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特開2022-66309電極材料およびそれらの調製のためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066309
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】電極材料およびそれらの調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20220421BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20220421BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20220421BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20220421BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220421BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220421BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220421BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220421BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/58
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/139
H01M4/66 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022030798
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2018567915の分割
【原出願日】2017-06-30
(31)【優先権主張番号】62/356,952
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/436,718
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-クリストフ ダイグル
(72)【発明者】
【氏名】浅川 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】上坂 進一
(72)【発明者】
【氏名】カリム ザジブ
(57)【要約】
【課題】電極材料およびそれらの調製のためのプロセスの提供。
【解決手段】本出願は、ポリマー結合剤中に分散された電気化学的活物質の粒子を含む電極材料を記載し、ここで前記ポリマー結合剤は、酸性ポリマー、または水性溶媒もしくは非水性溶媒(例えば、NMP)中に可溶性の結合剤および酸性ポリマーを含む混合物である。本出願はさらに、前記電極材料の調製のためのプロセスおよび前記材料を含む電極、ならびに電気化学セルおよびそれらの使用にも関する。本技術分野は、概して、電極材料およびそれらの調製(例えば、酸性ポリマーまたは水溶性結合剤を含む結合剤および酸性ポリマーを使用する電極材料)のためのプロセスに関する。本出願はまた、電極の調製のための電極材料の使用、および電気化学セル(例えば、リチウムイオンバッテリー)におけるそれらの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年6月30日に出願された米国仮出願第62/356,952号および2016年12月20日に出願された米国仮出願第62/436,718号に対する優先権を主張し、この出願の内容は全ての目的のためにその全体が本明細書において参考として援用される。
【0002】
技術分野
本技術分野は、概して、電極材料およびそれらの調製(例えば、酸性ポリマーまたは水溶性結合剤を含む結合剤および酸性ポリマーを使用する電極材料)のためのプロセスに関する。本出願はまた、電極の調製のための電極材料の使用、および電気化学セル(例えば、リチウムイオンバッテリー)におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ポリマー結合剤は、電気化学において広く使用されて、電極の集電体上で活物質の凝集および接着を提供する。これらの結合剤は、電気化学的に不活発であり、化学的に不活性である。それらはまた、バッテリーの大きさおよび安定性に顕著に寄与することが公知である(Yamamoto, H.ら, Lithium-Ion Batteries: Science and Technologies, Springer New York, 2009; pp 163-179(本明細書に参考として援用される))。
【0004】
最も一般に使用されるポリマー結合剤は、ポリ(ビニルジフルオリド)(PVDF)である。このポリマーは通常、毒性溶媒、すなわち、非常に高い沸点(202℃)を有するN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に、これと活物質粒子とを合わせ、その混合物を集電体上に適用する前に、溶解される。((a)Guerfi, A., J. of Power Sources, 2007, 163 (2), 1047-1052; (b) Lux, S. F.ら, J. of The Electrochem. Soc., 2010, 157 (3), A320-A325(本明細書に参考として援用される))。このポリマーは、結合剤として有効であり、電気化学的に不活性であるが、その産業上での使用には、例えば、生成コストおよび電極の被覆後の溶媒の蒸発(これは、かなりの量のエネルギーを要する)に関するコストに関して、重大な欠点がある(Luxら(前出)を参照のこと)。さらに、PVDFと接触した状態にあるバッテリーの電解質は、フッ化リチウムの形成を誘導し、これは、結合剤の化学的分解を加速させる(Guerfiら(前出)を参照のこと)ので、バッテリーおよび応じてセルの寿命の分解速度を増大させる。
【0005】
使用される別のポリマー結合剤は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)およびメチルセルロース(CMC)の混合物である。SBRは、集電体上での接着を促進する一方で、CMCは、分散物を濃化し、活物質粒子間の接着を増強する(Guerfiら(前出)を参照のこと)。この混合物は、LiFePOおよびLTOの場合には非常に効果的である(Chou, S. L.ら, Phys. Chem. Chem. Phys., 2014, 16(38), 20347-20359(本明細書に参考として援用される))が、LCOでは効果的でない(Lee, J.-T.ら, J. of Power Sources, 2007, 173(2), 985-989(本明細書に参考として援用される))。この混合物はまた、電気化学的に不活発であり、バッテリーの効率に積極的に寄与しない。
【0006】
ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(アクリル酸)(PAA)およびポリ(ビニルアルコール)(PVA)はまた、過去には、電極のためのポリマー結合剤として使用されてきた((a) Cai, Z. P.ら, J. of Power Sources, 2009, 189(1), 547-551; (b) Gong, L.ら, Electrochem. Comm., 2013, 29, 45-47; (c) Park, H.-K.ら, Electrochem. Commun., 2011, 13(10), 1051-1053(本明細書に参考として援用される))。しかし、これらのポリマーの可撓性の欠如(より高いガラス転移)は、電極が多数のサイクルに際してクラックを形成することから、大きな欠点である(Tran, B.ら,
Electrochim. Acta, 2013, 88, 536-542(本明細書に参考として援用される))。
【0007】
よって、水のような低い沸点を有する環境に優しい溶媒に可溶性のポリマーの使用は、電極の製造にとって有益な改善である。さらに、結合剤が活物質の分散を増強し、電極のイオン伝導性および/または電子伝導性に寄与することはまた、望ましい。例えば、イオン伝導性の増大は、電極の内部抵抗を低減し、従って、リチウムの輸送を可能にするのを助け得る。
【0008】
さらに、活物質の表面上の被覆としての活性炭の使用(Ding, Z.ら, Phys. Chem. Chem. Phys., 2011, 13(33), 15127-15133(本明細書に参考として援用される))は、アルミニウム集電体の表面上で反応を引き起こし得る(Wan, D.ら, ACS Nano, 2012, 6(10), 9068-9078(本明細書に参考として援用される))ので、その集電体と分散物内の電気化学的活物質との間の界面を保護するポリマー結合剤を見出すこともまた、望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Yamamoto, H.ら, Lithium-Ion Batteries: Science and Technologies, Springer New York, 2009; pp 163-179
【非特許文献2】Guerfi, A., J. of Power Sources, 2007, 163 (2), 1047-1052
【非特許文献3】Lux, S. F.ら, J. of The Electrochem. Soc., 2010, 157 (3), A320-A325
【非特許文献4】Chou, S. L.ら, Phys. Chem. Chem. Phys., 2014, 16(38), 20347-20359
【非特許文献5】Lee, J.-T.ら, J. of Power Sources, 2007, 173(2), 985-989
【非特許文献6】Cai, Z. P.ら, J. of Power Sources, 2009, 189(1), 547-551
【非特許文献7】Gong, L.ら, Electrochem. Comm., 2013, 29, 45-47
【非特許文献8】Park, H.-K.ら, Electrochem. Commun., 2011, 13(10), 1051-1053
【非特許文献9】Tran, B.ら, Electrochim. Acta, 2013, 88, 536-542
【非特許文献10】Ding, Z.ら, Phys. Chem. Chem. Phys., 2011, 13(33), 15127-15133
【非特許文献11】Wan, D.ら, ACS Nano, 2012, 6(10), 9068-9078
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
一局面によれば、本出願は、結合剤の中に分散された電気化学的活物質の粒子を含む電極材料に関し、ここで前記結合剤は、水性結合剤(すなわち、水性溶媒に可溶性の結合剤)および酸性ポリマーを含む混合物であり、前記水性結合剤は、酸性ポリマーではない。例えば、前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)およびこれらの組み合わせから選択されるか、または前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)である。例えば、前記酸性ポリマーは、約200000g/mol~約600000g/molの範囲内の平均分子量を有する。
【0011】
一実施形態において、本発明の材料中で使用される水性結合剤は、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ブタジエンアクリロニトリルゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アクリレートゴム)、およびこれらの組み合わせから選択され、例えば、前記水性結合剤は、SBRを含むか、またはSBRである。例えば、水性結合剤:酸性ポリマーの比は、約1:8~約8:1、または約1:5~約5:1、または約1:3~約3:1の範囲内である。一実施形態において、前記結合剤は、例えば、水酸化リチウムのようなリチウム含有塩基に由来するリチウムイオンをさらに含む。
【0012】
一実施形態において、前記粒子中の電気化学的活物質は、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩、バナジウム酸化物、リチウム金属酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む。例えば、前記電気化学的活物質は、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11およびHTi、またはこれらの組み合わせ、LiM’PO(ここでM’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組み合わせである)、LiV、V、LiMn、LiM’’O(ここでM’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組み合わせである)、Li(NiM’’’)O(ここでM’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、またはZrである)、およびこれらの組み合わせから選択され得る。一実施形態において、前記電気化学的活物質は、チタン酸リチウムおよびリチウム金属リン酸塩、例えば、LiTi12またはLiFePOから選択される。
【0013】
別の実施形態において、粒子は、炭素被覆、例えば、前記粒子の表面上に繊維を含む炭素のナノ層をさらに含む。好ましい実施形態において、前記炭素被覆は、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、またはこれらの組み合わせ)を組み込むグラフェンタイプ多環芳香族構造を含み、例えば、前記ヘテロ原子は、窒素原子を含む。
【0014】
別の局面によれば、本出願は、結合剤の中に分散された電気化学的活物質の粒子を含む電極材料に関し、ここで前記結合剤は、酸性ポリマーである。例えば、前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)およびこれらの組み合わせから選択されるか、または前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)である。例えば、前記酸性ポリマーは、約200000g/mol~約600000g/molの範囲内の平均分子量を有する。一実施形態において、前記活物質の粒子は、本明細書で定義される。一実施形態において、前記結合剤は、リチウムイオンをさらに含む。
【0015】
一実施形態において、前記粒子の中の電気化学的活物質は、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩、バナジウム酸化物、リチウム金属酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む。例えば、前記電気化学的活物質は、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11およびHTi、またはこれらの組み合わせ、LiM’PO(ここでM’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組み合わせである)、LiV、V、LiMn、LiM’’O(ここでM’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組み合わせである)、Li(NiM’’’)O(ここでM’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、またはZrである)、およびこれらの組み合わせから選択され得る。一実施形態において、前記電気化学的活物質は、チタン酸リチウムおよびリチウム金属リン酸塩、例えば、LiTi12またはLiFePOから選択される。一実施形態において、前記粒子は、炭素被覆、例えば、前記粒子の表面上に繊維を含む炭素のナノ層をさらに含む。一例では、前記炭素被覆は、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組み合わせ)を含むグラフェンタイプの多環芳香族構造を含む。
【0016】
別の局面において、本技術は、ポリマー結合剤の中に分散された電気化学的活物質の粒子を含む電極材料に関し、ここで前記ポリマー結合剤は、非水性(非反応性有機)結合剤および酸性ポリマーを含む混合物である。例えば、前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)およびこれらの組み合わせから選択されるか、または前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)である。例えば、前記酸性ポリマーは、約200000g/mol~約600000g/molの範囲内の平均分子量を有する。
【0017】
一実施形態において、前記非水性結合剤は、フッ素化結合剤(例えば、PVDF、PTFEなど)から選択される。例えば、前記フッ素化結合剤は、PVDFを含むか、またはPVDFである。一実施形態において、比 (非水性結合剤):(酸性ポリマー)は、約1:8~約8:1、または約1:5~約5:1、または約1:3~約3:1の範囲内である。
【0018】
別の実施形態において、前記粒子の中の電気化学的活物質は、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩、バナジウム酸化物、リチウム金属酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む。例えば、前記電気化学的活物質は、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11およびHTi、またはこれらの組み合わせ、LiM’PO(ここでM’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組み合わせである)、LiV、V、LiMn、LiM’’O(ここでM’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組み合わせである)、Li(NiM’’’)O(ここでM’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、またはZrである)、およびこれらの組み合わせから選択され得る。一実施形態において、前記電気化学的活物質は、チタン酸リチウムおよびリチウム金属リン酸塩、例えば、LiTi12またはLiFePOから選択される。一実施形態において、前記粒子は、炭素被覆、例えば、前記粒子の表面上に繊維を含む炭素のナノ層をさらに含む。一例では、前記炭素被覆は、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄またはこれらの組み合わせ)を含むグラフェンタイプの多環芳香族構造を含む。
【0019】
別の局面によれば、本出願は、本明細書で定義されるとおりの電極材料を含む電極を生成するためのプロセスに関し、前記プロセスは、(a)水性溶媒中で、電気化学的活物質の粒子、前記水性結合剤および前記酸性ポリマーを、任意の順序で混合して、スラリーを得る工程、(b)前記工程(a)のスラリーを集電体上にキャストする工程、ならびに(c)前記キャストしたスラリーを乾燥させて、電極を得る工程、を包含する。一実施形態において、前記プロセスは、工程(a)の前に前記酸性ポリマーを水酸化リチウムのようなリチウム含有塩基で中和する工程をさらに包含する。
【0020】
さらなる局面によれば、本出願は、本明細書で定義されるとおりの電極材料を含む電極を生成するためのプロセスに関し、前記プロセスは、(a)溶媒中で、電気化学的活物質の粒子および前記酸性ポリマーを、任意の順序で混合して、スラリーを得る工程;(b)前記工程(a)のスラリーを集電体上にキャストする工程、ならびに(c)前記キャストしたスラリーを乾燥させて、電極を得る工程を包含する。一実施形態において、前記溶媒は、水性溶媒、例えば、水である。前記プロセスは、工程(a)の前に前記酸性ポリマーを水酸化リチウムのようなリチウム含有塩基で中和する工程をさらに包含し得る。別の実施形態において、前記溶媒は、前記電極材料の構成要素と適合性である非反応性有機溶媒、例えば、NMPである。さらなる実施形態において、前記集電体は、アルミニウム、または主成分としてアルミニウムを有する合金である。
【0021】
さらに別の局面によれば、本技術は、本明細書で定義されるとおりの電極材料を含む電極を生成するためのプロセスに関し、前記プロセスは、(a)非反応性有機溶媒中で、電気化学的活物質の粒子、前記非水性結合剤および前記酸性ポリマーを、任意の順序で混合して、スラリーを得る工程;(b)前記工程(a)のスラリーを集電体上にキャストする工程、ならびに(c)前記キャストしたスラリーを乾燥させて、電極を得る工程を包含する。一実施形態において、前記非反応性有機溶媒は、NMPである。さらなる実施形態において、前記集電体は、アルミニウム、または主成分としてアルミニウムを有する合金である。
【0022】
本出願はまた、本明細書で定義されるとおりの電極材料を集電体上に含む電極、または本出願のプロセスによって生成される電極にさらに関する。本明細書で定義されるとおりの電極、電解質および対電極を含む電気化学セルはまた、それらの使用(例えば、電気もしくはハイブリッド自動車、またはユビキタスITデバイスにおいて)と同様に企図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ポリマー結合剤の中に分散された電気化学的活物質の粒子を含む電極材料であって、ここで該ポリマー結合剤は、水性結合剤および酸性ポリマーを含む混合物である、電極材料。
(項目2)
前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)およびこれらの組み合わせから選択される、項目1に記載の電極材料。
(項目3)
前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)である、項目2に記載の電極材料。
(項目4)
前記酸性ポリマーは、約200000g/mol~約600000g/molの範囲内の平均分子量を有する、項目1~3のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目5)
前記水性結合剤は、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ブタジエンアクリロニトリルゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アクリレートゴム)、およびこれらの組み合わせから選択される、項目1~4のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目6)
前記水性結合剤は、SBR(スチレンブタジエンゴム)を含む、項目5に記載の電極材料。
(項目7)
前記水性結合剤は、SBR(スチレンブタジエンゴム)である、項目5に記載の電極材料。
(項目8)
比(水性結合剤):(酸性ポリマー)は、約1:8~約8:1、または約1:5~約5:1、または約1:3~約3:1の範囲内である、項目1~7のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目9)
前記結合剤は、リチウムイオンをさらに含む、項目1~8のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目10)
前記電気化学的活物質は、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩、バナジウム酸化物、リチウム金属酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む、項目1~9のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目11)
前記電気化学的活物質は、TiO 、Li TiO 、Li Ti 12 、H Ti 11 およびH Ti 、またはこれらの組み合わせ、LiM’PO (ここでM’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組み合わせである)、LiV 、V 、LiMn 、LiM’’O (ここでM’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組み合わせである)、Li(NiM’’’)O (ここでM’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、またはZrである)、およびこれらの組み合わせから選択される、項目10に記載の電極材料。
(項目12)
前記電気化学的活物質は、チタン酸リチウムおよびリチウム金属リン酸塩から選択される、項目10に記載の電極材料。
(項目13)
前記粒子は、炭素被覆をさらに含む、項目1~12のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目14)
前記炭素被覆は、前記粒子の表面上に繊維を含む炭素のナノ層である、項目13に記載の電極材料。
(項目15)
前記炭素被覆は、ヘテロ原子を含むグラフェンタイプの多環芳香族構造を含む、項目13または14に記載の電極材料。
(項目16)
前記ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄およびこれらの組み合わせから選択される、項目15に記載の電極材料。
(項目17)
項目1~16のいずれか1項に定義されるとおりの電極材料を含む電極を生成するためのプロセスであって、該プロセスは、
a)水性溶媒中で、電気化学的活物質の粒子、前記水性結合剤および前記酸性ポリマーを、任意の順序で混合して、スラリーを得る工程;
b)該工程(a)のスラリーを集電体上にキャストする工程、ならびに
c)該キャストしたスラリーを乾燥させて、電極を得る工程、
を包含するプロセス。
(項目18)
工程(a)の前に前記酸性ポリマーを水酸化リチウムのようなリチウム含有塩基で中和する工程をさらに包含する、項目17に記載のプロセス。
(項目19)
前記集電体は、アルミニウム、または主成分としてアルミニウムを有する合金である、項目17または18に記載のプロセス。
(項目20)
結合剤の中に分散された電気化学的活物質の粒子を含む電極材料であって、ここで該結合剤は、酸性ポリマーである、電極材料。
(項目21)
前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)およびこれらの組み合わせから選択される、項目20に記載の電極材料。
(項目22)
前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)である、項目20に記載の電極材料。
(項目23)
前記酸性ポリマーは、約200000g/mol~約600000g/molの範囲内の平均分子量を有する、項目20~22のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目24)
前記結合剤は、リチウムイオンをさらに含む、項目20~23のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目25)
前記電気化学的活物質は、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩、バナジウム酸化物、リチウム金属酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む、項目20~24のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目26)
前記電気化学的活物質は、TiO 、Li TiO 、Li Ti 12 、H Ti 11 およびH Ti 、またはこれらの組み合わせ、LiM’PO (ここでM’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組み合わせである)、LiV 、V 、LiMn 、LiM’’O (ここでM’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組み合わせである)、Li(NiM’’’)O (ここでM’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、またはZrである)、およびこれらの組み合わせから選択される、項目25に記載の電極材料。
(項目27)
前記電気化学的活物質は、チタン酸リチウムおよびリチウム金属リン酸塩から選択される、項目25に記載の電極材料。
(項目28)
前記粒子は、炭素被覆をさらに含む、項目20~27のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目29)
前記炭素被覆は、前記粒子の表面上に繊維を含む炭素のナノ層である、項目28に記載の電極材料。
(項目30)
前記炭素被覆は、ヘテロ原子を含むグラフェンタイプの多環芳香族構造を含む、項目28または29に記載の電極材料。
(項目31)
前記ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄およびこれらの組み合わせから選択される、項目30に記載の電極材料。
(項目32)
項目20~31のいずれか1項に定義されるとおりの電極材料を含む電極を生成するためのプロセスであって、該プロセスは、
a)溶媒中で、電気化学的活物質の粒子および前記酸性ポリマーを、任意の順序で混合して、スラリーを得る工程;
b)工程(a)の該スラリーを集電体上にキャストする工程、ならびに
c)該キャストしたスラリーを乾燥させて、電極を得る工程、
を包含するプロセス。
(項目33)
前記溶媒は、水性溶媒、例えば、水である、項目32に記載のプロセス。
(項目34)
工程(a)の前に前記酸性ポリマーを水酸化リチウムのようなリチウム含有塩基で中和する工程をさらに包含する、項目32または33に記載のプロセス。
(項目35)
前記溶媒は、非反応性有機溶媒、例えば、NMPである、項目32に記載のプロセス。
(項目36)
前記集電体は、アルミニウム、または主成分としてアルミニウムを有する合金である、項目32~35のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目37)
ポリマー結合剤の中に分散された電気化学的活物質の粒子を含む電極材料であって、ここで該ポリマー結合剤は、非水性結合剤および酸性ポリマーを含む混合物である、電極材料。
(項目38)
前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)およびこれらの組み合わせから選択される、項目37に記載の電極材料。
(項目39)
前記酸性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)である、項目38に記載の電極材料。
(項目40)
前記酸性ポリマーは、約200000g/mol~約600000g/molの範囲内の平均分子量を有する、項目37~39のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目41)
前記非水性結合剤は、フッ素化結合剤から選択される、項目37~40のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目42)
前記フッ素化結合剤は、PVDFを含む、項目41に記載の電極材料。
(項目43)
前記フッ素化結合剤は、PVDFである、項目41に記載の電極材料。
(項目44)
比(非水性結合剤):(酸性ポリマー)は、約1:8~約8:1、または約1:5~約5:1、または約1:3~約3:1の範囲内である、項目37~43のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目45)
前記電気化学的活物質は、チタネート、チタン酸リチウム、リチウム金属リン酸塩、バナジウム酸化物、リチウム金属酸化物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される物質を含む、項目37~44のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目46)
前記電気化学的活物質は、TiO 、Li TiO 、Li Ti 12 、H Ti 11 およびH Ti 、またはこれらの組み合わせ、LiM’PO (ここでM’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組み合わせである)、LiV 、V 、LiMn 、LiM’’O (ここでM’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組み合わせである)、Li(NiM’’’)O (ここでM’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、またはZrである)、およびこれらの組み合わせから選択される、項目45に記載の電極材料。
(項目47)
前記電気化学的活物質は、チタン酸リチウムおよびリチウム金属リン酸塩から選択される、項目45に記載の電極材料。
(項目48)
前記粒子は、炭素被覆をさらに含む、項目37~47のいずれか1項に記載の電極材料。
(項目49)
前記炭素被覆は、前記粒子の表面上に繊維を含む炭素のナノ層である、項目48に記載の電極材料。
(項目50)
前記炭素被覆は、ヘテロ原子を含むグラフェンタイプの多環芳香族構造を含む、項目48または49に記載の電極材料。
(項目51)
前記ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄およびこれらの組み合わせから選択される、項目50に記載の電極材料。
(項目52)
項目37~51のいずれか1項に定義されるとおりの電極材料を含む電極を生成するためのプロセスであって、該プロセスは、
a)非反応性有機溶媒中で、電気化学的活物質の粒子、前記非水性結合剤および前記酸性ポリマーを、任意の順序で混合して、スラリーを得る工程;
b)該工程(a)のスラリーを集電体上にキャストする工程、ならびに
c)該キャストしたスラリーを乾燥させて、電極を得る工程、
を包含するプロセス。
(項目53)
前記溶媒は、非反応性有機溶媒、例えば、NMPである、項目52に記載のプロセス。
(項目54)
前記集電体は、アルミニウム、または主成分としてアルミニウムを有する合金である、項目52または53に記載のプロセス。
(項目55)
項目1~16、20~31、および37~51のいずれか1項に定義されるとおりの電極材料を集電体上に含む、電極。
(項目56)
前記集電体は、アルミニウム、または主成分としてアルミニウムを有する合金である、項目55に記載の電極。
(項目57)
項目17~19、32~36および52~54のいずれか1項に記載のプロセスによって生成される、電極。
(項目58)
項目55~57のいずれか1項に定義されるとおりの電極、電解質および対電極を含む、電気化学セル。
(項目59)
電気もしくはハイブリッド自動車、またはユビキタスITデバイスにおける項目58に記載の電気化学セルの使用。
【0023】
本技術の他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、本明細書中以下の説明を読めばよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、SBR/CMC結合剤(上)の使用と比較して、SBR/PAA結合剤(下)を使用する本出願の実施形態の模式的図示である。
【0025】
図2図2は、実施例2で詳述されるとおりの参照電極と比較して、本出願の実施形態に従うSBR/PAAまたはSBR/PAA-Li結合剤を含むLFP電極のナイキスト線図を示す。
【0026】
図3図3は、LFP電極の充電(a)および放電(b)の負荷特性のグラフを示す。容量維持率を、種々の充放電レート(1C、2C、4Cおよび10C)において評価した。その結果を、LFP-SBR/PAA、LFP-SBR/PAA-LiおよびLFP-PAA/NMPに関して示す。
【0027】
図4図4は、LTO電極の充電(a)および放電(b)の負荷特性のグラフを示す。その容量維持率を、種々の充放電レート(1C、2C、4Cおよび10C)において評価した。その結果を、LTO-PVDF、LTO-PAA/NMPおよびLTO-SBR/CMCに関して示す。
【0028】
図5図5は、LFP-LTOセルの充電(a)および放電(b)の負荷特性のグラフを示す。その容量維持率を、種々の充放電レート(1C、2C、4Cおよび10C)において評価した。その結果を、参照LFP-PVDF-LTOおよびLFP-PAA-NMP-LTOセルに関して示す。
【0029】
図6図6は、LFP-LTOセルの充電(a)および放電(b)の負荷特性のグラフを示す。その容量維持率を、種々の充放電レート(1C、2Cおよび4C)において評価した。その結果を、参照LFP(PVDF)-LTO(PVDF)およびLFP(PAA-NMP)-LTO(PVDF)セルに関して示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本出願は、電極材料、より具体的には、酸性ポリマー結合剤を含む結合剤の中に分散された電気化学的活物質の粒子を含む電極材料の調製のためのプロセスに関する。本出願はまた、水性溶媒に可溶性の結合剤および酸性ポリマー結合剤を含む結合剤混合物、または非水性溶媒に可溶性の結合剤および酸性ポリマー結合剤を含む結合剤混合物の中に分散された電気化学的活物質の粒子を含む電極材料の調製のためのプロセスに関する。
【0031】
酸性ポリマー結合剤の例としては、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)またはこれらの組み合わせが挙げられる。被覆されるべきスラリーは、必要に応じて、さらなる成分(例えば、無機粒子、セラミック、塩(例えば、リチウム塩)、伝導性物質などを含む。一実施形態において、集電体上でのその被覆の前に、スラリーにさらなる炭素源は添加されない。水性溶媒に可溶性の結合剤の例としては、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ブタジエンアクリロニトリルゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アクリレートゴム)など、またはこれらのうちの2種もしくはこれより多くのいずれかの組み合わせが挙げられる。非水性(非反応性有機)溶媒に可溶性の結合剤の例としては、エーテル、エステル、炭酸エステル、ニトリル、アミド、アルコール、ニトロメタン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)またはこれらの混合物、例えば、NMPが挙げられる。
【0032】
粒子は、電気化学的活物質の無機粒子(例えば、金属酸化物および複合酸化物)ならびに他の公知の活物質を含む。電気化学的活物質の例としては、チタネートおよびチタン酸リチウム(例えば、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11、HTiなど、またはこれらの組み合わせ)、リチウム金属リン酸塩(例えば、LiM’PO(ここでM’は、Fe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組み合わせである))、バナジウム酸化物(例えば、LiV、Vなど)、ならびに他のリチウムおよび金属酸化物(例えば、LiMn、LiM’’O(M’’は、Mn、Co、Ni、またはこれらの組み合わせである)、Li(NiM’’’)O(M’’’は、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zrなど、またはこれらの組み合わせである)、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。粒子は、新たに形成されるか、または市販の供給源から得られ、マイクロ粒子またはナノ粒子であり得る。
【0033】
例えば、粒子は、炭素被覆(例えば、活性炭のナノ層)をさらに含む。例えば、無定形炭素層の平均厚は、20nm未満、または10nm未満(例えば、およそ1.0~1.5nm)であり得る。その活性炭層は、繊維ならびに/または炭素原子およびヘテロ原子を含む縮合芳香族環を含み得る。例えば、活性炭層は、酸化グラフェンまたは窒素含有グラフェン様構造を含む。例えば、被覆は、約4重量%~約15重量%、または約6重量%~約11重量%の窒素を含み得、その残りが炭素である。
【0034】
また、被覆された粒子の表面積は、BET表面積分析によって決定される場合、約2m/gから約20m/gの間、または約4m/gから約15m/gの間、または約6m/gから約10m/gの間であり得る。
【0035】
本出願はまた、本明細書で定義されるとおりの電極材料を含む電極の調製に関する。一例では、電気化学的に活性な粒子は、結合剤と混合され、集電体上に、例えば、溶媒中のスラリーとしてキャストされ、その溶媒は、キャスト後に乾燥される。結合剤が、水溶性結合剤および酸性ポリマー結合剤を含む混合物である場合、その溶媒は、水性溶媒である。他方で、結合剤が、酸性ポリマー結合剤である場合、その溶媒は、水性または非反応性有機溶媒(例えば、NMP)であり得る。結合剤が、非水性結合剤および酸性ポリマー結合剤の混合物である場合、その溶媒は、非反応性有機非水性溶媒(例えば、NMP)であり得る。結合剤は、電気化学的活物質、集電体、電解質、および結合剤と接触した状態にあり得る電気化学セルの他の部品と適合性であることを考慮して選択される。
【0036】
本発明のプロセスによって生成される電極は、電解質および対電極をさらに含む電気化学セルの組み立てにおける使用のためのものである。対電極を構成する物質は、電極において使用される物質に応じて選択される。電解質は、液体、ゲルまたは固体のポリマー電解質であり得、そしてリチウム塩を含む、および/またはリチウムイオンに対して伝導性を有する。
【0037】
本出願の一例は、電極の電気化学的性能をさらに増大させるために、NMP中でのPAA(200000~500000g/mol)の使用を、または水の中での活物質の分散を増強するために調節した割合で、前記で定義されるとおりの別の結合剤(例えば、SBRまたはPVDF)との混合物としての使用を企図する。SBRもしくはPVDF(もしくは関連する結合剤)の添加またはNMP中でのPAAの使用は、ガラス転移効果および以前に報告されたPAA含有電極の脆弱性を低減することが、示された。PAAは、酸性ポリマーであるので、その酸の基はまた、電極におけるリチウムイオン拡散に対する結合剤の抵抗性をさらに低減するために、例えば、材料が水性溶媒中で調製される場合に、リチウム塩基(例えば、50mol%)で中和され得る。
【0038】
例えば、結合剤としてのPAAおよびSBRまたはPVDFの混合物は、LFP、LTO、LTO活性炭被覆および活性炭供給源(酸化グラフェン、炭素ドープなど)の性能を改善する。さらに、結合剤としてのNMP中のPAAの混合物は、LFPおよびLTOの性能をも改善することがまた示された。
【0039】
本出願の別の例は、活物質の分散を増強するためにおよび/または電極の電気化学的性能をさらに増大させるために、調節した濃度において唯一の結合剤としての酸性ポリマーの使用(例えば、PAA(200000~500000g/mol)を企図する。PAAは酸性ポリマーであるので、その酸の基はまた、電極におけるリチウムイオン拡散に対する結合剤の抵抗性をさらに低減するために、リチウム塩基(例えば、50mol%)で中和され得る。例えば、電極材料の中のPAAのような酸性ポリマー結合剤の濃度は、約1から8%の間、例えば、約3から6%の間、または約4から5%の間であり得る。
【0040】
活性炭(例えば、窒素含有グラフェンタイプ炭素)を使用して生成される炭素被覆物質は、LTOアノードの性能を増強する。また、酸化グラフェンの使用は、炭素粉末と比較した場合に、電極の電子伝導性を増大し得る。しかし、活性炭および酸化グラフェンは、アルミニウム集電体と反応して、水ベースの結合剤(例えば、SBRおよびCMCの混合物)の存在下で水素を放出する(Wan D.ら(前出)を参照のこと)。CMCの代わりにポリ(アクリル酸)(PAA)を使用することで、この接触が防止される。
【0041】
PAA(または別の酸性ポリマー(例えば、PMAA))は、その骨格が疎水性でありかつその酸の基が親水性であることから界面活性剤として作用すると考えられる。そのポリマーは、窒素含有活性炭または酸化グラフェンで被覆された粒子の存在下で自己組み立てする。この知見は、種々の無機粒子(例えば、Al、TiO、カーボンナノチューブ、モリブデンなど)の分散のためにポリマー界面活性剤としてのPAAの使用によってさらに裏付けられた(Loiseau, J.ら, Macromolecules, 2003, 36(9), 3066-3077; Daigle, J.-C.ら, Journal of Nanomaterials, 2008, 8,およびZhong, W.ら, Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry, 2012, 50(21), 4403-4407(各々、全ての目的のためにそれらの全体において参考として援用される)を参照のこと)。PAAは、表面上で界面活性剤として作用し、そのポリマーに由来する酸の基は、水の中での粒子の分散を安定させる。Samsungはまた、SiおよびSnベースの物質を分散させるために、低分子量PAAを使用した(Lee, S.ら, 米国特許出願公開番号2016/0141624(全ての目的のためにその全体において本明細書に参考として援用される))。
【0042】
よって、PAAの骨格は、集電体の近くに位置すると同時に、その酸性の基が炭素源における塩基性の基を中和する。結果として、本発明の材料は、ガス生成を防止した。図1は、そのプロセスの模式図を示す。その特定の場合において、さらなる炭素は不要であった。
【実施例0043】
以下の非限定的実施例は、例示的実施形態であり、本出願の範囲を限定すると解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図面を参照してよりよく理解される。
【0044】
実施例1:C-LTOの調製
【0045】
LTO(20g)を、250mL丸底フラスコの中に導入し、磁性式撹拌によって撹拌した。次いで、100mLのナノピュア水を、そのフラスコの中の活物質に添加した。その得られたスラリーを、出力70%で6分間超音波処理した。超音波処理後、そのスラリーを氷浴の中で冷却した。3gのアクリロニトリルおよび25mgのAIBNの溶液を、そのフラスコに添加した。その得られたスラリー(13%wtのモノマー)を、さらに6分間、同じ出力で超音波処理した。次いで、そのスラリーを、窒素流を使用して30分間脱気した。次いで、そのスラリーを、窒素下で高速撹拌しながら、70℃に12時間加熱した。
【0046】
前の工程で得られたスラリーを、180℃に加熱した。加熱後、ポンプを25%で使用し、およびブロワーを95~100%(その装置の全出力に対する百分率)で使用する噴霧乾燥によってそのスラリーを乾燥させた。
【0047】
次いで、その乾燥した粒子を、5℃.分-1の速度での25℃から240℃への温度勾配を使用して、空気下で炭化し、240℃において1時間さらに保持した。次いで、その温度を、アルゴン:CO(75:25)または窒素の雰囲気下で700℃に5℃分-1の速度で上昇させた。
【0048】
実施例2:C-LTO/SBR/PAAに関する高電流での性能
【0049】
実施例1のプロセスによって調製したC-LTO材料を、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)結合剤(48%水溶液)およびCMC(1.5%水溶液)またはPAA(250000~500000g/mol)と混合して、スラリーを形成した。C-LTO/SBR/(CMCまたはPAA)の固体比は、96.0/2.5/1.5(被覆に由来する炭素の1.0重量%乾燥含有量に関して)であった。その得られたスラリーを、15ミクロンの厚みを有するアルミニウムホイル上に被覆した。
【0050】
次いで、LFP-LTOコインセルを、以下の構成で組み立てた:
セルタイプ: 2032サイズコインセル
カソード: LiFePO(LFP):カーボンブラック:PVdF=90:5:5
アノード:
-「参照」:LiTi12(LTO):カーボンブラック:SBR:CMC=91:5:2.5:1.5
-「C-LTO 1% CMC」:1重量% C-LiTi12(LTO):SBR:CMC=96:2.5:1.5
-「C-LTO 1% PAA」:1重量% C-LiTi12(LTO):SBR:PAA=96:2.5:1.5
セパレーター: ポリエチレンベース、16μm
電解質: 1mol/kg LiPF PC/DMC/EMC(4/3/3)
【0051】
得られた3種のセルのセル性能を試験し、比較した。サイクル試験の前に、そのバッテリーを、0.2Cにて、温度25℃において2回充電および放電した(「xC」は、1/x時間で全セル容量を充電/放電し得る電流として定義される)。使用した条件:
充電: CC-CV(定電流定電圧)モード
電圧:2.4V、電流:0.2C、カットオフ電流:0.03mA
放電: CC(定電流)モード
カットオフ電圧:0.5V、電流:0.2C
【0052】
出力性能に対するPAAの効果を、負荷試験によって評価した。LFP-LTOコインセルを組み立て、0.2C、1C、4C、10Cにてサイクルした(充電および放電した)。xC(x=0.2、1.0、4.0、10.0)におけるサイクル後に、そのバッテリーを、0.2Cにて満充電および満放電をサイクルした。例えば、1Cは、1時間でセルの全容量を充電または放電し得る電流である。2Cは、30分間についてのものであり、4Cは、15分間についてのものであり、10Cは、6分間についてのものである。
【0053】
充電負荷試験のために、0.2Cにおける満放電の後に、LFP-LTOセルを1Cにて充電し、次いで、0.2Cにて再び充電した。次いで、そのセルを、0.2Cにて放電し、2Cにて充電した。
【0054】
放電負荷試験のために、0.2Cにおける満充電の後に、LFP-LTOセルを1Cにて放電し、次いで、0.2Cにて再び放電した。次いで、そのセルを、0.2Cにて充電し、2Cにて放電した。
【0055】
容量維持率を、式1を使用して計算した:
容量維持率=(xCでの容量)/(0.2Cでの容量)×100 式1
【0056】
CC領域における容量を、充電負荷特性の計算に使用した。負荷試験の結果を表1に示す。使用した条件:
充電: CC-CV(定電流定電圧)モード
電圧:2.4V、電流:xC、カットオフ電流:0.03mA
放電: CC(定電流)モード
カットオフ電圧:0.5V、電流:xC
【表1】
【0057】
たとえさらなる伝導性因子(例えば、カーボンブラック)をC-LTO 1% CMC電極の中に含めなくても、それは、高電流(例えば、4Cまたは10C)において適合可能な性能を示した。しかし、C-LTO 1% PAA電極は、4Cおよび10Cでの参照と比較して、充電および放電の両方に関してより良好な容量維持率を示した。結合剤の中のPAAの存在は、従って、よりよい配位を通じてリチウムの輸送を増強するにあたって顕著な役割を果たす。
【0058】
実施例3:LFP/SBR/PAAの抵抗特性
【0059】
次いで、LFP-Liコインセルを、以下の構成で組み立てた:
セルタイプ: 2032サイズコインセル
カソード:「参照」:LiFePO(LFP):カーボンブラック:PVdF=90:5:5
「LFP CMC」:LFP:カーボンブラック:SBR:CMC=91.0:5.0:2.5:1.5
「LFP PAA」:LFP:カーボンブラック:SBR:PAA=91.0:5.0:1.0:3.0
「LFP PAA-Li」:LFP:カーボンブラック:SBR:PAA-Li=91.0:5.0:1.0:3.0
アノード: Li金属
電解質: 1mol/kg LiPF PC/DMC/EMC(4/3/3)
【0060】
3種のうちの第1のカソードを、LTOをLFPで置き換えて、実施例2におけるように調製した。LFP PAA-Liを、以下の工程によって調製した:
【0061】
PAA(450000g/mol)を、14.7重量%の濃度で水に溶解した。ポリマーの酸の基のうちの約50mol%を、LiOH.HOによって中和した。その溶液を、4時間、80℃において、次いで、12時間、室温において撹拌して、ポリマーの完全な溶解および中和を担保した。次いで、LFP-PAA-Li電極を、LFP-PAA電極と同じ方法で、PAAの代わりにPAA-Liを使用して調製した。
【0062】
サイクル試験の前に、バッテリーを、0.2Cにて、温度25℃において2回充電および放電した:
充電: CC-CV(定電流定電圧)モード
電圧:3.8V、電流:0.2C、カットオフ電流:0.03mA
放電: CC(定電流)モード
カットオフ電圧:2.0V、電流:0.2C
【0063】
電気化学的インピーダンス分光法(EIS)を、充電状態(SOC)=50%で前記のLFP-Liコインセルを使用して行い、他のセル(周波数:1MHz~10mHz、AC振幅:10mV)と比較した。
【0064】
図2は、種々のセルのナイキスト線図を示す。CMCを使用する場合、抵抗は、参照セルと比較して、低下する。他方で、CMCをPAAで置き換えると、CMCと比較して、反応抵抗の低減が示された。PAA-Liの使用は、さらに改善された結果を示し、ここで反応抵抗は、参照で得られた抵抗の半分未満であった。結合剤の中にリチウムイオンを添加すると、PAAマトリクス内でのリチウムチャネルの作製を通じて、リチウムの輸送がさらに改善する。
【0065】
実施例4:LFPおよびLTOセルの容量、効率および容量維持率に対するPAAの影響
【0066】
電極を、PVDFを使用した場合に、水をNMPで置き換えて、実施例2および3におけるとおり調製した。電極の組成が、実施例2または3に示されない場合、その組成は、以下のとおりである:
カソード:
「LFP PAA-NMP」(図3):LFP:カーボンブラック:PAA=91.0:5.0:4.0(NMP中で調製)
「LFP PAA-NMP」(図6):LFP:カーボンブラック:PAA=90.0:5.0:5.0(NMP中で調製)
アノード:
「LTO PVDF」:LTO:カーボンブラック:PVDF=90:5:5
「LTO PAA-NMP」(図4):LFP:カーボンブラック:PAA=91.0:5.0:4.0(NMP中で調製)
「LTO PAA-NMP」(図6):LFP:カーボンブラック:PAA=90.0:5.0:5.0(NMP中で調製)
【0067】
図3は、LFP電極の充電(a)および放電(b)の負荷特性を目立つように示す。容量維持率を、種々の充放電レート(1C、2C、4Cおよび10C)において評価した。グラフは、LFP-SBR/PAA、LFP-SBR/PAA-LiおよびLFP-PAA-NMPの容量維持率(%)を比較する。図3において使用される固体比は、「LFP
PAA-NMP」:LFP:カーボンブラック:PAA=91.0:5.0:4.0であった。
【0068】
表2は、LFP-SBR/PAA、LFP-SBR/PAA-LiおよびLFP-PAA-NMPの混合の0.3mAでの形成(formation)の充電および放電の効率%、なら
びに0.6mAでの公称充電/放電効率%を示す。
【表2】
【0069】
LTO電極の充電(a)および放電(b)の負荷特性を、図4に示す。容量維持率を、種々の充放電レート(1C、2C、4Cおよび10C)において評価した。グラフは、LTO-PVDFまたはLTO-PAA/NMPおよびLTO-SBR/CMCの結果を比較する。容量維持率における明らかな改善が、LTO-PVDFおよびLTO-SBR/CMCとの比較において、PAA電極に関して充電および放電の高いレート(10C)において顕著である。図4において使用される固体比は、「LTO PAA-NMP」:LFP:カーボンブラック:PAA=91.0:5.0:4.0であった。
【0070】
表3は、LTO-PVDF参照、LTO-PAA/NMPおよびLTO-SBR/CMCに関して、0.25mAでの形成の充電/放電効率%および0.5mAでの公称充電/放電効率%を含む。
【表3】
【0071】
LFP-LTOセルの充電(a)および放電(b)の負荷特性を、図5に示す。その容量維持率を、種々の充放電レート(1C、2C、4Cおよび10C)において評価した。図5は、LFP-PAA/NMP-LTOセルとの比較において、LFP-PVDF-LTO参照の結果を目立つように示す。繰り返すと、充電および放電の高いレート(4Cおよび10C)での容量維持率における顕著な改善は、参照との比較においてLFP-PAA/NMP-LTOセルに関して観察され得る。
【0072】
LFP-LTOセルの充電(a)および放電(b)の負荷特性のグラフを、図6に示す。その容量維持率を、種々の充放電レート(1C、2Cおよび4C)において評価した。その結果を、LFP(PVDF)-LTO(PVDF)参照およびLFP(PAA-NMP)-LTO(PVDF)セルに関して示す。もう一度、充電および放電の高いレート(4C)での容量維持率において顕著な改善が、PVDF参照との比較においてPAA含有セルに関して観察され得る。よって、結合剤におけるPAAの存在がリチウムの輸送を増強するにあたって顕著な役割を果たすことが示される。
LFP-LTOは、以下の組成を有した:
「LFP PAA-NMP」:LFP:カーボンブラック:PAA=90.0:5.0:5.0
「LTO PAA-NMP」:LFP:カーボンブラック:PAA=90.0:5.0:5.0
【0073】
多くの改変が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で記載される実施形態のうちのいずれかに対してなされ得る。本出願において参照される任意の参考文献、特許または科学論文の文書は、全ての目的のためにそれらの全体において本明細書に参考として援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】