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特開2022-66147振動型ジャイロスコープの直交バイアス誤差の低減
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066147
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】振動型ジャイロスコープの直交バイアス誤差の低減
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5684 20120101AFI20220421BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20220421BHJP
   B81C 3/00 20060101ALI20220421BHJP
   H01L 41/053 20060101ALI20220421BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20220421BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20220421BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20220421BHJP
   H03H 9/24 20060101ALI20220421BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
G01C19/5684
B81B3/00
B81C3/00
H01L41/053
H01L41/047
H01L41/09
H01L41/187
H03H9/24 A
H03H3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145090
(22)【出願日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】20275161
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508296554
【氏名又は名称】アトランティック・イナーシャル・システムズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Atlantic Inertial Systems Limited
【住所又は居所原語表記】Clittaford Road, Southway, Plymouth, PL6 6DE, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン タウンゼンド
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ポール フェル
【テーマコード(参考)】
2F105
3C081
5J108
【Fターム(参考)】
2F105BB02
2F105BB03
2F105BB04
2F105BB08
2F105CC04
2F105CD01
2F105CD02
2F105CD03
2F105CD05
2F105CD06
2F105CD07
3C081AA13
3C081BA44
3C081BA47
3C081BA55
3C081BA75
3C081CA14
3C081CA33
3C081CA44
3C081CA45
3C081DA03
3C081DA06
3C081EA02
5J108AA09
5J108BB08
5J108CC02
5J108CC10
5J108EE03
5J108EE07
5J108KK01
5J108KK02
5J108MM11
5J108NA01
(57)【要約】
【課題】電荷移動効果の影響を受けにくく、モード周波数を高精度に一致させる。
【解決手段】振動型角速度センサは、マウント707、平面振動構造703、及び、マウントと平面振動構造の間に延在して該振動構造を支持し、平面振動構造が電気的励起に応じてマウントに対してその平面内で振動することを可能にする複数のコンプライアント支持体705、706a、706bを備える。トランスデューサの第1のセット708は、使用中に平面振動構造703に電気的励起を印加しかつ使用中にその平面内の平面振動構造の振動から生じる運動を感知するために、平面振動構造上に配置されている。複数の容量性領域702は、その平面内の平面振動構造から一定の距離に固定されている。容量性領域702は、使用中に、平面振動構造の振動の周波数の変化を誘導する静電力を平面振動構造に加えるように構成されたトランスデューサの第2のセットを形成する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウント(707;907)、平面振動構造(703;903)、及び、前記マウント(707;907)と前記平面振動構造(703;903)の間に延在して前記振動構造(703;903)を支持し、それによって、前記平面振動構造(703;903)が電気的励起に応じて前記マウント(707;907)に対してその平面内で振動することを可能にする複数のコンプライアント支持体(705、706a、706b;905、906a、906b)と、
使用中に前記平面振動構造(703;903)に電気的励起を加えかつ使用中にその平面内の前記平面振動構造(703;903)の振動から生じる運動を感知するための、前記平面振動構造(703;903)上に配置されたトランスデューサの第1のセット(708;908)と、
前記平面振動構造(703;903)から、その平面内で一定の距離を置いて固定された複数の容量性領域(702;902)であって、前記容量性領域(702;902)は、使用中に前記平面振動構造(703;903)に、前記平面振動構造(703;903)の振動の周波数の変化を誘導する静電力を加えるように構成されたトランスデューサの第2のセット(704a;904a)を形成する、前記複数の容量性領域(702;902)と、
を備える、振動型角速度センサ(750;950)。
【請求項2】
前記トランスデューサの第1のセット(708;908)の第1のサブセットは、前記平面振動構造(703;903)を一次モードで前記マウント(707;907)に対して振動させるように構成されており、
前記トランスデューサの第1のセット(708;908)の第2のサブセットは、角速度が前記平面振動構造(703;903)の平面に実質的に垂直な軸周りに加えられたときにコリオリの力によって誘導される二次モードでの前記マウント(707;907)に対する前記平面振動構造(703;903)の振動から生じる運動を感知するように構成されており、
前記トランスデューサの第1のセット(708;908)の第3のサブセットは、前記一次モードでの前記平面振動構造(703;903)の振動から生じる運動を感知するように構成されており、
前記トランスデューサの第2のセット(702;902)は、前記周波数を一致させるように、前記一次モード及び/または前記二次モードでの振動の前記周波数の変化を誘導する静電力を前記平面振動構造(703;903)に加えるように構成されている、
請求項1に記載の振動型角速度センサ(750;950)。
【請求項3】
前記トランスデューサの第1のセット(708;908)の第4のサブセットは、電気的励起を印加して、前記二次モードでの前記平面振動構造(703;903)の前記振動をゼロにするように構成されている、請求項2に記載の振動型角速度センサ(750;950)。
【請求項4】
前記複数の容量性領域(702;902)が、円周上で前記平面振動構造(703;903)の周りに対称的に配置されている、請求項1~3のいずれかに記載の振動型角速度センサ(750;950)。
【請求項5】
前記平面振動構造(703)の前記平面に垂直な磁場を生成するように構成された磁気回路(713)をさらに備えており、
前記トランスデューサの第1のセット(708)が、前記平面振動構造(703)の表面に形成された導電性トラッキング(710)を備える、請求項1~4のいずれかに記載の振動型角速度センサ(750)。
【請求項6】
前記トランスデューサの第1のセット(908)が、前記平面振動構造(903)の表面に形成された圧電電極の第1のセットを備える、請求項1~3のいずれかに記載の振動型角速度センサ(950)。
【請求項7】
前記トランスデューサの第1のセット(708;908)への電気的接続の第1のセット(710;910a、910b)及び前記トランスデューサの第2のセット(704a;904a)への電気的接続の第2のセット(704b;904b)を備え、
前記電気的接続の第1のセットと前記電気的接続の第2のセットは互いから独立している、請求項1~6のいずれかに記載の振動型角速度センサ(750;950)。
【請求項8】
前記コンプライアント支持体(705;905)が、前記マウント(707;907)と前記トランスデューサの第1のセット(708;908)の間に延在する導電性トラッキング(710;910a、910b)を備えており、
前記トランスデューサの第2のセット(704a;904a)への直接電気的接続(704b;904b)をさらに備える、請求項1~7のいずれかに記載の振動型角速度センサ(750;950)。
【請求項9】
前記複数の容量性領域(702;902)のうちの1つまたは複数が、前記平面振動構造(703;903)から距離d1にかつ前記コンプライアント支持体(705;905)から距離d2に固定されており、d2>d1である、請求項1~8のいずれかに記載の振動型角速度センサ(750;950)。
【請求項10】
振動型角速度センサ(750;950)を形成する方法であって、
平面振動構造(730;930)及び複数のコンプライアント支持体(705;905)を画定するように第1の基板(700;900)を加工することであって、前記コンプライアント支持体(705;905)は、前記第1の基板(700;900)から形成されたマウント(707;907)と前記平面振動構造(703;903)の間に延在して前記平面振動構造(703;903)を支持し、それによって、前記平面振動構造(703;903)が電気的励起に応じて前記マウント(707;907)に対して振動することを可能にする、前記加工することと、
前記振動構造(703;903)に電気的励起を印加しかつ前記平面振動構造(703;903)の振動による運動を感知するための、前記平面振動構造(703;903)にトランスデューサの第1のセット(708;908)を形成することと、
前記平面振動構造(703;903)からその平面内で一定の距離を置いて固定された複数の容量性領域(702;902)を形成することであって、前記容量性領域は、前記平面振動構造(703;903)に静電力を印加して前記平面振動構造(703;903)の振動の周波数の変化を誘導するためのトランスデューサの第2のセット(704a;904a)を形成する、前記形成することと、
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記複数の容量性領域(702;902)を形成することが、前記第1の基板(700;900)を、同じ材料層に前記複数の容量性領域(702;902)を画定するように加工することを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の容量性領域(702;902)を形成することが、
前記第1の基板(700;900)を、複数の半絶縁領域(702’)を画定するようにすることと;
次に前記第1の基板(700;900)を第2の基板(709;909)に固定することであって、前記第2の基板(709;909)は、前記複数の容量性領域(702;902)を支持するように構成された支持セクション(712;912)を備える、前記固定することと;
次に前記半絶縁領域(702’)の各々を、電気的に絶縁された容量性領域(702;902)の対(702a-702h)に分離することとを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
トランスデューサの前記第1のセット(708)を形成することが、前記平面振動構造(703)の表面に導電性トラッキングを形成することを備える、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記トランスデューサの第1のセット(908)を形成することが、前記平面振動構造(903)の表面に圧電電極のセットを形成することを備える、請求項10~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記トランスデューサの第2のセット(704a;904a)を形成することが、前記トランスデューサの第1のセット(708;908)から独立した電気的接続を有する、前記容量性領域(702;902)上の電極のセットを形成することを備える、請求項10~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、振動型ジャイロスコープ及び角速度センサ、より詳細には、平面リングなどの振動構造を備えるコリオリ型角速度センサ、及び電荷移動効果を導入せずに直交バイアス誤差を低減するように振動型ジャイロスコープを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(MEMS)ジャイロスコープの性能が向上するにつれて、それらは、光ファイバまたは回転質量ジャイロスコープといったより高価かつより大型のデバイスに取って代わるべく、より要求の多い用途で使用されることが増えている。しかしながら、MEMSジャイロスコープは、特にバイアスの時間及び温度の安定性の観点から性能が制限されるため、その幅広い普及は依然として限定的である。ジャイロスコープのバイアスは、回転がなくても出力される信号であり、それはその後、デバイスが回転しているときに角速度測定において誤差として現れる。
【0003】
平面シリコンリング共振器の形の振動構造を利用するコリオリ型MEMSジャイロスコープは、バイアス及び全体的な安定性の観点から最高性能を発揮するデバイスの1つである。これらのデバイスは通常、最適性能を達成するために、周波数が正確に一致するように同調された一対のcos2θ共振モードを利用する。モード周波数一致の精度は、全体の性能を制限する主要な誤差の典型的な1つである直交バイアス誤差を低減する上で非常に重要である。
【0004】
直交バイアス誤差は、共振器構造の計測の不完全性により生じる。これらの不完全性は、加えられた回転速度によって誘導された運動に対して位相直交にある(すなわち、90°の位相関係を有する)応答モードの振動を引き起こすものであり、デバイスが回転していないときでも存在し得る。直交運動の大きさはまた、回転速度情報を提供するために測定される同相運動と比較して、大きくもあり得る。
【0005】
大きな直交信号の存在下で、必要とされる回転速度誘導信号を回復するために、検出システムの位相精度に、厳しい要件が課せられる。正確に位相整合された電子機器は、直交信号の実質的な除去を可能にすることができる。しかしながら、この位相整合を設定することができる精度の実施上の制約は、直交信号の一部は通常残り、真の回転によって誘導される同相信号に混入することを意味する。
【0006】
US8555717に記載されているような平面シリコンリング共振器構造を利用するMEMSジャイロスコープは、このクラスのコリオリ型ジャイロスコープ内では最高性能を発揮することが可能である。他のMEMSジャイロスコープと同様に、直交バイアスは、US8555717に記載されているように、角速度の測定において全体的なバイアス及び誤差の一因となる重要な誤差源である。
【0007】
バイアス誤差は、一次及び二次のcos2θ共振モード間の周波数ミスマッチΔFと駆動トランスデューサに対するこれらのモードの角度アラインメントαの組み合わせによって引き起こされる。そのようなデバイスの直交バイアスΩQの大きさは次式で与えられる。
【0008】
ΩQ=K×ΔF×sin4α
Kは、モード結合係数及び二次ドライブ及び一次ピックオフ利得の項を含む定数である。US8555717に記載されているように、この誤差源がレートバイアス性能を低下させる程度は、直交バイアスの大きさΩQ及び制御電子機器の位相精度の両方に依存する。小さな位相誤差φEが存在する場合、直交バイアス誤差ΩErrは、次の式で与えられる。
【0009】
ΩErr=K×ΔF×sin4α×sinφE
MEMS処理における製造公差により、これらのモード周波数は通常、製造直後に最大±10Hz分離される。この初期周波数オフセットは、例えばUS5739410及びUS9677885に記載されているように、レーザトリミングプロセスを用いて調整され得る。このプロセスでは、レーザを使用して、リングの中立軸に沿って質量を除去し、周波数分離を周囲温度及び圧力環境において約ゼロに設定する。
【0010】
これらのモード周波数は原則として正確に一致するが、実際には、最終的に組み立てられたデバイスのバランシング精度は、いくつかの追加要因によって制限される。これらは、周波数測定及びレーザバランシングプロセス自体の両方の精度、ならびに、モード周波数及びアライメントを異なるように変動させる任意の後続のパッケージングによって誘導される応力とひずみ効果を含む。パッケージングの応力とひずみは、MEMSデバイス自体とそれが結合されているパッケージに異なる材料を使用することによって発生し、その結果、膨張差効果が生じる。これらの効果は、デバイスの動作温度範囲にわたって変化し直交バイアスの対応するシフトを誘導することが知られている。
【0011】
性能の向上を達成するために、直交バイアス誤差の大きさを低減するための設計変更が、US8555717のデバイスの設計及び製造プロセスに実装されている。US9677885は、レーザバランシングプロセスの分解能及び精度を向上させる方法を記載している。これは、初期周波数分離ΔFを大幅に低減することが可能であり、かくして、ΩQのオフセット値を低減する。US10422642及びUS9709401は、デバイスの動作温度範囲にわたるΩQの変動を低減するためにこれらの膨張差によって引き起こされる効果の影響を制限する設計特性を記載している。US10422642は、磁気回路構成要素をMEMS構造のガラス層上に取り付ける取り付け構成を記載しており、これは、膨張差による共振器構造への応力とひずみ結合を低減する。US9709401は、シリコン構造がその上に結合されている八角形状ガラススペーサ層の使用を記載している。八角形構造は、一般的な正方形のMEMSダイ構造とは異なり、支持脚部を介して、シリコンリング共振器構造への応力とひずみ結合が、cos2θモード対に対し効果的に対称であるという有益な効果を有する。このことは、任意の結果として生じた周波数変動が、2つのモードにおいて実質的に等しく、したがって直交バイアスのシフトを最小限に抑えることを確保する。
【0012】
容量性トランスデューサを利用する平面シリコンリングジャイロスコープを用いて、ΩQの値を非常に低くすることができる(例えば、US7637156及びUS7958781に記載されているように)。そのようなデバイスは、リングの内周と外周の周りに固定された別々のコンデンサプレートを組み込んでおり、リングはそれらで共通コンデンサプレートを形成する。US7637156及びUS7958781に記載されているように、DCオフセット電圧が別々のコンデンサプレートに印加されて、剛性を局所的に低下させる。これらの電圧は、ΔFを正確に最小化ししたがってΩQを約0°/sに設定するように変化し得る。これらの電圧をリアルタイムで調整することによって、ΩQの変化につながる応力とひずみの温度によって誘導される変動が存在する場合でも、直交バイアスのこのヌル値を維持することができる。
【0013】
しかしながら、容量性MEMSジャイロスコープは通常、2つのトランスデューサプレート間に固定オフセット電圧を印加することによって機能するため、電荷移動効果(一般に電荷トラッピングまたは誘電体帯電と呼ばれる)の影響を特に受けやすくなる。固定電圧勾配が存在すると、薄い自然酸化物層で構成され得るコンデンサプレートの表面上の誘電体層に電荷が蓄積する。これにより、時間の経過とともに2つのプレート間の実効電圧オフセットが効果的にシフトし、トランスデューサ利得が変化する。この効果が全てのトランスデューサで均一に発生する場合、デバイスのスケールファクタは、バイアスシフトを引き起こす不均一な変動でシフトされる。このスケールファクタの変動に対処する方法は存在するが(例えば、US8347718に記載されているように)、これは、バイアスシフトを除去するのに有効でない。かくして、電荷移動効果は、容量性MEMSジャイロスコープに対して主要な性能限界を示す。これらの効果は、誘導トランスデューサを使用するUS8555717に記載されているようなデバイスには存在しない。
【0014】
US8555717は、リング構造の製造中にレーザトリミングプロセスを用いて機械的に同調された振動モードを有する、振動リング構造を含みかつ誘導駆動及びピックオフトランスデューサを使用するMEMSジャイロスコープについて記載している。誘導トランスデューサの使用は、それらの本質的に線形の挙動、及び容量性トランスデューサに悪影響を与えることが知られている電荷移動効果に対する耐性を含むいくつかの理由で非常に有益である。しかしながら、この機械的モードバランシング技術を用いて達成可能な精度の限界が、誘導トランスデューサジャイロスコープの全体的な性能を制限する。
【0015】
US7958781に記載されているような静電トランスデューサを用いたMEMS振動構造デバイスを使用すると、より高い精度が達成され得る。そのようなデバイスには、周波数マッチングを電気的に高精度まで実行することができ、直交バイアス誤差を大幅に除去することができるという利点がある。しかしながら、静電トランスデューサを用いたジャイロスコープは、電荷移動効果の影響を受けやすく、そのようなデバイスのバイアス及びスケールファクタの安定性に悪影響を及ぼす。
【0016】
したがって、バイアス性能の向上を達成するために、電荷移動効果の影響を受けにくくかつモード周波数を高精度に一致させることができる振動型ジャイロスコープを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示の第1の態様によれば、マウント、平面振動構造、及び、マウントと平面振動構造の間に延在して振動構造を支持し、それによって、平面振動構造が電気的励起に応じてマウントに対してその平面内で振動することを可能にする複数のコンプライアント支持体と、
使用中に平面振動構造に電気的励起を印加しかつ使用中にその平面内の平面振動構造の振動から生じる運動を感知するための、平面振動構造上に配置されたトランスデューサの第1のセットと、
平面振動構造から、その平面内で一定の距離を置いて固定された複数の容量性領域であって、容量性領域は、使用中に、平面振動構造に、平面振動構造の振動の周波数の変化を誘導する静電力を加えるように構成されたトランスデューサの第2のセットを形成する、複数の容量性領域とを備える、振動型角速度センサが提供される。
【0018】
そのような振動型角速度センサは、2つの異なるタイプのトランスデューサの組み合わせを含むことが理解されよう。トランスデューサの第1のセットは、平面振動構造上に直接配置されて、電気的励起を印加しかつ平面振動構造の振動から生じる運動を直接感知する。したがって、トランスデューサの第1のセットは、平面振動構造の振動と線形関係にある。トランスデューサの第1のセットは、角速度を測定するために使用することができる。以下でさらに説明するように、平面振動構造上に直接配置することができるトランスデューサの例として、誘導型及び圧電型のトランスデューサがある。そのような線形トランスデューサを使用して印加かつ感知された電圧は、電荷移動効果をもたらさないが、例えば環境温度の変動のために、使用中に直交バイアスが発生し得る。
【0019】
トランスデューサの第2のセットは、(平面振動構造上に直接配置されるのではなく)平面振動構造から一定の距離に固定された複数の容量性領域を備える。このトランスデューサの第2のセットは、角速度を測定する目的で振動を駆動し変形を感知する通常機能に使用されているトランスデューサの第1のセットに加えて、平面振動構造に静電力を加えるために使用することができる。使用中に静電力を加えて、振動モード周波数のバランスをとりかつ直交バイアスを最小限に抑えることができる。これは、平面振動構造と本質的に非線形の相互作用であるが、トランスデューサの第2のセットは、角速度を測定する目的で使用することを意図しない。
【0020】
そのような振動型角速度センサは、2つのタイプのトランスデューサの利点を生かす任意の適切な方法で動作し得る。トランスデューサの第1のセットは、平面振動構造と線形相互作用を提供し、トランスデューサの第2のセットは、非線形相互作用を提供する。
【0021】
本開示の1つまたは複数の例によれば、トランスデューサの第1のセットの第1のサブセットは、平面振動構造を一次モードでマウントに対して振動させるように構成されており、トランスデューサの第1のセットの第2のサブセットは、角速度が平面振動構造の平面に実質的に垂直な軸周りに加えられたときにコリオリの力によって誘導される二次モードでのマウントに対する平面振動構造の振動から生じる運動を感知するように構成されており、トランスデューサの第1のセットの第3のサブセットは、一次モードでの平面振動構造の振動から生じる運動を感知するように構成されている。トランスデューサの第1のセットの第3のサブセットを使用して一次モードでの平面振動構造の振動を検出することによって、トランスデューサの第1のセットの第1のサブセットによって引き起こされる一次モードでの振動の大きさを調整するために、一次モードでの振動の振幅が測定され、かつ基準レベルと比較されて、振動の一定の振幅を維持し得る。さらに、そのような例では、トランスデューサの第2のセットは、周波数を一致させるように一次モード及び/または二次モードでの振動の周波数の変化を誘導する静電力を平面振動構造に加えるように構成されることが好ましい。トランスデューサの第2のセットによって加えられる静電力を使用して、二次モードでの振動の周波数を一次モードでの振動の周波数に一致させる(またはその逆)ように、平面振動構造の応答を調整することができる。これにより、トランスデューサの第1のセットによる角速度の測定に現れる直交バイアス誤差を最小限に抑えることができる。
【0022】
本開示の1つまたは複数の例によれば、トランスデューサの第1のセットの第4のサブセットは、電気的励起を印加して、二次モードでの平面振動構造の振動をゼロにするように構成されている。トランスデューサの第1のセットの第4のサブセットを使用して、コリオリの力によって誘導される二次モードでの平面振動構造の振動をゼロにし得る。これは、コリオリ型ジャイロスコープの閉ループ動作に対応し得る。
【0023】
コリオリ型ジャイロスコープには、様々な形状が提案されている。平面振動構造は、音叉構造を備え得る。平面振動構造は、通常、ディスクまたはリングなどの対称構造を有する。本開示の1つまたは複数の例によれば、平面振動構造はリング共振器である。マウントは、複数のコンプライアント支持体が取り付けられ得る任意の適切な構造であり得、様々な幾何学的形状を有し得る。マウントは、剛性フレームまたは中央ハブで構成され得る。本開示の1つまたは複数の例によれば、マウントは、平面振動構造の外部に形成された剛性フレームである。
【0024】
複数の容量性領域は、平面振動構造に対して対称または非対称配置を有し得る。いくつかの例では、容量性領域の単一のセットが平面振動構造の一方の側に配置され得、他方の側に容量性領域は配置されない。いくつかの例では、容量性領域は、平面振動構造の周囲全体に配置され得るが、それらの配置は対称的ではなく不等間隔である。容量性領域の数は、奇数または偶数であり得る。しかしながら、本開示の1つまたは複数の例によれば、複数の容量性領域は、円周上に平面振動構造の周りに対称的に配置されている。これは、静電力を平面振動構造の周りの様々なポイントにおいて均等に加えて、モードバランシング効果を最大化することができることを意味する。容量性領域の対称的な配置は、平面振動構造も円形形状を有するかどうかに関わらず、円周方向配置を備え得る。平面振動構造がリング共振器である例では、円周方向配置は、リング共振器の周りに等間隔に離間したいくつかのコンデンサプレートを備え得る。コンデンサプレートが等間隔に離間されているか不等間隔に離間されているかに関わらず、容量性領域は、静電平衡レジームを支援するためにグループにまとめて配置され得ることが理解されている。少なくともいくつかの例では、4個の容量性領域のグループが在り、グループの容量性領域の各々は、円周配置において90°間隔で配置されている。円周配置は、これらのグループの2つ以上、例えば、4個の容量性領域の4つのグループ、結果的に16個の等間隔の容量性領域を含み得る。
【0025】
平面振動構造が、円形形状を有するリング共振器である例では、容量性領域とリング共振器の距離を一定に保つように、容量性領域を円周上に固定することが有用である。複数の容量性領域は、リング共振器の半径方向外側または内側にある円周方向に配列して固定され得る。上記のように、容量性領域は、静電平衡レジームを支援するためにグループにまとめて配置され得る。静電力を加える目的で容量性領域がどのようにグループ化されるかに関わらず、複数の容量性領域は、センサの製造中に領域が形成される方法に起因する物理的配置を有し得る。本開示の1つまたは複数の例によれば、複数の容量性領域は、リング共振器に対して円周方向に配列して固定された複数の対の容量性プレートを備え、対は、コンプライアント支持体の1つによって分離されている。上述のように、容量性プレートの円周配置は、リング共振器の半径方向内側または外側に在り得る。
【0026】
上で論じたように、トランスデューサの第1のセットは、平面振動構造上に直接配置されて、電気的励起を印加し、かつ、結果として生じる運動を感知する。本開示の1つまたは複数の例によれば、トランスデューサの第1のセットは、誘導型トランスデューサを備えるまたはそれらから構成される。これは、平面振動構造が電気的に励起されて磁場の存在下で振動しトランスデューサが平面振動構造の運動によって誘導される電圧の変化を感知することを意味する。
【0027】
本開示の1つまたは複数の例によれば、センサは、平面振動構造の平面に垂直な磁場を生成するように構成された磁気回路をさらに備える。そのような例では、トランスデューサの第1のセットは、平面振動構造の表面上に形成された導電性トラッキングを備え得る。
【0028】
本開示の1つまたは複数の例によれば、追加的にまたは代替的に、トランスデューサの第1のセットは、圧電型トランスデューサを備えるまたはそれらから構成される。これは、平面振動構造が電気的に励起されて振動し圧電トランスデューサが平面振動構造と一緒に変形してそれに応じた変化電流または電圧を生成することを意味する。
【0029】
本開示の1つまたは複数の例によれば、トランスデューサの第1のセットは、平面振動構造の表面上に形成された圧電電極の第1のセットを備える。
【0030】
第1のセットにおけるトランスデューサのタイプに関わらず、電気的励起は使用中に必要とされ、これは、センサがトランスデューサの第1のセットへの電気的接続を含み得ることを意味する。いくつかの例では、電気的接続は、例えばワイヤボンドまたは電気リードを介して、トランスデューサの第1のセットに直接接続され得る。本開示の1つまたは複数の例によれば、コンプライアント支持体は、基板とトランスデューサの第1のセットの間に延在する導電性トラッキングを備える。これは、電気的接続はコンプライアント支持体に沿って導電性トラッキングを介して便利に行うことができることを意味する。
【0031】
トランスデューサの第2のセットが静電力を加えることが可能となるようにするには、使用中に電気的接続が必要とされる。容量性領域は平面振動構造から一定の距離に固定されているので、トランスデューサの第2のセットは、トランスデューサの第1のセットと同じタイプの電気的接続を有することは難しい場合がある。さらに、それぞれの電気的接続は、トランスデューサの第1の及び第2のセットが互いから独立して動作することを可能にするべきである。かくして、本開示の1つまたは複数の例によれば、センサは、トランスデューサの第1のセットへの電気的接続の第1のセット、及び、トランスデューサの第2のセットへの電気的接続の第2のセットを備え、電気的接続の第1の及び第2のセットは、互いから独立している。様々な例において、電気的接続の第2のセットは、トランスデューサの第2のセットに直接接続されている。本開示の1つまたは複数の例によれば、センサは、例えばワイヤボンドまたは電気リードを介して、トランスデューサの第2のセットへの直接電気的接続を含む。直接電気的接続とは、基板及び/またはコンプライアント支持体上を延在する導電性トラッキングに依存しない接続を意味する。かくして、直接電気的接続は、トランスデューサの第1のセットへの電気的接続を提供する任意の導電性トラッキングから独立し得る。
【0032】
平面振動構造から一定の距離に固定されている複数の容量性領域は、それらが電気的に絶縁されるようにそれらの間にギャップがあることを意味することが理解されよう。平面振動構造は、コンプライアント支持体によってマウントに物理的に接続されており、通常、マウントから、コンプライアント支持体を介して、平面振動構造上のトランスデューサの第1のセットへの電気的接続が在る。そのような例では、容量性領域がマウントに直接固定された場合、電気的絶縁層が必要とされる。かくして、様々な例において、複数の容量性領域は、平面振動構造から電気的に絶縁されるように、マウントに間接的に固定されている。例えば、複数の容量性領域は、基板に、介在する絶縁層(ガラス台座層などの)を介して間接的に固定され得る。
【0033】
本開示の1つまたは複数の例によれば、複数の容量性領域は、コンプライアント支持体ならびに平面振動構造及びマウントから電気的に絶縁されるように、マウントに間接的に固定されている。容量性領域の電気的絶縁を支援するために、複数の容量性領域はまた、コンプライアント支持体から一定の距離に、すなわちそれらの間にギャップを有するように固定され得る。この距離は、平面振動構造からの距離と実質的に同じであり得る。しかしながら、本発明者らは、複数の容量性領域とコンプライアント支持体の距離が、コンプライアント支持体の剛性に望ましくない影響を与え得ることを理解している。この影響は、複数の容量性領域とコンプライアント支持体の距離を大きくすることによって低減することができる。かくして、本開示の1つまたは複数の例によれば、複数の容量性領域の1つまたは複数は、(その平面内の)平面振動構造から距離d1にかつコンプライアント支持体(同一平面内の)から距離d2に固定されており、d2>d1である。複数の容量性領域の各々は、このように固定され得る。
【0034】
上に開示された振動型角速度センサでは、マウント、平面振動構造、及びコンプライアント支持体は全て同じ材料層に形成され得る。これは、これらの構成要素を、例えば単一のシリコンウェハから製造することができることを意味する。いくつかの例では、材料層はシリコン層であるが、いくつかの例では、他の適切な材料層が、それらが適切な機械的特性を有しかつある程度導電性であるという条件で、使用され得ることが理解されよう。いくつかの例では、容量性領域は、別に形成され、デバイスに追加され得る。しかしながら、製造効率のために、複数の容量性領域もまた、マウント、平面振動構造、及びコンプライアント支持体と同じ材料層に形成されることが好ましい。上述のように、この材料層は、絶縁層によって支持され得る。したがって、絶縁層は、平面振動構造から離れて配置された容量性領域を物理的に支持することができる。
【0035】
本開示の1つまたは複数の例によれば、マウント、平面振動構造、コンプライアント支持体、及び複数の容量性領域は、同じシリコン材料層に形成される。様々な例において、振動型角速度センサは、MEMS(例えば、シリコン)デバイスである。
【0036】
本発明者らはまた、本明細書中に開示されるような振動型角速度センサを形成するための適切な方法も考案した。以下の方法は、MEMS(例えば、シリコン)デバイスを製造するのに特に適し得る。
【0037】
本開示の第2の態様によれば、平面振動構造及び複数のコンプライアント支持体を画定するように第1の基板を加工することであって、コンプライアント支持体は、第1の基板から形成されたマウントと平面振動構造の間に延在して平面振動構造を支持し、それによって、平面振動構造が電気的励起に応じてマウントに対して振動することを可能にする、加工することと、振動構造に電気的励起を加えかつ平面振動構造の振動による運動を感知するための、平面振動構造上のトランスデューサの第1のセットを形成することと、平面振動構造からその平面内で一定の距離を置いて固定された複数の容量性領域を形成することであって、容量性領域は、平面振動構造に、平面振動構造の振動の周波数の変化を誘導する静電力を加えるためのトランスデューサの第2のセットを形成する、形成することとを含む、振動型角速度センサを形成する方法が提供される。
【0038】
したがって、そのような方法は、2つの異なるタイプのトランスデューサの組み合わせを含む振動型角速度センサをもたらす。トランスデューサの第1のセットは、平面振動構造上に直接配置され、角速度の測定に使用することができる。トランスデューサの第2のセットは、平面振動構造から一定の距離に固定された複数の容量性領域によって形成され、平面振動構造に静電力を加えて振動モード周波数のバランスをとりかつ直交バイアスを最小限に抑えるために使用することができる。
【0039】
上述のように、複数の容量性領域は、第1の基板から独立して形成され得、例えば、それらは、マウント及び平面振動構造を備える基板がその後固定されるガラス台座層上に直接形成され得る。代替として、マウント及び平面振動構造を備える第1の基板は、ガラス台座層に固定され得、その後、容量性領域が、適切なボトムアップ、例えば、堆積技術を用いて形成され得る。したがって、容量性領域は、第1の基板と同じ材料または異なる材料から形成され得る。しかしながら、製造効率のために、複数の容量性領域も、同じ第1の基板を加工すること(例えば、エッチング、マイクロマシニングなど)によって形成されることが望ましい。これには、同時にまたは異なる時間に実装される追加の加工ステップが含まれ得る。かくして、本開示の1つまたは複数の例によれば、複数の容量性領域を形成することは、第1の基板を、同じ材料層に複数の容量性領域を画定するように加工することを備える。
【0040】
本発明者らは、同じ材料層に容量性領域を形成するとき、方法は、容量性領域が、平面振動構造から電気的に絶縁されるように、マウントに間接的に固定されることを可能にすべきであると認識している。第1の基板は、容量性領域を支持しかつ間に電気的絶縁を提供するように配置された第2の基板に固定され得る。第2の基板は、ガラス台座層などの絶縁層であり得る。
【0041】
少なくともいくつかの例では、第1の基板を複数の容量性領域を画定するように加工する前に、第1の基板は、第2の基板に固定され得る。これは、容量性領域を、第2の基板によって支持されたままで、平面振動構造及びコンプライアント支持体から分離し電気的に絶縁することができることを意味する。例えば、第1の基板は、第1の基板を加工する前に、第2の基板に陽極接合され得る。しかしながら、第1の基板(シリコンウェハなど)を第2の基板に結合する前に、第1の基板を(例えば、深掘り反応性イオンエッチングを用いて)加工することが望ましい場合がある。かくして、本開示の1つまたは複数の例によれば、複数の容量性領域を形成することは、第1の基板を、複数の半絶縁領域を画定するように加工すること、次に第1の基板を第2の基板に固定することであって、第2の基板は、複数の容量性領域を支持するように構成された支持セクションを備える、固定すること、及び、次に、半絶縁領域の各々を、一対の電気的に絶縁された容量性領域に分離することを備える。例えば、第1の基板は、8個の半絶縁領域を画定するように加工(例えば、エッチング)され得、次いで、半絶縁領域は、合計16個の電気的に絶縁された容量性領域を形成するように、対へと分離(例えば、レーザ切断)され得る。
【0042】
本明細書中に開示される様々な例では、第1の基板は、導電性材料(例えば、シリコンウェハ)からなる。様々な例において、第2の基板は、電気絶縁材料(例えば、ガラス層)からなる。
【0043】
本明細書中に開示される様々な例では、トランスデューサの第1のセットを形成することは、平面振動構造の表面上に導電性トラッキングを形成することを備える。したがって、トランスデューサの第1のセットは、誘導型として形成され得る。少なくともいくつかの例では、方法は、第1のまたは第2の基板を別の基板に固定し、磁気回路をこの別の基板に取り付けることをさらに備える。
【0044】
本明細書中に開示される様々な例では、代替的にまたは追加的に、トランスデューサの第1のセットを形成することは、平面振動構造の表面上に圧電電極のセットを形成することを備える。したがって、トランスデューサの第1のセットは、圧電型として形成され得る。
【0045】
本明細書中に開示される様々な例では、代替的にまたは追加的に、トランスデューサの第2のセットを形成することは、トランスデューサの第1のセットから独立した電気的接続を有する容量性領域上の電極のセットを形成することを備える。
【0046】
ここで、添付図面を参照して、本開示の特定の例示的な実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】a及びbは、従来技術に見られるような典型的な振動型角速度センサの動作温度範囲にわたる直交バイアスの変動の図である。
図2】従来技術による誘導タイプ振動型角速度センサで使用される平面リング振動構造の標準レイアウトの図である。
図3】誘導タイプ振動型角速度センサにおけるトランスデューサの例示的なレイアウトである。
図4】従来技術から知られているような平面リング振動構造を含む誘導タイプ振動型角速度センサの断面図である。
図5】従来技術によるパッケージレイアウト及び振動型角速度センサとパッケージベースの接続の図である。
図6】従来技術から知られているような振動型角速度センサと関連制御電子機器の電子接続のレイアウトである。
図7】従来技術による振動型角速度センサを形成するための製造プロセスのステップの概略図である。
図8】本開示による静電平衡プレートを含む誘導タイプ振動型角速度センサで用いられるような振動平面リング構造のレイアウトである。
図9】本開示による静電平衡プレートを含む誘導タイプ振動型角速度センサにおけるトランスデューサの例示的なレイアウトである。
図10】本開示による静電平衡プレートを含む振動平面リング構造を備える誘導タイプ振動型角速度センサの断面図である。
図11】本開示による振動平面リング構造の静電平衡プレートを支持するように構成された支持ガラス層のレイアウトの平面図である。
図12】a及びbは、本開示による、振動平面リング構造における静電平衡プレートを電気的に絶縁する処理方法の図である。
図13】圧電タイプ振動型角速度センサにおけるトランスデューサのレイアウトである。
図14】本開示による静電平衡プレートを含む振動平面リング構造を備える圧電タイプ振動型角速度センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1aは、平面シリコンリングベースのMEMSセンサSGH03を利用する、Silicon Sensing Systems Ltd.によって製造されたCRH02及びCRS39デバイスなどの典型的な従来技術の誘導MEMSジャイロスコープにおける、-40°Cから+85°Cの動作温度範囲にわたる直交バイアスΩQの変動の例示的なデータを示す。これらのデバイスのバイアス性能は、主に、MEMSセンサの特性によって決定され、SGH03は、直交バイアス誤差ΩQを最小化する目的で、上記のようにレーザバランシングを受ける。
【0049】
図1bは、25℃での初期オフセットが除去されたΩQの変動を示す。初期の25℃オフセットは、通常、±20°/s未満であり、US9677885に記載されているレーザバランシングプロセスの精度によって制限される。温度にともなうΩQの変動は、±10°/s未満であり、それは主に、残留応力とひずみの変化によって引き起こされる。この誤差は、経時の影響により時間の経過とともに変化し得、ある程度の熱ヒステリシスも示し得る。
【0050】
非常に低いバイアス再現性をターゲットにする場合、最大±72,000deg/hrである図1a及び1bに示すΩQレベルは、直交バイアス誤差ΩErr<±100deg/hrを提供するのに位相誤差精度<0.1度を必要とする。これは、デバイスのバイアス性能に対する主な限界を表す。したがって、バイアス性能の大幅な向上を達成するには、直交バイアスΩQを大幅に低減する必要がある。
【0051】
図2は、US8555717のデバイスで利用されるような、従来技術の平面リングMEMS構造201のシリコン層200の概略平面図を示す。シリコン層200は、例えばシリコン層200におけるエッチングによって形成された(以下でさらに説明するように)、マウント207に多数のコンプライアント支持体205によって可撓的に取り付けられた平面リング共振器構造203から構成される。コンプライアント支持体205の各々は、対称対のコンプライアント脚部206a、206bを備える。コンプライアント脚部206a、206bは、一端がリング共振器構造203の周辺に取り付けられ、他端がマウント207に取り付けられている。
【0052】
図3に示すように、MEMS構造201の表面上の導電性トラッキングループ210によって形成された8つのトランスデューサ208が概略的に示されている。コンプライアント支持体205の各々は、図3により詳細に示されるように、導電性トラッキングループ210を、リング共振器構造203の表面に伝えるように用いられる。各トラッキングループ210は、マウント207上に配置された第1の接触パッド209aから、コンプライアント支持体205の第1の脚部206aに沿って、リング共振器構造203の表面上の8つのセグメントの周りを通過し、次に、対の隣接する脚部206bを介してマウント207上の第2の接触パッド209bに戻る。
【0053】
完全に組み立てられたMEMS構造201を含む誘導ジャイロスコープ250の概略断面図が図4に示されている。シリコン層200のマウント207は、ガラス台座層209に結合され、ガラス台座層209は次にガラス支持体211に結合される。環状ディスク下部ポールピース215、ディスク状永久磁石217、及び環状上部ポールピース219から構成される磁気回路213もまた、ガラス支持体211に結合されている。磁気回路213は、平面リング共振器構造203の周りに、リングの平面に垂直に集束する磁場Bが提供されるように配置されている。
【0054】
図5に示すように、MEMS構造201は通常、密閉された金属缶パッケージのベース8上に取り付けられ、誘導トランスデューサのセットの各トランスデューサ208a-208hのコンタクトパッド209a、209bからワイヤボンド9を介してパッケージベース8の絶縁されたピン接続11へ電気接続がなされる。パッケージは、電気回路(図5に示さず)に接続する、ベース8のコンタクトピン11を介して、プリント回路基板(PCB)上に取り付けられる。
【0055】
図6で301-318とラベル付けされたピン接続11は、示すように、PCB上に配置され、ピン301-318間に電気接続が在る。一次駆動(PD)電流が、PD入力50のPCB上の回路を介してピン312に印加される。PD電流は、第1のトラッキングループの周りを、ピン311へと流れる。かくして、ピン311、312は、第1の一次駆動トランスデューサ208cに対応する。ピン311は、PCB上のトラッキング501を介してピン303に接続され、PD電流は、次に、第2のトラッキングループの周りを、ピン302へと流れる。ピン302、303は、第1の一次駆動トランスデューサ208cと正反対にある第2の一次駆動トランスデューサ208gに対応し、一次駆動トランスデューサの対称対を形成する。同様に、第1の一次感知またはピックオフ(PPO)トラッキングループは、ピン316から、リングの8つのセグメントの周りを、ピン317へと接続し、ピン317は、PCB上のトラッキング521を介してピン307に電気的に接続される。第2のトラッキングループは、ピン307から、第2のMEMSリングセグメントを介してピン308まで延び、ピン308は、次に、PCB上のPPO出力52に接続されている。ピン316、317及び307、308は、径方向に対向する一次ピックオフトランスデューサ208a、208eの対称対に対応する。
【0056】
2つの二次駆動(SD)ループセグメント(1つ目はピン310及び309に接続され、2つ目はピン301及び318に接続される)は、同様に、ピン309と310の間のPCB上のトラッキング511によって直列接続され、SD電流は、ピン310を介してSD入力51から印加されている。ピン309、310及び301、318は、径方向に対向する二次駆動トランスデューサ208d、208hの対称対に対応する。ピン313と315の間の二次感知またはピックオフ(SPO)ループは、PCB上のトラッキング531によって、ピン304と306の間の第2のループに接続される。ピン306は、PCB上のSPO出力53に接続されている。ピン313、315及び304、306は、径方向に対向する二次ピックオフトランスデューサ208b、208fの対称対に対応する。ピン305及び314は、MEMS構造201のシリコン層及び缶パッケージベースを、PCB接地に接続する。
【0057】
US8555717に記載されているように、交流信号は、PD入力50及びSD入力51を介して、リングの特定のセグメント上のトランスデューサ208c、208d、208g、208hに印加されて、リング共振器構造203の振動運動を制御するローレンツ力を加える。角速度Ωの回転がリングの平面に垂直な軸の周りに加えられると、コリオリの力が、エネルギーを二次モードの振動へと結合し、振動の振幅は、加えられた角速度に比例する。磁場中のリング共振器構造203の結果として生じた運動は、残りのリングセグメントのトランスデューサ208e、208f、208a、208bに電圧を誘導し、それらを用いて、リング運動を示す信号を提供し、これをPPO及びSPO出力52、53によって検出することができる。
【0058】
図2から6に示した平面リングMEMS構造201を形成するための典型的な製造プロセスを図7に示す。製造プロセスは、ステップ601において、典型的な厚さ約100μmを有するシリコン基板200を用いて始まる。ステップ602において、薄い絶縁酸化物層220がシリコンウェハ200の上面に形成され、特定の位置に穴が設けられて、下にある導電性シリコン層200のその後の接地を可能にする。次に、薄い金属層230が酸化物層及び穴の上に堆積され(ステップ603において)、電気的接続のための絶縁された導電性トラック(図7には示さず)を形成するようにパターン化される。次に、ステップ604において、フォトレジスト層が金属トラッキングの上に堆積され、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)プロセスによってその後エッチングされる領域を画定するようにパターン化される。このステップでは、シリコン層200は、最初に一時的に支持ウェハ(図7には示さず)に結合されてから、狭い(10μmから30μm)、高アスペクト比のトレンチ(通常、10:1)が、リング共振器構造203、コンプライアント支持体205、及びマウント207を画定するように、ウェハの厚さ全体にわたってエッチングされる。その後、シリコン層200が支持ウェハから除去されると、コンプライアント支持体205の脚部206a、206bの間のシリコンセクション及びリング共振器構造203内のセクションは支持されておらず、したがって除去される。次に、フォトレジスト層が除去され、シリコン層200は、リング共振器203及びコンプライアント支持体205の位置の下の空洞、ならびに磁気回路213の構成要素を配置するための貫通穴を含むように処理されているガラス台座層209に陽極接合される(ステップ605において)。次に、ディスク状金属下部ポール215がその上面に取り付けられた下部ガラス支持体211が、ポールピース215がシリコンリング構造203の下のガラス台座層209の穴で中央に整列するように、事前に陽極接合されたシリコンウェハ200及びガラス台座層209に接着剤結合される(ステップ606において)。ステップ607において、ディスク状永久磁石217及び上部ポールピース219を備える磁気回路213の残りの構成要素が続いて接着剤結合されデバイスアセンブリを完成させて、図4に組み立てが見られるような誘導ジャイロスコープ250を完成させる。
【0059】
出願人は、図2から4に示されるMEMS構造201が、例えばリングの外周の周りに配置された複数の別々のコンデンサプレートの追加によって、モード周波数が静電的に平衡化されることを可能にするように有利に加工され得ることを認識している。図8は、上記のタイプの誘導ジャイロスコープにおいてMEMS振動構造703の静電平衡を可能にする、本明細書中で「コンデンサプレート」702と呼ばれる複数の別々の容量性領域702を含む、本開示にしたがって加工された例示的なMEMS構造701の概略平面図を示す。
【0060】
図8では、シリコン層700は、多数のコンプライアント支持体705によってマウント707に可撓的に取り付けられたリング共振器構造703を備える。図2と比較すると、円周上のリング共振器構造703の周りに対称的に配置された16個の等角度間隔のコンデンサプレート702がさらに存在することを把握することができる。この例では、コンデンサプレート702は、平面振動構造703の半径方向外側に、コンプライアント支持体705の半径方向部分とリング共振器構造703の外周の間に配置されている。コンデンサプレート702は、平面振動構造703と同じ平面に固定されかつ平面振動構造703から距離d1に設定されたトランスデューサの第2のセットを形成する。リング共振器構造703が平面内で振動するとき、任意の不均衡運動は、コンデンサプレート702の1つまたは複数に電圧を印加してギャップd1にわたって静電力を生成することによって、微同調させることができる。
【0061】
図9は、本開示の追加的な静電平衡プレートと共に使用するのに適した誘導トランスデューサ708の例示的なレイアウトを示す。誘導トランスデューサ708は、リング共振器構造703のセグメント上に配置され、リング共振器構造703は、図8に示すように、8つのコンプライアント支持体705によって支持されている。コンプライアント支持体705は、リング共振器構造703と同じシリコン層に形成されたマウント707に接続され、各コンプライアント支持体705は、コンプライアント脚部706a、706bの対称対を備える。各誘導トランスデューサ708は、導電性トラッキングループ710を備える。各導電性トラッキングループ710は、マウント707上に配置された第1の接触パッド709aから、コンプライアント支持体705の第1の脚部706aに沿って、リング共振器構造703の表面上の8つのセグメントの周りを通過し、次いで、対の隣接する脚部706bを介してマウント707上の第2の接触パッド709bに戻る。静電平衡プレート702は、リング共振器構造703の半径方向外側に、コンプライアント支持体705の半径方向部分とリング共振器構造703の外周の間に配置される。静電平衡プレート702は、リング共振器構造703から第1の距離d1に固定され、かつ隣接するコンプライアント支持体脚部706a、706bから第2の距離d2に固定されている。
【0062】
図10に見られるように、コンデンサプレート702は、コンデンサプレート702の下に延在する追加の支持セクション712を含むように加工されたガラス台座層709に堅固に結合されている。図8に示されるコンプライアント支持体705は各々、コンプライアント脚部706a、706bの対称対を含む。コンプライアント脚部706a、706bは、一端がリング共振器構造703の周辺に取り付けられ、他端がマウント707に取り付けられている。この例では、コンデンサプレート702は、8つの対702a-702hに配置され、各対702a-702hは、支持体705のそれぞれのコンプライアント脚部706a、706bの間に固定されている。上記のタイプの誘導ジャイロスコープにおいてリング共振器構造703の静電平衡を達成するために、以下にさらに説明するように、導電性パッドがコンデンサプレート702の表面に適用されて、DC電圧が選択的に印加されることを可能とする。リング共振器構造703は、図3に関して説明されたのと同等の方法で、かつ、図10に示されるように、MEMS構造701の表面に導電性トラッキングを適用することによって、電気的に励起され、その運動が感知される。そのため、図8に概略的に示されるように、8つの誘導トランスデューサ708がリング共振器構造703上に配置されている。
【0063】
図10は、コンデンサプレート702を含む、本開示にしたがって完全に組み立てられたMEMS構造701を備える誘導ジャイロスコープ750の断面図を示す。導電性パッド704aは、各コンデンサプレート702の表面上に形成され、導電性トランスデューサ702への電圧の印加を可能にする直接電気接続として機能する電気リード(ワイヤボンドなど)704bを有する。図3に示される従来技術の誘導ジャイロスコープ250と同様に、MEMS構造701のシリコン層700のマウント707は、ガラス台座層709に結合され、ガラス台座層709は次にガラス支持体711に結合される。しかしながら、図10では、ガラス台座層709は、コンデンサプレート702の下に延在する追加の支持セクション712を含むように加工されている。環状ディスク下部ポールピース715、ディスク状永久磁石717、及び環状上部ポールピース719から構成される磁気回路713も、先行技術のジャイロスコープ250の磁気回路と同じように、ガラス支持体711に結合されている。磁気回路713は、リング共振器構造703の周りに、リングの平面に垂直に集束する磁場Bが提供されるように配置されている。
【0064】
ガラス層709の平面図が図11に示され、これは、図10でコンデンサプレート702が取り付けられている16個の追加の支持セクション712を含む隆起した取付け領域を示す。リング共振器構造703及びコンプライアント支持体705の下の領域は、前述のように、空洞化されたままであり、リング共振器構造703が自由に動くことを可能にする。
【0065】
MEMS構造701を使用して、従来技術のMEMS構造201と同様にリング共振器構造703の運動を示す信号を検出することができる一方で、コンデンサプレート702を追加することにより、静電平衡を適用してモード周波数をより良く一致させることが可能となる。
【0066】
モード周波数ωは、以下の式にしたがって、負ばねKElecとして機能しかつリング共振器構造703の有効剛性したがって周波数ωを局所的に低下させる、コンデンサプレート702上の電圧を変動させることによって調整され得る。
【0067】
【数1】
【0068】
mは、リング共振器構造703のモード質量であり、Kは、リング共振器構造703及びコンプライアント支持体705の組み合わされたばね定数である。電気ばね定数KElecは、次の式で与えられる。
【0069】
【数2】
【0070】
ε0は、自由空間の誘電率、Aは、コンデンサプレート702の面積、Vは、リング共振器構造703とコンデンサプレート702の間の差動電圧、dは、コンデンサギャップ(すなわち、コンデンサプレート702とリング共振器構造703の最小距離)である。
【0071】
リング共振器構造703及びコンデンサプレート構造702は、DRIEプロセスを用いてバルクシリコンから製造することができ、高アスペクト比でトレンチを作成可能である。コンデンサプレート702とリング共振器構造703の表面の間のコンデンサギャップd1は、好都合には、大容量したがって広い同調範囲を提供するために、10μmから30μm程度である。
【0072】
図8に見ることができるように、コンデンサプレート702とリング共振器構造703の間に一定のギャップd1があり、コンデンサプレート702と隣接するコンプライアント支持体脚部706A、706bの間に一定のギャップd2があり、それらは、図8に、等しいとして、すなわちd1=d2として示されている。したがって、個々のコンデンサプレート702ごとの静電同調は、リング共振器構造703及び隣接するコンプライアント支持体705の両方の電気ばね剛性を調整する。リング剛性調整のための有効軸は、コンデンサプレート702の中点に在るが、コンプライアント支持体705の剛性の変化は、コンプライアント支持体705のリング共振器構造703への取付け点に作用する。したがって、結果として得られる剛性同調軸は、コンデンサプレート702の中心からコンプライアント支持体705に向かってある程度シフトされる。したがって、コンデンサプレート702の静電同調軸は、もはや等角度間隔ではなくなる。シフトの大きさを把握していると仮定すると、必要とされる同調電圧を決定するときにこれを考慮に入れることができる。しかしながら、コンプライアント支持体705の剛性への影響は、コンデンサプレート702とコンプライアント支持体705のギャップd2を、コンデンサプレート702とリング共振器構造703のギャップd1と比べて大きくすることによって、大幅に低減することができる。この例を図9に見ることができ、コンデンサプレート702とコンプライアント支持体705の間のギャップd2は、コンデンサプレート702とリング共振器構造703の間のギャップd1よりも大きいことが把握できる。ギャップd2がリングギャップd1と比べて2倍大きくされた場合、効果は、剛性チューニングのギャップ依存性により、8分の1に減少する。
【0073】
コンデンサプレート702によって提供される静電平衡は、モード周波数を一致させるために、従来のレーザバランシングプロセスに加えてまたはその代わりに使用され得る。したがって、必要とされる周波数同調範囲は、必要とされる電気ばね剛性調整範囲を達成するために小さなコンデンサギャップ及び高い最大差動電圧範囲の要件を推進する±10Hzである。しかしながら、標準のレーザバランシングプロセスを用いて微同調機能を提供する場合、これらの要件はそれほど厳しくならない。図8に示す実施形態では、必要とされる同調範囲は、±0.5Hz未満に制限され、電圧の低下及びより大きなギャップを可能とする。図9に示すようにより大きなギャップを用いることは、リング構造の運動のより大きな振幅を可能にし、ノイズ性能の向上をもたらすため、特に有利である。したがって、コンデンサプレート702の追加により、静電平衡機能を、既存の誘導的作動型平面MEMSリング共振器デバイスに適用することが可能になる。このことは、バイアス性能特性の観点から明らかな利点を有する。
【0074】
しかしながら、実際には、MEMS構造701の製造及びパッケージングの観点から、重大な課題が存在する。理想的には、製造プロセスは、既存の製造プロセス及び装置と実質的に互換性を有するべきである。
【0075】
MEMSセンサ、例えばMEMSセンサ201の製造のための典型的な従来技術のプロセス(図7に関して説明されるものなど)は、DRIEステップ604を含み、このステップでは、コンプライアント支持体205の脚部206a、206bの間のシリコンセクション、及びリング共振器構造203内のセクションは、支持されておらず、支持ウェハが除去されると、ウェハから切り離される。かくして、変更なしで典型的な製造プロセスの一部としてコンデンサプレートを追加することは、従来技術のMEMS構造の設計を変更して初めて可能である。なぜなら、コンデンサプレートは同様に支持されておらず、支持ハンドルが除去されると、ウェハから切り離されるからである。したがって、MEMS構造201などの既存のMEMS構造のリング共振器構造の周辺周りの必要な位置にコンデンサプレートを形成することが可能となるような設計変更及び追加プロセスステップが必要とされる。
【0076】
これを達成するために、DRIEトレンチエッチングパターンは、コンプライアント支持体705の各々でシリコン層700に取り付けられたコンデンサプレート702の対を提供するように加工され得る。具体的には、トレンチパターンが、コンプライアント脚部706a、706bの間に、各コンプライアント支持体705における一対のコンデンサプレート702を提供するようにエッチングされる。
【0077】
図12aは、リング703に属するシリコンアークが、剛性支持ビーム構造801によって支持された半絶縁領域702’を備えて形成される例示的な実施形態を示す。半絶縁領域702’は、エッチングトレンチによって部分的に分離され、半絶縁領域702’の2つの部分の隣接する側面の間に、短い非エッチングシリコンセクション803を残す。半絶縁領域702’は、シリコン層700とガラス層709を一体に結合する陽極接合プロセス中に、図11に示される支持ガラス領域712に堅固に取り付けられる。
【0078】
アークの半絶縁領域702’の対の間の非エッチングシリコンセクション803は、好都合には、レーザ切断プロセスを用いて除去することができ、支持ビーム構造801の間のシリコンを除去して、図12bに示すようにレーザ切断領域805を生成する。次に、各半絶縁領域702’は、電気的に絶縁された容量性領域702、すなわちコンデンサプレート702の対に分割される。フェムト秒レーザが、熱影響部を最小限に抑えて高品質の側壁プロファイルを生成することが知られているため、この目的に適している。しかしながら、要件は、結果として得られたコンデンサプレート702を単に電気的に絶縁することであるので、切断線の精密な計測がジャイロスコープ及び代替物の動作の観点から重要な部分にないとき、より低いコストのレーザ切断ソリューションも使用され得る。レーザ切断プロセスは、後続の製造プロセスフローを妨害せずに、追加のステップとして適用することができる。
【0079】
16個の静電平衡コンデンサプレート702が形成されると、それらは、DC電圧(または接地電位)に電気的に接続される。したがって、静電平衡を実装するために、コンデンサプレート702と、接地電位に固定されたリング共振器構造703の間に差動電圧が印加され得る。cos2θモードのバランスをとるために、コンデンサプレート702は、4つを1セットとして、互いに対して90°の角度間隔で使用される。4つの別々のDC電圧は、MEMSデバイスに印加される必要があり、各電圧は、各セット内の4つのプレート全てに印加されなければならず、MEMSへの16の別々の接続が必要となる。DC電圧は、図4及び5に示されるものと同様のパッケージ内の追加のピンによって、ピンと、コンデンサプレート702の表面上の金属結合パッド704aの間に形成されたワイヤボンド704b(図10に示すように)を用いて印加することができる。このアプローチは、必要とされるピン接続の数を増やし、パッケージ全体のサイズを大きくする可能性があり得るが、コンデンサプレート702の追加により、静電平衡機能を既存の誘導作動型平面MEMSリング共振器デバイスに適用して、直交バイアス誤差の影響を減らすことを可能とする。
【0080】
図10に示す誘導ジャイロスコープ750などの、誘導トランスデューサを備えるジャイロスコープへの適用に加えて、本発明はまた、代替のトランスデューサ機構を採用しかつ2つの動作モードの相対周波数を周波数調整または一致させる必要がある、他のMEMSジャイロスコープタイプにも適用され得る。例えば、静電平衡用のコンデンサプレートは、圧電(PZT)トランスデューサを採用しているMEMSジャイロスコープ、例えば、PZTトランスデューサがリング共振器構造の上面に形成されているUS8381590に記載されている種類のMEMSジャイロスコープに適用され得る。
【0081】
PZTジャイロスコープでは、共振器の表面上のPZTトランスデューサの構築は、金属電極層が堆積されているシリコンの上面に絶縁酸化物層を形成することを含む。次に、薄膜PZT層が金属層の上部に形成され、第2の金属上部電極層が、PZT層の上に形成される。次に、PZT層状構造は、トランスデューサがリング及び脚部構造の特定の領域にのみ提供されるようにパターン化される。US8381590の図14は、例示的なPZT MEMSジャイロ構造、及び、多数のコンプライアント支持体を介して剛性中央ハブに内部取り付けされたリング構造に対するトランスデューサのレイアウトを示す。リングが、剛性外部フレームに接続する外部脚部を介して取り付けられている構成を含む代替の構成も可能であることが理解されよう。
【0082】
図13は、本開示の追加の静電平衡プレートと共に用いるのに適したPZTトランスデューサ908の例示的なレイアウトを示す。PZTトランスデューサ908は、リング共振器構造903のセグメント上に配置され、リング共振器構造903は、図8に見られるのと同じように、8つのコンプライアント支持体905によって支持されている。コンプライアント支持体905は、リング共振器構造903と同じシリコン層においてマウント907に接続されており、各コンプライアント支持体905は、前述のように、一対のコンプライアント脚部906a、906bを備える。PZTトランスデューサ908は、共振器構造903の表面上に取り付けられた一対の圧電電極919a、919bを備え、それらは、それぞれの金属トラッキング910a、910bによって、マウント907上の接触パッド913a、913bに接続されている。リング共振器構造903の周りのPZTトランスデューサ908の全体的なレイアウトは、誘導ジャイロスコープの誘導トランスデューサ708に対して図8及び9に示されているものと同様である。コンデンサプレート702と同様の静電平衡プレート902が、MEMS構造に追加され、誘導ジャイロスコープ750に関して前述したように、モード周波数の調整を可能とする。静電平衡プレート902は、リング共振器構造903から第1の距離d1にかつ隣接するコンプライアント支持体脚部706a、706bから第2の距離d2に固定されている。
【0083】
図14は、静電平衡のためにリング共振器903及びコンデンサプレート902を含むMEMS構造901を備える圧電ジャイロスコープ950の断面図を示す。この断面図では、導電性パッド904aが各コンデンサプレート902の表面上に形成され、電圧を導電性トランスデューサ904aに印加可能とする直接電気接続として機能する電気リード(ワイヤボンドなど)904bを有することが分かる。
【0084】
それぞれ図4及び10に示されるMEMS構造201及び701と同様に、MEMS構造901のシリコン層900のマウント907は、ガラス台座層909に結合され、ガラス台座層909は、次に、ガラス支持体911に結合される。ガラス台座層909は、コンデンサプレート902をリング共振器903から距離d1に固定する追加の支持セクション912を含むように加工されている。このようにして、コンデンサプレート902は既存の圧電MEMSジャイロスコープに追加されて、静電平衡機能を可能にしかつ直交バイアス誤差を低減し得る。
【0085】
かくして、本開示によれば、静電平衡機能が既存のMEMSジャイロスコープに適用され得、その結果、電荷トラッピング効果に本質的に影響されない、デバイスのバイアス性能特性の向上がもたらされることが分かるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14