(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006620
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】廃棄物の資材化処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20220105BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20220105BHJP
F23J 1/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B09B3/00 303E
B09B3/00 ZAB
B09B3/00 303L
F23J1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108961
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】520230134
【氏名又は名称】侍株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】久保田 亨
【テーマコード(参考)】
3K161
4D004
【Fターム(参考)】
3K161AA03
3K161EA06
3K161GA13
3K161LA12
3K161LA40
3K161LA42
4D004AA07
4D004AA36
4D004AB01
4D004AB03
4D004BA02
4D004CA04
4D004CA22
4D004CA34
4D004CB31
4D004CC11
4D004DA06
4D004DA09
(57)【要約】
【課題】資材中の金属は非水溶性の状態で安全性が高く、比較的低温で効率よくセラミック材料を含めた多用途に利用できる廃棄物の再資源化処理方法および同処理装置を創製することである。
【解決手段】可燃性の一般廃棄物の焼却灰または廃プラスチックの微粉末に金属不溶化剤が添加された微粉末状原料が供給可能な原料供給路2を還元反応炉1に接続し、さらに燃焼ガス供給路3を接続し、この還元反応炉1の炉壁は、所定金属触媒を含有する耐火煉瓦で形成し、前記微粉末原料を金属不溶化剤および金属系触媒に接触させながら還元雰囲気下で遠赤外線によって200~400℃に加熱して焼却灰や廃棄物を資材化処理する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の焼却灰または廃プラスチックを微粉末化し、金属不溶化剤および金属系触媒に接触させながら還元雰囲気下で遠赤外線によって200~400℃に加熱する工程を必須工程とし、前記金属系触媒が前記焼却灰に含まれる金属由来の金属系触媒である廃棄物の資材化処理方法。
【請求項2】
上記焼却灰が、水分含有率5~7質量%の焼却灰である請求項1に記載の廃棄物の資材化処理方法。
【請求項3】
上記廃棄物の資材化処理が、焼却灰のセラミック資材化処理である請求項1または2に記載の廃棄物の資材化処理方法。
【請求項4】
上記焼却灰が、一般廃棄物の焼却灰である請求項1~3のいずれかに記載の廃棄物の資材化処理方法。
【請求項5】
請求項1に記載の廃棄物の資材化処理方法に用いられる資材化処理装置であり、可燃性の一般廃棄物及びその焼却灰の微粉末に対し、金属不溶化剤が添加された微粉末状原材料が供給可能な供給路、および燃焼ガスの供給路が接続された還元反応炉を備え、この還元反応炉の炉壁は、所定の金属系触媒とセラミック製耐火物が一体に構成された遠赤外線放射性素材からなり、前記金属系触媒が前記焼却灰に含まれる金属由来の金属系触媒である廃棄物の資材化処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、都市ごみなどの一般廃棄物やその焼却灰を再資源化し、再利用できるようにするための廃棄物の資材化処理方法及び資材化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみなどの一般廃棄物には、比較的多くの種類の有機物及び無機物が含まれており、可燃ごみの種類としては、例えばプラスチック類、ゴム類、紙類、厨芥類、繊維類、木や竹類などがあり、また不燃ごみとしては、鉄類、ガラスまたは陶磁器類などがある。
【0003】
これらはいずれも焼成後に酸化物や炭化物となり、それらの混合物を含む焼却灰が残渣となって残る。このような残渣に含まれる主な元素としては、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)、硫黄(S)、塩素(Cl)等の非金属元素、また鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)等の金属元素が挙げられる。
これらを無害化し、かつ有用な状態になるように再資源化することが、以前から要望されてきた。
【0004】
また可燃性の廃棄物は、有機物と共に水分も多く含んでおり、焼却に要する燃焼時間は水分量に関係して相当に長くなるため、自ずと処理効率が悪くなり、水溶性の重金属化合物や有機塩素化合物などを含んでいる場合には、ヒトその他の生物が存在する環境に有害な影響を与える危険性があり、無害化処理する必要がある。
【0005】
水分を蒸発させてから充分に無害化されるように廃棄物を燃焼するには、処理効率の高い処理装置や処理プラントが必要であり、また廃棄物は、時期や場所ごとにまとめて収集して効率よく大量に処理する必要があるため、処理装置は大きく複雑になり、多額の設備費等を要することになる。
【0006】
これまでに知られた廃棄物や焼却灰の再資源化方法としては、一般廃棄物を通常の焼却温度(800℃以上)で焼却された後に残る焼却灰を、さらに還元雰囲気の乾留条件下で、有機質廃棄物を炭化した微粒子状の炭化物と混合して接触させ、焼却灰に含まれる金属類を難溶性金属化合物に変化させ、触媒作用と吸着能を賦活して、活性炭に再加工して廃棄物から活性炭をつくる方法が知られている(特許文献1)。
【0007】
また、焼却灰に調整剤として硫酸カリウム、硫酸ナトリウムおよびポルトランドセメントからなる重金属不溶化剤を添加してロータリーキルンで加熱処理し、さらに微粉体化してセメント化することが知られている(特許文献2)。
【0008】
さらにまた、外気と接触の少ない密閉された建築物の中で、ゴミ焼却の前処理工程と炭化乾留工程と冷却工程を行う処理方法であり、金属酸化物を含む遷移金属を粉体として焼き固めて乾留炉の炉壁に成形し、金属酸化物と多孔質無定形炭素を利用した化学反応を利用してごみを再資源化可能な炭化物にすることが知られている(特許文献3)。
【0009】
また、低酸素状態で、焼却灰を約400~600℃に加熱して20~40分維持する還元反応処理工程を行ない、次いで処理温度200~450℃で40~60分維持する安定化反応処理工程、さらに80℃以下に冷却する処理工程を行なって、発生した排ガスを遷移金属触媒の存在下で加熱処理して無害化する焼却灰の処理方法が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3840494号公報
【特許文献2】特許第3814337号公報
【特許文献3】特許第4599127号公報
【特許文献4】特許第4150800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載される廃棄物や再資源化処理方法では、炭化物と焼却灰を混合して比較的高い温度で加熱するとき、多孔質性の活性炭は生成されるが、セラミックとしての有効利用が図れるような資材は生成されていない。また、粒径の大きな焼却灰を充分に脱水及び炭化し、さらに活性炭となるように多孔質化するためには、600℃程度の高温の加熱工程が必要であった。
【0012】
また特許文献2に記載されるように、焼却灰に硫酸カリウム、硫酸ナトリウムおよびポルトランドセメントからなる重金属不溶化剤を添加して加熱処理する方法では、重金属が水に不溶化されるので安全性は高まるが、加熱処理前には粉砕されておらず、また600℃程度の高温で加熱処理され、その後に粉砕されるものであって、セメント材料としての利用可能性が開示されるに留まり、セメント以外に利用できる資材は示されていない。
【0013】
特許文献3に記載される処理方法では、金属酸化物を含む遷移金属を粉体とするキャスタブル耐火物を乾留炉の炉壁に用いた被処理物は解砕されているが微粉砕ではなく、乾留炉内での触媒作用の効率的利用について改良の余地があった。
【0014】
また、特許文献4に記載されている焼却灰の処理方法では、ダイオキシンを分解するために450℃以上の加熱処理が必要であり、またこの処理方法で得られる資材は水硬性セメント系の資材として示唆されているに過ぎない。
【0015】
そこで、この発明の課題は、セラミックにも利用可能な資材が安全性の高い状態のものとして得られ、しかも比較的低温の加熱処理で効率よく資源化できる焼却灰等の廃棄物の再資源化処理方法とすることである。また、このような処理方法に利用可能な廃棄物の再資源化処理装置を新たに創製することも課題である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、この発明は、微粉末状の焼却灰または廃プラスチックを、金属不溶化剤および前記焼却灰に含まれる金属由来の金属系触媒に接触させながら、還元雰囲気下で遠赤外線によって200~400℃に加熱する工程を必須工程とする廃棄物の資材化処理方法としたのである。
【0017】
上記の工程を必須とする廃棄物の資材化処理方法は、微粉末状の所定廃棄物を金属不溶化剤および金属系触媒に接触させながら還元雰囲気下で加熱するときに、所定廃棄物に含まれる金属類が前記金属不溶化剤と反応して、金属硫化物などの非水溶性化合物(固体)になる。なお、金属不溶化剤と炭素との化合物である二硫化炭素等は、共有結合化合物であるから、これも非水溶性化合物であり、非水溶性化合物の外部環境への負荷は小さい。
【0018】
前記金属系触媒は、このような非水溶性化合物の還元雰囲気下での生成反応を促進し、遠赤外線によって200~400℃という比較的低温での前記反応を可能にする。
さらにまた、処理対象物の焼却灰や廃プラスチックが微粉末状であることにより、遠赤外線による加熱反応が効率よく行われる。このように加熱反応を効率よく行えるように、上記焼却灰が、水分含有率5~7質量%の焼却灰であることが好ましい。
【0019】
このように上記廃棄物の資材化処理を行なえば、所定廃棄物のセラミック資材化処理を効率よく行うことができ、脱臭剤、吸湿剤、耐火レンガ、土壌改良剤などに用途のある汎用性のあるセラミック資材が得られる。
【0020】
また上記焼却灰は、一般廃棄物の焼却灰を採用可能であり、さらに焼却灰に代えて粉末化された廃プラスチックまたはこれに前記焼却灰を混ぜて、この発明の資材化処理を行うこともできる。
【0021】
上述した廃棄物の資材化処理方法に用いる資材化処理装置は、可燃性の一般廃棄物の焼却灰の微粉末または廃プラスチックの微粉末に、金属不溶化剤が添加された微粉末状の原材料が搬送および供給される供給路が接続された還元反応炉を備えており、この還元反応炉には加熱源として燃焼ガスの供給路が接続されている。
【0022】
還元反応炉は、その炉壁が所定の金属系触媒とセラミック製耐火物とが一体的に複合した遠赤外線放射性素材で構成されている。前記金属系触媒は、前記焼却灰に含まれる金属由来の金属系触媒を利用できる。
【0023】
このように資材化処理装置は、還元反応炉の炉壁を、上記所定の金属系触媒とセラミック製耐火物とが複合的に一体に構成された遠赤外線放射性素材で形成したことにより、比較的低温に加熱されている炉壁から還元反応炉内に遠赤外線を放射することができ、その際に炉壁面に露出している金属系触媒に焼却灰等の微粉末状の原材料が上記の遠赤外線で加熱されながら接触する。
【0024】
これにより、還元雰囲気下での非水溶性化合物などの生成反応が促進され、この発明の資材化処理を効率よく行える。
【発明の効果】
【0025】
この発明は、廃棄物の資材化処理方法を、微粉末状の焼却灰または廃プラスチックを処理対象として、所定の金属不溶化剤と金属系触媒に接触させながら還元雰囲気下で遠赤外線によって低温条件で加熱する工程を必須工程にしたので、汎用性のあるセラミック系資材が得られ、そのような資材中の金属は安全性の高い非水溶性化合物になっており、また遠赤外線による加熱作用と金属系触媒による作用が相まって比較的低温で効率よく再資材化処理が可能となる利点がある。
また、この発明の資材化処理装置を用いれば、上記の利点ある処理方法をより効率よく行えるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態の資材化処理装置の一部を切欠いて示す正面図
【
図4】実施形態の資材化処理装置を配置したプラントの説明図
【
図5】実施形態の処理方法で得た資材を用いて製造した耐火煉瓦の耐熱試験の結果を示し、温度と線膨張率の関係を示す図表
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の実施形態を以下に添付図面を利用して説明する。
図1-4に示されるように、この発明の資材化処理方法に用いられる資材化処理装置(プラント)は、還元反応炉1を備えたものであり、還元反応炉1には、可燃性の一般廃棄物の焼却灰または廃プラスチックの微粉末に対し、金属不溶化剤が添加された微粉末状原料が供給可能な原料供給路2が接続されており、さらに燃焼ガス供給路3も接続されている。燃焼ガス供給路3には、可燃性ガスや石油などが燃焼した高温の燃焼ガスが加熱装置4(
図4)から供給される。
【0028】
図示した方形状箱型の還元反応炉1は、鉄板製の外装板5の内側に重ねて、耐火性のある軽量骨材にアルミナセメントを配合した耐火コンクリート等のキャスタブル耐火物層6が被覆されており、その内側に耐火煉瓦7を隙間なく配置して還元反応室8を設け、その下方に燃焼室10を設けている。なお、符号9は還元反応炉1の組み立て(ボルト結合)に用いる鉄製縁枠である。
【0029】
還元反応炉1の内側の炉壁は、所定の金属系触媒とセラミック製耐火物が一体に構成された遠赤外線放射性素材である耐火煉瓦7が隙間なく配置され炉壁面が覆われている。
【0030】
前記した燃焼ガス供給路3は、還元反応炉1の下方に別途設けた燃焼室10に接続されており、図中の矢印で示されるように高温の燃焼ガスが還元反応室8の床面開口部から上向きに噴出する。そして、長方形筒状の耐熱金属製の吹き出し口11の上端の内向きの開口部から還元反応室8の中央に向かって燃焼ガスが噴出されるから、その気流は炉壁面に沿って還元反応室8内の隅々まで流れ、還元反応室8内の雰囲気を攪拌する。
【0031】
還元反応炉1には、上部の蓋材に接続された原料供給路2から、焼却灰及び/又は廃プラスチックの微粉末に金属不溶化剤が添加された微粉末状の処理対象物(原料)が、図外のゲート弁の調整によって適量ずつ供給される。
【0032】
還元反応炉1内では、燃焼ガスの熱伝導および加熱された耐火煉瓦7から放射される遠赤外線によって焼却灰及び廃プラスチックの微粉末の混合物が加熱されるが、その際に燃焼ガスの気流に乗って浮遊してエアロゾル状態の微粉末は、均等に効率よく加熱され、さらに耐火煉瓦7の表面に露出している金属系触媒に何度も接触しながら加熱される。
【0033】
このようにして実施形態の資材化処理装置を用いると、微粉末状の焼却灰及び廃プラスチックを、金属不溶化剤および金属系触媒に対してエアロゾル状態または乾式混合に相当する状態で接触させながら、還元雰囲気下における遠赤外線によって200~400℃に加熱することができる。
【0034】
還元反応後の資材化処理物は、方形状の還元反応炉1の対向する2つの側壁面に沿って耐火煉瓦7製の床面に長方形状に開口する処理物出口12から燃焼室10の側部を経由し(別途設けた迂回路を経由してもよい。)、燃焼室10のキャスタブル耐火物層6で形成された床面に開口する処理物出口12からホッパー13内に落下して回収される。
【0035】
図4に示すように可燃性の一般廃棄物及びその焼却灰を微粉末化するには、一般廃棄物が収容室(ピット)14からコンベア15で搬送される際、必要に応じて磁力で磁性金属類を除去してから、段階的に細かく所要数の破砕機16を経由させて粉末化し、さらに一次乾燥機17を経由した後、微粉砕機18で粒径100~150μmの微粉末状に粒径を調整することが好ましい。
微粉砕機18には、予め別途焼成された一般廃棄物の焼却灰が導入路18aから適宜に供給される。
【0036】
微粉砕機18からの搬出物には、その搬送路に敷設された混合器19において金属不溶化剤などの添加剤が添加されると共に攪拌及び混合され、必要に応じてロータリー二次乾燥機20で水分量6%を目安にして5~7%程度に調整された後、還元反応炉1に供給される。
【0037】
なお、搬送路に用いるコンベアは、被搬送物を密閉状態で搬送可能な密封型スクリューコンベアを採用することが粉塵等の飛散防止のために好ましく、また最終加熱後に得られた資材は、水冷式のスクリューコンベア21で冷却されながら、処理物貯留槽22に収容され、適宜に資材として利用されることが好ましい。
【0038】
上記微粉末状の焼却灰は、都市ごみなどの一般廃棄物が、800℃以上の燃焼により炭素化された焼却灰であり、通常は一般廃棄物由来の焼却灰を用いることができる。
このような焼却灰に比較的多くの含まれる可能性が高い有機物は、例えばプラスチック類、ゴム類、紙類、厨芥類、繊維類、木や竹類などである。
【0039】
上記有機物の焼却灰に含まれる酸化物や炭化物等またはそれに含まれる元素は、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、窒素(N)、硫黄(S)、塩素(Cl)等の非金属元素、また鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、鉛(Pb)等の金属元素が代表的なものである。
【0040】
上記微粉末状の焼却灰としては、粒径100~150μmの微粉末状に調整された焼却灰を用いることが遠赤外線による加熱効率がよいので好ましく、また遠赤外線が焼却灰に対し、さらに効率よく加熱作用を及ぼすように、焼却灰に含まれる水分含有率6質量%を最適な値として5~7質量%程度の範囲に調整することが好ましい。
【0041】
焼却灰が、粒径100μm未満の微粉末では、粉末の調製作業が容易ではなくなり、資材化処理効率がかなり低下するので好ましくない。また粒径150μmを超える大粒径の焼成灰は、金属系触媒の作用が充分でなくなるためか、遠赤外線による加熱反応を効率よく行うことが困難になる。
【0042】
この発明に用いられる金属不溶化剤は、焼却灰に含まれる金属を硫化して非水溶性で安定した硫化金属化合物を生成可能な周知の金属不溶化剤である。
【0043】
このような金属不溶化剤としては、硫酸カリウム(K2SO4)、塩化カリウム(KCl)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3・nH2O)、硫化ナトリウム(Na2S・5H20)、塩化カルシウム(CaCl2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、水酸化ナトリウム(Ca(OH)2)、石膏(Na2SO42H2O)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、硫化鉄(FeS2)などが例示されるが、このうち硫酸カリウムおよび硫酸ナトリウムなどの硫化物系の金属不溶化剤が特に好ましい。
【0044】
この発明に用いる金属系触媒は、前記焼却灰に含まれる金属または金属酸化物などの金属触媒及び金属酸化物触媒などであり、一般廃棄物由来の重金属等が含まれており、通常は複数の異種金属の混合された組成物である。
【0045】
このような金属系触媒を構成する成分の具体例としては、酸化鉄(Fe3O4)、助触媒として酸化カリウム(K2O)(0.5~1.5%)、アルミナ(Al2O3)(2~4%)、酸化カルシウム(CaO)(1~3%)、シリカ(SiO2)(0.2~1%)、酸化マグネシウム(MgO)(0.2~4%)などが挙げられ、重金属は酸化物、水酸化物、硫酸化物、硫化物、リン化物等の形態で含まれる。
【0046】
金属元素の中の遷移金属である鉄、コバルト、ニッケル、銅および白金属と云われるルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金は、水素分子を解離し、水素原子にして活性化を高めるので、触媒の成分として含まれることが好ましいものである。因みに、水素分子を解離するエネルギーは、約450キロジュールのエネルギーであるが、水素原子はNi、Pd、Ptなどの表面上では、室温で容易に解離してNi、Pd、Pt上に吸着する。この解離をさせる原動力は金属表面の水素原子に対する化学親和力である。
【0047】
解離した水素原子は、反応性に富むので、金属表面に近づいてくる炭化水素(エチレンやプロピレンなど)に付加し、また炭素と酸素の化合物など有機化合物にも付加して水素化物を生成する。また、白金属やFe、Co、Niは、炭化水素のC-H結合を解離して水素化分解をさせる。このように触媒は、金属分子を活性のある金属原子にして、化学反応を熱源に頼らずに促進する力を有している。
【0048】
また焼却灰の中には、典型元素が多く、遷移元素は少ない。遷移金属のTi、V、Cr、Mn、Fe、Cu、Znなどは酸素との結合が強すぎて金属酸化物となってしまうため、酸素量を6%程度に減らすことが好ましい。
【0049】
遷移金属酸化物は、酸化に活性を示すものと、脱水素に活性を示すものに分けられる。Fe2O3、Cr2O3は、水素分子が存在していても金属状態に還元されないので脱水素に対して良い触媒となる。
【0050】
焼却灰中のCrは、CrO3の三酸化クロムで水に溶け易い化合物なので水素との反応で水酸化クロムとなり、水酸化クロムの燃焼行程により安定不溶化の三酸化二クロム化合物となる。SiO2、Al2O3、MgOなどの典型金属酸化物は、反応分子と酸塩基相互作用をし、反応分子にプロトンを与え、反応分子がプロトンを引き抜いて分子を活性化する。
上記金属系触媒が、セラミック製の耐火物と一体に設けられた金属系触媒であることは、この発明の廃棄物の資材化処理方法において好ましい態様である。
【0051】
この発明に採用される還元雰囲気は、外気との絶縁された脱酸素状態で加熱する際の雰囲気をいい、還元雰囲気で満たされる還元反応炉内の加熱温度は200~400℃であり、所定の遠赤外線放射性素材で形成された還元反応炉で遠赤外線が発生し、その作用が顕著であるように250℃~400℃の範囲で20~60分程度加熱することが好ましい。
【0052】
焼却灰を低酸素雰囲気下で加熱処理する際、微細な焼却灰が供給される雰囲気下で遠赤外線による加熱(200~400℃)が行なわれ、焼却灰中に存在する可能性のある塩化水素やダイオキシン類は脱塩素化して分解される。
すなわち、酸化雰囲気下ではダイオキシン類は前駆体物質等から焼却灰中の塩化物、炭素等と反応して300℃付近で多く生成されるが、特定の触媒に接触する還元雰囲気下では遠赤外線を利用して200~400℃に加熱すれば、塩化水素やダイオキシン類は分解される。
【0053】
この発明に利用する遠赤外線は、還元反応炉内の炉壁が、前記した金属系触媒とセラミック製耐火物が一体に構成された遠赤外線放射性素材で形成されており、前記した所定温度に加熱することによって発生させることができる。
【0054】
遠赤外線放射性素材は、セラミック製の耐火煉瓦を例示したが、ある程度の耐火性があれば特に素材を問わずに通常の煉瓦を採用してもよい。周知の耐火煉瓦の主成分となる材料としては、アルミナやシリカを含む粘土である。
【0055】
通常のレンガは、泥、シルト、シェールなどの一次鉱物及び粘土から作られ、耐火レンガはその成分の殆どが粘土のような二次鉱物で作られている。
例えば、国内産の蛙目粘土や木節粘土と通称される粘土材料が耐火レンガを作るための材料として容易に入手でき、これらの粘土に大量の水を混ぜで不純物を取り除いてから、前記した所定の金属系触媒を1~10質量%程度混合し、布の上で一定の厚みにしたシート状のものを数日かけて水気を切り、型抜きして長方形状に整えた状態で乾燥させ、その後に焼成炉内で焼成して、耐火煉瓦を調製する。
【0056】
また、このような耐火煉瓦等は、金属系触媒とセラミック製耐火物が粉体材料の状態で混合されたことにより一体に構成されたものであるが、セラミック製耐火物の表面に金属系触媒とセラミック材料からなるバインダーとの混合物をコーティングし、焼成により耐火物と一体にした複合物であってもよく、金属系触媒とセラミック製耐火物をそれぞれ層状に積み重ねて焼成した積層体とすることもできる。
【0057】
このようにして得られる遠赤外線放射性素材から放射される遠赤外線は、波長3μm以上、好ましくは波長4μm以上の電磁波であり、一般的には波長3μm以上、1mm以下の領域の電磁波は遠赤外線と呼ばれる。
上記した耐火煉瓦等の遠赤外線放射性素材は、200~600℃に加熱されると波長2.5μm~30μm程度の遠赤外線を放射可能である。
【0058】
なお、ごみは焼却すると約850℃の燃焼熱を発生する。ごみ1tの発熱量は2000~3000kcal/kgのエネルギー価値があり、電力として420~630kwhが得られる。
上記実施形態においても還元反応炉内から、フィルターを経由して排出される排ガスを処理する際に、燃焼熱を排ガス処理装置に導入してもよい。すなわち、排ガスを廃熱ボイラで冷却し、蒸気として熱回収し、廃熱ガスにより発電設備を設置することも可能である。
【実施例0059】
廃プラスチックの微粉末状の破砕物に対し、一般廃棄物焼却灰の微粉末(平均粒径120μm)及び硫化物系金属不溶化剤(硫酸カリウムおよび硫酸ナトリウム)を約5質量%程度混合し、上記実施形態で図示した構造の還元反応炉1に供給し、資材化処理を行なった。
還元反応炉1の炉壁は、酸化鉄及びアルミナを含む金属系触媒を5%程度含有する耐火煉瓦で形成し、炉壁を250~400℃に加熱して還元雰囲気下で遠赤外線による資材化処理を行なった。
得られた資材に対し、重金属の溶出試験(昭和48年環境庁告示第13号「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」)の分析結果を以下の表1に示した。
【0060】
【0061】
表1の結果からも明らかなように、いずれの重金属も溶出することなく不検出または基準値以下の結果であり、資材中の金属が非水溶性で安全性の高い状態になっていることが確認できた。
【0062】
また、得られた資材を用いたセラミック製品の耐火煉瓦を製造し、その耐熱性を50℃から1180℃までの線膨張率の温度変化で調べ、結果を
図5に示した。
図5に示される結果からも明らかなように、試験対象の耐火煉瓦(長さ85.54mm)は、1000℃まで熱線膨張率が-0.2~0.2%の範囲で安定しており、充分に使用に耐える耐火煉瓦であることが認められた。
【0063】
このようにこの発明の資材化処理方法及びその装置により、セラミック系資資材が得られ、そのような資材中の金属は非水溶性で安全性の高い状態となり、250~400℃という比較的低温で効率よく焼却灰等の廃棄物の再資源化の処理が可能であることが確かめられた。
【0064】
また、上記の実施形態の資材化処理方法で得られた焼却灰の資材を用いて、粒状の土壌改良剤(ミネラル系肥料)を製造し、その性能を調べたところ、農作物のタマネギ、カボチャ、枝豆、スイカ、イネについてブランク(同肥料無添加)のものに対して、顕著に大きく成長し、良好な生育状態が得られた。