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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066455
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】気泡発生装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/20 20220101AFI20220421BHJP
   B01F 25/40 20220101ALI20220421BHJP
【FI】
B01F3/04 Z
B01F5/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034479
(22)【出願日】2022-03-07
(62)【分割の表示】P 2018004750の分割
【原出願日】2017-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2016145587
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】308041934
【氏名又は名称】株式会社シバタ
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】柴田 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】花村 厚次
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰孝
(57)【要約】
【課題】筒状の本体部内部を通過する水流に微小な気泡を発生させる気泡発生部を備える気泡発生装置において、その気泡発生部における気泡発生効率を向上させる。
【解決手段】筒状の本体部を有し、本体部内にあって該本体部を通過する水流中に微小な気泡を発生させる気泡発生部を備える気泡発生装置であって、気泡発生部は水流に正対する水流対向面および水流対向面の裏側の負圧形成面を備え、負圧形成面は凹部を有する、気泡発生装置。
【選択図】 図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体部を有し、該本体部内にあって該本体部を通過する水流中に微小な気泡を発生させる気泡発生部を備える気泡発生装置であって、
前記気泡発生部は水流に正対する水流対向面および該水流対向面の裏側の負圧形成面を備え、前記負圧形成面は凹部を有する、
気泡発生装置。
【請求項2】
前記気泡発生部が前記本体部内へ柱部を突出させる気泡発生装置であって、
前記柱部は前記水流対向面と前記負圧形成面とを有する、請求項1に記載の気泡発生装置。
【請求項3】
前記柱部の前記水流対向面が凸形状をなすことを特徴とする、請求項2に記載の気泡発生装置。
【請求項4】
前記水流対向面の凸形状が、前記柱部の軸に直交する断面において流に沿って拡幅する円弧状またはV字状である、請求項3に記載の気泡発生装置。
【請求項5】
前記負圧形成面の一方の縁が他方の縁より上流側に位置する、請求項1に記載の気泡発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノオーダの微小気泡を水中に形成する気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微小気泡を形成する一つの手法としてキャビテーション効果の利用がある。特許文献1には、管状の本体部のオリフィス内へ複数のねじ(柱状部)を突出させ、このオリフィスを通過する水流に微小な気泡を発生させる気泡発生装置が開示されている。
この気泡発生装置へ水道水を導入すると、相対向するねじの間に形成された絞り部にて水流が絞られてその流速が増加する。その結果、ベルヌーイの原理に従い絞り部の下流側に負圧域が形成され、そのキャビテーション(減圧)効果により水中の溶存気体が析出して微小な気泡が発生する。
その他、本件に関連する発明を開示する特許文献2及び3を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5712292号公報
【特許文献2】特開2008-18330号公報
【特許文献3】特許第6077627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、気泡発生装置にはより高い微小気泡発生効率が求められている。そこでこの発明は、管状の本体部において当該本体部内部を通過する水流に微小な気泡を発生させる気泡発生部を備える気泡発生装置において、その気泡発生部における気泡発生効率を向上させることを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねてきた結果、下記構成の第1の局面の気泡発生装置に想到した。即ち、筒状の本体部と該本体内に配置される気泡発生部とを備える気泡発生装置であって、
前記気泡発生部は、前記本体部の横断面において前記本体部内の一点を中心として放射状に伸びるスリットと、
前記本体部の内周面から膨出して該スリットの周縁を形成する柱部と、を備え、
前記柱部は前記スリットの周縁から上流側に向けて漸次その膨出量が減少し、その下流側面に凹部が形成される、
気泡発生装置。
【0006】
このように規定される第1の局面の気泡発生装置によれば、柱部がスリットの周縁から上流側に向けて漸次その膨出量が減少しているので、換言すれば、上流側からみたとき柱部は徐々に膨出しているので本体部内における流路が絞られて、本体部内の水流は圧縮されながらその速度が増加する。かかる水流がスリットを通過した結果、スリットの下流側に負圧域が形成される。
更には、柱部の下流側面に凹部が形成されるので、スリットを通過して下流側面に回り込んだ水流は、当該凹部に吸い込まれてその流速が増すのでここにも負圧が生じる。
このように構成された気泡発生部によれば、スリットの下流側に負圧域が形成されるとともに、柱部の下流側面の凹部の周辺にも負圧領域が形成される。その結果、十分な量の微小な気泡が発生する。
また、気泡発生部のスリットを、本体部から膨出した、即ち一体的に形成された柱部で規定するので、本体部及び柱部が一体成型品となる。ここに、柱部はその下流側面から上流側に向けて漸次その膨出量が減少しているので、成形型をこの上流側へ引き抜ける。同様に下流側面には凹部が形成されているだけなので、成形型を下流側へ引き抜ける。即ち、この気泡発生装置は本体部において半径方向に割れる成形型を用いて、樹脂の型製品とすることができる。
【0007】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、第1の局面に規定の気泡発生装置において、前記中心は前記本体部の中心軸上に位置する。
このように規定される第2の局面の気泡発生装置によれば、放射状に広がるスリットの放射中心と本体部の中心とが一致する。これにより、スリットは、本体部内の一つの仮想横断面において、その中心から放射状に形成されることとなる。よって、本体部内においてスリットが均等に分配される。これにより、本体部内を水が流れやすくなってより速い流速が得られる。流速が早いほどより多くの気泡を発生させられる。
【0008】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、第1又は第2の局面に記載の気泡発生装置において、前記柱部は隣り合うスリットの各縁で規定される面を前記下流側面として上流側に向けてその断面積が漸減し、本体部の上流端でその断面積が実質的にゼロとなる、請求項1又は請求項2に記載の気泡発生装置。
このように規定される第3の局面の気泡発生装置において柱部の形状をより具体的に記載した。そして、本体部の上流端で柱部の断面積が実質的にゼロとなること、即ち、柱部が本体部の上流端から隆起し始めることにより、水流に対する柱部の抵抗を可及的に小さくし、もって、本体部内の水流の流速の最大化を図る。
【0009】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、第1若しくは第2の局面に規定の気泡発生装置において、前記柱部は隣り合う前記スリットの各縁で規定される面を底面とした錐形状であり、前記柱部の稜線は前記隣り合うスリットの各縁の交点と該各縁の仮想二等分面が交差する前記本体部の内周面の点とをつなぐ。
このように規定される第4の局面の気泡発生装置において柱部の形状をより具体的に記載した。即ち、柱部を錐形状とし、かつその稜線が本体部の内周面へつながること、即ち当該稜線が本体部の内周面から隆起し始めることを規定することにより、柱部の水流抵抗を可及的に小さくできる。
【0010】
この発明の第5の局面は次のように規定される。即ち、第1~4の何れかの局面に規定の気泡発生装置において、前記柱部の下流側面に形成される前記凹部は、前記中心から放射状に配置される。
このように規定される第5の局面の気泡発生装置によれば、柱部の下流側面を規定する本体部の仮想横断面において、凹部が均等に分配される。その結果、凹部に起因する気泡も均等に発生することになる。
【0011】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、第1~5の何れかの極目に規定の気泡発生装置において、前記凹部は前記本体部の内周面を通過して該本体部の周壁内に空隙を形成する。
このように規定される第6の局面の気泡発生装置によれば、周壁に形成された空隙に凹部が連通するので、水流が凹部に吸い込まれやすくなる。よって、負圧の発生が促進される。
なお、本体部の周壁に形成される空隙は、周壁の内部に形成されてもよいし、また、周壁が当接する他の部品と当該周壁との間に形成されてもよい。
【0012】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、第1~6の局面の何れかに規定の気泡発生装置の少なくとも1つと、オリフィスとを有してその小径部に前記気泡発生装置を収納する筐体部と、を備える気泡発生ユニットであって、
前記気泡発生装置の本体部が前記筐体部に埋設されて、前記柱部が前記オリフィスの小径部に表出する、気泡発生ユニット。
既述のように気泡発生装置は型成形可能であり、換言すれば気泡発生装置自体は規格を統一して、安価に形成できる。このように規格化された気泡発生装置に対し、筐体を任意に設計することより、各種の水流源に対して気泡発生装置を適用可能となる。
例えば、水道の給水管から供給される水流(0.15MPa~0.75MPa)に対しては、1つの気泡発生装置を組み込んだ気泡発生ユニットを適用すると、何らポンプ等で加圧することなく、微小気泡を発生させられる。この場合、筐体部の開口径は10~30mmとして、その外径も給水菅の外径寸法と等しくすることが好ましい。
水道から供給される水流に適用する場合、気泡発生装置の本体部の内周面の上流端(柱部が実質的に存在しない領域)の径は5.0~10.0mmとすることが好ましい。スリットの幅は0.1~3mmとして、各スリットは本体部の中心から放射状に、均等に形成される。スリットの本数は4~10とすることが好ましい。スリットは本体部の内周面に接するように形成することが好ましいが、中心から見て内周面の途中まででもよい。
加圧した水流を用いる場合、筐体に複数の気泡発生装置を直列的に組み込むことが好ましい。このとき、各気泡発生装置のスリットは水流方向、即ち筐体の軸方向において、重ならせることが好ましい。スリットを通過するときの流速を確保するためである。本発明者らの検討によれば、スリットを通過するときの流速100m/秒以上とすることが好ましい。
【0013】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、第7の局面に規定の気泡発生ユニットにおいて、前記筐体部は前記小径部において軸と垂直に分割されており、分割片の間に前記気泡発生装置の本体部が挟持される。
このように規定される第8の局面の気泡発生ユニットによれば、筐体部に対する気泡発生装置の組み付けが容易になる。よって、安価な気泡発生ユニットを提供できる。
【0014】
この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、第7の局面に規定の気泡発生ユニットにおいて、分割片の一方と前記気泡発生措置とが一体成型される。
気泡発生装置は型成形可能であるので、筐体部の分割片も同様に型成形可能に設計すれば、これに気泡発生装置を一体化したものも型成形可能となる。従って、第9の局面に規定するように分割片の一方と気泡発生措置とを一体成型することで、気泡発生ユニットの部品点数が削減され、ひいてはその製造コストを低減できる。
【0015】
この発明の第10の局面は次のように規定される。即ち、筒状の本体部と該本体内に配置される気泡発生部とを備える気泡発生装置であって、
前記気泡発生部は、前記本体部の内周面から膨出する複数の柱部を備え、
前記柱部は三角錐を二つ割りにした構造であり、その底面が前記本体部の下流側面と一致し、その頂部が前記本体部の上流側面と一致し、その稜線が前記本体部の中心軸に向かって配置され、
前記柱部の底面の縁部の間にスリットが形成される気泡発生装置。
このように規定される第10の局面に規定の気泡発生装置によれば、柱部の形状を三角錐とすることで、その水流抵抗を最少とする。よって、スリットの下流に十分な負圧域が形成される。
【0016】
この発明の第11に局面は次のように規定される。即ち、第10の局面に規定の気泡発生装置において、前記柱部の底面に凹部が形成されている。
このように規定される第11の局面の気泡発生装置によれば、底面に凹部が形成されるので、当該凹部においても負圧域が形成される。もって、気泡の発生効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1はこの発明の第1の実施の形態の気泡発生装置の平面図である。
図2図2図1におけるA-A線断面図である。
図3図3図1の気泡発生装置を組み込んだ気泡発生ユニットの構造を示す斜視図である。
図4図4図3におけるB-B線断面図である。
図5図5は気泡発生ユニットの分解斜視図である。
図6図6は第1の実施の形態の気泡発生装置を2つ組み込んだ気泡発生ユニットの構造を示す分解斜視図である。
図7図7は同じく気泡発生ユニットの構造を示す斜視図である。
図8図8図7におけるC-C線断面図である。
図9図9は他の形態の気泡発生装置の平面図である。
図10図10図9におけるD-D線断面図である。
図11図11図9に示される気泡発生装置の二つを連結させた構造を示す。
図12図12図11におけるE-E線断面図である。
図13図13は溶存酸素量の時間変化を示すグラフである。
図14図14の(A)~(C)はこの発明の実施形態2の気泡発生装置の柱部の横断面図を示す。
図15図15の(A)~(C)は同じく他の柱部の横断面図を示す。
図16図16の(A)~(D)は同じく他の柱部の横断面図を示す。
図17図17は水流に対して柱部を傾けたときの負圧域の分布を示す。
図18図18はこの発明の実施形態の気泡発生装置の構造を示し、図5(A)は下流側からみた側面図、図5(B)は縦断面図である。
図19図19はこの発明の他の実施形態の気泡発生装置の構造を示す下流側からみた側面図である。
図20図20はこの発明の他の実施形態の気泡発生装置の構造を示す下流側からみた側面図である。
図21図21はこの発明の実施例の気泡発生装置の構造を示す縦断面図である。
図22図22同じく気泡発生部の斜視図である。
図23図23は同じく気泡発生部の平面図である。
図24図24は同じく図23におけるA-A矢視線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態 1)
この発明の第1の実施の形態の気泡発生装置1000の平面図を図1に示す。同じくその断面図を図2に示す。
この気泡発生装置1000は本体部1100と気泡発生部1200とを備える。
本体部1100は筒状に形成される。この本体部1100の外周面の一部が切りかかれて平坦部1110が形成される。この平坦部は無駄な回転を防止し、かつ位置決めに利用される。本体部1100は円筒状である必要はなく、任意の形状を採用できる。例えば角筒状とすることができる。また、半径方向に分割することもできる。水流方向下流側に縮径するテーパ状とすることもできる。
【0019】
気泡発生部1200は本体部1100の内周面から膨出する、本体部1100と一体的に形成される柱部1210を備える。この例では6本の柱部1210を有する。各柱部1210の下流側面(図2で下側面)の周縁により6つのスリット1300が形成される。
スリット1300は、平面視で放射状に形成される。この例では放射の中心が本体部1100の中心軸と一致している。放射の中心と本体部1100の中心軸とが一致しなくてもよい。スリット1300は、本体部1100において一つの仮想横断面上に形成される。換言すれば、各柱部1210において、本体部1100の内周面から最も膨出した部分が当該仮想横断面上に形成される。この最も膨出した部分は柱部1210の底面1211の周縁と一致することが好ましい。
この底面1211は、当該最も膨出した部分において、水流方向に対して垂直ないし鋭角に形成されること好ましい。流速により大きな変化を与えてそこに負圧を発生できるからである。
【0020】
底面1211に凹部1220が形成される。スリット1300を超えて底面側に流れ込んだ水流が更にこの凹部1220に吸い込まれるので、底面1211における負圧発生が促進される。
負圧を均等に発生させるため、この凹部1220はスリット1300の中心、即ち本体部1100の中心軸から放射状にかつ均等に配置されることが好ましい。
この凹部1220は本体部1100まで延設されている。本体部1100に存在する凹部1220の部分は、使用時に空隙となる。凹部1220に流れ込もうとする水は、既に凹部1220内に存在した水と干渉することとなるが、その干渉が、この空隙により、緩和される。よって、負圧形成効果が増大する。
この例では各スリット1300は同幅に形成されているが、幅に変化を持たせることができる。ここにいう幅の変化とは、スリットそれぞれの幅を異ならせる意味と、一つのスリットにおいて幅に変化をもたせる意味とがある。
【0021】
柱部1210はその底面1211から上流側に向けてその断面積が漸減する。そして、その上流側面で断面積はゼロになる。これにより、水流に対する柱部の抵抗を小さくできる。また、かかる構造を採用することにより、型成形時に型の引抜きが何ら抵抗なく行える。
この例の柱部1210は、スリット1300の各縁1310で規定される面を底面1211とした錐形状である。柱部1210の稜線1215は次のように規定される。即ち、隣り合うスリット1300の縁1310、1310の交点とこの縁1310、1310の仮想二等分面が交差する本体部1100の内周面の最上流点とを結ぶ線である。
【0022】
この例では、柱部1210の底面1211と本体部1100の下流側面1113とが一致し、かつ柱部1210の上流端と本体部1100の上流側面1115とが一致している。両者は必ずしも一致する必要はない。例えば、水流方向において本体部1100の長さを柱部1210のそれより長くすることができる。
この例では、各柱部1210は同一形状であるが、柱部の形状に変化を持たせることもできる。
【0023】
図3図5に既述の気泡発生装置1000を組み込んだ気泡発生ユニット2000の例を示す。
この気泡発生ユニット2000は気泡発生装置1000と筐体部2100とから構成される。
筐体部2100は、上流側片2200と下流側片2300とからなる。両者を連結した状態で、図4に示すように、筐体部2100の内周にオリフィス2110が形成される。
【0024】
上流側片2200と下流側片2300の各対向面には収納凹部2210、2310が形成される。この収納凹部2210、2310で形成される空間に気泡発生装置1000の本体部1100が収納される。
オリフィス2110の内周面の径と本体部1100の内周面の径とは同じである。水流抵抗をできる限り小さくするためである。
気泡発生部1200の底面1211に形成された凹部1220は筐体部2100の中に食い込むかたちとなる。筐体部2100に食い込んだ部分には空気溜り(空隙)が形成される。この空気溜りにより、水流が凹部1220へ吸い込まれやすくなり、負圧の発生が促進される。
【0025】
気泡発生ユニット2000の用途に応じて筐体部の構造は任意に設計される。上流側片2200、下流側片2300及び気泡発生装置1000の接合は接着剤若しくは高周波融着により液密になされる。これらの部材は同一若しくは同種の樹脂材料で形成されることが好ましい。
この例では上流側片2200、下流側片2300及び気泡発生装置1000を別体としているが、気泡発生装置1000と上流側片2200又は下流側片2300とを一体とすることもできる。凹部1220を筐体部2100に食い込ませるには、気泡発生措置1000と上流側片2200とを一体とすることが好ましい。
【0026】
図6図8には、2つの気泡発生装置1000を軸方向に連結させた気泡発生ユニット3000を示す。なお、図1~5の例と同一の要素には同一の符号を付してその説明を部分的に省略する。3つ以上の気泡発生装置1000の連結も可能である。
この気泡発生ユニット3000は2つの気泡発生装置1000と筐体部3100とから構成される。
筐体部3100は、上流側片3200と下流側片3300とからなる。両者を連結した状態で、図8に示すように、筐体部3100の内周にオリフィス3110が形成される。
上流側片3200と下流側片3300の各対向面には収納凹部3210、3310が形成される。この収納凹部3210、3310で形成される空間に気泡発生装置1000の本体部1100が収納される。
【0027】
図9及び図10に他の気泡発生装置1500の例を示す。図1及び図2の例と同一の要素には同一付符号を付してその説明を部分的に省略する。
この気泡発生装置1500はスリット1300を8本としている。スリット1300の本数が増加しため、8本の柱部1710は幅狭となる。また、この例では柱部1710の稜線1715はかしいでいる。即ち、隣り合うスリットの縁1310、1310の二等分面より一方の縁1310側へ変位している。これにより、気泡発生部170の水流に変化(渦流)を与えて、その中をより円滑に通過できるようにする。
この気泡発生装置1500は図4に示す筐体部2100へ挿着可能である。
【0028】
図11及び図12に、2つの気泡発生装置1500を連結する例を示す。3つ以上の気泡発生装置を連結することも可能である。この例では気泡発生装置1500の本体部1100の上下面に連結用の突起1501と係合凹部1503とが設けられている。
このようにして組み付けた気泡発生装置1500、1500は図8に示す筐体部3100へ挿着可能である。
【0029】
以上、実施の形態1で説明してきた気泡発生ユニットは例えばシャワーヘッドに組み込むことを想定して設計されている。従って、0.15~0.75MPaの水圧の水を気泡発生装置1000、1500へ1度通すだけで十分な量の微小気泡が発生する。
【0030】
以下、実施例の説明をする。
図4に示す気泡発生ユニット2000、即ち1つの気泡発生装置1000を用いるもの、を図示しない市販のホースで家庭用の水道へつないだ。蛇口を全開して約0.5MPaの水道水を供給し、気泡発生ユニット2000から放出された水をバケツにためる。この水を75mlのガラス製の瓶に詰めて蓋をして、室内に放置した。約12時間後の気泡の量を測定した。同様にして、図12に示す2連の気泡発生装置1500、1500を用いたときの結果も測定した。それぞれ、表1に示す。なお、測定は株式会社島津製作所のナノ粒子径分布測定装置(SALD-7500nanao)で行った。用いた気泡発生装置1000のスリット1300の幅は0.4mm、本体部1100の内周面の径は6mm、本体部1100の長さは4mmである。同じく、気泡発生装置1500のスリット1300の幅は0.5mm、本体部1100の内周面の径は8mm、本体部1100の長さは4mmである。
【0031】
【表1】
表1の結果より、十分な量の所謂ナノバブルの生成が認められる。
水道水のワンパスで上記量のナノバブルを発生させるこの発明の気泡発生ユニットの用途は広い。
【0032】
図4に示す気泡発生ユニットへ供給する水道水に酸素を供給したときの溶存酸素量(mg/L)は次の通りである。
(A)酸素供給量 0.3L/分:31.4mg/L
(B)酸素供給量 0.5L/分:33.5mg/L
(C)酸素供給量 1.0L/分:34.88g/L
酸素の供給は酸素ボンベより気泡発生ユニットの上流側へバブリングにより行った。なお、水道水自体の酸素溶存量は7.6mg/L(26.5℃)であった。
実験(C)で得られた水の酸素溶存量変化は図13に示す通りであった。
酸素溶存量はハンナインスツルメンツジャパン社製 HI98193を用いて、ポーラロ電極法により行った。
【0033】
(実施の形態 2)
以下、この発明の実施の形態2を説明する。
この発明の実施の形態2において、この発明の第1のモデルは次のように規定される。即ち、
(1) 筒状の本体部と該本体内に配置される気泡発生部とを備える気泡発生装置であって、
前記気泡発生部は、
水流方向に沿って縮径する水流孔を備える基部と、
該基部と前記本体部との内周面とを連結する複数の柱部と、を備え、
該柱部は前記水流方向の裏側に凹部を備える、気泡発生装置。
このように規定される第1のモデルの気泡発生装置によれば、本体部内を流れる水流のうち気泡発生部の基部を通過するものは、水流方向に沿って縮径する水流孔において流速が増速し、水流孔の出口から吐出されたときに大きな負圧が生じる。また、柱部の裏側に凹部が形成されているため、柱部の間を通過した水流がその裏側に回り込んだとき当該凹部に吸い込まれて流速が増してそこに負圧が発生する。
このようにして気泡発生部の直ぐ下流に複数の負圧域が形成され、その結果、負圧域中に十分な量の微小な気泡が発生する。
【0034】
上記において、筒状の本体部の貫通孔はオリフィス形状とすることが好ましい。本体部の両端にはパイプやホースに対する連結部を備えることが好ましい。かかる連結部としてねじ山を設けることができる。
この発明の気泡発生装置は、専ら水道の給水管から供給される水流(0.15MPa~0.75MPa)をそのまま、即ち何らポンプ等で加速することなく、本体部へ取り込んでその気泡発生部のすぐ下流の負圧域に微小気泡を発生させる。従って、本体部の貫通孔の口径は10~30mmとして、その外径も給水管の外形寸法と等しくすることが好ましい。
勿論、ポンプその他の装置により水道水を加速してこの発明の気泡発生装置へ導入することを何ら排除するものではないが、ポンプ等を省略して(即ち、簡易かつ安価に)ナノオーダの気泡を発生できることがこの発明の一つの効果である。
他の気泡発生装置や本発明の気泡発生装置により一旦気泡を発生させた水流を更に本発明の気泡発生装置に導入することを排除するものではない。
【0035】
この発明の第2のモデルは次のように規定される。即ち、第1のモデルに規定の気泡発生装置において、前記柱部は前記水流に対向する水流対向面が傾斜しており、前記凹部は前記柱部の裏面から前記水流方向に形成され、かつ前記凹部の壁面は前記水流対向面と平行である。
このように規定される第2のモデルの気泡発生装置によれば、柱部の水流対向面が傾斜しているので、水流の流れに変化(速度増加)を与えやすく、かつ凹部の壁面がこの水流対向面と平行にされているので、柱部の裏面に形成される凹部の深さ(水流と逆方向の長さ)を最大化できる。
また、かかる構成の柱部は、水流方向にアンダーカット部を作らないので、樹脂の型成形に適した形状となる。
【0036】
この発明の第3のモデルの発明は次のように規定される。即ち、第2のモデルに規定の気泡発生装置において、前記柱部の前記水流に沿った断面形状は前記水流に沿って拡径するV字状である。
このように規定される第3のモデルに規定の気泡発生装置によれば、水流に沿って拡径するV字状の柱部が複数存在するので、相対向する柱部の斜面と斜面との間隔(ここが、水流加速孔(第14のモデル)となる)は水流方向に沿って縮径され、その結果、柱部の間の水流が増速されてキャビテーション効果が増大する。
本発明者らの検討によれば、給水管からの水道水をそのまま導入するときには、第3のモデルにおいて、柱部の数は3~5本が好ましく、またV字の挟角は15~35度が好ましい(第4のモデル)。ここに、柱部の数が3本未満であると、柱部と柱部との間が広くなりすぎて、水道からの水流を十分に加速できない。また、柱部の数が5本を超えると、水道からの水流に対する柱部の抵抗が大きくなりすぎて、それぞれ好ましくない。V字の挟角が15度未満になると、柱部が細くなりすぎて、柱部と柱部との間隔が十分に縮径されずその間を流れる水流を充分に加速できないおそれがある。また、V字の挟角が35度を超える、柱部が太くなりすぎて、水流に対する抵抗が不必要に増大する。
【0037】
この発明の第5のモデルは次のように規定される。即ち、第3又は第4のモデルに記載の気泡発生装置において、前記水流に対して前記基部の上流側端部に前記柱部のV字先端が位置し、前記基部の下流側端部に前記柱部のV字開口端が位置する。
このように規定される第5のモデルの気泡発生装置によれば、気泡発生部を構成する基部と柱部とが、水流方向に同じ長さとなる。これにより、気泡発生部の構成がコンパクトになって、その小型化を達成できる。また、基部の下流側端部と柱部の下流方端部とが、水流方向において、同じ位置にあるので、基部の出口に形成される負圧域と柱部の裏側に形成される負圧域とが可及的に近接する。その結果、キャビテーション効果の増大が得られる。負圧域が分離していると、それぞれの負圧域が周囲の影響を受けて各負圧域が不安定となるが、負圧域が近接していると、ときには負圧域が重なり合って拡大し、安定化すると考えられるからである。
【0038】
この発明の第6のモデルの発明は次のように規定される。即ち、第1~第5のモデルに規定の気泡発生装置のいずれかにおいて、前記複数の柱部は前記基部の周囲に均等に配置されて、前記水流孔の出口の中心から水流直交方向に伸びる仮想放射線上に前記各柱部の裏面における凹部の中心が位置する。
このように規定される第6のモデルの気泡発生装置によれば、基部の水流孔を中心として柱部の裏面の凹部の中心が均等に分配される。これにより、基部の水流孔の下流に形成される負圧域に対して各柱部の裏面に形成される負圧域が均等に配置され、もって各負圧域が安定する。
【0039】
この発明の第7のモデルの発明を次のように規定される。即ち、第1~6のモデルに規定の気泡発生装置のいずれかにおいて、前記基部の水流孔の中心線が前記筒状の本体部の中心線と一致する。
このように規定される第7のモデルに規定の気泡発生装置によれば、本体部の中心に基部が配置されるので、基部の周囲の水流の速度が一定となる。これにより、柱部の裏側に形成される負圧域が基部の周囲でより均一化され、基部の下流に形成される負圧域とあいまって、気泡発生部の下流側に形成される全負圧域が安定化する。
【0040】
この発明の第8のモデルの発明は次のように規定される。即ち、第1~7のモデルに規定の気泡発生装置のいずれかにおいて、前記筒状の本体部の外表面と前記柱部の凹部とを連通する通気孔が形成される。
このように規定される第8のモデルの気泡発生装置によれば、通気孔を介して外部から気体(酸素、二酸化炭素、窒素など)を強制的に供給することにより、供給した気体の微小気泡を形成可能となる。この場合、1つの柱部の凹部に対して通気孔が形成されればよい(第9のモデル)
【0041】
なお、空気の微小気泡を形成する際は、本体部の外表面側でこの通気孔を塞いでおくことが好ましい。
外表面で塞がれた通気孔の径を0.5~10mmとして、そこに空気溜まりを形成すると、微小気泡の生成効率が向上する。これは、柱部の裏面においては凹部へ流れ込む水流と凹部から排出される水流とが干渉し、そこに水流の振動が生じる。ここで、凹部が空気溜まりに連通していると、当該水流の振動が安定し更には増幅されると考えられる。振動も水に気泡を発生させるメカニズムの一つと考えられる。
【0042】
この発明の第10のモデルの発明は次のように規定される。即ち、第1~第9のモデルで規定の気泡発生装置のいずれかにおいて、前記本体部の内周面において、排出口と前記気泡発生部との間に、周方向の凸条が形成されている。
このように規定される第10のモデルの気泡発生装置によれば、本体部の内周面の凸条が、気泡発生部の下流に形成される負圧域に干渉し、そこでのキャビテーション効果を向上させることができる。
この凸条の高さ、幅、本数及び気泡発生部からの距離は任意に設計できる。
凸条は連続していても、断続的であってもよい。
【0043】
凸条としてねじ山を用いることもできる(第11のモデル)。本体部の内周面にねじ山を設けた場合、先端を螺刻したパイプを本体部へ差し込みこれと螺合することにより、気泡発生装置を容易に他の装置へ連結できる。この場合、差し込まれたパイプと気泡発生部との距離を調整することにより、微細気泡の発生を制御できることがある。
【0044】
この発明の第12のモデルの発明は次のように規定される。即ち、第1~第11のモデルに規定の気泡発生装置のいずれかにおいて、前記本体部は第1の貫通孔を備える上流側筒部と第2の貫通孔を備える下流側筒部とを備え、前記上流側筒部の下流側対向面において第1の貫通孔の周囲に前記気泡発生部より大径な第1の凹部が形成され、
前記本体部の一部は前記下流側筒部の第2の貫通孔へ気密に挿着され、該本体部の残部は前記第1の凹部へ挿入されてその先端部が前記第1の貫通孔に対向する。
このように規定される第12のモデルの気泡発生装置によれば、本体部を二分割し、そこに気泡発生部を挿入する構成とした。二分割された本体部の各部(上流側筒部、下流側筒部)は筒状の部材であるので、樹脂材料を用いて型成形(射出など)が可能となる。また、基部と柱部とからなる気泡発生部も同様に型成形が可能であるので、装置全体を樹脂製とすることができて製造コストが抑制される。
更にこのモデルでは、上流側筒部の下流側対向面に、気泡発生部より大径な第1の凹部が形成されているので、組み付けが容易になる。即ち、下流側筒部の第2の貫通孔へ気泡発生部の一部を液密に挿着する。その結果、気泡発生部の残部は下流側筒部から突出した状態となる。これに対し、上流側筒部の下流側対向面には気泡発生部より大径な第1の凹部が形成されているので、突出した気泡発生部の残部を上流側筒部の第1の凹部へ容易に収めることができる。
【0045】
この発明の第13のモデルの発明は次のように規定される。即ち、第12のモデルに規定の気泡発生装置において、前記下流側筒部にはその外表面と前記第2の貫通孔とを連通する孔が形成される。
このように規定される第13のモデルに規定の気泡発生装置によれば、外表面と第2の貫通孔とが孔でつながれて、第8のモデルで規定した通気孔が得られる。
下流側筒部を型成形する見地から、この孔は中子で形成することが好ましい。その場合、第2の貫通孔側より外表面側の孔径を大きくして、中子の離型性を確保することが好ましい。
【0046】
この発明の第14のモデルの発明は次のように規定される。即ち、筒状の本体部と該本体内に配置される気泡発生部とを備える気泡発生装置であって、
前記気泡発生部は、
本体部と同心的に配置される筒状の基部であって、その内周面が水流方向にそって縮径される基部と、
基部の外周面に複数形成され、水流方向に沿って縮径される水流加速孔と、
該水流加速孔を離隔する離隔壁であって、その水流方向裏面側に凹部が形成されている離隔壁と、
を備える気泡発生装置。
【0047】
このように規定される第14のモデルに規定の気泡発生装置によれば、本体部内を流れる水流のうち気泡発生部の基部を通過するものは、水流方向に沿って縮径する水流孔において流速が増速し、水流孔の出口から吐出されたときに大きな負圧が生じる。また、離隔壁の裏側に凹部が形成されているため、水流加速孔を通過した水流がその裏側に回り込んだとき当該凹部に吸い込まれて更に流速が増してそこに負圧が発生する。
このようにして気泡発生部の直ぐ下流に負圧域が形成され、その結果、この負圧域に十分な量の微小な気泡が発生する。
上記において、水流加速孔を規定する離隔壁の周壁は、第2のモデルで規定した斜面に限定されず、曲面(一次曲面、多次曲面)で形成することもできる。
本体部の半径方向(水流と垂直な方向)に、水流加速孔の幅が変化していてもよい。
【0048】
この発明では、気泡発生部の中心に水流孔を備えた基部を配し、この基部と本体部の貫通孔の内壁とを柱部で連結している。従来例で紹介した気泡発生装置では貫通孔の内壁からねじが突出して各ねじの先端はフリーの状態であった。この場合、ねじが片持ちはりの状態となり機械的に安定せず、耐久性の点に不安があった。これに対し、この発明では柱部の先端が基部に繋がれているので、気泡発生部が機械的に安定し、これに高い耐久性を付与できる。
【0049】
この発明で採用する柱部は、水流方向からみたとき、裏面に凹部を備えている。柱部の側面を通過した水流はその裏面に到達したとき凹部に吸い込まれるように回り込み、その速度が速くなって高いキャビテーション効果が得られる。
かかる柱部の例の横断面を図1図3に示す。図中→は水流を示す。
図14(A)に示す柱部10は、横断面の外郭が台形であり、台形の底辺に該当するその裏面14に凹部15を備える。即ち、この柱部10は平坦な頂部12と、一対の傾斜面13、13及び平坦な裏面14を備える。傾斜面13、13は水流方向にその間隔が漸増している。即ち、傾斜面13、13は水流方向に拡径している。凹部15は水流を引き込み、裏面14の下流側における水流を増速させる。かかる作用を奏するものであればその形状は特に限定されない。図14(A)の例では裏面14から頂部に向かって斜面13、13と平行な側壁部と、この側壁部を繋ぐ半円状底壁部とを備える。凹部15の深さも任意に設計できるが、凹部15の開口と深さの比を1:0.5~3とすることが好ましい。この例では、凹部15の開口部の中心とは裏面14の中心とを一致させているが、両者をずらすこともできる。
【0050】
また、図14(B)に示す柱部11のように複数の凹部16、16を備えることもできる。この例では、各凹部16は凹部15と相似形としたが、その形状は任意であり、各凹部の形状を異ならせることもできる。この例では各凹部16、16は裏面14において均等に分配されている。凹部16、16の容積に変化を持たせること、若しくは斜面13、13から凹部16、16までの距離に変化を与えることで、裏面14へ回り込む水流速に変化を与えられ、その変化の度合いを調整することでキャビティ効果の増大を図れる場合がある。
この凹部15、16は柱部10の軸方向(縦方向)に連続することが好ましいが、非連続であってもよい(以下に説明する他の柱部も同じ)。非連続の場合、柱部の裏面の一部に、好ましくは基部側に、形成することもできる。
図14(C)に他の例の柱部18を示す。なお、図14(A)と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。この例では、一方の傾斜面13’を水流と平行とした。凹部17は傾斜面13、13’とそれぞれ平行な側壁部とこの側壁部を繋ぐ半円状低壁部とを備える。
【0051】
図15(A)には他の例の柱部20を示す。なお、図14と同一の要素には同一の符号を付してその説明を部分的に省略する。この柱部20は断面の外郭が三角形(二等辺三角形)であり、その頂部が水流方向に対向している。三角形の底辺に該当する裏面14に凹部25を備える。図14(B)と同様に複数の凹部を形成できる。
斜面23、23の挟角αは10~35度とすることが好ましい。更に好ましくは20~35度であり、更に更に好ましくは25度とする。斜面23、23は水流方向に対して均等に開いている。即ち、頂部の二等分線が水流方向と一致している。
図15(B)に示す柱部21は横断面がV字形となる。即ち、斜面23、23に対して凹部25の側壁がそれぞれ平行となる。
図15(C)に示す柱部28では、斜面23、23’の長さが異なる。これにより、斜面23、23’からそれぞれ凹部25’へ流れ込む水流度に変化が生じ、凹部25の下流域におけるキャビテーション効果を増大できる場合がある。
【0052】
図16(A)には他の柱部30を示す。なお、図16(A)において図14(A)と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。この柱部30では、頂部32の外郭を円弧状とした。これにより、水流に対する柱部の抵抗が小さくなり、キャビテーション効果を増大できる。
水流に対する柱部の抵抗を更に小さくする見地から、図16(B)に示すように、柱部31の外周壁33を全体的に流線形とすることができる。
図16(C)の柱部38は弧状に形成されている。即ち、その外周壁34が半円形であり、凹部35の周壁は当該外周壁34と同心の半円形である。
図16(D)の例では、柱部38をその周方向に回転させている。これにより、凹部35へ流れ込む水流の速度が、図16(D)の上下方向において異なることとなり、凹部35の下流域におけるキャビテーション効果を増大できる場合がある。
【0053】
図16(D)に示すように柱部を水流に対して傾けることの効果について以下に説明する。
図17(A)は横断面が半球状の柱部を水流に対して正対させたとき、柱部の下流の圧力分布を示す。同様に、図17(B)は柱部を傾けたときの圧力分布を示す。図17(B)から明らかなように、柱部を傾けたときに負圧域が拡大している。
そして、図16(D)に記載の柱部38や図14(C)に記載の柱部28においても同様の効果が奏されると考えられる。
【0054】
図15(B)の柱部21を採用した気泡発生装置100の例を図18に示す。この気泡発生装置100は本体部110と気泡発生部130とを備える。
本体部110は筒状であって、上流側筒部111と下流側筒部121とを備える。上流側筒部111の貫通孔(第1の貫通孔)113は開口端から中央に向けて漸次縮径しており、縮径した部分の径は下流側筒部121の貫通孔(第2の貫通孔)123と同じ径である。
気泡発生部130は基部131と柱部21を備える。基部131は筒状の部材であってその内周径は水流方向に沿って縮径して水流孔133を形成している。基部131の中心線は本体部110の中心線と一致している。この例では、水流孔133が一つであるが、複数の水流孔133を設けることもできる。
基部131の外周面には上下及び左右方向に(即ち均等な間隔をあけて)、図15(B)に示すV字形の柱部21が配置され、その先端部分が上流側筒部111内へ埋め込まれている。柱部21の凹部25が上流側筒部111内に埋め込まれた結果、この上流側筒部111内に空隙(空気たまり)125が形成される。
隣接する柱部21、21、気泡発生部131の外周面及び本体部121の内周面により形成される孔(水流加速孔135)は、柱部21の側面にそって上流側から下流側にむけてその断面積が漸次小さくなり、水流が加速される。
このように構成される気泡発生装置100では、基部130の水流孔133の下流と柱部21の凹部25の下流に負圧域が形成され、ここに微細な気泡が発生する。
【0055】
図19には他の例の気泡発生装置200を示す。なお、図19において図18と同一構成の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この気泡発生装置200は筒状の本体部110と気泡発生部220とを備え、この気泡発生部220は柱部21を本体部110の貫通孔内へ懸架した構成である。
このように構成された気泡発生装置200では、柱部21の裏面に凹部25が形成されているので、柱部21の間を通過した水流が柱部21に裏面へ回り込むとき、凹部25に吸い込まれてその流速が増大し、その結果大きな負圧が形成される。これにより、柱部21の下流に負圧域が形成されそこで微小気泡が形成される。
【0056】
図20に他の例の気泡発生装置300を示す。なお、図20において図19と同一構成の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この気泡発生装置300は筒状の本体部110と気泡発生部320とを備える。柱部21を格子状に配して気泡発生部320が構成されている。
この気泡発生装置300では、図19の例と同様に柱部21の下流に負圧域が形成されて、そこに微小気泡が生成される。
図19及び図20の例では図15(B)に示したV字形横断面形状の柱部21を採用したが、図14図17に示した他の構造の柱部を採用することも可能である。
これらの柱部は、また、従来用いられていた片持ちはりに支持され、その自由端が対向されている構成とすることもできる。
【0057】
次に、この発明の実施例について説明する。
図21にこの実施例の気泡発生装置400の構造を示す。
実施例の気泡発生装置400は本体部410と気泡発生部430とを備えてなる。
本体部400は上流側筒部411と下流側筒部421とに分割され、両者は突き当り面で接着されている。
上流側筒部411は基体部415と結合部416とを備え、基体部415の下流側対向面418が下流側筒部421の上流側対向面428に接着される。下流側対向面418には第1の貫通孔413の周囲に第1の凹部414が形成されている。結合部416の外周にはねじ山が螺設され、専ら給水管へ連結可能とする。
【0058】
下流側筒部421は基体部425と結合部426を備える。この基体部425の径は上流側筒部411の基体部415と同じ径とする。結合部426の外周にはねじ山が螺設され、配水管等への連結を容易にしている。
下流側筒部421の第2の貫通孔423は、上流側から気泡発生部受入れ部4231、気泡発生部規制部4232、及び排出部4233を備える。気泡発生部受入れ部4231の内径寸法は気泡発生部430の外形寸法と同じであり、もって気泡発生部430が当該受入れ部4231へ締り嵌めの関係で液密に挿入される。気泡発生部規制部4232の内径寸法は気泡発生部430の外径寸法よりわずかに小さく、もって気泡発生部430に対するストッパの役目をしている。排出部4233の内径は気泡発生部受入れ部4231の内径より大きく、その内周にねじ山427が螺設されている。先端にねじ山を有するパイプを排出部4233内へ挿入しねじ山427へ螺合することができる。この場合、パイプの先端の位置を調節することにより、気泡発生部430の下流の容積や形状を調節できる。かかる容積や形状を調節することによりキャビテーション効果を増大できる場合がある。パイプを挿入しない場合においても、気泡発生部430の下流の水流にねじ山427が干渉し、キャビテーション効果に影響を与えてこれを増大させる場合がある。
下流側筒部421の基体部425の外周面と第2の貫通孔423の気泡発生部受入れ部4231との間に通気孔422が形成されている。この通気孔422は第2の貫通孔423側から外周面側に向けて漸次大径化されている。この例では通気孔422は外周面において蓋429により閉じられている。
【0059】
気泡発生部430の構成を図21図24に示す。
この気泡発生部430は筒状の基部431と該基部431の外周に均等に配置された柱部521とを備えてなる。
基部431にはテーパ状に縮径する流水孔433が形成されている。
柱部521は、図23に示す通り、平面視がV字形である。柱部521の斜面の挟角α1は約25度であり、凹部525の周壁の挟角α2は約20度とした。これらの挟角を同じ角度とすることができる。柱部521の頂部は基部431の上流側端部と一致し、柱部521の底面524は基部431の下流側端部と一致している。
4つ柱部521は同じ寸法であり、基部431の周囲に均等に分配される。これにより、柱部521の裏面の凹部525の中心が基部431の流水孔433の出口と同じ位置(水流方向において)になり、かつその周りに均等に分配される。
一つの柱部521の凹部525に通気孔422が連通する。
【0060】
このように構成される気泡発生措置400の各部A~Iにおける圧力のシミュレーション結果は次の通りであった。
A:0.486MPa
B:0.408MPa
C:0.004MPa
D:0.032MPa
E:0.051MPa
F:0.006MPa
G:0.008MPa
H:0.004MPa
I:0.004MPa
以上より、気泡発生部430の下流において広い範囲で負圧域が形成されていることがわかる。この負圧域では供給された水道水が約1/1000まで減圧されるので、強いキャビテーション効果が発揮される。
【0061】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0062】
以下の事項を開示する。
(A)
管状の本体部内へ柱部を突出させて、前記本体部内を通過する水流中に微小な気泡を発生させる気泡発生部を備える気泡発生装置であって、
前記柱部は前記水流に正対する水流対向面と該水流対向面の裏側の負圧形成面とを備え、前記負圧形成面は凹部を有する、
気泡発生装置。
(B)
管状の本体部内へ柱部を突出させて、前記本体部内を通過する水流中に微小な気泡を発生させる気泡発生部を備える気泡発生装置であって、
前記柱部の軸線に垂直な横断面において、
前記水流対向面は弧をなし、
該弧の両端を結んだ弦が前記負圧形成面となり、前記弧が前記水流の流れに対して傾斜している気泡発生装置。
(C)管状の本体部内へ柱部を突出させて、前記本体部内を通過する水流中に微小な気泡を発生させる気泡発生部を備える気泡発生装置であって、
前記柱部は前記水流に正対する水流対向面と該水流対向面の裏側の負圧形成面とを備え、前記負圧形成面の一方の縁が他方の縁より上流側に位置する、気泡発生装置。
(1)
筒状の本体部と該本体内に配置される気泡発生部とを備える気泡発生装置であって、
水流方向に沿って縮径する水流孔を備える基部と、
該基部と前記本体部との内周面とを連結する複数の柱部と、を備え、
該柱部は前記水流方向の裏側に凹部を備える、気泡発生装置。
(2)
前記柱部は前記水流に対向する水流対向面が傾斜しており、前記凹部は前記柱部の裏面から前記水流方向に形成され、かつ前記凹部の壁面は前記水流対向面と平行である、(1)に記載の気泡発生装置。
(3)
前記柱部の前記水流に沿った断面形状は前記水流に沿って拡径するV字状である、(2)に記載の気泡発生装置。
(4)
前記柱部は前記基部の周囲に3~5本形成され、前記V字の挟角度は15~35度である、(3)に記載の気泡発生装置。
(5)
前記水流に対して前記基部の上流側端部に前記柱部のV字先端が位置し、前記基部の下流側端部に前記柱部のV字開口端が位置する、(3)又は(4)に記載の気泡発生装置。
(6)
前記複数の柱部は前記基部の周囲に均等に配置されて、前記水流孔の出口の中心から水流直交方向に伸びる仮想放射線上に前記各柱部の裏面における凹部の中心が位置する、請求項(1)~(5)のいずれかに記載の気泡発生装置。
(7)
前記基部の水流孔の中心線が前記筒状の本体部の中心線と一致する、(1)~(6)の何れかに記載の気泡発生装置。
(8)
前記筒状の本体部の外表面と前記柱部の凹部とを連通する通気孔が形成される、(1)~(7)のいずれかに記載の気泡発生装置。
(9)
前記複数の柱部のうちの1つ柱部の凹部と前記本体部の外表面との間に通気孔が形成される、(8)のいずれかに記載の気泡発生装置。
(10)
前記本体部の内周面において、該本体部の排出口と前記気泡発生部との間に、周方向の凸条が形成されている、(1)~(9)のいずれかに記載の気泡発生装置。
(11)
前記本体部の内周面において、該本体部の排出口と前記気泡発生部との間に、ねじ山が形成されている、(10)に記載の気泡発生装置。
(12)
前記本体部は第1の貫通孔を備える上流側筒部と第2の貫通孔を備える下流側筒部とを備え、前記上流側筒部の下流側対向面において第1の貫通孔の周囲に前記気泡発生部より大径な第1の凹部が形成され、
前記本体部の一部は前記下流側筒部の第2の貫通孔へ気密に挿着され、該本体部の残部は前記第1の凹部へ挿入されてその先端部が前記第1の貫通孔に対向する、(1)~(11)の何れかに記載の気泡発生措置。
(13)
前記下流側筒部にはその外表面と前記第2の貫通孔とを連通する孔が形成される、(12)に記載の気泡発生装置。
(14)
筒状の本体部と該本体内に配置される気泡発生部とを備える気泡発生装置であって、
前記気泡発生部は、
本体部と同心的に配置される筒状の基部であって、その内周面が水流方向にそって縮径される基部と、
基部の外周面に複数形成され、水流方向に沿って縮径される水流加速孔と、
該水流加速孔を離隔する離隔壁であって、その水流方向裏面側に凹部が形成されている離隔壁と、
を備える気泡発生装置。
(21)
筒状の本体部と該本体内に配置される気泡発生部とを備える気泡発生装置であって、
前記気泡発生部は、前記本体部の横断面において前記本体部内の一点を中心として放射状に伸びるスリットと、
前記本体部の内周面から膨出して該スリットの周縁を形成する柱部と、を備え、
前記柱部は前記スリットの周縁から上流側に向けて漸次その膨出量が減少し、その下流側面に凹部が形成される、
気泡発生装置。
(22)
前記中心は前記本体部の中心軸上に位置する、(21)に記載の気泡発生装置。
(23)
前記柱部は隣り合うスリットの各縁で規定される面を前記下流側面として上流側に向けてその断面積が漸減し、前記柱部は前記本体部の上流端でその断面積が実質的にゼロとなる、(21)又は(22)に記載の気泡発生装置。
(24)
前記柱部は隣り合う前記スリットの各縁で規定される面を底面とした錐形状であり、前記柱部の稜線は前記隣り合うスリットの各縁の交点と該各縁の仮想二等分面が交差する前記本体部の内周面の点とをつなぐ、(21)又は(22)に記載の気泡発生装置。
(25)
前記柱部の下流側面に形成される前記凹部は、前記中心から放射状に配置される、(21)に記載の気泡発生装置。
(26)
前記凹部は前記本体部の内周面を通過して該本体部の周壁に空隙を形成する、(21)~(25)のいずれかに記載の気泡発生装置。
(27)
(21)~(26)の何れかに記載の気泡発生装置の少なくとも1つと、オリフィスとを有してその小径部に前記気泡発生装置を収納する筐体部と、を備える気泡発生ユニットであって、
前記気泡発生装置の本体部が前記筐体部に埋設されて、前記柱部が前記オリフィスの小径部に表出する、気泡発生ユニット。
(28)
前記筐体部は前記小径部において半径方向に分割されており、分割片の間に前記気泡発生装置の本体部が挟持される、(27)に記載の気泡発生装置。
(29)
前記筐体部は前記小径部において半径方向に分割されており、分割片の一方と前記気泡発生措置とが一体成型される、(27)に記載の気泡発生装置。
(a)
筒状の本体部と該本体内に配置される気泡発生部とを備える気泡発生装置であって、
前記気泡発生部は、前記本体部の横断面において前記本体部内の一点を中心として放射状に前記本体部の内周まで伸びるスリットと、
前記本体部の内周面から膨出して該スリットの周縁を形成する柱部と、を備え、
前記柱部は上流側に向けて漸次その膨出量が減少する部分を有し、
前記スリットは前記気泡発生部において上流側から下流側まで連通し、かつ前記柱部の膨出量が減少する部分において上流側に向けて幅広になる、
気泡発生装置。
(b)
前記スリットは、前記柱部の下流側面において、最も幅が狭くかつ前記本体部の軸の垂直方向に同幅である、(a)に記載の気泡発生装置。
(c)
前記中心は前記本体部の中心軸上に位置する、(a)又は(b)に記載の気泡発生装置。
(d)
(a)~(c)の何れかに記載の気泡発生装置の少なくとも1つと、オリフィスとを有してその小径部に前記気泡発生装置を収納する筐体部と、を備える気泡発生ユニットであって、
前記気泡発生装置の本体部が前記筐体部に埋設されて、前記柱部が前記オリフィスの小径部に表出する、気泡発生ユニット。
(e)
前記筐体部は前記小径部において半径方向に分割されており、分割片の間に前記気泡発生装置の本体部が挟持される、(d)に記載の気泡発生ユニット。
(f)
前記筐体部は前記小径部において半径方向に分割されており、分割片の一方と前記気泡発生措置とが一体成型される、(d)に記載の気泡発生ユニット。
【符号の説明】
【0063】
1000,1500 気泡発生装置
1100 本体部
1200 気泡発生部
1210,1710 柱部
1215,1715 稜線
1220 凹部
1300 スリット
1310 スリットの縁部
2000,3000 気泡発生ユニット
2100、3100 筐体部
2110,3100 オリフィス
10,11,18,20,21,28,30,31,38,521 柱部
15,16,17,25,25’,35,525 凹部
100,200,300,400 気泡発生装置
110,410 本体部
130,220,320、430 気泡発生部
133,433 流水孔
111,411 上流側筒部
121,421 下流側筒部
422 通気孔
図1
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