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  • 特開-二枚貝の養殖方法および養殖装置 図1
  • 特開-二枚貝の養殖方法および養殖装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006652
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】二枚貝の養殖方法および養殖装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/54 20170101AFI20220105BHJP
   A01K 63/06 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A01K61/54
A01K63/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109011
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】514031891
【氏名又は名称】株式会社二枚貝養殖研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 浩
(72)【発明者】
【氏名】鬼木 滉
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA22
2B104DA01
2B104DA11
2B104EC01
2B104EC20
(57)【要約】
【課題】二枚貝の産卵による体力の減耗や海水温の上昇によるストレスを軽減させ、二枚貝が斃死することを抑制し、安定した養殖を行うことができる養殖方法および養殖装置の提供。
【解決手段】二枚貝の養殖装置1は、海水が張られた飼育タンク11と、飼育タンク11内の海水の温度を測定する第1計測装置21と、二枚貝Sの体重および生殖腺重量を測定し、生殖細胞の発達度合を示す生殖腺発達指数を算出する第2計測装置22と、海水の温度を調整する冷却器12とを備え、冷却器12は、測定された海水の温度が二枚貝の養殖に適した基準温度を超えていた場合、海水の温度を基準温度以下に下げる海水温度調整手段121と、測定された海水の温度が基準温度以下であり、かつ算出された生殖腺発達指数が基準指数を超えていた場合、基準温度を下げる基準温度調整手段122とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水が張られた飼育タンクによる二枚貝の養殖方法であって、
前記飼育タンク内の海水の温度を第1計測装置により測定する第1測定工程と、
前記測定された海水の温度が二枚貝の養殖に適した基準温度を超えていた場合、冷却器により前記飼育タンク内の海水の温度を前記基準温度以下に下げる海水温度調整工程と、
第2計測装置により前記二枚貝の体重および生殖腺重量を測定し、生殖細胞の発達度合を示す生殖腺発達指数を算出する第2測定工程と、
前記測定された海水の温度が前記基準温度以下であり、かつ前記算出された生殖腺発達指数が基準指数を超えていた場合、前記基準温度を下げる基準温度調整工程と、
を含む二枚貝の養殖方法。
【請求項2】
前記生殖腺発達指数は、前記測定した二枚貝の生殖腺重量を体重で除算して算出したGSIを0~5の6段階に丸め込んだものである請求項1に記載の二枚貝の養殖方法。
【請求項3】
前記基準温度は5℃~28℃である請求項1または2に記載の二枚貝の養殖方法。
【請求項4】
前記基準指数は、生殖細胞が発達し、雌雄の判別ができることを示す段階3である請求項2に記載の二枚貝の養殖方法。
【請求項5】
海水が張られた飼育タンクと、
前記飼育タンク内の海水の温度を測定する第1計測装置と、
前記二枚貝の体重および生殖腺重量を測定し、生殖細胞の発達度合を示す生殖腺発達指数を算出する第2計測装置と、
前記海水の温度を調整する冷却器と、
を備え、前記冷却器は、前記測定された海水の温度が二枚貝の養殖に適した基準温度を超えていた場合、前記海水の温度を前記基準温度以下に下げる海水温度調整手段と、前記測定された海水の温度が前記基準温度以下であり、かつ前記算出された生殖腺発達指数が基準指数を超えていた場合、前記基準温度を下げる基準温度調整手段と、
を含む二枚貝の養殖装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アサリやシジミ、ハマグリなどの二枚貝の陸上養殖を行うための養殖方法および養殖装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、良好な養殖環境を提供することで、貝類等をより健康に、かつ生産的に養殖する養殖方法や養殖装置が提案されている。例えば、特許文献1には、水位が調整できる養殖領域に、底面から所定高さを有するように設置された養殖棚に、貝類等の被養殖生物を設け、前記養殖領域の水位を調整することにより、前記養殖棚の被養殖生物を水面から露出させる干出状態と、前記被養殖生物を水中に水没させた水中状態とに水位を制御することで、貝類等の被養殖生物の生残と成長に最適な水位を提供し、養殖期間の短縮化と高水温期の減耗の抑制を可能とする被養殖生物の養殖方法および養殖施設が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-177787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、天然の海域における二枚貝の養殖では、海水温が上昇する5月ごろから9月ごろにかけて、大量に二枚貝の斃死が起こることが問題となっている。そして、従来の方法や施設においても、二枚貝の産卵による体力の減耗や海水温の上昇によるストレス過多が要因となり、二枚貝の斃死が発生している。よって、本発明は、二枚貝の産卵による体力の減耗や海水温の上昇によるストレスを軽減させ、二枚貝が斃死することを抑制し、安定した養殖を行うことができる養殖方法や養殖装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の二枚貝の養殖方法は、海水が張られた飼育タンクによる二枚貝の養殖方法であって、前記飼育タンク内の海水の温度を第1計測装置により測定する第1測定工程と、前記測定された海水の温度が二枚貝の養殖に適した基準温度を超えていた場合、冷却器により前記飼育タンク内の海水の温度を前記基準温度以下に下げる海水温度調整工程と、第2計測装置により前記二枚貝の体重および生殖腺重量を測定し、生殖細胞の発達度合を示す生殖腺発達指数を算出する第2測定工程と、前記測定された海水の温度が前記基準温度以下であり、かつ前記算出された生殖腺発達指数が基準指数を超えていた場合、前記基準温度を下げる基準温度調整工程とを含む。
【0006】
また、本発明の二枚貝の養殖装置は、海水が張られた飼育タンクと、前記飼育タンク内の海水の温度を測定する第1計測装置と、前記二枚貝の体重および生殖腺重量を測定し、生殖細胞の発達度合を示す生殖腺発達指数を算出する第2計測装置と、前記海水の温度を調整する冷却器とを備え、前記冷却器は、前記測定された海水の温度が二枚貝の養殖に適した基準温度を超えていた場合、前記海水の温度を前記基準温度以下に下げる海水温度調整手段と、前記測定された海水の温度が前記基準温度以下であり、かつ前記算出された生殖腺発達指数が基準指数を超えていた場合、前記基準温度を下げる基準温度調整手段とを含む。
【0007】
これらの二枚貝の養殖方法および養殖装置によれば、二枚貝が養殖される飼育タンクの海水温度と、養殖される二枚貝の生殖腺発達指数が定期的に測定され、測定されたこれらの海水温度や生殖腺発達指数に応じて、常に適切な海水温度や基準温度を保つことができる。
【0008】
また、前記生殖腺発達指数は、前記測定した二枚貝の生殖腺重量を体重で除算して算出したGSIを0~5の6段階に丸め込んだものであることが望ましい。この段階化した生殖腺発達指数により、容易に二枚貝の生殖細胞の発達度合を把握することができる。
さらに、前記基準指数は、生殖細胞が発達し、雌雄の判別ができることを示す段階3であることが望ましい。測定された海水の温度が前記基準温度以下であり、かつ雌雄の判別ができる程度を超えて生殖細胞の発達が見られた場合に基準温度を下げることで、生殖細胞の発達を抑え得る基準温度を設定することができる。
【0009】
また、前記基準温度は5℃~28℃であることが望ましい。基準温度を、試験により得た二枚貝の養殖に最も適した温度である5℃~28℃とすることで、より二枚貝の産卵による体力の減耗を防いだり、ストレスを軽減させることができる。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明の二枚貝の養殖方法や養殖装置によれば、測定された海水温度や生殖腺発達指数に応じて常に適切な飼育タンクの海水温度や基準温度を保つことができるため、常に良好な養殖環境が提供され、二枚貝の産卵による体力の減耗の防止や二枚貝が受けるストレスの軽減を実現することができ、二枚貝が斃死することを抑制し、安定した養殖を行うことができる。
【0011】
(2)また、生殖腺発達指数を0~5の6段階とし、測定された海水の温度が前記基準温度以下であり、かつ生殖腺発達指数が段階3である場合に基準温度を下げる構成により、容易に二枚貝の生殖細胞の発達度合を把握することができ、常に生殖細胞の発達を抑え得る基準温度を設定することができるため、より安定した養殖を行うことができる。
【0012】
(3)また、基準温度を5℃~28℃とすることにより、二枚貝はより適した海水温度で養殖されるため、より安定した養殖を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る二枚貝の養殖装置の概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係る二枚貝の養殖方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0015】
[養殖装置]
図1は、本発明の実施の形態に係る養殖装置の概略構成図である。養殖装置1は、飼育タンク11と、海水の温度を測定する第1計測装置21と、二枚貝の体重および生殖腺重量を測定し、生殖細胞の発達度合を示す生殖腺発達指数を算出する第2計測装置22と、海水の温度を調整する冷却器12と、二枚貝の排泄物を除去するプロテインスキマー(図示せず)と、海水をろ過する海水ろ過装置(図示せず)を備える。
【0016】
飼育タンク11には、海水が張られ、砂状の基質Tが敷かれ、養殖篭(図示せず)が備えられる。そして、飼育タンク11に二枚貝Sが放たれて養殖される。海水は、天然海水または人工海水のどちらでもよい。海水の塩分濃度は、20‰~36‰が望ましい。また、海水の温度は、二枚貝の養殖に適した基準温度に設定される。
【0017】
二枚貝Sとは、アサリ、シジミ、ハマグリ、タイラギ、トリガイ、バカガイ、ミルガイ、マガキ、イワガキ、シカメガキ、イタボガキ、タイラギ、ヒラガキ、ヒオウギガイ、アズマニシキ、アカガイ、クマサルボウ、真珠貝(シロチョウガイ、クロチョウガイ、マベガイ)など二枚貝綱に分類される軟体動物である。基質Tは、二枚貝Sが潜ることが容易な砂状の物質であり、養殖される二枚貝Sの種類に応じて粒度、粒径、比重を変えてもよい。
【0018】
基準温度とは、二枚貝Sの養殖に適した海水の温度であり、二枚貝の種類によって異なる。例えば、オーストラリア北部や沖縄、奄美大島などの比較的高い水温で養殖されるシロチョウガイ、クロチョウガイ、マベガイなどの場合、基準温度は20℃~28℃が望ましい。また、北海道や東北など比較的低い水温で養殖されるホタテガイなどの場合、基準温度は5℃~19℃が望ましい。その他、アサリ、アカガイ、タイラギ、マガキ、イワガキ、アコヤガイなどの場合、基準温度は16℃~22℃が望ましい。
【0019】
また、養殖装置1の構成は、二枚貝Sの種類によって異なる。例えば、アサリやアカガイ、タイラギなどの潜砂性二枚貝類の場合、養殖装置1は基質Tや養殖篭を含む。一方、マガキやイワガキ、アコヤガイなどの付着性二枚貝の場合、養殖装置1は養殖篭を含み、基質Tは必要としない。
【0020】
第1計測装置21は、例えば、温度記録用のデータロガーである。第2計測装置22は、例えば、生物顕微鏡、実体顕微鏡、二枚貝の体重および生殖腺重量を測定する電子天秤および秤量皿、ピンセット、デジタルカメラなど複数の計測装置から構成される。生殖腺発達指数は、測定された二枚貝の体重および生殖腺重量に基づいて、手動または計算機により自動で算出される。冷却器12は、例えば、水槽用クーラーである。
【0021】
また、冷却器12は、測定された海水の温度が二枚貝の養殖に適した基準温度を超えていた場合、海水の温度を基準温度以下に下げる海水温度調整手段121と、測定された海水の温度が基準温度以下であり、かつ算出された生殖腺発達指数が基準指数を超えていた場合、基準温度を下げる基準温度調整手段122を備える。
【0022】
[生殖腺発達指数]
生殖腺発達指数とは、GSI(Gonado Somatic Index)であり、対象の生殖腺重量÷対象の体重×100(%)で算出される。また、生殖腺発達指数は、算出されたGSIを0~5の6段階で示してもよい。例えば、GSIが10%未満の場合は「0」、10%~19%の場合は「1」、20%~29%の場合は「2」、30%~39%の場合は「3」、40%~49%の場合は「4」、50%以上の場合は「5」としてもよい。
【0023】
なお、0~5の6段階は、それぞれ以下のように生殖細胞の発達度合を定義することができる。
0:生殖細胞は見られない
1:精原細胞、卵母細胞が観察できる
2:生殖細胞がかすかに認められる
3:生殖細胞が発達し、雌雄の判別ができる
4:生殖細胞が充満している
5:生殖細胞が膨張している
【0024】
[養殖方法]
図2は、本発明の実施の形態に係る二枚貝の養殖方法のフロー図である。図1,2に基づいて、本発明の実施の形態に係る二枚貝の養殖方法を説明する。
【0025】
始めに、飼育タンク11内の海水の基準温度および、生殖腺発達指数の基準指数を設定する(ステップS101)。本実施の形態において、当該基準温度は18℃とする。また、当該基準指数は前述の0~5の6段階のうち、雌雄の判別ができる程度に生殖細胞の発達が見られることを示す「3」とする。
【0026】
その後、定期的に、つまり一定時間が経過している場合(ステップS111)、海水の温度を第1計測装置21により測定する(ステップS112)。ステップS111およびS112を、第1測定工程と称す。本実施の形態において、当該一定時間は1時間とする。
【0027】
海水の温度が測定された場合、測定された海水の温度と基準温度を比較する(ステップS121)。そして、測定された海水の温度が、基準温度を超えている場合、冷却器12により海水の温度を基準温度以下に下げる(ステップS122)。ステップS121および122を、海水温度調整工程と称す。ここで、下げ幅は、0.1℃刻みや1℃刻みで下げてもよく、5℃や10℃、またはそれ以上の下げ幅としてもよい。具体的には、1時間毎に海水の温度を測定し、測定された海水の温度が19℃であった場合、冷却器12の海水温度調整手段121により海水の温度を18℃以下、またはそれ以下に下げる。
【0028】
次に、定期的に、つまり一定時間が経過している場合(ステップS211)、第2計測装置22により二枚貝Sの体重および生殖腺重量を測定し、生殖細胞の発達度合を示す生殖腺発達指数を算出する。(ステップS212)。ステップS211およびS212を、第2測定工程と称す。本実施の形態において、当該一定時間は1ヶ月とする。
【0029】
二枚貝の生殖腺発達指数が算出された場合、算出された二枚貝の生殖腺発達指数と基準指数を比較する(ステップS221)。そして、ステップ112で測定された海水の温度が基準温度以下であり、かつ算出された二枚貝の生殖腺発達指数が基準指数を超えている場合、基準温度を下げる(ステップS222)。ステップS221およびS222を、基準温度調整工程と称す。
【0030】
具体的には、1ヶ月毎に二枚貝の生殖腺発達指数を算出し、算出された二枚貝の生殖腺発達指数が6段階のうちの「4」であった場合、冷却器12の基準温度調整手段122により基準温度を17℃以下、またはそれ以下に下げる。ここで、下げ幅は、0.1℃刻みや1℃刻みで下げてもよく、5℃や10℃、またはそれ以上の下げ幅としてもよい。
【0031】
以上のように説明した二枚貝の養殖方法はあくまで一例であり、養殖の途中で海水の温度を測定する周期や二枚貝の生殖腺発達指数を算出する周期を適宜変更してもよい。
【0032】
[実験例]
以下に、本発明に係る養殖方法を用いたアサリの養殖試験の試験結果を示す。比較対象として、屋外タンク区で行った従来の養殖方法、および伊の浦地先海岸区(伊の浦実験場沖合)で行った従来の干潟養殖方法を用いた養殖試験の試験結果も併せて示す。本試験例の養殖期間は、2015年5月~2015年11月である。また、本試験例において、海水の温度測定は1時間周期、二枚貝の生殖腺発達指数の算出周期は1ヶ月毎(毎月1日)とした。なお、基準温度は18℃、基準指数は「3」とした。
【0033】
【表1】
表1は、本発明に係る養殖方法を用いたアサリの養殖試験の試験結果である。上記の表1に示すように、水温(海水の温度)を常に基準温度である18℃以下に管理している。また、1ヶ月毎に生殖腺発達指数を算出している。なお、本試験例においては生殖腺発達指数が基準指数である「3」を超える場合はなかったため、基準温度は下げていない。表1からも分かるように、本発明に係る養殖方法を用いた場合のアサリの生存率は11月の時点で88%と非常に高い値を示している。これにより、本発明により養殖中にアサリが受けるストレスが軽減されたり、産卵による体力の消耗が発生していないことが分かる。そして、アサリが斃死することが抑制され、安定した養殖を行うことができたことが分かる。
【0034】
【表2】
表2は、従来の陸上養殖方法を用いたアサリの養殖試験の試験結果である。上記の表2に示すように、水温が基準温度である18℃以下に管理されていないため、水温は5月から20℃を超え続けている。また、生殖腺発達指数も、水温が25℃を超えた6月には「5」と非常に高い値となっている。そして、備考欄に示されるように、7月にはアサリの産卵が、8月には産卵後のアサリの衰弱が確認されている。表2からも分かるように、従来の陸上養殖方法を用いた場合のアサリの生存率は、産卵後の8月には11%と非常に低い値を示しており、夏場にアサリの大量斃死が発生していることが分かる。
【0035】
【表3】
表3は、従来の干潟養殖方法を用いたアサリの養殖試験の試験結果である。上記の表3に示すように、水温が基準温度である18℃以下に管理されていないため、6月から20℃を超え続けている。また生殖腺発達指数も、水温が22℃を超えた6月には「5」と非常に高い値となっている。そして、備考欄に示されるように、7月にはアサリの産卵が、8月には産卵後のアサリの衰弱が確認されている。表3からも分かるように、従来の干潟養殖方法を用いた場合のアサリの生存率も、産卵後の8月には26%と非常に低い値を示しており、夏場にアサリの大量斃死が発生していることが分かる。
【0036】
上記の表1~3に示すように、11月におけるアサリの生存率は、本発明に係る養殖方法を用いた場合が88%であるのに対し、従来の養殖方法を用いた場合は4%、従来の干潟養殖方法を用いた場合は17%と、顕著に差が出ていることが分かる。
【0037】
以上のように説明した本発明の実施の形態は一例であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、第1計測装置21や第2計測装置22は、計測結果を冷却器12に有線または無線で通知してもよく、冷却器12は、当該第1計測装置21や第2計測装置22からの計測結果を受けて、自動で基準温度の変更や海水温度の変更を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、アサリやシジミ、ハマグリなどの二枚貝の陸上養殖を行うための養殖方法および養殖装置として有用であり、特に、二枚貝の産卵による体力の減耗や海水温の上昇によるストレスを軽減させ、二枚貝が斃死することを抑制し、安定した養殖を行うことができる養殖方法や養殖装置として有用である。
【符号の説明】
【0039】
1 養殖装置
11 飼育タンク
12 冷却器
121 海水温度調整手段
122 基準温度調整手段
21 第1計測装置
22 第2計測装置
S 二枚貝
T 基質
図1
図2