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特開2022-66116音による速度提示方法とそれを用いる車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066116
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】音による速度提示方法とそれを用いる車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20220421BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
B60R11/02 B
G10K15/04 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175055
(22)【出願日】2020-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】518070238
【氏名又は名称】大庭 有二
(72)【発明者】
【氏名】大庭 有二
【テーマコード(参考)】
3D020
【Fターム(参考)】
3D020BA02
3D020BA10
3D020BC02
3D020BD03
3D020BE03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】速度変動に伴う速度範囲の変更が加速によるものか、減速によるものかを容易に判別可能とした音による速度提示方法と車両を提供する。
【解決手段】車両の速度計とは別に、一定の速度S1,S2,S3,S4間隔で区切った速度範囲50,51,52,53を異なる楽器や楽曲に分担させ、車両が加速中は上昇感のある楽曲の繰返しを出力し、車両が減速中は下降感のある楽曲の繰返しを出力することで、速度変動に伴う速度範囲の変更が加速によるものか、減速によるものかを容易に判別可能とした音による速度提示方法と車両についてである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両の速度範囲に応じて分担する音源または前記音源の楽曲を異にし、前記車両が加速中は上昇感を付与した楽曲を出力し、前記車両が減速中は下降感を付与した楽曲を出力して、前記楽曲を介して前記車両の運転者に前記車両の速度情報を提示することを特徴とする音による速度提示方法
【請求項2】
走行中の車両の速度範囲に応じて分担する音源または前記音源の楽曲を異にし、前記車両が加速中は上昇感を付与した楽曲を出力し、前記車両が減速中は下降感を付与した楽曲を出力して、前記楽曲を介して前記車両の運転者に前記車両の速度情報を提示する機能を具備することを特徴とする車両
【請求項3】
車両の速度範囲に応じて分担する音源または前記音源の楽曲を異にし、前記車両が走行中に上昇感を付与した楽曲と下降感を付与した楽曲と定常感を付与した楽曲のいずれかを走行速度に応じて前記車両内に出力して、前記車両の運転者に前記楽曲を介して前記車両の速度情報を伝えることを特徴とする音による速度提示方法
【請求項4】
走行する車両の速度情報を音源や楽曲の違いを介して運転者に伝えると同時に前記楽曲を振動として触覚を介して前記運転者に伝えることを特徴とする音による速度提示方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の走行速度を音響及びその振動を必要に応じて付け加えて運転者に提示する方法とそれを使用する車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の速度は速度計で視覚的に提示することが一般的である。そのため、運転者は車両が発生するエンジン音や通り過ぎる風景の様子から車両の速度を推定し、たまに速度計を見てその速度を確認している。しかし、速度計を見る動作は前方の確認を中断するため前方不注意が生じる。このため、速度計を確認する頻度を少なくする傾向があり、不注意による制限速度の超過を起こしやすい。更に、近年の電気自動車等はエンジン音が無い場合や有っても走行速度と無関係な場合がしばしばある。このためエンジン音などの聴覚的な情報による速度の推定が困難になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-137378号公報
【特許文献2】特開2020-66253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行速度をエンジン音の変化からある程度把握するする習慣があった運転者にとっては、自動車の電気走行にともなう静粛化で聴覚による速度の推測が困難になり、気がつくと思わぬ制限速度違反を起こしていることがある。これは速度計が目視確認を必要としているためである。他方、速度確認を頻繁に実行すると前方不注意が増え、事故を起こす可能性や速度違反をする可能性が増える問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車両の速度確認にともなう前方不注意な時間帯減らす目的で、おおまかな速度把握を聴覚または聴覚に触覚を交えた情報で可能とし、その際に車両の加速と減速を楽曲の相違に置換えて聴覚を介して認識可能として、速度把握の誤りを低減するものである。
【発明の効果】
【0006】
走行中の車両の速度範囲に応じて分担する音源または前記音源の楽曲を異にし、前記車両が加速中は上昇感を付与した楽曲を出力し、前記車両が減速中は下降感を付与した楽曲を出力して、前記楽曲を介して前記車両の運転者に前記車両の速度情報を提示することを特徴とする音による速度提示方法であり、運転者が聴覚によりどの速度範囲で車両が走行しているか判断可能になるとともに、車両が加速中は上昇感を付与した楽曲を出力し、減速中は下降感を付与した楽曲を出力するよう区別した。このため、速度の変動にともない速度範囲が変化した場合に、速い速度範囲に変わったのか、遅い速度範囲に変わったのかを容易に把握可能になる。これにより、速度範囲の誤認識や判断不能な状態を減少させることが可能となり、より信頼のおける音を用いた速度提示方法となる効果がある。
【0007】
走行中の車両の速度範囲に応じて分担する音源または前記音源の楽曲を異にし、前記車両が加速中は上昇感を付与した楽曲を出力し、前記車両が減速中は下降感を付与した楽曲を出力して、前記楽曲を介して前記車両の運転者に前記車両の速度情報を提示する機能を具備することを特徴とする車両であり、運転者が聴覚によりどの速度範囲で車両が走行しているか判断可能になるとともに、車両が加速中は上昇感を付与した楽曲を出力し、減速中は下降感を付与した楽曲を出力するよう区別した。このため、速度の変動にともない速度範囲が変化した場合に、速い速度範囲に変わったのか、遅い速度範囲に変わったのかを容易に把握可能になる。これにより、速度範囲の誤認識や判断不能な状態を減少させることが可能となり、より信頼のおける車両となる効果がある。
【0008】
車両の速度範囲に応じて分担する音源または前記音源の楽曲を異にし、前記車両が走行中に上昇感を付与した楽曲と下降感を付与した楽曲と定常感を付与した楽曲のいずれかを走行速度に応じて前記車両内に出力して、前記車両の運転者に前記楽曲を介して前記車両の速度情報を伝えることを特徴とする音による速度提示方法であるため、車両が次の速度範囲に近づいていることが認識でき、更に速度範囲の変更が加速により起こったか、それとも減速によって起こったかを楽曲の種類により区別できる。更に、同じ速度範囲内を上昇感を付与した楽曲と、下降感を付与した楽曲と、定常感を付与した楽曲で分割できるようになり、車両の加速と減速の区別が可能になるとともに、走行速度が同じ速度範囲内の遅い側の速度にいるか、中程度の速度にいるか、速い側の速度にいるか3段階で理解できるようになる。これ等により、速度情報を聴覚を介してかなり詳しく理解できるようになる効果がある。
【0009】
走行する車両の速度情報を楽曲の違いを介して運転者に伝えると同時に前記楽曲を振動として触覚を介して前記運転者に伝えることを特徴とする音による速度提示方法であり、周囲に雑音が多い車両内において、雑音に紛れている速度を示す聴覚的な楽曲情報とそれと同期する振動を触覚で運転者が受けることで、速度を示す楽曲情報を雑音の中から選び出すことが容易になり、速度を示す楽曲の認識が容易になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両の装置の配置図である。(実施例全般に共通)
図2】音源の出力形態を示す図である。(実施例1)
図3】利用を想定した音源の出力形態を示す図である。(実施例2)
図4】応用例の音源の出力形態を示す図である。(実施例3)
図5】応用例を実行するフローチャートの図である。(実施例3)
図6】速度範囲の変動に伴い出力する楽曲を示す図である。(実施例4)
図7】想定した走行速度の変動に伴い出力する楽曲の図である。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0011】
車両の走行速度が確認できる速度計とは別に、一定のルールで区切った各速度範囲に対応して繰返し音を車内に出力させ、その周期や音色により現在の車両の走行速度を聴覚で判断可能とする機能を車両に付加する。単純な例としては、車内で出力する繰返し音を、時速0(ゼロ)Km~10Km(以下、速度の単位をKm/hとする)までの速度範囲はバイオリンによる楽曲の繰返し音、次の10Km/h~20Km/hまでの速度範囲はフルートの繰返し音、次の20Km/h~30Km/hまでの速度範囲はピアノの繰返し音などとし、運転者はそれぞれの楽器の音で、現在の車両の速度に対応する速度範囲を認識する方法である。
この方法による速度範囲の提示では、加速と減速が繰返されるような走行をしている最中に出力音の楽器が変わることで、速度範囲が変ったことを理解できる。しかし、より速い速度範囲に変わったのか、逆に遅い速度範囲に変わったのか分からなくなる場合がある。こうした迷いを生じないためには、各速度範囲を担当する楽器や楽曲の出現順序などを十分に把握していなければならなく、慣れが必要となる。これでは初心者には使い勝手が悪く、十分な機能とは言えない。
この問題は車両が加速中に次の速度範囲を示す楽器、すなわち音源が変わったか、減速中に速度範囲を示す音源が変わったかを理解できれば解決できる。このため、本発明では各音源が奏でる楽曲に上昇感と下降感を付与することで問題に対処をした。
更に車両の内部は走行に伴う音や車内に流す音楽や放送などの音響的な雑音が多いため、聴覚を介しての速度把握が難しい場合がある。この対処として、聴覚情報とそれに同期した触覚情報を車両の運転者に伝えることで、問題に対処をした。
なお、この機能は車両に設置してある通常の速度計とともに併用するものであり、従来からの速度計を車両から排除するものではない。
【実施例0012】
図1は本発明を実施する車両の装置の概要を示す配置図であって、モータやエンジンなどからなる駆動部1が変速機2を介して一対の車輪3を駆動する。駆動部1は電気やガソリンなどを蓄積したエネルギー源9からのエネルギーをエネルギー制御部8の制御の下で供給し回転する。
この車両は自動車のアクセルや電車の主幹制御器に相当する速度設定値入力部7を制御して走行させ、方向制御はハンドル17で行う。ここまでの説明は多少の省略があるが車両の一般的な走行制御の形態である。
【0013】
車両には他に道路上の制限速度の標識を認識する標識認識部4や車両の速度検出部5やGPS情報(グローバル・ポジショニング・システム)の検出・処理部6が各々適切な箇所に設置してある。これらの各部が発生するデータ等は次に説明する制御部10に送られる。
制御部10では音源・楽譜等の記憶部12からのデータ読取を行うとともに、必要なデータの演算を行い、表示部11がそのマン・マシンインタフェースを司る。更に記憶部12のデータを具体的な信号とする信号発生部13を制御して楽器や声等信号を発生させるとともに音量を指示する。ここで、記憶部12での音楽情報は音声圧縮情報MP3や歌詞や楽譜やMIDIのような音楽情報であることもある。楽器等信号発生部13で生成した楽曲データはD/Aコンバータ14を介してデジタル信号をアナログ信号に変換し、更にアンプ部15で増幅してスピーカ16から車内に出力される。また、必要に応じてバンドル振動部18でスピーカ16の出力と同期した振動を発生し、ハンドル17を振動させる。
なお、図1ではハンドルの支柱を振動させてハンドル全体に振動を伝える配置関係にしてあるが、運転者が握るハンドル17の表面だけを振動させる構成でも十分に役割を果たせ、場合によると図中には未記載であるが座席を振動させることでも同じ役割を果たせる。また、車両が電車等の鉄道車両の場合は、ハンドルは主幹制御器やブレーキハンドル等になる。
【0014】
図2は3種類の音の出力形態を示す図であり、(2-1図)は各速度範囲を単純に異なる音源等で示す提示方法の図であり、(2-2図)は上昇感を付与した楽曲の音源等で速度範囲を示す提示方法の図であり、(2-3図)は下降感を付与した楽曲の音源等で速度範囲を示す提示方法の図である。
【0015】
次に上記の3種類の提示方法を順次説明する。
(2-1図)は横軸が車両の走行速度範囲であり、縦軸は音源の出力である。
(2-1図)は走行速度が速度ゼロから始まり、速度0~S1は速度範囲20、速度S1~S2は速度範囲21、速度S2~S3は速度範囲22、速度S3~S4は速度範囲23としてある。これは例えば、10Km/hごとに区切って(0~10Km/h)、(10~20Km/h)、(20~30Km/h)、(30~40Km/h)の速度範囲と見なすこともできる。各速度範囲に対して音源の出力が実線の四角と、少し荒めの破線の四角と、一点鎖線の四角と、細かい破線の四角、として示してある。なお、これ等の四角内の具体的楽曲のイメージは多彩であるため特に示していない。
この機能を使用した車両が動きだして加速すると、各速度範囲20、21、22、23に合わせて割り当てた音源の楽曲を出力して、その速度範囲内で走行中は同じ音源の楽曲が繰返し車内に出力する。これにより、運転者は同じ速度範囲内で車両が走行していることが判断できる。更に加速すると音源の音色が変わり、次の速度範囲に車両の速度が移ったことが判断できる。このようにして、運転者は速度計を目視しなくても、聴覚によりおおよその走行速度を知ることが可能になる。しかし、車両は加速も減速も行うため、この方法では車両が加速した場合に次はどの音色の音源になるか、逆に車両が減速した場合にはどの音色になるか把握している必要がある。これを把握していなと、音色が変わった際に、速い速度側の速度範囲に移ったのか、遅い速度側の速度班に移ったのか判断できなくなることがある。特に高速に走行し、道路に起伏があるような場所では、アクセルの踏み方とは関係なく車両が加速したり減速したりするため速度感が狂い、音色の変化が加速によるのか、減速によるのか分かりにくくなる。
【0016】
以上、(2-1図)で従来技術の説明をしたが、次から本発明を説明する。
(2-2図)は(2-1図)と同じく横軸が車両の走行速度範囲であり、縦軸は各速度範囲の音源の出力である。ここでも速度範囲ごとに音源の音色が変わることは(2-1図)と同じであり、速度0~S1は速度範囲30、速度S1~S2は速度範囲31、速度S2~S3は速度範囲32、速度S3~S4は速度範囲33としてある。ただし、各速度範囲では上昇感を持たせた楽曲が繰返し出力するようにしてあり、車両が加速中に次の速度範囲に変わったことが運転者に判断できるようにしてある。(2-2図)の各速度範囲30,31,32,33における音源が出力する楽曲(音の組合せ)をここでは棒グラフ状に3回の繰返しとして模式的に図示してある。
ただし、その速度範囲内での走行時間が長ければ繰返し数は更に増え、短ければ繰返し数が減少するが、それについては図示していない。
【0017】
次に(2-2図)を更に詳しく説明する。なお、楽曲の上昇感と下降感の付与の方法については後半で説明するが、当面は音の強弱(ベロシティ)を利用した説明をする。
車両が動きだし加速すると、各速度範囲30、31、32、33に合わせて割り当てた音源や楽曲の出力をする。例えば音源がピアノのドの音で、最初に弱い音、次に少し強い音、次に更に強い音、次に強い音の順に発生し、これを繰返す。この音源の強弱を速度範囲ごとに棒グラフと同様に示してあり、縦軸は音源の出力で、横軸は左から右に進む時間として、模式的に棒グラフを示した。更に具体的に説明すると、速度範囲30では細い実線の棒グラフで示してあり、最初の短い線で音源の出力が小さいことを表している。2本目の少し長い線で音源の出力が少し大きくなり、3本目の更に長い線で音源の出力が更に大きくなり、4本目で音源の出力が最大になることを表している。この弱い出力から次第に強くなる4本の出力の繰返しを3回繰返した状態を速度範囲30には模式的に示してある。このような次第に強くなる出力の繰返しを速度範囲31、32、33でも同様に示してあるが、それぞれが別の音源または楽曲であるのでそれ等を区別するために、速度範囲31では4本の荒めの破線で表し、速度範囲32では4本の一点鎖線で表し、速度範囲33では4本の細かい破線として表し、それぞれを3回の繰返として示してある。これ等の順次音が大きくなる組合せの繰返しを上昇感のある楽曲とすることにして、これを運転者に意識させる。
このような条件下で車両が加速すると、上昇感のある楽曲が続きながら速度範囲が変わり、それに伴い音源の種類や楽曲が変わることで、より速い速度側の速度範囲に移ったと容易に理解できるようになる。
なお、ここまでは単音を前提にして説明をしてきたが、弱い音をド、少し強い音をレ、更に強い音をミ、強い音をファ、などと音を区別しやすくすることで更に理解が容易になることは言うまでもない。
【0018】
ここまでは上昇感を説明したが、次に(2-3図)を用いて下降感を説明する。
(2-3図)は(2-2図)と同じく横軸が車両の走行速度範囲であり、縦軸は音源の出力である。ただし、下降感を説明する都合で、横軸の左側をより速い速度範囲とし、各速度範囲内の速度の表記は右側に進むに従い遅い速度としてあり、これにより速度を不連続に記載しなければならなくなる図の問題を解消している。
この図での下降感は強い音、少し弱い音、更に弱い音、弱い音の順に発生し、これを繰返している。これ等を(2-2図)と同様に速度範囲40では4本の実線で表し、速度範囲41では4本の少し荒い破線で表し、速度範囲42では4本の細い一点鎖線で表し、速度範囲43では4本の細かい破線で表し、それぞれを3回の繰返しとした図として示してある。これについても、(2-2図)と同じくその速度範囲内での走行時間が長ければ繰返し数は増え、短ければ繰返し数が減少するが、それについては図示していない。
これ等の順次音が小さくなる組合せの繰返しを下降感のある楽曲とすることにして、これを運転者に意識させる。
このような条件下で車両が減速すると、下降感のある楽曲が続きながら速度範囲が変わりそれに伴い音源の種類が変わることで、より遅い速度側の速度範囲に移ったと容易に理解できるようになる。
【実施例0019】
これまでの説明では、車両が単純に加速あるいは減速する場合について説明したが、次に加速と減速が混在する場合を図3で説明する。なお、この場合の音の強弱を模式化した図の表記方法は図2に準じている。
図3は本発明の利用を想定した音源の出力形態を示す図であり、(3-1図)と(3-2図)からなる。(3-1図)は横軸が時間で縦軸が音源の出力である。ただし、横軸が時間であることは(3-2図)の横軸と同じとしたため表記していない。
(3-2図)は横軸が時間で縦軸が車両の走行速度であり、車両の走行速度を折線グラフとして示してある。走行速度に対応する速度範囲を(3-2図)の右側に、速度0からS1は速度範囲50、速度S1からS2は速度範囲51、速度S2からS3は速度範囲52、速度S3からS4は速度範囲53、として図示してある。
(3-1図)と(3-2図)は横軸の時間が連携しており、(3-2図)の走行速度に合わせて(3-1図)の音源が出力するとしている。また、(3-2図)の横軸には時間として、0、t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7を表記してあり、これ等に二点鎖線の補助線を付した。この時間に従って次の説明をする。
【0020】
(3-2図)において、車両は時間0から時間t2まで加速するが、その間の時間t1で速度範囲50から速度範囲51に変化している。それに伴い、(3-1図)では上昇感を持たせた実線で示した楽曲の繰返しを時間0から時間t1まで出力している。その出力が時間t1から上昇感を持たせた荒い破線で示した楽曲に変化している。これにより、車両が加速中に速度範囲がそれより速い速度範囲に変わったことが聴覚を介して運転者が理解できる。
さらに時間が進むと、時間t2からt4までは減速しており、その間に時間t3において速度範囲51から速度範囲50に変化している。それに伴い、(3-1図)では時間t2から下降感を持たせた荒い破線で示した楽曲の繰返が、t3では下降感を持たせた細線で示した楽曲の繰返しに変化している。これにより、減速中に速度範囲が速度範囲51からそれより遅い速度範囲50に変わったことが聴覚を介して運転者が理解できる。
さらに時間が進むと、時間t4からは加速しており、その間の時間t5、t6、t7において速度範囲50からそれぞれ速度範囲51、52、53と変化している。それに伴い、(3-1図)の音源出力が上昇感のある実線で示した楽曲の繰返しから荒い破線で示した楽曲の繰返しに変化し、更に一点鎖線で示した楽曲の繰返しになり、更に細かい破線で示した楽曲の繰返しになり変化して、その変化の度により速い速度範囲に変わったことが聴覚を介して運転者が理解できる。
もちろん、この聴覚的な速度範囲の把握では正確な速度を運転者に理解できない場合が多々あるが、その場合でも何段階の速度範囲を超えたとの意識ができるようになる。また、正しい速度はたまに速度計を見て確認あるいは補正をするだけで済むようになり、速度計を目視する回数を低減できるようになる。
【0021】
なお、車両がほぼ一定速で走行して加速と減速が細かく変動する状態では、それに合わせて楽曲に上昇感や下降感を付与するとその変動が激しくなり、逆に運転者には分かりにくくなりなってしまう。そこで、こうした細かい変動や定速走行の場合は、上昇感や下降感を感じさせない定速走行用の別の楽曲を出力することが好ましい。その1例としては、同一速度範囲内でのほぼ定速走行の場合は同一音源を同一出力で繰返すことで対応が可能である。これについては、後に(実施例4)で別途詳細について説明する。
【実施例0022】
本発明の応用例を次に説明する。一般に制限速度は道路状況により決められているが、同じ道路でも状況が変わると制限速度が突然に変化している。その変化は標識により示されているが見逃す可能性があり、それにより違反速度で走行してしまうことが多々ある。この違反速度に対して、本発明を適用して違反の速度レベルを聴覚的に運転者が把握できようにする応用例を図4で説明する。
図4は応用例の音源の出力形態を示す図であり、縦軸は音源の出力であり、横軸は車両の走行速度範囲である。横軸の走行速度範囲は制限速度と超過速度からなり、この内の超過速度は4段階の0から10Km/hの速度範囲60、10から20Km/hの速度範囲61、20から30Km/hの速度範囲62、30から40Km/hの速度範囲63で示した。それぞれの速度範囲の音源の出力は、おのおの実線、荒い破線、一点鎖線、細かい破線としてある。また、それぞれの線の長さで音源の出力を示している。これ等については図3と同じにしてある。
最近のカーナビゲーションや車載の速度計測レーダー探知機ではGPSによる車両の位置情報とともに走行する道路の制限速度情報を保持できるものがある。それ等と同じくGPS情報から車両の位置情報を取得し、別途取得する走行する道路の制限速度の情報を用いて、車両が制限速度を超えての走行をしているか判断が可能である。そこで、本発明を図3と同様の機能を図4に適用して、制限速度内であれば無音とし、制限速度超えであれば音源や楽曲を速度範囲ごとに区別し、更に上昇感と下降感を付与した楽曲を車両内に出力することで、超過走行速度を運転者に聴覚を介して知らせるようにする。これにより、運転者は聴覚を介して速度違反をしていることと、車両の超過速度を10Km/hの単位で把握可能になる。
なお、図4では説明を単純化するため、上昇感のある楽曲のみを示してあるが、各速度範囲では上昇感のある楽曲と下降感のある楽曲が普通は混在することになる。それについては図4に明記していない。
【0023】
次に上記の図4を実現する図1における制御部10での処理を図5のフローチャートで示す。
図5は応用例を実行するフローチャートの図である。スタート101から始まり、処理102で運転者の楽曲選択が行われ、処理103に進む。処理103では、図1の記憶部12から必要な情報として音源・楽譜等の読込が行われる。次に車両が走行中の道路の制限速度(L)の情報を処理104で読込み、判断105に進む。判断105では車両の走行速度が制限速度(L)以上であるか判定し、否定であれば処理106で出力中の楽曲再生を中止して153の判断に移る。これ等の処理により、図4の制限内速度での無音化が実施される。もちろん、運転者が選んだ音楽や放送があれば、それ等の出力は処理106とは無関係にスピーカから継続出力される。
【0024】
判断105が肯定であれば、判断107で車両が加速中であるか判定する。この判定は上昇感と下降感のある楽曲を区別して出力する為に必要であり、加速中であれば上昇感、加速中でなければ下降感の楽曲を出力させることになる。ここで、加速の可否判断は主として前回の処理における判断105で用いた走行速度と今回の処理の中の判断105で用いた走行速度の比較によりなされる。ただし、これには細かな加速と減速の変動にともなう補正が必要となるが、その詳細はここには記していない。判断107が否定の場合は処理108で減速用のプログラムへ移行する。この減速用プログラムに関するフローチャートは省略してあるが、基本的には次に説明する判断109以降のフローチャートと同じ内容であり、違いは選択する音源や楽曲が下降感のある曲になることが主たる違いである。
【0025】
判断107が肯定であれば判断109で現在の走行速度が制限速度(L)に10Km/hを加えた速度以下であるか判断する。判断109が肯定であれば、処理110で図1の記憶部12から楽曲30を選択するが、この楽曲は図2の(2-2図)の走行速度範囲30と同じ、または類似曲で、上昇感のある楽曲である。次に判断111で楽曲30をすでに出力中であるか確認する。肯定であれば処理112で楽曲30を継続出力として、その後に判断153に移る。判断111が否定であれば、処理113で現在出力中の楽曲の再生を中止し、処理114で楽曲30の出力し、判断153に移る。これにより図4の速度範囲60の上昇感のある楽曲の出力がなされることになる。
【0026】
判断109が否定であれば、判断115で現在の走行速度が制限速度(L)に20Km/hを加えた速度以下であるか判断する。 判断115が肯定であれば、処理116に進むが、これ以降の処理等(116,117,118,119,120)は判断109の肯定の後の処理等(110,111,112,113,114)と基本的には同であり、違いは制限速度(L)より最大20Km/h速い速度範囲61の楽曲の出力判定であり、かつ、楽曲30を楽曲31に変わっている事が主たる違いである。
それ故、一連の説明が処理等(110,111,112,113,114)とほぼ同じ繰返し説明となるため詳しい説明は省略する。これにより図4の速度範囲61の出力が可能になる。
【0027】
判断115が否定であれば、同様にして図4の速度範囲62や速度範囲63に対応する判断や処理が次と次になされ、それぞれの楽曲が出力される。それ等のフローチャートでの図示はこれまでとほぼ重複説明になるため省略する。
また、図4の速度範囲63以上の速度範囲も同様な処理等となるが、その説明も省略する。
速度判断の最後の段階として図5の判断150があり、判断150では車両の最高速度Sm以上であるか判断しており、肯定であれば151で最高速度であることを警告し、判断153に移る。否定であれば、そのまま判断153に移る。ただし、この最高速度の警告は本発明と直接関係はなく、更に一連の処理等(150、151)は必ずしも必要でない。
【0028】
なお、処理152は判断107が否定で減速用のプログラムへ移る処理108が、判断153に戻る経路である。判断153では運転中か判断し、否定であれば処理154でプログラム処理を中止する。肯定であれば制限速度(L)の読込を105で行う。この制限速度の読込により車両の移動に伴う制限速度の変化に対処が可能となる。以上で図5の説明を終わる。
【実施例0029】
先に、車両がほぼ一定速で走行して加速と減速が細かく変動する状態で、それに合わせて細かく上昇感や下降感を付与した楽曲を出力すると運転者には逆に細かすぎて分かりにくくなることを述べた。こうした細かい速度変動や定速走行の場合は、上昇感や下降感を感じさせない楽曲を出力することで、この問題を避けることができる。その1例を以下で説明する。
【0030】
図6は「速度範囲の変動に伴い出力する楽曲を示す図」であり、(6-1図)加速時の出力楽曲(加速モード)と(6-2図)減速時の出力楽曲(減速モード)からなる。
両図ともに横軸は車両の走行速度で、0、S1、S2、S3、S4の順に速度が速くなることを示している。なお、(6-2図)は減速時の出力楽曲を示す図であるため、横軸を左側から右側に早い速度S4から停止速度0になるように(6-1図)の横軸と逆にしてある。
縦軸は楽曲の種類を示しており、上昇感曲と定常感曲と下降感曲を示している。この上昇感曲は上昇感のある楽曲のことであり、下降感曲は下降感のある楽曲のことであるが、図中のスペースの関係で略した表記にしてある。更に、定常感曲は上昇感や下降感を感じさせない楽曲であり、例えば一定の出力でドの音を連打する楽曲を定常感曲とし、ドの音の出力が順次上昇する楽曲を繰返して示す上昇感曲や、ドの音の出力が順次下降する楽曲を繰返して示す下降感曲と異なる楽曲としている。なお、これ等の楽曲の種類には補助線として二点鎖線を付した。
また、走行速度が0~S1の速度では斜線を配した四角で出力を示し、走行速度がS1~S2の速度では格子模様を配した四角で出力を示し、走行速度がS2~S3の速度では縦縞を配した四角で出力を示し、走行速度がS3~S4の速度では横縞を配した四角で出力を示し、音源等の違いを区別できるようにしてある。
なお、これ等の図中の四角は、走行速度に対応する楽曲が上昇感曲、定常感曲、減少感曲のいずれであるかを示すだけで十分であるが、それだけでは音源等の区別ができないために四角内に斜線等の模様を配してある。つまり、図中の縦方向の高さは定量的な意味を持たず、単に音源等の区別に利用しているに過ぎない。
更に、横軸の走行速度には上矢印を配したu1、u2、u3、u4を(6-1図)に、d1、d2、d3、d4を(6-2図)に記したが、これは楽曲が変化する走行速度を説明するために付けた補助の速度である。
なお、図中の二点鎖線は楽曲の種類を示すための、補助線である。これは後に説明する図7でも同様に使用している。
【0031】
まず、(6-1図)加速時の出力楽曲を説明する。車両の走行速度0からS1までは斜線を配した四角であり、速度u1を境にして前後に異なる高さの2個の四角からなる。速度0から速度u1までは定常感曲の出力であり、速度u1から速度S1までは上昇感曲の出力であることを示している。これにより、車両が速度0から速度u1の走行では定常感曲が出力され続け、運転者はu1までの速度で走行していることが分かる。車両が速度u1を超えると速度S1までは上昇感曲が出力され、速度S1に近づいていることが分かる。さらに速度が上昇してS1以上の速度になると音源が変わり走行速度がS1からS2の範囲に移ったことが分かる。この上昇感曲に続く音源の変化で、運転者はより速い側の速度範囲に移ったことが容易に理解できる。
【0032】
速度S1からS2までの範囲も同様に異なる高さの2個の格子模様を配した四角からなり、S2から速度u2になるまでは定常感曲が出力され、u2からS2までの速度では上昇感曲が出力される。これにより、車両の速度がSからu2までの範囲を走行中であるか、u2からS2までの範囲で走行中であるかが判断可能になり、更に速度が上昇してS3に達すると音源の変化により車両が更に速い速度範囲の速度S2から速度u2の範囲に達したことが理解できる。以後の縦縞を配した四角や横縞を配した四角についても同様な出力があり、それに伴い運転者は各速度範囲を確実に認識ができるようになる。
【0033】
次に、(6-2図)減速時の出力楽曲を説明する。走行速度S4からS3までは横縞を配した四角であり、速度d4を境にして前後に異なる高さの2個の四角からなる。
速度S4から速度d4までは定常感曲の出力であり、速度d4から速度S3までは下降感曲の出力であることを示している。これにより、車両が速度S4から速度d4の走行では定常感曲が出力され続け、運連者はその範囲の速度で走行していることが分かる。車両の速度がd4より遅くなると下降感曲が出力され、速度S3に近づいていることが分かる。
さらに速度が下降してS3以下の速度になると音源が変わり、車両の走行速度がS3からS2の範囲に移ったことが分かる。
【0034】
速度S3からS2までの範囲も同様に異なる高さの2個の縦縞を配した四角からなり、S3から速度d3までは定常感曲が出力され、d3からS2までの速度では下降感曲が出力される。これにより、車両の速度がd3からS2までの範囲を減速しながら走行中であり、更に速度が下降してS2に達すると音源の変化により車両が更に遅い速度範囲の速度S2から速度d2の範囲に達したことが理解できる。以後の格子模様を配した四角や斜線を配した四角についても同様の出力があり、それに伴い運転者は各速度範囲を確実に認識ができるようになる。
なお、(6-1図)を加速モード、(6-2図)を減速モードとすることにし、以後の説明にこの用語を使用する。
【実施例0035】
これまでの説明では、車両が単純に加速あるいは減速する場合について説明したが、次に加速と減速が混在する場合を図7で説明する。なお、この場合の音源を模式化した図の表記方法は図6に準じている。
図7は本発明の利用を想定した走行速度の変動に伴い出力する楽曲の図であり、(7-1図)と(7-2図)からなる。
(7-1図)は横軸が時間で縦軸が楽曲の種類である。ただし、横軸が時間であることは(7-2図)の横軸と同じとしたため表記していない。
(7-2図)は横軸が時間で縦軸が走行速度であり、車両の走行速度を折線グラフとして示してある。走行速度に対応する速度範囲は(7-2図)の右側に、速度0からS1は速度範囲70、速度S1からS2は速度範囲71、速度S2からS3は速度範囲72、速度S3からS4は速度範囲73、として図示してある。
(7-1図)と(7-2図)は横軸の時間が連携しており、(7-2図)の走行速度に合わせて(7-1図)の楽曲が出力するとしている。また、(7-2図)の横軸には時間として、0、t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7の表記し、各々に一点鎖線を補助線として付した。更に、(7-1図)の横軸には、楽曲が定常感曲から上昇感曲または下降感曲に変るタイミングを上向きの矢印を付けて、変化タイミングc1、c2、c3、c4、c5、c6として記した。
また、(7-2図)のグラフには変化タイミングに合わせて上向きと下向きの矢印を参考に記した。これ等の時間に従って次に詳細な説明をする。
【0036】
(7-2図)において、車両は時間0から時間t2まで加速し、加速モードとなるが、その間の時間t1で速度範囲70から速度範囲71に変化している。それに伴い、(7-1図)では速度範囲70に対応する音源を斜線を配した四角で示し、速度範囲71に対応する音源を格子模様を配した四角として示している。
最初の速度0から変化タイミングc1までは定常感曲を出力し、その後は変化タイミングc1から時間t1までは加速モードのため上昇感曲を出力する。これにより、運転者は車両が加速中であり、かつ速度範囲が70から71に変わる速度に近づいていることが理解できる。ちなみに、この次の速度範囲への接近は、より速い速度範囲でも、逆に遅い速度範囲でも各楽曲の出力があるため、各々の速度範囲の中を下降感曲と定常感曲と上昇感曲の3種類の楽曲で分担して出力することになる。このため、運転者は走行中の速度範囲の中の低速側、中速、高速側のどこで車両が走行しているかを把握できることになり、本発明は大まかな速度把握用ではあるが、一般的な定速走行をする車両の速度変動幅を考慮すると、かなり高い精度の速度把握が可能である。
こうして、時間t1を過ぎると速度範囲71に対応した音源に変化することで、車両が速度範囲71に入ったことが運転者は理解できる。その後更に加速するが、変化タイミングが生じる前に車両は時間t2から減速を始め、そこから時間t4まで減速モードとなる。その減速中に時間t3で速度範囲71から速度範囲70に戻る。
この間に加速と減速があるにもかかわらず、(7-1図)は時間t1から変化タイミングc2まで、楽曲が定常感曲のままで出力して変わらない。この安定した楽曲の出力は運転者に余分な精神的な負担をかけない運転に役立つ。
【0037】
変化タイミングc2からは下降感曲を出力する。これにより運転者は車両が減速中であり、かつ速度範囲が71からそれより遅い速度側の速度範囲70に変わる速度に近づいていることが理解できる。こうして、時間t3を過ぎると音源が速度範囲70の音源に変化し、変化タイミングc3まで定常感曲の出力が続く。これにより車両は再び速度範囲70に戻ったことが運転者は理解できる。
時間t4で車両は再び加速を始め、時間t7まで加速モードに入る。これに伴い変化タイミングc3から再び上昇感曲が出力され、これにより車両は加速しながら、速度範囲70からより速い速度側の速度範囲71に変わる速度に近づいたことが運転者は理解できる。
時間t5で速度範囲71に入り、それに伴い音源に変わり、更に定常感曲に変わり、速度範囲71に入ったことが分かる。更に加速すると変化タイミングc4で上昇感曲に変わり、時間t6で速度範囲72の定常感曲に変わる。これ等により、速度範囲72に近づいたことや速度範囲72に入ったことが理解できる。
さらに加速すると変化タイミングc5で速度範囲72の上昇感曲に変わり、速度範囲72から速度範囲73に変わる速度に近づいたことが運転者に理解できる。しかし、時間t7では速度範囲73に達せずに減速するため、時間t7からは減速モードに変わる。これ伴い、時間t7からは定常感曲の出力に変わる。これにより、車両は依然として速度範囲72での走行を維持しているが、速度範囲73から次第に遠さかる走行をしていることが運転者は理解できる。その後、変化タイミングc6で速度範囲72の下降感曲に変わるため、車両は減速しながら速度が遅い側の速度範囲71に近づいたことが分かる。なお、時間t8以降の走行ついては説明を省略する。
【0038】
このようにして、定常感曲と上昇感曲と下降感曲を車両の速度や加速、減速に合わせて出力することにより、早い速度側の速度範囲への接近と遅い速度側の速度範囲への接近を楽曲により区別が可能になるため、速度範囲の変更がより速い側に変化したのか、より遅い側の速度範囲に変化かを明確に聴覚を介して区別できるようになる。
更に、同じ速度範囲で車両が走行を継続している場合は、加速と減速が存在するにもかかわらず図7の時間t1から変化タイミングc2までのように同一の定常感曲の出力とすることができ、無用な楽曲の変更を起こさない安定した楽曲の出力とすることができる。このため、同じ速度範囲で車両が加速と減速を小刻みに変化させる走行などでは、それに合わせて上昇感曲や下降感曲が小刻みに変化する出力になるのに比べて聞き苦しさを減少でき、かつ運転者の精神的な負担を減少できるようになる。
【実施例0039】
これまでは、上昇感と下降感を音の強弱(ベロシティ)を用いて、弱い音、少し強い音、更に強い音、強い音の順に発生してこれ等の繰返しを上昇感があるとし、強い音、少し弱い音、更に弱い音、弱い音の順に発生してこれ等の繰返しを下降感があるとして説明してきた。これに加えて、楽曲に上昇感と下降感を付与する方法は、以下のような出力形態がある。
(1)音の強弱(ベロシティ)の増減、(2)周波数(音程)の上昇と下降、(3)拍子の間隔(音符の種類)の増減、(4)残響の長さの増減、(5)音の重なり(和音)の度合いの増減、(6)楽器の重なり(合奏)の度合いの増減、(7)軽快な曲と荘重な曲(感覚的な役割分担)、(8)音程の高い楽器と低い楽器(音源の特性による役割分担)、などである。
次に、これ等の音の上昇感と下降感について更に説明を付け加える。
【0040】
(1)音の強弱(ベロシティ)の増減による上昇感と下降感はすでに説明をしてきたため、再度の説明は省略する。
(2)周波数(音程)の上昇感と下降感は、例えば音階をドレミの順に出力することを繰返すことで上昇感を示し、逆に音階をミレドの順に出力することを繰返すことで下降感を示す。これは各音源の周波数の上昇と下降でもあり、上昇感と下降感を区別しやすい。
【0041】
(3)拍子の間隔(音符の種類)の増減は、例えばドの音で全音符、二分音符、四分音符、八分音符、全休符の順の出力を繰返すことで上昇感を示し、逆に音階を八分音符、四分音符、二分音符、全音符、全休符、の順の出力とし、これを繰返すことで下降感を示す。これは拍子の周期の上昇と下降でもあり、自動車エンジンの回転音の周期の上昇や下降と類似しており、上昇感と下降感を区別しやすい。
また、全音符、全音符、八分音符、八分音符、全休符、などの順の出力として、拍子の間隔を大きく飛躍させることで上昇感を強調し、逆に音階を八分音符、八分音符、全音符、全音符、全休符、などの順の出力として、拍子を狭い間隔から急に広い間隔に変えることで下降感を強調するなどとすることができる。こうした不連続な拍子の繰返による上昇感と下降感は運転者にとって区別しやすい。
【0042】
(4)残響の長さの増減は、例えばピアノの足元にあるラウドペダルド用いる状態で、ドの音を連続してひいて、各音の踏んだペダルを戻すまでの間隔を遅く、少し遅く、早くなどとして音の延びを変化させることを繰返す手法であり、これにより上昇感を示し、逆に踏んだペダルを戻すまでの間隔を早く、少し遅く、遅くなどとして音の延びを変化させることを繰返すことで下降感を示す。
ちなみにラウドペダルドはピアノ弦の響きを止めているダンパーを弦から離し、音の延びを調整する機能である。
【0043】
(5)音の重なり(和音)の度合いの増減は、例えば最初の音はド、次の音はドミ、更に次の音はドミソとしてこれを繰返すことで上昇感を示し、逆に最初の音はドミソ、次の音はドミ、更に次の音はドとしてこれを繰返すことで下降感を示す。これは和音またはコードの利用とも言えるが、音の重なり数の上昇と下降を利用している。
【0044】
(6)楽器の重なり(合奏)の度合いの増減は、例えば最初のフレーズはピアノのみ、次のフレーズはピアノとバイオリン、次のフレーズはピアノとバイオリンとフルートとして楽器の重なりを増やし、再びこの順の出力を繰返すことで上昇感を示し、逆に楽器の重なりを減らす順の出力を繰返すことで下降感を示すことができる。
【0045】
(7)軽快な曲と荘重な曲(感覚的な役割分担)は、軽快で軽やかな曲の出力で上昇感を示し、逆に荘厳な曲で下降感を示す。これ等は短いフレーズの繰返しでも、長めのフレーズの繰返しでも使用可能である。
【0046】
(8)音程の高い楽器と低い楽器(音源の特性による役割分担)は、例えば音程の高いバイオリンによる楽曲の出力を上昇感があるとし、音程を低いベースによる楽曲の出力を下降感があると約束して区別をする。この方法では、車両が同じ速度範囲内で加速している際はバイオリンの音による楽曲の出力であるが、加速を止めて減速に移るとベースの音に変わって、同じ楽曲が出力されることになる。
【0047】
以上のような音の出力方法により、上昇感と下降感を運転者に聴覚を介して伝えることができ、更にこれ等を組合せたり、繰返しの周期を変化させて複雑化することで、更に分かりやすい音の出力にすることができる。ただし、上昇感と下降感は感覚や約束であるため、個人差や曲想の差や楽器種類の差でも感覚が異なることがある。そのため、個人の感覚と合う上昇感と下降感を運転者に選択してもらう必要が生じるのは事実である。
【0048】
また、これまでは車両の道路交通法の速度制限を中心に説明してきたが、鉄道の車両などで私的に決めてある規則による制限や車両の燃費向上のための目安となる区切り等を単位として本発明を扱ってもよいことは言うまでもない。
【0049】
なお、これまでは音源を主に実在する楽器として説明したが、それに留まことはなく、音源はサイン波などの各種の波形であったり、録音した音響データであったり、編集して作成した音響データであったりしてもよい。更に、本発明の検証実験では楽曲作成にコンピュータ ソフトのオーディオ編集器を使用した。具体的にはバーチャル・インストルメント Studio One(PreSonus社製)を使用し、MIDIデータを編集したが、少なくてもその範囲で使用可能な音源が利用できることを確認している。Studio Oneの音源の選択項目のInstrumentsの中にはBass、Combinations,DrumKits,Effects,Guitar,Keyboards、Percussion,Strings,Synths,Vox,Winds&Brassなどで分類される音源が存在し、少なくてもそれ等は本発明で使用可能である。なお、オーディオ編集器等はStudio Oneに限定しているわけではない。
【実施例0050】
次に、聴覚情報の認識向上について説明する。車両は走行中に多数の雑音を発生するとともに、外部からの騒音や運転者が選んで車内で再生している音楽や放送も車内に存在する。そのため、本発明の聴覚を用いる速度計は周囲の雑音の中で聞き分けることが要求され、分かりにくい状況になることがある。その対策として運転者が握るハンドルにスピーカから出力する波形と類似または同じ振動を伝えて、運転者がハンドルの振動と同期するスピーカ音に意識を集中することで、速度範囲の情報を判別しやすくできる。これを実現するには、図1のアンプ15からスピーカ16に出力する信号と同じ又は類似信号をハンドル17に接しているハンドル用振動部18に伝え、それが発する振動をハンドル17を介して運転者に伝える。この振動だけでは楽曲を連想することが普通はできないが、スピーカからの出力音と同期している振動であることは容易に理解できる。このため、ハンドル17からの振動が無い時は全が周囲雑音であるとみなし、振動がある時のみそれと同期するスピーカからの音を強く意識して、速度範囲を示す楽曲を雑音と区別するようにする。このため特に間隔があいて聴覚情報が出力される(3)の拍子の間隔(音符の種類)の増減や、(4)の残響の長さの増減、などの場合はハンドルから伝わる振動があることで、速度範囲の情報を聴覚で容易に理解できるようになる。
また、この聴覚と同期する振動をハンドルから受けることにより聴覚情報の存在を把握し、聴覚情報を雑音の中から区別する方法は、上記までに説明した速度計に限定されず、広く利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
実施例では主として自動車における速度把握の手段として説明したが、電車や電気機関車などの鉄道の運転時の速度把握においても同様に利用することができ、これにより運転者はより前方に集中した運転を可能になる。
【符号の説明】
【0052】
1は駆動部、2は変速機、3は車輪、4は標識認識部、5は速度検出部、6はGPS検出・処理部、7は速度設定値入力部、8はエネルギー制御部、9はエネルギー源、10は制御部、11は表示部、12は記憶部、13は信号発生部、14はD/Aコンバータ、15はアンプ部、16はスピーカ、17はハンドル、18はハンドル振動部、20から23及び、30から33及び、40から43及び、50から53及び、60から63及び、70から73は各々走行速度範囲、101から154まではフローチャートの各処理等に付けた番号である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7