(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066506
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】容器詰め炭酸飲料、容器詰め炭酸飲料の製造方法、および容器詰め炭酸飲料の噴出抑制方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20220421BHJP
【FI】
A23L2/00 T
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036001
(22)【出願日】2022-03-09
(62)【分割の表示】P 2018055784の分割
【原出願日】2018-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】金沢 稔子
(72)【発明者】
【氏名】豊島 明
(57)【要約】
【課題】炭酸飲料の噴出を抑制できる炭酸飲料を提供する。
【解決手段】炭酸飲料は、以下の香気成分(a)、(b)を含有し、香気成分(a)と香気成分(b)の質量比((a)/(b))が0.1以上、5以下である。(a)LogPが3以上であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。(b)LogPが0.5以上3未満であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の香気成分(a)、(b)を含有し、香気成分(a)と香気成分(b)の質量比((a)/(b))が0.1以上、5以下である、炭酸飲料。
(a)LogPが3以上であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
(b)LogPが0.5以上3未満であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
【請求項2】
香気成分(a)を5ppm以上含む、請求項1に記載の炭酸飲料。
【請求項3】
柑橘類香料を含む、請求項1又は2に記載の炭酸飲料。
【請求項4】
香気成分(a)が、シトラール、リモネン、ゲラニオール、ヌートカトン及びリナロールから選択される1種以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項5】
香気成分(b)が、ヘキサナール、α-テルピネオール、シス-3-ヘキサノール及びシス-3-ヘキサナールから選択される1種以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項6】
水、炭酸、香気成分(a)、(b)、消泡剤以外の成分を実質的に含まない、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項7】
実質的に果汁を含まない、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項8】
透明な飲料である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項9】
炭酸ガス圧(0℃、1気圧)が3.4ガスボリューム以上である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の炭酸飲料。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の炭酸飲料が容器に充填されている容器詰め炭酸飲料。
【請求項11】
以下の香気成分(a)、(b)を配合し、香気成分(a)と香気成分(b)の質量比((a)/(b))が0.1以上、5以下となるように調製する工程を有する、炭酸飲料の製造方法。
(a)LogPが3以上であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
(b)LogPが0.5以上3未満であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
【請求項12】
以下の香気成分(a)、(b)を配合し、香気成分(a)と香気成分(b)の質量比((a)/(b))が0.1以上、5以下となるように調製する工程を有する、炭酸飲料の噴出を抑制する方法。
(a)LogPが3以上であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
(b)LogPが0.5以上3未満であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸飲料、容器詰め炭酸飲料、炭酸飲料の製造方法、および炭酸飲料の噴出抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、一般的に、消費者が喫飲した際に飲料中の炭酸ガスによる独特の炭酸感を味わうことができる嗜好性飲料として知られている。
一方で、炭酸飲料は、炭酸ガスが過飽和状態で溶解しており、ペットボトルなどへの容器への充填時や消費者が開栓した際に、炭酸飲料が泡立ち、噴出する場合があった。そこで、例えば、特許文献1には、リモネン、リナロール、ゲラニオールおよびシトラールといった疎水性の香気成分を合計量で1ppm以上とし、これに、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤を併用することにより、ガス抜けや泡立ちを抑制する技術が開示されている。また、例えば、特許文献2には、3糖以上の多糖類を配合することによって、充填時における噴きこぼれを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-12016号公報
【特許文献2】特開2014-226073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、疎水性の香気成分に対し、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤を併用するものであり、香気成分そのものによる噴出抑制の作用に着目したものではなかった。本発明者らは、香気成分による噴出抑制の作用に関し鋭意検討を行った結果、香気成分の疎水性が高いと泡を引き起こしやすく、炭酸飲料の噴出を促進する一方で、疎水性が高い成分の割合を減らすと噴出を抑制させる傾向があることを知見した。そして、さらに検討を進めた結果、香気成分をLogPで分類するとともに、その含有比を制御することによって、炭酸飲料の噴き出しが効果的かつ安定的に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
以下の香気成分(a)、(b)を含有し、香気成分(a)と香気成分(b)の質量比((a)/(b))が0.1以上、5以下である、炭酸飲料が提供される。
(a)LogPが3以上であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
(b)LogPが0.5以上3未満であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
【0006】
本発明によれば、
上記の炭酸飲料が容器に充填されている容器詰め炭酸飲料が提供される。
【0007】
本発明によれば、
以下の香気成分(a)、(b)を配合し、香気成分(a)と香気成分(b)の質量比((a)/(b))が0.1以上、5以下となるように調製する工程を有する、炭酸飲料の製造方法が提供される。
(a)LogPが3以上であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
(b)LogPが0.5以上3未満であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
【0008】
本発明によれば、
以下の香気成分(a)、(b)を配合し、香気成分(a)と香気成分(b)の質量比((a)/(b))が0.1以上、5以下となるように調製する工程を有する、炭酸飲料の噴出を抑制する方法が提供される。
(a)LogPが3以上であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
(b)LogPが0.5以上3未満であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、炭酸飲料の噴出を抑制できる技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細を説明する。なお、比は単位をそろえたものである。
【0011】
[炭酸飲料]
本実施形態の炭酸飲料は、以下の香気成分(a)、(b)を含有し、香気成分(a)と香気成分(b)の質量比((a)/(b))が0.1以上、5以下である。
(a)LogPが3以上であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
(b)LogPが0.5以上3未満であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
すなわち、香気成分(a)は、香気成分(b)よりも疎水性が高いものであり、言い換えると、香気成分(b)は香気成分(a)よりも親水性が高いものである。ここで、本発明によれば、香気成分(a)と香気成分(b)の質量比((a)/(b))を0.1以上、5以下とすることで、炭酸飲料の噴き出しを効果的に抑制できる。かかるメカニズムの詳細は明らかではないが、香気成分が有する疎水性が泡の核となり気泡を生じやすくなる一方で、香気成分が有する親水性によって泡の核が生じにくくなると考えられる。
なお、本実施形態において、炭酸飲料の噴き出しとは、炭酸飲料の容器充填時における噴きこぼれや炭酸飲料の開栓時の噴き出しである。また、本実施形態の炭酸飲料によれば、噴き出しによる泡立ちを抑制するとともに、発生した泡を素早く消滅させることで、噴き出しを効果的に抑制できる。
【0012】
上記の(a)/(b)は、炭酸飲料の嗜好性を良好にする観点から、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.20以上である。中でも、柑橘類香料を用いた場合において、柑橘風味と飲みごたえを良好にできる。
上記の(a)/(b)は、噴き出しを安定的に抑制する観点から、好ましくは4.7以下、より好ましくは4.5以下である。
【0013】
LogPは、例えば、Webサイト上のデータベース「ChemSpider」(URL:http://www.chemspider.com/)に基づき算出することができる。
【0014】
香気成分(a)は、LogPが3以上であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されているものである。LogPが3以上の香気成分としては、上記の「ChemSpider」で検出されるLogPが3以上の香気成分が挙げられるが、具体的には、例えば、シトラール、リモネン、ヌートカトン、ゲラニオール、及びリナロールが挙げられる。これらの中でも、シトラール、リモネン、ヌートカトン、及びリナロールから選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0015】
香気成分(a)の合計量は、炭酸飲料中に、好ましくは1ppm以上、より好ましくは3ppm以上、さらに好ましくは5ppm以上であり、一方で、好ましくは25ppm以下、より好ましくは20ppm以下である。
【0016】
香気成分(b)は、LogPが0.5以上3未満であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されているものである。LogPが0.5以上3未満の香気成分としては、上記の「ChemSpider」で検出されるLogPが0.5以上3未満の香気成分が挙げられるが、具体的には、例えば、ヘキサナール、α-テルピネオール、シス-3-ヘキサノール及びシス-3-ヘキサナールが挙げられる。これらの中でも、ヘキサナール、α-テルピネオール、シス-3-ヘキサノール及びシス-3-ヘキサナールから選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0017】
香気成分(b)の合計量は、炭酸飲料中に、好ましくは1ppm以上、より好ましくは3ppm以上含まれ、一方で、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下である。
【0018】
香気成分(a)、香気成分(b)は、以下の香料に含まれる成分であってもよい。
香料としては、天然香料または合成香料であって、例えば、ヨーグルトフレーバー、フルーツフレーバー、植物フレーバー、またはこれらの混合物を用いることができる。フルーツフレーバーにおける「フルーツ」としては、例えば、レモン、オレンジ、蜜柑、グレープフルーツ、シークヮーサー、柚およびライム等の柑橘類、苺、桃、葡萄、林檎、パイナップル、マンゴー、メロン、およびバナナ等が挙げられる。これら香料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
炭酸飲料の噴き出し抑制効果を効果的に得る観点から、柑橘類香料を用いることが好ましい。なお、柑橘類とは、ミカン科ミカン亜科ミカン連(カンキツ連)のミカン属等の数属の植物の総称である。柑橘類香料とは、柑橘類に含まれる香気成分を含むもの、および柑橘類を感じさせる香りを呈する香料である。
【0019】
また、本実施形態において、炭酸飲料中の香気成分の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS、アジレント・テクノロジー社製、7890GC/5975MSD)を用いた固相マイクロ抽出法(SPME)法により定量することができる。
定量には絶対検量線法を用いた。なお、上記測定サンプルについて3サンプルずつ準備し、その定量結果の平均値を測定結果とすることができる。準備した測定サンプルを含む20mLバイアル瓶を、50℃で10分間の加熱処理を施した後、当該バイアル瓶の気相部分にシグマアルドリッチ社製のSPMEファイバー(DVB/CAR/PDMS)を挿入し、5分間、揮発成分を捕集した。このSPMEファイバーをGC/MSに設置し、300秒間焼成することにより、捕集した揮発成分を脱離することができる。
【0020】
炭酸飲料は、実質的に果汁を含まないことが好ましい。これにより、炭酸飲料の泡立ちを低減させ、噴き出しをより効果的に抑制できる。
【0021】
また、炭酸飲料は、透明な飲料であることが好ましい。本実施形態において、透明とは、飲料中に浮遊物、沈殿物といった不溶物が観察されないことを意味する。具体的には、波長720nmにおける吸光度が、好ましくは0.014以下であり、より好ましくは0.012以下であり、さらに好ましくは0.009以下であり、ことさらに好ましくは0.006以下である。
なお、波長720nmにおける吸光度は、例えば、紫外可視分光光度計(UV-1600(株式会社島津製作所製))を用いて、光路長1cmの石英セルに飲料を入れて測定することができる。
【0022】
本実施形態の炭酸飲料は、炭酸ガス圧(0℃、1気圧)が3.4ガスボリューム以上であることが好ましく、3.5ガスボリューム以上であることがより好ましく、3.6ガスボリューム以上であることがさらに好ましい。
一方、炭酸飲料の嗜好性を保持し、ガス抜けを抑制する観点から、炭酸ガス圧(0℃、1気圧)が6.5ガスボリューム以下であることが好ましく、5.5ガスボリューム以下であることがより好ましい。
【0023】
炭酸ガスの圧入方法は、公知の方法を用いることができる。また、炭酸飲料中のガスボリュームは公知の方法で測定することができる。例えば、市販の測定器(京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500A)を用いて測定することができる。
なお、ガスボリューム(炭酸ガス圧力)は、標準状態(1気圧、0℃)において、炭酸飲料全体の体積に対して、炭酸飲料に溶けている炭酸ガスの体積を表したものである。
【0024】
また、炭酸飲料のブリックス値は、炭酸飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは10°以下であり、より好ましくは6°以下であり、さらに好ましくは5°以下であり、炭酸の噴出し抑制効果をより顕著に得る観点から、もっとも好ましくは0°である。
なお、「ブリックス値」は、例えば、糖用屈折計示度「RX-5000α」株式会社アタゴ製を用い、液温20℃で測定することができる。
【0025】
また、炭酸飲料の酸度は、炭酸飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、0.05質量%以上0.3質量%以下であり、さらに好ましくは、0.1質量%以上0.2質量%以下である。一方、炭酸の噴出し抑制効果をより顕著に得る観点から、炭酸飲料の酸度は、好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、最も好ましくは、0質量%である。
なお、「酸度」とは、炭酸飲料中に含まれている酸の量をクエン酸の相当量として換算した値、すなわち、クエン酸酸度(質量%)として表した数値を指す。
【0026】
また、本実施形態の炭酸飲料は、通常の飲料に用いられる甘味料、酸味料、香料(フレーバー)、果汁、酸化防止剤、塩類などのミネラル、苦味料、消泡剤、栄養強化剤、pH調整剤などを含んでもよい。
【0027】
甘味料は、甘みを付与し嗜好性を向上させるために用いられる。
甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、砂糖(ショ糖やグラニュー糖を含む)、果糖、高果糖液糖、ぶどう糖、オリゴ糖、乳糖、はちみつ、水飴(麦芽糖)、糖アルコール、高甘味度甘味料等が挙げられる。
高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、キシリトール、グリチルリチン酸二ナトリウム、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ネオテーム、アラビノース、カンゾウ抽出物、キシロース、ステビア、タウマチン、ラカンカ抽出物、ラムノース及びリボースが挙げられる。
これら甘味料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を用いてもよい。
【0028】
酸味料は、酸味を付与し嗜好性を向上させるために用いられる。
酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、コハク酸、氷酢酸、フマル酸、フィチン酸、リン酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
本発明に係る炭酸飲料は、たとえば、サイダー飲料等の非着色飲料、ラムネ飲料、果汁入り飲料、着色炭酸飲料(たとえば、コーラ飲料やメロンソーダ等)、ノンアルコールビール飲料等の各種炭酸ガスを含む飲料、または、ビール、発泡酒、チューハイ、カクテル等のアルコール含有炭酸飲料であってもよい。
また、本発明に係る炭酸飲料は、上記の香気成分(a)、(b)、および任意の消泡剤以外の成分を実質的に含まない炭酸飲料であることが好ましい。すなわち、甘味料や酸味料などを含まず、水、炭酸、香気成分(a)、(b)、および任意として消泡剤のみからなる炭酸飲料であることが好ましい。
【0030】
[容器詰め炭酸飲料]
本実施形態の炭酸飲料は、容器に詰められた状態の容器詰め炭酸飲料としてもよい。
容器としては、飲料を密封できる公知の容器を、適宜選択して用いることができる。例えば、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。さらに飲料を外観から観察し、透明性、色などを確認できる観点から、容器の色としては、透明であることが好ましく、無色透明であることがより好ましい。また、取扱性、流通性、携帯性等の観点から、ペットボトルであることが好ましい。
【0031】
[炭酸飲料の製造方法]
本実施形態の炭酸飲料の製造方法は、以下の香気成分(a)、(b)を配合し、香気成分(a)と香気成分(b)の質量比((a)/(b))が0.1以上、5以下となるように調製する工程を有する。
(a)LogPが3以上であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
(b)LogPが0.5以上3未満であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
【0032】
本実施形態の炭酸飲料の製造方法によれば、炭酸飲料の噴き出しを効果的に抑制することができる。また、炭酸飲料の容器充填時における噴き出しを抑制し、充填容量を精密に制御することができるとともに、すぐに泡が消滅するため取扱性が良好になる。
【0033】
[炭酸飲料の噴出抑制方法]
本実施形態の炭酸飲料の噴出を抑制する方法は、以下の香気成分(a)、(b)を配合し、香気成分(a)と香気成分(b)の質量比((a)/(b))が0.1以上、5以下となるように調製する工程を有する。
(a)LogPが3以上であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
(b)LogPが0.5以上3未満であって、当該炭酸飲料中に0.5ppm以上含有されている香気成分の合計量。
【0034】
かかる炭酸飲料の噴出を抑制する方法によれば、炭酸飲料の噴き出しを効果的に抑制することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0036】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
[実験1]
<実施例1~2、比較例1>
純水に対し、炭酸飲料中の配合比率が表1に示す通りになるように、香気成分を添加し、混合した。さらに、炭酸ガス量が3.8ガスボリューム(0℃、1気圧)となるように炭酸水(炭酸ガスを含有する純水)を調製し、500mlペットボトル容器詰め炭酸飲料を作製した。
得られた炭酸飲料について、以下の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
なお、実施例で得られた炭酸飲料は、いずれも良好な飲みごたえと柑橘風味が得られ、良好な嗜好性を有するものであった。
【0038】
<測定>
・炭酸ガス圧の測定
京都電子工業株式会社製「GVA-500b」を用いた。操作は20℃の室温で行った。
<評価-1>
・炭酸飲料を20℃に調整した。次に、1000mLメスシリンダー(高さ420mm、外径7cm・IWAKI社製)の口部より上方5cmの位置にロート(径150、三商社製)の先が来るよう設置し、当該容器詰め炭酸飲料を開栓後、500mlを6L/minの速度で、メスシリンダー中央部に液が落ちるよう注意して注ぎ、直後の液面の高さ(泡を含む)を計測した。
また、炭酸飲料を注ぎ終わってから泡が消えるまでにかかった時間(秒)を測定した。
【0039】
【0040】
評価-1の結果から、実施例1,2の炭酸飲料は、製造時や飲用開栓時の噴出が抑制されているといえた。
【0041】
[実験2]
<参考例1~10>
純水に対し、飲料中の配合比率が表2に示す通りになるように、香気成分を添加し、混合し、飲料(ガスなし)を作製した。
得られた飲料について、以下の測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0042】
<評価-2>
各飲料を遠沈管(IWAKI製 CTE33)に30ml入れ、液温を20℃に調整した。次に、遠沈管を振とう機にて5分間振とう(ヤマト科学株式会社「振とう機 SA300」、振とう速度:300rpm、振とう方向:垂直)した。振とう後、遠沈管内の液面に形成された泡の高さを、時間ごとに測定した。測定された高さから、泡の量(ml)を算出した。
なお、参考例4および6は、評価-1の実施例1及び2の飲料を炭酸ガスなしとしたものにそれぞれ相当する。したがって、参考例6で測定された泡の量4(ml)以下となるものは、実施例1および2と同様に、製造時や飲用開栓時の噴きこぼれが抑制されていると判断した。
【0043】
【0044】
表2の参考例1~4について、(a)/(b)は、参考例2~4は0.1以上、5以下の範囲内であるのに対し、参考例1は、当該範囲外となっている。参考例1と参考例2~4とを対比すると、参考例1は、参考例2~4よりも、泡の量が多く、泡切れが劣ることが理解される。
また、参考例5,6、参考例7,8、参考例9,10について、(a)/(b)は、参考例6,8,10は0.1以上、5以下の範囲内であるのに対し、参考例5,7,9は、当該範囲外となっている。参考例5,7,9と参考例6,8,10とをそれぞれ対比すると、参考例5,7,9はそれぞれ、参考例6,8,10よりも、泡の量が多く、泡切れが劣ることが理解される。
また、参考例1、参考例4、参考例6は、それぞれ、比較例1、実施例1、実施例2の炭酸ガスなし飲料に相当する。参考例4、参考例6の飲料は、炭酸ガスなしでも噴出抑制効果が得られる傾向が把握され、これに炭酸ガスを加えた実施例1,2において、炭酸飲料の噴出抑制効果が得られた。よって、参考例の結果からも、本発明は、(a)/(b)を0.1以上、5以下の範囲内とすることにより、炭酸飲料の噴出抑制効果が得られることが把握できた。