(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066211
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】アクセス困難な場所に冷却孔を有する鋳造部品を製造するための統合鋳造コア・シェル構造
(51)【国際特許分類】
B22C 9/04 20060101AFI20220421BHJP
B22C 9/02 20060101ALI20220421BHJP
B22D 25/02 20060101ALI20220421BHJP
B22D 27/04 20060101ALI20220421BHJP
B22C 13/08 20060101ALI20220421BHJP
B22C 9/24 20060101ALI20220421BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220421BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20220421BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
B22C9/04 D
B22C9/02 103B
B22D25/02 C
B22D27/04 A
B22C13/08 A
B22C9/24 C
B33Y10/00
F02C7/00 D
F01D25/00 X
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017321
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2019531695の分割
【原出願日】2017-11-06
(31)【優先権主張番号】15/377,783
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ガライ、グレゴリー、テレンス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、シ
(57)【要約】
【課題】本開示は、概して、突起パターンの存在のためにアクセスできない場所を含む、タービンブレードまたは静翼の表面の冷却孔パターンに対応するフィラメント構造を提供する一体型コア・シェルインベストメント鋳造鋳型に関する。
【解決手段】フィラメント構造はまた、金属鋳造後にコア部に浸出経路を提供する。本発明はまた、例えば鋳型のコア先端部において、浸出経路を補うために使用することができるコアフィラメントに関する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック鋳造鋳型であって、
前記セラミック鋳造鋳型の鋳造および取り外しの際に鋳造部品の形状を画定するように適合された少なくとも1つのキャビティを間に有するコア部(901)およびシェル部(902)と、
前記コア部と前記シェル部との間にまたがって前記コア部と前記シェル部とを接合し、各々が前記鋳造部品内に穴を画定する複数のフィラメント(902)と、を含み、前記複数のフィラメントのうちの少なくとも一つのフィラメントは第1の点で前記コア部と交差し、第2の点で前記シェル部と交差し、前記第1の点と前記第2の点とを結ぶ仮想線(1101、1102、1103、1104)もまた、前記第2の点よりも前記セラミック鋳造鋳型の中心から離れて延びる前記シェル部の外側部分の第3の点と交差し、前記第3の点にはフィラメントは形成されていない、
セラミック鋳造鋳型。
【請求項2】
前記外側部分は、タービンブレードまたは静翼の根元部品の少なくとも一部を形成する、請求項1に記載のセラミック鋳造鋳型。
【請求項3】
前記外側部分は、タービンブレードまたは静翼の後縁の少なくとも一部を形成する、請求項1または請求項2に記載のセラミック鋳造鋳型。
【請求項4】
前記外側部分は、タービンブレードまたはステータ内のオーバーハングの少なくとも一部を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミック鋳造鋳型。
【請求項5】
内側キャビティおよび外側表面、ならびに前記内側キャビティと前記外側表面との間に流体連通を提供する複数の冷却孔を有する単結晶金属タービンブレードまたは静翼であって、少なくとも1つの冷却孔は、前記冷却孔と前記内側キャビティとの交点における第1の点と前記冷却孔と前記外側表面との交点における第2の点を結ぶ仮想線が、前記第2の点よりも前記単結晶金属タービンブレードまたは静翼の中心から離れて延びる前記単結晶金属タービンブレードまたは静翼の外側部分の第3の点と交差するように配置されており、前記第3の点には冷却孔は形成されていない、単結晶金属タービンブレードまたは静翼。
【請求項6】
前記外側部分は、前記単結晶金属タービンブレードまたは静翼の根元部品の少なくとも一部を形成する、請求項5に記載の単結晶金属タービンブレードまたは静翼。
【請求項7】
前記外側部分は、前記単結晶金属タービンブレードまたは静翼の後縁またはオーバーハングの少なくとも一部を形成する、請求項5または請求項6に記載の単結晶金属タービンブレードまたは静翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、インベストメント鋳造コア・シェル型構成要素、およびこれらの構成要素を利用する方法に関する。本発明に従って製造されたコア・シェル鋳型は、鋳型のコアとシェルとの間に、これらの鋳型から製造された鋳造部品に孔、すなわち浸出冷却孔を形成するために利用できる一体型セラミックフィラメントを含み、突起パターンがあるためにアクセスできない場所にも使用できる。コアとシェルとの間に十分なセラミックフィラメントを使用してコアの蛇行のための浸出経路を設置して提供することによってまた、ボールろう付けシュートを排除し得る。先端プレナムコアとシェルとの間にセラミックフィラメントを設けることにより、従来の先端ピンの必要性、およびそれに続くろう付けによる閉鎖を排除しながら、浮動先端プレナムを支持することもできる。一体型コア・シェル鋳型は、ジェット航空機エンジンまたは発電用タービン部品用のタービンブレードおよび静翼を製造するために使用される超合金の鋳造などの鋳造作業において有用な特性を提供する。
【背景技術】
【0002】
現代の多くのエンジンおよび次世代のタービンエンジンは、新しいタイプの材料および製造技術を必要とする、入り組んで複雑な形状を有する構成要素および部品を必要とする。エンジン部品および構成要素を製造するための従来の技術は、面倒な投資プロセスまたはロストワックス鋳造を含む。インベストメント鋳造の一例は、ガスタービンエンジンに使用される典型的なロータブレードの製造を含む。タービンブレードは通常、エンジン内において作動中に加圧冷却空気を受けるための少なくとも1つまたは複数の吸気口を有するブレードのスパンに沿って延びる半径方向チャネルを有する中空の翼型部を含む。ブレード内の様々な冷却通路は通常、前縁と後縁との間の翼型部の中央に配置された蛇行チャネルを含む。翼型部は通常、加圧冷却空気を受けるためにブレードを通って延びる吸気口を含み、吸気口は、翼型部の加熱された側壁と内部冷却空気との間の熱伝達を増大させるための短いタービュレータリブまたはピンなどの局所的特徴を含む。
【0003】
典型的には高強度超合金金属材料からのこれらのタービンブレードの製造は、
図1に示される多数の工程を含む。先ず、タービンブレードの内側に所望の複雑な冷却通路に適合するように精密セラミックコアが製造される。翼型部、プラットフォーム、および一体型蟻継ぎを含むタービンブレードの正確な3次元外面を画定する精密なダイスまたは鋳型も作成される。このような鋳型構造の概略図を
図2に示す。セラミックコア200は、結果として生成されるブレードの金属部分を画定する空間または空隙を間に形成する2つの金型半部の内側に組み立てられる。組み立てられた金型にワックスが注入されて空隙を充填し、その中に封入されたセラミックコアを取り囲む。2つの金型半部が分割され、成形ワックスから取り外される。成形ワックスは所望のブレードの正確な形状を有し、次いでセラミック材料で被覆されて周囲のセラミックシェル202を形成する。その後、ワックスが溶融されてシェル202から除去され、セラミックシェル202と内部セラミックコア200および先端プレナム204との間に対応する空隙または空間201が残る。次いで、溶融超合金金属がシェル内に注ぎ込まれてその中の空隙を充填し、再びシェル202内に収容されているセラミックコア200および先端プレナム204を封入する。溶融金属が冷却されて凝固し、次いで外部シェル202および内部コア200および先端プレナム204が適切に取り外されて、内部冷却通路が見られる所望の金属タービンブレードが残る。浸出プロセスを介してセラミックコア材料を除去するための経路を提供するために、ボールシュート203および先端ピン205が設けられ、ボールシュート203および先端ピン205は、浸出するとタービンブレード内に、後にろう付けして閉じる必要があるボールシュートおよび先端孔を形成する。
【0004】
次いで、鋳造タービンブレードは、作動中にガスタービンエンジン内で翼型部の外面上に保護用の冷却空気の膜または覆いを形成する、内部に流された冷却空気用の出口を提供するべく、必要に応じて翼型部の側壁を貫通する適切な列のフィルム冷却孔の穿孔など、追加的な鋳造後の修正に供され得る。タービンブレードがセラミック鋳型から取り外された後、セラミックコア200のボールシュート203は、鋳造タービンブレードの内部空隙を通る所望の空気経路を提供するために追って溶接閉鎖される通路を形成する。しかしながら、これらの鋳造後の修正は限定的であり、タービンエンジンの複雑さが増し続けていることとタービンブレード内の特定の冷却回路の認識されている効率性とを考慮すると、より複雑で入り組んだ内部形状が必要とされる。インベストメント鋳造はこれらの部品を製造することができるが、位置精度および入り組んだ内部形状は、これらの従来の製造方法を使用して製造することがより複雑になる。したがって、入り組んだ内部空隙を有する三次元部品のための改良された鋳造方法を提供することが望まれる。
【0005】
セラミックコア・シェル鋳型を製造するために3-D印刷を使用する方法が、ロールスロイス社(Rolls-Royce Corporation)に譲渡された米国特許第8,851,151号明細書に記載されている。鋳型を製造する方法は、マサチューセッツ工科大学に譲渡された米国特許第5,387,380号明細書に開示されているような粉末床セラミック法(powder bed ceramic processes)、および3Dシステムズ社(3D Systems,Inc.)に譲渡された米国特許第5,256,340号明細書に開示されているような選択的レーザ活性化(Selective Laser Activation:SLA)を含む。‘151特許によるセラミックコア・シェル鋳型は、これらの方法の印刷解像度能力によって制限されている。
図3に示すように、一体型コア・シェル鋳型のコア部301とシェル部302とは、鋳型の下端に設けられた一連の結合構造体303を介して一緒に保持されている。‘151特許では、その長さがその直径とほぼ同じである短いシリンダによって接合された千鳥状の垂直キャビティを含む冷却通路が提案されている。次いで、‘151特許に開示され、参照により本明細書に組み込まれる既知の技術を使用して、コア・シェル鋳型内に超合金タービンブレードが形成される。タービンブレードがこれらのコア・シェル鋳型のうちの1つの中に鋳造された後、型が取り去られて鋳造超合金タービンブレードが現れる。
【0006】
鋳造プロセスの最終製品において微細な細部鋳物特徴を提供し得る、より高解像度の方法を用いて製造されたセラミックコア・シェル鋳型を製造する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、コアとシェルとを有するセラミック鋳型の製造方法に関する。製造方法は、(a)加工物の硬化部分を液体セラミックフォトポリマーと接触させることと、(b)液体セラミックフォトポリマーの硬化部分に隣接する部分を、液体セラミックフォトポリマーと接触する窓を通して照射することと、(c)未硬化の液体セラミックフォトポリマーから加工物を除去することと、(d)セラミック鋳型が形成されるまで工程(a)~(c)を繰り返ことと、を含み、セラミック鋳型は、間に少なくとも1つのキャビティを有するコア部とシェル部とを含み、キャビティは、鋳造およびセラミック鋳型の取り外しの際に鋳造部品の形状を画定するように適合される。セラミック鋳型は、コア部とシェル部とを接合し、各々がコア部とシェル部との間に亘って延在し、鋳型の取り外し時に鋳型構成要素内に穴を画定する複数のフィラメントを含む。フィラメントは第1の点でコア部と交差し、フィラメントは第2の点でシェル部と交差し、第1の点と第2の点とを結ぶ仮想線もまた、第2の点よりも鋳型の中心から離れて延びるコア部の外側部分と交差する。製造方法は、工程(d)の後に、液体金属を鋳型に注ぐこと、および液体金属を凝固させて鋳造部品を形成することを含む工程(e)を含む。製造方法は、工程(e)の後に、鋳造部品から鋳型を取り外すことを含む工程(f)を含む。
【0008】
別の態様では、本発明は鋳造部品の製造方法に関する。製造方法は、セラミック鋳造鋳型に液体金属を注入し、液体金属を凝固させて鋳造部品を形成することと、フィラメントにより形成された鋳造部品の穴を通してセラミックコアの少なくとも一部を浸出させることによって鋳造部品からセラミック鋳造鋳型を取り出すことと、を含み、セラミック鋳造鋳型は、鋳造およびセラミック鋳型の取り外しの際に鋳造部品の形状を画定するように適合された少なくとも1つのキャビティを間に有するコア部およびシェル部と、各々がコア部とシェル部との間にまたがってコア部とシェル部とを接合する複数のフィラメントと、をさらに含み、フィラメントは、鋳型を取り外す際に鋳造部品に複数の穴を画定するように適合されており、フィラメントは第1の点でコア部と交差するとともに第2の点でシェル部と交差しており、第1の点と第2の点とを結ぶ仮想線もまた、第2の点よりも鋳型の中心から離れて延びるコア部の外側部分と交差する。
【0009】
別の態様において、本発明は、鋳造およびセラミック鋳型の取り外しの際に鋳造部品の形状を画定するようになっている少なくとも1つのキャビティを間に有するコア部およびシェル部と、コア部およびシェル部を接合する複数のフィラメントと、を備えたセラミック鋳造鋳型に関し、各フィラメントはコア部とシェル部の間にまたがっており、フィラメントは、鋳型の取り外し時に、コア部によって画定される鋳造部品内のキャビティと鋳造部品の外面との間に流体連通を提供する複数の穴を画定するように適合されている。フィラメントは第1の点でコア部と交差し、フィラメントは第2の点でシェル部と交差し、第1の点と第2の点とを結ぶ仮想線もまた、第2の点よりも鋳型の中心から離れて延びるコア部の外側部分と交差する。さらに別の態様では、本発明は、内側キャビティと外側表面と、内側キャビティおよび外側表面の間に流体連通を提供する複数の冷却孔とを有する単結晶金属タービンブレードまたは静翼に関し、少なくとも冷却は、冷却孔と内側キャビティとの交差部の第1の点と冷却孔と外側表面との交差部の第2の点を結ぶ仮想線が、第2の点よりもタービンブレードの中心からさらに離れて延びるタービンブレードまたは静翼の外側部分と交差するように配置される。単結晶金属は超合金であることが好ましい。
【0010】
一態様では、外側部分は、タービンブレードもしくは静翼の根元部品または後縁の少なくとも一部、またはタービンブレードもしくは静翼のオーバーハングの少なくとも一部を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来のインベストメント鋳造の工程を示すフローチャートである。
【
図2】従来の方法で製造されたボールシュート付きコア・シェル鋳型の従来の方式の一例を示す概略図である。
【
図3】コア部とシェル部とを接続する結合部を有する先行技術の一体型コア・シェル鋳型の斜視図を示す。
【
図4】直接光処理(DLP)のための方法手順の連続した段階を実行するための装置の概略横断面図を示す。
【
図5】直接光処理(DLP)のための方法手順の連続した段階を実行するための装置の概略横断面図を示す。
【
図6】直接光処理(DLP)のための方法手順の連続した段階を実行するための装置の概略横断面図を示す。
【
図7】直接光処理(DLP)のための方法手順の連続した段階を実行するための装置の概略横断面図を示す。
【
図9】コア部とシェル部とを接続する線状フィラメントを有する一体型コア・シェル鋳型の側面図を示す。
【
図10】本発明の一実施形態による金属充填一体型コア・シェル鋳型の側面図を示す。
【
図11】本発明の一態様による一体型コア・シェル鋳型の取り外し後に形成された超合金タービンブレードの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、様々な構成の説明として意図されており、本明細書で説明される概念が実施され得る唯一の構成を表すことは意図されていない。詳細な説明は、様々な概念の完全な理解を提供する目的のための具体的な詳細を含む。しかしながら、これらの概念がこれらの具体的な詳細なしに実施されてもよいことは当業者には明らかであろう。例えば、本発明は、鋳造金属部品、好ましくはジェット航空機エンジンの製造に使用される鋳造金属部品を製造するための好ましい方法を提供する。具体的には、タービンブレード、ベーン、およびシュラウド部品などの単結晶ニッケル基超合金鋳造部品の製造は、本発明に従って有利に製造することができる。しかしながら、他の鋳造金属部品は本発明の技術および一体型セラミック鋳型を用いて製造することができる。
【0013】
本発明者らは、一体型コア・シェル鋳型を製造するための既知の従来の方法は、完成タービンに浸出冷却孔をもたらすのに十分に小さいサイズおよび量の鋳型のコア部とシェル部との間に延びるフィラメントを印刷するのに必要な微細解像能力を欠いていたことを見出した。マサチューセッツ工科大学に譲渡された米国特許第5,387,380号明細書に開示されているような初期の粉末床法の場合、粉末床リコータアームの作用は、コアとシェルとの間に延びる十分に細かいフィラメントの形成を妨げて鋳物部分に浸出冷却孔のパターンをもたらす。本発明による一体型コア・シェル鋳型を製造するにあたり、トップダウン照射技術を使用する、3D Systems、Inc.に譲渡された米国特許第5,256,340号明細書に開示されているような選択的レーザ活性化(SLA)のような他の既知の技術を利用してもよい。しかしながら、これらのシステムの利用可能な印刷解像度は、鋳型最終製品において有効な冷却孔として働くのに十分に小さいサイズのフィラメントを製造する能力を著しく制限する。特に、一体型コア・シェル鋳型を製造するための公知のこれらの従来の方法およびシステムは、1つまたは複数の外側部分またはオーバーハングを有する鋳造最終製品に、特にこれらの外側部分またはオーバーハングに近い位置に冷却孔を作ることができない。
【0014】
本発明者らは、本発明の一体型コア・シェル鋳型を直接光処理(DLP)を用いて製造できることを見出した。DLPは、樹脂タンクの底部に配置され、プロセスが行われるにつれて持ち上げられる構築プラットフォーム上に光を投影する窓を通してポリマーの光硬化が行われるという点で上記の粉末床法およびSLA法と異なる。DLPを用いると、硬化したポリマーの層全体が同時に製造され、そしてレーザを用いてパターンを走査する必要性が排除される。さらに、底部の窓と造形物における最新の硬化層との間で重合が起こる。底部の窓は、別の支持構造を必要とせずに材料の細いフィラメントを製造することを可能にする支持を提供する。言い換えれば、造形物の2つの部分を橋渡しする材料の細いフィラメントを製造することは困難であり、典型的には従来技術において回避されていた。例えば、本出願の背景技術の項で上述した‘151特許は、長さが直径程度である短いシリンダと接続された垂直プレート構造を使用していた。‘151特許に開示された粉末床技術およびSLA技術は垂直に支持されたセラミック構造を必要とし、これらの技術はフィラメントを確実に製造することが不可能であるという事実により、互い違いの垂直キャビティが必要とされる。さらに、粉体層内で利用可能な分解能は1/8インチ(3.2mm)程度であり、伝統的な冷却孔の製造は実用的ではない。例えば、円形の冷却孔は一般に、3.2mm2未満の冷却孔面積に対応する2mm未満の直径を有する。このような寸法の穴の製造は、いくつかのボクセルから穴を製造する必要性を考慮すると、実際の穴のサイズをはるかに下回る解像度を必要とする。この解像度は、単純に粉末床法では利用できない。同様に、ステレオリソグラフィーは、支持体の欠如およびレーザ散乱に伴う解像度の問題のために、そのようなフィラメントを製造する能力が限られている。しかし、DLPがフィラメントの全長を露光し、窓と構築板との間にフィラメントを支持するという事実により、コアとシェルとの間の全長に亘って十分に細いフィラメントを製造して所望の冷却孔パターンを有するセラミック物体を形成することが可能になる。もっとも、粉末床およびSLAを用いてフィラメントを製造することはできるが、上述のように十分に細いフィラメントを製造する能力は限られている。
【0015】
1つの適切なDLPプロセスは、Ivoclar Vivadent AGおよびTechnische Universitat Wienに譲渡された米国特許第9,079,357号明細書、ならびに国際公開第2010/045950 A1および米国特許出願第2011310370号明細書に開示されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれ、
図4~
図7を参照して以下に論じられる。装置は、露光ユニット410の少なくとも一部を覆う少なくとも1つの半透明底部406を有するタンク404を含む。露光ユニット410は、現在形成されている層にとって望ましい幾何学的形状を有する露光領域をタンク底部406上に生成するために、制御ユニットの制御下で強度を位置選択的に調整することができる光源および変調器を含む。代替として、露光ユニットにレーザを使用してもよく、その光ビームは、制御ユニットによって制御される可動ミラーによって所望の強度パターンで露光フィールドを連続的に走査する。
【0016】
露光ユニット410の反対側には、タンク404の上方に生産プラットフォーム412が設けられており、生産プラットフォーム412は、露光ユニット410の上方の領域においてタンク底部406上で高さ調整可能な方法で保持されるように、昇降機構(図示せず)によって支持されている。生産プラットフォーム412は、少なくとも生産プラットフォーム412の下側に第1の層を形成するとき、生産プラットフォーム上で最初に硬化した層がさらに高い信頼性で接着するべく上からも露光できるように、生産プラットフォーム上のさらなる露光ユニットによって光を入射させることができるように透明または半透明であってもよい。
【0017】
タンク404は、高粘性光重合性材料420の充填物を収容する。充填物の材料レベルは、位置選択的露光用に画定されることが意図されている層の厚さよりはるかに高い。光重合性材料の層を画定するために、以下の手順が採用される。生産プラットフォーム412は、(第1の露光工程の前に)その下側が光重合性材料420の充填物に浸され、生産プラットフォーム412の下側とタンク底部406との間に正確に所望の層厚Δ(
図5参照)が残るような程度までタンク底部406に近づくように制御された方法で昇降機構によって降下される。この浸漬プロセスの間、光重合性材料は生産プラットフォーム412の下側とタンク底部406との間の間隙から排除される。層厚さΔが設定された後、所望の形状に硬化させるために、この層に対して所望の位置選択層露光が行われる。特に第1の層を形成するとき、上からの露光もまた透明または半透明の生産プラットフォーム412を介して行われるので、生産プラットフォーム412の下側と光重合性材料との間の接触領域において確実で完全な硬化が起こり、それ故、第1の層の生産プラットフォーム412への良好な接着が保証される。層が形成された後、生産プラットフォームは昇降機構によって再び持ち上げられる。
【0018】
続いてこれらの工程が数回繰り返され、最後に形成された層422の下側からタンク底部406までの距離がそれぞれ所望の層厚さΔに設定され、その上の次の層が所望の方法で位置選択的に硬化される。
【0019】
露光工程に続いて生産プラットフォーム412が持ち上げられた後、露光領域では、
図6に示されるように材料不足が生じる。これは、厚さΔに設定された層を硬化させた後、この層の材料が生産プラットフォームおよびその上に既に形成された成形体の一部と共に硬化されて持ち上げられるからである。したがって、既に形成された成形本体部の下側とタンク底部406との間に欠けている光重合性材料は、露光領域を囲む領域からの光重合性材料420の充填物から充填されなければならない。しかしながら、材料の粘度が高いために、それ自体が成形本体部の下側とタンク底部との間の露出領域に逆流することはなく、材料の窪みまたは「穴」がここに残ることがある。
【0020】
露光領域に光重合性材料を補充するために、細長い混合要素432をタンク内の光重合性材料420の充填物を通して移動させる。
図4~
図8に示す例示的実施形態では、混合要素432は、タンク404の側壁に移動可能に取り付けられた2つの支持アーム430の間に引っ張られる細長いワイヤを含む。支持アーム430は、タンク404の側壁のガイドスロット434内に移動可能に取り付けられてもよく、その結果、支持アーム430間に引っ張られたワイヤ432は、支持アーム430をガイドスロット434内で動かすことにより、タンク底部406と平行に、タンク404に対して移動することができる。細長混合要素432は寸法を有し、その動きはタンク底部に対して案内され、これにより、細長い混合要素432の上縁部は、露光領域の外側におけるタンク内の光重合性材料420の充填物の材料レベルより下に留まる。
図8の断面図に見られるように、混合要素432はワイヤの全長に亘ってタンク内の材料レベルより下にあり、支持アーム430のみがタンク内の材料レベルを超えて突き出ている。細長い混合要素をタンク404内の材料の高さより下に配置することの効果は、細長い混合要素432がタンクに対する移動中に露光領域を通って実質的にその前に材料を移動させることではなく、むしろ、この材料は、わずかな上方への動きを実行しながら混合要素432の上を流れる。
図6に示される位置から、例えば矢印Aで示される方向の新しい位置421への混合要素432の移動が
図7に示される。タンク内の光重合性材料に対するこの種の作用によって、生産プラットフォーム432と露光ユニット410との間の材料が枯渇した露光領域に材料が逆流するように効果的に刺激されることが分かった。
【0021】
タンクに対する細長い混合要素432の移動は、生産プラットフォーム412と露光ユニット410との間の露光領域を通る細長い混合要素432の所望の動きを達成するために、先ず、固定タンク404を用いて、支持アーム430をガイドスロット434に沿って移動させる線形駆動装置によって実行することができる。
図8に示すように、タンク底部406は両側に凹部406’を有する。支持アーム430の下端はこれらの凹部406’内に突出する。これにより、タンク底部406を通る支持アーム430の下端部の動きを妨げることなく、細長い混合要素432をタンク底部406の高さに保持することが可能になる。
【0022】
本発明の一体型コア・シェル鋳型を製造するために、DLPの他の代替方法を使用してもよい。例えば、タンクは回転可能なプラットフォーム上に配置されてもよい。加工物が連続する構築工程の間に粘性プラットフォームから引き出されると、タンクはプラットフォームおよび光源に対して回転されて、粘性ポリマーの新しい層を提供し、その中に構築プラットフォームを浸漬して連続層を構築する。
【0023】
図9は、本発明の一実施形態による、水平方向フィラメント902、ならびにコア900およびシェル部901を接続する傾斜または対角線方向フィラメント(例えば、909、910、911、912)を有する一体型コア・シェル鋳型の概略側面図を示す。上記のDLP印刷法を使用してセラミック鋳型を印刷することにより、コアとシェルとの間の接続点がフィラメントを通して提供されることを可能にするように鋳型を製造することができる。コア・シェル鋳型が印刷されると、印刷されたセラミックポリマー材料を硬化させるために後熱処理工程に供され得る。次いで、超合金タービンブレードの製造に使用される従来の鋳造工程と同様に、硬化セラミック鋳型を使用することができる。特に、フィラメントはタービンブレードの表面に浸出冷却孔のパターンを形成するのと一致して大量に設けられるので、
図2のボールシュート構造の必要性を排除することができる。先端プレナムコア904をコア900に接続する先端ピン905を保持することができる。セラミック鋳型を取り外した後、コア900と先端プレナムコア904との間に、後にろう付けで閉じられ得る先端孔が存在する。一体型コア・シェル鋳型の先端部では、金型シェル901と先端プレナムコア904との間に空隙または空間903が存在する。
【0024】
図9に示されるように、コア900はさらに、限定はしないが、鋳型の先端部分でシェル901に接続され、その延長部分である突起パターン906、および鋳型の基部において鋳型の中心から反対方向に延びる突起パターン907、908のような、鋳型の中心から延びるいくつかの突起パターンを含む。
【0025】
フィラメント902、909、910、911、および912は、好ましくは円筒形または楕円形であるが、湾曲していてもよいし非直線状でもよい。それらの正確な寸法は、特定の鋳造金属部品のための所望のフィルム冷却方式に従って変えられてもよい。例えば、冷却孔は、0.01~2mm2の範囲の断面積を有し得る。タービンブレードでは、断面積は0.01~0.15mm2、より好ましくは0.05~0.1mm2の範囲であってもよく、最も好ましくは約0.07mm2であってもよい。翼の場合、冷却孔は、0.05~0.2mm2、より好ましくは0.1~0.18mm2、最も好ましくは約0.16mm2の範囲の断面積を有し得る。冷却孔の間隔は、典型的には、冷却孔の直径の2倍~10倍の範囲、最も好ましくは冷却孔の直径の約4倍~7倍の範囲の冷却孔の直径の倍数である。
【0026】
フィラメント902の長さは、例えばタービンブレードの壁の厚さのような、鋳造部品の厚さ、および鋳造部品の表面に対して冷却孔が配置される角度によって決まる。典型的な長さは、0.5~5mm、より好ましくは0.7~1mmの範囲であり、最も好ましくは約0.9mmである。冷却孔が配置される角度は、表面に対して約5~35°、より好ましくは10~20°、最も好ましくは約12°である。本発明による鋳造方法は、鋳造部品の表面に対して、従来の機械加工技術を用いて現在利用可能なものよりも小さい角度を有する冷却孔の形成を可能にすることを理解されたい。
【0027】
図10は、タービンブレードを鋳造するために液体金属で充填された一体型コア・シェル鋳型の側面図、および金属が凝固し鋳型が除去された後に形成されたタービンブレードを示す。形成されたタービンブレードは、少なくとも根元部分1000、内側垂直表面1004、ブレードの先端部分の内側水平面1005、およびブレードの高さ全体または全長に沿って、ブレードの前面と背面の両方(すなわちブレードの外面)にある複数の冷却孔(根元部分1000を除く)を含む。
特に、本発明によるタービンブレードは、ブレードの先端部のオーバーハングと、根元部品(すなわち、ブレードスカート)または後縁の少なくとも一部を形成する根元部分1000内の外側部分1001、1002とをさらに含む。
【0028】
本発明による鋳造方法および一体型コア・シェル鋳型により、アクセスできないまたは到達不可能な場所、すなわち
図11に見られるように、前述のオーバーハングおよび外側部分に近接するタービンブレードの外壁上の位置に冷却孔を形成することが可能になることを理解されたい。具体的には、これらの冷却孔は斜めにすなわち傾斜しており、冷却孔と内側キャビティとの交点における第1の点と冷却孔と外側表面との交点における第2の点とを結ぶ仮想線(例えば1101、1102、1103、1104)が、タービンブレードのオーバーハングまたは外側部分と交差するように配置されている。仮想線とオーバーハングまたは外側部分との間の交点は、第2の点よりもタービンブレードの中心から離れている。従来の鋳造技術を使用して製造されたタービンブレードにこれらの冷却孔を形成することができる唯一の方法は、金属ブレードを貫通して破壊的に孔を穿孔することであろう。
【0029】
浸出後、コア・プリント・フィラメントから得られるタービンブレードに生じた穴は、必要に応じてろう付け閉鎖されてもよい。そうでなければ、コア・プリント・フィラメントによって残された穴は、内部冷却通路の設計に組み込まれてもよい。あるいは、金属鋳造工程中に先端プレナムコアを定位置に保持するのに十分な量で先端プレナムコアをシェルに接続するために冷却孔フィラメントを設けてもよい。本発明に従ってコア・シェル鋳型構造を印刷した後、セラミック・コア・フォトポリマー材料の要件に応じてコア・シェル鋳型を硬化および/または焼成してもよい。溶融金属を鋳型に流し込み、一体型コア・シェル鋳型によって提供される形状および特徴を有する鋳造物体を形成してもよい。タービンブレードの場合、溶融金属は、従来のインベストメント鋳造鋳型で用いられることが知られている技術を用いて単結晶超合金タービンブレードに形成される超合金金属であることが好ましい。
【0030】
一態様では、本発明は、同様の方法で製造された他のコア・シェル鋳型の特徴を組み込んだ、または組み合わせた本発明のコア・シェル鋳型構造に関する。以下の特許出願は、これらの様々な態様およびそれらの使用の開示を含む。
【0031】
「統合型キャスティング・コア・シェル構造(INTEGRATED CASTING CORE SHELL STRUCTURE)」と題され、代理人整理番号037216.00036/284976で、2016年12月13日に出願された米国特許出願番号[]。
【0032】
「浮遊チッププレナムを有する一体型キャスティング・コア・シェル構造(INTEGRATED CASTING CORE SHELL STRUCTURE WITH FLOATING TIP PRENUM)」と題され、代理人整理番号037216.00037/284997で、2016年12月13日に出願された米国特許出願番号[]。
【0033】
「鋳造部品を製作するためのマルチピース一体型鋳造コア・シェル構造(MULTI-PIECE INTEGRATED CORE-SHELL STRUCTURE FOR MAKING CAST COMPONENT)」と題され、代理人整理番号037216.00033/284909で、2016年12月13日に出願された米国特許出願番号[]。
【0034】
「キャスティング部品を製造するための標準的なおよび/またはバンパーを製造するためのマルチピース一体型コア・シェル構造(MULTI-PIECE INTEGRATED CORE-SHELL STRUCTURE WITH STANDOFF AND/OR BUMPER FOR MAKING CAST COMPONENT)」と題され、代理人整理番号037216.00042/284909 Aで、2016年12月13日に出願された米国特許出願番号[]。
【0035】
「鋳物部品を製造するための印刷管を有する一体型鋳造コア・シェル構造(INTEGRATED CASTING CORE SHELL STRUCTURE WITH PRINTED TUBES FOR MAKING CAST COMPONENT)」と題され、代理人整理番号037216.00032/284917で、2016年12月13日に出願された米国特許出願番号[]。
【0036】
「鋳造部品製造用の一体型鋳造コア・シェル構造およびフィルター(INTEGRATED CASTING CORE-SHELL STRUCTURE AND FILTER FOR MAKING CAST COMPONENT)」と題され、代理人整理番号037216.00039/285021で、2016年12月13日に出願された米国特許出願番号[]。
【0037】
「非線形穴を有する鋳造部品を製作するための一体型鋳造コア・シェル構造(INTEGRATED CASTING CORE SHELL STRUCTURE FOR MAKING CAST COMPONENT WITH NON-LINEAR HOLES)」と題され、代理人整理番号037216.00041/285064で、2016年12月13日に出願された米国特許出願番号[]。
【0038】
「細根部品を有する鋳造部品を製作するための一体型鋳造コア・シェル構造(INTEGRATED CASTING CORE SHELL STRUCTURE FOR MAKING CAST COMPONENT HAVING THIN ROOT COMPONENTS)」と題され、代理人整理番号037216.00053/2850648で、2016年12月13日に出願された米国特許出願番号[]。
【0039】
これらの出願の各々の開示は、それらが本明細書に開示されているコア・シェル鋳型と併せて使用することができるコア・シェル鋳型およびその製造方法のさらなる局面を開示する限りにおいて、その全体が本明細書に援用される。
【0040】
本明細書は、好ましい実施形態を含む本発明を開示するために、また任意の装置またはシステムを製造および使用することならびに任意の組み込まれた方法を実行することを含めて任意の当業者が本発明を実施することを可能にするために実施例を使用する。本発明の特許性のある範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者が思い付く他の例を含み得る。そのような他の例は、それらが請求項の文字通りの言語と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが請求項の文字通りの言語とはごくわずかに異なる同等の構造要素を含む場合、請求項の範囲内にあることが意図される。記載された様々な実施形態からの態様、ならびにそのような各態様に対する他の既知の均等物は、本願の原理に従って追加の実施形態および技術を構築するために当業者によって混合および適合され得る。