(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066362
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】たばこ煙フィルタ
(51)【国際特許分類】
A24D 3/08 20060101AFI20220421BHJP
【FI】
A24D3/08
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022031874
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2019220194の分割
【原出願日】2013-02-25
(31)【優先権主張番号】1203202.5
(32)【優先日】2012-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1218113.7
(32)【優先日】2012-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】512123916
【氏名又は名称】エッセントラ フィルター プロダクツ ディベロップメント カンパニー プライベート リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー デニス マコーマック
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ジェイムズ ティッパー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジョン ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ベラ チェティ
(57)【要約】
【課題】フィルタとして使用するのに適している性能と、優れた生分解性とを有している不織布を含むたばこ煙フィルタフィルタを提供すること。
【解決手段】不織布を含むたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントであって、不織布はステープル・ファイバ・シートと、水溶性バインダとを含み、不織布の坪量は25~42gsmであり、水溶性バインダは、ステープル・ファイバ・シートの少なくとも一方の面上に均一に被覆されている、そして不織布が1.6mm,3.15mm,6.3mm及び12.5mm開口のスクリーンを使用してEDANA基準FG511.1 Tier 1 Dispersability Shake Flask Testを施した後に該不織布の95%以上が6.3mm開口スクリーンを通過する分散性を有している、たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を含むたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントであって、該不織布はステープル・ファイバ・シートと、水溶性バインダとを含み、該水溶性バインダは、該ステープル・ファイバ・シートの少なくとも一方の面上に均一に被覆されている、たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項2】
不織布を含むたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントであって、該不織布は、ステープル・ファイバと、水溶性バインダとを含み、該水溶性バインダは水性形態で該ステープル・ファイバに塗布されている、たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項3】
前記不織布がステープル・ファイバ・シートを含む、請求項2に記載のたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項4】
前記不織布がウェット・レイド不織布である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のフィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項5】
前記ステープル・ファイバが生分解性である、請求項1から4までのいずれか1項に記載のフィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項6】
前記ステープル・ファイバが、OECD 301B「易生分解性(Ready Biodegradability)」法(修正Sturm試験)に従って測定して「易生分解性」レベルを有している、請求項1から5までのいずれか1項に記載のフィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項7】
前記不織布が木材パルプを含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載のたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項8】
前記ステープル・ファイバが、カット長4mm~10mm、例えば4~6mmのステープル・ファイバである、請求項1から7までのいずれか1項に記載のフィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項9】
前記ステープル・ファイバの直径が1.7dtex~3.3dtexである、請求項1から8までのいずれか1項に記載のフィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項10】
前記ステープル・ファイバが再生セルロース繊維、ビスコース、テンセル、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、又は綿である、請求項1から9までのいずれか1項に記載のたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項11】
バインダの量が、完成済不織布中の固形物レベル含量のパーセンテージとして表して0.1%~5%である、請求項1から10までのいずれか1項に記載のたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項12】
前記水溶性バインダはカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース、ポリエチレンオキシド、天然又は加工澱粉、カチオン澱粉、グアールガム、又はこれらの誘導体である、請求項1から11までのいずれか1項に記載のたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項13】
前記不織布の坪量は25~42gsm、例えば27~40gsmである、請求項1から12までのいずれか1項に記載のフィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項14】
さらに香味増強添加剤を含む、請求項1から13までのいずれか1項に記載のたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項15】
前記不織布がたばこ煙濾過材料である、請求項1から14までのいずれか1項に記載のたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項16】
(1.6,3.15,6.3及び12.5mm開口のスクリーンを使用して)EDANA基準FG511.1 Tier 1 Dispersability Shake Flask Test(ティア1分散性振盪フラスコ試験)を施した後、前記不織布の95%以上、例えば96%以上が6.3mm開口スクリーンを通過する分散性を有している、請求項1から15までのいずれか1項に記載のたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項17】
前記不織布はさらに、該不織布の最大20重量%の量で木材パルプを含み、そしてバインダの量が、完成済不織布中の固形物レベル含量のパーセンテージとして表して0.1%~5%である、請求項1から16までのいずれか1項に記載のたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項18】
不織布を含むたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントであって、該不織布はステープル・ファイバ・シートと、木材パルプと、水溶性バインダとを含み、該水溶性バインダは、該ステープル・ファイバ・シートの少なくとも一方の面上に均一に被覆されており、そして該不織布の最大9.5重量%が木材パルプである、たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項19】
不織布を含むたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントであって、該不織布はステープル・ファイバ・シートと、木材パルプと、水溶性バインダとを含み、該水溶性バインダは、該ステープル・ファイバ・シートの少なくとも一方の面上に均一に被覆されており、そして不織布は、該不織布の最大20重量%の量で木材パルプを含み、そしてバインダの量が、完成済不織布中の固形物レベル含量のパーセンテージとして表して0.1%~5%である、たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項20】
実質的に例1,2又は4のいずれかに関連して前述されたたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【請求項21】
請求項1から20までのいずれか1項に記載のたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントを含むフィルタ・シガレット。
【請求項22】
不織布であって、該不織布はステープル・ファイバ・シートと、水溶性バインダとを含み、該水溶性バインダは、該ステープル・ファイバ・シートの少なくとも一方の面上に均一に被覆されている、不織布。
【請求項23】
不織布であって、該不織布は、ステープル・ファイバ(例えばステープル・ファイバ・シート)と、水溶性バインダとを含み、該水溶性バインダは水性形態で該ステープル・ファイバに塗布されている、不織布。
【請求項24】
前記ステープル・ファイバが再生セルロース繊維、ビスコース、テンセル、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、又は綿である、請求項22又は23に記載の不織布。
【請求項25】
たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントであって、請求項22から24までのいずれか1項に記載の不織布を含むたばこ煙濾過材料から成る長手方向に延びるロッドを含む、たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙物品、例えばシガレットのためのフィルタ及びフィルタ・エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
シガレットの吸い殻の、環境に与える影響に関連する問題を軽減することが広く望まれている。現在のシガレット・フィルタの大部分はコンベンショナルなセルロースアセテート・フィラメント状トウを使用して形成されている。その生分解速度は極めて遅い。このことは、吸い殻が地面に捨てられたときに、フィルタが長期にわたって明らかに識別可能なままになるというような問題を引き起こす。加えて、現在のセルロースアセテート・フィルタは、水路内に捨てたときには分散せず、長時間にわたる浸水後にもこれらの特徴的なサイズ及び形状がそのまま残る。これは廃水処理プラント内に問題を引き起こす。プラント内では使用済み吸い殻を処理過程中に水流から取り除かなければならない。もちろん、最初は陸上に捨てられた多くの吸い殻も、降雨後に下水管に流し落とされた後、結局は廃水処理プラント内に達することになる。従って、浸水時に迅速に分散する、易生分解性材料から形成されたシガレット・フィルタが必要である。加えて、フィルタ材料は数多くの他の基準、具体的には、シガレット・フィルタに高速で加工するのに適した形態を成すという基準を満たし、完成済フィルタに好適な特徴(例えば濾過効率、硬さ、ばらつきがないこと、など)を提供し、経済的に実現可能であり、そして最終シガレットにおいて許容し得る主観的特性(特に風味及び外観)を可能にしなければならない。
【発明の概要】
【0003】
これは新しい問題ではなく、数十年間にわたって研究者らが好適な生分解性シガレット・フィルタ材料を見いだそうと試みている。これらの要件に対処すると主張される材料に関して、数多くの特許出願がこの期間にわたって出願されているが、市場で目立って受け入れられたものはまだない。従って、浸水時に極めて迅速に崩壊する易生分解性のたばこ煙濾過材料が依然として必要である。
【0004】
本発明によれば、第1態様において、不織布を含むたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントであって、不織布はステープル・ファイバ・シートと、水溶性バインダとを含み、水溶性バインダは、ステープル・ファイバ・シートの少なくとも一方の面上に均一に被覆されている、たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントが提供される。
【0005】
本発明によれば、別の態様において、不織布を含むたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントであって、不織布は、ステープル・ファイバ(例えばステープル・ファイバ・シート)と、水溶性バインダとを含み、水溶性バインダは水性形態でステープル・ファイバに塗布されている、たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の「ビスコース2」及び「テンセル2」のフィルタ・ロッドの、時間に対する生分解性を、周知のセルロース・アセテートのフィルタ・ロッド「CA」と比較して示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
不織布とは、ファイバ(繊維)又はフィラメントを機械的、熱的、又は化学的に絡み合わせることによって(そしてフィルムにパーフォレーションを形成することによって)結合されたシート又はウェブ構造と定義することができる。不織布は別々の繊維から(又は溶融プラスチック又はプラスチック・フィルムから)直接に形成することができる。ここでは「不織布」という用語は紙又は原紙を含まないことを明示する。
【0008】
不織布はウェット・レイド(湿式)不織布であることが好ましい。不織布の坪量(basis weight)は25~42gsm、例えば27~40gsmであってよい。
【0009】
ステープル・ファイバは生分解性材料から成ることが好ましい。ステープル・ファイバが再生セルロース繊維、例えばビスコース又はテンセルであってよい。これらは両方ともLenzing AGから入手することができる。他の生分解性繊維、例えばポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、又は綿を使用してもよい。低分解性又は非生分解性繊維、例えばセルロースアセテート繊維、セルロースエステル繊維を使用することもできるが、しかしこれらは好ましくない。ステープル・ファイバはセルロースアセテート繊維又はセルロースエステル繊維でないことが好ましい。
【0010】
フィルタ/フィルタ・エレメント及び/又は不織布及び/又はステープル・ファイバが、当業者によく知られているOECD 301B「易生分解性(Ready Biodegradability)」法(修正Sturm試験)に従って測定して「易生分解性」レベルを有していることが好ましい。
【0011】
ステープル・ファイバは、カット長4mm~10mm、例えば4~6mmのステープル・ファイバであってよい。ステープル・ファイバの直径は1.7dtex~3.3dtexであってよい。ステープル・ファイバは任意の断面(例えば円形、三つ葉(トリローバル)状)を有していてよい。言うまでもなく、ウェット・レイド不織布中の使用に適したものであるならば、いかなるカット長及び直径のステープル・ファイバでも、本発明の範囲を逸脱することなしに使用することができ、また、種々異なる繊維、繊維長、又は繊維直径のブレンドを不織布中に使用してもよい。
【0012】
水溶性バインダの量は、完成済不織布中の固形物レベル含量のパーセンテージとして表して0.1%~5%、例えば0.5~3%、例えば1%であってよい。水溶性バインダはカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ヒドロキシセルロース、ポリエチレンオキシド、天然澱粉、加工澱粉、カチオン澱粉、グアールガム、又はこれらの誘導体であってよい。バインダは、液状バインダの塗布に適した任意の周知の方法、例えばカーテン被覆、サイズプレス、マングル・パディング、スプレーなどによって塗布することができる。不織布はアルカリ化合物を含まないことが好ましい。
【0013】
本発明のフィルタ及びエレメントは、(例えばショートカット生分解性)ステープル・ファイバ(例えば再生セルロース繊維)と、水溶性バインダとを含む不織布を含んでいる。水溶性バインダは水性形態で(ファイバに)塗布されていることが好ましい。水溶性バインダは水性形態で(ファイバに)塗布され、続いて乾燥させられることが好ましい。
【0014】
特定の不織布材料は、ウェット・レイド法によって製造されるのが好ましい。不織布は種々異なるよく知られた製造ルート(例えばドライ・レイド(乾式)又はカード処理、スパンボンド、ウェット・レイド(湿式)、エア・レイドなど)によって調製することができる。本出願人は、ウェット・レイド不織布が、シガレット・フィルタに必要とされる厳しいチップ間圧力損失再現性基準を満たすのに最も適していることを見いだした。この基準は、(分散特性とは無関係に)実現可能なたばこ煙濾過材料に対する不可欠な必要条件である。圧力損失は1チップ当たりに使用される不織布の重量に関連する。紙及び不織布の坪量は、少なくとも20×25cmの面積の重量を定量化する標準法を用いて測定される。典型的なシガレット・フィルタ内に使用される量は、このような量の約10%しか使用しないので、このような大きい試験片の重量変動に基づくデータは、シガレット・フィルタの再現性基準を満たすための適合性に関して誤解を招くおそれがある。2cm×30cmの不織布ストリップの重量変動を測定することによって、出願人は、ウェット・レイド不織布が約±1%以下の所要重量変動要件を満たすのに最も適していることを見極めた。
【0015】
100%ステープル・ファイバから製造されたウェット・レイド不織布は極めて弱く、フィルタ製造機械上での処理に耐えるのに十分な機械的完全性を有してはいない。従って、不織布に十分な強度を提供するためにバインダが必要となる。従来のウェット・レイド不織布はしばしば、繊維ファーニッシュの一部として熱可塑性バインダ繊維を内蔵している。次いでこれらのバインダ繊維は不織布製造の乾燥段階中に活性化される。しかしながら本出願人は、バインダ繊維を内蔵する不織布が冷水中では容易に分散しないので、本出願には適さないことを見いだした(下記比較例3参照)。出願人は(例えば液状の)水溶性バインダをステープル・ファイバと一緒に使用することによって、冷水中での迅速な分散が可能になることを見いだした。
【0016】
不織布は、(1.6,3.15,6.3及び12.5mm開口のスクリーンを使用して)EDANA基準FG511.1 Tier 1 Dispersability Shake Flask Test(ティア1分散性振盪フラスコ試験)を施した後、不織布の95%以上、例えば96%以上が6.3mm開口スクリーンを通過する分散性を有する不織布であってよい。この試験は当業者によく知られており、この分散性は、冷水中の容易且つ効果的な分散を示す(高分散性)。
【0017】
本発明によるフィルタの最終外観及び硬さの特徴はまたセルロースアセテートのものと同様であり、やはり商業的な受け入れ可能性を高める。
【0018】
本発明によるフィルタ中に使用される不織布を、紙系シガレット・フィルタを形成するために使用される標準設備を使用して処理(例えばエンボス加工)すると有利である。紙フィルタは同じ圧力損失を有するセルロースアセテート・フィルタよりもタール保持率が高い。このことは、シガレット製造業者がセルロースアセテートを紙フィルタと単純に置き換えることはできないことを意味する。なぜならば、(同じ圧力損失又はタール送達率を維持するために)フィルタの長さを変えることが必要となるか、又は(フィルタの長さが一定である場合に)シガレット・タール送達率が減少し、圧力損失が増大することになるからである。本出願人は、本発明によるフィルタ及びフィルタ・エレメントのタール保持率が紙よりもセルロースアセテートのものに極めて近いことを見いだした。また、不織布構造の開放性、及び本質的な多孔率が高ければ高いほど、その材料を内蔵するフィルタのタール保持率は低くなることも、本出願人は見いだした。このように、望ましいタール保持率及び圧力損失を有するフィルタ及びフィルタ・エレメントを提供するために、構成繊維特性、例えばポリマーのタイプ、繊維断面、繊維クリンプ、繊維寸法を制御することによって、不織布の多孔性を設計することができる。このことは、本発明のフィルタ/エレメントが、セルロースアセテート・フィルタとの単純な置換物としてこれらを使用できるのでさらに有利であることを意味する。
【0019】
不織布はさらに木材パルプを含んでもよい。ここでは、木材パルプという用語は、天然発生型セルロース繊維を構成するパルプ(例えば軟木又は硬木からコンベンショナルな方法、例えば亜硫酸塩法又はクラフト法によって得られる)を含む。パルプは例えばコンベンショナルな叩解機械又は精製機械を使用して叩解(当業者にはよく知られている)されていてよい。木材パルプは不織布の引張り強度を向上させることができる。木材パルプが含まれる場合には、これは不織布の0.1~20重量%、例えば5~10重量%の量で存在することが好ましい。好ましい例では、木材パルプは不織布の最大9.5重量%、例えば1~9重量%、例えば5~9重量%の量で含まれている。(水溶性バインダに加えて)このような極めて少量の木材パルプを含む不織布が、フィルタ/フィルタ・エレメントに形成するのに十分な強さを有することを、出願人は驚くべきことに見いだした。異なる好ましい例では、木材パルプは不織布の最大20重量%、例えば1~20重量%の量で含まれており、そして水溶性バインダは、完成済不織布中の固形物レベル含量のパーセンテージとして表して0.1%~5%の量で存在する。
【0020】
従って本発明によれば、1態様において、不織布を含むたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントであって、不織布はステープル・ファイバ・シートと、木材パルプと、水溶性バインダとを含み、水溶性バインダは、該ステープル・ファイバ・シートの少なくとも一方の面上に均一に被覆されており、そして不織布の最大9.5重量%が木材パルプである、たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントが提供される。
【0021】
本発明によれば、別の態様において、不織布を含むたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントであって、不織布はステープル・ファイバ・シートと、木材パルプと、水溶性バインダとを含み、水溶性バインダは、ステープル・ファイバ・シートの少なくとも一方の面上に均一に被覆されており、そして不織布は、不織布の最大20重量%の量で木材パルプを含み、そしてバインダの量が、完成済不織布中の固形物レベル含量のパーセンテージとして表して0.1%~5%である、たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントが提供される。ステープル・ファイバはセルロースアセテート繊維又はセルロースエステル繊維でないことが好ましい。
【0022】
たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントはさらに香味増強添加剤を含んでいてよい。香味増強添加剤は、紙フィルタ内に使用するための、国際公開第2010/136751号パンフレットに開示されているような添加剤であってよい。香味増強添加剤は、脂環式ラクトン、芳香族ラクトン、芳香族ケトン、第2級アルコール又はそのエステル、フタリド、χ-バレロラクトン、χ-ヘキサラクトン、δ-ヘキサラクトン、χ-ヘプタラクトン、χ-オクタラクトン、δ-オクタラクトン、4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸ラクトン、5-ヒドロキシ-2-デセン酸δ-ラクトン、4,4-ジブチル-χ-ブチロラクトン、ミントラクトン、デヒドロメントフロラクトン、3-ブチリデンフタリド、3-n-ブチルフタリド、ウイスキーラクトン、又はセダンノリドであってよい。
【0023】
たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントは、たばこ煙濾過材料の長手方向に延びるコアを含んでいてよい。たばこ煙濾過材料は不織布を含んでいてよく、又は不織布であってもよい。たばこ煙濾過材料の長手方向に延びるコアはほぼ円筒形であってよい。
【0024】
本発明によるたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントは、周囲14~28mm、例えば16~26mm、例えば16~17mm又は24~25mmであってよい。本発明のたばこ煙フィルタの長さは10~40mm、例えば15~35mm、例えば20~30mmであってよい。本発明のたばこ煙フィルタ・エレメントは、長さ5~30mm、例えば6~20mm、例えば8~15mm、例えば10~12mmであってよい。
【0025】
本発明のたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントはさらに例えばプラグラップのラッパを含んでいてもよい。ラッパはたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントの周り(例えばたばこ煙濾過材料の長手方向に延びるコアの周り)に係合されるのが好ましい。ラッパ(例えばプラグラップ)は、水溶性接着剤で(例えば当業者に知られているような重ね合わせ・貼り付けシームによって)所定に位置に保持されることが好ましい。水溶性接着剤は、水との接触時にフィルタの開放を容易にすることにより、フィルタ内に含まれるフィルタ材料(不織布)を露出させ、これによって使用後のフィルタ(不織布)の崩壊を容易にするので有利である。
【0026】
本発明のフィルタ又はフィルタ・エレメントは、単一フィルタ・チップとして、又はフィルタ・ロッドとして、又はマルチ・セグメント・フィルタ内の1つ又は2つ以上のセグメントなどとして使用してよい。このように本発明によるフィルタ・エレメントは、二要素、三要素、又はその他の多要素から成るセグメント(マルチプル・セグメント)フィルタとして使用してよい。二要素又はその他の多要素フィルタは当業者に知られている。本発明によるフィルタは、機械製シガレット(例えば大量生産され包装されたシガレット)内に使用されてよい。本発明によるフィルタは個々に巻かれたシガレット(例えば手巻きシガレット)又は自分で巻いた(Roll Your Own )又は自分で作った(Make-Your-Own)製品とともに使用するためにフィルタ・チップとして使用されてもよい。
【0027】
本発明によれば更なる態様において、本発明によるたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントを含むフィルタ・シガレットが提供される。本発明によるフィルタ・シガレットにおいて、本発明のフィルタ(又は本発明のフィルタ・エレメントを含むフィルタ)は、ラッピングされたタバコ・ロッドに、タバコに向いた一方の端部で接合されている。フィルタは例えば、リング・チッピング([ラッピングされた]フィルタ及びロッドの隣接する端部の周りだけに係合することによって、フィルタ・ラッパのほとんどを露出したままにする)によって、又は完全チッピング・オーバラップ(フィルタ全長及びタバコ・ロッドの隣接端部の周りに係合する)によって、ラッピングされたタバコ・ロッドに接合されてよい。プラグラップ/オーバーラップ及び/又はチッピング紙は水溶性重ね合わせ接着剤を含んでいることが好ましい。水溶性接着剤は、水との接触時にフィルタの開放を容易にすることにより、フィルタ内に含まれるフィルタ材料(不織布)を露出させ、これによって使用後のフィルタ(不織布)の崩壊を容易にするので有利である。
【0028】
本発明によるいずれのフィルタ又はフィルタ・シガレットも無通気型であってよく、或いは慣用の手段により、例えば予めパーフォレーション形成された、又は空気透過性のプラグラップを使用することにより、且つ/又はプラグラップ及びチッピング・オーバラップのレーザーパーフォレーション形成により、通気されてもよい。
【0029】
本発明によるフィルタ又はフィルタ・エレメントは、(当業者によく知られている方法によって)連続したロッドとして形成されていてよい。連続したロッドは、製造機械出口から連続的に出るのに伴って、後続の使用のために有限の長さに切断される。この切断により、上に定義して説明した個別のフィルタ又はフィルタ・エレメントを形成することができる。次いでこれらのそれぞれを、個別のラッピングされたタバコ・ロッドに取り付けることによって、フィルタ・シガレットを形成する。しかし大抵は、連続して出るフィルタ・ロッドを先ず、後続の使用のために2倍以上(通常は4倍又は6倍)の長さに切断し;最初の切断によって4倍以上の長さにした場合、続いてこれらをフィルタ・シガレット集成体のために2倍の長さに切断する。この場合、2倍の長さのフィルタ・ロッドが、ラッピングされたタバコ・ロッド対の間で集成されて(リング・チッピング又は完全チッピング・オーバラップによって)接合される。次いでこの組み合わせを真ん中で分断することによって、2つの個別のフィルタ・シガレットをもたらす。当業者に知られているように、二要素又は多要素フィルタを形成するために組み合わされる、例えば2倍長のフィルタ・エレメントの場合にも同様の技術が用いられる。本発明は、2倍長以上のフィルタ・ロッド(及び/又はフィルタ・エレメント・ロッド)を含む。
【0030】
本発明によれば更なる態様において、不織布であって、不織布はステープル・ファイバ・シートと、水溶性バインダとを含み、水溶性バインダは、ステープル・ファイバ・シートの少なくとも一方の面上に均一に被覆されている、不織布が提供される。本発明によれば別の態様において、不織布であって、不織布は、ステープル・ファイバ(例えばステープル・ファイバ・シート)と、水溶性バインダとを含み、水溶性バインダは水性形態でステープル・ファイバに塗布されている、不織布が提供される。不織布がウェット・レイド不織布であることが好ましい。本発明の不織布は、(例えばショートカット生分解性)ステープル・ファイバと、水溶性バインダとを含む。水溶性バインダは水性形態で(ファイバに)塗布されていることが好ましい。ステープル・ファイバは、カット長4mm~10mm、例えば4~6mmのステープル・ファイバであってよい。ステープル・ファイバの直径は1.7dtex~3.3dtexであってよい。ステープル・ファイバは任意の断面(例えば円形、三つ葉(トリローバル)状)を有していてよい。言うまでもなく、ウェット・レイド不織布中の使用に適したものであるならば、いかなるカット長及び直径のステープル・ファイバでも、本発明の範囲を逸脱することなしに使用することができ、また、種々異なる繊維、繊維長、又は繊維直径のブレンドを不織布中に使用してもよい。
【0031】
ステープル・ファイバは生分解性材料から成ることが好ましい。ステープル・ファイバが再生セルロース繊維、例えばビスコース又はテンセルであってよい。これらは両方ともLenzing AGから入手することができる。他の生分解性繊維、例えばポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、又は綿を使用してもよい。低生分解性又は非生分解性のセルロースアセテート繊維を使用することもできるが、しかしこれらは好ましくない。
【0032】
不織布はさらに木材パルプを含んでもよい。木材パルプは不織布の引張り強度を向上させることができる。木材パルプが含まれる場合には、これは不織布の0.1~20重量%、例えば5~10重量%の量で存在することが好ましい。
【0033】
水溶性バインダの量は、完成済不織布中の固形物レベル含量のパーセンテージとして表して0.1%~5%、例えば0.5~3%、例えば1%であってよい。水溶性バインダはカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVOH)、ヒドロキシセルロース、ポリエチレンオキシド、又は澱粉であってよい。バインダは、液状バインダの塗布に適した任意の周知の方法、例えばカーテン被覆、サイズプレス、マングル・パディングなどによって塗布することができる。不織布はアルカリ化合物を含まないことが好ましい。
【0034】
好ましい例では、木材パルプは不織布の最大9.5重量%、例えば1~9重量%、例えば5~9重量%の量で含まれている。本発明者は驚くべきことに、(水溶性バインダに加えて)このような極めて少量の木材パルプを含む不織布が、フィルタ/フィルタ・エレメントに形成するのに十分な強さを有することを、見いだした。異なる好ましい例では、木材パルプは不織布の最大20重量%、例えば1~20重量%の量で含まれており、そして水溶性バインダは、完成済不織布中の固形物レベル含量のパーセンテージとして表して0.1%~5%の量で存在する。
【0035】
ステープル・ファイバはセルロースアセテート繊維又はセルロースエステル繊維でないことが好ましい。
【0036】
本発明によれば更なる態様において、たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントであって、本発明による不織布を含む濾過材料を構成するたばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントが提供される。
【実施例0037】
下記の例及び添付の図面を参照しながら本発明を以下に説明する。
【0038】
例1
TAPPI基準T205に従ってハンドシート・フォーマ(Handsheet Former)を使用して、約40gsmの小規模ウェット・レイド不織布を調製した。90%のPVOH繊維(2.8dtex,4mm長)と10%の木材パルプとの繊維ブレンドを使用した。これらのシートの引張り強度は10Nを下回り、すなわち極めて弱かった。続いてパディング機械を使用して、これらのシートにCMC又はPVOH水溶性バインダを塗布した。4%のCMCを添加すると引張り強度は65Nまで増大するのに対して、4.5%のPVOHを添加すると引張り強度は108Nまで増大した。従って、液体系バインダを添加すると、このような不織布が高速シガレット・フィルタ製造設備上で処理されるのを可能にするのに十分な強度がもたらされる。これらのハンドシート不織布に、(1.6,3.15,6.3及び12.5mm開口のスクリーンを使用して)EDANA基準FG511.1 Tier 1 Dispersability Shake Flask Test(ティア1分散性振盪フラスコ試験)を施し、そして99.5%超が最小の1.6mmスクリーンを通過することが見いだされた。これにより、極めて高い分散性レベルが実証された。この試験によって測定すると、未処理シートにバインダを添加することにより、分散性レベルが改善されることも観察された。
【0039】
例1は、本発明の不織布が(本発明による)たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントにおける使用に適しており、そして冷水中の優れた分散性レベルを有すること、つまり不織布が高生分解性であることを実証する。
【0040】
例2
パイロット規模の傾斜ワイヤ・ハイドロフォーマを使用して、本発明による2つのタイプのウェット・レイド不織布(符号A及びB)を調製した。不織布Aは長さ6mm、線密度1.7dtexの100%ビスコース繊維(Kelheim Fibres GmbHによって供給)を使用し、そして不織布Bは、長さ6mm、線密度1.7dtexの100%テンセル繊維(Lenzing AGによって供給)を使用した。水溶性CMCバインダの1%溶液(Finnfix 700, Noviant製)をカーテン被覆技術を介して製造中に両不織布に塗布した。次いで両タイプの不織布から、当業者によく知られている紙系シガレット・フィルタ製造設備を使用してシガレット・フィルタを製造した(例えば例4参照)。この過程の本質的な特徴は、圧縮によって円筒形ロッド形態にするのを容易にするために不織布に長手方向エンボス加工を施すことである。不織布のバルク、引張り、及び延伸特性は、これがエンボス加工に耐え得るかどうかを見極める上で極めて重要であり、例えば不織布はローラを破損又は妨害してはならない。本発明者は驚くべきことに、両不織布がフィルタ製造設備上で良好に加工されることを見いだした。下記表は、不織布、及びこれらの不織布から形成されたシガレット・フィルタに対する試験結果を示す。
【表1】
【0041】
これらのフィルタを、プラグラップが取り外された状態で冷水を含むビーカ内に入れることによってその分散特性を評価した。フィルタA及びBは両方とも、時折静かに攪拌しながら1分未満で完全に分散した。これは、同じ時間枠にわたって分散兆候を示さない紙フィルタよりも著しく高速であった。不織布A及びBの試料にも、(1.6,3.15,6.3及び12.5mm開口のスクリーンを使用して)EDANA基準FG511.1 Tier 1 Dispersability Shake Flask Test(ティア1分散性振盪フラスコ試験)を施した。このような状態にされた後、不織布Aの99%及び不織布Bの97%が6.3mm開口スクリーンを通過することが見いだされた。これは極めて高い分散性レベルを示す。
【0042】
例2は、本発明の不織布が(本発明による)たばこ煙フィルタ又はフィルタ・エレメントにおける使用に適しており、そして冷水中の優れた分散性レベルを有すること、つまり不織布が高生分解性であることを実証する。
【0043】
比較例3(本発明のものではない)
不織布Aと同じ設備及びビスコース繊維を使用して、しかし1%水溶性液状バインダではなく5%PVOHバインダ繊維を使用して、第3材料(「不織布C」)を調製するために更なる試験を実施した。すなわち不織布Cは95%のビスコースと5%のPVOH繊維とから成った。不織布Cは重量が36gsm、重量変動が1.05%、機械方向引張り強度が47N、そして横方向引張り強度が33Nであった。これらは全て不織布A及びBの値に近かった。しかし不織布Cの分散特性は不織布A及びBに対して著しく劣った。チップを水中に入れた後の迅速な分散の兆候はなく、例1及び2と同じ振盪フラスコ試験を施した後、6.3mm開口スクリーンを通過するのは10%未満であった。
【0044】
比較例3は、迅速な分散のためには、不織布内部のバインダ繊維としてではなく、(例えば水性形態で塗布することによって)均一な層として水溶性バインダを不織布に塗布しなければならないことを実証する。
【0045】
例4
例2と同様に、パイロット規模の傾斜ワイヤ・ハイドロフォーマを使用して、本発明による2つのタイプのウェット・レイド不織布(再び符号A及びB)を調製した。不織布Aは長さ6mm、線密度1.7dtexの100%ビスコース繊維(Kelheim Fibres GmbHによって供給)を使用し、そして不織布Bは、長さ6mm、線密度1.7dtexの100%テンセル繊維(Lenzing AGによって供給)を使用した。水溶性CMCバインダの1%溶液(Finnfix 700, Noviant製)をカーテン被覆技術を介して製造中に両不織布に塗布した。次いで両タイプの不織布から、当業者によく知られている紙系シガレット・フィルタ製造設備を使用してシガレット・フィルタを製造した。
【0046】
英国特許出願公開第2075328号明細書に記載された方法に従って、ウェット・レイド不織布A又はBから形成された円筒形ロッド(長さ15mm及び周囲24.50mm)から、試料フィルタを製造した。
【0047】
上記のような傾斜ワイヤ機械上でウェット・レイド不織布を形成する。次いで、長手方向に前進する完成済不織布ウェブを、(不織布に長手方向のエンボス加工を施すために)周方向に延びる波形構造を有する協働ロール間で長手方向に前進させる。そしてその後、(不織布ウェブとして長手方向に前進させながら)横方向に連続的に集結させてロッド形状にする。その結果として連続的に製造されたロッドを、やはり当業者に知られている方法によって、連続的に横方向に切断して有限の長さにすることにより製品フィルタ又はフィルタ・ロッドを提供する。
【0048】
フィルタ/フィルタ・ロッド/フィルタ・セグメントは、当業者によく知られた方法によってフィルタ・シガレット内に含むことができる。
【0049】
例5
本発明のフィルタの繊維生分解性を周知のセルロースアセテート・フィルタと比較した。
【0050】
上記例4に示された方法に従って、本発明による試料フィルタを製造した。長さ6mm、線密度1.7dtexの100%ビスコース繊維(Kelheim Fibres GmbHによって供給)を使用する繊維から「ビスコース2」フィルタを形成した。長さ6mm、線密度1.7dtexの100%テンセル繊維(Lenzing AGによって供給)を使用する繊維から「テンセル2」フィルタを形成した。CMCバインダの1%溶液(Finnfix 700, Noviant製)をカーテン被覆技術を介して製造中に両不織布に塗布した。次いで両タイプの不織布から、当業者によく知られている紙系シガレット・フィルタ製造設備を使用してフィルタを製造した。
【0051】
独立ラボラトリによってOECD 301B「易生分解性(Ready Biodegradability)」法(修正Sturm試験)に従って生分解性を測定した。この試験は、28日間にわたる(パーセンテージとして表した)材料の生分解性の尺度を提供する。
図1は、本発明によるビスコース2及びテンセル2のフィルタに対する結果を、この方法に従って試験したときのCA(標準的なセルロースアセテート・フィルタ・ロッド)と比較して示している。
【0052】
本発明によるビスコース2及びテンセル2のフィルタ(及び材料)がセルロースアセテートよりも迅速に、そして広範囲にわたって分解することが明らかである。さらにこの試験によれば、10日間にわたる生分解によって測定して3つの生分解性レベルを材料に割り当てることができる。生分解性の合格レベルは「易生分解性」(定義された10日間にわたって60%を上回る生分解性をもたらす)であるが、試験における材料の性能に応じて他のより低い生分解性レベル、例えば「究極的生分解性」及び「なし」もある。本発明によるビスコース2及びテンセル2のフィルタは全て「易生分解性」と認定された。これに対して「CA」は「究極的生分解性」という、より低い認定を受けた。
【0053】
これらの結果は、本発明のフィルタがセルロースアセテート・フィルタ(及びセルロースエステル・フィルタ)と比較して優れた生分解性を示すことを裏付ける。
【0054】
試験6
欧州特許第0709037号明細書は、改変断面、例えば特定のX,Y又はI字形断面を有するセルロースエステル繊維の利点に言及している。前記明細書の比較例1~5は、より標準的な繊維断面を有する繊維に言及しており、これらの繊維の崩壊性は、改変断面繊維の「優れた」崩壊性と比較して「不良」であると記載されている。EDANAフラスコ振盪試験(例1に記載された方法を参照)を、異なる断面を有するビスコース繊維で形成された、本発明の複数のハンドシート上で実施した。使用したビスコース繊維はKelheim Fibresの「Danufil」及び「Galaxy」であった。これらの繊維はそれぞれ円形断面、及び改変トリローバル状断面を有している。結果を下記表に示す。これらの結果は、円形断面及び改変トリローバル断面を使用して形成されたシートの分散性間には差がほとんどないことを示している。この結果は欧州特許第0709037号明細書の教示内容を考えると全く予期できないものである。前記明細書は、改変断面、例えば特定のX,Y又はI字形断面を有する(セルロースエステル)繊維は「優れた」崩壊性を有しており、これに対して、より標準的な繊維断面を有する繊維の崩壊性は「不良」であることを示唆している。このことは、ステープル・ファイバと、少量の水溶性バインダと、(任意には)少量の木材パルプとを含む本発明のフィルタの生分解性が注目に値することを実証している。さらに、これらの結果は、驚くべきことに本発明の不織布(及びフィルタ)において、繊維断面形状が分散性とは無関係であることを示している。
【表2】