IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特開2022-66444光沢インク受容性媒体のためのコーティング組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066444
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】光沢インク受容性媒体のためのコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20220421BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20220421BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20220421BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20220421BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220421BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
C09D175/04
C08G18/00 C
C08G18/48 037
C08G18/75 080
C09D5/02
C09D133/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022034291
(22)【出願日】2022-03-07
(62)【分割の表示】P 2019505068の分割
【原出願日】2017-07-31
(31)【優先権主張番号】62/369,233
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シャン リウ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ラブニン
(57)【要約】
【課題】 光沢インク受容性媒体のためのコーティング組成物を提供すること
【解決手段】 本発明は、高い百分率の係留エチレンオキシド豊富鎖を有する軟質水希釈性ポリウレタンと、アクリル酸および/またはメタクリル酸のC1~C12エステルから、ならびに組み合わせたアクリル酸とメタクリル酸の酸構成成分からの特定の百分率の反復単位を有する硬質アクリルコポリマーとのブレンドを提供する。ブレンドは、コーティング中にバインダーを形成し、高い光沢、透明度を有し、かつ、コーティングに付与されたインクが、インクの付与後に短時間でにじみ抵抗性画像に変換されることを推進する可能性を示す。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
光沢インク受容性媒体(glossy ink receptive media)をもたらすコーティング組
成物は、比較的高い光沢の画像が望まれうる様々な潜在的な印刷用途の被覆表面を調製するために有用である。インクのデジタルおよびインクジェット付与は、インク受容性コーティング組成物に画像および/またはテキストを付与するために使用される1つの予想される印刷方法である。水性インクがコーティングとの使用に好ましい。着色インクの使用が予想される。染料インクの使用も可能である。乾燥したコーティングは、水および溶媒(例えば、湿潤剤、凝集剤など)と高い親和性を有し、それによって、インク中の水および/または溶媒は吸収されて、印刷画像の素早い乾燥および素早いにじみ抵抗力の発生を促進することができる。乾燥したコーティングおよび画像は、望ましくは、良好な湿潤擦り抵抗性(wet rub resistance)を有し、それによって、コーティングは、水に浸漬され、湿潤している間に移動表面との接触を受けた後に判読可能であるラベルに使用することができる。驚くべきことに、これらの2つの非常に親水性のポリマーの混合物が、耐水性フィルムをもたらした。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
水性インクジェット印刷用のインク受容性コーティングは公知であり、一般に、沈降シリカなどの高吸収性粒子を伴う。
【0003】
シリカおよび他の高吸収性無機粒子を含有するインク受容性コーティングの問題は、粗い低光沢のコーティング表面をもたらしやすいことである。シリカは、低光沢の(つや消しされた)コーティングおよび仕上げを作り出す主なつや消し剤の1つである。
【0004】
水性インクにより受容性コーティング上に得られたデジタル印刷画像の別の問題は、湿潤摩耗抵抗性である。典型的には、水および他の極性溶媒と良好に相互作用する物体は、水および極性溶媒の存在下で膨張および軟化する。コーティングに吸収されているのではなく、コーティングの表面上のインク画像は、とりわけ、硬質の膨張していないコーティングより、軟性の膨張したコーティングから素早く摩耗されやすい。このように、コーティングインクを受容性にする、および素早く乾燥する技術は、また、コーティング上の画像が急速な摩損(abrasive wear)、ならびに画像品質および判読性の損失をより受けやすくする。
【0005】
基材に光沢インクジェット受容性コーティングを形成するコーティング組成物についての米国特許第8,440,273号は、カチオン性ポリマーおよびコロイドシリカを有する基材上のコーティングに関する。
【0006】
インクジェットで印刷可能なウォータースライド転写性媒体についての国際公開第02/068191A1号は、印刷することができ、次に基材上の印刷画像を別の物体へ転写することを推進できるインク受容性構造体に関する。
米国特許第6,897,281B2号は、通気性ポリウレタン、それらのブレンド、および物品に関する。ポリウレタンは、透湿性を助けるポリ(エチレンオキシド)豊富側鎖を有するので、異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8,440,273号明細書
【特許文献2】国際公開第02/068191A1号
【特許文献3】米国特許第6,897,281B2号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明は、水性媒体中の水希釈性(water reducible)ポリウレタンと、少なくともアルキルアクリレートおよび組み合わせたアクリル酸とメタクリル酸の水性アクリルコポリマー分散体とのブレンドを、インク受容性コーティングまたはフィルムの主要な構成成分として提供する。乾燥することによって、様々な基材のための潜在的に高い光沢のインク受容性コーティングとしてフィルムに変換されるブレンドの使用にも関する。インク受容性コーティングは、良好な印刷適性を有し、画像を取り扱う、包装する、および在庫に入れる、ならびに/または画像に有意なにじみを有することなく使用することができる前に最小限の乾燥時間を要するように、比較的迅速な乾燥時間で高解像度の画像をもたらす。また、上記に記載されたインク受容性コーティングに印刷された画像を有する(潜在的に高い光沢の)印刷物品にも関する。前記の画像は、大部分のインク液が蒸発したときに良好な湿潤擦り抵抗性を有する(インク液は、水および溶媒である)。また、インク受容性コーティングを一緒にする、基材に付与する、ならびに/またはインク受容性コーティングに印刷して、印刷された直ぐ後ににじむ傾向の低い画像および/もしくはテキストを形成する方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、様々な印刷方法にインク受容性媒体(例えば、フィルムまたはコーティング)として使用されうるポリマー組成物をもたらす、少なくとも2つのポリマーのブレンドに関する。従来技術の組成物に対するこの組成物の利点は、光沢を低減する傾向がある多孔質高吸収性充填剤を必要としないので、非常に高い光沢のコーティングまたはフィルムでありうることである。高吸収性充填剤は、一般に、充填剤としてインク受容性コーティングにとって有用であり、水および低分子量極性有機溶媒をインク組成物から吸収することができ、それによって、インクを媒体(例えば、コーティングまたはフィルム)の表面で増粘または凝固させ、完全凝集したフィルムに近いので、印刷面に沿ってインクが移行することを防止する、および/またはインクのにじみを最小限にする。
【0010】
コーティング組成物は、使用される少なくとも2つのポリマーのそれぞれが、水および/または有機溶媒のいずれにおいても有意な吸収性を有するので、高吸収性充填剤の必要性または要望を低減することができる。ポリマーは独自なものであり、それは、これらが水および/または有機溶媒の高い吸収性を有していても、最終インク受容性媒体(例えば、フィルムまたはコーティング)におけるポリマーは、インク受容性コーティングの湿潤擦り抵抗性を低減する、または基材から離層するほど大きな程度で水または有機溶媒中で膨張しないからである。インク受容性コーティング/フィルム上の印刷画像は、良好な湿潤(水)擦り抵抗性を有することが望ましく、それは、水への曝露が多くの印刷画像に一般的に発生するからである。
【0011】
高吸収性充填剤(例えば、シリカまたはカチオン性シリカ)は、多量の水または低分子量有機溶媒を吸収する能力を、下記に記載されている2つのポリマーと共有する。高吸収性充填剤も水または有機溶媒に飽和したときにコーティングまたはフィルムを有意に軟化せず、したがって、湿潤擦り抵抗性に肯定的に寄与することができる。しかし、上記に記載されたように、高吸収性シリカは、コーティングおよびフィルムにおいて光沢を低減する傾向がある。高吸収性充填剤は、インク受容性媒体の透明度を低減する傾向もある。現
行のインク受容性媒体は、充填剤を用いることなく配合することができ、高い程度の透明度を有することができる。
【0012】
コーティングまたはフィルム組成物を、主に、少なくとも水希釈性ポリウレタンおよび特定の組成の水性アクリルコポリマー分散体から構成されるバインダー系として記載する。バインダー系は、任意選択のポリマーをバインダー組成物の10または20wt%まで含むことができる。コーティングまたはフィルムは、粒子状材料(全ての実施形態に必要であるとは限らない)、界面活性剤、分散剤、湿潤剤、表面改質剤、殺生物剤および他の防腐剤、ならびにコーティングおよびフィルムに一般的な他の添加剤を含むこともできる。バインダー組成物は、乾燥インク受容性フィルムまたはコーティングの約20~約100wt%を構成しうる。したがって、バインダーは、最終フィルムを形成する材料の100%までになりうる。典型的には、充填剤、顔料、または機能性粒子(存在する場合)などの任意の粒子が、フィルムまたはコーティングの他の主な構成成分である。一般に、粒子状材料には、充填剤、顔料、ならびに強度平均およびガウス分布を使用する動的光散乱測定により10または20ナノメートルを超えて、20ミクロン未満と決定されたものなどの数平均粒径を有する他の固体が含まれる。他の様々な添加剤(例えば、界面活性剤)は、典型的には、最終フィルムまたはコーティングの10wt%未満である。
【0013】
バインダーにおける2つの主なポリマーは、水希釈性ポリウレタンおよび水性分散体のアクリルコポリマーである。任意選択のポリマーは、コーティングにおける従来のポリマーのいずれかであってもよく、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリビニルピペリドン(polyinylpiperidone)、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)、デンプン、セルロース型材料などが含まれる。任意選択のポリマーは、また、例えば、市販の酢酸ビニルホモポリマーおよびコポリマー、アクリレートホモポリマーおよびコポリマー、ポリウレタンなどの極性の低いポリマーの水分散体のいずれかでありうる。好ましいポリウレタンは、いくらか独自であり、それは、これがエチレンオキシドの反復単位を高い百分率で有し、かつ係留ポリ(アルキレンオキシド)鎖と呼ばれるものに高い百分率でエチレンオキシドを有するからである。この特定の微細構造中のエチレンオキシド反復単位の量は、水および有機溶媒をインクから吸収することを助ける独自の特性を希釈性ポリウレタンに与えるが、ポリウレタンは(ポリ(アルキレンオキシド)の係留性に起因して)擦り抵抗性を失うと認められるほど膨張しない。アクリルコポリマーもいくらか独自であり、それは、これが特定量のアクリル酸およびメタクリル酸反復単位、ならびに他の特定量のアクリル酸および/またはメタクリル酸のC~C12アルキルエステル反復単位を有するからである。組み合わせたアクリル酸とメタクリル酸の反復単位は、水との良好な(制御された)相互作用/吸収性をアクリルコポリマーに与え、アクリル酸またはメタクリル酸のC~C12アルキルエステルの反復単位は、インク受容性コーティングの湿潤擦り抵抗性を損なう程度の水中膨張に抵抗しうる十分な疎水性を、アクリルコポリマーに与える。
【0014】
水希釈性ポリウレタンの量は、バインダーの約10~90wt%、より好ましくはバインダーの約40~80wt%、より好ましくはバインダーの約45~約75wt%、好ましくはバインダーの約50~70wt%である。分散体のアクリルコポリマーの量は、バインダーの約10~90wt%、より望ましくは約20~60wt%、より望ましくはバインダーの約25~約55wt%、好ましくはバインダーの約30~約50wt%である。任意選択のポリマーは、コーティングのバインダーに10または20wt%まで存在しうる。容易な組み込みのため、任意選択のポリマーは、望ましくは水中の分散体または溶液として添加される。任意選択のポリマーは、水性媒体中の分散体として添加される場合、アニオン性、カチオン性、双性イオン性、または非イオン性で分散されうる。
【0015】
インク受容性コーティングまたはフィルムのバインダー系に使用される第1のポリマー
は、水希釈性ポリウレタンである。ポリウレタンは、文献によって周知であり、ポリイソシアネート反応体と、ポリオールと呼ばれる巨大分子ジオールとの(例えば、ヒドロキシル、チオール、またはアミン末端巨大分子などの、1つ、または2つを超えるイソシアネート反応性基との)反応による複数のウレタン連結によって特徴づけられている。ポリオールは、通常、約500~約5,000または6,000g/モルの分子またはオリゴマーであると考慮されている。従来のポリウレタンに使用される一般的なポリオールは、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、および他のオリゴマーである。ポリウレタンに使用される通常のポリオールは、ポリイソシアネートと反応して有意な分子量のポリウレタンを形成しうる2つまたはそれよりも多くの基(例えば、ヒドロキシル、アミン、またはチオール基)を有する。本明細書に提示される分子量は、機器を較正するために溶媒としてテトラヒドロフランおよび既知分子量のポリスチレン基準を使用する、ゲル浸透クロマトグラフィーに基づいた数平均分子量である。ポリウレタンには、エチレングリコール、および2つまたはそれよりも多くの反応性ヒドロキシル基を有し、かつ分子量が500g/モルを下回る他のグリコールなどの、鎖延長剤と呼ばれる低分子量反応体を使用することもできる。ポリオールはポリウレタンの軟質セグメント(ポリウレタンを軟質にする)を形成するが、鎖延長剤は、ウレタンの硬質部分に寄与する。
【0016】
水希釈性ポリウレタンは、ポリウレタンにおけるエチレンオキシド反復単位の高い百分率によって特徴づけられ、ポリウレタンのエチレンオキシド単位の高い百分率は、ポリウレタン主鎖に沿って延びている係留ポリマー鎖と呼ばれるものである。歴史的なポリウレタン主鎖には、ポリイソシアネート(大部分は、ジイソシアネートであるが、任意選択でモノイソシアネートおよびトリ、テトラなどの官能性イソシアネート)、ならびにポリウレタン網目構造と反応したときに2つのイソシアネート反応体の間にポリマー鎖を形成する巨大分子多官能性(上記のポリオールとも呼ばれ、多くの場合に二官能性である)反応体が含まれる。望ましくは、本開示の水希釈性ポリウレタンは、希釈性ポリウレタン(任意の連続相/分散媒体の水および溶媒を除く)の重量に対して、約30~約80または85wt%のエチレンオキシド反復単位、より望ましくは約40または50~80または85wt%のエチレンオキシド反復単位、好ましくは約60、65、または70~約80または85wt%のエチレンオキシド反復単位を含有する。希釈性ポリウレタン中のエチレンオキシド反復単位の総重量に対して、前記希釈性ポリウレタン中の望ましくは約50~約100wt%の前記エチレンオキシド単位、より望ましくは約60~約100wt%、好ましくは約70、75、80、85、または90~約100wt%の前記エチレンオキシド反復単位は、係留鎖(任意選択で側面結合している)の中にある。エチレンオキシド反復単位が高い百分率で係留(任意選択で側面結合している)ポリ(アルキレンオキシド)鎖の中にあるので、ポリウレタン主鎖への組み込みが許容されるのは、希釈性ポリウレタン中のエチレンオキシド反復単位の総重量に対して0~10、15、20、25、30、または50wt%など、釣り合うように低い量のエチレンオキシドである。ポリ(アルキレンオキシド)係留鎖という用語を使用して、コモノマーとして鎖中にいくつかのプロピレンオキシド、ブチレンオキシド、またはスチレンオキシドを容認しているが、エチレンオキシドに基づいた重量パーセントを制限しており、それはこれらの反復単位が、最終特性にとって他のオキシド反復単位より重要だからである。係留ポリ(アルキレンオキシド)鎖と言うとき、側面結合および末端結合鎖を意味する。側面結合ポリ(アルキレンオキシド)鎖の好ましい実施形態が参照されるとき、末端イソシアネート単位に単一化学結合を介して結合している場合、末端結合ポリ(アルキレンオキシド)鎖は除外されている。
【0017】
係留ポリマーセグメントの定義:係留ポリマーセグメントは、とりわけ櫛形ポリマーについての文献によって公知であり、櫛形ポリマーのそれぞれの歯は、通常、櫛形主鎖に、および遊離鎖端部が別の媒体(例えば、ポリマー鎖端部)に延びているポリマーを有する他のポリマー微細構造に結合している係留ポリマーと考慮される。辞書において係留とは
、ロープまたは鎖の一方の端部が固定点に結びつけられており、ロープまたは鎖のもう一方の端部が自由に動いており(すなわち、運動を束縛するもう1つの点に結びつけられていない)、それによって、遊離端部が、結合点を中心点として、中心の結合点からロープまたは鎖の最大延長長さで確定した半径によって確定した円形のいずれかの地点に自由に動くこと、と定義されている。本発明者たちは、係留を形容詞として使用して、1つの遊離端部(ポリウレタン主鎖に結合していない)、およびポリウレタン主鎖へのポリエーテルの1つまたは複数の遠位結合点を有する(ポリウレタン主鎖は、ポリウレタンポリマーそれ自体と、二官能性およびそれより高い官能性の巨大分子を接続するウレタン接続基、ならびに鎖延長剤から定義される)C~Cポリエーテルポリマーセグメント(すなわち、C~Cエポキシドの重合から誘導されるポリ(アルキレンオキシド)ポリマーセグメント)を記載することを望む。係留を定義するにあたって、ポリエーテルの端部は、結合点または円の中心としてウレタン連結を介してポリウレタン主鎖に結合していると考慮される。ポリウレタンに結合していない末端を有するポリエーテルの部分、および端部とポリウレタンに最も近い結合点(非結合末端から測定)との間の全てのポリエーテル(ポリ(アルキレンオキシド))は、ポリ(アルキレンオキシド)の係留部分と考慮される。いくつかの系において(とりわけ、側面結合ポリエーテルセグメントにおいて)、ポリエーテルの一方の端部に近いポリエーテルに2つの結合点があるので、最も近い結合点(ポリマーセグメントの遊離(非結合)端部から測定)を選択した。係留ロープまたは鎖によって、一方の端部が2つの結合点に結びつけられている場合、ロープまたは鎖の係留部分は、ポリ(アルキレンオキシド)の遊離端部から、結合点(または、ポリウレタン主鎖)へのロープまたは鎖の遊離端部の最も近い結合点までの部分のみである。係留ポリエーテル部分の計算を促進するため、係留ポリ(アルキレンオキシド)の定義の連結を含むウレタンを除外する。したがって、1モルの、2つの末端ヒドロキシル基を有するポリエーテルが、1.5モルのジイソシアネートおよび1モルのモノヒドロキシル末端ポリエーテル(ポリエーテルのもう一方の端部はアルキル基である)と反応する場合、未反応ヒドロキシル基が存在しないとすると、2つのヒドロキシル末端基を有するポリエーテルは、ポリウレタン網目構造ポリエーテル基である(ポリマー網目構造に組み込まれている)と考慮され、ポリマー網目構造に組み込まれたポリ(アルキレンオキシド)のポリエーテル基は、係留ポリエーテル基または反復単位と考慮されない。しかし、モノヒドロキシル末端ポリエーテルは係留ポリエーテル基と考慮され、それは、ポリウレタンの1つの点(ヒドロキシル末端とイソシアネート基との反応によるウレタン連結)のみに結合することができ、このポリエーテルのエチレンオキシド単位は全て、係留エチレンオキシド反復単位と考慮される。同様に、ポリエーテルの一方の端部の近くに2つの末端ヒドロキシル基を有し、ポリエーテルの有意な部分がポリエーテルの一方の端部のこれらの2つの結合点から係留様式で延びている、市販のポリエーテルが存在する。これらには、米国特許第6,897,381号に使用されているTegomer(登録商標)D3403およびPerstopからのYmer(商標)N-120(現行出願の実施例に使用されている)が含まれる。係留ポリエーテルのパーセントを計算する目的では、鎖の一方の端部にある2つのヒドロキシル基および2つのヒドロキシル基の間に介在する炭素または酸素基を、ポリウレタン主鎖の一部と考慮する。ポリエーテル(例えば、Tegomer D3403またはYmer N-120)の遊離(非結合)末端と連結の間から、2つのヒドロキシル基の間に含まれるポリエーテルの部分まで延びているポリエーテルの部分のみが、係留ポリエーテルセグメント部分と考慮される。
【0018】
ポリウレタン網目構造に組み込まれているポリエーテルセグメントと、ポリウレタン網目構造に係留しているものを区別することがなぜ関連し重要であるかという疑問が生じるであろう。これらの差は、米国特許第6,897,281号(Mssrs.Lubnin、Snow、Varn、およびAnderle)により部分的に説明されており、ここで、Tegomer D340
3オリゴマーのポリエーテルセグメントに側面結合しているポリウレタンは、高い透湿性および良好な電気伝導性を与える。これらの特性は、両方とも、ポリウレタンに存在する
側面結合鎖におけるポリエーテルセグメントのある種の共連続(co-continuous)網目構
造を例示しており、それは、水蒸気が主にポリマーのポリエーテル部分を通過しなければならず、電気伝導度がポリエーテル部分においてはるかに大きいからである。理論に束縛されるものではないが、米国特許第6,897,281号に開示されている系において、係留(または、側面結合)ポリ(エチレンオキシド)鎖は、共連続網目構造として、ポリウレタンの残りの部分からわずかに相分離していると考えられる。わずかに相分離した連続ポリエーテル相は、共連続ポリウレタン相によっても、過大な水量を吸収することが抑制される。このように、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、したがって米国特許第6,897,281号のポリウレタンは、同等の量のジまたはトリヒドロキシル末端ポリ(エチレンオキシド)がウレタン連結の間のポリウレタンに(ポリウレタン耐荷重網目構造の一部として)組み込まれている、ほぼ同等のポリウレタン系よりも少なく膨張する。係留ポリ(アルキレンオキシド)鎖は、通常、2つまたはそれよりも多くのウレタンセグメントの間に耐荷重柔軟連結を形成しないので、通常、ポリウレタンの耐荷重網目構造の一部として考慮されない。ジヒドロキシル末端ポリエーテルが同等のwt量で類似のポリウレタンに組み込まれると、係留ポリエーテルを用いたものより高い膨張が水および極性溶媒中において実験的に観察される。このことは、国際公開第2015/171483号の背景技術に開示されているものなど、従来技術に開示されているいくつかの非常に親水性の熱可塑性ポリウレタンにおいて見られる。ここでも、理論に束縛されるものではないが、ポリエーテルが軟質耐荷重ポリウレタン網目構造の一部である系では、ポリエーテルは、多くの場合、連続相の有意な部分であり、ウレタン連結は、物理的または化学的架橋機能の不連続相を形成する。軟質連続ポリエーテル相が拡大しようとし、ポリウレタン連結が小さな分散(非連続)架橋相を形成するとき、網目構造は、10倍またはそれを超えて拡大することができ、それは、拡大に抵抗する力が不連続ドメインであり、連続ドメインが、適合溶媒中にあると10倍またはそれを超えて拡大および伸長しうる高次コイル状ポリマー(coiled polymer)として既に存在しているからである。
【0019】
網目構造の一部としてポリエーテルを有するポリマー網目構造を、米国特許第6,897,281号の製品(側面また係留結合ポリエーテル)と比較することができ、ここでポリエーテルは、ポリウレタンの残りの部分(これも共連続している)から共連続相として部分的に相分離している。このポリウレタン系では、ポリエーテルが側面結合または係留結合しているが、相はポリウレタン相から分離しており、2つの共連続ポリマー系が特性を提供している。ポリウレタン主鎖系の疎水性が大きいほど、水中の膨張に対して抵抗する。親水性の高い係留ポリエーテルセグメントは、水中で膨張しようとするが、共連続ポリウレタン主鎖相(共連続相であり、一般にポリエーテルの反対側の末端にある2つまたはそれよりも多くの末端ヒドロキシル基を有するポリエーテルのポリウレタンによって形成された分散相ではない)によって部分的に抑制される。この説明は、正確であり、かつ係留ポリ(エチレンオキシド)セグメントが良好な水吸収を与えるが、ポリエーテルがポリ(エチレンオキシド)の豊富な共連続相ではなく、均質な耐荷重ポリウレタン網目構造の一部である場合の類似したポリ(エチレンオキシド)含有ポリウレタンがなりうる過剰な程度に膨張しない理由を、説明していると考えられる。
【0020】
一実施形態において、希釈性ポリウレタンは、1949年「Classification of Surface-Active Agents by 'HLB'」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists、1巻(5号):311~26頁においてGriffinにより記載されている、親水性-親
油性バランスによっても記載されうる。この記事では、HLBを式HLB=20×(M/M)により計算し、式中、Mは分子の親水性部分の分子質量であり、Mは分子全体の分子質量である。本実施例Aの約70wt%のPEOを有するPEO含有PUDでは、Mは約437(Ymerでは514×85%PEO)であり、Mは約(514+186)である。これによって、HLBは約12.5である。HLBの限界は、望ましくは約8~16、より望ましくは約9~約15、好ましくは約10~約14(ほぼ12あたり)であ
る。このHLBの限界を、係留または側面結合ポリ(アルキレンオキシド)鎖中のポリ(エチレンオキシド)のパーセントと組み合わせて使用することができる。
【0021】
本発明の水希釈性ポリウレタンは、ポリイソシアネート、巨大分子ポリ(アルキレンオキシド)構成成分(一般に、ポリ(アルキレンオキシド)の一方の末端に1または2つのイソシアネート反応性基(ヒドロキシル、アミン、またはチオール)を有する)、および任意選択で鎖延長剤から作製されうる。ポリウレタン合成の当業者は、これらの希釈性ポリウレタンの作製方法を理解しているが、ポリウレタンの一般的な作製方法および高い百分率の係留(または、側面結合)ポリ(エチレンオキシド)豊富鎖を有する、特許請求される希釈性ポリウレタンの作製方法を簡潔に説明する。上記に説明されたように、ポリウレタンは、ポリイソシアネート構成成分を、イソシアネート基と反応してウレタンまたは尿素連結を形成することができる活性水素基(イソシアネート反応性基と呼ばれる)を有する分子と反応させることによって、一般的に作製される。イソシアネート基は水とも反応し、そのため、一般にイソシアネート基の反応を最初に低含水量または無水環境で生じて、水とイソシアネート基との副反応の量を最小限にする。本希釈性ポリウレタンでは、ポリ(エチレンオキシド)豊富鎖を初めに、好ましい条件下でポリイソシアネートと反応させることができる。イソシアネート基と活性水素含有分子との反応を促進する触媒の使用も可能であり、必要とされる反応温度および必要とされる反応時間を低減する。一般に、科学者は反応体のアリコートを取り、任意の残留(非反応)イソシアネート基を滴定し、任意の所定時間で完了した反応の程度を決定して、ポリウレタンの反応時間および分子量を制御する。
【0022】
側面結合ポリ(エチレンオキシド)豊富ポリウレタンを調製する場合、唯一必要な必須反応体は、ポリイソシアネートおよびポリ(エチレンオキシド)巨大分子である。これは、一般に、Tegomer D3403およびYmer N-120の一方の端部に2つのイソシアネート反応基、もう一方の係留端部にアルキル基があり、それによって、ジイソシアネート化合物が適切な温度と反応性基との比で反応するとき、ポリウレタン主鎖から係留的に延長するポリ(エチレンオキシド)豊富鎖を有する直鎖ポリウレタン主鎖を作り出すからである。通常、イソシアネート基とイソシアネート反応性基との比は制御される(典型的には、ポリマーが連続媒体に分散または溶解するまで、分子量が最高である1:1の比に近づけない)。水中にポリウレタンプレポリマーを分散または溶解した後、プレポリマーは、鎖を、望ましい分子量が達成されるまで、高い分子量のポリマーに延長させることができる。通常、初期ウレタンプレポリマー形成の際の望ましい数平均分子量は、約10,000~約50,000g/モルであり、これによって、ポリマーは、0~100℃の温度で妥当に液体になり、水に添加されて、分散しうる、または溶解しうる(大部分の目的では0~100℃でほぼ1g/ccの密度の液体である)。鎖延長剤および二官能性ポリオールなどの他の反応体を添加して、ポリウレタンの特性、分子量、および分枝を改変することができるが、それらはポリウレタンの必須構成成分を希釈する。より分枝した高い分子量が望ましい場合、三官能性および四官能性のイソシアネートなどのより高い官能性の反応体、ならびに鎖延長剤を、ポリウレタンに添加して、反応させることができる。水分散化添加剤(例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、または様々なイオン性のブレンド)である。
【0023】
一官能性ポリエーテル鎖(一方の端部に単一のイソシアネート反応基を有し、もう一方の端部に非イソシアネート反応性末端を有するのみ)を使用して係留ポリ(エチレンオキシド)豊富ポリウレタンを作製する場合、多官能性反応体(3つもしくはそれよりも多くの官能性を有するイソシアネート、または3つもしくはそれよりも多くの官能性を有するイソシアネート反応性基のいずれか)が、ほぼ必要になる。一官能性ポリ(エチレンオキシド)手法では、最初にジもしくはポリイソシアネートを、ポリエーテルの単一イソシアネート反応性基と反応させることによってイソシアネート末端ポリエーテルを作り出すこ
とができる、または三官能性構成成分(例えば、イソシアネートもしくはポリオール)を、二官能性構成成分と反応させて、分枝ポリウレタンコアを作り出し、次に一官能性反応性ポリ(エチレンオキシド)豊富鎖の分枝コアと反応させることによって、最初に高度分枝ポリウレタンコアを作り出すことができる。通常、いずれかの反応機構によって、イソシアネート反応性基とイソシアネート基との比は制御され、それによって、最初に達成される数平均分子量は、約10,000~約50,000g/モルとなる。普通は、これらの最初のポリマーは、いくらかの過剰イソシアネート基を有するので、水に分散した後または水の溶液に入れた後、ポリウレタン鎖は、二または多官能性であり、かつイソシアネート基と反応してウレタンまたは尿素連結を形成する反応体を添加することによって延長した鎖でありうる。これらの反応体は、トリオール、テトロール、ジアミン、トリアミン、テトラアミンなどである。イソシアネート基は、アミンとの反応性がヒドロキシル基との反応性より高いので、多くの場合、鎖が水性媒体中に延長するとき、アミン鎖延長剤がヒドロキシル系鎖延長剤より好ましい。時々、アミン型鎖延長剤は、イソシアネート基を水と反応させることによって作り出され、この反応は、イソシアネート基の窒素が先に存在する場合、CO分子およびアミン末端基を生成する。
【0024】
次に、新たに生成されたアミン基を、任意の遊離イソシアネート基と反応させて、尿素連結を作り出し、ポリウレタン構成成分の分子量を構築することができる。
【0025】
活性水素含有化合物。用語「活性水素含有」は、活性水素源であり、かつ次の反応:-NCO+H-X→-NH-C(=O)-Xを介して、イソシアネート基と反応することができる化合物を指す。適切な活性水素含有化合物の例には、ポリオール、ポリチオール、およびポリアミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
米国特許第6,897,281号は、現行出願のいくつかの実施形態において機能している、水希釈性ポリウレタン組成物を開示する。いくつかの条件下で係留ポリ(エチレンオキシド)鎖についての本定義を満たす側面結合ポリ(エチレンオキシド)鎖に焦点を合わせている。
【0027】
米国特許出願公開第2010/0267299号は、現行発明のいくつかの実施形態において機能している、別のポリウレタン組成物を開示する。そのポリウレタン組成物は、その文書の表II実施例P-11(063、116、119、および120)に開示されており、表VIII、IX、およびXにおいてフィルム中のPVCと組み合わせて試験されている。
【0028】
親水性ポリウレタンを作製する方法の追加的な実施形態には、モノアルコキシおよびモノヒドロキシ末端のエチレンオキシドポリマーを使用して類似したプレポリマーまたは鎖延長ポリウレタンを作製することが含まれ、または反応性基の化学量論が制御されて鎖延長を防止している場合、イソシアネート基をジもしくはポリヒドロキシポリマーと反応させ、それによって終止させることができる。モノヒドロキシル末端またはポリヒドロキシル末端ポリマーを使用すると、側鎖ポリ(エチレンオキシド)をもたらす可能性が少なくなるが、水蒸気透過を促進する親水性ポリウレタンをもたらしてしまう。一実施形態において、比較的小量のウレタン形成構成成分(ジおよびポリイソシアネート、任意選択で連鎖ポリオールおよびアミン)を使用して、いくつかのモノヒドロキシル官能化ポリ(エチレンオキシド)セグメントでキャップされうる、多官能性イソシアネート官能化ポリマーコアを作り出すことが好ましい。別の実施形態において、トリまたはそれより高い官能性のイソシアネートを、ポリ(エチレンオキシド)セグメントを含有するいくつかのヒドロキシルまたはアミン末端オリゴマーと直接反応させることができる。ヒドロキシルまたはアミン末端オリゴマーは、プロピレンオキシドなどの他の反復単位を含有することができる、または大部分がエチレンオキシド反復単位から構成されうる。ヒドロキシルまたはア
ミン末端オリゴマーは、鎖延長または鎖カップリング反応を避けるべきときには、アルコキシでキャップされうる。このことは比較的低分子量の親水性ウレタンプレポリマーを作り出し、親水性ポリマーとして使用することができる。
【0029】
米国特許第8,664,331号は、第3欄56行目から第8欄6行目に、希釈性ポリウレタンに側面結合(または、係留)ポリウレタンオキシド豊富セグメントを生成することができる代替的なポリ(エチレンオキシド)豊富ポリマー(Tegomer D3403およびYmer N-120に対して代替的である)を開示している。米国特許第8,664,331号は、側面結合ポリエーテル鎖を用いるポリウレタン分散剤の作製方法を教示する。これらの配合物をわずかに改変して、現行発明の希釈性ポリウレタンを作り出すことができる。一実施形態において、この参考文献の分散剤の分子量を増加し、それによって水中での低減された膨張をもたらすことが望ましい場合がある。典型的には、本特許における種類の分散剤は、100,000g/モルを下回る分子量である。当業者は、この参考文献の教示を、そうでなければ分散剤の分子量を増加する鎖延長に容易に適応することができる。
【0030】
触媒。イソシアネート末端プレポリマーの形成は、触媒を使用することなく達成されうる。しかし、触媒はいくつかの場合に好ましい。適切な触媒の例には、オクタン酸第一スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ならびにトリエチルアミンおよびビス-(ジメチルアミノエチル)エーテルなどの第三級アミン化合物、β,β’-ジモルホリノジエチルエーテルなどのモルホリノ化合物、カルボン酸ビスマス、カルボン酸ビスマス亜鉛、塩化鉄(III)、オクタン酸カリウム、酢酸カリウム、ならびにAir ProductsからのDABCO(登録商標)(ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)が含まれる。好ましい触媒は、2-エチルヘキサン酸とオクタン酸第一スズの混合物、例えば、Elf Atochem North AmericaからのFASCAT(登録商標)2003である。使用される触媒の量は、典型的には、プレポリマー反応体の総重量の約5~約200百万分率である。
【0031】
鎖延長剤。鎖延長剤として、水、平均して約2つまたはそれよりも多くの第一級および/もしくは第二級アミン基を有する無機もしくは有機ポリアミン、多価アルコール、尿素、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つが、本発明における使用に適している。鎖延長剤としての使用に適した有機アミンには、ジエチレントリアミン(DETA)、エチレンジアミン(EDA)、メタ-キシレンジアミン(MXDA)、アミノエチルエタノールアミン(AEEA)、2-メチルペンタンジアミンなど、およびこれらの混合物が含まれる。また、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、3,3-ジクロロベンジデン、4,4’-メチレン-ビス(his)-(2-クロロアニリン)、3,3-ジ
クロロ-4,4-ジアミノジフェニルメタン、スルホン化第一級および/または第二級アミンなど、ならびにこれらの混合物も、本発明の実施に適している。適切な無機アミンには、ヒドラジン、置換ヒドラジン、およびヒドラジン反応生成物など、ならびにこれらの混合物が含まれる。適切な多価アルコールには、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を有するもの、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなど、およびこれらの混合物が含まれる。適切な尿素には、尿素およびその誘導体など、ならびにこれらの混合物が含まれる。ヒドラジンが好ましく、水中の溶液として最も好ましく使用される。鎖延長剤の量は、利用可能なイソシアネートに対して、典型的には約0.5~約0.95当量の範囲である。
【0032】
ポリマー分枝。ポリウレタンの分枝度は、有益であり得るが、必ずしも必要であるとは限らない。この分枝度は、プレポリマーステップまたは任意選択の鎖延長ステップの際に
達成されうる。任意選択の鎖延長ステップの際の分枝では、鎖延長剤DETAが好ましいが、平均して約2つまたはそれよりも多くの第一級および/または第二級アミン基を有する他のアミンを使用することもできる。プレポリマーステップの際の分枝では、トリメチロールプロパン(TMP)および平均して約2つまたはそれよりも多くのヒドロキシル基を有する他のポリオールを使用することが好ましい。分枝モノマーは、ポリマー主鎖の約5wt%までの量で存在しうる。
ポリイソシアネート
【0033】
適切なポリイソシアネートは、平均して約2つまたはそれよりも多くのイソシアネート基、好ましくは平均して約2~約4つのイソシアネート基を有し、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族(araliphatic)、および芳香族のポリイソシアネートが含まれ、単独で、または
2つもしくはそれよりも多くの混合物として使用される。ジイソシアネートが、より好ましい。
【0034】
適切な脂肪族ポリイソシアネートの特定の例には、5~20個の炭素原子を有するアルファ,オメガ-アルキレンジイソシアネートが含まれ、例えば、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネートなどが含まれる。5個より少ない炭素原子を有するポリイソシアネートを使用することができるが、高い揮発性および毒性のため、あまり好ましくない。好ましい脂肪族ポリイソシアネートには、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレン-ジイソシアネート、および2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネートが含まれる。
【0035】
適切な脂環式ポリイソシアネートの特定の例には、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(Bayer CorporationからDesmodur(商標)Wとして市販されている)、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス-(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどが含まれる。好ましい脂環式ポリイソシアネートには、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートが含まれる。
【0036】
適切な芳香脂肪族ポリイソシアネートの特定の例には、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネートなどが含まれる。好ましい芳香脂肪族ポリイソシアネートは、テトラメチルキシリレンジイソシアネートである。
【0037】
適切な芳香族ポリイソシアネートの例には、4,4’-ジフェニルメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、これらの異性体、ナフタレンジイソシアネートなどが含まれる。
【0038】
水希釈性ポリウレタンが、主に側面結合ポリアルキレンオキシド鎖として係留ポリアルキレンオキシド鎖から作製される場合、一実施形態において、プレポリマー方法を使用して希釈性ポリマープレポリマーを作製し、プレポリマーを水性媒体に分散または溶解し、次にプレポリマーをわずかに高い分子量に鎖延長することが望ましい。希釈性ポリウレタンをプレポリマー方法によって作成する場合、NCOと活性水素との比は、数段落下段にあるプレポリマーにおいて記載されている。分散剤として機能し得るポリウレタンに米国特許第6,897,281号の技術を使用する場合、NCO:活性水素比は下記に記載されたとおりでありうる、または鎖延長の必要がないので、NCO:活性水素比は、この特許に記載されているように1:1に近いものでありうる。ポリウレタンに多量の分枝を有
し、かつポリウレタン鎖端部の末端位置の係留ポリアルキレンオキシド鎖に多くのポリアルキレンオキシドを有する希釈性ポリウレタンを作製する場合、NCO:活性水素比は、下記と異なる可能性があり、高度に分枝したポリウレタン主鎖が最初に作製され、次に末端ポリ(エチレンオキシド)型鎖により官能化されうるか、または一官能性ポリ(エチレンオキシド)型鎖が最初にポリイソシアネートと反応する場合、反応生成物が、高度に分枝したポリウレタン分子とカップリングされるか、のいずれかによって決まる。
【0039】
本明細書において使用されるとき、用語「アルキレンオキシド」には、アルキレンオキシドおよびアルキレン単位1つあたり2~10個の炭素原子を有する置換アルキレンオキシドの両方が含まれる。活性水素含有化合物には、アルキレンオキシド、ならびにアルキレン単位1つあたり3~約10個の炭素原子を有する置換アルキレンオキシド単位、例えば、プロピレンオキシド、テトラメチレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、アリルグリシジルエーテル、スチレンオキシドなど、およびこれらの混合物が含まれ得る。
【0040】
イソシアネート対活性水素のプレポリマー比。プレポリマー中のイソシアネート対活性水素の比は、典型的には、ほぼ1.5のあたりであり、約1.1/1~約2.5/1、好ましくは約1.1/1~約1.9/1、より好ましくは約1.3/1~約1.7/1の範囲である。
【0041】
少なくとも1つの架橋性官能基を有する化合物。少なくとも1つの架橋性官能基を有する化合物には、カルボン酸基、カルボニル基、アミン基、ヒドロキシル基、およびヒドラジド基など、ならびにそのような基の混合物が含まれる。そのような任意選択の化合物の典型的な量は、乾燥重量に対して、最終ポリウレタン1グラムあたり約1ミリ当量まで、好ましくは約0.05~約0.5ミリ当量、より好ましくは、最終ポリウレタン1グラムあたり約0.1~約0.3ミリ当量である。
【0042】
水分散性を改善するためにイソシアネート末端プレポリマーに組み込まれる好ましいモノマーは、一般式(HO)xQ(COOH)yを有するヒドロキシル-カルボン酸であり、式中、Qは1~12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素ラジカルであり、xおよびyは1~3である。そのようなヒドロキシ-カルボン酸の例には、クエン酸、ジメチロールプロパン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、ジヒドロキシリンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシピバル酸など、およびこれらの混合物が含まれる。ジヒドロキシ-カルボン酸がより好ましく、ジメチロールプロパン酸(DMPA)が最も好ましい。
【0043】
架橋性を提供する他の適した化合物には、チオグリコール酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸など、およびこれらの混合物が含まれる。
プレポリマーの中和
【0044】
ペンダントカルボキシル基を有するプレポリマーの任意選択の中和は、カルボキシル基をカルボン酸アニオンに変換し、このようにして水分散性増強効果を有する。適切な中和剤には、第三級アミン、金属水酸化物、水酸化アンモニウム、ホスフィン、および当業者に周知の他の作用物質が含まれる。第三級アミンおよび水酸化アンモニウムが好ましく、例えば、トリエチルアミン(TEA)、ジエチルエタノールアミン(DMEA)、N-メチルモルホリンなど、およびこれらの混合物である。第一級または第二級アミンを、これらが鎖延長方法との干渉を避けるために十分に妨げられている場合、第三級アミンの代わりに使用できることが認識される。
【0045】
水希釈性ポリウレタンの調製における他の添加剤には、消泡剤、殺生物剤、触媒、溶媒
、凝集剤、可塑剤、表面張力調節剤、酸化防止剤、および安定剤が含まれる。
【0046】
アクリルコポリマーは、乾燥重量に対して、望ましくは、媒体のバインダーの約10~90wt%、より望ましくは約20~約60wt%、より望ましくはバインダーの約25~約55wt%、好ましくはバインダーの約30~約50wt%であるような量で使用される。望ましくは、組み合わせたアクリル酸とメタクリル酸のモノマーの反復単位は、アクリルコポリマーの約15または25~約75wt%、より望ましくは約50~約70wt%、好ましくはアクリルコポリマーの約55~65wt%である。一実施形態において、組み合わせたアクリル酸とメタクリル酸の反復単位の少なくとも50、60、70、80、または90wt%は、メタクリル酸であることが望ましい。望ましくは、組み合わせたアクリル酸とメタクリル酸のC~C12アルキルエステルの反復単位は、アクリルコポリマーの約25~75または85wt%、より望ましくは約30~約50wt%、好ましくはアクリルコポリマーの約35~約45wt%である。一実施形態において、アクリル酸とメタクリル酸のC~C12アルキルエステルの反復単位の少なくとも50、60、70、80、または90wt%は、アクリル酸とメタクリル酸のC~Cアルキルエステルのエステルである。別の実施形態または組み合わせた実施形態において、アクリル酸とメタクリル酸のC~C12アルキルエステルの反復単位の少なくとも50、60、70、80、または90wt%は、アクリル酸とメタクリル酸のブチルエステルである。別の実施形態または組み合わせた実施形態において、アクリル酸とメタクリル酸のC~C12アルキルエステルの反復単位の少なくとも50、60、70、80、または90wt%は、メタクリル酸のC~Cアルキルエステルまたはブチルエステルである。アクリルコポリマーの0、5、12、または25wt%までが、本出願後半に記載されている他のフリーラジカル重合性コモノマーの反復単位でありうる。
【0047】
本開示のアクリルコポリマーをほとんどの重合方法によって重合することができ、それは、アクリルコポリマーの組成および水希釈性ポリウレタンとのブレンドの成功が、アクリルコポリマーの実際の重合方法よりも重要な態様であるからである。例では、アクリルコポリマーは、乳化重合によって作製された。アクリルコポリマーを任意の操作可能なカチオン性、アニオン性、またはフリーラジカルの方法によって作製することができる。フリーラジカル方法が使用される場合、方法は乳化、溶液、分散、またはバルク重合でありうる。アクリルコポリマーは、リビング重合方法によって生成されうる。アクリルコポリマーと希釈性ポリウレタンは非常に適合性があると思われ、水性媒体中に互いにコロイド的に安定化することを助ける。希釈性ポリウレタンは高度に非イオン的に安定化しているので、アクリルコポリマーは、水性媒体中にアニオン的、カチオン的、および/または非イオン的に安定化されうる。
【0048】
アクリルコポリマーにより少ない量で使用されうる追加のフリーラジカル重合性モノマー。本発明のアクリルコポリマーの形成に有用であるフリーラジカル重合性モノマーの例には、必要とされるアクリル酸またはメタクリル酸以外のカルボン酸ビニルモノマー、および必要とされるC~C12エステル以外のアクリル酸とメタクリル酸のエステルが含まれる。フリーラジカル重合性モノマーには、不飽和ニトリル、スチレンモノマー、ビニルエステル、ビニルエーテル、共役ジエン、オレフィン、ハロゲン化アリルおよび他のモノマー、ならびにこれらの混合物も含まれる。
【0049】
特定の例には、式HC=C(R)-C(=O)-O-Rを有するアクリルコポリマーの主な構成成分として、列挙されたメタクリル酸、および(メタ)アクリル酸のC~C12アルキルエステルの定義外のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルが含まれ、式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは、1~100個の炭素原子、より典型的には1~50個または1~25個の炭素原子を含有し、任意選択で1個または複数の硫黄、窒素、リン、ケイ素、ハロゲン、または酸素原子も含有する。適切な(メタ)
アクリル酸エステルの例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、クロチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、メタリル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ニトロ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、プロパルギル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、アクリルアミドおよびその誘導体、ならびにテトラヒドロピラニル(メタ)アクリレートが含まれる。アクリル酸とメタクリル酸のエステルの混合物を使用することができる。追加の重合されたアクリル酸とメタクリル酸のエステル(アクリルコポリマーの主な構成成分以外)は、典型的には、アクリルコポリマーの約10または20wt%以下を構成しうる。
【0050】
不飽和ニトリルモノマーには、アクリロニトリルまたはそのアルキル誘導体が含まれ、アルキルは、好ましくは1~4個の炭素原子を有し、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどである。シアノ基を含有する不飽和モノマーも適しており、例えば、式CH=C(R)CO(O)CHCHCN C~Cを有するものであり、式中、RはHまたはC2n+1であり、nは1~4個の炭素原子である。不飽和ニトリルモノマーの他の例には、CH=C(CN)、CH-CH=CH-CN、NC-CH=CH-CN、4-ペンテンニトリル、3-メチル-4-ペンテンニトリル、5-ヘキセンニトリル、4-ビニル-ベンゾニトリル、4-アリル-ベンゾニトリル、4-ビニル-シクロヘキサンカルボニトリル、4-シアノシクロヘキセンなどが含まれる。不飽和ニトリルの混合物を使用することもできる。アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。重合された不飽和ニトリルモノマーは、典型的には、アクリルコポリマーの約10または20wt%以下、より典型的には約5wt%または3wt%以下を構成しうる。
【0051】
本発明の親水性ポリマーの調製に有用な「スチレンモノマー」は、炭素-炭素二重結合を芳香族環のアルファ位置に含有するモノマーと定義される。適切なスチレンモノマーの例には、スチレン、アルファ-メチルスチレン、第三級ブチルスチレン、オルト、メタ、およびパラ-メチルスチレン、オルト-、メタ-、およびパラ-エチルスチレン、o-メチル-p-イソプロピルスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、o,p-ジクロロスチレン、o,p-ジブロモスチレン、オルト-、メタ-、およびパラ-メトキシスチレン、インデンおよびその誘導体、ビニルナフタレン、多様なビニル(アルキル-ナフタレン)およびビニル(ハロナフタレン)、およびこれらの混合物、アセナフチレン、ジフェニルエチレン、およびビニルアントラセンが含まれる。スチレンモノマーの混合物を使用することもできる。スチレンおよびアルファ-メチルスチレンが好ましい。重合されたスチレンモノマーは、典型的には、アクリルコポリマーの約10または20wt%以下、より典型的には約5wt%以下を構成しうる。
【0052】
1~100個、より典型的には1~50個または1~25個の炭素原子を含有するカルボン酸から誘導されるビニルエステルモノマーも、本発明のビニルポリマーの調製に有用でありうる。そのようなビニルエステルモノマーの例には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、ペラゴン酸
ビニル、カプロン酸ビニル、ビニルアルコールのネオエステル、ラウリン酸ビニルなど、ならびにこれらの混合物が含まれる。重合されたビニルエステルモノマーは、典型的には、本発明のアクリルコポリマーの0wt%~約10または20wt%を構成しうる。
【0053】
ビニルエーテルは本発明のビニルポリマーの調製に有用でありうる。ビニルエーテルの例には、メチル-、エチル-、ブチル-、イソブチル-ビニルエーテルなどが含まれる。重合されたビニルエーテルモノマーは、典型的には、本発明のアクリルコポリマーの0wt%~約10または20wt%を構成しうる。
【0054】
4~12個の炭素原子、好ましくは4~6個の炭素原子を含有する共役ジエンモノマーも、本発明のアクリルコポリマーの調製に有用でありうる。そのような共役ジエンモノマーの例には、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエンなど、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0055】
フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素含有モノマーも、本発明のアクリルコポリマーの調製に有用でありうる。これらは、2~100個の炭素原子および少なくとも1個のハロゲン原子を含有しうる。そのようなモノマーの例には、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン、ハロゲン化(メタ)アクリル酸、およびスチレンモノマー、塩化アリルなど、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0056】
極性および親水性モノマー。本発明のアクリルコポリマーの調製に有用である別の群のモノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、および置換(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸ナトリウムおよびビニルスルホン酸ナトリウム、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチル(メタ)アクリレート、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、1-(2-((2-ヒドロキシ-3-(2-プロペニルオキシ)プロピル)アミノ)エチル)-2-イミダゾリジノン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアリルホスフェート、Sipomer(登録商標)WAM、WAM II(Rhodia)、および他のウリド含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アクリルアミド(2-メチルプロパンスルホン酸)、およびビニルホスホン酸などの極性モノマーである。極性モノマーの混合物を使用することもできる。
【0057】
親水性モノマーおよび構成成分。親水性構成成分(すなわち、モノマー、連鎖移動剤、開始剤)は、少なくとも1つの親水性、イオン性、または潜在的にイオン性の基を有し、任意選択でアクリルコポリマーに含まれてアクリルポリマーの分散を助け、それによって、それから作製される分散体の安定性を増強する。典型的には、このことは、少なくとも1つの親水性基、または親水性にすることができる基(例えば、中和もしくは非ブロック化などの化学的改質によって)を有する化合物を、アクリルコポリマー鎖に組み込むことによって行われる。これらの化合物は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、もしくは両性イオン性、またはこれらの組み合わせでありうる。
【0058】
例えば、カルボキシレート、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、およびホスホネートなどのアニオン性基を、不活性形態のポリマーに組み込み、続いて、アンモニア、有機アミン、およびアルカリ金属水酸化物などの塩形成化合物により活性化することができる。他の親水性化合物を反応させてアクリルコポリマー主鎖の中に入れることもでき、側面もしくは末端親水性エチレンオキシド、ポリウレタンの鎖延長剤として既に記載さ
れた有機アミンおよびポリアミン/ポリイミン、ピロリドン、またはウレイド単位が含まれる。
【0059】
特に興味深い親水性化合物は、酸基をポリマーに組み込むことできるものであり、例えば、少なくとも1つのカルボン酸基、好ましくは1または2つのカルボン酸基を有するエチレン性不飽和モノマーである。そのようなモノマーの例には、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メサコン酸、シトラコン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、上記酸のアルカリ金属塩、およびそのアミンまたはアンモニウム塩、例えば、アリルスルホン酸ナトリウム、1-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(COPS 1)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネート(AMPS)、ドデシルアリルスルホコハク酸ナトリウム(TREM-LF40)、メタリルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルホスホン酸ナトリウム、スルホエチルメタクリル酸ナトリウムが含まれる。アクリル酸およびメタクリル酸以外の少なくとも1つの酸基を有する重合したエチレン性不飽和モノマーは、典型的には、本発明のアクリルコポリマーの約10wt%、9wt%、8wt%、または更には5wt%以下(一実施形態では1wt%未満)を構成しうる。使用されるとき、通常約1wt%またはそれよりも多くの量で、より典型的には約2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、もしくは10wt%またはそれよりも多くの量で存在する。酸含有モノマーおよびポリマーは、側鎖を生成するセグメントを有するポリ(エチレンオキシド)によりエステル化されうる、および/またはアミン末端PEO含有鎖によりアミド化されうる。
【0060】
PEO含有化合物。別の好ましい群の親水性化合物は、フリーラジカル転位が可能である少なくとも1つの官能基を有するアルキレンオキシドの反応性マクロマーである。そのようなマクロマーは、当該技術において周知であり、式X-(Y-O)-Zを有し、式中、Yは1~6個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルラジカルであり、Xはフリーラジカル転位が可能な官能基であり、例えば、式HC=CHC(O)O-で表すことができるアクリレート、式HC=C(CH)C(O)O-で表すことができるメタクリレート、式HC=CHCHO-で表すことができるアリルエーテル、式HC=CHO-で表すことができるビニルエーテル、ビニルベンジル、式HC=CHSO-で表すことができるビニルスルホン酸エステル、またはメルカプタンであり、ZはH、C2m+1、ホスフェート、またはXと同一であり、mは1~8、好ましくは1~3である。「n」は、下記に記載される望ましい分子量(数平均)を達成するために、変動しうる。Zは、好ましくは、Hまたはメチルである。Xは、好ましくは、アクリレートまたはメタクリレートである。適切な反応性モノマーの例には、メトキシポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート(メトキシポリエチレングリコールメタクリレートまたは「MePEGMA」としても公知である)、メトキシポリ(エチレンオキシド)アリルエーテル、ポリ(エチレンオキシド)アリルエーテル、ブトキシポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、p-ビニルベンジル末端ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレンオキシド)チオール、ポリ(エチレンオキシド)マレイミド、ポリ(エチレンオキシド)ビニルスルホン、エチルトリグリコールメタクリレートなどが含まれる。反応性マクロマーの混合物を使用することもできる。好ましい反応性マクロマーには、メトキシポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレンオキシド)アリルエーテル、およびポリ(エチレンオキシド)アリルエーテルが含まれる。適切な反応性マクロマーは、約100~約10,000、好ましくは約100~約5,000、より好ましくは約300~約2,000の分子量(数平均)を有することができる。そのようなポリマー添加剤の1つは、実施例に示されている、ClariantからのBisomer(商標)S10Wであり、非イオン性ポリマーの共重合源である。他の類似した側鎖モノマー
には、Bisomer MPEG350MA=メトキシ(ポリエチレングリコール)メタクリレート、Bisomer MPEG550MA=メトキシ(ポリエチレングリコール)メタクリレート、Bisomer S10W=メトキシ(ポリエチレングリコール)メタクリレート(水中50%)、Bisomer S20W=メトキシ(ポリエチレングリコール)メタクリレート(水中50%)、Genagen M 750、Genagen
M 1100、およびGenagen M 2000が含まれ、全てClariantから入手可能である。
【0061】
アルキレンオキシド含有マクロマーは、典型的には、アクリルコポリマーの約5wt%、10wt%、15wt%、または20wt%以下を構成しうる。親水性ポリ(エチレンオキシド)セグメントを、メタクリル酸から誘導されるようなカルボン酸基、メタクリル酸グリシジルからなどのエポキシ基、および/または無水マレイン酸からのカルボン酸基が、ポリ(エチレンオキシド)セグメントにおいてヒドロキシルおよび/またはアミン基と反応する重合後反応によって、アクリルコポリマーに付加することもできる。そのような反応は、米国特許第5,393,343号、同第5,583,183号、および同第5,633,298号において教示されている。
【0062】
親水性または潜在的に親水性の基を、連鎖移動剤、例えば、3-メルカプトプロパン酸、PEGチオールなど、およびこれらの混合物の使用によって、ポリマーに導入することもできる。
【0063】
少なくとも1つの架橋性官能基を有する化合物。望ましい場合、少なくとも1つの架橋性官能基を有する化合物を本発明のアクリルコポリマーに組み込むこともできる。そのような化合物の例には、N-メチロールアクリルアミド(NMA)、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、エポキシ含有化合物、-OH含有化合物、-COOH含有化合物、イソシアネート含有化合物(TMI)、メルカプタン含有化合物、オレフィン不飽和含有化合物などが含まれる。混合物を使用することもできる。
【0064】
本開示のインク受容性コーティングまたはフィルムにおける水希釈性ポリウレタンとバインダー/フィルムとして有用であるアクリルコポリマーとの組成物は、最初に希釈性ポリウレタンを重合し、次にアクリルコポリマーをポリウレタンの存在下で(モノマーの重合を介して)作製することによって生成することができ、複合体またはハイブリッド粒子をもたらすことができる。あるいは、希釈性ポリウレタンを水性アクリルコポリマー分散体に分散することができる。予め作製された希釈性ポリウレタンを、予め作製された水性アクリルコポリマー分散体とブレンドする代替案もある。
【0065】
触媒。用いた反応条件下でフリーラジカルを生じることができる任意の化合物を、本発明のビニルポリマー形成の触媒として使用することができる。この点においては、その開示が参照として本明細書に組み込まれる、「Initiators」、13巻、355~373頁、Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、(C)1981年、John Wiley & Sons、New Yorkを参照すること。アニオン性、カチオン性、および配位重合の触媒、ならびにUV、EB、IR、X線などの様々なエネルギー源を使用することもできる。
【0066】
溶液またはバルク重合。エチレン性不飽和モノマーをバルク重合および溶液重合する技術は、当該技術において周知であり、例えば、上記に示されたKirk-Othmerの記事に記載されている。ここでも、その開示が参照として本明細書に組み込まれる、「Initiators」、13巻、355~373頁、Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、(C)1981年、John Wiley & Sons、New Yorkを参照すること。その
ような技術のいずれかを本発明のビニルポリマーの作製に使用することができる。
【0067】
ポリマー中和。アクリルコポリマーが、ペンダントカルボン酸基または他の酸基を生成する親水性化合物を含む場合には、これらの基を中和によってカルボキシレートまたは他のアニオンに変換することができる。一般に、これらの基を中和することは、水と相互作用する量に影響を与えることがあり、このことは、中和されるコポリマーが多いほど、水中での所定のポリマー濃度での水性アクリルコポリマー分散体の粘度が高くなることを意味する。1つの好ましい実施形態において、アクリル酸、メタクリル酸、および他のカルボン酸官能性モノマーの中和レベルは、これらのモノマーのカルボン酸基の10、20、または30モルパーセントまでである。1つの最も好ましい実施形態において、中和レベルはゼロモルパーセントであり、それは、このことが標的粘度値で最高の固形分装填量の使用を可能にするからである。
【0068】
この目的に適した中和剤には、水酸化アンモニウム、金属水酸化物、アミン、ホスフィン、および当業者に周知の他の作用物質が含まれる。水酸化アンモニウムが好ましい。有用なアミンの例には、2-アミノ-2-メチル-プロパノール-1(AMP-95)、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、N-メチルモルホリン、ウロトロピン、DABCOなど、およびこれらの混合物が含まれる。
【0069】
当業者に周知の他の添加剤を使用して、本発明のバインダーポリマーの製造を助けることができる。そのような添加剤には、界面活性剤、安定剤、消泡剤、抗微生物剤、酸化防止剤、UV吸収剤、カルボジイミドなどが含まれる。付与および素早い乾燥時間に好都合なように、本発明のバインダーは、水中のバインダーポリマーの重量に対して、典型的には少なくとも約20wt%、好ましくは少なくとも約25wt%、より好ましくは少なくとも約30wt%の総固形分を有する。
【0070】
本開示の組成物の利点には、非常に高い光沢のインク受容性フィルムを作製する可能性が含まれ、それによって、インク受容性フィルム上の印刷画像は、望ましい場合、高い光沢を有する。望ましくは、光沢は(使用者が高い光沢を望むのであれば)、約20~約75、より望ましくは約30~約90、好ましくは約40~約90である。これらの光沢測定値は、試験方法ASTM D523を使用して60度で測定される。あるいは、使用者が低い光沢のフィルムまたはコーティングを望む場合、つや消し剤をコーティングに加えることができる、または質感剤(texturing)をコーティングまたはフィルムに付与して
、つや消し、もしくは低い光沢読み取り値を導入することができる。
【0071】
フィルムは、明澄/透明であることも可能であり、それは、フィルムの透明度を低減しやすい無機充填剤を必要としないからである。フィルムは、ASTM D1003によりフィルム厚の25ミクロンで測定して、望ましくは約60~約100、より望ましくは約80~約100、好ましくは約90~約100の透明度を有することができる。例として、高い透明度を有するインク受容性コーティングを基材に付与することができ、最終使用者がインク受容性フィルムまたは媒体を通して見て、基材を観察または検査することを可能にし、同時に、インク受容性フィルムまたはコーティングの上に付与された高解像度印刷または画像が、基材上に出所、製品コード、製品品質、装飾効果を示す。この透明インク受容性コーティング/フィルムによって、瓶および他の明澄容器に印刷することも可能であり、最終使用者が、透明フィルム/コーティングに付与されたインク画像により透明性が低くなったフィルム/コーティングの区域を除いて、瓶または容器の内容物を明確に見ることを可能にする。このように、透明インク受容性フィルム/コーティングは、明澄
な、または着色された瓶または容器、例えば、消費者が容器の外側にいくらかの情報を求めているが、消費者が容器の内容物を遮られていない区域で観察することも求めている、飲料、化粧品、医薬品などへの印刷を可能にする。
【0072】
一実施形態において、インク受容性コーティングまたはフィルムは、水性アクリルコポリマー分散体の水希釈性ポリウレタンポリマーおよびアクリルコポリマーから実質的になる(フィルムまたはコーティングについて言及される場合は、水相を除く)。用語「実質的になる」とは、インク受容性コーティングまたはフィルムが主に2つの指定されたポリマー、および受容性コーティングまたはフィルム上の印刷画像のインク受容性、光沢値、および乾燥時間に測定可能な影響を与えない他の構成成分であることを意味する。このように、コーティングは、列挙された特性に実質的に影響を与えない他の添加剤、例えば、殺生物剤、防腐剤、湿潤剤、表面改質剤などを含有することができる。しかし、コーティングまたはフィルムは、コーティングまたはフィルム上の印刷画像の光沢、インク受容性、透明度、または乾燥時間に実質的または測定可能な影響を与える、高度に水相互作用性のポリマーまたは粒子を含有することはできない。
【0073】
インク受容性組成物およびインク受容性組成物のフィルム/コーティングは、また、インク画像がフィルム/コーティングの下にある基材に結合することを推進し、湿潤インクが乾燥する間に意図される位置からフィルム/コーティングの隣接区域に不要に移行することを防止し、インクがにじみ抵抗性画像/印刷に非常に短時間に凝集することを推進し、それによって、印刷物品を取り扱うこと、任意選択で包装すること、および印刷場所から取り出すことを可能にする。インク受容性組成物/フィルム/ラベルは、インク中の水および低分子量有機材料をフィルム/コーティングに吸着すること、インクの連続相の体積を低減すること、ならびにインク中のバインダー、顔料、および/または染料から液体が少なくなり、にじみに抵抗する凝集質量が多くなるように促すことによって、このことを達成する。インクが乾燥した後、水および低分子量有機溶媒は、インク受容性フィルム/コーティングからゆっくりと蒸発しうる。
【0074】
インク受容性フィルムまたはコーティングを基材または剥離相に、フィルムまたはコーティングを作り出す任意の公知技術によって付与することができる。これらには、ローラー、スプレー、ブラシ、ドクターブレード、連続コーティングまたは印刷機器、デジタル印刷などが含まれる。コーティングまたはフィルムを、空気乾燥することが可能である、または乾燥を熱、空気移動、または他の公知の乾燥方法の付与によって加速させることができる。バインダー溶液の粘度またはレオロジーを調整して、コーティング材料を基材または剥離層に付与する望ましい方法を推進または可能にすることができる。
【0075】
にじみ抵抗性画像または印刷を形成する能力は、インク液がフィルムに吸収されおよび/または蒸発した後、湿潤指擦り試験によって測ることができる。多くの場合、インク受容性フィルムは、フィルムに付与された所定量のインクが、指擦り試験に合格しうる乾燥レベルに達する時間によって特徴づけられる。フィルムが素早く乾燥する場合、このことは、にじみを有することなく印刷区域から保管または出荷場所へ輸送される印刷物品/物体の調製を明らかに推進する。指擦り試験は主観的であり、それは、異なる作業者がわずかに異なる量の圧力を指に加えるからである。湿潤指擦り試験は主観的であり、それは、異なる印刷機および印刷機構成が、有意の異なる量のインクをフィルムの単位表面積あたりに付着しうるからであり、インクが、指擦り試験に使用されるのに十分な乾燥状態に達するまで蒸発することが必要なインク液の異なる百分率を有しうるからである。これらの欠陥にもかかわらず、熟練の作業者は、この試験の試料間の差を容易に、かつ素早く測ることができる。
【0076】
本出願の組成物およびバインダーは、様々な種類の印刷のためのインク受容性媒体(例
えば、コーティングまたはフィルム)として有用である。組成物は、バインダーの媒体に高い光沢および高い透明度をもたらすことができる。
【0077】
以下の実施例は、開示されている発明を説明し、比較例と対比する目的で提示されている。この実施例は、本明細書の発明をいかなる方法によっても制限するものとして解釈されるべきではなく、むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定されるべきである。
【実施例0078】
本発明の実施例および比較例
水希釈性ポリウレタンの実施例A。比較例および本発明の実施例の構成成分として使用される、約70wt%のPEOが係留鎖にあり、30wt%のイソシアネートがポリウレタン主鎖にある高PEO含有PUD。
プレポリマーステップ。約1,000g/モルの数平均分子量を有する側鎖ポリ(エチレンオキシド)ジオール(514グラム)(PerstorpからのYmer(登録商標)N-120)を、1.5当量(186グラム)の1,1’-メチレンビス-(4-イソシアナトシクロヘキサン)(Bayer CorporationからのDesmodur(登録商標)W)と混合し、乾燥窒素のブランケット下で約90分間撹拌しながら、190~200°F(88~93℃)で反応させた。反応混合物を185°F(85℃)に冷却した。
【0079】
分散体/溶液ステップ。プレポリマーの一部分(200グラム)を、激しく撹拌しながら、0.07グラムのDee Fo PI-40(登録商標)(Ultra Additivesからの消泡剤)および800グラムのDI水を含有する混合物に68°F(20℃)で、ゆっくりと(約5分間)分散した。分散体/溶液を、水が未反応NCOを消費するように一晩撹拌した。最終分散体は、総固形分=19.4%、pH7.7、Brookfield粘度の30cP、および動的光散乱測定により報告された粒子直径の40nm未満を有した。
アクリルコポリマーの実施例。比較例および本発明の実施例に使用されるアクリルコポリマーエマルションポリマー
【0080】
水浴に沈めた、撹拌機、還流冷却器、温度計、および窒素入口チューブを備えた3Lの四つ首ガラスフラスコに、866グラムのDM水、3.9グラムのラウリル硫酸ナトリウム界面活性剤(水中30%)、および0.6グラムの炭酸カリウムを加えた。窒素雰囲気下、容器内容物の温度を84℃にして、7グラムのDM水中0.25グラムの過硫酸アンモニウムの開始剤溶液を加えた。その直後に、以下のモノマープレエマルション混合物の添加を開始して、3時間かけて加えた:132グラムのDM水、8グラムのアルファオレフィンスルホネートのナトリウム塩、1.2グラムのn-ドデシルメルカプタン、173グラムのn-ブチルアクリレート、および212グラムのメタクリル酸。同時に、86グラムのDM水中の1.3グラムの過硫酸アンモニウム溶液の添加を開始し、3.5時間かけて徐々に加えた。温度を84℃に維持した。プレエマルションの添加が終了した後、温度を84℃に更に1時間維持した。次に、内容物を57℃に冷却し、2.1グラムの水中18%tert-ブチルヒドロキシペルオキシド溶液を加えた。20分間混合した後、14グラムのDM水中0.4グラムのエリソルビン酸の溶液を加えた。低粘度コロイド安定分散体を得て、次の特性を有した:固形分含有量=27.0%、pH=3.8、粒径=72nm(体積平均、ガウス分布、PDI=1.1)。
水希釈性ポリウレタンの実施例C。比較例および本発明の実施例の構成成分として使用されるPEO含有PUD。
【0081】
プレポリマーステップ。約1,000g/モルの数平均分子量を有する側鎖ポリ(エチ
レンオキシド)ジオール(1,850グラム)(PerstorpからのYmer(登録商標)N-120)を、28グラムのトリメチロールプロパン、13グラムのジメチロールプロパン酸、および890グラムの1,1’-メチレンビス-(4-イソシアナトシクロヘキサン)(Bayer CorporationからのDesmodur(登録商標)W)と混合し、乾燥窒素のブランケット下で約3時間撹拌しながら、190~200°F(88~93℃)で反応させた。反応混合物を175°F(79℃)に冷却した。
【0082】
分散体/溶液ステップ。プレポリマーの一部分(1,580グラム)を、激しく撹拌しながら、1.2グラムのDee Fo PI-40(登録商標)(Ultra Additivesからの消泡剤)および4,070グラムのDI水を含有する混合物に69°F(21℃)で、ゆっくりと(約7分間)分散した。分散体/溶液を、水が未反応NCOを消費するように一晩撹拌した。
最終分散体は、総固形分=27.5%、pH7.0、Brookfield粘度の70cP、および動的光散乱測定により報告された粒子直径の40nm未満を有した。
アクリルコポリマーの実施例D。比較例および本発明の実施例に使用されるアクリルコポリマーエマルションポリマー
【0083】
水浴に沈めた、撹拌機、還流冷却器、温度計、および窒素入口チューブを備えた5Lの四つ首ガラスフラスコに、1,840グラムのDM水、9.5グラムのラウリル硫酸ナトリウム界面活性剤(水中30%)、および1.4グラムの炭酸カリウムを加えた。窒素雰囲気下、容器内容物の温度を84℃にして、18グラムのDM水中0.6グラムの過硫酸アンモニウムの開始剤溶液を加えた。その直後に、以下のモノマープレエマルション混合物の添加を開始し、3時間かけて加えた:380グラムのDM水、63グラムのAbex
JKB(Solvay)、3グラムのn-ドデシルメルカプタン、380グラムのn-ブチルアクリレート、および570グラムのメタクリル酸。同時に、430グラムのDM水中の3グラムの過硫酸アンモニウムおよび1.6グラムのラウリル硫酸ナトリウム界面活性剤溶液の添加を開始し、3.5時間かけて徐々に加えた。温度を84℃に維持した。プレエマルションの添加が終了した後、移送ラインを90グラムのDM水でフラッシュし、温度を84℃に更に1時間維持した。次に、内容物を57℃に冷却し、5グラムの水中18%tert-ブチルヒドロキシペルオキシド溶液を加えた。20分間混合した後、34グラムのDM水中1グラムのエリソルビン酸の溶液を加えた。低粘度コロイド安定分散体を得て、次の特性を有した:固形分含有量=26.1%、pH=3.2、粒径=75nm(強度平均、ガウス分布、PDI=1.1)。
本発明の組成物の実施例E。水中の約53%MMAおよび約43wt%BA、ならびに水希釈性ポリウレタンのアクリルコポリマーエマルション
【0084】
コーティング溶液を、19gの水希釈性ポリウレタンの実施例A(係留鎖中高PEO含有量の希釈性ポリウレタン)、27gのアクリルコポリマーの実施例B(水中のアクリルコポリマー分散体)、0.5gの、1:1重量比で混合したジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(DowからのDowanol(登録商標)DPnB)とエチレングリコールモノブチルエーテル(EastmanからのEastman(商標)EB Solvent)、および0.3gの、1:1:2重量比の水/イソプロパノール/トリメチルアミン混合物から構成した。この配合物は、上記記述の化学薬品を列挙した順番に混合しながら、ゆっくりと加えることによって調製した。
【0085】
コーティングは、Meyerロッドを使用して、下塗りしたポリプロピレンフィルムに実験室ドローダウンで調製した。コーティングを90℃オーブンで5分間硬化して、完全な乾燥を確実にした。硬化したコーティングをEpson Colorwork C831プリンターで印刷した。プリントアウトを、印刷した直後に1kgの重量のオフィス用紙束で圧縮する。インク乾燥堅牢度(ink drying fastness)を、あらゆるインク移行
がないかを検査して評価する。次にプリントアウトを周囲環境下で3日間老化させ、濡れた布片および300グラムの重りを使用して、直径30mmの円形接触域を擦る。印刷品質を、目視および色密度の測定の両方によって評価する。
【0086】
コーティングは、良好な光沢、許容されるインク乾燥堅牢度、良好な湿潤擦り抵抗性、および良好な印刷品質を有する。
比較例の組成物F。高PEO含有量100%の希釈性ポリウレタンのインク受容性コーティング
【0087】
コーティングは、実施例1564-003-15-122Bの手順に従って、水希釈性ポリウレタン実施例A(ポリウレタン)を「そのまま」使用して調製した。このコーティングは、軟らかすぎて、印刷品質および湿潤擦り抵抗性について評価できなかった。
比較例の組成物G。100%アクリルコポリマーのインク受容性コーティング
【0088】
コーティングは、アクリルコポリマー実施例Bを「そのまま」使用して調製し、本発明の組成物の実施例Eの手順に従って評価した。このコーティングは、剛性が高いため取り扱いに十分な注意が必要であった。良好な画像品質、良好な光沢、良好な湿潤擦り、および不十分なインク乾燥堅牢度を有した。
PrintRite(商標)DP351(現在の汎用インク受容性コーティング)を有する比較例の組成物H
【0089】
Lubrizol Advanced MaterialsからのPrintRite(商標)DP351を評価した。このコーティングは、優れた光沢、良好な印刷品質、十分なインク乾燥堅牢度、および不十分な湿潤擦り抵抗性を有した。
比較例の組成物I、DP336(カチオン性シリカを有する、LZAMの現在のインク受容性ドラムラベルコーティング)
【0090】
Lubrizol Advanced MaterialsからのPrintRite(商標)DP335を評価した。このコーティングは、優れた印刷品質、優れた乾燥堅牢度、優れた湿潤擦り抵抗性、および10光沢単位を下回る光沢を有した。
親水性TPU-Carbopolフィルムを有する比較例の組成物J
【0091】
Lubrizol Life Science部門により調製された3つの試料A、B、およびCを、印刷適性について試験した。これらは、親水性TPUとCarbopolのブレンドであった。印刷したフィルムは、低い色密度および不十分な湿潤擦り抵抗性を有した。
本発明の組成物の実施例K、係留鎖中高PEO含有量のポリウレタン、水中のアクリルコポリマー分散体、および粒子状アルミナの本発明の実施例(60wt%のアクリルコポリマーおよび40wt%のポリウレタン)
【0092】
このコーティング組成物を、25.5gの水希釈性ポリウレタン実施例C、15.0gの、EvonikからのAerodisp 640 ZXアルミナ、および23.0gのアクリルコポリマー実施例Dから構成した。完成したコーティングは、良好な印刷品質、良好な光沢(60度で測定して80より高い)、良好な湿潤擦り抵抗性、および許容されるインク乾燥堅牢度を有する。
【0093】
特定の代表的な実施形態および詳細が本発明を説明するために示されてきたが、様々な変更および改変を、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができることは、当業者にとって明白である。
【0094】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
a)水希釈性ポリウレタンと、b)アクリルコポリマーの水性分散体とを含む、水性媒体中の分散体であって、
水希釈性ポリウレタンが、25℃で5または10wt%で水溶性であってもなくてもよく、水中の分散体(不溶性の場合)または溶液(水中でその濃度を超えて可溶性の場合)として存在し、水で希釈されたときに前記分散体または溶液の状態に明白な変化が起きることなく、追加の水によって希釈され得るポリマーとして定義され、
水性アクリルコポリマー分散体が、25℃で5または10wt%を超えて水溶性ではないが、約60または70wt%までのポリマー濃度で水中の分散体となることができるように疎水性部分および親水性部分を有するコポリマーとして定義され、コロイド分散体が、動的光散乱測定による強度平均ガウス分布粒径分析に基づいて、20~500ナノメートルの数平均粒子直径を有すると定義され、
前記a)が、10~90wt%の水希釈性ポリウレタンであり、前記ポリウレタンの重量に対して、30~80または85wt%のポリアルキレンオキシドセグメントを有することを特徴とし、前記ポリアルキレンオキシドセグメントの少なくとも50~100重量パーセントが、係留ポリ(アルキレンオキシド)鎖(任意選択で、一実施形態において前記係留鎖は側面結合鎖と定義される)の中にあり、
前記b)が、10~90wt%のアクリルコポリマーであり、前記アクリルコポリマーが、水性分散体の形態であり、前記アクリルポリマーが、前記アクリルコポリマーの乾燥重量に対して、約15または25~約75wt%の、組み合わせたアクリル酸とメタクリル酸の反復単位、および約25~75または85wt%の、アクリル酸またはメタクリル酸のC ~C 12 アルキルエステルの組み合わせた反復単位を有することを特徴とし、
前記a)およびb)の重量パーセントが、a)およびb)におけるポリマーバインダー固形分と、前記バインダー中の任意の任意選択のポリマーとを組み合わせた乾燥重量に対してである、
水性媒体中の分散体。
(項2)
前記a)ポリウレタンが40~80wt%で存在し、前記b)アクリルコポリマーが20~60wt%で存在し、前記バインダー中の任意選択のポリマーが、前記バインダー中の全ての乾燥ポリマーに対して0~20wt%で存在する、上記項1に記載の分散体。
(項3)
前記a)ポリウレタンが45~75wt%で存在し、前記b)アクリルコポリマーが25~55wt%で存在する、上記項1に記載の分散体。
(項4)
前記a)ポリウレタンが約50~70wt%で存在し、前記b)アクリルコポリマーが約30~50wt%で存在する、上記項1に記載の分散体。
(項5)
水性連続相が存在し、前記水性媒体が、前記水性連続相の重量に対して、少なくとも80、90、または95wt%の水、および20、10、または5wt%までの溶媒を含む、前記上記項のいずれかに記載の分散体。
(項6)
b)アクリルコポリマーが、約50~70wt%の、組み合わせたアクリル酸とメタクリル酸の反復単位、および約30~50wt%の、アクリル酸またはメタクリル酸のC ~C 12 アルキルエステルの組み合わせた反復単位を含む、前記上記項のいずれかに記載の分散体。
(項7)
b)アクリルコポリマーが、約55~65wt%の、組み合わせたアクリル酸とメタクリル酸の反復単位、および35~45wt%の、アクリル酸またはメタクリル酸のC ~C 12 アルキルエステルの組み合わせた反復単位を含む、前記上記項のいずれかに記載の分散体。
(項8)
前記アクリル酸とメタクリル酸の組み合わせた反復単位の少なくとも50wt%が、メタクリル酸からのものであり、前記アクリル酸またはメタクリル酸のC ~C 12 アルキルエステルの反復単位の少なくとも50wt%が、アクリル酸またはメタクリル酸のC ~C アルキルエステルからのものである、前記上記項のいずれかに記載の分散体。
(項9)
粒子状材料を更に含む、前記上記項のいずれかに記載の分散体。
(項10)
a)約10~約90wt%の水希釈性ポリウレタンと、b)約10~約90wt%の、アクリルコポリマーの水性分散体とのブレンドを含む、コーティングまたはフィルムであって、
水希釈性ポリウレタンが、25℃で5または10wt%で水溶性であってもなくてもよく、水中の分散体または溶液として存在し、水で希釈されたときに前記分散体または溶液の状態に明白な変化が起きることなく、追加の水によって希釈され得るポリマーとして定義され、
水性アクリルコポリマー分散体が、25℃で5または10wt%を超えて水溶性ではないが、約60または70wt%までのポリマー濃度で水中の分散体となることができるように疎水性部分および親水性部分を含むコポリマーとして定義され、前記分散体が、強度平均およびガウス分布を使用する動的光散乱測定により決定して、20~500ナノメートルの数平均粒子直径を有すると定義され、
前記a)が、10~90wt%の水希釈性ポリウレタンポリマーであり、前記ポリウレタンの重量に対して、30~80または85wt%のポリアルキレンオキシドセグメントを有することを特徴とし、前記ポリアルキレンオキシドセグメントの少なくとも80~100重量パーセントが、係留ポリ(アルキレンオキシド)鎖の中にあり、
前記b)が、10~90wt%の水性アクリルコポリマー分散体であり、前記アクリルポリマーが、約15または25~75wt%の、組み合わせたアクリル酸とメタクリル酸の反復単位、および約25~75または85wt%の、アクリル酸またはメタクリル酸のC ~C 12 アルキルエステルの組み合わせた反復単位を有することを特徴とし、
前記a)およびb)の重量パーセントが、a)およびb)におけるバインダー固形分と、任意の任意選択の追加のバインダーポリマーとを組み合わせた乾燥重量に対してであり、
前記コーティングまたはフィルムが、ASTM D523-89に従って60°で測定して20~95、より望ましくは30~90光沢単位の光沢読み取り、水および溶媒を水性ベースインクから前記コーティングまたはフィルムに中に吸着させて、前記インクの増粘を促進する能力、および前記コーティングまたはフィルムが水に曝露されたときに摩損に耐えるような、水による膨張に対する抵抗性を有する、コーティングまたはフィルム。
(項11)
インク受容性コーティングを形成する方法であって、a)水希釈性ポリウレタンをb)アクリルコポリマーとブレンドしてコーティング組成物を形成すること、剥離層または基材に付与すること、および前記コーティング組成物を乾燥してフィルムにすることを含む、方法。
(項12)
バインダー中の全てのポリマーの重量に対して、a)前記水希釈性ポリウレタンが前記コーティングの約10~約90wt%で存在し、b)前記アクリルコポリマーが前記コーティングの約10~約90wt%で存在し、b)前記水希釈性ポリウレタンが、30~80wt%のエチレンオキシド反復単位を含み、前記エチレンオキシド反復単位の50~100wt%が、前記ポリウレタンに結合しているがポリウレタン主鎖から放射状に延長している係留鎖の中にある、上記項11に記載の方法。
(項13)
インク受容性層にインク画像を形成する方法であって、
i)a)水希釈性ポリウレタンをb)アクリルコポリマーとブレンドしてコーティング組成物を形成することと、
ii)前記コーティング組成物を剥離層または基材に付与することと、
iii)前記コーティング組成物を乾燥してフィルムにすることと、
iv)前記フィルム上に水性インクジェットインクでデジタル印刷して画像を形成することと
を含む、方法。
(項14)
a)水希釈性ポリウレタンをb)アクリルコポリマーとブレンドしてコーティング組成物を形成すること、剥離層または基材に付与すること、および前記コーティング組成物を乾燥してフィルムにすることによって誘導された少なくとも1つの高光沢表面を有する、基材(任意選択で、その上に印刷画像を有する)上のフィルムまたはコーティング。
(項15)
バインダー中の全てのポリマーの乾燥重量に対して、a)前記水希釈性ポリウレタンが約40~約80wt%で存在し、b)前記アクリルコポリマーが約20~約60wt%で存在し、b)前記水希釈性ポリウレタンが、50~85wt%のエチレンオキシド反復単位を含み、前記エチレンオキシド反復単位の70~100wt%が、前記ポリウレタンに結合した係留鎖の中にある、上記項11に記載の方法。
【外国語明細書】