(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066185
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両及び電気車両に応用するためのトランスミッションフルード組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20220421BHJP
C10M 137/00 20060101ALI20220421BHJP
C10M 137/04 20060101ALI20220421BHJP
C10M 135/22 20060101ALI20220421BHJP
C10M 129/54 20060101ALI20220421BHJP
C10M 159/22 20060101ALI20220421BHJP
C10M 133/16 20060101ALI20220421BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20220421BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20220421BHJP
C10M 133/12 20060101ALI20220421BHJP
C10M 129/10 20060101ALI20220421BHJP
C10M 135/36 20060101ALI20220421BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20220421BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220421BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20220421BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20220421BHJP
【FI】
C10M169/04 ZHV
C10M137/00
C10M137/04
C10M135/22
C10M129/54
C10M159/22
C10M133/16
C10M101/02
C10M107/02
C10M133/12
C10M129/10
C10M135/36
C10N10:04
C10N30:06
C10N30:00 Z
C10N40:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021169698
(22)【出願日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】17/072,398
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500010875
【氏名又は名称】インフィニューム インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ジェイ カニンガム
(72)【発明者】
【氏名】マリア シー キアペリ
(72)【発明者】
【氏名】ジョー アール ノールズ ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ケリー エル コージェン
(72)【発明者】
【氏名】キース アール ゴーダ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ス キム
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド エフ ワッツ
(72)【発明者】
【氏名】ローラ エイ カフサル
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BA08A
4H104BB05C
4H104BB08A
4H104BB24C
4H104BB32A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BE07C
4H104BF03C
4H104BG12C
4H104BG19C
4H104BH02C
4H104BH03C
4H104CA04A
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104DB06C
4H104EA02A
4H104EA03C
4H104EA13A
4H104EB10
4H104FA02
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA03
(57)【要約】
【課題】ハイブリッド車両及び完全電気車両に応用するためのもの等の潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】トランスミッションフルード組成物は、多量の潤滑油ベースストック及び少量の添加剤パッケージを含み、少量の添加剤パッケージは、(i)2つ又はそれよりも多くのホスフィット及び/又はホスフェートを含む混合物、(ii)1つ又は複数のチオエステル化合物、(iii)サリチル酸カルシウムを含む界面活性剤、及び(iv)メタロセン触媒PAOアームで末端キャップされたポリ(アルキレンアミン)ベース無灰分散剤を含む。このようなトランスミッションフルードは、少なくとも部分的に電動のトランスミッションの摩耗を制御/低減するために、及び/又は少なくとも部分的に電動のドライブトレインの電気/電子部品を冷却/絶縁するために使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多量の潤滑油ベースストック;並びに
(i)混合物であって、構造(I):
【化1】
(式中、基R
1、R
2、及びR
3は、独立して、1~18個の炭素原子を有するアルキル基、又はアルキル鎖がチオエーテル連結により中断された1~18個の炭素原子を有するアルキル基であり、但し、前記混合物(i)において、基R
1、R
2、及びR
3の少なくとも一部は、アルキル鎖がチオエーテル連結により中断された1~18個の炭素原子を有するアルキル基である)の2つ又はそれよりも多くの化合物を含む混合物、
(ii)構造(II):
【化2】
(式中、基R
4及びR
7は、独立して、1~12個の炭素原子を有するアルキル基であり、基R
5及びR
6は、独立して、2~12個の炭素原子を有するアルキル連結である)の1つ又は複数の化合物、
(iii)サリチル酸カルシウムを含む界面活性剤、及び
(iv)構造(III):
【化3】
(式中、R
8及びR
9は、各々独立して、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-オクタデセン、又はそれらの混合物を含む(特に、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、又はそれらの混合物から本質的になる)α-オレフィン供給材料のメタロセン触媒重合により製作される炭化水素基であり、各R
10は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
10との反応により形成される部分(特に、水素又はアシル部分)であり、xは、1~10であり(特に、3~10であり)、構造(III)の全ての分子で同じであるか、又は構造(III)の分子の混合物中の構造(III)の全ての分子の平均である)の1つ又は複数の化合物を含む塩基性窒素含有無灰分散剤
を含む少量の添加剤パッケージ
を含むトランスミッションフルード組成物。
【請求項2】
成分(i)及び成分(ii)の化合物は各々、前記組成物の総質量に基づき0.05~0.5質量%の量で、及び/又は2:1~1:2の質量比で、前記組成物中に存在する、請求項1に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項3】
成分(iii)は、前記組成物の総質量に基づき0.05~0.7質量%の量で前記組成物中に存在し、及び/又は前記組成物の総質量に基づき45~450質量百万分率(ppm)のカルシウムを組成物に提供する、請求項1又は請求項2に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項4】
成分(iii)は、意図的に添加されたフェネート界面活性剤成分を含まず、及び/又は意図的に添加されたスルホン酸塩界面活性剤成分を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項5】
成分(iv)は、前記組成物の総質量に基づき0.75~5.0質量%の量で前記組成物中に存在し、及び/又は成分(iv)の前記無灰分散剤のR8及びR9部分は、各々独立して、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される300~20000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項6】
構造(IV)の追加の塩基性窒素含有無灰分散剤を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物。
【化4】
(式中、
R
11及びR
12は、各々独立して、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される500~5000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するヒドロカルビル基であり、
各R
13は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
13との反応により形成される部分であり、
yは、3~10であり、構造(IV)の全ての分子で同じであるか、又は構造(IV)の分子の混合物中の構造(IV)の全ての分子の平均である。)
【請求項7】
R11及びR12は、各々独立して、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される750~2500ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するポリイソブテニル基であり、
各R13は、独立して水素又はアセチル部分である、
請求項6に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項8】
成分(iv)以外の他の塩基性窒素含有無灰分散剤を実質的に更に含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項9】
前記組成物の総質量に基づき100質量百万分率(ppm)未満のホウ素を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項10】
前記潤滑油ベースストックは、群IIIベースストック、群IVベースストック、又はそれらの組合せを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項11】
置換チアジアゾール、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、腐食防止剤、及び以下の構造を有する摩擦調整剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物。
【化5】
(式中、R
18及びR
19の各々は、独立して
【化6】
であり、x+yは8~15であり、zは1~5の整数であり、各R
20は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
20との反応により形成される部分である。)
【請求項12】
前記潤滑油ベースストックは、ASTM D445に従って測定して、1.5cSt~8.1cStの100℃動粘度(KV100)呈し、前記組成物は、ASTM D445に従って測定して、2cSt~6.5cStのKV100を呈し、
前記組成物は、約80℃で少なくとも46.0MΩ・mの平均体積抵抗率を呈し、
前記組成物は、少なくとも13.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命を呈する、
請求項1~11のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項13】
約80℃で少なくとも47.0MΩ・mの平均体積抵抗率及び少なくとも14.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命、
約80℃で最大95.0MΩ・mの平均体積抵抗率、及び最大30.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命、並びに
約80℃で最大72.0MΩ・mの平均体積抵抗率、及び最大25.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命
の1つ又は複数を呈する、請求項1~12のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項14】
群IIIベースストック、群IVベースストック、又はそれらの組合せを含むもの等の多量の潤滑油ベースストック;並びに
(iv)構造(III):
【化7】
(式中、R
8及びR
9は、各々独立して、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-オクタデセン、又はそれらの混合物を含む(特に、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、又はそれらの混合物から本質的になる)α-オレフィン供給材料のメタロセン触媒重合により製作される炭化水素基であり、各R
10は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
10との反応により形成される部分(特に、水素又はアシル部分)であり、xは、1~10であり(特に、3~10であり)、構造(III)の全ての分子で同じであるか、又は構造(III)の分子の混合物中の構造(III)の全ての分子の平均である)の1つ又は複数の化合物を含む塩基性窒素含有無灰分散剤、及び
(v)構造H-P(=O)-(OR
39)
2(式中、各R
39は、独立して12~24個の炭素原子(例えば、14~22個の炭素原子又は16~18個の炭素原子)を有するアルキル基であるか又は含む)を有する1つ又は複数のジヒドロカルビル水素ホスフィット化合物
を含む少量の添加剤パッケージ
を含むトランスミッションフルード組成物。
【請求項15】
意図的に添加された成分(i)及び(ii)を含まないこと、
意図的に添加された成分(iii)を実質的に含まないこと、
成分(iv)以外の他の塩基性窒素含有無灰分散剤を実質的に含まないこと、及び
前記組成物の総質量に基づき50質量百万分率(ppm)未満のホウ素を含むこと
の1つ又は複数を更に含む、請求項14に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項16】
置換チアジアゾール、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、腐食防止剤、及びその少なくとも1つが以下の構造を有する少なくとも2つの摩擦調整剤を更に含む、請求項14又は請求項15に記載のトランスミッションフルード組成物。
【化8】
(式中、R
18及びR
19の各々は、独立して、
【化9】
であり、x+yは8~15であり、zは1~5の整数であり、各R
20は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
20との反応により形成される部分である。)
【請求項17】
前記潤滑油ベースストックは、ASTM D445に従って測定して、1.5cSt~3.3cStの100℃動粘度(KV100)呈し、前記組成物は、ASTM D445に従って測定して、9.1cSt~11.4cStのKV40を呈し、
前記組成物は、約80℃で少なくとも46.0MΩ・mの平均体積抵抗率を呈し、
前記組成物は、約80℃で最大350MΩ・mの平均体積抵抗率を呈し、
前記組成物は、少なくとも14.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命を呈し、
任意選択で、前記組成物は、最大22.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命を呈する、
請求項14~16のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項18】
成分(iv)は、前記組成物の総質量に基づき0.75~5.0質量%の量で前記組成物中に存在し、及び/又は成分(iv)の前記無灰分散剤のR8及びR9部分は、各々独立して、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される300~20000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する、請求項14~17のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物。
【請求項19】
ハイブリッド電気モータ又は完全電気モータにより動力供給されるトランスミッションの摩耗を制御又は低減し、同時にハイブリッド電動又は完全電動ドライブトレインの電気又は電子部品の少なくとも部分を冷却するための方法であって、前記トランスミッションを潤滑すること、及び前記ドライブトレインの1つ又は複数の電気又は電子部品を、請求項1~18のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物と接触させることを含む方法。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか一項に記載のトランスミッションフルード組成物の使用であって、前記組成物により潤滑されるハイブリッド電動又は完全電動トランスミッションの摩耗を制御又は低減し、同時に前記組成物が接触するハイブリッド電動又は完全電動ドライブトレインの電気又は電子部品の少なくとも部分を冷却するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド車両及び完全電気車両に応用するためのもの等の潤滑剤組成物に関する。潤滑剤は、エンジン及び/又はトランスミッションの接触機械部品に潤滑を提供することができると共に、エンジン及び/又はトランスミッションの電気/電子部分と接触の際に必要な冷却及び電気抵抗特性を提供することもできる。
【背景技術】
【0002】
車両効率の向上及び環境影響の低減に向けた継続的な取組みの一環として、車両製造業者は、いわゆる「バイブリッド車両」を開発している。バイブリッド車は、2つの推進手段、例えば、ガソリン燃料又はディーゼル燃料のいずれかの燃焼エンジン及びバッテリーで駆動する電気モータを有する、自動車及び大型車両等の車両である。バッテリーは、燃焼エンジンを使用して、回生ブレーキにより、又は両方によりのいずれかで充電することができる。
ハイブリッド車両は、従来のステップ式オートマチックトランスミッション、連続可変トランスミッション、又は他の一般的なタイプのトランスミッションを含んでいてもよい。本明細書では「ハイブリッドトランスミッション」と呼ばれる1つの特定のタイプのトランスミッションでは、電気モータ等の電気機械部品並びに減速ギア及び駆動ギア等の機械部品は、単一の筐体内に収容されており、一般潤滑剤により潤滑される。このようなハイブリッドトランスミッションの例は、トヨタ社が自社のハイブリッド車両に使用している電子制御連続可変トランスミッション、即ちECVTである。他の車両製造業者も同様の装置を使用している。完全電気車両トランスミッションでも、電気/電気機械部品と同じ筐体内に機械部品が収容されている限り、そのような車両の一般潤滑剤にも同様の要件が該当する場合がある。従って、本開示は、少なくとも部分的に電気的な(例えば、ハイブリッド及び/又は完全電気)トランスミッションの潤滑に関する。
【0003】
ハイブリッド又は完全電気トランスミッションの性質に応じて、潤滑に使用されるトランスミッションフルードには幾つかの異なる要求が課せられる。機械部品、ギア等は、任意の従来型トランスミッションと全く同様に、摩耗及び腐食から適切に保護されなければならない。しかしながら、電気機械部品が存在するということは、トランスミッションフルードは、電気的絶縁性(又は十分に高い体積抵抗率)、電気機械部品に存在する金属(通常は銅)との良好な適合性、及び良好な冷却能力も提供しなければならないことを意味する。加えて、エネルギー(燃料)消費の点で効率を向上させるため、使用されるトランスミッションフルードは、フルード自体の抗力及び摩擦によるエネルギー損失を低減/最小化することが望ましい場合がある。より低粘度のフルードは、より粘性の高いフルードと比較して、より低い抗力及び摩擦を有するが、典型的にはより低効果の摩耗保護を呈する。従って、従来のトランスミッションフルードの粘度を単に低減するだけでは、少なくとも部分的に電気的なトランスミッション用のフルードを配合しようとする際に直面する問題は解決されない。これは、そのようなフルードに見出される典型的な添加剤組合せが、そのような応用には低すぎる体積抵抗率をフルードに付与するからである。従って、少なくとも部分的に電気的なトランスミッションの多様で両立しない要求を全て満たすトランスミッションフルードの配合は、簡単な作業ではないことは明らかである。本開示は、高い体積抵抗率を有し、従って少なくとも部分的に電気的なトランスミッションの電気機械部品の電気的絶縁に効果的であり、低粘度を有するにも関わらずトランスミッションの機械部品に良好な摩耗保護も提供するトランスミッションフルードの発見に基づく。従って、良好な電気的絶縁、良好な摩耗保護、及び更には比較的低い粘度という両立しない要求を全て満たすことができる(同様に、任意選択で良好なエネルギー効率に加えて)。
【発明の概要】
【0004】
従って、本開示は、多量の潤滑油ベースストック;並びに
(i)構造(I):
【化1】
の2つ又はそれよりも多くの化合物を含む混合物;
(ii)構造(II):
【化2】
の1つ又は複数の化合物、
(iii)サリチル酸カルシウムを含む界面活性剤、及び
(iv)構造(III):
【化3】
の1つ又は複数の化合物を含む塩基性窒素含有無灰分散剤
を含む少量の添加剤パッケージを含むトランスミッションフルード組成物を提供する。
【0005】
構造(I)において、基R1、R2、及びR3(該当する場合)は、各々独立して、1~18個の炭素原子を有するアルキル基、又はアルキル鎖がチオエーテル連結により中断された1~18個の炭素原子を有するアルキル基であってもよい。特に、混合物(i)において、基R1、R2、及びR3(該当する場合)の少なくとも一部は、アルキル鎖がチオエーテル連結により中断された1~18個の炭素原子を有するアルキル基である。構造(II)において、基R4及びR7は、各々独立して、1~12個の炭素原子を有するアルキル基であってもよく又は含んでいてもよく、基R5及びR6は、存在する場合、各々独立して、2~12個の炭素原子を有するアルキル連結であってもよく又は含んでいてもよい。構造(III)において、基R8及びR9は、各々独立して、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-オクタデセン、又はそれらの混合物を含むα-オレフィン供給材料のメタロセン触媒重合により製作される炭化水素基であってもよい。また、構造(III)において、各R10は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R10との反応により形成される部分であってもよく、xは、1~10であってもよく、構造(III)の全ての分子で同じであるか、又は構造(III)の分子の混合物中の構造(III)の全ての分子の平均である。
【0006】
また、本開示は、ドライブトレインの1つ又は複数の電気又は電子部品を、そのようなトランスミッションフルード組成物と接触させることにより潤滑されるハイブリッド電動又は完全電動トランスミッションの摩耗を制御及び/又は低減するための、及び同時に、そのような組成物が接触するハイブリッド電動又は完全電動ドライブトレインの電気又は電子部品の少なくとも部分を冷す/冷却するための、そのようなトランスミッションフルード組成物の使用、並びにそのための方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の特定の組合せは、特により低粘度の配合物において摩耗保護及び体積抵抗率の組合せを提供することができ、この組合せでは、各性能特徴を個別に達成することがより困難であり、典型的には他方を犠牲にした場合に一方を得ることができるに過ぎない。しかしながら、この成分組合せは、有利には、粘度が中程度からより高い配合物において適切な摩耗保護及び体積抵抗率を達成することができる。
【0008】
当技術分野では、リンを含む化合物が、高負荷接触金属表面に対して摩耗保護を提供することができることが公知である。理論に束縛されないが、これは、潤滑される金属表面上にリン含有「ガラス」が形成される結果であることが示唆されている。本開示では、典型的には、成分(i)のみがリンを含む。しかしながら、成分(i)が好適な摩耗保護を提供すると予想し得るとしても、リンが存在することだけでは十分ではないか、又は別の成分若しくは成分の混合物の存在によりある程度又は大部分が打ち消される可能性がある。
加えて、体積抵抗率は、ベースストック粘度の低減に比較的比例して低減することが公知である。更に、所与の粘度のベースストック又は希釈剤内に溶解又は懸濁された極性及びイオン性化合物は、当然のことながら体積抵抗率を低減することが示唆されている。皮肉なことに、トランスミッション及び/又は他のエンジン/ドライブトレイン部品と共に使用される潤滑液の機能性成分は、典型的には、イオン性又は極性のいずれかであり、設定は一般にトレードオフの状況である。しかしながら、エンジンの機械部品(例えば、トランスミッション等の、ドライブトレイン部品)用の潤滑液が、エンジン(例えば、ハイブリッドエンジン及び/又は完全電気エンジン)の電気及び/又は電子部品用の冷却剤としての目的も同時に果たす応用では、潤滑液の要件は、典型的には、液が電気及び/又は電子エンジン部品と接触した際に、短絡に対する十分な抵抗を提供することのみである。ある特定の場合では、この妥協により、機械部品の十分な耐摩耗性及び電気/電子部品の十分な抵抗率特性のための小さな窓が可能になる。本開示の1つの目的は、この窓を増加させる(又は願わくは最大化する)ことであり、従って、抵抗率特性と耐摩耗特性とのバランスをとることである。
驚くべきことに、成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の組合せ、又は成分(iv)及び(v)の組合せ(任意選択で成分(iii)を有するか又は有していないが、成分(i)及び(ii)は両方とも有していない)は、摩耗保護(ニードル軸受疲労試験の平均寿命に反映される)及び体積抵抗率(「VR」;高温にて)の組合せの著しい増強を提供することができる。本明細書の下記に報告されている実験では、成分のそれぞれの組合せは、本来的には、摩耗利益及びVR利益の両方を同時に提供することはないが、類似の及び/又はわずかに変更された成分プロファイルを有する様々な比較組成物と比べて有利な利益を提供するように選択することできることが示されている。
【0009】
成分(i)は、有利には、構造(I):
【化4】
(式中、基R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、1~18個の炭素原子を有するアルキル基、及び/又はアルキル鎖がチオエーテル連結により中断された1~18個の炭素原子を有するアルキル基であってもよく又は含んでいてもよく、但し、基R
1、R
2、及びR
3の少なくとも一部は、アルキル鎖がチオエーテル連結により中断された1~18個の炭素原子を有するアルキル基であってもよく又は含んでいてもよい。)の2つ又はそれよりも多くの化合物の混合物を含んでいてもよい。混合物は、構造(I)の3つ若しくはそれよりも多く、4つ若しくはそれよりも多く、又は5つ若しくはそれよりも多くの化合物を含んでいてもよい。
一部の実施形態では、基R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、4~10個の炭素原子を有するアルキル基及び/又はアルキル鎖がチオエーテル連結により中断された4~10個の炭素原子を有するアルキル基であってもよく又は含んでいてもよく、但し、基R
1、R
2、及びR
3の少なくとも一部は、アルキル鎖がチオエーテル連結により中断された4~10個の炭素原子を有するアルキル基であってもよい又は含んでいてもよい。
基R
1、R
2、及びR
3がアルキル基(アルキル鎖はチオエーテル連結により中断されていない)を含む場合、例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、及びブチルを挙げることができ、特にブチルを含むか又はブチルである。
基R
1、R
2、及びR
3が、アルキル鎖がチオエーテル連結により中断されたアルキル基を含む場合、例としては、構造-R’-S-R’’の基が挙げられ、式中R’は-(CH
2)
n-であってもよく、nは2~4の整数であってもよく、R’’は-(CH
2)
m-CH
3であってもよく、mは、1~7等の1~15の整数であってもよい。
【0010】
特に、成分(i)を含む構造(I)の化合物の混合物では、混合物の少なくとも10質量%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも40%)は、R1、R2、及びR3の少なくとも1つが、アルキル鎖がチオエーテル連結により中断されたアルキル基であるか又は含み、特に構造-R’-S-R’’(式中、R’は-(CH2)n-であってもよく、nは2~4の整数であってもよく、R’’は-(CH2)m-CH3であってもよく、mは、1~7等の1~15の整数であってもよい)を有する構造(I)の化合物を含む。
【0011】
成分(ii)は、有利には、構造(II):
【化5】
(式中、基R
4及びR
7は、各々独立して、1~12個の炭素原子を有するアルキル基であってもよく又は含んでいてもよく、基R
5及びR
6は、各々独立して、2~12個の炭素原子を有するアルキル連結であってもよく又は含んでいてもよい。特に、R
4及びR
7は、各々独立して、-(CH
2)
m-CH
3であってもよく又は含んでいてもよく、mは、1~7等の1~15の整数であり、R
5及びR
6(存在する場合)は、各々独立して、-(CH
2)
n-であってもよく又は含んでいてもよく、nは2~4の整数である。)の1つ又は複数の化合物を含んでいてもよい。混合物は、構造(II)の2つ若しくはそれよりも多く、又は3つ若しくはそれよりも多くの化合物を含んでいてもよい。
【0012】
特に、構造(I)の化合物(成分(i))及び構造(II)の化合物(成分(ii))は各々、組成物の総質量に基づき0.04~1.0質量%、例えば、0.05~0.8質量%、0.05~0.5質量%、又は0.07~0.4質量%の量で、トランスミッションフルード組成物中に存在してもよい。それに加えて又はその代わりに、特に、構造(I)の化合物(成分(i))及び構造(II)の化合物(成分(ii))は、全体として、組成物の総質量に基づき80~800質量百万分率の、例えば、100~700ppm、150~600ppm、又は200~500ppmのリンをトランスミッションフルード組成物に提供することができる。リン含有量は、ASTM D5185に準じて測定することができる。更に、それに加えて又はその代わりに、特に、構造(I)の化合物(成分(i))及び構造(II)の化合物(成分(ii))の質量比は、2:1~1:2、5:3~3:5、3:2~2:3、又は4:3~3:4であってもよい。
【0013】
成分(iii)は、有利には、サリチル酸カルシウム界面活性剤を含んでいてもよく、サリチル酸カルシウム界面活性剤から本質的になっていてもよく、又はサリチル酸カルシウム界面活性剤であってもよい。サリチル酸カルシウム界面活性剤は、当技術分野で公知であり、アルキルサリチル酸等のサリチル酸の中性及び/又は過塩基性カルシウム塩を挙げることができる。
中性サリチル酸カルシウム界面活性剤及び一般の中性界面活性剤は、界面活性剤中に存在する(ルイス)酸性部分の量に対して化学量論的に当量のカルシウムを含むものである。従って、一般に、中性界面活性剤は、典型的には、それらの過塩基性対応物と比較すると、比較的低い塩基性を有することができる。
例えば、カルシウム界面活性剤に関連する「過塩基性」という用語は、カルシウム成分が、対応する(ルイス)酸成分よりも化学量論的に大きな量で存在するという事実を示すために使用される。過塩基性塩を調製するために一般的に使用される方法は、酸の鉱物油溶液を、化学量論的に過剰な中和剤と共に適切な温度で加熱すること(この場合、酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硫化物、又はそれらの組合せ等のカルシウム中和剤と共に、約50℃で)、及び得られた生成物を濾過することを含む。大過剰の塩/塩基(この場合、カルシウム)の取込みを支援するための中和ステップにおける「促進剤」の使用も同様に公知である。促進剤として有用な化合物の例としては、必ずしもこれらに限定されないが、フェノール、ナフトール、アルキルフェノール、チオフェノール、硫化アルキルフェノール等のフェノール系物質、及びホルムアルデヒドとフェノール系物質との縮合生成物;メタノール、2-プロパノール、オクタノール、Cellosolve(商標)アルコール、Carbitol(商標)アルコール、エチレングリコール、ステアリルアルコール、及びシクロヘキシルアルコール等のアルコール;アニリン、フェニレンジアミン、フェノチアジン、フェニル-ベータ-ナフチルアミン、及びドデシルアミン等のアミン;並びにそれらの組合せを挙げることができる。塩基性塩を調製するための特に効果的な方法は、酸性物質を、過剰なカルシウム中和剤及び少なくとも1つのアルコール促進剤と混合すること、並びに60~200℃等の高温で混合物を炭酸化することを含む。
【0014】
特に、成分(iii)のサリチル酸カルシウム界面活性剤は、組成物の総質量に基づき0.03~2.0質量%、例えば、0.05~0.7質量%、0.07~1.0質量%、又は0.10~1.9質量%の量で、トランスミッションフルード組成物中に存在してもよい。それに加えて又はその代わりに、成分(iii)のサリチル酸カルシウム界面活性剤は、組成物の質量に基づき30~2000質量百万分率(ppm)の、例えば、45~450ppm、50~800ppm、又は100~1800ppmのカルシウムをトランスミッションフルード組成物に提供するのに十分な量でトランスミッションフルード組成物中に存在してもよい。カルシウム含有量は、ASTM D5185に準じて測定することができる。
【0015】
成分(iv)は、以下の通りの構造(III):
【化6】
(式中、R
8及びR
9は、各々独立して、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-オクタデセン、又はそれらの混合物を含むα-オレフィン供給材料のメタロセン触媒重合により製作される炭化水素基であり、R
8及びR
9の分散剤アーム又は末端キャップは各々、メタロセン触媒ポリ(アルファ-オレフィン)又はmPAOであり、各R
10は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
10との反応により形成される部分であり、xは、1~10であり、構造(III)の全ての分子で同じであるか、又は構造(III)の分子の混合物中の構造(III)の全ての分子の平均である。)を有する1つ又は複数の塩基性窒素含有無灰分散剤を含んでいてもよく、それらから本質的になっていてもよく、又はそれらであってもよい。
成分(iv)の構造(III)の特定の実施形態では、α-オレフィン供給材料は、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、又はそれらの混合物を含むか又は本質的になる。それに加えて又はその代わりに、成分(iv)の構造(III)の特定の実施形態では、各R
10は、独立して水素又はアセチル部分である。更に、それに加えて又はその代わりに、成分(iv)の構造(III)の特定の実施形態では、xは、3~10である。
【0016】
特定の実施形態では、成分(iv)の無灰分散剤のmPAO末端キャップ又はアーム(R1及びR2部分)は、各々独立して、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される300~20000ダルトンの、例えば、400~15000ダルトン、450~10000ダルトン、500~8000ダルトン、650~6500ダルトン、800~5000ダルトン、又は900~3000ダルトン、特に300~20000ダルトン、500~8000ダルトン、又は800~5000ダルトンの数平均分子量(Mn)を呈してもよい。
そのような追加の無灰分散剤の例としては、mPAOベースのスクシンイミド、mPAOベースのスクシンアミド、mPAO置換コハク酸(mPAOSA)の混合エステル/アミド、及びmPAO置換コハク酸のヒドロキシエステル、並びにそれらの反応生成物及び混合物を挙げることができる。
【0017】
そのような塩基性窒素含有無灰分散剤を潤滑油添加剤として使用してもよく、それらを調製するための方法は、特許文献に記載されている。構造(III)の例示的な無灰分散剤としては、mPAO置換アームが各々36個よりも多くの炭素、例えば40個よりも多くの炭素原子を含む、mPAOベースのスクシンイミド及びスクシンアミドを挙げることができる。こうした材料は、ジカルボン酸で官能化されたmPAO、又は無水物(反応マレイン酸等)で官能化されたmPAOを、アミン官能性を含む分子と反応させることにより容易に製作することができる。好適なアミンの例としては、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、及びそれらの組合せ等のポリアミンを挙げることができる。アミン官能性は、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアルキレンポリアミンにより提供することができる。ポリアミン分子1つ当たりの平均窒素原子数が7よりも大きい混合物も入手可能である。それらは、一般的には重ポリアミン又はH-PAMと呼ばれ、DowChemical社のHPA(商標)及びHPA-X(商標)、HuntsmanChemical社のE-100(商標)等の商品名で商業的に入手可能であり得る。ヒドロキシ置換ポリアミンの例としては、例えば、米国特許第4,873,009号明細書に記載されているタイプの、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、及び/又はN-ヒドロキシアルキル化アルキレンジアミン等のN-ヒドロキシアルキル-アルキレンポリアミンを挙げることができる。ポリオキシアルキレンポリアミンの例としては、約200~約5000ダルトンの平均Mnを有するポリオキシエチレン並びに/又はポリオキシプロピレンジアミン及びトリアミン(並びにそれらのコオリゴマー)を挙げることができる。このタイプの製品は、Jeffamine(商標)という商品名で商業的に入手可能であり得る。
【0018】
当技術分野で公知のように、アミンと、mPAO官能化ジカルボン酸及び/又は無水物との反応(好適には、mPAO分子の反応性部位と、アルケニル無水コハク酸又は無水マレイン酸との反応生成物)は、例えば、油溶液中で反応物を一緒に加熱することにより便利に達成することができる。約100℃~約250℃の反応温度及び約1~約10時間の反応時間が典型的であってもよい。反応比は、かなり変動する場合があるが、一般に、反応物間でおよそ1のカップリング比(第一級アミン官能基の1モル当たりの無水物官能基/ジカルボン酸のモル数)が望ましい場合がある。
特に、成分(iv)の窒素含有無灰分散剤は、無水コハク酸官能化mPAOから形成されるmPAOベースのスクシンイミド、及びテトラエチレンペンタミン又はH-PAM等のポリアルキレンポリアミンを含んでいてもよい。mPAO末端キャップ又はアームは各々、本明細書に記載の通り、アルファ-オレフィン供給材料のメタロセン触媒重合(オリゴマー化)に由来してもよく、各々が、500~5000ダルトン、例えば750ダルトン~2500ダルトンの数平均分子量(Mn)を呈してもよい。こうした分散剤は、当技術分野で公知の他の分散剤と同様に、更に処理されていてもよい(例えば、無水酢酸及び/若しくは炭酸エチレン等の第二級窒素キャッピング剤で、ホウ酸化(borating)/ホウ素化(boronating)剤で、並びに/又はリンの無機酸で)。後処理された分散剤の好適な例は、一般に、例えば、米国特許第3,254,025号明細書、同第3,502,677号明細書、及び同第4,857,214号明細書に見出すことができる。
【0019】
分散剤のホウ酸化は公知であり、望ましい場合があるが、特定の実施形態では、成分(iv)の分散剤(複数可)は、個別に(全体として)、及び実際には本開示による添加剤パッケージ及び/又はトランスミッションフルードの全ての成分(全て一緒に)は、組成物の総質量に基づき200質量百万分率(ppm)未満のホウ素、例えば、150ppm未満のホウ素、100ppm未満のホウ素、70ppm未満のホウ素、又は50ppm未満のホウ素を含んでいてもよい。
特に、成分(iv)の窒素含有無灰分散剤は、トランスミッションフルード組成物の質量に基づき、0.50~8.0質量%、例えば0.75~5.0質量%、0.90~3.5質量%、又は1.0~3.0質量%の量でトランスミッションフルード組成物中に存在してもよい。
【0020】
本開示によるトランスミッションフルード組成物中の潤滑油ベースストックの量は、典型的には多量(つまり、組成物の質量に基づき50%よりも多い)であってもよく、全体としての添加剤パッケージ及び添加剤パッケージの成分の各々は個々に、典型的には少量(つまり、組成物の質量に基づき50%未満)を構成する。例えば、トランスミッションフルード組成物は、組成物の質量に基づき、50%よりも多く99.5%まで、50%よりも多く99%まで、50%よりも多く98.5%まで、50%よりも多く98%まで、50%よりも多く97.5%まで、50%よりも多く97%まで、50%よりも多く96.5%まで、50%よりも多く96%まで、50%よりも多く95.5%まで、50%よりも多く95%まで、60%~99.5%、60%~99%、60%~98.5%、60%~98%、60%~97.5%、60%~97%、60%~96.5%、60%~96%、60%~95.5%、60%~95%、70%~99.5%、70%~99%、70%~98.5%、70%~98%、70%~97.5%、70%~97%、70%~96.5%、70%~96%、70%~95.5%、70%~95%、75%~99.5%、75%~99%、75%~98.5%、75%~98%、75%~97.5%、75%~97%、75%~96.5%、75%~96%、75%~95.5%、75%~95%、80%~99.5%、80%~99%、80%~98.5%、80%~98%、80%~97.5%、80%~97%、80%~96.5%、80%~96%、80%~95.5%、又は80%~95%の、特に組成物の質量に基づき、60%~99%、70~98%、75~97%、又は80~96.5%の潤滑油ベースストックを含んでいてもよい。それに加えて又はその代わりに、トランスミッションフルード組成物は、組成物の質量に基づき、0.5%~50%未満、0.5%~39%、0.5%~34%、0.5%~29%、0.5%~24%、0.5%~19.5%、0.5%~14.5%、0.5%~11.5%、0.5%~9.5%、0.5%~7.5%、0.5%~6.5%、0.5%~5.5%、0.5%~5.0%、0.5%~4.5%、0.5%~4.0%、0.5%~3.5%、0.5%~3.0%、0.5%~2.5%、0.5%~2.0%、0.5%~1.5%、1.9%~50%未満、1.9%~39%、1.9%~34%、1.9%~29%、1.9%~24%、1.9%~19.5%、1.9%~14.5%、1.9%~11.5%、1.9%~9.5%、1.9%~7.5%、1.9%~6.5%、1.9%~5.5%、1.9%~5.0%、1.9%~4.5%、1.9%~4.0%、1.9%~3.5%、1.9%~3.0%、2.9%~50%未満、2.9%~39%、2.9%~34%、2.9%~29%、2.9%~24%、2.9%~19.5%、2.9%~14.5%、2.9%~11.5%、2.9%~9.5%、2.9%~7.5%、2.9%~6.5%、2.9%~5.5%、2.9%~5.0%、2.9%~4.5%、2.9%~4.0%、3.9%~50%未満、3.9%~39%、3.9%~34%、3.9%~29%、3.9%~24%、3.9%~19.5%、3.9%~14.5%、3.9%~11.5%、3.9%~9.5%、3.9%~7.5%、3.9%~6.5%、3.9%~5.5%、3.9%~5.0%、4.8%~50%未満、4.8%~39%、4.8%~34%、4.8%~29%、4.8%~24%、4.8%~19.5%、4.8%~14.5%、4.8%~11.5%、4.8%~9.5%、4.8%~7.5%、4.8%~6.5%、4.8%~5.5%、5.8%~50%未満、5.8%~39%、5.8%~34%、5.8%~29%、5.8%~24%、5.8%~19.5%、5.8%~14.5%、5.8%~11.5%、5.8%~9.5%、5.8%~7.5%、5.8%~6.5%、6.7%~50%未満、6.7%~39%、6.7%~34%、6.7%~29%、6.7%~24%、6.7%~19.5%、6.7%~14.5%、6.7%~11.5%、6.7%~9.5%、6.7%~7.5%、7.6%~50%未満、7.6%~39%、7.6%~34%、7.6%~29%、7.6%~24%、7.6%~19.5%、7.6%~14.5%、7.6%~11.5%、7.6%~9.5%、8.5%~50%未満、8.5%~39%、8.5%~34%、8.5%~29%、8.5%~24%、8.5%~19.5%、8.5%~14.5%、8.5%~11.5%、又は8.5%~9.5%の、特に組成物の質量に基づき、1.9%~29%、3.9%~24%、4.8%~14.5%、又は5.8~11.5%の添加剤パッケージ組成物を含んでいてもよい。
【0021】
潤滑油ベースストックは、当技術分野で公知である任意の好適な潤滑油ベースストックであってもよい。潤滑油ベースストックは、天然及び合成が両方とも好適であり得る。天然潤滑油としては、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、石油、鉱物油、石炭又はシェールに由来する油、及びそれらの組合せを挙げることができる。1つの特定の天然潤滑油は、鉱物油を含むか又は鉱物油である。
好適な鉱物油としては、化学構造がナフテン系又はパラフィン系である油を含む、全ての一般的な鉱物油ベースストックを挙げることができる。好適な油は、酸、アルカリ、及びクレイ、又は塩化アルミニウム等の他の作用剤を使用する従来法により精製されていてもよく、又は例えば、フェノール、二酸化硫黄、フルフラール、ジクロロジエチルエーテル等、若しくはそれらの組合せ等の溶媒を用いた溶媒抽出により生産される抽出油であってもよい。好適な油は、水素化処理若しくは水素化精製されていてもよく、冷却若しくは触媒脱ロウプロセスにより脱ロウされていてもよく、水素化分解されていてもよく、又はそれらの一部の組合せであってもよい。好適な鉱物油は、天然粗供給源から生産してもよく、異性化ワックス材料又は他の精製プロセスの残留物で構成されていてもよい。
合成潤滑油ベースストックとしては、オリゴマー化、重合化、及びインター重合化(interpolymerized)オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン、イソブチレンコポリマー、塩素化ポリラクテン(polylactene)、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ-(1-デセン)等、及びそれらの混合物)等の炭化水素油及びハロ置換炭化水素油;アルキルベンゼン(例えば、ドデシル-ベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニル-ベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン等);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル等);アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化硫化ジフェニル、並びにそれらの誘導体、類似体、及び相同体等;並びにそれらの組合せ及び/又は反応生成物を挙げることができる。
【0022】
一部の実施形態では、このクラスの合成油ベースストックに由来する油は、アルファ-オレフィンの水素化オリゴマー、特にフリーラジカル法、チーグラー触媒作用、又はカチオン性触媒作用により生産されるもの等の1-デセンのオリゴマーを含む、ポリアルファオレフィン(PAO)であってもよいか又は含んでいてもよい。それらは、例えば、2~16個の炭素原子を有する分岐又は直鎖アルファ-オレフィンのオリゴマーであってもよく、特定の非限定的な例としては、ポリプロペン、ポリイソブテン、ポリ-1-ブテン、ポリ-1-ヘキセン、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-デセン、ポリ-1-ドデセン、及びそれらの混合物及び/又はインターポリマー(interpolymer)/コポリマーが挙げられる。
合成潤滑油ベースストックとしては、それに加えて又はその代わりに、任意の(ほとんどの)末端ヒドロキシル基が、エステル化、エーテル化等により修飾されている、アルキレンオキシドポリマー、インターポリマー、コポリマー、及びそれらの誘導体を挙げることができる。このクラスの合成油は、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合により調製されるポリオキシアルキレンポリマー;こうしたポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、平均Mnが約1000ダルトンのメチル-ポリイソプロピリングリコールエーテル、平均Mnが約1000~約1500ダルトンのポリプロピレングリコールのジフェニルエーテル);並びにそれらのモノ-及びポリ-カルボン酸エステル(例えば、酢酸エステル(複数可)、混合C3~C8脂肪酸エステル、又はテトラエチレングリコールのC12オキソ酸ジエステル(複数可)等、又はそれらの組合せ)により例示することができる。
【0023】
別の適切なクラスの合成潤滑油ベースストックは、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸(sebasic acid)、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等)と、様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等)とのエステルを含んでいてもよい。こうしたエステルの具体的な例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フマル酸ジオクチル、フマル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、並びに1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることにより形成される複合エステル等、並びにそれらの組合せが挙げられる。このクラスの合成油に由来する好ましいタイプの油は、C4~C12アルコールのアジピン酸エステルを含んでいてもよい。
合成潤滑油ベースストックとして有用なエステルとしては、それに加えて又はその代わりに、C5~C12モノカルボン酸、ポリオール、及び/又はポリオールエーテルから製作されたもの、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びトリペンタエリスリトール等、並びにそれらの組合せを挙げることができる。
【0024】
潤滑油ベースストックは、未精製油、精製油、再精製油、又はそれらの混合物に由来してもよい。未精製油は、更に精製又は処理することなく、天然源又は合成源(例えば、石炭、シェール、又はタールサンドビチューメン)から直接的に得られる。未精製油の例としては、レトルト採収操作から直接的に得られるシェール油、蒸留から直接的に得られる石油、又はエステル化プロセスから直接的に得られるエステル油を挙げることができ、これらの各々又は組合せは、更なる処理を行わずにその後使用することができる。精製油は、化学構造を変化させるために、及び/又は1つ若しくは複数の特性を向上させるために、典型的には、1つ又は複数の精製ステップで処理されていることを除いて、未精製油と同様である。好適な精製技法としては、蒸留、水素化処理、脱ロウ、溶媒抽出、酸又は塩基抽出、濾過、及びパーコレーションを挙げることができ、これらは全て当業者に公知である。再精製油は、最初に精製油を得るために使用されたものと同様のプロセスで、使用された油及び/又は精製された油を処理することにより得ることができる。このような再精製油は、再生油又は再処理油として知られている場合があり、使用済み添加剤及び油分解生成物を除去するための技法により更に処理することができることが多い。
【0025】
好適な潤滑油ベースストックの別の追加又は代替クラスとしては、天然ガス供給材料のオリゴマー化又はロウの異性化から生産されるベースストックを挙げることができる。こうしたベースストックは、様々な様式で参照することができるが、一般的には、ガス液体化ベースストック(GTL、Gas-to-Liquid)又はフィッシャー・トロプシュベースストックとして知られている。
本開示による潤滑油ベースストックは、類似のタイプであるか又は異なるタイプであるかに関わらず、本明細書に記載の油/ベースストックの1つ又は複数のブレンドであってもよく、天然潤滑油及び合成潤滑油のブレンド(つまり、部分的に合成)は、本開示のために明示的に企図される。
潤滑油は、American Petroleum Institute(API)出版物「Engine Oil Licensing and Certification System」、Industry Services Department、第14版、1996年12月、補遺1、1998年12月に示されている通りに分類することができる。この文献では、油は、以下の通りにカテゴリー化されている。
a)群Iベースストックは、90%未満の飽和物及び/又は0.03%よりも多くの硫黄を含み、80以上120未満の粘度インデックスを有する。
b)群IIベースストックは、90%以上の飽和物及び0.03パーセント以下の硫黄を含み、80以上120未満の粘度インデックスを有する。
c)群IIIベースストックは、90%以上の飽和物及び0.03パーセント以下の硫黄を含み、120以上の粘度インデックスを有する。
d)群IVベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。
e)群Vベースストックは、群I、II、III、又はIVに含まれない全ての他のベースストック油を含む。
【0026】
本開示の一実施形態では、潤滑油ベースストックは、鉱物油又は鉱物油の混合物、特に(API分類の)群II及び/又は群IIIの鉱物油であってもよく又は含んでいてもよい。それに加えて又はその代わりに、潤滑油ベースストックは、ポリアルファオレフィン(群IV)及び/又は群Vの油等の合成油であってもよく又は含んでいてもよい。所望の配合物粘度が非常に低い(例えば、4.0cSt未満又は3.5cSt未満)実施形態では、潤滑油ベースストックは、群IV(ポリアルファオレフィン)ベースストック若しくは群IVベースストックの混合物であること、又は少なくとも40質量%(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、若しくは少なくとも90%)の1つ若しくは複数の群IVベースストックで構成されていることが有利であり得る。
【0027】
有利には、潤滑油ベースストック(複数可)は、個々に又は全体として、ASTM D445により測定して、1.0cSt~10cSt(例えば、1.0cSt~8.1cSt、1.0cSt~7.2cSt、1.0cSt~6.5cSt、1.0cSt~6.0cSt、1.0cSt~5.5cSt、1.0cSt~5.0cSt、1.0cSt~4.5cSt、1.0cSt~4.0cSt、1.0cSt~3.5cSt、1.5cSt~3.3cSt、1.0cSt~3.0cSt、1.0cSt~2.5cSt、1.0cSt~2.0cSt、1.5cSt~10cSt、1.5cSt~8.1cSt、1.5cSt~7.2cSt、1.5cSt~6.5cSt、1.5cSt~6.0cSt、1.5cSt~5.5cSt、1.5cSt~5.0cSt、1.5cSt~4.5cSt、1.5cSt~4.0cSt、1.5cSt~3.5cSt、1.5cSt~3.3cSt、1.5cSt~3.0cSt、1.5cSt~2.5cSt、2.0cSt~10cSt、2.0cSt~8.1cSt、2.0cSt~7.2cSt、2.0cSt~6.5cSt、2.0cSt~6.0cSt、2.0cSt~5.5cSt、2.0cSt~5.0cSt、2.0cSt~4.5cSt、2.0cSt~4.0cSt、2.0cSt~3.5cSt、2.0cSt~3.0cSt、2.0cSt~2.5cSt、2.5cSt~10cSt、2.5cSt~8.1cSt、2.5cSt~7.2cSt、2.5cSt~6.5cSt、2.5cSt~6.0cSt、2.5cSt~5.5cSt、2.5cSt~5.0cSt、2.5cSt~4.5cSt、2.5cSt~4.0cSt、2.5cSt~3.5cSt、2.5cSt~3.0cSt、2.7cSt~10cSt、2.7cSt~8.1cSt、2.7cSt~7.2cSt、2.7cSt~6.5cSt、2.7cSt~6.0cSt、2.7cSt~5.5cSt、2.7cSt~5.0cSt、2.7cSt~4.5cSt、2.7cSt~4.0cSt、2.7cSt~3.5cSt、2.7cSt~3.0cSt、3.0cSt~10cSt、3.0cSt~8.1cSt、3.0cSt~7.2cSt、3.0cSt~6.5cSt、3.0cSt~6.0cSt、3.0cSt~5.5cSt、3.0cSt~5.0cSt、3.0cSt~4.5cSt、3.0cSt~4.0cSt、3.0cSt~3.5cSt、3.5cSt~10cSt、3.5cSt~8.1cSt、3.5cSt~7.2cSt、3.5cSt~6.5cSt、3.5cSt~6.0cSt、3.5cSt~5.5cSt、3.5cSt~5.0cSt、3.5cSt~4.5cSt、3.5cSt~4.0cSt、4.0cSt~10cSt、4.0cSt~8.1cSt、4.0cSt~7.2cSt、4.0cSt~6.5cSt、4.0cSt~6.0cSt、4.0cSt~5.5cSt、4cSt~5.0cSt、又は4.0cSt~4.5cSt)、特に1.0cSt~10cSt、1.5cSt~3.3cSt、2.7cSt~8.1cSt、3.0cSt~7.2cSt、又は2.5cSt~6.5cStの100℃動粘度(KV100)を呈してもよい。
【0028】
必要とされる成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)を、別々に潤滑油ベースストックに添加して、トランスミッションフルード組成物を形成してもよく、又はより便利には、分散媒に溶解又は分散された必要な化合物を含む添加剤パッケージとして油に添加してもよい。更に、その代わりに、トランスミッションフルード組成物を形成するために、成分の2つ又はそれよりも多くを添加剤パッケージとして一緒に添加してもよく、1つ又は複数の他の成分を別々に潤滑油ベースストック及び/又は混合物に添加してもよい。そのような添加剤パッケージは、任意選択で、添加剤パッケージとは別に本明細書の下記で規定される通りの1つ又は複数の共添加剤を更に含んでいてもよく、又はトランスミッションフルード組成物が、添加剤パッケージとは別に本明細書の下記で規定される1つ又は複数の共添加剤を含んでいてもよい。
【0029】
共添加剤
本開示のトランスミッションフルード組成物には、トランスミッションフルードに一般的に見出される共添加剤が、任意選択で含まれていてもよい。当業者には、好適な共添加剤が公知であろう。一部の例が本明細書に記載されている。
【0030】
追加の無灰分散剤
一部の実施形態では、添加剤パッケージ及び/又はトランスミッションフルード組成物は、成分(iv)の構造(III)とは異なる1つ又は複数の追加の塩基性窒素含有無灰分散剤を更に含んでいてもよい。実際、そのような追加の窒素含有無灰分散剤(複数可)は、存在する場合、有利には、構造(IV)であってもよい。
【化7】
(式中、R
11及びR
12は、各々独立して、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される500~5000ダルトン又は750~2500ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するヒドロカルビル基(例えば、ポリイソブテニル部分)であり、各R
13は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
13との反応により形成される部分(特に、水素又はアセチル部分)であり、yは1~10(特に、3~10)であり、構造(IV)の全ての分子で同じであるか、又は構造(IV)の分子の混合物中の構造(IV)の全ての分子の平均である。)
そのような追加の無灰分散剤の例としては、ポリイソブテニルスクシンイミド、ポリイソブテニルスクシンアミド、ポリイソブテニル置換コハク酸の混合エステル/アミド、ポリイソブテニル置換コハク酸のヒドロキシエステル、並びにヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒド、及びポリアミンのマンニッヒ縮合生成物、並びにそれらの反応生成物及び混合物を挙げることができる。
【0031】
そのような塩基性窒素含有無灰分散剤は、周知の潤滑油添加剤であり、それらの調製方法は、特許文献に詳しく記載されている。例示的な追加の分散剤としては、ポリイソブテニル置換基が、36個よりも多くの炭素の、例えば40個よりも多くの炭素原子の長鎖である、ポリイソブテニルスクシンイミド及びスクシンアミドを挙げることができる。こうした材料は、ポリイソブテニル置換ジカルボン酸材料を、アミン官能性を含む分子と反応させることにより容易に製作することができる。好適なアミンの例としては、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、及びそれらの組合せ等のポリアミンを挙げることができる。アミン官能性は、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアルキレンポリアミンにより提供することができる。ポリアミン分子1つ当たりの平均窒素原子数が7よりも大きい混合物も利用可能である。それらは、一般的には重ポリアミン又はH-PAMと呼ばれ、DowChemical社のHPA(商標)及びHPA-X(商標)、HuntsmanChemical社のE-100(商標)等の商品名で商業的に入手可能であり得る。ヒドロキシ置換ポリアミンの例としては、例えば、米国特許第4,873,009号明細書に記載されているタイプの、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、及び/又はN-ヒドロキシアルキル化アルキレンジアミン等のN-ヒドロキシアルキル-アルキレンポリアミンを挙げることができる。ポリオキシアルキレンポリアミンの例としては、約200~約2500ダルトンの平均Mnを有するポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンジアミン及びトリアミンを挙げることができる。このタイプの製品は、Jeffamine(商標)の商品名で商業的に入手可能であり得る。
【0032】
当技術分野で公知のように、アミンとポリイソブテニル置換ジカルボン酸材料(好適には、アルケニル無水コハク酸又は無水マレイン酸)との反応は、反応物を一緒に、例えば油溶液中で加熱することにより便利に達成することができる。約100℃~約250℃の反応温度及び約1~約10時間の反応時間が典型的であり得る。反応比はかなり変動する可能性があるが、一般に、アミン含有反応物の反応当量あたり約0.1~約1.0当量のジカルボン酸単位含有量を使用することができる。
特に、追加の無灰分散剤は、存在する場合、ポリイソブテニル無水コハク酸から形成されるポリイソブテニルスクシンイミド、及びテトラエチレンペンタミン又はH-PAM等のポリアルキレンポリアミンを含んでいてもよい。ポリイソブテニル基は、ポリイソブテンに由来してもよく、約500~約5000ダルトン、例えば、約750~約2500ダルトンの数平均分子量(Mn)を呈してもよい。当技術分野で公知のように、これらの及び他の分散剤は、後処理されていてもよい(例えば、無水酢酸及び/又は炭酸エチレン等の第二級窒素キャッピング剤で、ホウ酸化/ホウ素化剤で、及び/又は無機酸のリンで)。好適な例は、例えば、米国特許第3,254,025号明細書、同第3,502,677号明細書、及び同第4,857,214号明細書に見出すことができる。
使用される場合、追加の無灰分散剤は、トランスミッションフルード組成物の質量に基づき、0.01~10質量%、例えば、0.05~7質量%又は0.1~5質量%の量で存在してもよい。
【0033】
非サリチル酸カルシウム界面活性剤
一部の実施形態では、添加剤パッケージ及び/又はトランスミッションフルード組成物は、サリチル酸カルシウム以外の界面活性剤を更に含んでいてもよい。他の実施形態では、添加剤パッケージ及び/又はトランスミッションフルード組成物は、成分(iii)のサリチル酸カルシウムを除いて、他の界面活性剤を実質的に更に含まなくてもよい。代替的な実施形態では、添加剤パッケージ及び/又はトランスミッションフルード組成物は、意図的に添加されたフェネート(phenate)界面活性剤を実質的に含んでいなくともよく、及び/又は意図的に添加されたスルホン酸塩界面活性剤を実質的に含んでいなくてもよい。
トランスミッションフルード組成物が追加の非サリチル酸カルシウム界面活性剤を含む場合、それも、カルシウム含有界面活性剤であってもよい。こうした界面活性剤は、典型的には、油によりそれらの意図された作用部位に輸送されるように油中での溶解又は分散を維持する等のために、十分に油溶性又は分散性である。追加のカルシウム含有界面活性剤は当技術分野で公知であり、スルホン酸、カルボン酸、アルキルフェノール、硫化アルキルフェノール、及びこうした物質の混合物等の酸性物質との中性及び過塩基性カルシウム塩が挙げられる。
【0034】
本開示のトランスミッションフルード組成物に有用な非サリチル酸カルシウム界面活性剤の例としては、必ずしもこれらに限定されないが、カルシウムフェネート;硫化カルシウムフェネート(例えば、各芳香族基は、炭化水素溶解性を付与するために1つ又は複数の脂肪族基を有する)等の物質の中性及び/又は過塩基性塩;スルホン酸カルシウム(例えば、各スルホン酸部分は芳香核に付着しており、芳香核は、引いては通常、炭化水素溶解性を付与するために1つ又は複数の脂肪族置換基を含む);加水分解ホスホ硫化オレフィン(例えば、10~2000個の炭素原子を有する)及び/又は加水分解ホスホ硫化アルコール及び/又は脂肪族置換フェノール系化合物(例えば、10~2000個の炭素原子を有する)のカルシウム塩;脂肪族カルボン酸及び/又は脂肪族置換脂環式カルボン酸のカルシウム塩;並びにそれらの組合せ及び/又は反応生成物;並びに油溶性有機酸の多数の他の類似カルシウム塩を挙げることができる。必要に応じて、2つ又はそれよりも多くの異なる非サリチル酸の中性及び/又は過塩基性塩の混合物を使用することができる(例えば、1つ又は複数の過塩基性カルシウムフェネートを1つ又は複数の過塩基性スルホン酸カルシウムと共に)。
【0035】
油溶性の中性及び過塩基性カルシウム界面活性剤の生産方法は、当業者に周知であり、特許文献に詳しく報告されている。カルシウム含有界面活性剤は、任意選択で、後処理、例えばホウ酸化(borated)されていてもよい。ホウ酸化界面活性剤を調製するための方法は当業者に周知であり、特許文献に詳しく報告されている。
一部の実施形態では、典型的には好ましくないものの、追加の界面活性剤化合物は、マグネシウム含有サリチル酸塩、マグネシウム含有フェネート、マグネシウム含有スルホン酸塩、及び/又は本明細書に記載の任意の他のカルシウム含有界面活性剤のマグネシウム含有型、並びにそれらの任意の混合物を含むマグネシウム含有界面活性剤を含んでいてもよい。
存在する場合、追加の界面活性剤は、中性若しくは過塩基性スルホン酸カルシウム界面活性剤及び/又は中性若しくは過塩基性カルシウムフェネート界面活性剤を含んでいてもよく、から本質的になっていてもよく、又はからなっていてもよい。存在する場合、成分(iii)のサリチル酸カルシウムと追加の界面活性剤の組合せは、全体として、トランスミッションフルード組成物に、組成物の質量に基づき、75~2500質量百万分率(ppm)の、例えば85~1800ppm、100~1000ppm、又は120~500ppmのカルシウムを提供することができる。カルシウム含有量は、ASTM D5185に準じて測定することができる。
【0036】
酸化防止剤
酸化防止剤は、酸化阻害剤と呼ばれることもあり、酸化に対するトランスミッションフルード組成物の耐性を増加させる(又は感受性を減少させる)ことができる。酸化防止剤は、過酸化物及び他のフリーラジカル形成化合物等の酸化剤と組み合わせて及び修飾してそれらを無害化することにより、例えば、それらを分解することにより、又は酸化の触媒又は促進剤を不活化にすることにより作用することができる。酸化劣化は、使用の増加に伴うフルード中のスラッジ、金属表面へのワニス様堆積物、場合によっては粘度の増加により明らかになる場合がある。
好適な酸化防止剤の例としては、これらに限定されないが、銅含有酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤、芳香族アミン含有及び/又はアミド含有酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、並びにジチオホスフェート及び誘導体等、並びにそれらの組合せ及びある特定の反応生成物を挙げることができる。一部の酸化防止剤は無灰であってもよい(つまり、微量の夾雑物以外は、存在するとしてもわずかな金属原子しか含んでいなくともよい)。好ましい実施形態では、1つ又は複数の酸化防止剤が、本開示によるトランスミッションフルード組成物中に存在する。特に、本開示のトランスミッションフルード組成物は、アミン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との組合せを含んでいてもよい。
【0037】
腐食防止剤
腐食防止剤は、金属の腐食を低減するために使用することができ、その代わりに金属不活化剤又は金属不動態化剤と呼ばれることが多い。一部の腐食防止剤は、その代わりに酸化防止剤として特徴付けられる場合もある。
好適な腐食防止剤としては、トリアゾール(例えば、ベンゾトリアゾール)、置換チアジアゾール、イミダゾール、チアゾール、テトラゾール、ヒドロキシキノリン、オキサゾリン、イミダゾリン、チオフェン、インドール、インダゾール、キノリン、ベンゾオキサジン、ジチオール、オキサゾール、オキサトリアゾール、ピリジン、ピペラジン、トリアジン、及びそれらのいずれか1つ又は複数の誘導体等の窒素及び/又は硫黄含有複素環式化合物を挙げることができる。特定の腐食防止剤は、以下の構造:
【化8】
により表されるベンゾトリアゾールであり、式中、R
14は、存在しないか、又は線状、分岐状、飽和、又は不飽和であってもよいC
1~C
20ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビル基である。この構造は、性質がアルキル又は芳香族であり、及び/又はN、O、若しくはS等のヘテロ原子を含む環構造を含んでいてもよい。好適な化合物の例としては、ベンゾトリアゾール、アルキル置換ベンゾトリアゾール(例えば、トリルトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、オクチルベンゾトリアゾール等)、及びアリール置換ベンゾトリアゾール、アルキルアリール置換又はアリールアルキル置換ベンゾトリアゾール等、並びにそれらの組合せを挙げることができる。例えば、トリアゾールは、ベンゾトリアゾール、及び/又はアルキル基が1~約20個の炭素原子若しくは1~約8個の炭素原子を含むアルキルベンゾトリアゾールであってもよく又は含んでいてもよい。好ましい腐食防止剤は、ベンゾトリアゾール及び/又はトリルトリアゾールであってもよく又は含んでいてもよい。
【0038】
それに加えて又はその代わりに、腐食防止剤は、以下の構造:
【化9】
により表される置換チアジアゾールを含んでいてもよく、式中、R
15及びR
16は、独立して水素又は炭化水素基であり、基は、環式、脂環式、アラルキル、アリール、及びアルカリルを含む、脂肪族又は芳香族であってもよい。こうした置換チアジアゾールは、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(DMTD)分子に由来する。DMTDの誘導体は多数が当技術分野に記載されており、任意のそのような化合物は、本開示で使用されるトランスミッションフルードに含まれていてもよい。例えば、米国特許第2,719,125号明細書、同第2,719,126号明細書、及び同第3,087,937号明細書には、種々の2,5-ビス-(炭化水素ジチオ)-1,3,4-チアジアゾールの調製が記載されている。
【0039】
更に、それに加えて又はその代わりに、腐食防止剤は、R15及びR16がカルボニル基を介してスルフィド硫黄原子と一緒になっていてもよいカルボン酸エステル等の、DMTDの1つ又は複数の他の誘導体を含んでいてもよい。DMTD誘導体を含むこうしたチオエステルの調製は、例えば、米国特許第2,760,933号明細書に記載されている。DMTDと、少なくとも10個の炭素原子を有するアルファ-ハロゲン化脂肪族モノカルボン酸カルボン酸(alpha-halogenated aliphatic monocarboxylic carboxylic acid)との縮合により生成されるDMTD誘導体は、例えば、米国特許第2,836,564号明細書に記載されている。このプロセスにより、R15及びR16がHOOC-CH(R17)-である(R17はヒドロカルビル基である)DMTD誘導体が生成される。こうした末端カルボン酸基のアミド化又はエステル化により更に生成されるDMTD誘導体も有用であり得る。
2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールの調製は、例えば、米国特許第3,663,561号明細書に記載されている。
【0040】
特定のクラスのDMTD誘導体としては、2-ヒドロカルビルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール及び2,5-ビス-ヒドロカルビルジチオ-1,3,4-チアジアゾールの混合物を挙げることができる。このような混合物は、HiTEC(登録商標)4313という商品名で販売されており、Afton Chemical社から商業的に入手可能である。
特に、本開示のトランスミッションフルード組成物は、置換チアジアゾール、置換ベンゾトリアゾール、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。
必要に応じて、腐食防止剤を任意の有効量で使用することができるが、使用する場合、典型的には、トランスミッションフルードの質量に基づき、約0.001~5.0質量%、例えば、0.005~3.0質量%、又は0.01~1.0質量%の量で使用することができる。
【0041】
摩擦調整剤
摩擦調整剤としては、ポリエチレンポリアミン及び/又はエトキシル化長鎖アミンの誘導体を挙げることができる。ポリエチレンポリアミンの誘導体は、有利には、構造が画定されているスクシンイミドを含んでいてもよく、又は単純なアミドであってもよい。
【0042】
ポリエチレンポリアミンに由来する好適なスクシンイミドとしては、以下の構造:
【化10】
のものを挙げることができ、式中、x+yは、8~15であってもよく、zは、0又は1~5の整数であってもよく、特に、x+yは11~15(例えば、13)であってもよく、zは1~3であってもよい。より幅広く、そのような摩擦調整剤は、以下の基本構造を使用して表すことができる。
【化11】
(式中、R
18及びR
19の各々は、独立して、
【化12】
であり、式中、x+yは、8~15(特に、11~15、例えば13)であり、zは、0又は1~5の整数(特に、1~5の整数又は1~3の整数)であり、各R
20は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
20との反応により形成される部分(特に、水素又はアセチル部分)である。)
そのような摩擦調整剤の調製は、例えば、米国特許第5,840,663号明細書に記載されている。
【0043】
上記のスクシンイミドを無水酢酸と後反応させて、以下の構造(式中、z=1)により例示される通りの、各R
20が独立してアセチル基である摩擦調整剤を形成することができる。
【化13】
この摩擦調整剤の調製は、例えば、米国特許出願公開第2009/0005277号明細書に見出すことができる。他の試薬、例えばホウ酸化剤との後反応も当技術分野で知られている。
存在する場合、そのようなスクシンイミド摩擦調整剤は、任意の有効量で使用することができる。典型的には、それらは、0.1~10.0質量パーセント、例えば、0.5~6.0質量パーセント又は2.0~5.0質量パーセントの量でトランスミッションフルードに使用することができる。
【0044】
代替的な単純アミドの例は、以下の構造を有していてもよい。
【化14】
(式中、R
21及びR
22は、同じアルキル基であってもよく又は異なるアルキル基であってもよい。例えば、R
21及びR
22は、線状であってもよく又は分岐状であってもよいC
14~C
20アルキル基であってもよく、mは1~5の整数であってもよい。特に、R
21及びR
22は両方とも、イソステアリン酸に由来してもよく、mは4であってもよい。)
存在する場合、そのような単純な摩擦調整剤は、任意の有効量で使用することができる。典型的には、それらは、0.1~5.0質量パーセント、例えば、0.2~4.0質量パーセント又は0.25~3.0質量パーセントの量でトランスミッションフルードに使用することができる。
好適なエトキシル化アミン摩擦調整剤は、第一級アミン及び/又はジアミンとエチレンオキシドとの反応生成物であってもよく又は含んでいてもよい。エチレンオキシドとの反応は、実質的に全ての第一級及び第二級アミンを第三級アミンに変換することができるような化学量論を使用して好適に実施することができる。そのようなアミンは、以下の例示的な構造:
【化15】
を有してもよく、式中、R
23及びR
24は、約10~20個の炭素原子を含むアルキル基又は硫黄若しくは酸素連結を含むアルキル基であってもよい。例示的なエトキシル化アミン摩擦調整剤は、R
23及び/又はR
24が16~20個の炭素原子、例えば16~18個の炭素原子を含んでいてもよい材料を含んでいてもよい。このタイプの材料は、Akzo Nobel社のEthomeen(登録商標)及びEthoduomeen(登録商標)という商品名で商業的に入手可能であり、販売されている場合がある。Akzo Nobel社の好適な材料としては、とりわけ、Ethomeen(登録商標)T/12及びEthoduomeen(登録商標)T/13を挙げることができる。
【0045】
存在する場合、そのようなエトキシル化アミンは、任意の有効量で使用することができる。典型的には、それらは、約0.01~1.0質量パーセント、例えば、0.05~0.5質量パーセント又は0.1~0.3質量パーセントの量でトランスミッションフルードに使用することができる。
しかしながら、トランスミッションフルード組成物がハイブリッドエンジン又は完全電気エンジンと共に使用される一部の実施形態では、トランスミッションフルード組成物は、任意選択で、摩擦調整剤を実質的に含んでいなくともよく、又はその代わりに、本明細書に記載のタイプ(複数可)の摩擦調整剤を実質的に含んでいなくともよい。
【0046】
モリブデン含有化合物
一部の実施形態では、添加剤パッケージ及び/又はトランスミッションフルード組成物は、油溶性又は油分散性有機モリブデン化合物等の、1つ又は複数の油溶性又は油分散性モリブデン含有化合物を更に含んでいてもよい。他の実施形態では、添加剤パッケージ及び/又はトランスミッションフルード組成物は、油溶性又は油分散性モリブデン含有化合物を実質的に含んでいなくともよい。
そのような油溶性又は油分散性有機モリブデン化合物の非限定的な例としては、必ずしもこれらに限定されないが、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントゲン酸モリブデン、及び硫化モリブデン等、並びにそれらの混合物を挙げることができ、特にジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、アルキルキサントゲン酸モリブデン(molybdenum alkyl xanthate)、及びアルキルチオキサントゲン酸モリブデンの1つ又は複数を挙げることができる。代表的なアルキルキサントゲン酸モリブデン及びアルキルチオキサントゲン酸モリブデン化合物は、それぞれ、Mo(R25OCS2)4及びMo(R25SCS2)4の式を使用して表すことができ、式中、各R25は、独立して、一般に1~30個の炭素原子又は2~12個の炭素原子を有し、特に各々が2~12個の炭素原子を有するアルキル基である、アルキル、アリール、アラルキル、及びアルコキシアルキルからなる群から選択される有機基であってもよい。
【0047】
一部の実施形態では、油溶性又は油分散性有機モリブデン化合物は、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン等のジチオカルバミン酸モリブデンを含んでいてもよく、及び/又はジチスリン酸モリブデン(molybdenum dithiosphosphate)、特にジアルキルジチオリン酸モリブデンを実質的に含んでいなくともよい。一部の実施形態では、任意の油溶性又は油分散性モリブデン化合物は、組成物中のモリブデン原子の唯一の供給源(複数可)として、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン等のジチオカルバミン酸モリブデン、及び/又はジアルキルジチオリン酸モリブデン等のジチオリン酸モリブデンからなっていてもよい。実施形態のいずれの設定でも、存在する場合、油溶性又は油分散性モリブデン化合物は、トランスミッションフルード中のモリブデン原子の唯一の供給源として、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン等のジチオカルバミン酸モリブデンから本質的になっていてもよい。
【0048】
モリブデン化合物は、存在する場合、単核、二核、三核、又は四核であってもよく、特に二核及び/又は三核モリブデン化合物であるか又は含む。
好適な二核又は二量体ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンは、例えば、以下の式により表わすことができる。
【化16】
(式中、R
26~R
29は、各々独立して、1~24個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、又は芳香族ヒドロカルビル基を表していてもよく、X
1~X
4は、各々独立して、酸素原子又は硫黄原子を表していてもよい。4つのヒドロカルビル基R
26~R
29は、互いに同一であってもよく又は異なっていてもよい。)
【0049】
好適な三核有機モリブデン化合物としては、式:Mo3SkLnQzを有するもの及びそれらの混合物を挙げることができる。このような三核式では、3つのモリブデン原子が、複数の硫黄原子(S)に連結していてもよく、kは、4から7まで変化する。加えて、各Lは、化合物を油溶性又は油分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する、独立して選択される有機配位子であってもよく、nは1~4である。更に、zがゼロでない場合、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及び/又はエーテル等の中性電子供与化合物の群から選択することができ、zは、0~5の範囲であり、非化学量論(非整数)値を含む。
このような三核式では、典型的には、少なくとも21個の総炭素原子(例えば、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個)が、全ての配位子(Ln)の組合せに存在することができる。しかしながら、重要なことには、配位子の有機基は全体として、化合物を油中に可溶化又は分散化するのに十分な数の炭素原子を呈することができることが有利である。例えば、各配位子L内の炭素原子の数は、一般に、1~100、例えば1~30又は4~20の範囲であってもよい。
【0050】
式Mo
3S
kL
nQ
zを有する三核モリブデン化合物は、有利には、以下の構造の一方又は両方により表されるもの等の、アニオン性配位子に囲まれたカチオン性コアを呈していてもよい。
【化17】
このようなカチオン性コアは各々、+4の正味電荷を有していてもよい(例えば、Mo原子の酸化状態が各々+4であるため)。従って、こうしたコアを可溶化するためには、全ての配位子の総電荷は、この場合は-4に対応するべきである。4つのモノアニオン性配位子は、有利なコア中和を提供することができる。いかなる理論にも束縛されることは望まないが、2つ又はそれよりも多くの三核コアが、1つ又は複数の配位子と結合又は相互接続してもよく、配位子は多座性であってもよい。これには、単一コアに複数の接続を有する多座配位子の場合が含まれる。酸素及び/又はセレンを、コアのいずれかの硫黄原子の一部の部分の代わりに使用することができる。
【0051】
上記に記載の三核コアの配位子として、非限定的な例としては、必ずしもこれらに限定されないが、ジアルキルジチオホスフェート等のジチオホスフェート、アルキルキサンテート及び/又はアルキルチオキサンテート等のキサンテート、ジアルキルジチオカルバメート等のジチオカルバメート、及びそれらの組合せ、特に各々がジアルキルジチオカルバメートであるか又は含むものを挙げることができる。それに加えて又はその代わりに、三核モリブデン含有コアの配位子は、独立して、
【化18】
の1つ又は複数であってもよく、式中、X
5、X
6、X
7、及びYは、各々独立して酸素又は硫黄であり、Zは窒素又はホウ素であり、R
30、R
31、R
32、R
33、R
34、R
35、及びR
36は、各々独立して、水素、又は互いに同じであってもよく又は異なっていてもよく、特に同じであってもよいヒドロカルビル基等の有機(炭素含有)部分である。例示的な有機部分としては、アルキル(例えば、配位子の残りに付着している炭素原子が一級又は二級である)、アリール、置換アリール、アルカリル、置換アルカリル、アラルキル、置換アラルキル、エーテル、チオエーテル、又はそれらの組合せ若しくは反応生成物、特にアルキルが挙げられる。
【0052】
油溶性又は油分散性三核モリブデン化合物は、適切な液体(複数可)/溶媒(複数可)中で、(NH4)2Mo3S13・n(H2O)(式中、nは、非化学量論(非整数)値を含む、0~2の範囲である)等のモリブデン源を、テトラルキルチウラムジスルフィド(tetralkylthiuram disulfide)等の好適な配位子源と反応させることにより調製することができる。他の油溶性又は分散性三核モリブデン化合物は、(NH4)2Mo3S13・n(H2O)等のモリブデン源を、適切な溶媒(複数可)中で、テトラルキルチウラムジスルフィド、ジアルキルジチオカルバメート、又はジアルキルジチオホスフェート等の配位子源、及びシアン化物イオン、亜硫酸イオン、又は置換ホスフィン等の硫黄抽出剤と反応させている間に形成することができる。その代わりに、[M’]2[Mo3S7A6](式中、M’は対イオンであり、Aは、Cl、Br、又はI等のハロゲンである)等の三核モリブデン-硫黄ハロゲン化物塩を、適切な液体/溶媒(系)中で、ジアルキルジチオカルバメート又はジアルキルジチオホスフェート等の配位子源と反応させて、油溶性又は油分散性三核モリブデン化合物を形成してもよい。適切な液体/溶媒(系)は、例えば、水性であってもよく又は有機性であってもよい。
【0053】
他のモリブデン前駆体としては、酸性モリブデン化合物を挙げることができる。そのような化合物は、ASTM D-664又はD-2896滴定手順で測定される通り、塩基性窒素化合物と反応することができ、典型的には6価であってもよい。例としては、必ずしもこれらに限定されないが、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、及び他のアルカリ金属モリブデン酸塩、及び他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム(hydrogen sodium molybdate)、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン、又は類似の酸性モリブデン化合物、又はそれらの組合せを挙げることができる。従って、それに加えて又はその代わりに、本開示の組成物には、必要に応じて、例えば、米国特許第4,263,152号明細書、同第4,285,822号明細書、同第4,283,295号明細書、同第4,272,387号明細書、同第4,265,773号明細書、同第4,261,843号明細書、同第4,259,195号明細書、及び同第4,259,194号明細書、並びに/又は国際公開第94/06897号パンフレットに記載の通りの、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体により、モリブデンを提供することができる。
存在する場合、モリブデン含有化合物は、組成物の総質量に基づき、0.1~2.0質量%、0.1~1.5質量%、0.2%~1.2質量%、又は0.2質量%~0.8質量%の量で、トランスミッションフルード組成物に存在してもよい。それに加えて又はその代わりに、存在する場合、モリブデン含有化合物は、組成物の総質量に基づき、50~1000質量百万分率の、50~800ppm、100~650ppm、又は100~500ppmのモリブデンをトランスミッションフルード組成物に提供することができる。モリブデン含有量は、ASTM D5185に準じて測定することができる。
【0054】
亜鉛ベースのリン含有化合物
一部の実施形態では、添加剤パッケージ及び/又はトランスミッションフルード組成物は、1つ又は複数の亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物等の、1つ又は複数の亜鉛ベースのリン含有化合物を更に含んでいてもよい。そのような化合物は当技術分野で公知であり、ZDDPと呼ばれることが多い。他の実施形態では、添加剤パッケージ及び/又はトランスミッションフルード組成物は、亜鉛ベースのリン含有化合物を実質的に含んでいなくともよい。
ZDDP化合物は、まずジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、通常は1つ又は複数のアルコール又はフェノールをP2S5と反応させ、次いで形成されたDDPAを亜鉛化合物で中和すること等により、公知の手法に従って調製することができる。例えば、ジチオリン酸は、第一級及び第二級アルコールの混合物を反応させることにより製作することができる。その代わりに、ヒドロカルビル基が完全に第二級の特徴を示すか又はヒドロカルビル基が完全に第一級の特徴を示すジチオリン酸を調製することができる。亜鉛塩を製作するために、任意の塩基性又は中性亜鉛化合物を使用してもよいが、典型的には、酸化物、水酸化物、及び炭酸塩が使用される。市販の添加剤は、使用される場合、中和反応にて過剰の塩基性亜鉛化合物が使用されるため、多くの場合で過剰な亜鉛を含む場合がある。
【0055】
有利な亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、以下の式で表されるもの等、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であってもよく又は含んでいてもよい。
【化19】
式中、R
37及びR
38は、1~18個(例えば、2~12個又は2~8個)の炭素原子を含む同じ又は異なるヒドロカルビルラジカルであってもよく、ヒドロカルビルラジカルの例としては、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリル、及び脂環式ラジカルの1つ又は複数を挙げることができる。例示的なヒドロカルビルラジカルは、必ずしもこれらに限定されないが、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ベンジル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニル、及びそれらの組合せであってもよく又は含んでいてもよい。油溶性を得るために及び/又は維持するために、各ジヒドロカルビルジチオリン酸配位子(つまり、単一のR
37及びR
38対)にある炭素原子の総数は、一般に、少なくとも約5であってもい。従って、特に亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであってもよいか又は含んでいてもよい。
【0056】
必要に応じて、1つ又は複数のZDDP化合物は、組成物の総質量に基づき、0.4~5.0質量%、例えば、0.6~3.5質量%、1.0~3.0質量%、又は1.2~2.5質量%の量でトランスミッションフルード組成物中に存在してもよい。それに加えて又はその代わりに、存在する場合、ZDDP化合物は個々に、組成物の総質量に基づき、300~4000質量百万分率の、例えば、500~2500ppm、750~2000ppm、又は800~1600ppmのリンをトランスミッションフルード組成物に提供することができる。それに加えて又はその代わりに、存在する場合、ZDDP化合物は、組成物の総質量に基づき、400~4500質量百万分率の、例えば、500~3000ppm、800~2600ppm、又は1000~2200ppmの亜鉛を、トランスミッションフルード組成物に提供することができる。亜鉛及びリン含有量は、ASTMD5185に準じて測定することができる。
【0057】
他の添加剤
任意選択で、他の耐摩耗剤、極圧添加剤、及び粘度調整剤等の、当技術分野で公知の他の添加剤を、トランスミッションフルードに添加してもよい。それらは、典型的には、例えば、C.V.Smallheer及びR.Kennedy Smithによる「Lubricant Additives」、1967年、1~11頁に開示されている。
【0058】
トランスミッションフルード組成物
本明細書で言及されている通り、本開示によるトランスミッションフルード組成物は、有利には、多量の潤滑油ベースストック;並びに添加剤パッケージ等に、成分(i)、(ii)、(iii)、(iv)、並びに任意選択で腐食防止剤、1つ又は複数の酸化防止剤、及び1つ又は複数の摩擦調整剤等の共添加剤、並びに本明細書に列挙されている他のものを含む少量の添加剤の組合せを含んでいてもよい。そのようなトランスミッションフルード組成物は、有利には、トランスミッション等の車両ドライブトレイン部品の動作中の摩耗を制御及び/又は低減するのに、並びにフルード組成物がまた接触している部分的電気モータ又は完全電気モータの電気/電子部品を冷却及び/又は絶縁するのに有用であってもよい。そのため、本開示は、ハイブリッド電気モータ又は完全電気モータにより動力供給されるトランスミッションの摩耗を制御及び/又は低減し、同時にハイブリッド電動又は完全電動ドライブトレインの電気又は電子部品の少なくとも部分を冷却するための方法であって、トランスミッションを潤滑すること、及びドライブトレインの1つ又は複数の電気又は電子部品を、本開示によるトランスミッションフルード組成物と接触させることを含む方法も含む。更に、本開示は、本開示によるトランスミッションフルード組成物の使用、又はより具体的には、トランスミッションフルード組成物における、成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の組合せ、若しくは成分(iv)及び(v)の組合せ(任意選択で、成分(iii)を有するか若しくは有しない)のいずれかを含む添加剤パッケージの使用であって、トランスミッションフルード組成物により潤滑されるハイブリッド電動若しくは完全電動トランスミッションの摩耗を制御及び/若しくは低減し、同時にトランスミッションフルード組成物が接触するハイブリッド電動若しくは完全電動ドライブトレインの電気若しくは電子部品の少なくとも部分を冷却するための使用を更に提供する。
【0059】
トランスミッションフルード組成物は、少なくとも部分的に電動のエンジンの電気/電子部品と接触させて使用する際に、有利には、良好な/優れた体積抵抗率を呈することができる。本開示では、体積抵抗率は、(i)ASTM D2624-15に従って工場較正されているか、又は(ii)ASTM D1169-11(約80℃及び約500Vが指定されている)に概説されている手順に従って、オーストリア国ズルツのBaur GmbH社から商業的に入手可能であるBaur DTLC装置/リグと共に使用し、Toyota ATF WS自動トランスミッションフルード(ニュージャージー州アヴェネルのSansone Toyota社から商業的に入手可能である)を使用して約80℃で較正されたかのいずれかである、例えば、米国フロリダ州ベニスのEmcee Elicances,Inc.社から商業的に入手可能なEMCEEモデル1152導電率プローブを使用してなされた導電率測定から算出した。エンジンが低温/静止温度時よりも高い短絡事象リスクに曝されることになる動作温度をより厳密にシミュレートするために、約40℃又は約20℃ではなく約80℃の温度で導電率を測定し、従って抵抗率を算出した。平均体積抵抗率値を得るために、各試料で少なくとも2回又は3回の体積抵抗率測定を実施した。有利には、本開示によるトランスミッションフルード組成物は、約80℃で、少なくとも44.0MΩ・m(例えば、少なくとも44.5MΩ・m、少なくとも45.0MΩ・m、少なくとも45.5MΩ・m、少なくとも46.0MΩ・m、少なくとも46.5MΩ・m、少なくとも47.0MΩ・m、又は少なくとも47.5MΩ・m;特に、少なくとも46.0MΩ・m又は少なくとも47.0MΩ・m)、及び任意選択で、最大500MΩ・m(例えば、最大400MΩ・m、最大350MΩ・m、最大325MΩ・m、最大300MΩ・m、最大250MΩ・m、最大200MΩ・m、最大150MΩ・m、最大120MΩ・m、最大95.0MΩ・m、最大90.0MΩ・m、最大85.0MΩ・m、最大80.0MΩ・m、最大76.0MΩ・m、最大72.0MΩ・m、最大68.0MΩ・m、又は最大65.0MΩ・m;特に、最大350MΩ・m、最大325MΩ・m、最大95.0MΩ・m、最大72.0MΩ・m、又は最大65.0MΩ・m)の平均体積抵抗率(VR)を呈することができる。
【0060】
それに加えて又はその代わりに、トランスミッションフルード組成物は、有利には、潤滑剤として使用する場合、特に摩耗寿命のニードル軸受疲労試験(NBFT)により、良好な/優れた摩耗特性を呈することができる。NBFT寿命は種々の方法により得ることができるが、本開示では、実施例セクションで開示されている装置及び手順を、本明細書で考察されているNBFT寿命に使用した。有利には、本開示によるトランスミッションフルード組成物は、少なくとも13.0メガサイクル(例えば、少なくとも13.5メガサイクル、少なくとも14.0メガサイクル、少なくとも14.5メガサイクル、少なくとも15.0メガサイクル、少なくとも15.5メガサイクル、少なくとも16.0メガサイクル、少なくとも16.5メガサイクル、少なくとも17.0メガサイクル、少なくとも17.5メガサイクル、少なくとも18.0メガサイクル、少なくとも18.5メガサイクル、少なくとも19.0メガサイクル、少なくとも19.5メガサイクル、又は少なくとも20.0メガサイクル;特に、少なくとも13.5メガサイクル、少なくとも14.0メガサイクル、少なくとも17.0メガサイクル、又は少なくとも20.0メガサイクル)、及び任意選択で最大70.0メガサイクル(例えば、最大60.0メガサイクル、最大50.0メガサイクル、最大40.0メガサイクル、最大35.0メガサイクル、最大30.0メガサイクル、最大27.0メガサイクル、最大24.0メガサイクル、最大22.0メガサイクル、最大21.0メガサイクル、又は最大20.0メガサイクル;特に、最大50.0メガサイクル、最大30.0メガサイクル、最大24.0メガサイクル、又は最大22.0メガサイクル)の平均ニードル軸受疲労(NBFT)寿命を呈することができる。
【0061】
有利には、本開示のトランスミッションフルード組成物はいずれも、ASTM D445により測定して、最大10cSt(例えば、最大8.0cSt、最大7.0cSt、最大6.5cSt、最大6.0cSt、最大5.5cSt、最大5.0cSt、最大4.5cSt、最大4.0cSt、最大3.5cSt、最大3.0cSt、最大2.5cSt、最大2.0、1.0cSt~10cSt、1.0cSt~8.0cSt、1.0cSt~7.0cSt、1.0cSt~6.5cSt、1.0cSt~6.0cSt、1.0cSt~5.5cSt、1.0cSt~5.0cSt、1.0cSt~4.5cSt、1.0cSt~4.0cSt、1.0cSt~3.5cSt、1.0cSt~3.0cSt、1.0cSt~2.5cSt、1.0cSt~2.0cSt、1.5cSt~10cSt、1.5cSt~8.0cSt、1.5cSt~7.0cSt、1.5cSt~6.5cSt、1.5cSt~6.0cSt、1.5cSt~5.5cSt、1.5cSt~5.0cSt、1.5cSt~4.5cSt、1.5cSt~4.0cSt、1.5cSt~3.5cSt、1.5cSt~3.0cSt、1.5cSt~2.5cSt、2.0cSt~10cSt、2.0cSt~8.0cSt、2.0cSt~7.0cSt、2.0cSt~6.5cSt、2.0cSt~6.0cSt、2.0cSt~5.5cSt、2.0cSt~5.0cSt、2.0cSt~4.5cSt、2.0cSt~4.0cSt、2.0cSt~3.5cSt、2.0cSt~3.0cSt、2.0cSt~2.5cSt、2.5cSt~10cSt、2.5cSt~8.0cSt、2.5cSt~7.0cSt、2.5cSt~6.5cSt、2.5cSt~6.0cSt、2.5cSt~5.5cSt、2.5cSt~5.0cSt、2.5cSt~4.5cSt、2.5cSt~4.0cSt、2.5cSt~3.5cSt、2.5cSt~3.0cSt、3.0cSt~10cSt、3.0cSt~8.0cSt、3.0cSt~7.0cSt、3.0cSt~6.5cSt、3.0cSt~6.0cSt、3.0cSt~5.5cSt、3.0cSt~5.0cSt、3.0cSt~4.5cSt、3.0cSt~4.0cSt、3.0cSt~3.5cSt、3.5cSt~10cSt、3.5cSt~8.0cSt、3.5cSt~7.0cSt、3.5cSt~6.5cSt、3.5cSt~6.0cSt、3.5cSt~5.5cSt、3.5cSt~5.0cSt、3.5cSt~4.5cSt、3.5cSt~4.0cSt、4.0cSt~10cSt、4.0cSt~8.0cSt、4.0cSt~7.0cSt、4.0cSt~6.5cSt、4.0cSt~6.0cSt、4.0cSt~5.5cSt、4.0cSt~5.0cSt、又は4.0cSt~4.5cSt)、特に1.0cSt~10cSt、2.0cSt~8.0cSt、1.5cSt~3.5cSt、又は2.5cSt~5.0cStの100℃動粘度(KV100)を呈することができる。
【0062】
代替的配合物
一部の実施形態では、成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の特定の組合せの代わりに、成分(iv)及び(v)の組合せ(例えば、成分(i)及び(ii)が両方とも実質的に存在しない)が、その代わりに摩耗保護及び体積抵抗率の組合せを提供することができる。そのような代替的な実施形態は、任意選択で、成分(iii)のサリチル酸カルシウム界面活性剤を実質的に含んでいなくともよく(例えば、意図的に添加されていなくともよく)、追加の窒素含有無灰分散剤(例えば、構造(IV)を有する)を実質的に含んでいなくともよく(例えば、意図的に添加されていなくともよく)、又はその両方であってもよい。成分(iii)のサリチル酸カルシウム界面活性剤を実質的に含まない一部のそのような実施形態では、代替的な配合物は、任意選択で、サリチル酸マグネシウム界面活性剤を実質的に含んでいなくともよく(例えば、意図的に添加されていなくともよく)、スルホン酸カルシウム及び/又はマグネシウム界面活性剤を実質的に含んでいなくともよく(例えば、意図的に添加されていなくともよく)、カルシウム及び/又はマグネシウムフェネート界面活性剤を実質的に含んでなくともよく(例えば、意図的に添加されていなくともよく)、及びそれらの組合せを含んでなくともよい(一部の場合では、いかなる種類の界面活性剤も実質的に含まない(例えば、意図的に添加されていない))。
【0063】
成分(v)は、有利には、構造HP(=O)-(OR39)2を有する1つ又は複数のジヒドロカルビル水素ホスフィット(dihydrocarbyl hydrogen phosphite)化合物を含んでいてもよく、構造HP(=O)-(OR39)2は、構造HO-P-(OR39)2と平衡状態にあってもよく、式中、各R39は、独立して、チオエーテル連結を含まず(つまり、アルキル鎖の少なくとも一部がチオエーテル連結により中断されている成分(i)のリン含有構造(I)とは異なる)12~24個の炭素原子を有する、直鎖、分岐、及び/又は環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカジエニル、及び/又はアルカトリエニル基であってもよく又は含んでいてもよい。例えば、各R39アルキル部分は、同じであってもよく又は異なっていてもよく、各々独立して、14~22個の炭素原子(16~18個の炭素原子等)を有する直鎖及び/又は分岐アルキル及び/又はアルケニル基を含んでいてもよい。
【0064】
特に、存在する場合、成分(v)のジヒドロカルビル水素ホスフィット化合物は、全体として、組成物の総質量に基づき0.05~2.0質量%、例えば、0.1~1.4質量%、0.2~1.0質量%、又は0.25~0.8質量%の量でトランスミッションフルード組成物に存在してもよい。それに加えて又はその代わりに、特に、構造(v)のジヒドロカルビル水素ホスフィット化合物は、存在する場合、全体として、組成物の総質量に基づき35~2200質量百万分率の、例えば、50~2000ppm、100~1000ppm、又は300~750ppmのリンをトランスミッションフルード組成物に提供することができる。リン含有量は、ASTM D5185に準じて測定することができる。
成分(iv)及び(v)の組合せを含むそのような代替的な配合物は、有利には、成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の組合せを含む本明細書に記載の配合物と同様の平均体積抵抗特性及び/又は平均ニードル軸受疲労(NBFT)寿命特性を呈することができる。
【0065】
追加の実施形態
それに加えて又はその代わりに、本開示は、以下の実施形態の1つ又は複数を含んでいてもよい。
実施形態1. 多量の潤滑油ベースストック;並びに(i)構造(I):
【化20】
(式中、基R
1、R
2、及びR
3は、独立して、1~18個の炭素原子を有するアルキル基、又はアルキル鎖がチオエーテル連結により中断された1~18個の炭素原子を有するアルキル基であり、但し、混合物(i)において、基R
1、R
2、及びR
3の少なくとも一部は、アルキル鎖がチオエーテル連結により中断された1~18個の炭素原子を有するアルキル基である)の2つ又はそれよりも多くの化合物を含む混合物、(ii)構造(II):
【化21】
(式中、基R
4及びR
7は、独立して、1~12個の炭素原子を有するアルキル基であり、基R
5及びR
6は、独立して、2~12個の炭素原子を有するアルキル連結である)の1つ又は複数の化合物、(iii)サリチル酸カルシウムを含む界面活性剤、及び(iv)構造(III):
【化22】
(式中、R
8及びR
9は、各々独立して、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-オクタデセン、又はそれらの混合物を含む(特に、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、又はそれらの混合物から本質的になる)α-オレフィン供給材料のメタロセン触媒重合により製作される炭化水素基であり、各R
10は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
10との反応により形成される部分(特に、水素又はアシル部分)であり、xは、1~10であり(特に、3~10であり)、構造(III)の全ての分子で同じであるか、又は構造(III)の分子の混合物中の構造(III)の全ての分子の平均である)の1つ又は複数の化合物を含む塩基性窒素含有無灰分散物を含む少量の添加剤パッケージを含むトランスミッションフルード組成物。
【0066】
実施形態2. 成分(i)及び成分(ii)の化合物は各々、組成物の総質量に基づき0.05~0.5質量%の量で、及び/又は2:1~1:2の質量比で、組成物中に存在する、実施形態1に記載のトランスミッションフルード組成物。
実施形態3. 成分(iii)は、組成物の総質量に基づき0.05~0.7質量%の量で組成物中に存在し、及び/又は組成物の総質量に基づき45~450質量百万分率(ppm)のカルシウムを組成物に提供する、実施形態1又は実施形態2に記載のトランスミッションフルード組成物。
実施形態4. 成分(iii)は、意図的に添加されたフェネート界面活性剤成分を含まず、及び/又は意図的に添加されたスルホン酸塩界面活性剤成分を含まない、実施形態1~3のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物。
実施形態5. 成分(iv)は、組成物の総質量に基づき0.75~5.0質量%の量で組成物中に存在し、及び/又は成分(iv)の無灰分散剤のR8及びR9部分は、各々独立して、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される300~20000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物。
【0067】
実施形態6. 構造(IV)の追加の塩基性窒素含有無灰分散剤を更に含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物。
【化23】
(式中、
R
11及びR
12は、各々独立して、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される500~5000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するヒドロカルビル基であり、
各R
13は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
13との反応により形成される部分であり、
yは、3~10であり、構造(IV)の全ての分子で同じであるか、又は構造(IV)の分子の混合物中の構造(IV)の全ての分子の平均である。)
実施形態7. R
11及びR
12は、各々独立して、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される750~2500ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するポリイソブテニル基であり、
各R
13は、独立して水素又はアセチル部分である
実施形態6に記載のトランスミッションフルード組成物。
【0068】
実施形態8. 成分(iv)以外の他の塩基性窒素含有無灰分散剤を実質的に更に含まない、実施形態1~5のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物。
実施形態9. 組成物の総質量に基づき100質量百万分率(ppm)未満のホウ素を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物。
実施形態10. 潤滑油ベースストックは、群IIIベースストック、群IVベースストック、又はそれらの組合せを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物。
実施形態11. 置換チアジアゾール、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、腐食防止剤、及び以下の構造を有する摩擦調整剤を更に含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物。
【化24】
(式中、R
18及びR
19の各々は、独立して
【化25】
であり、x+yは8~15であり、zは1~5の整数であり、各R
20は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
20との反応により形成される部分である。)
【0069】
実施形態12. 潤滑油ベースストックは、ASTM D445に従って測定して1.5cSt~8.1cStの100℃動粘度(KV100)を呈し、組成物は、ASTM D445に従って測定して2cSt~6.5cStのKV100を呈し、組成物は、約80℃で少なくとも46.0MΩ・mの平均体積抵抗率を呈し、組成物は、少なくとも13.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命を呈する、実施形態1~11のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物。
実施形態13. 約80℃で少なくとも47.0MΩ・mの平均体積抵抗率及び少なくとも14.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命;約80℃で最大95.0MΩ・mの平均体積抵抗率及び最大30.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命;約80℃で最大72.0MΩ・mの平均体積抵抗率及び最大25.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命の1つ又は複数を呈する、実施形態1~12のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物。
【0070】
実施形態14. 群IIIベースストック、群IVベースストック、又はそれらの組合せを含むもの等の多量の潤滑油ベースストック;並びに(iv)構造(III):
【化26】
(式中、R
8及びR
9は、各々独立して、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-オクタデセン、又はそれらの混合物を含み(特に、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、又はそれらの混合物から本質的になる)を含むα-オレフィン供給材料のメタロセン触媒重合により製作される炭化水素基であり、各R
10は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
10との反応により形成される部分(特に、水素又はアシル部分)であり、xは、1~10であり(特に、3~10であり)、構造(III)の全ての分子で同じであるか、又は構造(III)の分子の混合物中の構造(III)の全ての分子の平均である)の1つ又は複数の化合物を含む塩基性窒素含有無灰分散剤、並びに(v)構造H-P(=O)-(OR
39)
2(式中、各R
39は、独立して12~24個の炭素原子(例えば、14~22個の炭素原子又は16~18個の炭素原子)を有するアルキル基であるか又は含む)を有する1つ又は複数のジヒドロカルビル水素ホスフィット化合物を含む少量の添加剤パッケージを含むトランスミッションフルード組成物。
【0071】
実施形態15. 意図的に添加された成分(i)及び(ii)を含まないこと;意図的に添加された成分(iii)を実質的に含まないこと;成分(iv)以外の他の塩基性窒素含有無灰分散剤を実質的に含まないこと;及び組成物の総質量に基づき50質量百万分率(ppm)未満のホウ素を含むことの1つ又は複数を更に含む、実施形態14に記載のトランスミッションフルード組成物。
実施形態16. 置換チアジアゾール、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、腐食防止剤、及びその少なくとも1つが以下の構造を有する少なくとも2つの摩擦調整剤を更に含む、実施形態14又は実施形態15に記載のトランスミッションフルード組成物。
【化27】
(式中、R
18及びR
19の各々は、独立して、
【化28】
であり、x+yは8~15であり、zは1~5の整数であり、各R
20は、独立して、水素、アセチル部分、又は炭酸エチレンと>N-R
20との反応により形成される部分である。)
【0072】
実施形態17. 潤滑油ベースストックは、ASTM D445に従って測定して1.5cSt~3.3cStの100℃動粘度(KV100)を呈し、組成物は、ASTM D445に従って測定して9.1cSt~11.4cStのKV40を呈し、組成物は、約80℃で少なくとも46.0MΩ・mの平均体積抵抗率を呈し、組成物は、約80℃で最大350MΩ・mの平均体積抵抗率を呈し、組成物は、少なくとも14.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命を呈し、任意選択で、組成物は、最大22.0メガサイクルの平均ニードル軸受疲労寿命を呈する、実施形態14~16のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物。
実施形態18. 成分(iv)は、組成物の総質量に基づき0.75~5.0質量%の量で組成物中に存在し、及び/又は成分(iv)の無灰分散剤のR8及びR9部分は、各々独立して、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される300~20000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する、実施形態14~17のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物。
実施形態19. ハイブリッド電気モータ又は完全電気モータにより動力供給されるトランスミッションの摩耗を制御又は低減し、同時にハイブリッド電動又は完全電動ドライブトレインの電気又は電子部品の少なくとも部分を冷却するための方法であって、トランスミッションを潤滑すること、及びドライブトレインの1つ又は複数の電気又は電子部品を、実施形態1~18のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物と接触させることを含む方法。
実施形態20. 実施形態1~18のいずれか1つに記載のトランスミッションフルード組成物の使用であって、組成物により潤滑されるハイブリッド電動又は完全電動トランスミッションの摩耗を制御又は低減し、同時に組成物が接触するハイブリッド電動又は完全電動ドライブトレインの電気又は電子部品の少なくとも部分を冷却するための使用。
【0073】
以下では、本発明を、単なる非限定的な例により説明するものとする。
【実施例0074】
以下の成分を、本開示並びにある特定の比較例に従ってトランスミッションフルード組成物を形成するために使用した。
以下の成分(i)化合物は、本開示によるトランスミッションフルード組成物中の構造(I)内に当てはまる化合物の総質量の少なくとも3.0質量%を占めていた。
【化29】
成分(i)内に入る少なくとも3(三)つの他の化合物が存在したが、トランスミッションフルード組成物中の構造(I)内に当てはまる化合物の総質量の3.0質量%未満だった。化合物(a)及び(c)、つまりアルキル鎖がチオエーテル連結により中断されたアルキル基を含む化合物は、全体として、全ての成分(i)構造(I)化合物の40質量%よりも多く(例えば、45%よりも多く)を占めていた。
【0075】
以下の成分(ii)化合物は、本開示によるトランスミッションフルード組成物中の構造(II)内に当てはまる化合物の総質量の少なくとも3.0質量%を占めていた。
C
8H
17-S-C
2H
4-O-C
4H
9(e);及びC
8H
17-S-C
2H
4-O-C
2H
4-S-C
8H
17(f)
成分(i)内に入る少なくとも2(二)つ他の化合物が存在したが、トランスミッションフルード組成物中の構造(II)内に当てはまる化合物の総質量の3.0質量%未満だった。
成分(iii)は、過塩基性アルキル置換サリチル酸カルシウム界面活性剤だったが、本明細書のある特定の比較例は、成分(iii)のサリチル酸塩界面活性剤の代わりに過塩基性スルホン酸カルシウムを用いて配合した。
成分(iv)は、構造(III)を有する、mPAO末端キャップポリ(アルキレンアミン)スクシンイミドベースの無灰分散剤だった。
【化30】
(式中、R
8及びR
9は、各々独立して、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、又はそれらの混合物から本質的になるα-オレフィン供給材料のメタロセン触媒重合により製作される炭化水素基であり、各R
10は独立して水素であり、xは、3~10であり、構造(III)の全ての分子で同じであるか、又は構造(III)の分子の混合物中の構造(III)の全ての分子の平均である。)R
8及びR
9は、独立して、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される500~2500ダルトンの数平均分子量を有していた。
【0076】
成分(i)の化合物の混合物は、亜リン酸ジブチル(約194グラム、約2モル)を、還流冷却器、撹拌子、及び窒素バブラーを備えた丸底4つ口フラスコに入れることにより調製することができる。次いで、フラスコを窒素でフラッシュし、密閉して、撹拌器を始動させることができる。次いで、亜リン酸ジブチルを減圧下で約150℃に加熱し、温度を維持しながら、ヒドロキシエチルn-オクチルスルフィド(約280グラム、約2モル)を、約1時間等の期間にわたって添加することができる。ヒドロキシエチルn-オクチルスルフィドの添加後、ブチルアルコールがもはや発生しなくなるまで加熱を続けることができる。次いで、反応混合物を冷却して、混合生成物を得ることができる。
【0077】
成分(ii)の化合物の混合物は、ヒドロキシエチルn-オクチルスルフィド(約190グラム、約1モル)及びn-ブチルアルコール(約74グラム、約1モル)を、塔頂受槽、撹拌子、及び窒素バブラーを備えた丸底4つ口フラスコ中で一緒にすることにより調製することができる。次いで、触媒量の好適な酸触媒(例えば、リン含有酸)を添加することができる。次いで、フラスコを窒素でフラッシュし、密閉して、撹拌器を始動させることができる。次いで、反応混合物を、ほぼ大気圧で約150℃に加熱し、約0.5モルの水(約9グラム)を受槽に収集することができるまでその状態を維持することができる。次いで、反応混合物を冷却して、生成物を得ることができる。
【0078】
下記の表1~2には、調製したトランスミッションフルード組成物の一部の詳細が示されている。成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の量は質量%で表されており、リン、ホウ素、及びカルシウム含有量は全て、組成物の質量に基づき、質量百万分率で表されている。「他の添加剤」は、トランスミッションフルード添加剤パッケージに典型的に見出される共添加剤の組合せだった。「他の添加剤」としては、これらに限定されないが、チアジアゾール、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、腐食防止剤、摩擦調整剤、及びベースストック油希釈剤が挙げられた。各例で使用された「他の添加剤」の量のあらゆる変動は、他の成分の量とバランスを取るためであり、ベースストック油希釈剤の量の違いのみによるものだった。本明細書では、成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)、並びに他の添加剤は、総称して添加剤パッケージと呼ばれる。添加剤パッケージ中の活性(非希釈)成分は全て、各例でほぼ同じ濃度で使用した。例示的なトランスミッションフルード組成物を形成するために各添加剤パッケージ試料をそれで希釈したベースストック油希釈剤は、約2.7cSt(mm
2/秒)~約8.1cStのKV100を呈する群IVベースストック(又は全体として群IVベースストックの混合物)だった。
【表1】
1示されている量は、成分としてであり、約25~55質量%の希釈剤を含む。
*行われた2~3回の測定の平均
【表2】
1示されている量は、成分としてであり、約25~55質量%の希釈剤を含む。
2ホウ酸化
*行われた2~3回の測定の平均
【0079】
比較例1及び3は、ホウ酸化PIB-PAM-PIB分散剤が、それぞれ、耐摩耗成分(i)及び(ii)、並びにサリチル酸カルシウム界面活性剤又はスルホン酸カルシウム界面活性剤と対になっているトランスミッションフルード配合物を表す。比較例2は、ホウ酸化及び未ホウ酸化(unborated)PIB-PAM-PIB分散剤の混合物を含むことを除いて、比較例1と同様に、サリチル酸カルシウム界面活性剤に基づく。比較例4は、ホウ酸化PIB-PAM-PIB及び未ホウ酸化mPAO-PAM-mPAO分散剤の混合物を含むことを除いて、比較例3と同様に、スルホン酸カルシウム界面活性剤に基づく。しかしながら、実施例5は、耐摩耗成分(i)及び(ii)の両方、並びに未ホウ酸化mPAO-PAM-mPAO及びホウ酸化PIB-PAM-PIB分散剤の混合物を含む、比較例4のサリチル酸カルシウム界面活性剤含有類似物を表す。実施例6A及び6Bは、両方とも未ホウ酸化mPAO-PAM-mPAOのみを含み、PIB-PAM-PIB分散剤を含まないことを除き、実施例5と同様である。実施例6Aと6Bとの違いは、異なる完全配合KV100値を達成するために、異なるKV100値を有する希釈剤の混合物を添加したことである。実施例7A及び7Bは、mPAO-PAM-mPAO分散剤がホウ酸化されており、耐摩耗成分(i)及び(ii)と予混合されていたことを除いて、それぞれ実施例6A及び6Bと類似する。それぞれ比較例及び実施例で使用したmPAO-PAM-mPAO及びPIB-PAM-PIB分散剤の両方のmPAO及びPIBアーム/末端キャップの各々は、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される750~2500ダルトンの数平均分子量を有していた。加えて、それぞれ比較例及び実施例で使用したmPAO-PAM-mPAO及びPIB-PAM-PIB分散剤の両方内の各PAMコネクタは、3~10の平均x(ポリアルキレンアミン反復単位値)を呈した。
【0080】
表1~2の各添加剤パッケージ/完全配合組成物のKV100を特徴付け、完全配合組成物を、フロリダ州(米国)ベニスのEmcee Electronics,Inc.社から商業的に入手可能であるEmceeモデル1152-0007導電率プローブを使用して体積抵抗率(体積導電率の逆数)について試験した。約15~25mLの試料が入った試験管を、ホットプレートを使用して約80℃に加熱された、温度プローブが油浴に沈油されているシリコーン油浴(約2Lビーカー)に沈油した。試験前に、全ての試料をデシケーターで少なくとも72時間脱気した。磁気撹拌器を使用して、シリコーン油浴を約300~約600rpmで撹拌し、測定を行う前に、少なくとも30分間高温で平衡化させた。硫化水素検出器を試験管上方に配置して、試料の著しい劣化が生じていないことを確認した。精度を確認するために、各試料に対して少なくとも2回の測定を少なくとも2分間の測定間隔で行った。
【0081】
表1~2から、成分(i)、(ii)、(iii)、(iii)、及び(iv)の組合せでさえ、有益な約80℃体積抵抗率値(つまり、特定の閾値を上回る)は元々備わっているものではないことが明らかである。例えば、実施例1(本開示による4つの成分を全て含む)は、優れた摩耗性能を呈したことに留意されたい。成分(iv)を一切有していない比較例1~3の平均VR値は、一様に44.0MΩ・m未満であり、46.0MΩ・m以上のVR測定は1つもなかった。スルホン酸カルシウム界面活性剤及び約30質量%の成分(iii)の分散剤混合物及び残余のPIBSA-PAM分散剤を有する比較例4の平均VR値も、44.0MΩ・m未満であり、46.0MΩ・m以上のVR測定値は1つもないが、サリチル酸カルシウム界面活性剤成分(iii)を有する同じ分散剤混合物を含む実施例5は、顕著により高い平均VRを示している。サリチル酸カルシウム界面活性剤成分(iii)及びmPAOSA-PAM分散剤成分(iv)単独を含むが、PIBSA-PAM分散剤を含まない実施例6A及び6Bは両方とも、比較例の閾値を上回る平均VR値を示している。実施例7A及び7Bは、実施例6A及び6Bと同じカテゴリーの成分を含むにも関わらず、比較例の閾値を下回る平均VR値を示している。実施例6と実施例7との間の主な(しかしながら唯一ではないことに留意されたい)違いは、分散剤のホウ酸化(boration)であるが、これらを対照させると、成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の全てを潤滑剤組成物に含めることだけで、比較閾値を上回る平均VRが本来的に生み出されることはないことが示される。
【0082】
下記の表3~4には、調製したトランスミッションフルード組成物の一部の詳細が示されている。成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の量は質量%で表されており、リン、ホウ素、及びカルシウム含有量は全て、組成物の質量に基づき、質量百万分率で表されている。「他の添加剤」は、トランスミッションフルード添加剤パッケージに典型的に見出される共添加剤の組合せだった。「他の添加剤」としては、これらに限定されないが、チアジアゾール、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、腐食防止剤、少なくとも1つの摩擦調整剤、及びベースストック油希釈剤が挙げられた。各例で使用した「他の添加剤」の量のあらゆる変動は、他の成分の量とバランスを取るためであり、ベースストック油希釈剤の量の違いのみによるものだった。本明細書では、成分(i)、(ii)、(iii)、(iv)、及び(v)、並びに他の添加剤は、総称して添加剤パッケージと呼ばれる。添加剤パッケージ中のチアジアゾール及び酸化防止剤成分の濃度は、全ての例にわたって同様に維持したが、腐食防止剤(複数可)、摩擦調整剤(複数可)、及びベースストック(複数可)/希釈剤(複数可)の合計濃度は、場合により(一様にではない)試料間で変化させた。しかしながら、表3~4の全ての実施例及び比較例の場合、完全配合組成物には、各添加剤パッケージを同じ処理率(同じ希釈率)で使用した。例示的なトランスミッションフルード組成物を形成するために各添加剤パッケージ試料をそれで希釈したベースストック油希釈剤は、ベースストック(複数可)が約2.7cSt~約8.1cStのKV100を呈した(比較例1~4及び実施例5~7と同様に)比較例18を除いて、約1.5cSt~約3.3cStのKV100を呈する群III又は群IVベースストック(又は全体として群III及び/又は群IVベースストックの混合物)だった。
【表3】
1示されている量は、成分としてであり、約25~55質量%の希釈剤を含む。
*1つのデータポイントのみ;^2つのデータポイントのみの平均
【表4】
1示されている量は、成分としてであり、約25~55質量%の希釈剤を含む。
【0083】
比較例8及び9は、それぞれ異なる量のホウ酸化PIB-PAM-PIB分散剤が耐摩耗成分(i)及び(ii)と対になっているが、mPAO-PAM-mPAO分散剤成分(iv)を有しておらず、サリチル酸カルシウム界面活性剤成分(iii)を有していない(実際に界面活性剤を一切有していない)トランスミッションフルードである。それらは、上記の比較例1~3のより低粘度の類似物としての役目を果たす。実施例10、11、及び15は、耐摩耗成分(i)及び(ii)を有するが、サリチル酸カルシウム界面活性剤成分(iii)を有していない、ホウ酸化PIB-PAM-PIB及び未ホウ酸化mPAO-PAM-mPAO(成分(iv))の分散剤混合物を示す。実施例11及び15は、同じ基本量の同じ成分であるが、異なる成分プレブレンドを使用して混合したものを含む。実施例12及び17は、耐摩耗成分(i)及び(ii)並びにサリチル酸カルシウム界面活性剤成分(iii)をいずれも有していない(実際に、界面活性剤を一切有していない)、未ホウ酸化mPAO-PAM-mPAO分散剤成分(iv)及び亜リン酸ジヒドロカルビル成分(v)の混合物を示す。実施例13、14、及び16は、おおよそであり、必ずしも厳密ではないが、実施例10、11、及び15のサリチル酸カルシウム成分(iii)界面活性剤含有類似物であり、耐摩耗成分(i)及び(ii)の両方、並びに未ホウ酸化mPAO-PAM-mPAO分散剤成分(iv)及びホウ酸化PIB-PAM-PIB分散剤の混合物を含む。それぞれ比較例及び実施例で使用したmPAO-PAM-mPAO及びPIB-PAM-PIB分散剤の両方のmPAO及びPIBアーム/末端キャップの各々は、線状ポリスチレン標準物質を参照してGPCにより決定される750~2500ダルトンの数平均分子量を有していた。加えて、それぞれ比較例及び実施例で使用したmPAO-PAM-mPAO及びPIB-PAM-PIB分散剤の両方内の各PAMコネクタは、3~10の平均x(ポリアルキレンアミン反復単位値)を呈した。
【0084】
表3~4の各添加剤パッケージ/完全配合組成物のKV40を特徴付け、オーストリア国ズルツのBaur GmbH社から商業的に入手可能なBaur DTLC装置/リグを使用し、ASTM D1169-11(約80℃及び約500Vが指定されている)に概説されている手順に従って完全配合組成物の体積抵抗率(体積伝導率の逆数)を試験した。
【0085】
表3~4の各添加剤パッケージ/完全配合組成物についても、ニードル軸受疲労(NBFT)寿命を試験した。NBFT寿命は、種々の方法を使用して分析することができる。本明細書では、イリノイ州シュガーグローブ(米国)のFalex社から商業的に入手可能なFalex4ボールE/P摩耗試験機を、比較的少体積(約50mL)の試料がベアリングを摩耗からどの程度保護するかを試験するように構成した。この構成の試験機では、30個のローラーベアリング(あたかも時計文字盤の数字周りのように軸方向に配向されている)を保持することが可能なベアリング(つまり、NSK部品番号AXK1105)を、5つのベアリング毎に2つを取り外し、3つのベアリングを連続して配座させ、その後の次の2つのベアリングスロットを空にし、それを6回繰り返し(連続する3つのベアリングは、時計文字盤の偶数の位置、つまり略12、2、4、6、8、及び10時の位置に配向され、空のベアリングスロットは、同じ時計文字盤の奇数の位置、つまりそれぞれ略1、3、5、7、9、及び11時の位置に配向される)、18個のベアリングが存在し、12個のベアリングスロットが空のままであるように改変した。この改変ベアリングは、それぞれ上部ベアリングレースと下部ベアリングレース(つまり、NTN部品番号WS81105及びNSK部品番号FTRE-2542)の間に配置されており、試料温度を検証するための熱電対、及び摩耗試験機リグの回転シャフトに取り付けるためのアダプターを含み、加熱手段を使用して試料温度を制御することができる試験カップに収容されている。ニードル軸受疲労試験では、試料組成物により潤滑されるベアリングアセンブリに荷重が加えられている間、試験機のシャフトは約2100rpmで回転する。試験の最初の約26分間は、約588Nの荷重を加え、次の約4分間は、荷重を約2940Nへと増加させ、合計で約30分後、試験の残り期間にわたって荷重を更に約8820Nへと増加させる。試験の最初の約30分間(比較的低い荷重が加えられる期間)は、「慣らし」期間とみなされる。この試験では、試験はほぼ室温(約20~25℃)から始まるが、目標温度は名目で約120℃である。アダプター内の加熱手段は、ある程度の熱を提供するが、目標温度が厳密に達成される必要はなく、典型的には、荷重を約8820Nに増加させる前に少なくとも約100℃の温度が達成される。必要に応じて、試験中(しかしながら、典型的には慣らし期間後のみ)、ベアリング熱電対温度が、非常に長期間にわたって約120℃をオーバーシュート/超過しないように、外部空気流を導入して摩擦熱を打ち消してもよい。試験は、振動閾値に達した場合にのみ終了させる。振動振幅基線は、慣らし期間の約45分後(つまり、試験を始めた約75分後)に約1Hz~約10kHzの範囲の周波数で確立される。約176~654Hz、約1367~1426Hz、及び約4.492~4.795kHzの周波数を除いて、残りの周波数の振動をモニターする。ほとんど全ての他の周波数では、その周波数において基線を少なくとも250%上回る振動が検出された場合、試験を終了させる(つまり、振動振幅は、基線振幅を約250%超過する場合、基線振幅の約3.5倍、つまり約350%である)。しかしながら、約2.3kHz~約2.4kHz(約2305Hz~約2402Hz)の振動周波数の場合、その周波数において基線を少なくとも125%上回る振動が検出された場合にのみ試験を終了させる(つまり、振動振幅は、基線振幅を約125%超過した場合、基線振幅の約2.25倍、つまり約225%である)。こうした振動は、摩耗(例えば、点食)を示すと考えられる。試験が終了したら、ベアリング及びそのアセンブリを取り外し、点食の形跡がないか視覚的に検査する(多くの場合、拡大して)。目視検査で点食の形跡が全くない場合、終了が時期尚早であった可能性があり、その試験を除外してもよい。典型的には、ニードル軸受疲労(NBFT)寿命は、4~7回の測定の平均であるが、より多くの又はより少ない測定を使用してもよい。ベアリング部品の寸法及び形状、並びに1時間当たりのサイクル数を評価するためのシャフト回転速度、並びに潤滑ベアリングが完全荷重に供される試験時間(つまり、時間単位での、慣らし後の試験時間、又は最初の30分間の慣らし期間を差し引いた合計試験時間)使用して、NBFT寿命をメガサイクル(本明細書では、「Mcyc」と略記される)で算出することができる。
【0086】
表3~4から、組成物が、成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の全ての組合せを含む場合であっても、有益な約80℃体積抵抗率値(つまり、特定の閾値を上回る)も有益なニードル軸受疲労寿命値も(従ってそれらの組合せも)元々備わっているものではないことが明らかである。例えば、実際に実施例12及び17に示されている通り、成分(i)、(ii)、及び(iii)をいずれも有していない成分(iv)及び(v)の組合せでさえ、比較例18の閾値を上回る非常に有益なVR値をもたらしたが、比較例18の閾値を上回る有益なNBFT寿命は、明らかに元々備わっているものではなかった(つまり、実施例17では生じたが、実施例12では生じなかった)。このように、様々な成分の組合せは、一様に44.0MΩ・m以上のVR値(例えば、46.0MΩ・m以上のVR測定値が1つもない)及び13.0Mcyc以上(又は14.0Mcyc以上)の平均NBFT寿命値の同時組合せをもたらす場合もあり、又はもたらさない場合もある。更に注目に値するのは、比較例8及び9は、比較例18の閾値を下回る平均VR値、及び上記閾値を上回るNBFT寿命値を示すことである。これは、実施例10及び13でも同じである。しかしながら、全く逆に、実施例11及び12は、比較例18の閾値を上回る平均VR値及び上記閾値を下回るNBFT寿命値を示している。実施例14~17のみが、上記閾値を上回る平均VR値及びNBFT寿命値の両方を達成している。実施例14及び16は、成分(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)を全て含むが、実施例15は、成分(i)、(ii)、及び(iv)のみを含み(成分(iii)も含まず、実際に一切のあらゆる界面活性剤も実質的に含まない)、実施例17は、成分(iv)及び(v)のみを含む(成分(i)、(ii)、及び(iii)を実質的に含まず、実際にPIBベースの分散剤を実質的に含まない)。このデータから探り出される考え得る解釈は他にも多数存在するが、成分と特性との間の、特に本明細書で考察されているようなVRとNBFT寿命との間の相関性は元々備わっているものではないということが、最も重要である。