1の上に載せても良い)。
平面的に見て通路部14の入口と出口は各々、梁1の
図1における右端より少し右手前の位置と、左端より少し左手前に位置に来るようにする。
【0018】
ロープ懸け補助装置10の上昇中、ロープ2の入口側ロープ部2aの下端側は荷重が掛かっておらず、出口側ロープ部2bの下端が錘3により地面に固定されているので、ロープ2が2つ折りされて掛けられたロープガイド部18の上昇による引き上げ力を受けて、入口側ロープ部2aは下端側がカゴ30から引き出されながら上昇し、上端側がロープガイド部18でUターンして出口側ロープ部2bの側に回ることで、入口側ロープ部2a、出口側ロープ部2bともに高く上に延びていく。
【0019】
入口側ロープ部2a、出口側ロープ2bは自重により地面方向へ引っ張られているので、通路部14の床板15に載った状態を保ってロープガイド部18でUターンするように移動し、通路部14の入口から下方へ延びる。但し、入口端部では楕円弧状のに切除部20、21に誘導されて左右の外れ防止部16、17近くに寄るが、外れ防止部16、17により通路部14から外れるのは阻止される。
【0020】
(3)錘の引き上げ
次に、地上にいる作業者が錘3の付いていない入口側ロープ部2aを手で引き下げ、ロープガイド部18で折り返された出口側ロープ部2bを下端に取着された錘3とともに引き上げていく(
図10、
図11参照)。錘3が跨ぎ越し部材11の入口に差し掛かると、通路部14の内の入口寄りの端部が上に凸に滑らかに湾曲しており、入口近くが登り勾配になっていることと、通路部14の入口端縁に楕円弧状に切除された侵入誘導部としての切除部20、21が形成されていることから、錘3は切除部20または21を乗り越えて、床板15の端縁から床板15の上に登り、通路部14に容易に侵入することができる(
図12参照)。
【0021】
錘3が通路部14に侵入後、さらに入口側ロープ部2aの引き下げを続けると、錘3が通路部14の頂点を通過したあと(
図13参照)、出口へ続く下り勾配を滑り落ち、ロープガイド部18と同じ高さか、それ以下の位置に来る(
図14、
図15参照)。若し、まだ入口側ロープ部2aの引き下げを続けると、今度は下り勾配を逆に登り始めようとするが、錘3はロープガイド部18のロープ通し孔22を通過不能なので、ロープ2の移動が出来なくなる。
【0022】
(4)錘の引き落とし
地上の作業者は、錘3が通路部14の頂点を通過し、出口へ続く下り勾配を滑り落ちたときの入口側ロープ部2aを持つ手の感触から錘3がロープガイド部18と同じ高さ以下の位置に来たことが判るか、または入口側ロープ部2aの引き下げが不能となったことで、錘3がロープガイド部18と同じ高さ以下に来たことが判ったならば、今度は、入口側ロープ部2aを持ち上げて上昇させる。
すると、錘3は通路部14の下り勾配に従い、床板15に沿って通路部14の出口側に降り(
図16参照)、更に梁1の奥側(
図1の左側)を通り、地上に向けて下降する(
図17、
図18参照)。錘3の下降中、ロープ2と錘3は跨ぎ越し部材11に設けられたロープガイド部18のロープ通し孔22の中を入口側から出口側に通過するので、通路部14の出口近くでは左右方向の中央に位置決めされることになり、また、通路部14の入口から出口まで外れ防止部16、17が設けられていることから、ロープ2、錘3の移動中にこれらが通路部14から外れることはない。
【0023】
錘3が地上に到達すれば、梁1に対する逆U字状のロープ懸けが完了する(
図19、
図1参照)。このあと、作業の必要に応じて出口側ロープ部2bを上昇させたり、下降させたりしたい場合、入口側ロープ部2aを引き下げさせて出口側ロープ部2bを引き上げたり、出口側ロープ部2bを引き下げさせて入口側ロープ部2aを上昇させたりすればよい。
【0024】
この実施例によれば、ロープ2を手前側から奥側に懸ける梁1の上に配置される跨ぎ越し部材11であって、梁1の上を跨ぐ方向にロープ2とロープ2に取着される錘3が摺動して移動可能な通路部14と、通路部14からロープ2と錘3が外れないように防止する外れ防止部16、17と、通路部14に設けられて、ロープ2をロープ通し孔24を有するロープガイド部18と備え、通路部14は右端の入口14aから左端の出口14bに掛けて上向きに凸に滑らかに曲がっており、ロープガイド部18は通路部14の出口側へ続く下り勾配に設けられるとともに、ロープ通し孔24に挿通されたロープ2の通過移動は許容し、ロープ2に取り付けられる錘3は通過不能に形成された跨ぎ越し部材11と、跨ぎ越し部材11を支持するアーム部材12を含むロープ懸け補助装置10を用意し、対象物である梁1の下方において、ロープ2を跨ぎ越し部材11のロープガイド部18のロープ通し孔22に通し2つ折りにして入口側ロープ部2aと出口側ロープ部2bをともに通路部14に載せ、さらに通路部14の入口から下方へ垂らすことにより跨ぎ越し部材11にロープ2を掛け、かつ、出口側ロープ部2aの先端または途中に錘3を取着し、次に、ロープ2を掛けた跨ぎ越し部材11を上方へ持ち上げて、入口側ロープ部2aと出口側ロープ部2bを上方へ延ばしていき、跨ぎ越し部材11を対象物の梁1の上に手前側から奥側に跨ぐように配置し、次に、入口側ロープ部2aを引き下げて、出口側ロープ部2bを錘3とともに上昇させていき、錘3が跨ぎ越し部材11の通路部14に入口から入って頂上を過ぎ、ロープガイド部18の高さ以下に来るまで移動させ、錘3がロープガイド部18と同じ高さ以下に来たところで入口側ロープ部2aを引き上げて、通路部14の出口から梁1の奥側へ落としながら、出口側ロープ部2bを梁1の奥側の下方へ垂下することにより、ロープ2を梁1の上に逆U字状に懸けるようにしたことにより、ロープ2に取着した錘3を投げることなく、手の届かない高所に横に渡された梁1にロープ2を確実に懸けることができ、梁1やその近辺にある他の部材を損傷する恐れがなくなる。
【0025】
なお、上記した実施例では、ロープ懸け補助装置、錘を鋼製としたが、ステンレス製、アルミ製などとしても良い。
また、床板の入口端部を楕円弧状に切除した切除部20、21により、下方から上昇する錘を通路部の入口内への進入を誘導する進入誘導部を形成するようにしたが、
図20乃至
図22に示すロープ懸け補助装置10Aの跨ぎ越し部11Aに示す如く、床板15Aの入口側端部に部分円錐状の凹部25、26を形成し、下方から上昇する錘を通路部14Aの入口内への進入を誘導する進入誘導部とするようにしても良い。
また、ロープには、天然繊維、合成繊維、複合繊維などの各種の繊維ロープのほか、金属製やプラスチック製のワイヤロープやストリングワイヤなどを使用することができる。
また、通路部の上でのロープの移動する位置を固定するロープガイド部は、
図2の如くトラック形とするほか、リング形、円弧形、多角形枠形とし、ロープ通し孔が円形、扇形、多角形となるようにしても良い。或いは、ロープガイド部をY字形、U字形、V字形などとし、ロープ挿通用間隙が外部に開口したものとしても良い。要は、ロープ挿通用間隙にロープを挿通して2つの折りに掛けることが可能であって、ロープ挿通用間隙がロープの通過移動は許容する一方、錘の通過移動は阻止するように形成されていれば良い。
ロープを手前側から奥側に懸ける対象物の上に配置される跨ぎ越し部材であって、対象物の上を跨ぐ方向にロープとロープに取着される錘が移動可能な通路部と、通路部からロープと錘が外れないように防止する外れ防止部と、通路部に設けられてロープの案内をするロープガイド部と、を備え、通路部は一端側の入口から他端側の出口に掛けて上向きに凸に曲がっており、ロープガイド部は、通路部の出口へ続く下り勾配に設けられており、かつ、ロープ挿通用間隙を有し、ロープを挿通して2つ折りに掛けることが可能であるとともに、ロープ挿通用間隙に挿通されたロープの通過移動は許容し、ロープに取り付けられる錘は通過不能に形成された跨ぎ越し部材を用意し、
対象物の下方において、ロープを跨ぎ越し部材のロープガイド部のロープ挿通用間隙に通し2つ折りにして入口側ロープ部と出口側ロープ部をともに通路部に載せ、さらに通路部の入口から下方へ垂らすことにより跨ぎ越し部材にロープを掛け、かつ、出口側ロープ部の先端または途中に錘を取着し、
次に、ロープを掛けた跨ぎ越し部材を上方へ持ち上げて、入口側ロープ部と出口側ロープ部を上方へ延ばしていき、跨ぎ越し部材を対象物の上に手前側から奥側に跨ぐように配置し、
次に、入口側ロープ部を引き下げて、出口側ロープ部を錘とともに上昇させていき、錘が跨ぎ越し部材の通路部に入口から入って頂上を過ぎ、ロープガイド部と同じ高さ以下の位置に来るまで移動させ、
錘がロープガイド部と同じ高さ以下の位置に来たところで入口側ロープ部を引き上げて、通路部の出口から対象物の奥側へ落としながら、出口側ロープ部を対象物の奥側の下方へ垂下することにより、ロープを対象物の上に逆U字状に懸けるようにしたこと、
を特徴とするロープ懸け方法。