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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066212
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61D 7/00 20060101AFI20220421BHJP
   A61M 31/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A61D7/00 Z
A61M31/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022017424
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2018521171の分割
【原出願日】2016-07-11
(31)【優先権主張番号】709882
(32)【優先日】2015-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(71)【出願人】
【識別番号】518006363
【氏名又は名称】マイケル ラスボーン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ラスボーン
(57)【要約】
【課題】薬物送達デバイスを提供すること、又は少なくとも、有用な選択肢を公共に提供すること。
【解決手段】対象とする哺乳類の体腔に挿入するための送達デバイスについて記載しており、送達デバイスは、1つ以上の成形した含浸質量を受け入れるように適合された弾性フレームを含む。フレームは含浸質量とともに、目的の体腔に挿入可能、保持可能、及び目的の体腔から抜去可能である。含浸質量(単数)又は質量(複数)は、体腔内に保持されたときに質量の各面のほぼ全てを呈して体腔の流体に曝露させるようにフレームに取り付けられている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする哺乳類の体腔に挿入可能、保持可能、及び前記体腔から抜去可能な送達デバイスであって、
弾性フレームと、
1つ以上の含浸質量であって、約0.1~約0.8mmの厚さを有し、前記対象とする哺乳類内における挿入及び保持時に前記対象とする哺乳類に送達するための1種以上の活性剤を含浸させた1つ以上の含浸質量と、
を含み、
前記1つ以上の含浸質量のそれぞれは、少なくとも2つ以上の別個の取付箇所において前記弾性フレームにより支持されている、
送達デバイス。
【請求項2】
前記含浸質量(単数)又は質量(複数)は実質的に層状であり、したがって2つの対向する面を含む、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記1つ以上の含浸質量は平面である、請求項2に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記フレームは、体腔内に保持されたときに前記含浸質量(単数)又は質量(複数)の各面の実質的に全てを呈して前記体腔の流体に曝露させる、請求項2又は3に記載の送達デバイス。
【請求項5】
前記フレームは、「T」、「t」、「Y」、「V」、「C」、「X」若しくは「M」字形、又は叉骨形、凧形若しくは菱形の形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記フレームは展開及び非展開状態を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記フレームは、当該デバイスの本体からの1つ以上の突起を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項8】
前記フレームは、ランド又はボスを含み、前記ランド又はボスの上において、前記1つ以上の含浸質量が前記フレームに対し保持される1つの面の一部、請求項2~6のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項9】
前記含浸質量は、前記フレームの隆起、ボス又はランドに係合するための開口部、スカラップ又は隆起を含む、請求項7又は8に記載の送達デバイス。
【請求項10】
前記フレームは、前記1つ以上の含浸質量を支持するための骨格フレームの形態である、請求項1~9のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項11】
前記フレームはポリマーから形成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項12】
前記ポリマーは、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載の送達デバイス。
【請求項13】
前記含浸質量(単数)又は質量(複数)はポリマーから形成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項14】
約2~約10gのポリマーを含む、請求項13に記載の送達デバイス。
【請求項15】
約1~約8cmのポリマーを含む、請求項13又は14に記載の送達デバイス。
【請求項16】
前記含浸質量(単数)又は質量(複数)の表面積対ポリマーの比は、12:1(表面積:ポリマーの質量)~60:1cm.g-1である、請求項13~15のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項17】
前記ポリマーは、非分解性熱硬化性ポリマー、非分解性熱可塑性ポリマー、生分解性ポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項13~16のいずれか一項に記載の送達デバイス。例えば、前記ポリマーは、シリコーン、エチレン酢酸ビニル、ポリカプロラクトン、天然(ラテックス)ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリメタクリレート、耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリブタジエン、ポリアリールエヘテルケトン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリラティック-グリコール酸共重合体、デンプン、ポリブチレンサクシネート、ポリp-ジオキサン、ポリ-3-ヒドロキシブチレート、又はこれらの組み合わせから形成してよい。
【請求項18】
前記1つ以上の含浸質量は1種以上の活性剤を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項19】
前記1種以上の活性剤は、前記1つ以上の含浸質量の前記ポリマー全体に分散されている、請求項13~18のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項20】
前記活性剤は、
a)天然又は合成ホルモン、
b)抗生物質、抗真菌薬、又は抗ウイルス薬、
c)ペプチド又はタンパク質、
d)駆虫薬、
e)抗炎症薬、
f)ミネラル、
g)ビタミン、
h)微量元素、
i)成長促進剤、及び
j)上記(a)~(i)の任意の組み合わせ
から選択される、請求項1~19のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項21】
前記活性剤は、プロゲステロン、エストラジオール、GnRH、プロスタグランジン、及びメラトニンから選択されるホルモンである、請求項1~20のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項22】
前記活性剤は、ペニシリン、セファロスポリン、マクロライド、フルオロキノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、グリシルシクリン、アミノグリコシド、カルバペネム、又はこれらの組み合わせから選択される抗生物質である、請求項1~21のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項23】
前記活性剤は、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、アセクロフェナク、ジクロフェナク、アセトメタシン、デキシブプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、エトドラク、スリンダク、インドメタシン、ネブメトン、チアプロフェン酸、メロキシカムなど;選択的シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害薬、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、又はこれらの組み合わせから選択される抗炎症薬である、請求項1~22のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項24】
前記1つ以上の含浸質量のうち少なくとも1つが約0.1~約0.95mmの厚さを有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項25】
前記又は各含浸質量は約1~約75重量%の前記活性剤を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項26】
複数の含浸質量の場合、各含浸質量は異なる活性剤を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項27】
複数の含浸質量の場合、前記含浸質量の少なくとも2つが同じ活性剤を含み、前記活性剤を同じ重量%含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項28】
複数の含浸質量の場合、前記含浸質量の少なくとも2つが同じ活性剤を含み、前記同じ活性剤は前記含浸質量のそれぞれに異なる重量%で存在する、請求項1~27のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項29】
複数の含浸質量の場合、前記含浸質量の少なくとも2つが同じ厚さを有する、請求項1~28のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項30】
複数の含浸質量の場合、前記含浸質量の少なくとも2つが異なる厚さを有する、請求項1~29のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項31】
前記含浸質量は実質的に同じ表面積を持つ少なくとも2つの表面を有し、哺乳類への挿入時、両表面積は体腔の流体に実質的に曝露される、請求項1~30のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項32】
哺乳類への挿入時、両表面の前記表面積の少なくとも70~約95%が体腔の流体に曝露される、請求項1~31のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項33】
2つ以上の別個の含浸質量を含み、前記2つ以上の含浸質量の前記表面積(露出している又は隠れている)は体腔の流体に曝露されている、請求項1~32のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項34】
哺乳類への挿入時、前記2つ以上の含浸質量の前記表面積(露出している又は隠れている)の少なくとも約70~約95%が体腔の流体に曝露される、請求項1~33のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項35】
1つ以上の前記層状の含浸質量の前記面は実質的に平行である、請求項2~34のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項36】
前記含浸質量は放出速度調整剤を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の送達デバイス。いくつかの実施形態では、前記放出速度調整剤は、炭酸カルシウムなどの不活性充填剤、塩化ナトリウムなどの塩類、水溶性塩などの孔形成物質、落花生油及び液体パラフィンなどの油、並びにラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤から選択される。
【請求項37】
対象とする哺乳類の体腔に挿入するための送達デバイスを製造する方法であって、
弾性フレームを用意するステップと、
0.95mm未満、より好ましくは約0.1~約0.8mmの厚さを有する含浸質量を成形するステップと、
前記成形した含浸質量が前記弾性フレームにより少なくとも2つ以上の別個の取付箇所において支持されるように、前記成形した含浸質量を前記弾性フレームに取り付けるステップと、
を含む、方法。
【請求項38】
前記1つ以上の含浸質量は、圧縮成形、押出成形、鋳込成形、又は射出成形によって製造される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記1つ以上の含浸質量は、前記フレームへの取り付けを容易にするための少なくとも2つ以上のスリット、アパーチャ、又は開口部を含む、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記取付用開口部は前記含浸質量内に成形される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記1つ以上の成形した含浸質量はそれぞれ前記フレームに取り付けられる、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記1つ以上の成形した含浸質量は前記フレームに取り付けられるが、前記フレームから間隔をおいて配置される、請求項37~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記1つ以上の含浸質量は、前記フレーム上に前記1つ以上の質量の任意の面領域が着座した状態で又は全く着座することなく前記フレームにより保持される、請求項37~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記1つ以上の含浸質量は前記フレームの外側に保持される、請求項37~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記1つ以上の含浸質量は前記フレーム内部に保持される、請求項37~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記含浸質量は、前記フレームに取り付けられると、非平面配置に保持される、請求項37~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記含浸質量は、前記フレームに取り付けられると、平面配置に保持される、請求項37~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
複数の含浸質量が前記フレームに取り付けられる、請求項37~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記1つ以上の質量は前記フレームから取り外された場合、体腔から自発的に出ることができる、請求項37~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記含浸質量は異なる表面積を有する、請求項37~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記送達デバイスは、成ウシ、若雌ウシ、ヒツジ、ブタ、又はラクダにおける使用に適した形状及び大きさのものである、請求項37~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記フレームは、前記デバイスの抜去を補助するための突起を含み、いくつかの実施形態では、前記突起は、コード、紐、又は他の何らかの可撓性材料である、請求項37~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
哺乳類から前記送達デバイスを抜去後、前記1つ以上の含浸質量は最初の活性剤充填量の約40重量%未満を含み、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい、請求項37~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記含浸質量の概念的総表面積の少なくとも約70~約98%が体腔の流体に曝露する、請求項37~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記フレームは、
・挿入可能構成、
・体腔保持可能構成、及び
・抜去構成
を提供する、請求項37~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
請求項1~36のいずれか一項に記載の送達デバイスを動物の体腔に挿入するステップと、その後、ある時間の経過後、前記デバイスを抜去するステップと、を含む、動物の発情周期を調整する方法。
【請求項57】
前記デバイスは動物の膣腔に挿入される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
挿入後、前記デバイスは少なくとも2ng/mLの血漿濃度を維持する、請求項56又は57に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類の体腔又は通路に薬物を送達するための薬物送達デバイス、薬物送達デバイスの製造、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
膣腔などの腔に薬物を送達するための種々のデバイスが知られている。例えば、ニュージーランド特許第200564号明細書は、「Y」字形のデバイスを形成する複数のローブを有する腟内デバイスについて報告している。ニュージーランド特許第200564号明細書のデバイスには、熱硬化性液体形態から形成され、硬化させて固体形態を形成する前に化学物質を中に分散若しくは溶解させたシリコーンゴム又はエチレン酢酸ビニル(EVA)の使用を含む。この化学的に含浸させた固体部分はデバイスを形成してもよく、又は外皮層としてデバイスに適用されてもよい。
【0003】
ニュージーランド特許第207341号明細書は、また、化学的に含浸させた材料でコーティングした「T」字形のスパインから形成された腟内デバイスについて報告している。ニュージーランド特許第207341号明細書は、このスパインがナイロン又はポリプロピレンなどの可撓性熱可塑性プラスチックから形成され、薬物担持コーティングはシリコーンから形成されていると報告している。
【0004】
ニュージーランド特許第230023号明細書は、薬物を含浸させた又はコーティングした複数配置可能なスパインから形成された腟内デバイスについて更に報告している。
【0005】
ニュージーランド特許第286492号明細書は、未硬化のプロゲステロン含有マトリックスを液体として金型に射出することにより形成された、プロゲステロン含有シリコーンゴム材料のマトリックスで覆われたスパインから形成された腟内デバイスについて更に報告している。
【0006】
国際公開第1998/053758号パンフレットとして公開されているPCT特許出願は、ナイロンスパインの周りにプロゲステロン含浸マトリックスを含むブタ用腟内デバイスについて報告している。
【0007】
国際公開第1999/040966号パンフレット(Duirs)として公開されているPCT特許出願は、薬物を含浸させた、又はひだ若しくは羽根を含むポッドの使用について報告している。
【0008】
国際公開第2002/062415号パンフレットとして公開されているPCT特許出願は、対象とする種の膣に挿入するための、プロゲステロンを含浸させた「T」又は「Y」字形のデバイスについて報告している。
【0009】
薬物送達デバイスに関して製造コストは重要な考慮事項である。通常、デバイスの総コストの高い割合を活性剤が占め、この次がデバイスの形成に使用される材料(例えばシリコーン)のコストである。製造の容易さもデバイスのコスト低下に大きく寄与する。使用後にデバイス内に残存する活性剤残留物の量、あるいはDuirsのデバイスなど製造の複雑さに関わらず、前述のデバイスは全て欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、薬物送達デバイスを提供すること、又は少なくとも、有用な選択肢を公共に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様では、本発明は、対象とする哺乳類の体腔に挿入するための送達デバイスに関し、送達デバイスは、
1つ以上の含浸質量を受け入れるように適合された弾性フレームであって、フレームは含浸質量とともに、目的の体腔に挿入可能、保持可能、及び目的の体腔から抜去可能である、弾性フレームを含み、
含浸質量のうち少なくとも1つは少なくとも実質的に層状であり、体腔内に保持されたときに質量の各面のほぼ全てを呈して体腔の流体に曝露させるようにフレームに取り付けられている。
【0012】
更なる態様では、本発明は、対象とする哺乳類の体腔に挿入可能、保持可能、及び体腔から抜去可能な送達デバイスに関し、送達デバイスは、
・弾性フレームと、
・1つ以上の含浸質量であって、約0.95mm未満、より好ましくは約0.1~約0.8mmの厚さを有し、対象とする哺乳類内における挿入及び保持時に対象とする哺乳類に送達するための1種以上の活性剤を含浸させた1つ以上の含浸質量と、
を含み、
1つ以上の含浸質量のそれぞれは、少なくとも2つ以上の別個の取付箇所において弾性フレームにより支持されている。
【0013】
更なる実施形態では、本発明は、対象とする哺乳類の体腔に挿入するための送達デバイスを製造する方法に関し、当該方法は、
弾性フレームを用意するステップと、
0.95mm未満、より好ましくは約0.1~約0.8mmの厚さを有する含浸質量を成形するステップと、
成形した含浸質量が弾性フレームにより少なくとも2つ以上の別個の取付箇所において支持されるように、成形した含浸質量を弾性フレームに取り付けるステップと、を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、フレームは、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、又はこれらの組み合わせなどの天然若しくは合成ポリマーから形成されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、フレームの形状は、「T」、「t」、「Y」、「V」、「C」、「X」若しくは「M」字形、又は叉骨形、凧形若しくは菱形の形態である。
【0016】
一実施形態では、前記含浸質量のうち少なくとも1つは一平面内のフレーム内又はフレーム上に存在し、前記送達デバイスの挿入方向は前記平面に平行である又は前記平面内である。
【0017】
別の実施形態では、前記含浸質量のうち少なくとも1つは、前記送達デバイスの挿入方向と直交する一平面内のフレーム内又はフレーム上に存在する。
【0018】
一実施形態では、含浸質量の全てが一平面内のフレーム内又はフレーム上に保持されており、前記送達デバイスの挿入方向は前記平面に平行である又は前記平面内である。
【0019】
一実施形態では、前記含浸質量(単数)又は質量(複数)のうち少なくとも1つは、動物への送達デバイスの挿入方向に対し角度を成してフレーム内又はフレーム上に保持されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、フレームは展開及び非展開状態を有する。好ましくは、前記展開状態にあるとき、これにより送達デバイスを体腔内に保持する。
【0021】
いくつかの実施形態では、フレームは、デバイスの本体からの1つ以上の突起を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、フレームは、ランド又はボスを含み、ランド又はボスの上に、1つ以上の含浸質量が保持される1つの面の一部。
【0023】
一実施形態では、含浸質量は、フレームの隆起、ボス又はランドに係合するための開口部、スカラップ又は隆起を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、フレームは、1つ以上の含浸質量を支持するための骨格フレームの形態である。
【0025】
いくつかの実施形態では、1つ以上の含浸質量は少なくとも実質的に層状である。
【0026】
いくつかの実施形態では、1つ以上の含浸質量は平面である。
【0027】
一実施形態では、含浸質量はポリマーから形成されている。
【0028】
一実施形態では、送達デバイスは2、3、4、5、6、7、89、又は10gのポリマーを含み、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい。
【0029】
一実施形態では、送達デバイスは1、2、3、4、5、6、7、又は8cmのポリマーを含み、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい。
【0030】
一実施形態では、含浸質量(単数)又は質量(複数)の表面積対ポリマーの比は、12:1(表面積:ポリマーの質量)~60:1cm.g-1であり、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい。
【0031】
一実施形態では、ポリマーは、非分解性熱硬化性ポリマー、非分解性熱可塑性ポリマー、生分解性ポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される。例えば、ポリマーは、シリコーン、エチレン酢酸ビニル、ポリカプロラクトン、天然(ラテックス)ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリメタクリレート、耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリブタジエン、ポリアリールエヘテルケトン(polyarylehetherketone)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリラティック(polylatic)-グリコール酸共重合体、デンプン、ポリブチレンサクシネート、ポリp-ジオキサン、ポリ-3-ヒドロキシブチレート、又はこれらの組み合わせから形成してよい。
【0032】
一実施形態では、1つ以上の含浸質量は1種以上の活性剤を含む。
【0033】
一実施形態では、1種以上の活性剤はポリマー全体に分散されている。
【0034】
一実施形態では、活性剤は、
a)天然又は合成ホルモン、
b)抗生物質、抗真菌薬、又は抗ウイルス薬、
c)ペプチド又はタンパク質、
d)駆虫薬、
e)抗炎症薬、
f)ミネラル、
g)ビタミン、
h)微量元素、
i)成長促進剤、及び
j)上記(a)~(i)の任意の組み合わせ
から選択される。
【0035】
一実施形態では、活性剤は、プロゲステロン、エストラジオール、GnRH、プロスタグランジン、及びメラトニンから選択されるホルモンである。
【0036】
一実施形態では、活性剤は、ペニシリン、セファロスポリン、マクロライド、フルオロキノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、グリシルシクリン、アミノグリコシド、カルバペネム、又はこれらの組み合わせから選択される抗生物質である。
【0037】
一実施形態では、活性剤は、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、アセクロフェナク、ジクロフェナク、アセトメタシン(acetmetacin)、デキシブプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、エトドラク、スリンダク、インドメタシン、ネブメトン(nebumetone)、チアプロフェン酸、メロキシカムなど;選択的シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害薬、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、又はこれらの組み合わせから選択される抗炎症薬である。
【0038】
一実施形態では、1つ以上の含浸質量は、0.95、0.9、0.85、0.8、0.75、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、又は0.45mm未満の厚さを有し、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい。
【0039】
一実施形態では、1つ以上の含浸質量は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、又は0.8mmの厚さを有し、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい。
【0040】
一実施形態では、この又は各含浸質量は、1、5、10、15、20、25、30、35、40 45、50、55、60、65、又は75重量%の活性剤を含み、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい。
【0041】
一実施形態では、複数の含浸質量の場合、各含浸質量は異なる活性剤を含む。
【0042】
一実施形態では、複数の含浸質量の場合、含浸質量の少なくとも2つが同じ活性剤を含み、その活性剤を同じ重量%含む。
【0043】
一実施形態では、複数の含浸質量の場合、含浸質量の少なくとも2つが同じ活性剤を含み、前記同じ活性剤は含浸質量のそれぞれに異なる重量%で存在する。
【0044】
一実施形態では、複数の含浸質量の場合、含浸質量の少なくとも2つが同じ厚さを有する。
【0045】
一実施形態では、複数の含浸質量の場合、含浸質量の少なくとも2つが異なる厚さを有する。
【0046】
一実施形態では、含浸質量は実質的に同じ表面積を持つ少なくとも2つの表面を有し、哺乳類への挿入時、両表面積は体腔の流体に実質的に曝露される。好ましくは、哺乳類への挿入時に、両表面の表面積の少なくとも70、75、80、85、90、又は95%が体腔の流体に曝露される。
【0047】
いくつかの実施形態では、送達デバイスは2つ以上の別個の含浸質量を含み、2つ以上の含浸質量の表面積(露出している又は隠れている)は体腔の流体に曝露されている。好ましくは、哺乳類への挿入時に、2つ以上の含浸質量の表面積(露出している又は隠れている)の少なくとも70、75、80、85、90、又は95%が体腔の流体に曝露される。
【0048】
一実施形態では、送達デバイスは、少なくとも約0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、又は0.6mg.cm-2.日-1の活性剤放出速度を実現し、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい。
【0049】
一実施形態では、1つ以上の含浸質量のそれぞれは少なくとも概ね層状であり、実質的に平行な面を有する。
【0050】
一実施形態では、含浸質量は放出速度調整剤を含む。いくつかの実施形態では、放出速度調整剤は、炭酸カルシウムなどの不活性充填剤、塩化ナトリウムなどの塩類、水溶性塩などの孔形成物質、落花生油及び液体パラフィンなどの油、並びにラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤から選択される。
【0051】
一実施形態では、1つ以上の含浸質量は、圧縮成形、押出成形、鋳込成形、又は射出成形によって製造される。
【0052】
一実施形態では、1つ以上の含浸質量は、フレームへの取り付けを容易にするための少なくとも2つ以上のスリット、アパーチャ、又は開口部を含む。好ましくは、このような取付用開口部は含浸質量内に成形される。
【0053】
一実施形態では、含浸質量はフレームとその場で成形され、フレームは、2つ以上のスリット、アパーチャ、又は開口部を含む。このような実施形態では、含浸質量のシリコンは2つ以上のスリット、アパーチャ、又は開口部に進入し、硬化すると、進入が含浸質量をフレームに固定する。
【0054】
一実施形態では、1つ以上の成形した含浸質量はそれぞれフレームに取り付けられる。
【0055】
一実施形態では、1つ以上の成形した含浸質量はフレームに取り付けられるが、フレームから間隔をおいて配置される。
【0056】
いくつかの実施形態では、1つ以上の含浸質量は、フレーム上に1つ以上の質量の任意の面領域が着座した状態で又は全く着座することなくフレームにより保持される。
【0057】
いくつかの実施形態では、1つ以上の含浸質量はフレームの外側に保持される。
【0058】
別の実施形態では、1つ以上の含浸質量はフレーム内部に保持される。
【0059】
いくつかの実施形態では、含浸質量は、フレームに取り付けられると、非平面配置に保持される。
【0060】
別実施形態では、含浸質量は、フレームに取り付けられると、平面配置に保持される。
【0061】
一実施形態では、複数の含浸質量がフレームに取り付けられる。
【0062】
一実施形態では、1つ以上の質量はフレームから取り外された場合、体腔から自発的に出ることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、含浸質量のそれぞれは異なる表面積を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、送達デバイスは、成ウシ、若雌ウシ、ヒツジ、ブタ、又はラクダにおける使用に適した形状及び大きさのものである。
【0065】
いくつかの実施形態では、フレームは、デバイスの抜去を補助するための突起を含む。いくつかの実施形態では、突起は、コード、紐、又は他の何らかの可撓性材料である。
【0066】
いくつかの実施形態では、哺乳類から送達デバイスを抜去後、1つ以上の含浸質量は、最初の活性剤充填量の40、35、30、25、20、15、10、5、又は1重量%未満を含み、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい。
【0067】
一実施形態では、含浸質量の概念的総表面積(即ち、フレームに接触していてもよい表面積を含む)の少なくとも70、75、80、85、90、95、96、又は98%が体腔の流体に曝露する。
【0068】
いくつかの実施形態では、フレームは、
・挿入可能構成、
・体腔保持可能構成、及び
・抜去構成
を提供する。
【0069】
一実施形態では、送達デバイスは、動物の発情期をコントロールするために使用される。
【0070】
一実施形態では、本発明は、記載したような送達を動物の体腔に挿入するステップと、その後、ある時間の経過後、デバイスを抜去するステップと、を含む、動物の発情周期を調整する方法に関する。好ましくは、送達デバイスは発情期をコントロールするために動物の膣腔に挿入され、デバイスは挿入時にプロゲステロンを放出する。
【0071】
一実施形態では、送達デバイスの使用により、少なくとも2ng/mlの血漿プロゲステロン濃度を維持する又は実現する。
【0072】
本明細書中における「フレーム」への言及は、一体型部材(例えば、成形された若しくは押出成形物から切り出された)又は組み立てられた部材の両方を含むことができる。フレームは、(例えば、体腔内などに)拘束された場合に、フレームを解放することができる又は少なくとも部分的に解放することができる状態に適合できるように、弾性であることが好ましい。
【0073】
本明細書で開示される数の範囲への言及(例えば、1~10)は、この範囲内の全有理数への言及(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10)、並びにまた、この範囲内の任意の範囲の有理数(例えば、2~8、1.5~5.5、及び3.1~4.7)も組み込むことを意図する。
【0074】
本発明はまた、本願の明細書で参照される又は示される部品、要素、及び特徴を、個々に又は集合的に、並びに前記部品、要素、又は特徴の任意の2つ以上の一部若しくは全部の組み合わせを広く含むとしてよく、本明細書中において、本発明が関係する当該技術分野において既知の均等物を有する特定の整数に言及する場合、このような既知の均等物は、個々に説明するかのように本明細書に組み込まれるものとみなされる。
【0075】
本明細書では、特許明細書及びその他の文書を含む外部情報源を参照する場合、これは概して、本発明の特徴について論じるための状況を提供するためである。特に明記しない限り、このような情報源への言及は、あらゆる法域において、このような情報源が従来技術である、又は当該技術分野における共通一般知識の一部を成すことを承認するものとして解釈されるべきではない。
【0076】
「含む(comprising)」という用語は、本明細書中で使用される場合、「少なくとも部分的に~からなる(consisting at least in part of)」を意味する。本明細書においてその用語を含む文を解釈するとき、各文においてその用語が前に置かれた特徴は全て存在する必要があるが、他の特徴も存在し得る。「含む(comprise)」及び「含んでいた(comprised)」などの関連用語は同様に解釈される。
【0077】
本発明の更なる態様は、単なる例として及び添付の図面を参照して記載される以下の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1A】複数の含浸質量を支持するフレームを含む本発明のデバイスの側部斜視図である。
図1B】複数の含浸質量を支持するフレームを含む本発明のデバイスの底部斜視図である。
図1C】展開状態で示される別のデバイスの概略斜視図である。
図1D】非展開状態で示される図1Cのデバイスの概略斜視図である。
図2A-2B】本発明のデバイスの別の設計である。
図3】本研究において検討される種々の腟内送達デバイスそれぞれに関するプロゲステロン血漿濃度対時間(日)のプロットを示す。
図4】本研究において検討される種々の腟内送達デバイスそれぞれに関する、放出されたプロゲステロンの量対時間(日)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明は概して、対象とする哺乳類の体腔に挿入する、保持する、及び対象とする哺乳類の体腔から抜去することが可能な送達デバイスに関する。送達デバイスは、1つ以上の含浸質量を支持する弾性フレームを含み、含浸質量は、0.95mm未満、又はより好ましくは約0.1~約0.8mmの厚さを有し、対象とする哺乳類内における挿入及び保持時に対象とする哺乳類に送達するための1種以上の活性剤を含浸させている。含浸質量のそれぞれは、弾性フレームにより少なくとも2つ以上の別個の取付箇所において支持されている。
【0080】
送達デバイスは、対象とする哺乳類の体腔に挿入することができ、1つ以上の含浸質量を受け入れるように適合された弾性フレームを含む。フレームは含浸質量とともに、目的の体腔に挿入可能、保持可能、及び目的の体腔から抜去可能である。含浸質量のうち少なくとも1つは少なくとも実質的に層状であり、体腔内に保持されたときに質量の各面のほぼ全てを呈して体腔の流体に曝露させるようにフレームに取り付けられている。
【0081】
使用時、送達デバイスは有効量又は濃度の1種以上の活性剤を送達し、所望の生物学的反応を保証すると理解すべきである。
【0082】
従来のデバイスでは比較的多量のシリコーン及びプロゲステロンの使用を必要とし、使用後、デバイス内の活性剤の残留量が高くなる。これに対し、本デバイスは、使用後、大幅に低い残留量を有する。例えば、使用後の送達デバイス内の活性剤残留量は、最初の薬物充填量の40、35、30、25、20、15、10、5%未満である。
【0083】
1.フレーム
フレームは、1つ以上の含浸質量が担持される構造体を提供する。フレームは、「T」、「t」、「Y」、「V」、「C」、「X」若しくは「M」字形、又は叉骨形、凧形、若しくは菱形などのいくつかの異なる形態で提供され得る。
【0084】
送達デバイスはフレームを含み、フレーム上又はフレーム内に含浸質量(単数)又は質量(複数)が取り付けられる。送達デバイスは様々な手法で形成され得る。第1実施形態では、フレーム又は前記フレームの突起は同一平面上に配置されている。別の実施形態では、フレームは複数の突起を含み、少なくとも1つの突起は前記フレームの別の突起に対し異なる平面内に方向付けられている。例えば、フレームの1つの突起は一平面内に配置されてもよく、この平面は、動物への送達デバイスの挿入方向に平行である又はこの方向に一致している。別の実施形態では、フレームの突起は、動物への送達デバイスの挿入方向に対して直交してもよい又は他のある角度にあってもよい。
【0085】
図1に示されているのは、「T」字形に配置されたデバイスである。「T」の頂部はフレームの突起であり、「T」の頂部は、動物への送達デバイスの挿入方向と直交する一平面内にある(即ち、挿入方向は「T」の頂部の平面に「垂直」である)。「T」の軸の平面はまた、送達デバイスの挿入方向に平行である。図1に示すように、「T」の頂部は送達デバイスの軸の平面に垂直な一平面内にある。
【0086】
別の実施形態では、フレーム(図1Cに示される)は「T」字形であり、「T」の頂部と「T」の軸が同一平面(又は少なくとも平行平面)内にあり、平行として動物への送達デバイスの挿入方向。図1Cに示すように、含浸質量(単数)又は質量(複数)は、含浸質量(単数)又は質量(複数)が送達デバイスのフレームの平面と同一平面内にあるようにフレームに取り付けることができる。
【0087】
フレームは、展開及び非展開状態へと形成することができる。非展開状態は、フレームが特定の形状に拘束されている状態である。解放されると、その後、フレームは展開状態へと形成される。例えば、送達デバイスは展開状態で製造され、その後、例えば、分解性テープの使用又はチューブへの挿入によって強制的に非展開状態にされる。哺乳類の体腔に送達されると、フレームは、その展開状態への付勢により展開状態へと展開する。
【0088】
フレームは任意の材料で作製してもよいが、プラスチックから作製されていることが好ましい。プラスチックは分解性であっても非分解性であってもよい。プラスチックは熱可塑性プラスチックであってもよい。例えば、フレームは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリマー、Mater-Biなどのデンプン様多糖類、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリウレタン、ゴム、シリコーン、エチレン酢酸ビニル、ナイロン、又はこれらの組み合わせから形成してもよい。好適なポリマーの特定例としては、ポリアミド(ナイロン)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリメタクリレート、耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリブタジエン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリグリコール酸、ポリラティック(polylatic)酸、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、デンプン、ポリブチレンサクシネート、ポリp-ジオキサノン、ポリ-3-ヒドロキシブチレート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
フレームは、デバイスの本体からの1つ以上の突起を含んでもよい。例えば、フレームは、ランド又はボスを含んでもよく、ランド又はボスの上に、1つ以上の含浸質量の1つの面の一部が保持される。含浸質量は、フレームの隆起、ボス又はランドに係合する開口部、スカラップ、又は隆起を含んでもよい。
【0090】
フレームは1つ以上の含浸質量を支持することができることを前提として、種々の形状で形成することができる。
【0091】
例えば、フレームは、デバイスの基本形状を形成するための骨格足場として形成されてもよい。1つ以上の含浸質量は、したがって、この足場に取り付けられる。
【0092】
フレームは、1つ以上の含浸質量がフレームの交絡内に保持されるように、1つ以上の含浸質量に枠をはめるように機能してもよい。あるいは、1つ以上の含浸質量はフレーム上に配置され、図1及び図2に示すような前述のバス(basses)又はランドによってフレームから間隔を置いて保持されてもよい。
【0093】
2.含浸質量
1つ以上の含浸質量は、送達デバイスが配置されている体腔を介して哺乳類に送達するための1種以上の活性剤を含む。
【0094】
1つ以上の含浸質量はポリマーから形成されている。含浸質量は、非分解性熱硬化性ポリマー、非分解性熱可塑性ポリマー、生分解性ポリマー、又はこれらの組み合わせなどのポリマーから形成されてもよい。例えば、ポリマーは、シリコーン、エチレン酢酸ビニル、ポリカプロラクトン、天然(ラテックス)ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリメタクリレート、耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリブタジエン、ポリアリールエヘテルケトン(polyarylehetherketone)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリクラティック(polyclatic)グリコール酸共重合体、デンプン、ポリブチレンサクシネート、ポリp-ジオキサン、ポリ-3-ヒドロキシブチレート、又はこれらの組み合わせから形成されてもよい。
【0095】
ポリマーは、活性剤が保持されるマトリックスを形成する。体腔内で送達及び保持されると、活性剤がマトリックスから放出される。このようにして送達することで、活性剤をある期間にわたって放出することを可能にし、放出は、活性剤の量、濃度、及び含浸質量の大きさを操作することによってコントロールすることができる。
【0096】
送達デバイスは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10gのポリマーを含み、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、約2~約10、約2~約8、約2~約6、約3~約10、約3~約8、約3~約7、約4~約10、約4~約9、約4~約7、約5~約10、約5~約7、約6~約10、約6~約8、又は約7~約10グラム)。これに対し、別のデバイスは、以下、表1に示すように、より多い量のシリコンを含む。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に記載されているような別のデバイスで使用されるポリマーの体積は本発明の同等のデバイスより大きい。一実施形態では、送達デバイスは、1、2、3、4、5、6、7、又は8cmのポリマーを含み、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、約1~約8、約1~約6、約1~約5、約2~約8、約2~約7、約2~約5、約3~約8、約3~約7、約3~約6、約4~約8、約4~約6、約5~約8、約6~約8cmのポリマー)。
【0099】
本発明のデバイスの特定の設計特性は、高い表面積(含浸質量(単数)又は質量(複数)の)対ポリマー比をもたらす。即ち、本発明のデバイスは上記表1に示されるような他のデバイスと比較して、ポリマーの各単位に対し、含浸質量(単数)又は質量(複数)のより広い表面積を有する。一実施形態では、含浸質量(単数)又は質量(複数)の表面積対ポリマーの比は、12:1(表面積:ポリマー)~60:1cm-1であり、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、含浸質量(単数)又は質量(複数)の表面積対ポリマー重量は、約12:1~約60:1、約12:1~約50:1、約12:1~約40:1、約12:1~約30:1、約12:1~約20:1、約15:1~約60:1、約15:1~約50:1、約15:1~約40:1、約15:1~約30:1、約15:1~約20:1、約25:1~約60:1、約25:1~約50:1、約25:1~約40:1、約25:1~約30:1、約25:1~約20:1、約35:1~約60:1、約35:1~約50:1、約35:1~約40:1、約35:1~約30:1、約35:1~約20:1、約45:1~約60:1、約45:1~約50:1、約45:1~約40:1、約45:1~約30:1、約45:1~約20:1である)。
【0100】
1つ以上の含浸質量は少なくとも実質的に層状である。即ち、1つ以上の含浸質量は実質的に平面形態に成形され、シート状形態を形成する。いくつかの実施形態では、1つ以上の含浸質量は非平面形態に成形されてもよいが、尚そのシート状形態を保持する。例えば、曲面のシートなど。
【0101】
1つ以上の含浸質量は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は0.95mmの厚さを有し、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、約0.1~約0.95、約0.1~約0.9、約0.1~約0.8、約0.1~約0.7、約0.1~約0.5、約0.1~約0.4、約0.1~約0.2、約0.2~約0.95、約0.2~約0.9、約0.2~約0.8、約0.2~約0.6、約0.2~約0.5、約0.3~約0.95、約0.3~約0.9、約0.3~約0.8、約0.3~約0.7、約0.3~約0.5、約0.4~約0.95、約0.4~約0.9、約0.4~約0.8、約0.4~約0.6、約0.4~約0.5、約0.5~約0.8、約0.5~約0.7、又は0.6~約0.8mm)。
【0102】
各含浸質量は、1種の活性剤又は複数種の活性剤を含んでもよい。1種以上の活性剤は含浸質量全体に分散されている。
【0103】
複数の含浸質量が1つのフレームに取り付けられる場合、含浸質量は全て同一であってもよい、又は異なる大きさ、厚さ、及び異なる活性剤を担持するなどの異なる特徴を有する様々な含浸質量がある可能性がある。
【0104】
このようにして、送達デバイスは、活性剤に適したその固有の放出プロファイルをそれぞれが有する種々の活性剤を送達するようにカスタマイズすることができる。
【0105】
例えば、複数の含浸質量がある場合、1つの質量は第1の厚さを有してもよく、他の質量はより厚い又はより薄い異なる厚さを有してもよい。
【0106】
複数の含浸質量がある場合、1つの含浸質量は複数種の活性剤を含んでもよく、他の含浸質量は1種の活性剤又は異なる活性剤の組み合わせを含んでもよい。
【0107】
含浸質量は、異なる濃度の活性剤を含んでもよい。例えば、第1の活性剤は第1の濃度の活性剤を含んでもよく、他の含浸質量は同一の又は異なる活性剤を異なる(即ち、高い若しくは低い)濃度で含んでもよい。
【0108】
様々な活性剤を用いることができる。例えば、活性剤は、天然又は合成ホルモン、抗生物質、抗真菌薬又は抗ウイルス薬、ペプチド又はタンパク質、駆虫薬、抗炎症薬、ミネラル、ビタミン、微量元素、成長促進剤、及びこれらの任意の組み合わせから選択されてもよい。
【0109】
具体例として、活性剤がホルモンである場合、ホルモンは、プロゲステロン、エストラジオール、及びテストステロンから選択されてもよい。
【0110】
活性剤が抗生物質である場合、抗生物質は、ペニシリン、セファロスポリン、マクロライド、フルオロキノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、グリシルシクリン、アミノグリコシド、カルバペネム、又はこれらの組み合わせから選択されてもよい。活性剤が抗炎症薬である場合、抗炎症薬は、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、アセクロフェナク、ジクロフェナク、アセトメタシン(acetmetacin)、デキシブプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、エトドラク、スリンダク、インドメタシン、ネブメトン(nebumetone)、チアプロフェン酸、メロキシカム、選択的シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害薬、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、又はこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0111】
一実施形態では、この又は各含浸質量は、1、5、10、15、20、25、30、35、4045、50、55、60、65、又は75重量%の活性剤を含み、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、約1~約75、約1~約60、約1~約50、約1~約40、約1~約30、約5~約75、約5~約70、約5~約65、約5~約55、約5~約40、約5~約20、約10~約75、約10~約60、約10~約50、約10~約40、約10~約30、約15~約75、約15~約65、約15~約55、約15~約25、約20~約75、約20~約60、約20~約40、約25~約75、約25~約65、約25~約60、約25~約35、約30~約75、約30~約60、約30~約40、約35~約75、約35~約65、約35~約40、約40~約75、約40~約60、約40~約50、約45~約75、約45~約60、約50~約75、約50~約70又は約60~約75重量%の活性剤)。
【0112】
含浸質量を成形する場合、含浸質量は実質的に同じ表面積を持つ少なくとも2つの表面を含み、哺乳類への挿入時、両表面積は体腔の流体に実質的に曝露される。
【0113】
比較すると、背景技術の段落に記載されているような従来技術のデバイスは、スパイン上にコーティングされた活性剤含浸材料のコーティングとして形成されている。このようにして、このようなデバイスは単一の外層を有し、したがって、活性剤含浸材料の体積当たりの表面積が大幅に小さい。
【0114】
一実施形態では、1つ以上の含浸質量のそれぞれは少なくとも概ね層状であり、実質的に平行な面を有する。
【0115】
本デバイスに関しては、哺乳類への挿入時に、両表面の表面積の少なくとも70、75、80、85、90、又は95%が体腔の流体に曝露され、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、両表面の表面積の約70~約95、約70~約85、約70~約80、約75~約95、約75~約85、約80~約95、約80~約90、約85~約95、又は約85~約90%)。
【0116】
いくつかの実施形態では、送達デバイスは2つ以上の別個の含浸質量を含み、2つ以上の含浸質量の表面積(露出している又は隠れている)は体腔の流体に曝露されている。好ましくは、哺乳類への挿入時に、2つ以上の含浸質量の表面積(露出している又は隠れている)の少なくとも70、75、80、85、90、又は95%が体腔の流体に曝露される。
【0117】
含浸質量は、また、ポリマーからの活性剤の溶解を促進する又は拡散を遅延させる放出速度調整剤を含んでもよい。適切な放出速度調整剤の例としては、炭酸カルシウムなどの不活性充填剤、塩化ナトリウムなどの塩類、水溶性塩などの孔形成物質、落花生油及び液体パラフィンなどの油、並びにラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤が挙げられる。
【0118】
3.製造
更なる好適な実施形態では、圧縮成形、押出成形、鋳込成形、又は射出成形などの加工法を使用して物質送達デバイスに活性物質を染みこませてもよい。本方法の利点の1つは、上述したニュージーランド特許第207341号明細書に示すような従来のデバイスの射出成形に必要な数より製造工程が少ないことである。
【0119】
含浸質量は、圧縮成形、押出成形、又は射出成形を使用して製造されることが好ましい。
【0120】
圧縮成形が使用される場合、活性剤はまず、ポリマーと混合される。例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は60重量%の活性剤がポリマーと固定され、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、約1~約60、約1~約45、約1~約25、約1~約20、約5~約60、約5~約40、約5~約30、約5~約20、約5~約15、約10~約60、約10~約50、約10~約40、約10~約25、約10~約20、約15~約60、約15~約35、約15~約25、約20~約60、約20~約50、約20~約40、約25~約60、約25~約45、約25~約35、約30~約60、約30~約50、約30~約40、約35~約60、約35~約45、約40~約60、約40~約50、約45~約60、約45~約50又は約50~約60重量%)。
【0121】
活性物(active)とポリマーの混合物は、その後、混合される。好ましくは、活性物とポリマーはローラーによって混合される。
【0122】
ある量の活性物/ポリマーの混合物が型穴に置かれる。型穴のサイズ及び形状は、所望の寸法を有する含浸質量を作製するように設計されていることは理解されよう。
【0123】
型内に置いた活性物/ポリマーの混合物は、活性物/ポリマーの混合物が重合し、固化された含浸質量へと硬化するまで、約150、300、450、600、750、900、1050、1200、1350、1500、1650、1800、1950、2100、2250、2400、2550、2700、2850、又は3000psiの圧力下において、約50、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、又は300℃まで加熱され、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい。冷却されると、含浸質量はフレームに取り付けることができる。
【0124】
押出成形が使用される場合、活性剤は、まず、ポリマーと混合される。例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は60重量%の活性剤がポリマーと固定され、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、約1~約60、約1~約45、約1~約25、約1~約20、約5~約60、約5~約40、約5~約30、約5~約20、約5~約15、約10~約60、約10~約50、約10~約40、約10~約25、約10~約20、約15~約60、約15~約35、約15~約25、約20~約60、約20~約50、約20~約40、約25~約60、約25~約45、約25~約35、約30~約60、約30~約50、約30~約40、約35~約60、約35~約45、約40~約60、約40~約50、約45~約60、約45~約50又は約50~約60重量%)。
【0125】
活性物とポリマーとの混合物は、その後、混合される。活性物とポリマーはブレード付きスターラの使用によって混合されることが好ましい。
【0126】
活性物/ポリマーの混合物は、その後、所望の含浸質量の断面に合致する断面形状を有する金型を有する押出成形機を使用して押し出される。
【0127】
押し出された含浸質量はまたその後、フレームに取り付ける前に特定の寸法に切断してもよい。
【0128】
射出成形が使用される場合、活性剤はまず、ポリマーと混合される。例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は60重量%の活性剤がポリマーと固定され、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、約1~約60、約1~約45、約1~約25、約1~約20、約5~約60、約5~約40、約5~約30、約5~約20、約5~約15、約10~約60、約10~約50、約10~約40、約10~約25、約10~約20、約15~約60、約15~約35、約15~約25、約20~約60、約20~約50、約20~約40、約25~約60、約25~約45、約25~約35、約30~約60、約30~約50、約30~約40、約35~約60、約35~約45、約40~約60、約40~約50、約45~約60、約45~約50又は約50~約60重量%)。
【0129】
活性物とポリマーとの混合物は、その後、混合される。活性物とポリマーはブレード付きスターラの使用によって混合されることが好ましい。
【0130】
金型は、内部チャンバが含浸質量の所望の寸法に合致するような寸法及び形状のものが選択される。金型の2つの半片は共に固定され、活性物/ポリマーの混合物が金型に注入される。金型を加熱し、活性物/ポリマーの混合物を含浸質量へと硬化させる。
【0131】
金型から取り外されると、含浸シートはフレームに取り付ける前に冷却させる。
【0132】
4.使用
本発明のデバイスは、畜牛、若雌ウシ、ヒツジ、ラクダ、ブタ、及びヤギなどの家畜動物を含む哺乳動物に活性剤を投与するために使用することができる。
【0133】
一実施形態では、送達デバイスは、動物の発情期をコントロールするために使用される。発情期のコントロールには、通常、デバイスが十分なプロゲステロンの血漿濃度を実現することを必要とする。例えば、ウシ動物では、発情期を効果的にコントロールするためには少なくとも2ng/mLの血漿濃度を維持することが望まれる。ブタでは、発情期をコントロールするためには少なくとも8~10ng/mLの血漿濃度が望まれる。
【0134】
本発明の一態様は、動物の発情周期を調整する方法に関する。当該方法は、記載したような送達を動物の体腔に挿入するステップと、その後、ある時間の経過後、デバイスを抜去するステップと、を含む。好ましくは、送達デバイスは発情期をコントロールするために動物の膣腔に挿入され、デバイスは挿入時にプロゲステロンを放出する。
【0135】
本発明の利点としては、少なくとも、ニュージーランド特許第200564号明細書及び国際公開第1999/040966号パンフレットに記載されているような従来のデバイスに比べて低コストの製造プロセス、並びにまた、本発明のデバイスの使用を前提とした活性剤のより効果的な使用によって、使用後のデバイス内の残留活性剤が減少することが挙げられる。
【0136】
例えば、本発明の利点は、動物からの抜去時、1つ以上の含浸質量が、物質の高い薬物利用を示すことである。これは、最少量の1種以上の活性剤(単数)又は活性剤(複数)が環境へと送達されることを意味する。
【0137】
例えば、使用後、消費後の含浸質量は40、35、30、25、23、21、19、17、15、13、11、9、7、5、3、1重量%未満の活性剤を含有し、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、約1~約40、約1~約35、約1~約30、約1~約25、約1~約21、約1~約15、約1~約9、約3~約40、約3~約35、約3~約30、約3~約25、約3~約21、約3~約17、約3~約13、約3~約7、約5~約25、約5~約21、約5~約17、約5~約13、約5~約9、約7~約25、約7~約21、約7~約17、約7~約15、約7~約11、約9~約25、約9~約21、約9~約17、約9~約11、約11~約25、約11~約21、約11~約17、約11~約15、約13~約25、約13~約21、約13~約19、約15~約25、約15~約19、約17~約25、約17~約21、約19~約25、約19~約21、約21~約25重量%の活性剤)。
【0138】
換言すると、使用後、含浸質量は活性剤の最初の量の35、30、25、23、21、19、17、15、13、11、9、7、5、3、1%未満を含有し、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、約例えば、最初の量の活性剤の約1~約25、約1~約21、約1~約15、約1~約9、約3~約25、約3~約21、約3~約17、約3~約13、約3~約7、約5~約25、約5~約21、約5~約17、約5~約13、約5~約9、約7~約25、約7~約21、約7~約17、約7~約15、約7~約11、約9~約25、約9~約21、約9~約17、約9~約11、約11~約25、約11~約21、約11~約17、約11~約15、約13~約25、約13~約21、約13~約19、約15~約25、約15~約19、約17~約25、約17~約21、約19~約25、約19~約21、約21~約25%)。
【0139】
一実施形態では、送達デバイスは、少なくとも約0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、又は0.6mg.cm-2.日-1の活性剤放出速度を実現し、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい(例えば、0.1~約0.6、約0.~約0.55、約0.1~約0.4、約0.1~約0.3、約0.15~約0.6、約0.15~約0.5、約0.15~約0.4、約0.2~約0.6、約0.2~約0.5、約0.2~約0.4、約0.2~約0.35、約0.25~約0.6、約0.25~約0.55、約0.25~約0.4.0.3~約0.6、約0.3~約0.5、約0.35~約6、約0.35~約0.45、約0.4~約0.6、約0.4~約0.55、約0.45~約0.6mg.cm-2.日-1)。
【0140】
本発明の更なる利点は、哺乳類において使用するための薬物送達デバイスを最適化するために、活性物放出プロファイルを変更及び/又はカスタマイズできる容易さである。染みこませた活性剤の放出の修正は、例えば、含浸質量の表面積、活性剤の量、活性剤の濃度、使用されるポリマーのタイプ、又はこれらの組み合わせを調整することによって実現されてもよい。
【0141】
物質送達デバイスは、膣内的に投与される薬物送達デバイスであるように構成された適切な設計のプラスチック形状物に取り付けてもよい。膣内的に投与される物質送達デバイスは、雌ウシ、ヒツジ、ラクダ、ブタ、シカ、ヤギ、又は任意の他の動物(ネコ若しくはイヌなど)、又はヒトの膣内に保持されるように構成されてもよい。
【0142】
本発明の薬物送達デバイスは、哺乳類の瘤胃、直腸、又は膣などの様々な腔に投与されてもよい。
【0143】
本発明を適用してよい体腔の例としては、反芻動物の膣、瘤胃、単胃動物の胃、結腸、直腸、皮下組織、筋組織、尿道、子宮、又は眼が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
例えば、いくつかの実施形態では、薬物送達デバイスは、雌ウシ、ヒツジ、シカ、又はヤギなどの反芻動物に活性剤を送達するための瘤胃内送達デバイスである。例えば、保持を確実とするために(反芻時に瘤胃からデバイスが除去される可能性を前提として)、デバイスは、保持機構を含んでもよい。1つのこのような例は、デバイスが「T」又は「Y」字形などの除去を妨げる形状を有するものである。薬物送達デバイスのフレームは、
・挿入可能構成、
・体腔保持可能構成、及び
・抜去構成
を提供してもよい。
【0145】
例えば、薬物送達デバイスは、送達時、デバイスが除去を防止する保持可能形態へと「開く」ように、食道を通じた投与を可能にする起点を有し得る。
【0146】
別の実施形態において、薬物送達デバイスは腟内デバイスであってもよい。例えば、薬物送達デバイスの形状は、動物の膣内に容易に且つ快適に適合するようなものである。薬物送達デバイスの含浸質量には、十分な活性剤(プロゲステロンなど)を染みこませ、生物学的効果(例えば、プロゲステロンの場合、発情周期をコントロールする)を有するのに十分な外来性活性剤(即ちプロゲステロン)を与える。薬物送達デバイスはまた、所望の投与期間の後の取り出しを容易にするためのコードを有してもよい。
【0147】
送達される活性剤としては、天然又は合成ホルモン、抗生物質、抗真菌薬、又は抗ウイルス薬、ペプチド又はタンパク質、駆虫薬、抗炎症薬、ミネラル、ビタミン、微量元素、成長促進剤、及びこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0148】
物質送達デバイスに組み込むことができる物質の例としては、プロゲステロン、エストラジオール、GnRH、プロスタグランジン、メラトニンを含む天然又は合成ホルモンなどの発情期のコントロールに使用される薬物;抗生物質、抗真菌薬、又は抗ウイルス薬などの感染症をコントロールするために使用される薬物;タンパク質類及びペプチド類などの薬物;イベルメクチン、アバーメクチン(abermectin)、オクスフェンダゾール、マクロリティック(macrolytic)ラクトン、オクスフェンダゾール、又はレバミゾールなどの駆虫薬を含む、寄生虫感染をコントロールするために使用される薬物;ミネラル、ビタミン、微量元素、成長促進剤などの栄養素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
腟内デバイスにおいて、好適な活性剤としては、天然又は合成ホルモンが挙げられる。
【0150】
瘤胃内デバイスにおいて、好適な活性剤としては、駆虫剤などの駆虫薬、抗鼓脹剤(anti-bloat)、ミネラル及び/又はビタミンが挙げられる。
【0151】
図1A図1Bを参照すると、フレーム2上に配置された複数の含浸質量1を有する「T」字形形態の薬物送達デバイスが示されている。このようなデバイスは、薬物送達剤(drug delivery agent)の腟内又は瘤胃内投与に適し得る。
【0152】
図2A及び図2Bを参照すると、別の設計を有する薬物送達デバイスの図が示されている。このような設計は、薬物送達デバイスの腟内投与に適し得る。図2A及び図2Bに示すように、デバイスは複数の含浸質量を含むことができ、そのうちのいくつかは異なる大きさのものである。例えば、図2A及び図2Bのデバイスは、等しくない大きさの3つの含浸質量を含み、本発明の2つの薄いシートは等しい大きさのものであり、残りのシートは異なる大きさのものである。全シートに活性剤を染みこませている。
【0153】
物質送達デバイスに異なる投与量の活性物質を充填し、これにより、動物又はヒトの体腔に送達される用量を変更する機会を与えることができることは理解され得る。したがって、物質送達デバイスは、特定用途及び動物のニーズに適した特定の薬物送達プロファイルを可能にする。
【0154】
物質送達デバイスからの薬物放出は、表面積、シリコーンの厚み、又は薬物充填量に左右される。したがって、速度(1日当たりの量)、程度(放出総量又は薬物使用量)、及び継続時間(治療の長さ)が予め設定され得る。加えて、物質送達デバイスは、異なるポリマーで製造してもよく、それぞれの異なるポリマーが適切な設計の同一プラスチック形状物に取り付けられ、これにより、同一デバイスから同時又は連続的のいずれかにおける、異なる薬物の異なる放出速度を可能にする。
【0155】
図1及び図2は、動物又はヒトの種々の体腔に挿入するのに適した適切な設計のプラスチック形状物上に取り付けられた物質送達デバイスを組み込むいくつかの可能な非限定的な設計を示す。様々な体腔には異なる形状が必要であり、また、様々な種の同じ体腔には様々な大きさの同一形状が必要であることは明らかである。様々な大きさ及び形状は、挿入の容易さ、除去の容易さ、快適性、安全性、及び様々な種の様々な体腔における形状の保持を可能にする。
【0156】
本発明の態様を単なる例として記載してきた。特許請求の範囲の範囲を逸脱することなく本発明の態様に修正及び追加を行ってもよいと理解すべきである。
【0157】
実施例1-プロゲステロン送達デバイス
本発明の送達デバイスの使用により、物質送達デバイスの表面積、厚さ、及び薬物充填量を調整する機能を提供し、配合者が用量レベルに影響すること、及び活性剤放出プロファイルを種々の手段により調整することを可能にする。
【0158】
例えば、プロゲステロンの量、重量パーセントプロゲステロン充填量、シリコーン厚さ、及び/又は表面積を最適化することによって、成ウシの発情期コントロールのためのプロゲステロンを含む既存の膣内的に投与される薬物送達デバイス内の残留プロゲステロンに関連する問題を軽減又は克服してもよい。最適な充填量又はシリコーン厚さの変更によるプロゲステロン使用量の向上により、より効率的な薬物放出を生じさせ、残留物の減少をもたらす。したがって、特定の治療ニーズを満足しつつ最小限の残留物をもたらす一方で、特定の用量要件に合致するプロゲステロンの放出が実現される。
【0159】
腟内送達デバイスを、製造し、畜牛の膣に挿入し、治療の継続時間にわたり所定の位置に留めることができ、治療の最後に膣から取り出すことができ、現時点で市場にある市販の腟内挿入物に類似する生物学的効果を生じさせることができることを実証するために一連の実験を設計した。
【0160】
1.無傷動物における研究
この研究では、無傷動物の血漿プロゲステロンプロファイルに対する、表面積、含浸質量の厚さ、配合物充填量(%w/w)などの種々の送達デバイス特性の効果を調べる。
【0161】
1.1 手法
この研究では、体重300~450kgの24頭の卵巣無傷のBrangus種畜牛が表2に示すような腟内送達デバイスを受け入れた。
【0162】
図1は、in vivo研究で使用したデバイスを示す。実質的に、in vivo試験で使用したデバイスは、14.5cmの先端間距離及び12.0cmの本体長さを有するナイロンスパインを含んでいた。ナイロンスパインは、充填量15.8%w/w又は21%w/wのプロゲステロンを含む種々の厚さ(0.3又は0.5mm)のシリコーンを含むパッドで覆われていた。デバイスの表面積は115~450cmにおいて変更し、初期充填量は400~2,570mgの範囲であった。シリコーン含浸質量の重量は1,800~12,500mgの範囲であり、体積は35~225cmで変化させた。含浸質量はヒンジと同一平面内に方向付けたが、同様にヒンジに垂直にすることもできた。
【0163】
登録された全ての雌ウシに対し腟内送達デバイスの挿入前に血液採取を行った。この群から、試験の最初にゼロプロゲステロンレベルを示した12頭の雌ウシを選択し、データ分析に含めた。このような動物は腟内送達デバイスから発生する外因性プロゲステロンによりその内因性のプロゲステロンが抑制されているため、これら雌ウシの血液中で測定されるプロゲステロンレベルは腟内送達デバイスからのみ発生するものである。腟内送達デバイスはプラスチック製アプリケータを使用して膣内に投与した。送達デバイスは除去するまで7日間所定の位置に残した。
【0164】
試験中、動物の健康状態、粘液産生及び保持率を記録した。血液サンプルをヘパリン添加管中に、挿入の直前、治療期間の各日、及び挿入物の除去後3日間、日常的に採取した。血漿を遠心分離によって分離し、後のプロゲステロン分析のために-20℃で保管した。血漿中のプロゲステロンの濃度は、RIA Progesterone Kit(Beckman Coulter)を使用して判定した。プロゲステロン血漿濃度対時間(日)をプロットした。
【0165】
【表2】
【0166】
第7日に除去した腟内送達デバイスを浄水で洗い、空気乾燥させ、残留プロゲステロン含有量が特定されるまで保管した。残留プロゲステロン含有量は、腟内送達デバイスの含浸質量を250mLプラスチックびんに入れることを含むアルコール抽出法を使用することにより特定した。これに、200mLSDA(50mL/Lメタノールを含有する変性エタノール)を添加した。プロゲステロンが完全に抽出されるまでびんを17時間超放置し、時折手で振盪させた。適切な希釈後、薬物含有量を239nmの紫外線によって定量化した。
【0167】
研究の最後に、膣内に尚残存する腟内送達デバイスの数を記録した。投与した初期数の知識と挿入期間の終了時に動物の膣内に尚残存する数から保持率を特定した。
【0168】
除去日に、挿入物に対する腟の反応を、治療期間の最後に粘液産生の出現を観察することにより判定した。
【0169】
1.2 結果
全ての挿入物が7日間の挿入期間にわたって保持され、この研究では100%の保持率をとなった。この保持率は市販の腟内挿入物と同等である。
【0170】
除去時に認められた粘液の量は腟内挿入物間で異なっていた。腟内挿入物が小さいほど腟分泌物は少量であった。最小表面積の腟内送達デバイスは、市販のCIDR畜牛挿入物で観察された量と同様又はこれをわずかに超える量を産生することが認められた。最大表面積の腟内送達デバイスは、多量の透明粘液分泌物を産生することが認められ、従来市販されているPRIDコイル挿入物を使用した場合に認められる量を想起させるものであった。
【0171】
雌ウシにおける血中濃度を図3に示す。
【0172】
試験した全ての腟内送達デバイスが、市販の腟内挿入物に類似する血漿プロゲステロンプロファイルを生成した。全ての腟内送達デバイスが、プロゲステロン血漿レベルの上昇を生じ、この上昇はその後、送達デバイスが除去されるまで持続した。腟内送達デバイスの除去後、血漿プロゲステロンレベルは基本レベルに低下した。
【0173】
腟内送達デバイス1(115cm、21%w/w、0.5mm)及び腟内送達デバイス2(115cm、21%w/w、0.3mm)では、含浸質量表面積(115cm)及び薬物充填量(21%w/w)を一定に維持した場合における血漿プロゲステロンレベルに対する含浸質量厚さの影響を比較した。異なる厚さの含浸質量腟内送達デバイスは、同様の血漿プロゲステロンレベル上昇及び維持を示した。腟内送達デバイス4(450cm、21%w/w、0.5mm)及び腟内送達デバイス5(450cm、21%w/w、0.3mm)では、表面積(450cm)を有するより大きな含浸質量及び同一の薬物充填量(21%w/w)を一定に維持した場合における、血漿プロゲステロンレベルに対する含浸質量の厚さの影響も比較した。
【0174】
腟内送達デバイス5(450cm、21%w/w、0.3mm)及び腟内送達デバイス6(450cm、15.8%w/w、0.3mm)では、表面積(450cm)及び厚さ(0.3mm)を一定に維持した異なる含浸質量におけるプロゲステロンの濃度(%w/w)の影響を比較した。異なる重量パーセントの腟内送達デバイスは同様の血漿プロゲステロンレベル上昇及び維持を示した。
【0175】
大きな腟内送達デバイス(デバイス4、5及び6-450cm)は、中サイズのデバイス(デバイス3-195cm)及び小サイズのデバイス(デバイス1及びデバイス2-115cm)に比べてより高い血漿レベルを示した。
【0176】
この結果は、熱帯畜牛(乳産出量25L超)、又は例えば、高泌(45L超)ホルスタイン種畜牛において使用が必要とされるような種々の送達プロファイルのために表面積を変更し、例えば、デバイスをカスタマイズできることを意味する。
【0177】
表3は、7日間の挿入期間後の研究で検討された異なる腟内送達デバイスそれぞれの初期プロゲステロン充填量、重量パーセント、及び残留プロゲステロン含有量を示す。
【0178】
【表3】
【0179】
挿入前の初期プロゲステロン充填量、及び挿入物から7日間で放出されたプロゲステロンの量は両方とも、含浸質量厚さ及び表面積によって変化した。任意の所与の表面積において、残留プロゲステロン充填量及び初期充填量の残留比率は最も薄い腟内挿入物において最低であった。放出されたプロゲステロンの1日当たりの量は、含浸質量厚さ又は初期プロゲステロン充填量とは関係なく、同一表面積の挿入物では同じであった。放出されたプロゲステロンの1日当たりの量は挿入物の表面積の増加とともに増加した。単位面積当たりの1日当たりに放出されたプロゲステロンの量は研究した全ての挿入物において同様であった。
【0180】
2. 無傷動物における研究-in vivo薬物放出速度
2.1 手法
この研究では、体重300~450kgの72頭の卵巣無傷のBrangus種畜牛が、様々な重量パーセント薬物充填量を有して作製された種々の表面積及び外皮厚さの腟内送達デバイスを受け入れた(表1を参照)。腟内送達デバイスのin vivo薬物放出プロファイルは、腟内送達デバイスを、プラスチック製アプリケータを使用して畜牛の膣内に投与し、それらを種々の時限(3、4、5、6及び7日間)にわたって所定の位置に残した後、腟内送達デバイスを除去する(1時限当たりn≧2)ことによって特定した。除去後、各腟内送達デバイス内に残存するプロゲステロンの量を、各デバイス内において、腟内送達デバイスの含浸質量を250mLプラスチックびんに入れることを含むアルコール抽出法を使用して決定した。これに、200mLのSDA(50mL/Lメタノールを含有する変性エタノール)を添加した。プロゲステロンが完全に抽出されるまでびんを17時間超放置し、時折手で振盪させた。適切な希釈後、薬物含有量を、239nmの紫外線によって定量化した。腟内送達デバイスから放出されたプロゲステロン量対時間(日)のプロットをグラフ化した。
【0181】
2.2 結果
挿入の継続時間の全体を通して、腟内送達デバイスのそれぞれは市販の腟内デバイスと同様に、より多くのプロゲステロン放出した。
【0182】
図4は、本研究において検討される種々の腟内送達デバイスそれぞれに関する、放出されたプロゲステロンの量対時間(日)のプロットを示す。
【0183】
腟内送達デバイス1(115cm、21%w/w、0.5mm)と腟内送達デバイス2(115cm、21%w/w、0.3mm)とを比較した場合、及び送達デバイス4(450cm、21%w/w、0.5mm)と腟内送達デバイス5(450cm、21%w/w、0.3mm)とを比較した場合、表面積及びプロゲステロン濃度(%w/w)を一定に維持し、含浸質量の厚さのみを変化させた場合、同様のin vivoプロゲステロン放出プロファイルが生じることが分かる。
【0184】
この結果は、より薄い含浸質量(単数)又は質量(複数)によって同等のプロゲステロン放出プロファイルを実現することを可能にする。
【0185】
腟内送達デバイス3(195cm、15.8%w/w、0.3mm)及び腟内送達デバイス6(450cm、15.8%w/w、0.3mm)は、腟内送達デバイスの表面積を増加させると、放出される薬物の量の増加をもたらすことを示す。この観察結果は、送達デバイス1(115cm、21%w/w、0.5mm)を送達デバイス4(450cm、21%w/w、0.5mm)と、及び送達デバイス2(115cm、21%w/w、0.3mm)を送達デバイス5(450cm、21%w/w、0.3mm)と比較したときに支持される。
【0186】
この結果は、熱帯畜牛(乳産出量25L超)、又は例えば、高泌(45L超)ホルスタイン種畜牛における使用が必要とされるような種々の送達プロファイルのために表面積を変更し、例えば、デバイスをカスタマイズできることを意味する。
【0187】
各異なる腟内送達デバイスの薬物放出速度を推定し、表4に示す。
【0188】
【表4】
【0189】
表4は、同一表面積を有する全ての挿入物は、研究した各表面積における薬物充填量及び含浸質量の厚さを問わず、薬物を同一放出速度で放出したことを示す。なぜなら、本研究における各挿入物は、必要に応じて重量パーセント充填量が10%w/wを確実に超えるように設計されていたからである。この情報を使用して、挿入期間にわたり適切な放出速度で十分なプロゲステロンを送達し、畜牛の発情周期を完全にコントロールする、低コストで製造できる腟内挿入物となるために必要な最小量のシリコーン及びプロゲステロンをもたらす適切な放出速度を有する腟内送達デバイスを設計することができる。
【0190】
表5は、7日間の挿入期間後の研究で検討された種々の腟内送達デバイスそれぞれの初期プロゲステロン充填量、重量パーセント、及び残留プロゲステロン含有量を示す。
【0191】
【表5】
【0192】
挿入前の初期プロゲステロン充填量、及び挿入物から7日間で放出されたプロゲステロンの量は、含浸質量厚さ及び表面積によって変化した。任意の所与の表面積において、残留プロゲステロン充填量及び初期充填量の残留比率は最も薄い腟内送達デバイスにおいて最低であった。放出されたプロゲステロンの1日当たりの量は、含浸質量厚さ又は初期プロゲステロン充填量とは関係なく、同一表面積の腟内送達デバイスでは同じであった。放出されたプロゲステロンの1日当たりの量は挿入物の表面積の増加とともに増加した。単位面積当たりの1日当たりに放出されたプロゲステロンの量は研究した全ての腟内送達デバイスにおいて同様であった。
【0193】
残留物の観察結果は、市販の挿入物に対する腟内送達デバイスの優位を強調するものである。より薄い含浸質量(0.3mm)の使用により、市販の挿入物(例えば、挿入の7日後、それぞれ1250mg及び730mgの残留プロゲステロン含有量を示すCIDR1900畜牛挿入物及びCIDR1380畜牛挿入物)と比較して腟内送達デバイス内に残存するプロゲステロンの残留量が減少する(90mg未満)。
【0194】
実施例3-押出成形を使用したフラットシートの製造
プロゲステロン(21重量%)を正確に計量し、十分な量の正確に計量したシリコーン材料に加え、ブレード付きスターラによって均一に混合した。
【0195】
シリコーン/プロゲステロン混合物をバレルに供給した。その後、プラスチックを、目的部品の断面形状を有する特別仕様のスチール金型の開口部から押し出し、フラットシート連続工作物を形成した。
【0196】
工作物は冷却し、その後、射出成形により製造した予備形成されたスパインに取り付ける前に、既定の形状のカッターを使用することにより所望の形状に切断した。
【0197】
実施例4-射出成形を使用したフラットシートの製造
プロゲステロン(21重量%)を正確に計量し、十分な量の正確に計量したシリコーン材料に加え、ブレード付きスターラによって均一に混合した。
【0198】
金型の2つの半片を確実に閉じ、材料が注入されている間、油圧駆動式クランプユニットで十分な力をかけて金型を確実に閉じた状態に維持した。
【0199】
次に、混合物を射出成形機に供給し、射出ユニットによって金型へと送った。正確に計量した量のシリコーン/プロゲステロン混合物を、その後、金型に注入した(ショット)。金型内のシリコーンを、その後、加熱し、シリコーンを硬化させた。
【0200】
十分な時間の経過後、加熱されたシリコーン/プロゲステロンフラットシートを金型から取り出した。部品が射出されると、次のショットの注入のために金型を閉じた状態で固定した。
【0201】
硬化済みのシリコーン/プロゲステロンフラットシート部品を、その後、冷却させた。冷却した硬化済みフラットシートを、その後、射出成形によって製造された予備形成したスパインに取り付けた。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A-2B】
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
国際公開第2002/062415号パンフレットとして公開されているPCT特許出願は、対象とする種の膣に挿入するための、プロゲステロンを含浸させた「T」又は「Y」字形のデバイスについて報告している。
米国特許出願第2011/056501号明細書は、子宮内システム、これらのシステムを製造するための方法、および治療的に活性な物質を送達するための方法を開示する。米国特許第6,444,224号明細書は、ブタへの挿入および保持に適した膣内装置を開示する。
薬物送達デバイスに関して製造コストは重要な考慮事項である。通常、デバイスの総コストの高い割合を活性剤が占め、この次がデバイスの形成に使用される材料(例えばシリコーン)のコストである。製造の容易さもデバイスのコスト低下に大きく寄与する。使用後にデバイス内に残存する活性剤残留物の量、あるいはDuirsのデバイスなど製造の複雑さに関わらず、前述のデバイスは全て欠点を有する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
〔先行技術文献〕
〔特許文献〕
【特許文献1】ニュージーランド特許第200564号明細書
【特許文献2】ニュージーランド特許第207341号明細書
【特許文献3】ニュージーランド特許第230023号明細書
【特許文献4】ニュージーランド特許第286492号明細書
【特許文献5】国際公開第1998/053758号
【特許文献6】国際公開第1999/040966号
【特許文献7】国際公開第2002/062415号
【特許文献8】米国特許出願第2011/056501号明細書
【特許文献9】米国特許第6,444,224号明細書
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする哺乳類の体腔に挿入可能、保持可能、及び前記体腔から抜去可能な送達デバイスであって、
弾性フレームと、
1つ以上の含浸質量であって、約0.1~約0.8mmの厚さを有し、前記対象とする哺乳類内における挿入及び保持時に前記対象とする哺乳類に送達するための1種以上の活性剤を含浸させた1つ以上の含浸質量と、
を含み、
前記1つ以上の含浸質量のそれぞれは、少なくとも2つ以上の別個の取付箇所において前記弾性フレームにより支持されている、
送達デバイス。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする人間以外の哺乳類の体腔に挿入可能、保持可能、及び前記体腔から抜去可能な送達デバイスであって、
前記送達デバイスは、
弾性フレームと、
前記哺乳類内への挿入時に体腔の流体に曝露される2つの対向する表面を有する1つ以上のシートであって、前記シートは、圧縮成形、押出成形、鋳込成形、又は射出成形によって形成され、かつ、1つ以上の活性剤を含浸させており、前記シートはポリマーから形成され、かつ、約0.1から約0.95mmの厚さを有する、1つ以上のシートと、
を含み、
前記1つ以上のシートのそれぞれは、少なくとも2つ以上の別個の取付箇所において前記弾性フレームにより支持されており、
前記1つ以上のシートの表面積対前記1つ以上のシートの質量の比(表面積:質量)は、12:1~60:1cm .g -1 である、
送達デバイス。
【請求項2】
前記1つ以上のシートは、
a)実質的に層状であり、したがって2つの対向する面を含む、又は、
b)平面である、又は
c)フレームの隆起、ボス又はランドに係合するための開口部、スカラップ又は隆起を含む、又は
d)1種以上の活性剤を含む、又は
e)(a)から(d)までの任意の組み合わせである、
請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記フレームは、
a)「T」、「t」、「Y」、「V」、「C」、「X」若しくは「M」字形、又は叉骨形、凧形若しくは菱形の形態である、又は
b)展開及び非展開状態を有する、又は
c)当該デバイスの本体からの1つ以上の突起を含む、又は
d)ランド又はボスを含み、前記ランド又はボスの上において、前記1つ以上の含浸質量が前記フレームに対し保持される1つの面の一部を含む、又は
e)前記1つ以上の含浸質量を支持するための骨格フレームの形態である、又は
f)ポリマーから形成されている、又は
g)(a)から(f)までの任意の組み合わせである、
請求項1又は2に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記ポリマーは、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載の送達デバイス。
【請求項5】
a) 約2~約10gのポリマー、又は、
b) 約1~約8cm のポリマー
を含む、請求項3又は4に記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記ポリマーは、非分解性熱硬化性ポリマー、非分解性熱可塑性ポリマー、生分解性ポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項3~5のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記含浸シートのそれぞれが約1~約75重量%の前記活性剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項8】
前記含浸シートはそれぞれ実質的に同じ表面積を持つ少なくとも2つの表面を有し、哺乳類への挿入時、両表面積は体腔の流体に実質的に曝露され、かつ、哺乳類への挿入時、両表面の前記表面積の少なくとも70~約95%が体腔の流体に曝露される、請求項1~7のいずれか一項に記載の送達デバイス。
【請求項9】
対象とする哺乳類の体腔に挿入するための送達デバイスを製造する方法であって、
前記方法は、
弾性フレームを用意するステップと、
それぞれ、ポリマーから形成され、0.95mm未満の厚さを有する、1つ以上の含浸シートを、圧縮成形、押出成形、鋳込成形、又は射出成形によって成形するステップと、
前記成形した含浸シートが前記弾性フレームにより少なくとも2つ以上の別個の取付箇所において支持されるように、前記成形した含浸シートを前記弾性フレームに取り付けるステップと、
を含み、
前記1つ以上の含浸シートの表面積対前記1つ以上の含浸シートの質量の比(表面積:質量)は、12:1~60:1cm .g -1 である、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、1つ以上の前記成形した含浸シートは、
a)圧縮成形、押出成形、鋳込成形、又は射出成形によって製造される、又は
b)前記フレームへの取り付けを容易にするための少なくとも2つ以上のスリット、アパーチャ、又は開口部を含む、又は
c)それぞれ前記フレームに取り付けられる、又は
d)前記フレーム上に前記1つ以上の質量の任意の面領域が着座した状態で又は全く着座することなく前記フレームにより保持される、
e)前記フレームの外側に保持される、又は
f)前記フレーム内部に保持される、又は
g)(a)から(f)までの任意の組み合わせである、
方法。
【請求項11】
前記取付用開口部は前記含浸シート内に成形される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の成形した含浸シートは前記フレームに取り付けられるが、前記フレームから間隔をおいて配置される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳類から前記送達デバイスを抜去後、前記含浸シートはそれぞれ最初の活性剤充填量の約40重量%未満を含み、有効範囲は、これら値のいずれかの間で選択してもよい、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】