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特開2022-66174システアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066174
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】システアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20220421BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A61K8/46
A61Q5/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021169022
(22)【出願日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134004
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】519050598
【氏名又は名称】サムイン ケミカル カンパニー,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】515162419
【氏名又は名称】ジュ,ソン チョル
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ソン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン,ナム モク
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC122
4C083AC532
4C083AC692
4C083AC712
4C083AC771
4C083AC772
4C083AD152
4C083AD432
4C083CC34
4C083EE25
(57)【要約】
【課題】本発明は、システアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤に関する。
【解決手段】本発明によるシステアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤は、システアミンチオグリコレート(Cysteamine thioglycolate)を有効成分として含む。前記構成によれば、本発明によるシステアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤は、毛髪が損傷することなく様々なデザインのパーマが可能であり、中和副産物が生成されないのでより高温で施術することができ、従来の酸性パーマ剤よりウェーブ形成力及びウェーブ保持力に優れる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システアミンチオグリコレート(Cysteamine thioglycolate)を有効成分として含むことを特徴とする、システアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤。
【請求項2】
前記システアミンチオグリコレート(Cysteamine thioglycolate)は、組成物の全含有量のうち3~15重量%含まれ、pHは4.0~6.0の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のシステアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤に関しより詳細には、毛髪が損傷することなく様々なデザインのパーマが可能であり、中和副産物が生成されないのでより高温で施術することができ、従来の酸性パーマ剤よりウェーブ形成力及びウェーブ保持力に優れる、システアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
人類において、健康と美を整えることは、自分自身に満足をもたらし、他人に自らを誇示する手段ともなる。生活に余裕が生じると、人は健康と美に対する多くの努力と時間と投資を惜しまなくなり、文化レベルが向上するにつれて、顔の化粧だけでなく、頭髪や体全体の美容も重要であると考えるようになる。
【0003】
しかしながら、このような美容に対する高い関心は、パーマ、ヘアドライヤー、ヘアカラーリング、ヘアマニキュアなど過大な毛髪美容施術を招いており、それにより毛髪や皮膚の物理的、化学的損傷などの逆効果も生じている。
【0004】
また、シャンプーで洗髪すると、頭皮と毛髪に自然に存在すべきである栄養成分、皮脂成分、保湿成分などが全て除去されてしまう傾向があり、さらに頭皮や毛髪が乾燥して肌が荒れたり毛が痛み、さらにはかゆみが誘発されるという副作用があるので、これらを補完する必要がある。
【0005】
一般に、毛髪は3つの層から構成されている。毛髪の外側から毛表皮、毛皮質、毛髄質となっており、毛髪の主な部分である毛皮質は、主にケラチンという弾力性に富む繊維状の硬タンパク質からなる。毛髪のケラチンは、各種アミノ酸が結合して構成されるポリペプチドで連結されており、ポリペプチドとポリペプチド間はシスチン結合、塩結合、水素結合などの側鎖を有する高分子物質となっており、他のタンパク質に比べて硫黄の含有量が多い。
【0006】
毛髪は、このような構造のケラチンから構成されているので、弾力性があり、曲げても元に戻る性質を有する。このような毛髪の弾力性を側鎖の切断により一時的に喪失させ、その後新たな位置に再結合させることにより所望のウェーブを形成するのが、パーマネントウェーブ及びストレートパーマ剤の原理である。
【0007】
毛髪にウェーブやストレートなどのパーマ効果を与えるパーマネントウェーブ及びストレートパーマ剤は、一般に還元性第1剤と酸化性第2剤から構成されるが、具体的にはチオグリコール酸、チオグリコール酸の塩類、チオグリコール酸エステル、システイン、システインの塩類、システインのアセチル誘導体などの還元性物質を含有する還元性第1剤で毛髪内のシスチン結合を還元し、それに過酸化水素水または臭素酸ナトリウムの酸化性物質を含有する酸化性第2剤で酸化再結合させてウェーブやストレートなどを形成する。また、その効果及び使用性を向上させるために、アルカリ剤、浸透剤、安定剤、湿潤剤、養毛剤、着色剤、乳化剤、香料などを用いる。
【0008】
従来のパーマ剤の還元剤は、チオグリコール酸、システイン塩酸塩、システアミン塩酸塩が主流となっており、コールドパーマではいかなるものを用いてもよいが、ホットパーマではチオグリコール酸を主に用いる。
【0009】
これらのうちシステイン及びその塩類は還元力が弱いのでホットパーマには適さず、システアミン塩酸塩の還元力はチオグリコール酸より強いが、パーマ施術時に塩酸の中和により生成される塩化アンモニウムやモノエタノールアミン塩酸塩が高温により分解されて有毒な悪臭が発生するため使用が困難であるので、ホットパーマの還元剤としては主にチオグリコール酸が用いられる。
【0010】
一方、パーマの原理は、毛髪タンパク質の-S-S-結合をパーマ剤の還元剤で切断して所望のウェーブを作り、その後酸化剤で再結合させてその形状を維持するというものである。健康な毛髪は-S-S-結合が多いのでウェーブ保持が良好であるが、損傷毛髪は-S-S-結合が損失しているのでウェーブ保持力が著しく低い。
【0011】
前記問題を補完するために、高温を用いてタンパク質の熱変性によりウェーブ保持力を向上させるが、一般のパーマ剤のpHは8.0~10.0の強アルカリ性であり、損傷毛髪に用いて熱を加えると毛髪が溶けてしまうため熱を加えることができないのでpHを酸性にした酸性パーマ剤が用いられる。
【0012】
しかしながら、従来の酸性パーマ剤は、中和副産物として塩化アンモニウム、エタノールアミン塩酸塩が生成されるが、それら副産物に高温を加えると毛髪が急激に損傷するので加温に制限があり、また十分なウェーブ保持力が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国登録特許第10-2153476号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10-1744796号公報
【特許文献3】韓国登録特許第10-1952430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、毛髪が損傷することなく様々なデザインのパーマが可能であり、中和副産物が生成されないのでより高温で施術することができ、従来の酸性パーマ剤よりウェーブ形成力及びウェーブ保持力に優れる、システアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤を提供することを課題とする。
【0015】
本発明が解決しようとする様々な課題は、前記課題に限定されるものではなく、言及していない他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によるシステアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤は、システアミンチオグリコレート(Cysteamine thioglycolate)を有効成分として含む。損傷毛にはケラチンたん白質中の-S-S-結合がほとんど残っておらず、従ってウェーブ形成の為には、還元剤の使用と共にたん白質の熱変性を利用した施術が必要となるがpHが8.0~10.0の中和副産物を含むパーマ剤を損傷毛に処方すれば、加熱工程により毛髪が溶解する可能性がある。毛髪は等電点(pH 4.5~5.5)で最も安定しており、熱を含む外部からの物理的、化学的作用、力、刺激に対して強くなる。その毛髪の等電点に着目し、還元剤として有機酸のチオグリコール酸と有機塩基のシステアミンを「塩」結合させたシステアミンチオグリコレート(pH 4.5~6.0)を用いる事により一定の還元力を保ちながら、尚且つ加熱ができ損傷毛髪に使用可能な今までにないパーマ剤になる。
【0017】
前記システアミンチオグリコレート(Cysteamine thioglycolate)は、組成物の全含有量のうち3~15重量%含まれpHは4.0~6.0の範囲であってもよい。
【0018】
その他、実施例の具体的な事項については後述する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるシステアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤は、毛髪が損傷することなく様々なデザインのパーマが可能であり、中和副産物が生成されないのでより高温で施術することができ、従来の酸性パーマ剤よりウェーブ形成力及びウェーブ保持力に優れる。
【0020】
本発明の技術的思想の実施例により、具体的に言及していない様々な効果を発揮することが十分に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の利点及び特徴、並びにそれらを達成する方法は、詳細に後述する実施例を参照することにより明確になるであろう。しかしながら、本発明は、後述する実施例に限定されるものではなく、他の形態で実施することもできる。むしろ、後述する実施例は、開示内容が徹底して完全なものになるように、また当業者が本発明の思想を十分に理解できるようにするために提供するものである。
【0022】
本発明に用いる用語は、単に特定の実施例について説明するために用いるものであり、本発明を限定するものではない。単数の表現には、特に断らない限り複数の表現が含まれる。
【0023】
特に断らない限り、技術的または科学的な用語をはじめとして本発明に用いる全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者により一般に理解されるものと同じ意味で用いる。一般に用いられる辞書に定義されている用語は、関連技術における文脈上の意味を捉えて解釈されるべきであり、特に断らない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されるものではない。
【0024】
以下、好ましい実施例を挙げて、本発明によるシステアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤について詳細に説明する。
【0025】
本発明によるシステアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤は、システアミンチオグリコレート(Cysteamine thioglycolate)を有効成分として含む。
【0026】
また、本発明によるシステアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤における前記システアミンチオグリコレート(Cysteamine thioglycolate)は、組成物の全含有量のうち1~30重量%、好ましくは3~15重量%含まれる。
【0027】
さらに、本発明によるシステアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤における前記システアミンチオグリコレート(Cysteamine thioglycolate)を有効成分として含む組成物のpHは、4.0~6.0の範囲である。
【0028】
さらに、本発明によるシステアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤における前記システアミンチオグリコレート(Cysteamine thioglycolate)(CH-CH-NH+-OOC-CH-HS)は、システアミン(Cysteamine)(HS-CH-CH-NH)とチオグリコール酸(Thioglycolic acid)(HS-CH-COOH)を反応させて作製する。
【0029】
前記システアミンチオグリコレート(Cysteamine thioglycolate)は、若干匂いがする無色の透明な液体であり、10%水溶液のpHが4.5~5.5である。
【0030】
一般に、従来の酸性パーマ剤は、次の反応式1及び反応式2のように、中和副産物として塩化アンモニウム、エタノールアミン塩酸塩が生成されるが、それら副産物に高温を加えると毛髪が急激に損傷するので加温に制限があり、また十分なウェーブ保持力
が得られないという問題がある。
【0031】
【化1】
【0032】
【化2】
【0033】
しかしながら、本発明による損傷毛髪専用酸性パーマ剤は、システアミンチオグリコレートを含んで製造されるため、毛髪が損傷することなく様々なデザインのパーマが可能であり、中和副産物が生成されないのでより高温で施術することができ、従来の酸性パーマ剤よりウェーブ形成力及びウェーブ保持力に優れる。
【0034】
以下、本発明によるシステアミンチオグリコレートを用いた損傷毛髪専用酸性パーマ剤の好ましい実施例及び比較例についてより詳細に説明する。
【実施例0035】
システアミンチオグリコレート5重量%、EDTA(EDTA-2Na)0.1重量%、ベタイン(Betaine)0.6重量%、コラーゲン(Collagen PPT)0.2重量%、プロピレングリコール(Propylene glycol)1.0重量%、シリコーン(silicone(DC-949))0.3重量%、カチオン性界面活性剤(CTAC-29)1.0重量%、中性乳化剤5重量%、香料0.2重量%、及び、100重量%までの残量の精製水を混合してパーマ剤を製造した。
【実施例0036】
システアミンチオグリコレート10重量%、EDTA(EDTA-2Na)0.1重量%、ベタイン(Betaine)0.6重量%、コラーゲン(Collagen PPT)0.2重量%、プロピレングリコール(Propylene glycol)1.0重量%、シリコーン(silicone(DC-949))0.3重量%、カチオン性界面活性剤(CTAC-29)1.0重量%、中性乳化剤5重量%、香料0.2重量%、及び、100重量%までの残量の精製水を混合してパーマ剤を製造した。
【実施例0037】
システアミンチオグリコレート15重量%、EDTA(EDTA-2Na)0.1重量%、ベタイン(Betaine)0.6重量%、コラーゲン(Collagen PPT)0.2重量%、プロピレングリコール(Propylene glycol)1.0重量%、シリコーン(silicone(DC-949))0.3重量%、カチオン性界面活性剤(CTAC-29)1.0重量%、中性乳化剤5重量%、香料0.2重量%、及び、100重量%までの残量の精製水を混合してパーマ剤を製造した。
【実施例0038】
システアミンチオグリコレート20重量%、EDTA(EDTA-2Na)0.1重量%、ベタイン(Betaine)0.6重量%、コラーゲン(Collagen PPT)0.2重量%、プロピレングリコール(Propylene glycol)1.0重量%、シリコーン(silicone(DC-949))0.3重量%、カチオン性界面活性剤(CTAC-29)1.0重量%、中性乳化剤5重量%、香料0.2重量%、及び、100重量%までの残量の精製水を混合してパーマ剤を製造した。
【0039】
1.pHの測定
実施例1~4により製造したパーマ剤のpHを測定した。
【0040】
測定の結果、実施例1によるパーマ剤のpHは4.45であり、実施例2によるパーマ剤のpHは4.57であり、実施例3によるパーマ剤のpHは4.68であり、実施例4によるパーマ剤のpHは4.75であった。
【0041】
2.損傷毛髪のウェーブテスト
実施例1~4により製造したパーマ剤を用いて損傷毛髪のウェーブテストを行った。
【0042】
前記テストは、健康な毛髪を2回連続脱色して損傷毛髪にし、その後前記損傷毛髪に施術してウェーブテストを行った。
【0043】
前記施術方法は、試料の損傷毛髪をシャンプーして80%乾燥させ、幅1.5cmのロットにワインディングし、その後120℃の温度で5分間加熱して10分間自然放置し、さらに酸化剤を塗布して10分間放置し、次いでロットを分離してシャンプーを行うものとした。
【0044】
その結果を次の表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すように、従来の酸性パーマ剤は、中和副産物により80℃以上に加温すると毛髪の損傷が酷く、高温施術が難しく、ウェーブ形成力及びウェーブ保持力が低いという問題があった。
【0047】
しかしながら、実施例により製造したパーマ剤は、120℃の高温で施術しても毛髪損傷が少なく、良好なウェーブ形成力及びウェーブ保持力が得られた。
【0048】
実施例4のようにシステアミンチオグリコレートを含むパーマ剤の濃度が高いと、pHと過剰の還元剤による損傷が発生した。
【0049】
また、表1に示すように、実施例2、実施例3によるパーマ剤の施術結果が最も良好であることが確認された。
【0050】
以上、本発明の好ましい一実施例について説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。よって、前記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。