(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066273
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】光硬化型接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 133/08 20060101AFI20220421BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20220421BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220421BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220421BHJP
G02F 1/1333 20060101ALN20220421BHJP
【FI】
C09J133/08
C09J4/02
C09J11/06
C09J11/04
G02F1/1333
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026491
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2018023993の分割
【原出願日】2018-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2017080487
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】寺田 智仁
(72)【発明者】
【氏名】金子 聖
(57)【要約】
【課題】 接着性や透明性等の接着剤に求められる特性を備えつつ、帯電防止性に優れた光硬化型接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 (A)(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、(C)可塑剤、(D)光反応開始剤、及び(E1)イオン液体又は(E2)金属塩を含む、光硬化型接着剤組成物である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、
(C)可塑剤、
(D)光反応開始剤、及び
(E1)イオン液体を含む、光硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
(A)(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、
(C)可塑剤、
(D)光反応開始剤、及び
(E2)金属塩を含む、光硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体からなる群より選択される1種以上である、請求項1又は2記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
前記(A)成分のアクリル当量が200g/mol以上である、請求項1~3のいずれか一項記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
光学表示体又はタッチセンサーの貼り合わせ用の、請求項1~4のいずれか一項記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の光硬化型接着剤組成物で貼り合わせた、積層体。
【請求項7】
光学表示体又はタッチセンサーである、請求項6記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学表示体又はタッチセンサーの貼り合わせに使用され得る光硬化型接着剤組成物、及び、これを用いて貼り合わせた光学表示体又はタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル等の表示体、或いはコリメーターレンズ等の光学レンズのような、光学的な用途に用いられる材料には、静電気による埃の吸着、放電による電気機器の破損等を防止するため、帯電防止性を備えていることが必要とされる。このため導電性を高める物質である帯電防止剤が添加されるが、帯電防止性を持たせた部材の要求は幅広く存在する(例えばレンズ用途では特許文献1)。
【0003】
表示体用途で使用される液晶パネルには駆動方式がいくつかある。IPS型の駆動方式では面方向に電界を掛ける為(横電界駆動方式)、ディスプレイ表面が帯電するなど外部電界の影響を受けると液晶分子の配向が乱れ表示不良が発生する。通常はこれを防止する為に偏光板のHC層や粘着層、CF基盤の表面に導電、帯電防止層が設けられる(特許文献2)。しかしながら、液晶パネル用途では導電、帯電防止層はその構造上側面からしかTFTと接続することができない為、その信頼性に問題がある。
【0004】
一方、液晶パネルには、薄いガラス基板の保護やアプリケーションの拡大のため、保護パネルやタッチパネルが設けられ、それらと液晶パネルとの固定に液状樹脂を用いる技術が知られている。液状樹脂を用いた技術では、液状樹脂が接着のため液晶パネルの表示部を覆うように適用されるので、他の部材と比べTFT基盤と接続可能な面積が大きく、帯電防止性における信頼性改善が期待される。
【0005】
ただし、液状樹脂を用いた技術では、液状樹脂に複数の性質が要求される。液晶パネルのガラスは、表示装置の薄型、軽量化のニーズから薄くなってきており、液状樹脂が硬化する際の硬化収縮応力によって、ガラスが破損したり、変形したりする場合がある。これは表示不良の原因となることから、硬化収縮率や弾性率を低下させる必要がある(特許文献3)。また、液状樹脂を用いた技術では、液状樹脂が接着のため液晶パネルの表示部を覆うように適用されるので、利用される液状樹脂は、光学的に透明な樹脂(OCR)であること、耐熱試験後の着色、変色、耐湿試験後の強度低下を起こさないことが求められる(特許文献4)。また、液状樹脂は、熱硬化による収縮を防ぐためや、樹脂全体を万遍なく硬化させるために、紫外線等の光により硬化するタイプであることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-007017号公報
【特許文献2】特開2014-199472号公報
【特許文献3】WO2010/027041号パンフレット
【特許文献4】特開2012-046658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
OCRは、他部材と比べTFT基盤と接続可能な面積が大きいため、OCRに導電、帯電防止性をもたせることができれば、OCRを帯電防止層とし、信頼性の高いデバイスを製造することが可能となる。一方で、接着剤として用いられる液状樹脂には接着剤、光学材料としての様々な特性が要求される。
【0008】
本発明者らは、接着剤・光学材料の成分だけでは目的の帯電防止性が発揮できないといった問題があることを見出した。したがって、本発明の課題は、接着性や透明性等の接着剤に求められる特性を備えつつ、帯電防止性に優れた光硬化型接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の光硬化型接着剤組成物において、イオン性液体又は金属塩のような導電性物質を添加することにより、上記の課題が達成されることを見出して本発明を完成した。
【0010】
本発明は、以下の事項によって特定されるものである。
すなわち、第1の発明は、(A)(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、
(C)可塑剤、
(D)光反応開始剤、及び
(E1)イオン液体を含む、光硬化型接着剤組成物である。
第2の発明は、(A)(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、
(C)可塑剤、
(D)光反応開始剤、及び
(E2)金属塩を含む、光硬化型接着剤組成物である。
第3の発明は、前記(A)成分が、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体からなる群より選択される1種以上である、前記第1又は2の発明に記載の光硬化型接着剤組成物である。
第4の発明は、前記(A)成分のアクリル当量が200g/mol以上である、前記第1~3のいずれかの発明に記載の光硬化型接着剤組成物である。
第5の発明は、光学表示体又はタッチセンサーの貼り合わせ用の、前記第1~4のいずれかの発明に記載の光硬化型接着剤組成物である。
第6の発明は、前記第1~5のいずれかの発明に記載の光硬化型接着剤組成物で貼り合わせた、積層体である。
第7の発明は、光学表示体又はタッチセンサーである、前記第6の発明に記載の積層体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接着性や透明性等の接着剤に求められる特性を備えつつ、帯電防止性に優れた光硬化型接着剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の光硬化型接着剤組成物について、詳細に説明する。第1の態様では、本発明は、(A)(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、(C)可塑剤、(D)光反応開始剤、及び(E1)イオン液体を含む、光硬化型接着剤組成物である。以下、これら各成分について説明する。
【0013】
[(A)(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明の光硬化型接着剤組成物は、(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する。好ましくは、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体からなる群から選ばれた1種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する。より好ましくは、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体からなる群から選ばれた1種以上を含有する。(メタ)アクリレートオリゴマーは、接着剤組成物の硬化収縮率をより小さくすることができる点から、アクリル当量が200g/mol以上であることが好ましい。
【0014】
ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル変性ポリイソプレンとも呼ばれ、好ましくは1000~100000、より好ましくは1000~50000の分子量を有する。また、これらの水素添加体も使用することができる。市販品として、例えば、クラレ社製の「UC-1」(分子量25000)等がある。
【0015】
ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル変性ポリブタジエンとも呼ばれ、好ましくは500~100000、より好ましくは1000~30000の分子量を有する。また、これらの水素添加体も使用することができる。市販品として、例えば、日本石油社製の「TE2000」(分子量2000)等がある。
【0016】
ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル変性ポリウレタンとも呼ばれ、好ましくは1000~100000、より好ましくは1000~50000の分子量を有する。(メタ)アクリル基で変性されていればポリウレタンの構造は特に制限されず、例えば、ポリエーテル、ポリカーボネート等の骨格を有するポリウレタンを原料としてポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを得ることができる。市販品として、例えば、ライトケミカル社製の「UA-1」等がある。
【0017】
(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含む共重合体であり、好ましくは5000~300000、より好ましくは10000~100000の分子量を有する。
【0018】
[(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー]
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、(メタ)アクリレートモノマーを含む。本発明の光硬化型接着剤組成物は、(メタ)アクリレートモノマーを含むことにより、硬化物に伸びを付与することができる。
【0019】
(メタ)アクリレートモノマーは、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボネン(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート(PO)、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート(CH)、ノニルフェノールEO付加物(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートから選択される。これらの(メタ)アクリレートモノマーは、1種類又は2種類以上を使用できる。
【0020】
(メタ)アクリレートモノマーは、組成物全体に対して、好ましくは5~80質量部、より好ましくは5~70質量部、最も好ましくは5~60質量部の量で含まれる。
【0021】
[(C)可塑剤]
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、可塑剤を含む。本発明の光硬化型接着剤組成物は、可塑剤を含むことにより、弾性率と収縮率を制御することができる。
可塑剤として、(メタ)アクリレートオリゴマーと相溶するポリマー、オリゴマー、フタル酸エステル類、ヒマシ油、キシレン樹脂、テルペン樹脂、ロジン等が挙げられる。オリゴマー又はポリマーとして、ポリイソプレン系、ポリブタジエン系又はキシレン系のオリゴマー又はポリマーを例示できる。これらの柔軟化成分は、クラレからLIRシリーズ、デグッサ社からポリオイルシリーズとして、フドーよりニカノールシリーズとして市販されている。これらの柔軟化成分は1種類又は2種類以上を使用することができる。
【0022】
可塑剤は、組成物全体に対して、好ましくは5~90重量部、より好ましくは10~80質量部、更に好ましくは20~70質量部以下の量で含まれる。
【0023】
[(D)光反応開始剤]
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、光開始剤を含む。光開始剤としては、一般的な開始剤を使用することができ、例えば、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニル-ケトン、ベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-メチルチオ]フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、イソプロピルチオキサントン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン、2,4-ジエチルチオキサントン、2ークロロチオキサントン、ベンゾフェノン、エチルアントラキノン、ベンゾフェノンアンモニウム塩、チオキサントンアンモニウム塩、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4ジベンゾイルベンゼン、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2,2’ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2-ベンゾイルナフタレン、4-ベンゾイルビフェニル、4-ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、o-メチルベンゾイルベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル、活性ターシャリアミン、カルバゾール・フェノン系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、ベンゾイル系光重合開始剤などを例示できる。これらの光開始剤の1種類又は2種類以上を使用できる。
【0024】
光開始剤の量は、組成物全体に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは0.5~15質量部である。
【0025】
本発明において、好ましい光開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンが挙げられ、それぞれを単独で使用してもよいし、組み合わせてもよい。
【0026】
[(E1)イオン液体]
第1の態様における、本発明の光硬化型接着剤組成物は、イオン液体を含有する。イオン液体は、液体状態で存在する塩であり、本発明においては、イオン液体を含有することで、光硬化型接着剤組成物が良好な導電性を発揮する。イオン液体の種類は、融点が150℃以下のもの、好ましくは融点が100℃以下のもの、特に好ましくは常温(25℃、1気圧)で液体であるものであれば、特に制限はされない。
【0027】
好ましいイオン液体の例として、以下の構造式:
【化1】
(式中、R、R’、R”及びR’’’は、各々独立して、水素、ハロゲン特にフッ素により置換されていてもよい、アルキル基、芳香族基又は複素環基であり、
X
-は、各構造のカチオン部分のカウンターアニオンであり、好ましくは、BF
4
-、PF
6
-、SO
4R
-、N(SO
2R)
2
-、Cl
-、Br
-(ここで、Rは、上記定義のとおりである)からなる群より選択され、より好ましくは、BF
4
-、PF
6
-、N(SO
2CF
3)
2
-、Cl
-、Br
-からなる群より選択される)
で示されるような化合物のうち、イオン液体としての性質を示すものが挙げられる。
【0028】
イオン液体の例としては、1,3-ジメチルイミダゾリウムメチルスルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド等のイミダゾリウム塩誘導体;3-メチル-1-プロピルピリジミウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド等のピリジニウム塩誘導体;テトラブチルアンモニウムヘプタデカフルオロオクタンスルフォネート、テトラフェニルアンモニウムメタンスルフォネート等のアルキルアンモニウム誘導体;テトラブチルフォスフォニウムメタンスルフォネート等のホスホニウム塩誘導体;ポリアルキレングリコールと過塩素酸リチウムの複合体等の複合化導電性付与剤等を示すことができる。
【0029】
イオン液体の量は、組成物全体に対して好ましくは0.1~30質量部、さらに好ましくは0.1~20質量部の範囲である。この範囲とすることで、接着剤としての機能を損なうことなく、より良好な導電性を与えることができる。
【0030】
本発明の第2の態様では、本発明は、(A)(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、(C)可塑剤、(D)光反応開始剤、及び(E2)金属塩を含む、光硬化型接着剤組成物である。(A)~(D)成分に関しては、先に説明したとおりの例示、好ましい態様等が同様に適用される。
【0031】
[(E2)金属塩]
第2の態様における、本発明の光硬化型接着剤組成物は、金属塩を含有する。金属塩は、前記(A)~(D)成分に対して均一に分散し、組成物全体の透明性を損なわないものであれば、その種類は特に制限されない。金属種の例としては、リチウム、ナトリウムのような1族元素(アルカリ金属)、カルシウム、ストロンチウムのような2族元素、チタン、ニッケル、パラジウム、オスミウムのような遷移金属など、金属元素を幅広く用いることができる。金属種のカウンターイオンの例としては、ハロゲン、スルホンアミド、酢酸イオンのような有機アニオン種などを用いることができる。カウンターアニオンの好ましい例は、RCOO-、BF4
-、PF6
-、SO4R-、NO3
-、N(SO2R)2
-、C(SO2R)3
-、N(SO2R)(COR)-、-O3S(R)3SO3
-、Cl-、ClO4
-、Br-、I-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、(CN)2N-(ここで、Rは、イオン液体の項において定義したものと同じである)からなる群より選択され、より好ましくは、BF4
-、PF6
-、N(SO2CF3)2
-、N(SO2C2F5)2
-、Cl-、Br-からなる群より選択される)
【0032】
金属塩の例としては、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、KO3S(CF2)3SO3K,LiO3S(CF2)3SO3Kを示すことができるが、上記金属とカウンターイオンの組み合わせであれば得に限定されない。
【0033】
金属塩の量は、組成物全体に対して好ましくは0.1~30質量部、さらに好ましくは0.1~20質量部の範囲である。この範囲とすることで、接着剤としての機能を損なうことなく、より良好な導電性を与えることができる。
【0034】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、第1の態様及び第2の態様ともに、当業者に公知の添加剤を含有することができる。
【0035】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、接着付与剤を含有することができる。接着付与剤として、シランカップリング剤、例えば、ビニルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピル、メチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを例示できる。これらの接着付与剤の1種類又は2種類以上を使用できる。接着付与剤の量は、組成物全体に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0036】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、酸化防止剤を含有することもできる。酸化防止剤としては、BHT、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、オクチル化ジフェニルアミン、2,4,-ビス[(オクチルチオ)メチル]-O-クレゾール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジブチルヒドロキシトルエンを例示できる。これらの酸化防止剤は1種類又は2種類以上を使用できる。酸化防止剤の量は、組成物全体に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。
【0037】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、接着すべき材料の構造によって接着面に塗布した接着組成物の一部に光が当たらない場合には、光が当たるところは光で硬化させ、光の当たらないところは有機過酸化物を添加して熱で硬化させるような、光硬化と熱硬化の併用タイプの接着組成物にすることもできる。有機過酸化物の例としてケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、パーオキシジカーボネート系などが例示できる。これらの有機化酸化物は、1種類又は2種類以上を使用できる。これらの有機化酸化物は1種類又は2種類以上を使用でき、その量は、組成物全体に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。上記の有機過酸化物の硬化促進剤として、ナフテン酸金属錯体、ジメチルアニリン、4級アンモニウム塩、リン酸エステル類を使用できる。
【0038】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、低い抵抗値を有することで高い帯電防止性を発揮することができる。本発明の光硬化型接着剤組成物は、好ましくは1.0×1011Ω・cm以下の体積抵抗値を有し、より好ましくは、1.0×1010Ω・cm以下の体積抵抗値を有する。
【0039】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、光学表示体又はタッチセンサーにおける接着剤として使用することができる。たとえば、光学表示パネルとタッチパネルとの貼り合せ、光学表示パネルと保護パネルとの貼り合せ、タッチパネルと保護パネルとの貼り合せ、光学表示パネルと光学表示パネルとの貼り合せ、光学表示パネルと視差バリアとの貼り合せ用として用いることができる。貼り合わせは、通常の方法によって行うことができる。
【0040】
本発明は、前記の光硬化型接着剤組成物で貼り合わせた、光学表示体又はタッチセンサーにも関係する。これらの貼り合わせ体は、例えば、テレビ、デジタルカメラ、携帯電話、パソコン、モニター、テレビなどの電子機器に組み込むことができる。
【実施例0041】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例及び比較例で用いた試薬は、以下のとおりである。
UA10000B:ポリエーテルウレタンアクリレート
LA:ラウリルアクリレート
FA513AS:ジシクロペンタニルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
I-TPO:ルシリンTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド)
I-184:イルガキュア184(1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニル-ケトン)
DINCH:ジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート
ニカノールH:以下の構造式で示される化合物
【化2】
KE-311:水添ロジンエステル
IL-P14:ピリジニウムカチオン系イオン液体
IL-A12:アンモニウムカチオン系イオン液体
IL-AP3:ホスホニウムカチオン系イオン液体
IL-IM1:イミダゾリニウムカチオン系イオン液体
IL-MA2:アクリル変性アンモニウムカチオン系イオン液体
IL-MA3:アクリル変性アンモニウムカチオン系イオン液体
EF-N115:リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(三菱マテリアル電子化成(株)製)
【0042】
(実施例1~10及び比較例1~3)
表1に示した成分を表1に示した量(質量基準)で配合して実施例1~10及び比較例1~3の光硬化型接着剤組成物を得た。得られた組成物に紫外線を照射することで硬化物を得た。紫外線照射はアイグラフィックス社製アイグランテージを使用し、400mW/cm2の照度で3000mJ/cm2の照射を行った。硬化物を試験機に取り付け抵抗値を測定した。測定は日置産業社製超絶縁計SM-8220を使用し、100Vにて試験を行った。得られた抵抗値から以下の計算式:
ρv=(R×A)/L
(式中、ρvは体積抵抗率、Rは抵抗値、Aは断面積、Lは長さを表す)
に従い体積抵抗率を算出した。実施例及び比較例での各成分の配合及び体積抵抗率の測定結果を、以下の表1に示す。
【0043】
(硬化収縮率)
実施例1~10及び比較例1~3の組成物の液及び硬化物の比重を比重カップにより測定し、その比から硬化収縮率を算出した。
【0044】
実施例1~10及び比較例1~3の組成物を、測定部の長さが30mm、幅5mm、厚み1mmのダンベル型の硬化物試験片とし、ミネベア社製引張圧縮試験機テクノグラフTG-2kNを使用し、10mm/minの速さで引張試験を行い、弾性率を得た。
【0045】
【0046】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、硬化収縮率、弾性率が小さく接着剤として優れた物性を保ち、かつイオン液体又は金属塩のような電離してイオン種を生じるような化合物を含有しない従来の組成物(比較例)と比較して、大きく体積抵抗値が低下していることが明らかとなった。このため、本発明の光硬化型接着剤組成物は、帯電防止性に優れた接着剤として、液晶パネルの貼り合わせ等に有用な材料であることが示された。
前記(A)成分が、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体からなる群より選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか一項記載の光硬化型接着剤組成物。