(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066565
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】抗NTB-A抗体ならびに関連する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220421BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220421BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220421BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220421BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220421BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220421BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K45/00
A61P35/00
A61K47/68
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022038055
(22)【出願日】2022-03-11
(62)【分割の表示】P 2019238780の分割
【原出願日】2013-12-20
(31)【優先権主張番号】61/745,239
(32)【優先日】2012-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505314468
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ティム ルイス
(72)【発明者】
【氏名】チェ-リュン ロー
(57)【要約】
【課題】抗NTB-A抗体ならびに関連する組成物および方法を提供する。
【解決手段】本発明は、例えば、様々なNTB-A発現性のがんの処置および診断に、ならびにNTB-Aの検出(例えば、細胞上のNTB-A発現の検出)に有用なNTB-Aに対して特異的に結合する抗体を提供する。本発明の抗体を用いた、そのような処置、診断、およびNTB-A検出の方法もまた提供される。本発明はまた、NTB-Aに対して特異的に結合する抗体-薬物結合体(ADC)を用いた、多発性骨髄腫を処置する方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願との相互参照
本出願は、非仮出願であり、2012年12月21日に出願された米国特許第61/745,239号の利益を主張し、その内容は本明細書においてその全体が全ての目的のために参考として援用される。
【0002】
配列表
2013年12月18日に作成されたNTBA-00111PC-ST25.txtという名前の8キロバイトの配列表が、参考として援用される。
【背景技術】
【0003】
背景
SLAMF6とも呼ばれる、1型1回通過膜糖タンパク質であるNTB-Aは、CD2/SLAMサブファミリーに属する免疫グロブリンスーパーファミリー(Ig-SF)のメンバーである。例えば、Bottino et al.,J. Exp. Med. 194:235-246,2001を参照。NTB-Aは、その細胞外部分に、N末端V型ドメインおよびそれに続くC2型ドメインを特徴として有し、他方で、細胞質内部分は3つのチロシンベースのモチーフを含む:2つの免疫レセプターチロシンベーススイッチモチーフ(ITSM;TxYxxV/I)および古典的免疫レセプターチロシンベース阻害モチーフ(ITIM;I/V/L/SxYxxL)。同上を参照。そのITSMモチーフを通じて、NTB-Aは、SLAM-関連タンパク質SH2D1Aおよび関連するユーイング肉腫活性化転写物(EAT)2のSH2ドメインと関係する。Bottino et al.,上記;Falco et al.,Eur. J. Immunol. 34:1663-1672,2004;Flaig et al.,J. Immunol. 172:6524-6527,2004を参照。
【0004】
NTB-Aは、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK様T細胞、T細胞、単球、樹状細胞、B細胞、および好酸球上に発現する。Salort JD. et al.,Immunology Letters 129-136,2011;Matesanz-Isabel et al.,Immunology Letters 104-112,2011;Munitz et al.,Journal of Immunology 174:110-118,2005;Bottino et al.,Journal of Experimental Medicine 194(3):235-246;2001を参照。NTB-Aは、同型相互作用を介して(すなわち、自己リガンドとして)機能することができ、そして、シグナル伝達によるNK細胞機能の正の調節因子として働き、NK細胞の細胞傷害性を誘導することが示されている。例えば、Bottino et al.,同上;Falco et al.,同上;Flaig et al.,同上を参照。NTB-Aはまた、慢性リンパ性白血病(CLL)およびB細胞リンパ腫の患者由来のB細胞上で発現することも示されている。Korver et al.,British Journal of Haematology 137:307-318,2007を参照。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bottino et al.,J.Exp.Med.194:235-246,2001
【非特許文献2】Falco et al.,Eur.J.Immunol.34:1663-1672,2004
【非特許文献3】Flaig et al.,J.Immunol.172:6524-6527,2004
【非特許文献4】Salort JD. et al.,Immunology Letters 129-136,2011
【非特許文献5】Matesanz-Isabel et al.,Immunology Letters 104-112,2011
【非特許文献6】Munitz et al.,Journal of Immunology 174:110-118,2005
【非特許文献7】Korver et al.,British Journal of Haematology 137:307-318,2007
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
権利が請求される発明の概要
1つの局面では、本発明は、ヒトNTB-Aに対する特異的結合について、配列番号1の残基20~135および配列番号2の残基21~140にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよびVLドメインを含むモノクローナル抗体(mAb)と競合する、単離された抗体を提供する。
【0007】
他の局面では、本発明は、ヒトNTB-Aに対して特異的に結合する単離されたマウスモノクローナル抗体であって、配列番号1の残基20~135および配列番号2の残基21~140にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよびVLドメインを含む単離されたマウスモノクローナル抗体、またはそのキメラもしくはヒト化形態を提供する。
【0008】
他の局面では、本発明は、ヒトNTB-AにおけるmAbと同一のエピトープに結合する単離された抗体であって、(i)配列番号1の残基20~135および配列番号2の残基21~140、あるいは(ii)配列番号3の残基20~137および配列番号4の残基21~128にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよびVLドメインを含む単離された抗体を提供する。
【0009】
さらに他の局面では、本発明は、ヒトNTB-Aに対して特異的に結合する単離された抗体であって、(a)配列番号1の残基20~135と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインおよび配列番号2の残基21~140と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメイン、あるいは(b)配列番号3の残基20~137と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメインおよび配列番号4の残基21~128と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、単離された抗体を提供する。いくつかの局面では、そのような抗体は、リファレンス配列に対して80%の同一性を含み、そして、リファレンス配列と同一のCDRを含む。
【0010】
また他の局面では、本発明は、ヒトNTB-Aに対して特異的に結合する単離された抗体であって、(a)配列番号1の残基20~135に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび配列番号2の残基21~140に示されるアミノ酸配列を有するVLドメイン、あるいは(b)配列番号3の残基20~137に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび配列番号4の残基21~128に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインにそれぞれ由来するVHドメインおよびVLドメインを含む、単離された抗体を提供する。
【0011】
いくつかの実施態様では、本発明の抗体はヒトNTB-Aに対して特異的に結合し、そして、配列番号1の残基20~135および配列番号2の残基21~140にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH/VLドメインと同一のCDRを含む。例えば、特定の実施態様では、抗体は、配列番号5~10にそれぞれ示されるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列を含む。他の実施態様では、抗体は、配列番号3の残基20~137および配列番号4の残基21~128にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH/VLドメインと同一のCDRを含む。いくつかのそのようなバリエーションでは、抗体は、配列番号11~16にそれぞれ示されるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列を含む。
【0012】
他の実施態様では、本発明の抗体は、ヒトNTB-Aに対して特異的に結合し、そして、第二のCDRのセットに対して3か所以下のアミノ酸置換(好ましくは保存的置換)を有するCDRのセット(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のCDR)を含み、ここで、該第二のCDRのセットは、(i)配列番号1の残基20~135および配列番号2の残基21~140、または(ii)配列番号3の残基20~137および配列番号4の残基21~128にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVH/VLドメインに由来する。特定のバリエーションでは、第二のCDRのセットは、配列番号5~10または配列番号11~16にそれぞれ示されるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列を含む。いくつかの局面では、抗体は、ヒトNTB-Aに対する特異的結合について、配列番号1の残基20~135および配列番号2の残基21~140にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよびVLドメインを含むモノクローナル抗体(mAb)と競合する。
【0013】
特定のバリエーションでは、本発明の抗体は、ヒトNTB-Aに対して特異的に結合し、そして、ヒト化VHドメインおよびヒト化VLドメインを含むヒト化抗体である。例えば、ヒト化VH/VLドメインは、(i)配列番号1の残基20~135に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび配列番号2の残基21~140に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインにそれぞれ、あるいは、(ii)配列番号3の残基20~137に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび配列番号4の残基21~128に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインにそれぞれ由来し得る。いくつかのそのような実施態様では、ヒト化抗体は、上記で特定されたVH/VLドメインと同一のCDRを含む。特定のバリエーションでは、上記(i)で特定されたVHドメインおよびVLドメインに由来するヒト化抗体は、配列番号5~10にそれぞれ示されるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列を含み;あるいは、上記(ii)で特定されたVHドメインおよびVLドメインに由来するヒト化抗体は、配列番号11~16にそれぞれ示されるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列を含む。他の実施態様では、ヒト化抗体は、(i)ヒトNTB-Aに対して特異的に結合し、(ii)第二のCDRのセットに対して3か所以下のアミノ酸置換(好ましくは保存的置換)を有するCDRのセット(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のCDR)を含み、ここで、該第二のCDRのセットは、上記で特定されたCDRのセット(すなわち、配列番号5~10および/または配列番号11~16にそれぞれ示されるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3アミノ酸配列を含む、第二のCDRのセット)であり、そして、(iii)ヒトNTB-Aに対する特異的結合について、配列番号1の残基20~135および配列番号2の残基21~140にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよびVLドメインを含むモノクローナル抗体(mAb)と競合する。
【0014】
いくつかの実施態様では、上記の抗体は、免疫グロブリン重鎖定常領域の少なくとも部分をさらに含む。免疫グロブリン重鎖定常領域は、天然のヒト定常領域またはその遺伝的に操作された改変体であってよく、例えば、天然のヒト定常領域に対してFcγレセプターへの結合が低減された、天然のヒト定常領域の変異形態(例えば、E233P、L234VおよびL235Aおよび/またはN297D(Kabatにおいて明らかにされるEUインデックスに従った番号付け)の置換を有する改変体)であってよい。適切な重鎖定常領域としては、ヒトアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4の重鎖定常領域が挙げられる。
【0015】
いくつかの実施態様では、上記の抗体は、VHドメインを含む第一のポリペプチド鎖およびVLドメインを含む第二のポリペプチド鎖を含む。いくつかのそのようなバリエーションでは、第一のポリペプチド鎖は、VHドメインと融合された免疫グロブリン重鎖定常領域の少なくとも部分をさらに含み、そして、第二のポリペプチド鎖は、VLドメインと融合された免疫グロブリン軽鎖定常領域の少なくとも部分をさらに含む。重鎖定常領域は、天然のヒト定常領域またはその遺伝的に操作された改変体であってよく、例えば、天然のヒト定常領域に対してFcγレセプターへの結合が低減された、天然のヒト定常領域の変異形態であってよい。適切な重鎖定常領域としては、ヒトアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4の重鎖定常領域が挙げられる。
【0016】
特定のバリエーションでは、上記の抗体は、細胞傷害性作用物質または細胞増殖抑制作用物質と結合体化される。
【0017】
他の局面では、本発明は、上記で定義されるVHドメインおよび/またはVLドメインをコードする単離された核酸を提供する。本発明はさらに、上記のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供し、そして、そのような発現ベクターを含み、本発明の抗体を産生する方法において用いられ得る宿主細胞を提供する。本発明の抗体を産生するそのような方法は、典型的には、抗体が発現される条件下で宿主細胞を培養する工程および宿主細胞から抗体を単離する工程を含む。
【0018】
さらに他の局面では、本発明は、上記の抗体および薬学的に適合性の成分を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
また他の局面では、本発明は、NTB-A発現を特徴とするがんを有する患者を処置する方法を提供する。処置方法は、一般的に、上記で説明された抗体の効果的なレジメンを患者に投与する工程を含む。特定の局面では、抗体は、細胞傷害性作用物質または細胞増殖抑制作用物質と結合体化される。いくつかの実施態様では、がんは、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、およびB細胞リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL))からなる群より選択される。
【0020】
他の局面では、本発明は、多発性骨髄腫を有する患者を処置する方法を提供する。処置方法は、一般的に、ヒトNTB-Aに対して特異的に結合する抗体の効果的なレジメンを患者に投与する工程であって、該抗体は、細胞傷害性作用物質または細胞増殖抑制作用物質と結合体化される工程を含む。いくつかのバリエーションでは、抗NTB-A抗体は、上記で説明された抗体である。
【0021】
本発明のこれらの局面および他の局面は、以下の発明の詳細な説明および添付の図面を参照することで、明らかとなる。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトNTB-Aに対する特異的結合について、配列番号1の残基20~135および配列番号2の残基21~140にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよびVLドメインを含むモノクローナル抗体と競合する、単離された抗体。
(項目2)
前記抗体は、
配列番号5に示されるCDR-H1のアミノ酸配列;
配列番号6に示されるCDR-H2のアミノ酸配列;
配列番号7に示されるCDR-H3のアミノ酸配列;
配列番号8に示されるCDR-L1のアミノ酸配列;
配列番号9に示されるCDR-L2のアミノ酸配列;および
配列番号10に示されるCDR-L3のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の抗体。
(項目3)
前記抗体は、
配列番号1の残基20~135に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインに由来するヒト化VHドメイン、および
配列番号2の残基21~140に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインに由来するヒト化VLドメイン、を含むヒト化抗体である、項目1に記載の抗体。
(項目4)
前記抗体は、
配列番号5に示されるCDR-H1のアミノ酸配列;
配列番号6に示されるCDR-H2のアミノ酸配列;
配列番号7に示されるCDR-H3のアミノ酸配列;
配列番号8に示されるCDR-L1のアミノ酸配列;
配列番号9に示されるCDR-L2のアミノ酸配列;および
配列番号10に示されるCDR-L3のアミノ酸配列を含む、項目3に記載の抗体。
(項目5)
前記抗体は、
配列番号11に示されるCDR-H1のアミノ酸配列;
配列番号12に示されるCDR-H2のアミノ酸配列;
配列番号13に示されるCDR-H3のアミノ酸配列;
配列番号14に示されるCDR-L1のアミノ酸配列;
配列番号15に示されるCDR-L2のアミノ酸配列;および
配列番号16に示されるCDR-L3のアミノ酸配列を含む、項目1に記載の抗体。
(項目6)
前記抗体は、
配列番号3の残基20~137に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインに由来するヒト化VHドメイン、および
配列番号4の残基21~128に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインに由来するヒト化VLドメイン、を含むヒト化抗体である、項目1に記載の抗体。
(項目7)
前記抗体は、
配列番号11に示されるCDR-H1のアミノ酸配列;
配列番号12に示されるCDR-H2のアミノ酸配列;
配列番号13に示されるCDR-H3のアミノ酸配列;
配列番号14に示されるCDR-L1のアミノ酸配列;
配列番号15に示されるCDR-L2のアミノ酸配列;および
配列番号16に示されるCDR-L3のアミノ酸配列を含む、項目6に記載の抗体。
(項目8)
配列番号1の残基20~135および配列番号2の残基21~140にそれぞれ示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよびVLドメインを含む単離されたマウスモノクローナル抗体、またはそのキメラもしくはヒト化形態。
(項目9)
配列番号5(CDR1)、配列番号6(CDR2)、および配列番号7(CDR3)で示される相補性(complementary)決定領域(CDR)配列、ならびに配列番号8(CDR4)、配列番号9(CDR5)、および配列番号10(CDR6)で示される軽鎖CDR配列を含む単離されたヒト化モノクローナル抗体であって、それぞれのCDR中に0、1、2または3か所の保存的アミノ酸置換を有する、抗体。
(項目10)
さらに免疫グロブリン重鎖定常領域の少なくとも部分を含む、項目1から9のいずれか1つに記載の抗体。
(項目11)
前記抗体は、VHドメインを含む第一のポリペプチド鎖およびVLドメインを含む第二のポリペプチド鎖を含む、項目1から10のいずれか1つに記載の抗体。
(項目12)
前記第一のポリペプチド鎖は、VHドメインと融合された免疫グロブリン重鎖定常領域の少なくとも部分をさらに含み、そして、前記第二のポリペプチド鎖は、VLドメインと融合された免疫グロブリン軽鎖定常領域の少なくとも部分をさらに含む、項目11に記載の抗体。
(項目13)
前記重鎖定常領域は、天然のヒト定常領域に対してFcγレセプターへの結合が低減された、天然のヒト定常領域の変異形態である、項目10または12に記載の抗体。
(項目14)
前記重鎖定常領域は、ヒトアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群より選択されるアイソタイプのものである、項目10、12、または13のいずれか1つに記載の抗体。
(項目15)
前記抗体は、細胞傷害性作用物質または細胞増殖抑制作用物質と結合体化される、項目1から14のいずれか1つに記載の抗体。
(項目16)
項目1から15のいずれか1つによって定義されるVHドメインおよび/またはVLドメインをコードする単離された核酸。
(項目17)
医薬組成物であって、以下:
項目1から15のいずれか1つに記載の抗体;および
薬学的に適合性の成分、を含む、医薬組成物。
(項目18)
NTB-A発現を特徴とするがんを有する患者を処置する方法であって:
項目1から15のいずれか1つに記載の抗体の効果的なレジメンを患者に投与する工程、を含む方法。
(項目19)
前記がんは、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、およびT細胞リンパ腫もしくはB細胞リンパ腫からなる群より選択される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記B細胞リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、抗NTB-A抗体11A1を用いたU-266多発性骨髄腫細胞株における内部移行アッセイの結果を示す。
【
図2】
図2は、抗NTB-A抗体11A1および26B7を用いた抗体競合アッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
異なって定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、説明される方法および組成物の属する分野の当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で用いられる場合、以下の用語および句は、異なって特定されない限りそれらに与えられた意味を有する。
【0024】
「抗体-薬物結合体」は、細胞傷害性作用物質または細胞増殖抑制作用物質と結合体化された抗体をいう。典型的には、抗体-薬物結合体は、細胞表面上の標的抗原(例えば、NTB-A)に結合し、続いて細胞内に抗体-薬物結合体が内部移行し、そして薬物が放出される。
【0025】
「ポリペプチド」または「ポリペプチド鎖」は、天然で産生されたか、または合成的に産生されたかに拘わらず、ペプチド結合によって繋がったアミノ酸残基の重合体である。約10アミノ酸残基より少ないポリペプチドは、通常「ペプチド」と呼ばれる。
【0026】
「タンパク質」は、1つ以上のポリペプチド鎖を含む高分子である。タンパク質はまた、非ペプチド性の構成要素(例えば、炭水化物基)も含み得る。炭水化物および他の非ペプチド性置換基は、そのタンパク質が産生される細胞によってタンパク質に添加され得、そして細胞のタイプに応じて変化し得る。タンパク質は、本明細書においてそれらのアミノ酸骨格構造の点から定義される;置換基(例えば、炭水化物基)は、一般的には特定されないが、それに拘わらず、存在してよい。
【0027】
本明細書において、「アミノ末端」および「カルボキシル末端」という用語は、ポリペプチド内の位置を示すために用いられる。文脈が許容する場合、これらの用語は、ポリペプチドの特定の配列または部分を指して、近接または相対位置を示すために用いられる。例えば、ポリペプチド内のリファレンス配列のカルボキシル末端に位置する特定の配列は、リファレンス配列のカルボキシル末端に近接して存在するが、必ずしも完全長ポリペプチドのカルボキシル末端になくてもよい。
【0028】
本明細書において、「抗体」という用語は、抗原の存在への応答において身体によって産生され、抗原に結合する免疫グロブリンタンパク質、ならびにその抗原結合フラグメントおよび操作された改変体を示すために用いられる。したがって、「抗体」という用語は、例えば、インタクトなモノクローナル抗体(例えば、ハイブリドーマ技術を用いて産生された抗体)および抗原結合抗体フラグメント(例えば、F(ab’)2およびFabフラグメント)を含む。遺伝的に操作されたインタクトな抗体およびフラグメント、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖Fvフラグメント、一本鎖抗体、ダイアボディ(diabody)、ミニボディ(minibody)、リニア抗体、多価もしくは多重特異性(例えば、二重特異性)ハイブリッド抗体等もまた含まれる。したがって、「抗体」という用語は、抗体の抗原結合部位を含み、その抗原に対して特異的に結合することのできる任意のタンパク質を含むように拡張的に用いられる。「抗体」という用語はまた、抗体それ自体(「裸の抗体」)または細胞増殖抑制薬物もしくは細胞傷害性薬物と結合体化された抗体も含む。
【0029】
「遺伝的に操作された抗体」という用語は、アミノ酸配列が天然の抗体のアミノ酸配列から変化している抗体を意味する。抗体の生成における組み換えDNA技術の妥当性により、天然の抗体に見出されるアミノ酸の配列に制限される必要はない;抗体は所望の特性を得るために再設計され得る。可能なバリエーションは、多数であり、ただ1つもしくは数アミノ酸の変化から、例えば、可変領域もしくは定常領域の完全な再設計までの範囲におよぶ。定常領域の変化は、一般的に、例えば、補体の固定、細胞との相互作用、および他のエフェクター機能といった特性を改善または変化させるために行われる。典型的には、可変領域の変化は、抗原結合の特性を改善するため、可変領域の安定性を改善するため、または免疫原性のリスクを低減するために行われる。
【0030】
「抗体の抗原結合部位」は、その抗原と結合するのに十分な抗体の部分である。そのような領域の最小限は、典型的には、可変領域またはその遺伝的に操作された改変体である。単一ドメインの結合部位は、ラクダ抗体から生成することができ(Muyldermans and Lauwereys,J. Mol. Recog. 12:131-140,1999;Nguyen et al.,EMBO J. 19:921-930,2000を参照)、または、単一ドメイン抗体(「dAb」)を産生する他の生物種のVHドメインから生成することができる(Ward et al.,Nature 341:544-546,1989;Winter et al.の米国特許第6,248,516号を参照)。特定のバリエーションでは、抗原結合部位は、天然に、または非天然に(例えば、変異誘発され)存在する重鎖可変領域または軽鎖可変領域あるいはその組み合わせの、2つのみの相補性決定領域(CDR)を有するポリペプチド領域である(例えば、Pessi et al.,Nature 362:367-369,1993;Qiu et al.,Nature Biotechnol. 25:921-929,2007を参照)。より一般的には、抗体の抗原結合部位は、共通のエピトープに結合する重鎖可変(VH)ドメインおよび軽鎖可変(VL)ドメインの両方を含む。本発明に関して言えば、抗体は、抗原結合部位に加えて1つ以上の構成要素(例えば、抗体の第二の抗原結合部位(同一もしくは異なるエピトープに、または同一もしくは異なる抗原に結合し得る)、ペプチドリンカー、免疫グロブリン定常領域、免疫グロブリンヒンジ、両親媒性ヘリックス(Pack and Pluckthun,Biochem. 31:1579-1584,1992を参照)、非ペプチドリンカー、オリゴヌクレオチド(Chaudri et al.,FEBS Letters 450:23-26,1999を参照)、細胞増殖抑制薬物もしくは細胞傷害性薬物等)を含み得、そして、単量体または多量体タンパク質であり得る。抗体の抗原結合部位を含む分子の例は、当該分野で公知であり、例えば、Fv、一本鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab)c、ダイアボディ、dAb、ミニボディ、ナノボディ(nanobody)、Fab-scFv融合物、二重特異性(scFv)4-IgG、および二重特異性(scFv)2-Fabが挙げられる。(例えば、Hu et al.,Cancer Res.
56:3055-3061,1996;Atwell et al.,Molecular Immunology 33:1301-1312,1996;Carter and Merchant,Curr. Opin. Biotechnol. 8:449-454,1997;Zuo et al.,Protein Engineering 13:361-367,2000;およびLu et al.,J. Immunol. Methods 267:213-226,2002.を参照。)
【0031】
本明細書で用いられる場合、「免疫グロブリン」という用語は、実質的に免疫グロブリン遺伝子にコードされた1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質をいう。免疫グロブリンの1つの形は、脊椎動物における天然(native)の(すなわち、天然(natural)の)抗体の基本構造単位を構成する。この形は、4量体であり、免疫グロブリン鎖の2つの同一のペアからなり、それぞれのペアは1つの軽鎖と1つの重鎖を有する。それぞれのペアにおいて、軽鎖可変領域および重鎖可変領域(VLおよびVH)は、共に抗原への結合の主な要因であって、そして、定常領域は抗体エフェクター機能の主な要因である。免疫グロブリンタンパク質の5つのクラス(IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgE)が、高等脊椎動物において同定されている。IgGは、主要なクラスを含む;IgGは、通常、血漿中に見出される2番目に豊富なタンパク質として存在する。ヒトにおいて、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4という4つのサブクラスから構成される。IgGクラスの重鎖定常領域は、ギリシャ記号γを用いて同定される。例えば、IgG1サブクラスの免疫グロブリンは、γ1重鎖定常領域を含む。それぞれの免疫グロブリン重鎖は、生物種における与えられたサブクラスについて本質的に不変な定常領域タンパク質ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2、およびCH3;IgG3はCH4ドメインもまた含む)から構成される定常領域を有する。ヒトおよび非ヒト免疫グロブリン鎖をコードするDNA配列は当該分野で公知である。(例えば、Ellison et al.,DNA 1:11-18,1981;Ellison et al.,Nucleic Acids Res. 10:4071-4079,1982;Kenten et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6661-6665,1982;Seno et al.,Nuc. Acids Res. 11:719-726,1983;Riechmann et al.,Nature 332:323-327,1988;Amster et al.,Nuc.
Acids Res. 8:2055-2065,1980;Rusconi and
Kohler, Nature 314:330-334,1985;Boss et
al.,Nuc. Acids Res. 12:3791-3806,1984;Bothwell et al.,Nature 298:380-382,1982;van der Loo et al.,Immunogenetics 42:333-341,1995;Karlin et al.,J. Mol. Evol. 22:195-208,1985;Kindsvogel et al.,DNA 1:335-343,1982;Breiner et al.,Gene 18:165-174,1982;Kondo et al.,Eur. J. Immunol. 23:245-249,1993;およびGenBankアクセッション番号J00228を参照。)免疫グロブリンの構造および機能のレビューについては、Putnam,The Plasma Proteins,Vol V, Academic Press, Inc.,49-140,1987;およびPadlan,Mol. Immunol. 31:169-217,1994を参照。「免疫グロブリン」という用語は、本明細書においてその一般的な意味で用いられ、文脈に依存して、インタクトの抗体、その構成要素の鎖、または鎖のフラグメントを示す。
【0032】
全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDaまたは214アミノ酸)は、アミノ末端の可変領域遺伝子(約110アミノ酸をコードする)によって、およびカルボキシル末端のカッパまたはラムダ定常領域遺伝子によってコードされる。全長免疫グロブリン重鎖(約50kDaまたは446アミノ酸)は、可変領域遺伝子(約116アミノ酸をコードする)およびガンマ、ミュー、アルファ、デルタもしくはイプシロン定常領域遺伝子(約330アミノ酸をコードする)によってコードされ、後者は、抗体のアイソタイプを、それぞれIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEとして定義する。軽鎖および重鎖内において、可変領域および定常領域は約12アミノ酸以上の「J」領域によって連結され、重鎖はまた約10アミノ酸以上(10 more amino acids)の「D」領域も含む。(一般的には、Fundamental Immunology(Paul,ed.,Raven Press, N.Y.,第2版 1989),Ch.7を参照)。
【0033】
免疫グロブリンの軽鎖可変領域または重鎖可変領域(本明細書においてそれぞれ「軽鎖可変ドメイン」(「VLドメイン」)または「重鎖可変ドメイン」(「VHドメイン」)とも呼ばれる)は、3つの超可変性領域(「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる)によって分断された「フレームワーク」領域から構成される。フレームワーク領域は、抗原のエピトープへの特異的結合のためにCDRを整列させるように働く。したがって、「超可変領域」または「CDR」という用語は、抗原結合の主な要因である抗体のアミノ酸残基をいう。アミノ末端からカルボキシル末端に、VLドメインおよびVHドメインの両方は、以下のフレームワーク領域(FR)およびCDR領域を含む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。それぞれのドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes
of Health,Bethesda,MD,1987および1991)、またはChothia&Lesk,J. Mol. Biol. 196:901-917,1987;Chothia et al.,Nature 342:878-883,1989の定義に従う。Kabatはまた、異なる重鎖の間または異なる軽鎖の間の対応する残基が同一の数字を割り当てられる、広く用いられるナンバリングの規定(Kabatナンバリング)を提供する。VLドメインのCDR1、2および3は、それぞれ本明細書において、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3とも呼ばれる;VHドメインのCDR1、2および3は、それぞれ本明細書において、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3とも呼ばれる。
【0034】
文脈が異なる意味を要求しない限り、本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって産生された抗体のみに限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、それが産生される方法をいうのではなく、単一のクローンに由来する抗体をいい、単一のクローンとしては、任意の真核性、原核性、またはファージクローンが挙げられる。
【0035】
リファレンスの可変ドメインに「由来する」免疫グロブリンのVHドメインまたはVLドメインは、全体的または実質的にリファレンスの可変ドメインに由来するCDRの一部またはすべてを含む遺伝的に操作されたVHドメインまたはVLドメインを意味する。いくつかのバリエーションでは、得られた可変ドメインは、ヒト化VHドメインまたはヒト化VLドメインである。リファレンスの可変ドメインに「由来する」VHドメインまたはVLドメインを含む抗体は、典型的には、リファレンスの可変ドメインを含む抗体の結合特性を保持している。
【0036】
「ヒト化VHドメイン」または「ヒト化VLドメイン」という用語は、非ヒトドナー免疫グロブリン(例えば、マウスまたはラット)に全体的または実質的に由来するCDRの一部または全部、ならびにヒト免疫グロブリン配列に全体的または実質的に由来する可変ドメインフレームワーク配列を含む免疫グロブリンのVHドメインまたはVLドメインをいう。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは、「アクセプター」と呼ばれる。いくつかの例では、ヒト化抗体は、適切な結合特性を促進するためにヒト可変ドメインフレームワーク領域内にいくつかの非ヒト残基を保持する(例えば、抗体がヒト化される場合に、結合アフィニティを保存するために、フレームワーク内の変異が必要とされ得る)。
【0037】
「ヒト化抗体」は、ヒト化VHドメインおよびヒト化VLドメインの1つまたは両方を含む抗体である。免疫グロブリン定常領域が存在する必要はないが、それがある場合は、ヒト免疫グロブリン定常領域に全体的または実質的に由来する。
【0038】
ヒト化抗体内のCDRは、それぞれのCDRの間で少なくとも60%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%の対応する残基(Kabatによって定義されるように)が同一である場合、非ヒト抗体中の対応するCDRに「実質的に由来」するという。CDRが非ヒト免疫グロブリンに実質的に由来するヒト化VHドメインまたはヒト化VLドメインの特定のバリエーションでは、ヒト化VHドメインまたはヒト化VLドメインのCDRは、6以下(例えば、5以下、4以下、3以下、2以下、または1以下)のアミノ酸置換(好ましくは、保存的置換)を、対応する非ヒトVHまたはVLのCDRに対する全ての3つのCDRにわたって有する。抗体のVHドメインまたはVLドメインの可変領域フレームワーク配列、あるいは、存在するならば免疫グロブリン定常領域の配列は、Kabatによって定義される対応する残基の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%が同一である場合、ヒトVHフレームワーク配列またはヒトVLフレームワーク配列あるいはヒト定常領域に、それぞれ「実質的に由来」する。したがって、CDRを除くヒト化抗体の全ての部分は、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分に全体的または実質的に由来する。
【0039】
抗体は、典型的には単離された形態で提供される。これは、抗体は、典型的には、その生産または精製によって生じる干渉タンパク質および他の夾雑物の少なくとも50%w/w純度であることを意味するが、該抗体が、その利用を容易にすることを意図する薬学的に許容可能なキャリアまたは他のビヒクルの過剰と組み合わせられる可能性を除外するものではない。抗体は、時には、生産または精製に由来する干渉タンパク質および夾雑物の少なくとも60%、70%、80%、90%、95または99%w/w純度である。
【0040】
抗体のその標的抗原への特異的結合は、少なくとも106、107、108、109、または1010M-1のアフィニティを意味する。特異的結合は、少なくとも1つの無関係な標的に対して起こる非特異的結合から、規模において検出可能なほど高く、区別可能である。特異的結合は、特定の官能基の間の結合または特定の空間的適合(例えば、鍵と鍵穴型)の形成の結果であり得るが、それに対して、非特異的結合は、通常ファンデルワールス力の結果である。
【0041】
「エピトープ」という用語は、抗原上の抗体が結合する部位をいう。エピトープは、連続するアミノ酸、または1つ以上のタンパク質の3次フォールディングによって並置される非連続のアミノ酸から形成され得る。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露においても保持されるが、それに対して、3次フォールディングから形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒による処置において失われる。エピトープは、典型的には、少なくとも3つ、より一般的には少なくとも5つまたは8~10個のアミノ酸を特有の空間的コンフォメーション中に含む。エピトープの空間的コンフォメーションを決定する方法としては、例えば、X線結晶学および2次元核磁気共鳴が挙げられる。例えば、Epitope Mapping Protocols, in
Methods in Molecular Biology, Vol.66,Glenn E. Morris,Ed.(1996)を参照。
【0042】
同一の、または重複するエピトープを認識する抗体が、標的抗原に対する他の抗体の結合に対して競合するある抗体の能力を示す単純なイムノアッセイにおいて同定され得る。抗体のエピトープは、接触残基を同定するためにその抗原に結合された抗体のX線結晶学によってもまた定義され得る。あるいは、抗原におけるある抗体の結合を低減または消滅させるアミノ酸変異の全てが、他の抗体の結合を低減または消滅させる場合、2つの抗体は同一のエピトープを有する(ただし、そのような変異は抗原構造における全体的な変化をもたらすものではないという条件で)。ある抗体の結合を低減または消滅させるアミノ酸変異の一部が、他の抗体の結合を低減または消滅させる場合、2つの抗体は重複するエピトープを有する。
【0043】
抗体間の競合は、試験下の抗体が、リファレンス抗体の共通の抗原に対する特異的結合を阻害するアッセイによって、測定される(例えば、Junghans et al.,Cancer Res. 50:1495,1990を参照)。試験抗体の過剰(例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、または100倍)が、競合的結合アッセイにおいて測定されるリファレンス抗体の結合を、少なくとも55%、しかし好ましくは75%、90%または99%の割合で阻害する場合、試験抗体はリファレンス抗体と競合する。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)は、リファレンス抗体と同一のエピトープに結合する抗体、および立体障害が生じる程度にリファレンス抗体が結合するエピトープと十分に近接した近隣のエピトープに結合する抗体を含む。競合アッセイによって同定される抗体はまた、標的タンパク質のコンフォメーションの変化をもたらすことで間接的にリファレンス抗体と競合する抗体であって、それにより試験抗体が結合するエピトープと異なるエピトープへのリファレンス抗体の結合を妨げる抗体も含む。
【0044】
「発現ユニット」および「発現カセット」という用語は、本明細書において交換可能に用いられ、そして、目的のポリペプチドをコードする核酸セグメントであって、宿主細胞中で核酸セグメントの発現を提供することができる核酸セグメントを示す。発現ユニットは、典型的には、転写プロモーター、目的のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、および転写ターミネーターを、全て作動可能なコンフィギュレーションで含む。転写プロモーターおよびターミネーターに加えて、発現ユニットは、他の核酸セグメント(例えば、エンハンサーまたはポリA化シグナル)をさらに含み得る。
【0045】
本明細書で用いられる場合、「発現ベクター」という用語は、1つ以上の発現ユニットを含む、直鎖上または環状の核酸分子をいう。1つ以上の発現ユニットに加えて、発現ベクターは、追加的な核酸セグメント(例えば、1つ以上の複製の起点または1つ以上の選択可能マーカー)もまた含み得る。発現ベクターは、一般的に、プラスミドまたはウイルスDNAに由来する、あるいは、両方の要素を含み得る。
【0046】
本明細書で説明されるタンパク質に関して、配列番号で特定されるアミノ酸残基と対応するアミノ酸残基への参照は、そのような残基の翻訳後改変体を含む。
【0047】
「患者」という用語は、予防的または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物の被検体を含む。
【0048】
「有効量」という用語は、本明細書で説明される抗NTB-A抗体の投与によるNTB-A発現性の障害の処置に関しては、NTB-A発現性の障害の発生を妨げるか、または1つ以上の症状を改善するのに十分なそのような抗体の量をいう。抗体の有効量は、「効果的なレジメン」における本発明の方法に従って投与される。「効果的なレジメン」という用語は、障害の予防的または治療的処置を実現するために適当な、投与される抗体の量および投薬頻度の組み合わせをいう。
【0049】
アミノ酸置換を、保存的または非保存的として分類するために、以下のアミノ酸置換は保存的置換と考える:トレオニン、アラニン、またはアスパラギンによって置換されるセリン;プロリンまたはセリンによって置換されるトレオニン;アスパラギン酸、ヒスチジン、またはセリンによって置換されるアスパラギン;グルタミン酸またはアスパラギンによって置換されるアスパラギン酸;グルタミン、リシン、またはアスパラギン酸によって置換されるグルタミン酸;アルギニン、リシン、またはグルタミン酸によって置換されるグルタミン;チロシンまたはアスパラギンによって置換されるヒスチジン;リシンまたはグルタミンによって置換されるアルギニン;イソロイシン、ロイシン、またはバリンによって置換されるメチオニン;ロイシン、バリン、またはメチオニンによって置換されるイソロイシン;バリン、イソロイシン、またはメチオニンによって置換されるロイシン;チロシンまたはトリプトファンによって置換されるフェニルアラニン;トリプトファン、ヒスチジン、またはフェニルアラニンによって置換されるチロシン;トレオニンによって置換されるプロリン;セリンによって置換されるアラニン;グルタミン酸、グルタミン、またはアルギニンによって置換されるリシン;メチオニン、イソロイシン、またはロイシンによって置換されるバリン;およびフェニルアラニンまたはチロシンによって置換されるトリプトファン。保存的置換はまた、同一のクラスのアミノ酸の間の置換も意味する。クラスは以下の通りである:グループI(疎水性側鎖):met、ala、val、leu、ile;グループII(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;グループIII(酸性側鎖):asp、glu;グループIV(塩基性側鎖)asn、gln、his、lys、arg;グループV(鎖方向に影響する残基):gly、pro;およびグループVI(芳香族性側鎖):trp、tyr、phe。
【0050】
2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基が、最大限一致するように整列された際に同一である場合、2つのアミノ酸配列は、「100%のアミノ酸配列同一性」を有する。配列比較は、標準的なソフトウェアプログラム(例えば、DNASTAR(Madison,Wisconsin)によって製作された、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューター処理スイートに含まれるプログラム)を用いて行うことができる。最適整列を決定することにより、2つの核酸配列またはアミノ酸配列を比較する他の方法は、当業者に周知である。(例えば、Peruski and Peruski,The Internet and the New Biology:Tools for Genomic and Molecular Research(ASM Press, Inc. 1997);Methods in Gene Biotechnology 123-151中の、Wu et al.(eds.),“Information Superhighway and Computer Databases of Nucleic Acids and Proteins,”(CRC Press, Inc. 1997);Bishop(ed.),Guide to Human Genome Computing(2nd ed.,Academic Press, Inc.
1998)を参照。)2つのアミノ酸配列は、2つの配列が互いに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を有する場合、「実質的配列同一性」を有すると考えられる。
【0051】
パーセント配列同一性は、Kabatナンバリング規定によって最大限整列された抗体配列によって決定される。整列の後、対象の抗体領域(例えば、重鎖または軽鎖の可変領域全体)がリファレンス抗体の同一の領域と比較された場合、対象の抗体領域およびリファレンス抗体領域の間のパーセント配列同一性は、対象の抗体領域およびリファレンス抗体領域両方において同一のアミノ酸に占められる位置の数を、ギャップはカウントせずに、2つの領域の整列された位置の総数で割り、パーセントに変換するために100を掛けたものである。
【0052】
1つ以上の言及された要素を「含む」組成物または方法は、特に言及されていない他の要素を含み得る。例えば、抗体を含む組成物は、抗体を単独で、または他の成分と組み合わせて含み得る。
【0053】
値の範囲の指定は、該範囲内の、またはそれを定義する全ての整数を含む。
【0054】
抗体のエフェクター機能は、IgのFc領域の寄与による機能をいう。そのような機能は、例えば、抗体依存性細胞傷害、抗体依存性細胞貪食、または補体依存性細胞傷害であり得る。そのような機能は、例えば、貪食もしくは溶解活性を有する免疫細胞上のFcレセプターへのFc領域の結合によって、または補体系の成分へのFc領域の結合によってもたらされ得る。典型的には、Fc結合細胞または補体成分によって媒介される効果は、NTB-A標的細胞の阻害および/または除去をもたらす。抗体のFc領域は、Fcレセプター(FcR)発現細胞を集め得、それらを抗体に覆われた標的細胞と並置し得る。IgGについての表面FcR(FcγRIII(CD16)、FcγRI1(CD32)およびFcγRIII(CD64)を含む)を発現する細胞は、IgGで覆われた細胞の破壊についてエフェクター細胞として働き得る。そのようなエフェクター細胞としては、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球および好酸球が挙げられる。IgGによるFcγRの係合は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)または抗体依存性細胞貪食(ADCP)を活性化させる。ADCCは、膜孔形成タンパク質およびプロテアーゼの分泌を介してCD16+エフェクター細胞によって媒介され、他方で、貪食は、CD32+およびCD64+エフェクター細胞によって媒介される(Fundamental
Immunology,4th ed.,Paul ed.,Lippincott-Raven,N.Y.,1997,Chapters 3,17および30;Uchida et al.,J. Exp. Med. 199:1659-69,2004;Akewanlop et al.,Cancer Res. 61:4061-65,2001;Watanabe et al.,Breast Cancer Res. Treat. 53:199-207,1999を参照)。ADCCおよびADCPに加えて、細胞結合抗体のFc領域はまた、補体依存性細胞傷害(CDC)を誘発する補体古典経路も活性化させ得る。補体系のC1qは、抗体が抗原と複合体となっている場合に、抗体のFc領域に結合する。細胞結合抗体へのC1qの結合は、C3コンベルターゼを生成するC4およびC2のタンパク質分解活性化を含む事象のカスケードを開始し得る。C3コンベルターゼによるC3bへのC3の切断は、終末補体成分(C5b、C6、C7、C8およびC9を含む)の活性化を可能にする。集合的に、これらのタンパク質は、抗体に覆われた細胞上に膜侵襲複合体孔を形成する。これらの孔は、細胞膜の完全性を破壊し、標的細胞を死滅させる(Immunobiology, 6th ed.,Janeway et al.,Garland Science,N.Y., 2005,Chapter 2を参照)。
【0055】
「抗体依存性細胞傷害」(または「ADCC」とも)という用語は、抗体に覆われた標的細胞と、溶解活性を有する免疫細胞(エフェクター細胞とも呼ばれる)との相互作用に依存して細胞死を誘導する機構である。そのようなエフェクター細胞としては、ナチュラルキラー細胞、単球/マクロファージおよび好中球が挙げられる。エフェクター細胞は、標的細胞に結合したIgのFc領域に、抗原結合部位を介して付着する。抗体に覆われた標的細胞の死は、エフェクター細胞活性の結果として生じる。
【0056】
「抗体依存性細胞貪食」(または「ADCP」とも)という用語は、抗体に覆われた細胞が、IgのFc領域に結合する貪食免疫細胞(例えば、マクロファージ、好中球および樹状細胞)によって、全体的または部分的に取り込まれる過程をいう。
【0057】
「補体依存性細胞傷害」(または、「CDC」とも)という用語は、最終的には標的細胞膜中の孔の形成に至る一連の酵素反応を、標的に結合した抗体のFc領域が活性化させる、細胞死を誘導する機構をいう。典型的には、抗原-抗体複合体(例えば、抗体に覆われた標的細胞上の抗原-抗体複合体)は、補体成分C1qに結合して活性化させ、続いてC1qが、標的細胞死を引き起こす補体カスケードを活性化させる。補体の活性化は、標的細胞表面上の補体成分の堆積もまた引き起こし得、そのため、白血球上の補体レセプター(例えば、CR3)と結合することにより、ADCCが促進される。
【0058】
「細胞傷害性効果」は、標的細胞の除去、消滅および/または死滅をいう。「細胞傷害性作用物質」は、細胞に対して細胞傷害性効果を有する作用物質をいう。細胞傷害性作用物質は、抗体と結合体化され得る、または抗体と組み合わせて投与され得る。
【0059】
「細胞増殖抑制効果」は、細胞の増殖の阻害をいう。「細胞増殖抑制作用物質」は、細胞に対して細胞増殖抑制効果を有し、それにより、細胞の特定のサブセットの成長および/または拡大を阻害する作用物質をいう。細胞増殖抑制作用物質は、抗体と結合体化され得る、または抗体と組み合わせて投与され得る。
【0060】
「薬学的に許容可能」という用語は、動物における使用、そしてより具体的にはヒトにおける使用について、連邦もしくは州政府の規制機関によって承認されている、もしくは承認可能な、または米国薬局方もしくは他の一般的に認識される薬局方に挙げられていることを意味する。「薬学的に適合性の成分」という用語は、抗NTB-A抗体と共に製剤化される薬学的に許容可能な希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルをいう。
【0061】
「薬学的に許容可能な塩」という句は、抗NTB-A抗体もしくはその結合体または抗NTB-A抗体と共に投与される作用物質の薬学的に許容可能な有機塩または無機塩をいう。代表的な塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、pトルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’メチレン ビス-(2 ヒドロキシ 3 ナフトエート))が挙げられる。薬学的に許容可能な塩は、他の分子(例えば、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオン)の包含を含み得る。対イオンは、親の化合物上の電荷を安定させる任意の有機部分または無機部分であり得る。さらに、薬学的に許容可能な塩は、電荷を帯びた複数の原子をその構造中に有し得る。電荷を帯びた複数の原子が薬学的に許容可能な塩の部分であるような例は、複数の対イオンを有し得る。したがって、薬学的に許容可能な塩は、電荷を帯びた1つ以上の原子および/または1つ以上の対イオンを有し得る。
【0062】
文脈から異なることが明らかでない限り、値が「約(about)」Xまたは「約(approximately)」Xとして表現される場合、Xの述べられた値は、±10%までの正確さであることが理解される。
【0063】
グリコシル化は、抗体を発現させるために使用される宿主細胞に依存する。潜在的な治療剤としての組み換え抗体の発現に用いられる細胞のタイプが天然細胞であることは稀であるため、非天然細胞において組み換え的に発現した抗体と、それらの天然細胞において発現した同一のプライマリの重鎖および軽鎖の配列の抗体との間で、抗体のグリコシル化パターンにおける著しいバリエーションが生じ得る。げっ歯類起源の哺乳動物細胞株(例えば、SP2/0、CHOまたはBHK)は、ヒトのグリコシル化とある程度の類似性を有するグリコシル化を与えることができる。しかしながら、いくつかのヒト構成要素は失われ得(例えば、2,6-結合シアル化)、そして、通常ヒトには見出されない他の構成要素が多数存在し得る(例えば、ヒト細胞には通常存在しない末端シアル酸(例えば、NeuGc)またはヒト細胞には通常存在しない形で他のガラクトースに連結された末端ガラクトース(Gal-Gal構造))。CHO細胞において発現した組み換えIgGは、マウス骨髄腫細胞において発現した組み換え免疫グロブリンと比較して、一般的にガラクトシル化の程度が低い。したがって、CHO細胞において産生された組み換えIgGは、マウス骨髄腫細胞株において産生されるrIgGと比較してより高いレベルのG0グリカンを含み得る。
【0064】
抗体のグリコシル化構造は、従来の炭水化物分析の技術によって分析することができ、炭水化物分析の技術としては、レクチンクロマトグラフィー、NMR、質量分析法、HPLC、ゲル浸透クロマトグラフィー、単糖組成分析、逐次酵素消化、および電荷に基づいてオリゴ糖を分離するために高pHアニオン交換クロマトグラフィーを用いる、パルス電流測定検出を有する高性能アニオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。分析的な目的のためにオリゴ糖を遊離させる方法としては、酵素的処理(一般的にペプチドN-グリコシダーゼ F/エンド- ベータ-ガラクトシダーゼを用いて行われる)、主にO-連結構造を遊離させるために過酷なアルカリ環境を用いる排出、ならびにN-およびO-連結オリゴ糖の両方を遊離させるために無水ヒドラジンを用いる化学的方法が挙げられる。
【0065】
したがって、組み換え的に発現した抗体のグリコシル化パターンは、発現の行われる細胞のタイプ(例えば、CHO)の特性であり得、そして、上記の技術のいずれによっても、他の細胞タイプ、特に他の生物種の細胞(例えば、マウスおよびヒト)からのものと区別可能に異なり得る。
【0066】
詳細な説明
I.総論
本発明は、NTB-Aに対して特異的に結合する抗体を提供する。前記抗体は、例えば、様々なNTB-A発現性のがんの処置および診断に、ならびにNTB-Aの検出(例えば、細胞上のNTB-A発現の検出)に有用である。本発明の抗体を用いた、そのような処置、診断、およびNTB-A検出の方法もまた提供される。
【0067】
本発明はまた、NTB-Aに対して特異的に結合する抗体-薬物結合体(ADC)を用いた、多発性骨髄腫を処置する方法も提供する。抗NTB-A ADCを用いた多発性骨髄腫細胞の死滅を実証したのは、本発明者らが最初であると考えられる。多発性骨髄腫の処置のための抗NTB-A ADCは、例えば、本明細書で説明される抗NTB-A抗体を含むADCを含み得る。1つの局面では、前記方法は、ヒトNTB-Aに対して特異的に結合する抗体であって、細胞傷害性作用物質と結合体化された抗体を、必要とする患者に投与する工程を含む。
【0068】
II.標的分子
異なって指示されない限り、NTB-Aは、ヒトNTB-Aを意味する。代表的なヒト配列は、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q96DU3を割り当てられている。4つのスプライシングバリアントのアイソフォームが公知である。成熟細胞外領域は、Q96DU3の残基22~226の範囲にある。
【0069】
文脈からそうでないことが明らかではない限り、NTB-Aへの参照は、少なくともタンパク質の細胞外ドメインを意味し、そして、通常は切断シグナルペプチド(Q96DU3のアミノ酸1~21)を除く完全長タンパク質を意味する。
【0070】
III.本発明の抗体
1つの局面では、本発明は、成熟NTB-A細胞外領域のエピトープ(例えば、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q96DU3のアミノ酸残基22~226内に存在するエピトープ)に対して特異的に結合する単離された抗NTBA抗体を提供する。特定の実施態様では、本発明に従った抗NTB-A抗体は、ヒトNTB-A抗原への結合について、本発明者らによって同定および単離された抗NTB-A mAbと同一のVH/VLドメインを有するモノクローナル抗体と競合することができる。特定の局面では、本発明に従った抗NTB-A抗体は、本明細書で同定されるようなマウス抗体、またはそのキメラ形態もしくはヒト化形態である。
【0071】
その標的抗原に対する抗体のアフィニティを測定する1つの方法は、抗体の見かけ上の解離定数を測定することによる。いくつかの局面では、本明細書で説明される抗体は、0.1nMから10nM、好ましくは0.1nMから5nM、さらに好ましくは0.1nMから2nMまたは0.1nMから1nMの範囲内の、NTB-Aに対する見かけ上の解離定数(kd)を有する。
【0072】
mAb11A1というマウス抗NTB-Aモノクローナル抗体が、同定および特性評価された。マウス11A1抗体は、IgG1抗体である。mAb11A1は、NTB-Aの完全長細胞外領域(UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q96DU3の残基22~226)に対して0.13nMのkdで結合するが、NTB-Aアイソフォーム4(アクセッション番号Q96DU3の残基18~128が喪失)には結合しないことが見出された。mAb26B7という第二の抗体もまた、同定および特性評価された。mAB26B7は、競合的結合アッセイ(実施例5を参照)において、ヒトNTB-Aへの結合について、mAb11A1と競合することが見出され、そして、NTB-Aに対して0.16nMのkdで結合した。マウスmAb11A1および26B7のそれぞれについてのVH、VL、およびVH/VLのKabatCDRアミノ酸配列が決定され、以下の表1および表2に示される。11A1抗体および26B7抗体は、カニクイザルNTB-Aに結合しなかった。
【表1】
【0073】
したがって、特定の実施態様では、本発明は、(i)配列番号1の残基20~135に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび(ii)配列番号2の残基21~140に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含む単離されたマウス(抗体)、またはそのキメラもしくはヒト化形態を提供する。マウス抗体と同様に、そのキメラもしくはヒト化形態はヒトNTB-Aに結合するが、カニクイザルNTB-Aには結合しない。
【0074】
特定の実施態様では、本発明は、ヒトNTB-Aに対する特異的結合について(i)配列番号1の残基20~135に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび(ii)配列番号2の残基21~140に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含むモノクローナル抗体(mAb)と競合する、単離された抗体を提供する。
【0075】
本発明はさらに、(a)配列番号1の残基20~135に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび配列番号2の残基21~140に示されるアミノ酸配列を有するVLドメイン、あるいは(b)配列番号3の残基20~137に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび配列番号4の残基21~128に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインを含むmAbと同一のヒトNTB-Aのエピトープに対して特異的に結合する、単離された抗体を提供する。特定のバリエーションでは、抗体は、(i)X線共結晶解析、(ii)アレイ型オリゴペプチドスキャニング(時には、重複ペプチドスキャンまたはペップスキャン分析とも呼ばれる)、(iii)部位指向性変異導入(例えば、アラニンスキャニング変異導入)、および(iv)H/D交換質量分析から選択されるエピトープマッピングの方法によって決定される、前述のmAbと同一のヒトNTB-Aのエピトープに結合する。これらのエピトープマッピングの方法は、当該分野で周知であり、本発明に従って容易に用いることができる。
【0076】
本発明はまた、ヒトNTB-Aに対して特異的に結合する単離された抗体であって、(i)配列番号1の残基20~135または配列番号3の残基20~137と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHドメイン;および/または(ii)配列番号2の残基21~140または配列番号4の残基21~128と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、単離された抗体も提供する。典型的には、抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方を含む場合、VHドメインおよびVLドメインは、表1の同一のリファレンス抗体に対応する(すなわち、典型的には、VHドメインおよびVLドメインは、それぞれ配列番号1の残基20~135および配列番号2の残基21~140と、あるいはそれぞれ配列番号3の残基20~137および配列番号4の残基21~128と、特定された配列同一性を有する)。
【0077】
本発明はまださらに、ヒトNTB-Aに対して特異的に結合する単離された抗体であって、(i)配列番号1の残基20~135または配列番号3の残基20~137に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインに由来するVHドメイン、および/または(ii)配列番号2の残基21~140または配列番号4の残基21~128に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインに由来するVLドメインを含む、単離された抗体を提供する。例えば、VHドメインおよび/またはVLドメインは、(a)配列番号1の残基20~135に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび/または配列番号2の残基21~140に示されるアミノ酸配列を有するVLドメイン、あるいは(b)配列番号3の残基20~137に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび/または配列番号4の残基21~128に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインに、それぞれ由来し得る。得られたVHドメインまたはVLドメインの可変ドメインフレームワーク配列は、リファレンス配列の免疫グロブリン配列(例えば、異なる生物種(例えば、ヒト)に由来する免疫グロブリン配列)と異なる免疫グロブリン配列に、全体的または実質的に由来し得る。したがって、特定の実施態様では、本発明は、本明細書でさらに説明されるように、上記(a)または(b)で特定されるVHドメインおよびVLドメインの1つまたは両方に由来する、ヒト化VHドメインおよびヒト化VLドメインの1つまたは両方を含むヒト化抗体を提供する。必ずではないが典型的には、ヒト化抗体は、ヒト可変ドメインフレームワーク領域内に、ドナー生物種由来のいくつかの非ヒト残基を保持する。
【0078】
本発明はまださらに、NTB-Aに対して特異的に結合するモノクローナル抗体であって、配列番号5(CDR1)、配列番号6(CDR2)、および配列番号7(CDR3)で明らかにされる相補性(complementary)決定領域(CDR)配列、ならびに配列番号8(CDR4)、配列番号9(CDR5)、および配列番号10(CDR6)で明らかにされる軽鎖CDR配列を含み、それぞれのCDR中に0、1、2または3か所の保存的アミノ酸置換を有するモノクローナル抗体を提供する。いくつかの局面では、抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。いくつかの局面では、それぞれのCDR中には0または1か所の保存的アミノ酸置換が存在する。そのような抗体は、例えば、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはベニヤ化(veneered)抗体であり得る。
【0079】
本発明はまださらに、NTB-Aに対して特異的に結合するモノクローナル抗体であって、配列番号11(CDR1)、配列番号12(CDR2)、および配列番号13(CDR3)で明らかにされる相補性(complementary)決定領域(CDR)配列、ならびに配列番号14(CDR4)、配列番号15(CDR5)、および配列番号16(CDR6)で明らかにされる軽鎖CDR配列を含み、それぞれのCDR中に0、1、2または3か所の保存的アミノ酸置換を有するモノクローナル抗体を提供する。いくつかの局面では、抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。そのような抗体は、例えば、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはベニヤ化抗体であり得る。
【0080】
本発明の抗体は、当該分野で公知の任意の方法によって、特異的結合についてアッセイされ得る。用いることができるイムノアッセイとしては、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素アッセイ、ゲル拡散沈降素アッセイ、免疫放射線アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、および補体固定アッセイといった技術を用いたアッセイシステムが挙げられるが、それに限定されない。そのようなアッセイはありふれたものであり、当該分野で周知である(例えば、Ausubel et al.,eds,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley&sons,Inc.,New Yorkを参照)。Antibodies, A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane,1988)において説明されるアッセイのようなありふれたアッセイもまた行われ得る。加えて、BIACORE(登録商標)(GE Healthcare,Piscataway,NJ)は、モノクローナル抗体の結合分析に普通に用いられる多様な表面プラズモン共鳴アッセイ方式の単に1つである。他の参考(例えば、The Epitope Mapping Protocols,Methods in Molecular Biology,Vol.66(Glenn Morris ed. Humana Press,1996)において、抗体を結合するために用いることができる方法であって、抗体のNTB-Aに対する結合特異性に関して比較可能な情報を提供することが期待される代替の方法が説明される。
【0081】
抗体が、ヒトNTB-Aに対する特異的結合について、11A1mAbのVHドメインおよびVLドメイン(すなわち、配列番号1の残基20~135に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび配列番号2の21~140残基に示されるアミノ酸配列を有するVLドメイン)を含むmAbと競合するかを評価するため、以下の競合的結合アッセイが用いられる。
【0082】
このアッセイは、11A1マウスIgG1抗体(すなわち、天然の抗体の二価構造中の11A1VHドメインおよびVLドメイン)を含む「リファレンス抗体」を利用する。NTB-A陽性Ramos細胞が、96ウェルV底プレート(Thermo Scientific,Rochester,NY)中に、ウェルあたり2×10
5細胞で蒔かれる。2倍濃縮抗体(20μg/mlが、非標識サンプル抗体の2倍開始濃度である)の5倍連続希釈が、その0.0188μg/mLのKd値の2倍の濃度(0.0376μg/mL)の、AF647標識11A1マウス抗体の2倍定常濃縮物を含むFACsバッファー(PBS+2% ウシ胎児血清+0.02% アジ化ナトリウム)中で調製される。抗体溶液は、光から保護されながら、細胞と共に1時間氷上でインキュベートされる。細胞は、FACsバッファーで2回洗浄され、LSRIIフローサイトメーター(BD BioSciences,San Jose,CA)で分析される。データは、最大の結合に対するパーセントとして表される。サンプル抗体が、リファレンス抗体のNTB-Aへの結合を、非標識サンプル抗体の10μg/mlの濃度において最大の結合の45%より低い(すなわち、0から45%)レベルまで低減させる場合、サンプル抗体は、NTB-Aへの特異的結合について標識リファレンス抗体と「競合」する。いくつかの局面では、サンプル抗体が、非標識サンプル抗体の10μg/mlの濃度において最大の結合の30%より低いレベルまでリファレンス抗体のNTB-Aへの結合を低減させる場合、抗体は結合について競合する。いくつかの局面では、サンプル抗体が、非標識サンプル抗体の10μg/mlの濃度において最大の結合の20%より低いレベルまでリファレンス抗体のNTB-Aへの結合を低減させる場合、抗体は結合について競合する。いくつかの局面では、サンプル抗体が、非標識サンプル抗体の10μg/mlの濃度において最大の結合の10%より低いレベルまでリファレンス抗体のNTB-Aへの結合を低減させる場合、抗体は結合について競合する。いくつかの局面では、サンプル抗体が、非標識サンプル抗体の10μg/mlの濃度において最大の結合の5%より低いレベルまでリファレンス抗体のNTB-Aへの結合を低減させる場合、抗体は結合について競合する。いくつかの局面では、サンプル抗体が、非標識サンプル抗体の10μg/mlの濃度において最大の結合の2%より低い、また1%より低いレベルまでリファレンス抗体のNTB-Aへの結合を低減させる場合、抗体は結合について競合する。
図2から理解することができるように、マウス11A1抗体は、結合について、それ自身および26B7抗体と競合する。11A1抗体は、結合についてNT-7抗体と競合しない。
【0083】
いくつかの実施態様では、抗NTBA抗体は、表1に挙げられた抗体の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインと実質的に同一である重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインを含む。
【0084】
したがって、特定の実施態様では、抗NTB-A抗体は、(a)表1に挙げられたVHドメインのアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%同一である重鎖可変ドメインならびに/あるいは(b)表1に挙げられたVLドメインのアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%同一である軽鎖可変ドメインを有する。特定のバリエーションでは、抗NTB-A抗体は、(a)表1に挙げられたVHドメインのアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および/または(b)表1に挙げられたVLドメインのアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。抗体が、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの両方を含むいくつかの実施態様では、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインは、表1の同一のリファレンス抗体と対応する。例えば、より具体的なバリエーションでは、抗NTB-A抗体は、以下のVH/VL配列ペアから選択されるそれぞれのVHおよびVLのアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインを含む:(I)配列番号1の残基20~135および配列番号2の残基21~140;ならびに(II)配列番号3の残基20~137および配列番号4の残基21~128。
【0085】
いくつかの実施態様では、本発明の抗NTB-A抗体は、表1に挙げられる抗NTB-A抗体の1つ以上のCDRを含む。表1のVHドメインおよびVLドメインのKabatCDRは、以下の表2においても明らかにされる。
【表2】
【0086】
例えば、特定のバリエーションでは、抗体は、表1に挙げられる抗体の重鎖CDR(CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3領域のうちの少なくとも1つ)および/または対応する軽鎖CDR(CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3領域のうちの少なくとも1つ)を含む。典型的な実施態様では、抗NTB-A抗体は、表1に挙げられた抗体の、2つもしくは3つの重鎖CDRおよび/または2つもしくは3つの軽鎖CDRを有する。いくつかのバリエーションでは、抗NTB-A抗体が、表1に挙げられる抗体の少なくとも1つの重鎖CDRを有する場合に、抗体は少なくとも1つの対応する軽鎖CDRをさらに含む。
【0087】
特定のバリエーションでは、抗NTB-A抗体は、重鎖および/または軽鎖可変ドメインを含み、重鎖および/または軽鎖可変ドメインは、(a)表1に挙げられる抗体について示される重鎖および/または軽鎖CDRと対応する3つのCDRのセット、および(b)4つのフレームワーク領域のセットを有する。例えば、抗NTB-A抗体は、重鎖および/または軽鎖可変ドメインを含み得、重鎖または軽鎖可変ドメインは、(a)3つのCDRのセットであって、表1に挙げられる抗体に由来するCDRのセット、および(b)4つのフレームワーク領域のセットであって、表1に挙げられる同一の抗体のフレームワーク領域のセットと同一である、またはそれと異なる(例えば、ヒトフレームワーク領域に由来する)フレームワーク領域のセットを有する。
【0088】
特定のバリエーションでは、抗NTB-A抗体は、(I)(a)表1に挙げられる抗体について示される重鎖CDRと対応する3つのCDRのセット、および(b)4つのフレームワーク領域のセットを有する重鎖可変ドメイン;ならびに(II)表1に挙げられる抗体について示される軽鎖CDRと対応する3つのCDRのセット、および(b)4つのフレームワーク領域のセットを有する軽鎖可変ドメインの両方を含む。典型的な実施態様では、重鎖CDRおよび軽鎖CDRの両方は、表1に挙げられる同一の抗体に由来する。
【0089】
いくつかの実施態様では、本発明に従う抗NTB-A抗体は、表1に挙げられるVLまたはVHドメインのCDRに対して0、1、2、3、または4か所のアミノ酸置換(好ましくは、保存的置換)を有する少なくとも1つのCDRを含む重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。特定のバリエーションでは、例えば、本発明に従う抗NTB-A抗体は、CDR1-H1、CDR-H2、およびCDR-H3の重鎖CDRを含み、CDR-H1、CDR2-H2、およびCDR-H3のうち少なくとも1つは、表1に挙げられるVHドメインに対して0、1、2、3、または4か所のアミノ酸置換(好ましくは、保存的置換)を含む。他のバリエーションでは、本発明に従う抗NTB-A抗体は、CDR1-L1、CDR2-L2、およびCDR3-L3の軽鎖CDRを含み、CDR1-L1、CDR2-L2、およびCDR3-L3のうち少なくとも1つは、表1に挙げられるVLドメインに対して0、1、2、3、または4か所のアミノ酸置換(好ましくは、保存的置換)を含む。特定の実施態様では、抗NTB-A抗体は、上記の重鎖CDRおよび軽鎖CDRのセットの両方を含む。特に適切な抗NTB-A抗体は、CDR1-L1、CDR2-L2、およびCDR3-L3のCDRを含む軽鎖可変ドメインならびにCDR1-H1、CDR2-H2、およびCDR3-H3のCDRを含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖および軽鎖CDRの該セットは、表1に挙げられるVHドメインおよびVLドメインのCDRに対して、6か所以下、典型的には5か所以下、より典型的には4か所以下、そして最も典型的には3か所以下のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)を有する;いくつかのそのようなバリエーションでは、6か所以下のアミノ酸置換は、表1に挙げられる同一の抗体のVHドメインおよびVLドメインのCDRに対するものである。
【0090】
特定の実施態様では、本発明の抗NTB-A抗体は、表1に挙げられるVHドメインおよび/またはVLドメインにそれぞれ由来するヒト化VHドメインおよび/またはヒト化VLドメインを含む。特定のバリエーションでは、抗NTB-A抗体は、表1に挙げられるVHドメインおよびVLドメインにそれぞれ由来するヒト化VHドメインおよびヒト化VLドメインの両方を含む。典型的には、ヒト化VHドメインおよびヒト化VLドメインは、表1に挙げられる同一の抗体に由来する。
【0091】
ヒト化抗体は、非ヒト「ドナー」抗体のCDRを、ヒト「アクセプター」抗体配列中に移植した、遺伝的に操作された抗体である(例えば、Queen,US5,530,101および5,585,089;Winter,US5,225,539;Carter,US6,407,213;Adair,US5,859,205;およびFoote,US6,881,557を参照)。アクセプター抗体配列は、例えば、成熟ヒト抗体配列、そのような配列の合成物、ヒト抗体配列のコンセンサス配列、または生殖細胞系領域配列であり得る。したがって、ヒト化抗体は、ドナー抗体に全体的または実質的に由来するCDRを一部または全部、ならびに、存在する場合には、ヒト抗体配列に全体的または実質的に由来する可変領域フレームワーク配列および定常領域を有する抗体である。同様に、ヒト化VHドメインは、ドナー抗体VHドメインに全体的または実質的に由来する、少なくとも1つ、2つ、および通常は3つ全てのCDR、ならびにヒト抗体VHドメインに全体的または実質的に由来する可変領域フレームワーク配列を有する;そのようなヒト化VHドメインは、ヒト重鎖定常領域配列に全体的または実質的に由来する免疫グロブリン重鎖定常領域に、典型的にはアミノ末端に、連結され得る。同様に、ヒト化VLドメインは、ドナー抗体VLドメインに全体的または実質的に由来する、少なくとも1つ、2つ、および通常は3つ全てのCDR、ならびにヒト抗体VLドメインに全体的または実質的に由来する可変領域フレームワーク配列を有する;そのようなヒト化VLドメインは、ヒト軽鎖定常領域配列に全体的または実質的に由来する免疫グロブリン軽鎖定常領域に、典型的にはアミノ末端に、連結され得る。典型的には、ヒト化抗体は、ヒト化VHドメインおよびヒト化VLドメインの両方を含む。必ずではないが一般的には、ヒト化抗体は、適切な結合特性を促進するために、ヒト可変ドメインフレームワーク領域内にいくつかの非ヒト残基を保持する(例えば、抗体がヒト化される場合に、結合アフィニティを保存するために、フレームワーク内の変異が必要とされ得る)。
【0092】
ヒト化抗体はしばしば非ヒト抗体に由来するCDR(好ましくは、Kabatによって定義される)を6つ全て取り込むが、全てより少ない(例えば、少なくとも3、4、または5つの)非ヒト抗体由来のCDRによってもまた、作製することができる(例えば、Pascalis et al.,J. Immunol. 169:3076,2002;Vajdos et al.,J. Mol. Biol.,320:415-428,2002;Iwahashi et al.,Mol. Immunol. 36:1079-1091,1999;Tamura et al.,J. Immunol.,164:1432-1441,2000)。いくつかの局面では、ヒト化抗体は、6つのCDR全てを取り込むが、CDRのうちの1つ以上に、0、1、2、または3か所の保存的置換を有する。
【0093】
ヒト可変領域フレームワーク残基に由来する特定のアミノ酸は、CDRのコンフォメーションおよび/または抗原への結合に対する潜在的な影響に基づく置換のために選択され得る。そのような可能な影響の調査は、モデリング、特定の位置のアミノ酸の特性の試験、または特定のアミノ酸の置換もしくは変異導入の効果の経験的観察による。
【0094】
例えば、マウス可変領域フレームワーク残基と、選択されたヒト可変領域フレームワーク残基との間でアミノ酸が異なる際、ヒトフレームワークアミノ酸は、マウス抗体由来のアミノ酸が以下に該当することが合理的に期待される場合、マウス抗体由来の等価なフレームワークアミノ酸によって置換することができる:
(1)非共有的に直接抗原に結合する、
(2)CDR領域に隣接する、
(3)その他の様態でCDR領域と相互作用する(例えば、CDR領域の約6Å以内にある);または
(4)重鎖および軽鎖の間の相互作用を媒介する。
【0095】
他の可能なバリエーションは、マウス抗体のCDR中の特定の残基を、ヒトCDR配列に由来する、典型的には、例示されたヒト化抗体の設計で用いられたヒトアクセプター配列のCDRに由来する対応する残基と置換することである。いくつかの抗体では、CDRの部分のみ、つまり結合に必要とされるCDR残基のサブセット(SDRと呼ばれる)がヒト化抗体において結合を保持するために必要とされる。抗原に接触せず、SDR中にないCDR残基は、以前の研究に基づいて(例えば、CDR H2中の残基H60~H65は、しばしば不要である)、Chothia超可変性ループ(Chothia,J. Mol. Biol. 196:901,1987)の外部にあるKabatCDRの領域から、分子モデリングにより、および/または経験的に、あるいはGonzales et al.,Mol. Immunol. 41:863,2004において説明されるように、同定され得る。ヒト化抗体において、1つ以上のドナーCDR残基が存在しない、またはドナーCDRの全体が削除されている位置では、そのようなその位置を占めるアミノ酸は、アクセプター抗体配列中の対応する位置(Kabatナンバリングによる)を占めるアミノ酸であり得る。そのような置換は、ヒト化抗体におけるマウスアミノ酸の数を減少させること、およびその結果として潜在的な免疫原性を減少させることについて潜在的に有利である。しかしながら、置換はまた、アフィニティの変化をもたらすこともあり、そして、アフィニティの顕著な低減は、好ましくは避けられる。さらなるバリエーションでは、ヒト化抗NTB-A抗体のCDR(その他の点では、表1に挙げられる抗体のCDRと同一となる)中の1つ以上の残基は、表1に挙げられる異なる抗体のCDRに由来する対応する残基によって置き換えられ得る。CDR中の置換のための位置および置換されるアミノ酸はまた、経験的にも選択され得る。
【0096】
好ましくはないが、例えば、CDRと接触していないフレームワーク残基において、または潜在的なCDR接触残基もしくはCDR内のアミノ酸においてさえ、他のアミノ酸置換を行うことができる。バリアントのヒト化配列においてなされる置き換えは、置き換えられるアミノ酸に関して、しばしば保存的である。好ましくは、保存的であるか否かに拘わらず、そのような置き換えは、結合アフィニティまたはヒト化抗体の効力、すなわち、ヒトNTB-Aに結合する能力もしくはがん細胞の成長を阻害する能力に対して実質的に効果を有しない。
【0097】
好ましい抗NTB-A抗体またはその結合体化形態(例えば、抗体-薬物結合体)は、培養において、動物モデルにおいて、または臨床試験において増殖するがん性の細胞上で示されるように、がん(例えば、細胞の成長、組織への転移および/または致死性)を阻害する。動物モデルは、NTB-A発現性ヒト腫瘍細胞株を、適切な免疫不全げっ歯類系統(例えば、胸腺欠損ヌードマウスまたはSCIDマウス)に移植することにより、形成され得る。これらの腫瘍細胞株は、免疫不全げっ歯類宿主中で、皮下注射による固形腫瘍として、または静脈内注射による播種性腫瘍として、確立され得る。一旦宿主内で確立されれば、これらの腫瘍モデルは、抗NTB-A抗体またはその結合体化形態の治療的有効性を評価するために適用され得る。
【0098】
特定のバリエーションでは、本発明の抗NTBA抗体は、免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト免疫グロブリン定常領域)の少なくとも部分と連結されたVHドメインおよび/またはVLドメインを含む。例えば、いくつかの実施態様では、抗NTB-A抗体は、第一および第二のポリペプチド鎖を含み、第一のポリペプチド鎖は免疫グロブリン重鎖定常領域の少なくとも部分と連結された本明細書で説明されるVHドメインを含み、そして第二のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン軽鎖定常領域の少なくとも部分と連結された本明細書で説明されるVLドメインを含む。典型的には、VHドメインまたはVLドメインは、免疫グロブリン定常領域のアミノ末端またはその部分のアミノ末端に連結される。抗体が第一および第二のポリペプチド鎖を含む特定のバリエーションでは、第一および第二のポリペプチド鎖は、インタクトな天然の抗体の重鎖および軽鎖に対応するドメイン構造を有し、例えば、第一のポリペプチド(重)鎖は、VH-CH1-ヒンジ-CH2-CH3のアミノ末端からカルボキシル末端までのドメイン構造を有し、第二のポリペプチド(軽)鎖は、VL-CLのアミノ末端からカルボキシル末端までのドメイン構造を有する。
【0099】
他の実施態様では、抗NTB-A抗体は、単一のポリペプチド鎖内に連結された、VHドメイン、VLドメイン、および免疫グロブリン定常領域の少なくとも部分(例えば、CH1ドメインの欠落した重鎖定常領域)を含む一本鎖抗体である。例えば、VHドメインおよびVLドメインは、VH/VLまたはVL/VH(アミノ末端/カルボキシル末端)のいずれかの方向の一本鎖Fv(scFv)として構築され得、scFvは、重鎖定常領域(例えば、CH2およびCH3ドメインを含むが、CH1ドメインの欠落した定常領域)に(典型的にはアミノ末端に)連結される。scFvは、典型的には、リンカー(例えば、免疫グロブリンヒンジ領域に由来するリンカー)を介して定常領域に連結される。
【0100】
定常領域の選択は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害、抗体依存性細胞貪食および/または補体依存性細胞傷害のどれが所望されるかに、部分的には依存し得る。例えば、ヒトアイソタイプ(isotope)IgG1およびIgG3は強い補体依存性細胞傷害を有し、ヒトアイソタイプIgG2は弱い補体依存性細胞傷害を有し、そしてヒトアイソタイプIgG4は補体依存性細胞傷害を欠く。ヒトIgG1およびIgG3はまた、ヒトIgG2およびIgG4より強い細胞媒介エフェクター機能も誘導する。軽鎖定常領域は、ラムダまたはカッパであり得る。抗体は、例えば、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む4量体として、分離した重鎖と軽鎖として、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvとして、あるいは、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインがスペーサーを通して連結された一本鎖抗体として、発現され得る。加えて、所望の場合には、定常領域は変異させられ得る。いくつかの局面では、天然のヒト定常領域の変異形態は、天然のヒト定常領域に対してFcγレセプターへの結合が低減される。
【0101】
ヒト定常領域は、異なる個体間で、アロタイプのバリエーションおよびアイソアロタイプのバリエーションを示す、つまり、定常領域は、1つ以上の多型位置で異なる個体において異なり得る。アイソアロタイプは、あるアイソアロタイプを認識する血清が1つ以上の他のアイソタイプの非多型領域に結合する点で、アロタイプと異なる。
【0102】
軽鎖および/または重鎖のアミノ末端またはカルボキシ末端の1つまたは複数のアミノ酸(例えば、重鎖のC末端リシン)は、分子のある割合または全体において、喪失、または誘導体化され得る。置換は、エフェクター機能(例えば、補体媒介細胞傷害またはADCC)を低減または増大させるため(例えば、Winter et al.,米国特許第5,624,821号;Tso et al.,米国特許第5,834,597号;およびLazar et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA
103:4005,2006を参照)、またはヒトにおける半減期を延長するため(例えば、Hinton et al.,Biol. Chem. 279:6213,2004を参照)に、定常領域において行われ得る。
【0103】
代表的な置換としては、アミノ酸位置234、235、237、239、267、298、299、326、330、または332において天然のアミノ酸にシステイン残基が導入されるアミノ酸置換、好ましくはヒトIgG1アイソタイプにおけるS239C変異(US 20100158909)が挙げられる。いくつかの局面では、追加的なシステイン残基の存在は、鎖間のジスルフィド結合の形成を可能にする。そのような鎖間ジスルフィド結合の形成は立体障害をもたらし得、それによりFc領域-FcγR結合相互作用のアフィニティを低減させ得る。IgG定常領域のFc領域に導入された、またはそれに近接して導入されたシステイン残基はまた、治療的作用物質との結合体化(すなわち、薬物のマレイミド誘導体といったチオール特異的試薬を用いた細胞傷害性薬物のカップリング)のための部位としても働き得る。治療的作用物質の存在は立体障害をもたらし、それにより、さらにFc領域-FcγR結合相互作用のアフィニティを低減させる。位置234、235、236および/または237のいずれかにおける他の置換は、Fcγレセプター、特にFcγRIレセプターのアフィニティを低減させる(例えば、US6,624,821、US5,624,821を参照)。
【0104】
抗体のインビボでの半減期もまた、そのエフェクター機能に対して影響し得る。抗体の半減期は、その治療的活性を改変するために増加または減少させられ得る。FcRnは、β2-ミクログロブリンと非共有結合的に関係するMHCクラスI抗原と、構造的に類似のレセプターである。FcRnは、IgGの異化およびそれらの組織間の経細胞輸送を調節する(Ghetie and Ward,Annu. Rev. Immunol. 18:739-766,2000;Ghetie and Ward,Immunol.
Res. 25:97-113,2002)。IgG-FcRn相互作用は、pH6.0(細胞内小胞のpH)では起こるが、pH7.4(血液のpH)では起こらない;この相互作用は、IgGが循環へと再利用されることを可能にする(Ghetie and Ward,2000,同上;Ghetie and Ward,2002,同上)。FcRn結合に関係するヒトIgG1上の領域は、マッピングされている(Shields et al.,J. Biol. Chem. 276:6591-604,2001)。ヒトIgG1の位置Pro238、Thr256、Thr307、Gln311、Asp312、Glu380、Glu382またはAsn434におけるアラニン置換は、FcRn結合を促進する(Shields et al.,同上)。これらの置換を有するIgG1分子は、より長い血清半減期を有する。結果として、これらの改変IgG1分子は、それらのエフェクター機能を達成することができ、したがって、非改変IgG1と比較してより長い期間にわたって、それらの治療的有効性を発揮することができる。FcRnへの結合を向上させる他の代表的な置換としては、位置250のGlnおよび/または位置428のLeuが挙げられる。定常領域における全ての位置について、EUナンバリングが用いられる。
【0105】
保存されているAsn297に共有結合したオリゴ糖は、IgGのFc領域がFcγRに結合する能力に関係する(Lund et al.,J. Immunol. 157:4963-69,1996;Wright and Morrison,Trends
Biotechnol. 15:26-31,1997)。IgGにおけるこのグリコフォームの操作は、IgG媒介ADCCを顕著に向上させ得る。このグリコフォームへのバイセクティングN-アセチルグルコサミン改変の追加(Umana et al.,N
at. Biotechnol. 17:176-180,1999;Davies et al.,Biotech. Bioeng. 74:288-94,2001)、ま
たはこのグリコフォームからのフコースの除去(Shields et al.,J. Biol. Chem. 277:26733-40,2002;Shinkawa et al.,J. Biol. Chem. 278:6591-604,2003;Niwa et al.,Cancer Res. 64:2127-33,2004)は、IgGのFcとFcγRとの間の結合を向上させ、それによりIg媒介ADCC活性を促進する、IgGのFcの操作の2つの例である。
【0106】
ヒトIgG1のFc領域の溶剤曝露アミノ酸の全体的な置換は、変化したFcγR結合アフィニティを有するIgGバリアントを生成する(Shields et al.,J. Biol. Chem. 276:6591-604,2001)。親IgG1と比較した際、Thr256/Ser298、Ser298/G1u333、Ser298/Lys334、またはSer298/G1u333/Lys334におけるAlaへの置換を含むこれらのバリアントのサブセットは、FcγRへの結合アフィニティおよびADCC活性の両方における上昇を示す(Shields et al.,2001,同上;Okazaki et al.,J. Mol. Biol. 336:1239-49,2004)。
【0107】
抗体の補体固定活性(C1q結合およびCDC活性の両方)は、Lys326およびGlu333における置換によって向上され得る(Idusogie et al.,J.
Immunol. 166:2571-2575,2001)。ヒトIgG2骨格上の同一の置換は、C1qにあまり結合せず、補体活性化活性に重篤な欠陥のある抗体アイソタイプを、C1qに結合し、CDCを媒介するアイソタイプに転換し得る(Idusogie et al.,同上)。複数の他の方法もまた、抗体の補体固定活性を向上させるために適用されている。例えば、IgMの18アミノ酸カルボキシル末端テールピース(tail piece)を、IgGのカルボキシル末端に移植することは、それらのCDC活性を大幅に促進する。これは、通常は検出可能なCDC活性を有しないIgG4においてさえ観察される(Smith et al.,J. Immunol. 154:2226-36,1995)。また、IgG1重鎖のカルボキシ末端の近くに位置するSer444のCysへの置換は、IgG1のテールとテールとの二量体化を誘導し、単量体IgG1に対して200倍のCDC活性の増加を伴う(Shopes et al.,J. Immunol. 148:2918-22,1992)。加えて、C1qへの特異性を有する二重特異性ダイアボディコンストラクトもまた、CDC活性を与える(Kontermann et al.,Nat. Biotech. 15:629-31,1997)。
【0108】
補体活性は、重鎖のアミノ酸残基318、320、および322のうちの少なくとも1つの、異なる側鎖を有する残基(例えば、Ala)への変異によって低減され得る。3つの残基のうちの任意の1つの位置にある他のアルキル置換非イオン残基(例えば、Gly、Ile、Leu、もしくはVal)、または芳香族非極性残基(例えば、Phe、Tyr、TrpおよびPro)もまた、C1q結合を低減または消失させる。Ser、Thr、Cys、およびMetは、C1q結合活性を低減または消失させるために、残基320および322においては用いることができるが、残基318ではできない。318(Glu)残基の極性残基による置き換えは、C1q結合活性を改変させ得るが、消失させるとは限らない。残基297(Asn)のAlaとの置き換えは、溶解活性の除去をもたらすが、C1qへのアフィニティに対してはわずかに低減させる(約3分の1に弱くなる)のみである。この変更は、グリコシル化部位、および補体活性化に必要とされる炭水化物の存在を破壊する。この部位での任意の他の置換もまた、グリコシル化部位を破壊する。以下の変異およびその任意の組み合わせもまた、C1q結合を低減させる:D270A、K322A、P329A、およびP311S(国際公開第06/036291号を参照)。
【0109】
ヒト定常領域への参照は、任意の天然のアロタイプ、または天然のアロタイプ中の多型部位を占める残基の任意の並べ替えを有する定常領域を含む。また、天然のヒト定常領域に対して、1、2、5、または10か所までの変異が存在し得る(例えば、Fcガンマレセプター結合を低減させるため、またはFcRnへの結合を増加させるために上記で示される変異)。
【0110】
IV.核酸および産生の方法
本発明はさらに、上記で説明されたVHドメインおよび/またはVLドメイン(追加的なポリペプチドセグメント(例えば、免疫グロブリン定常領域と対応するポリペプチドセグメント)と連結されたVHドメインおよび/またはVLドメインを含むポリペプチドを含む)のいずれかをコードする核酸を提供する。典型的には、核酸はまた、VHドメインおよび/またはVLドメインを含む成熟ポリペプチドのアミノ末端に融合されたシグナルペプチドもコードする。核酸上のコード配列は、コード配列の発現を確実にするための調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、転写終結シグナル等)と作動可能に連結され得る。核酸は、単離された形態で存在し得る、または1つ以上のベクターにクローニングされ得る。核酸は、例えば、固相合成または重複するオリゴヌクレオチドのPCRによって、合成され得る。VHドメインおよびVLドメイン(例えば、分離された重鎖および軽鎖を含む抗体に関して)の両方をコードする複数の核酸は、1つの連続的な核酸として連結されてもよく(例えば、発現ベクター内に)、または分離されてもよい(例えば、それら自体の発現ベクターにそれぞれクローニングされ得る)。
【0111】
抗NTB-A抗体は、典型的には、1つ以上の抗体鎖をコードする1つ以上の核酸の組み換え発現によって産生される。組み換えポリヌクレオチドコンストラクトは、典型的には、VHドメインおよび/またはVLドメインを含む1つ以上のポリペプチド鎖のコード配列と作動可能に連結された発現制御配列(天然で関係する、または異種性のプロモーター領域を含む)を含む。好ましくは、発現制御配列は、真核性宿主細胞の形質転換または形質導入をすることのできるベクター中の、真核性プロモーターシステムである。一旦適切な宿主中にベクターが組み込まれたら、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベル発現、ならびに交差反応する抗体の回収および精製に適切な条件下で維持される。
【0112】
第一および第二のポリペプチド鎖(例えば、重鎖および軽鎖)を含む抗体を発現させる特定の実施態様では、2つのポリペプチド鎖は、抗体分子全体の発現のために、宿主細胞中の分離されたベクターから共発現され得る。2本鎖抗体を発現させる他の実施態様では、2つのポリペプチド鎖は、抗体分子全体の発現のために、宿主細胞中の同一のベクター内の別々の発現ユニットから共発現され得る。
【0113】
哺乳動物細胞は、免疫グロブリンまたはそのフラグメントをコードする核酸セグメントを発現させるのに好ましい宿主である。Winnacker,From Genes to Clones,(VCH Publishers,NY,1987)を参照。インタクトな異種性タンパク質を分泌することのできる複数の適切な宿主細胞株が、当該分野で開発されており、細胞株としては、CHO細胞株(例えば、DG44)、様々なCOS細胞株、HeLa細胞、HEK293細胞、L細胞、および非抗体産生骨髄腫細胞(Sp2/0およびNS0を含む)が挙げられる。好ましくは、細胞は非ヒトである。これらの細胞のための発現ベクターは、発現制御配列(例えば、複製の起点、プロモーター、エンハンサー(Queen et al.,Immunol. Rev. 89:49,1986)、および必要なプロセッシング情報部位(例えば、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリA化部位)および転写ターミネーター配列)を含み得る。好ましい発現制御配列は、内因性遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス等に由来するプロモーターである。Co et al.,J. Immunol. 148:1149,1992を参照。
【0114】
一旦発現したら、抗体は当該分野の標準的な手順(HPLC精製、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含む)に従って精製され得る(一般的には、Scopes,Protein Purification(Springer-Verlag,NY,1982)を参照)。
【0115】
V.抗体薬物結合体
抗NTB-A抗体は、細胞傷害性成分または細胞増殖抑制成分(その薬学的に許容可能な塩を含む)と結合体化され得、抗体薬物結合体(ADC)を形成し得る。抗体との結合体化に特に適切な成分は、細胞傷害性作用物質(例えば、化学療法用作用物質)、プロドラッグ変換酵素、放射性同位体もしくは放射性化合物、または毒素(これらの成分は、集合的に治療的作用物質と呼ばれる)である。例えば、抗NTB-A抗体は、細胞傷害性作用物質(例えば、化学療法用作用物質)、または毒素(例えば、細胞増殖抑制作用物質もしくは細胞致死性作用物質(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素))と結合体化され得る。細胞傷害性作用物質の有用なクラスの例としては、例えば、DNA副溝結合物質、DNAアルキル化作用物質、およびチューブリン阻害物質が挙げられる。代表的な細胞傷害性作用物質としては、例えば、オーリスタチン、カンプトテシン、カリケアミシン、デュオカルマイシン、エトポシド、メイタンシノイド(例えば、DM1、DM2、DM3、DM4)、タキサン、ベンゾジアゼピン(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン、インドリノベンゾジアゼピン、およびオキサゾリジノベンゾジアゼピン)およびビンカアルカロイドが挙げられる。
【0116】
抗NTB-A抗体は、プロドラッグ変換酵素と結合体化され得る。プロドラッグ変換酵素は、抗体と組み換え的に融合することができる、または公知の方法を用いて抗体と化学的に結合体化することができる。代表的なプロドラッグ変換酵素は、カルボキシペプチダーゼG2、ベータグルクロニダーゼ、ペニシリン-V-アミダーゼ、ペニシリン-G-アミダーゼ、β-ラクタマーゼ、β-グルコシダーゼ、ニトロレダクターゼおよびカルボキシペプチダーゼAである。
【0117】
治療的作用物質をタンパク質と、そして特に抗体と結合体化する技術は周知である(例えば、Alley et al.,Current Opinion in Chemical Biology 2010 14:1-9;Senter,Cancer J.,2008,14(3):154-169を参照)。治療的薬剤は、抗体から切り出され(例えば、加水分解によって、タンパク質分解によって、または切断作用物質によって)ない限りはその活性が低減されるような様態で結合体化され得る。いくつかの局面では、治療的作用物質は、切断可能なリンカーによって抗体に付着することができ、リンカーは、NTB-A発現性のがん細胞の細胞内環境において切断に対して感受性であるが、細胞外環境に対しては実質的に感受性でなく、それにより、結合体は、NTB-A発現性のがん細胞に内部移行された際に抗体から切り出される(例えば、エンドソーム環境においてはpH感受性もしくはプロテアーゼ感受性によって、リソソーム環境においてまたはカベオラ(caveolear)環境において)いくつかの局面では、治療的作用物質はまた、切断可能でないリンカーによっても抗体に付着することができる。
【0118】
典型的には、ADCは治療的作用物質と抗NTB-A抗体との間にリンカー領域を含む。上記のように、典型的には、リンカーは細胞内の条件下で切断可能であり得、それにより、細胞内環境において(例えば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラの内部において)、リンカーの切断によって、抗体から治療的作用物質が放出される。リンカーは、例えば、細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素(リソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼを含む)によって切断されるペプチジルリンカーであり得る。切断作用物質としては、カテプシンBおよびDならびにプラスミンが挙げられ得る(例えば、Dubowchik and Walker,Pharm. Therapeutics 83:67-123,1999を参照)。最も典型的であるのは、NTB-A発現性の細胞に存在する酵素によって切断可能なペプチジルリンカーである。例えば、がん性組織において高発現しているチオール依存性プロテアーゼカテプシンBによって切断可能なペプチジルリンカーが用いられ得る(例えば、Phe-LeuまたはVal-Citペプチドを含むリンカー)。
【0119】
切断可能なリンカーは、pH感受性、すなわち、特定のpH値において加水分解に対して感受性であり得る。典型的には、pH感受性リンカーは、酸性条件下で加水分解可能である。例えば、リソソームにおいて加水分解可能な酸不安定リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シス-アコニット酸アミド、オルトエステル、アセタール、ケタール等)が、用いられ得る(例えば、米国特許第5,122,368号;第5,824,805号;第5,622,929号;Dubowchik and Walker,Pharm. Therapeutics 83:67-123,1999;Neville et al.,Biol. Chem. 264:14653-14661,1989を参照)。そのようなリンカーは、中性pH条件(例えば、血液中の条件)下において比較的安定だが、pH5.5または5.0(概ねリソソームのpH)より低いpHでは、不安定である。
【0120】
他のリンカーは、還元性条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。ジスルフィドリンカーとしては、SATA(N-スクシニミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)ならびにSMPT(N-スクシニミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)、SPDBおよびSMPTを用いて形成することができるリンカーが挙げられる(例えば、Thorpe et al.,Cancer Res. 47:5924-5931,1987;Wawrzynczak et al.,In Immunoconjugates:Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C. W. Vogel ed.,Oxford U. Press,1987)を参照。米国特許第4,880,935号もまた参照)。
【0121】
リンカーはまた、マロン酸リンカー(Johnson et al.,Anticancer Res. 15:1387-93,1995)、マレイミドベンゾイルリンカー(Lau et al.,Bioorg-Med-Chem. 3:1299-1304,1995)、または3’-N-アミド類縁体(Lau et al.,Bioorg-Med-Chem. 3:1305-12,1995)でもあり得る。
【0122】
リンカーはまた、切断可能でないリンカー(例えば、マレイミド-アルキレン-、またはマレイミド-アリルリンカー)であって、治療的作用物質に直接付着され、そして抗体のタンパク質分解によって放出されるリンカーであり得る。
【0123】
典型的には、リンカーは、細胞外環境に対して実質的に感受性でなく、それは、約20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、そしてさらにより典型的には約5%以下、約3%以下、もしくは約1%以下のADCサンプル中のリンカーが、ADCが細胞外環境(例えば、血漿中)に存在する際に切断されることを意味している。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性でないかどうかは、例えば、(a)ADC(「ADCサンプル」)および(b)等モル量の結合体化されていない抗体もしくは治療的作用物質(「対照サンプル」)の両方を独立に、予め決められた時間(例えば、2、4、8、16、もしくは24時間)の間、血漿とインキュベートする工程、および次に、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定される、ADCサンプル中に存在する結合体化されていない抗体もしくは治療的作用物質の量と、対照サンプル中に存在する結合体化されていない抗体もしくは治療的作用物質の量とを比較する工程によって決定することができる。
【0124】
リンカーはまた、細胞性の内部移行を促進し得る。リンカーは、治療的作用物質と結合体化される場合に、細胞性の内部移行を促進し得る(すなわち、本明細書で説明されるADCもしくはADC誘導体のリンカー-治療的作用物質成分の環境において)。あるいは、リンカーは、治療的作用物質および抗NTB-A抗体の両方と結合体化される場合に、細胞性の内部移行を促進し得る(すなわち、本明細書で説明されるADCの環境において)。
【0125】
代表的な抗体-薬物結合体としては、オーリスタチンに基づく抗体-薬物結合体が挙げられ、それは、その薬物構成成分がオーリスタチン薬物であることを意味する。オーリスタチンは、チューブリンに結合し、微小管動態ならびに核および細胞の分裂に干渉することが示されており、そして抗がん活性を有する。典型的には、オーリスタチンに基づく抗体-薬物結合体は、オーリスタチン薬物と抗NTB-A抗体との間にリンカーを含む。リンカーは、例えば、切断可能なリンカー(例えば、ペプチジルリンカー)または切断可能でないリンカー(例えば、抗体の分解によって放出されるリンカー)であり得る。オーリスタチンは、オーリスタチンEまたはその誘導体であり得る。オーリスタチンは、例えば、オーリスタチンEとケト酸との間で形成されるエステルであり得る。例えば、オーリスタチンEは、パラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応して、それぞれAEBおよびAEVBを生成し得る。他の典型的なオーリスタチンとしては、MMAF、およびMMAEが挙げられる。代表的なオーリスタチンの合成および構造は、米国公開第7,659,241号、第7,498,298号、第2009-0111756号、第2009-0018086、および第7,968,687号において説明され、それぞれは、その全体が本明細書において、全ての目的のために参考として援用される。
【0126】
代表的なオーリスタチンに基づく抗体薬物結合体としては、以下に示されるvcMMAE、vcMMAFおよびmcMMAF抗体薬物結合体、またはその薬学的に許容可能な塩が挙げられ、ここで、Abは本明細書で説明される抗体であり、そしてval-citはバリン-シトルリンジペプチドを表す。
【化1】
薬物ローディング(loading)は、抗体あたりの薬物-リンカー分子の数であるpで表される。文脈に依存して、pは、平均薬物ローディングとも呼ばれる抗体あたりの薬物-リンカー分子の平均の数を表し得る。pは1から20の範囲であり、そして好ましくは1から8である。いくつかの好ましい実施態様では、pが平均薬物ローディングを表す場合に、pは約2から約5の範囲である。いくつかの実施態様では、pは、約2、約3、約4、または約5である。調製物における抗体あたりの薬物の平均の数は、従来の手段(例えば、質量分析、HIC、ELISAアッセイ、およびHPLC)によって特性評価され得る。いくつかの局面では、抗NTBA抗体は、抗体のシステイン残基を通じて薬物-リンカーに付着され得る。いくつかの局面では、システイン残基は、操作により抗体中に存在するシステイン残基である。他の局面では、システイン残基は、鎖間ジスルフィドシステイン残基である。
【0127】
VI.適用
他の局面では、本発明は、NTBA発現性の細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK様T細胞、T細胞、単球、樹状細胞、B細胞、および好酸球を含む)の生物学的活性を調節するために、本明細書で説明される抗NTB-A抗体を用いる方法を提供する。そのような方法には、例えば、NTB-A発現性の細胞の活性を阻害する(例えば、細胞の増殖を阻害する)方法が含まれる。そのような方法にはさらに、例えば、NTB-A発現性の細胞に関係する疾患または障害を処置する方法が含まれる。
【0128】
例えば、本発明の抗NTBA抗体は、裸の抗体として、またはその抗体薬物結合体として、NTB-A発現性のがんを処置するために用いることができる。いくつかのそのようながんは、タンパク質(例えば、例示された抗体のうちの1つを用いるイムノアッセイにより)またはmRNAのレベルのいずれかで測定される、検出可能なレベルのNTB-Aを示す。いくつかのそのようながんは、好ましくは同一の患者に由来する、同じタイプの非がん性組織に対して、上昇したレベルのNTB-Aを示す。処置の対象となるがん細胞上のNTB-Aの代表的なレベルは、細胞あたり5000~150000NTB-A分子であるが、それより高いまたは低いレベルでも処置され得る。がんにおけるNTB-Aのレベルは、必要に応じて、処置を実行する前に測定され得る。
【0129】
NTB-A発現を伴い、そして処置の対象となるがんの例としては、血液悪性腫瘍(B細胞、T細胞、およびNK細胞悪性腫瘍を含む)が挙げられる。いくつかの実施態様では、がんは、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、またはT細胞もしくはB細胞リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL))である。処置は、これらの種類の原発性または転移性の腫瘍を有する患者に対して適用することができる。処置はまた、従来の処置に不応性である患者、またはそのような処置への応答に続いて再発した患者に対しても適用され得る。
【0130】
関連する局面では、本発明は、NTB-Aに対して特異的に結合する抗体を含む抗体-薬物結合体(ADC)を用いて多発性骨髄腫を処置する方法を提供する。この局面の特定のバリエーションでは、多発性骨髄腫の処置のための抗NTB-A ADCは、本明細書で説明される抗NTB-A抗体(例えば、配列番号1の残基20~135に示されるアミノ酸配列を有するVHドメインおよび配列番号2の残基21~140に示されるアミノ酸配列を有するVLドメインに、それぞれ由来するVHドメインおよびVLドメインを含むヒト化抗体)を含む。他の局面では、多発性骨髄腫の処置のための抗NTB-A ADCは、本明細書で説明される抗体とは異なる抗体であって、NTB-Aの細胞外ドメインに対して特異的に結合する抗体を含む。抗NTB-A抗体の集合は、当該分野で公知である。抗NTB-Aの追加的な抗体は、例えば、NTB-Aまたはその1つ以上の細胞外ドメインで免疫することによって、新規に製作され得る。そのような免疫原は、天然の原料から、ペプチド合成により、または組み換え発現により、得ることができる。NTB-Aに対するヒト抗体は、当該分野で公知の様々な技術によって提供され得る。
【0131】
本発明の抗NTBA抗体は、裸の抗体として、またはその抗体薬物結合体として、B細胞に関連する疾患または障害(例えば、B細胞の数の過剰、過活動B細胞、または機能不全のB細胞を特徴とする、B細胞に関連する疾患)を処置するために用いることができる。これらの疾患は、炎症性疾患および自己免疫疾患を含む。本発明の方法によって処置可能な代表的な疾患としては、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、炎症性腸疾患、ぜんそく、アレルギー、セリアック病、移植片対宿主病、および移植拒絶反応が挙げられる。
【0132】
本発明は、本明細書で説明される疾患および障害の、単剤療法としての、または、例えば、そのような疾患および/または障害の処置の標準の治療と組み合わせた治療としての処置の方法を包含する。したがって、がんの処置の方法は、本発明の抗体もしくは抗体薬物結合体の有効量を、追加的な抗がん作用物質またはがんの症状を緩和する他の作用物質と組み合わせて必要とする患者に投与することを含む。自己免疫疾患の処置の方法は、本発明の抗体もしくは抗体薬物結合体の有効量を、自己免疫疾患の処置のための追加的な治療的作用物質と組み合わせて必要とする患者に投与することを含む。炎症性疾患の処置の方法は、本発明の抗体もしくは抗体薬物結合体の有効量を、炎症性疾患の処置のための追加的な治療的作用物質と組み合わせて必要とする患者に投与することを含む。
【0133】
抗NTB-A抗体は、単独で、またはその結合体として、有効レジメンにおいて投与され、有効レジメンは、がんの発症を遅らせ、がんの重篤度を低減させ、がんのさらなる悪化を阻害し、および/または少なくとも1つのがんの徴候または症状を緩和する、投薬量
、投与の経路、および投与の頻度を意味する。いくつかの例では、治療的有効性は、既存対照または同一患者における過去の経験に対して、個々の患者において観察され得る。他の例では、治療的有効性は、非処置患者の対照集団に対して、処置患者の集団における前臨床または臨床試験において実証され得る。
【0134】
抗NTB-A抗体の代表的な投薬量は、患者の体重に対して0.1mg/kgから50mg/kg、より典型的には1mg/kgから30mg/kg、1mg/kgから20mg/kg、1mg/kgから15mg/kg、1mg/kgから12mg/kg、もしくは1mg/kgから10mg/kg1、または2mg/kgから30mg/kg、2mg/kgから20mg/kg、2mg/kgから15mg/kg、2mg/kgから12mg/kg、もしくは2mg/kgから10mg/kg、または3mg/kgから30mg/kg、3mg/kgから20mg/kg、3mg/kgから15mg/kg、3mg/kgから12mg/kg、もしくは3mg/kgから10mg/kgである。モノクローナル抗体またはその抗体薬物結合体の代表的な投薬量は、被検体の体重に対して0.1mg/kgから7.5mg/kg、0.2mg/kgから7.5mg/kg、0.5mg/kgから7.5mg/kg、1mg/kgから7.5mg/kg、または2mg/kgから7.5mg/kgまたは3mg/kgから7.5mg/kg、あるいは0.1~20、または0.5~5mg/kg体重(例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10mg/kg)、あるいは固定投薬量として10~1500または200~1500mgである。いくつかの方法では、患者は、少なくとも0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、少なくとも2mg/kgまたは少なくとも3mg/kgの用量を投与され、3週間に1回またはそれ以上投与される。投薬量は、投与の頻度、患者の状態および以前の処置に対する応答に依存し、存在する場合には、とりわけ、以前の処置が予防的であるか治療的であるか、および障害が急性であるか慢性であるか、に依存する。
【0135】
投与は、典型的には非経口である。投与はまた、腫瘍内に直接局在化もされ得る。静脈内または皮下投与による全身の循環への投与が好ましい。静脈内投与は、例えば、ある期間(例えば、30~90分間)の点滴によるもの、または単回ボーラス注射によるものであり得る。
【0136】
投与の頻度は、因子の中でも、循環中の抗体または結合体の半減期、患者の状態および投与の経路に依存する。頻度は、日ごと、週ごと、月ごと、四半期ごと、または患者の状態もしくは処置されるがんの進行の変化に対応した不規則な間隔であり得る。静脈内投与の代表的な頻度は、連続的な一連の処置にわたって、週に2回と四半期ごととの間であるが、より高いもしくは低い頻度の投薬もまた可能である。他の静脈内投与の代表的な頻度は、連続的な一連の処置にわたって、週ごとまたは4週間ごとに3回の間であるが、より高いもしくは低い頻度の投薬もまた可能であるが。皮下投与については、代表的な投薬頻度は、日ごとから月ごとであるが、より高いもしくは低い頻度の投薬もまた可能である。
【0137】
投与される投薬量の回数は、がんの性質(例えば、急性症状を示すか、慢性症状を示すか)および処置への障害の応答に依存する。急性障害または慢性障害の急性増悪については、1回と10回との間の投薬はしばしば十分である。必要に応じて分割した形態の、単回ボーラス投薬は、時には急性障害または慢性障害の急性増悪について十分である。処置は、急性障害の再発または急性増悪について繰り返され得る。慢性障害については、抗体は、定期的な間隔、例えば、週ごと、2週間ごと、月ごと、四半期ごと、6か月ごとで、少なくとも1、5、または10年の間、または患者の生涯にわたって投与され得る。
【0138】
非経口投与のための医薬組成物は、好ましくは滅菌されており、実質的に等張で、GMP条件下で製造される。医薬組成物は、単位投薬剤形(すなわち、単回投与のための投薬量)で提供される。医薬組成物は、1つ以上の生理的に許容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤または補助剤を用いて製剤化され得る。製剤は、選択される投与の経路に依存する。注射については、抗体は水性の溶液に、好ましくは生理的に適合性の緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンガー溶液、または生理食塩水もしくは酢酸緩衝液(注射の部位の不快感を低減するため))に製剤化され得る。溶液は、製剤用作用物質(例えば、懸濁、安定化、および/または分散作用物質)を含み得る。あるいは、抗体は、使用前の適切なビヒクル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)との構成のために、凍結乾燥形態であり得る。液体製剤中の抗体の濃度は、例えば、1~100mg/ml(例えば、10mg/ml)であり得る。
【0139】
本発明の抗体による処置は、化学療法、放射線、幹細胞治療、外科的処置、その他の処置される障害に対して有効な処置と組み合わせられ得る。抗NTB-A抗体と共に投与され得る他の作用物質の有用なクラスとしては、例えば、がん性細胞上で発現する他のレセプターの抗体、抗チューブリン作用物質(例えば、オーリスタチン)、DNA副溝結合物質、DNA複製阻害物質、アルキル化作用物質(例えば、白金錯体(例えば、シスプラチン、モノ(白金)、ビス(白金)およびトリ核白金錯体ならびにカルボプラチン)、アントラサイクリン、抗生物質、抗葉酸物質、抗代謝物質、化学療法増感物質、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ化ピリミジン、イオノフォア、レキシトロプシン、ニトロソウレア、プラチノール、孔形成化合物(pre-forming compound)、プリン抗代謝物質、ピューロマイシン、放射線増感物質、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害物質、ビンカアルカロイド等が挙げられる。
【0140】
抗NTB-A抗体による処置は、上記で説明される任意の他の作用物質またはレジメンと、抗体単独または抗体薬物結合体として必要に応じて組み合わせられ、NTB-A発現性のがん(例えば、多発性骨髄腫、AML、NHL)を有する患者の進行のない生存時間または全体の生存時間の中央値を、特に再燃または不応性の場合に、同一の処置(例えば、化学療法)であるが単独のまたは結合体としての抗NTB-A抗体を伴わない処置と比較して、少なくとも30%または40%、しかし好ましくは50%、60%から70%、または100%の割合でさえ、もしくはそれより長く増加させ得る。加えて、もしくは代替的に、単独のまたは結合体としての抗NTB-A抗体を含む処置(例えば、標準的化学療法)は、NTB-A発現性のがんを有する患者の完全奏効率、部分奏効率、または客観的奏効率(完全+部分)を、同一の処置(例えば、化学療法)であるが抗NTB-A抗体を伴わない処置と比較して、少なくとも30%または40%、しかし好ましくは50%、60%から70%、または100%の割合でさえ増加させ得る。
【0141】
典型的には、臨床試験(例えば、フェーズII、フェーズII/IIIまたはフェーズIII試験)において、標準的療法に抗NTB-A抗体を加えて処置された患者の進行のない生存の中央値および/または奏効率における先述の増加は、標準的療法単独(またはプラシーボを加えて)を受ける患者の対照グループに対して、統計的に有意であった(例えば、p=0.05または0.01あるいは0.001のレベルで)。完全および部分奏効率は、がんについての臨床試験において広く用いられる客観的な基準(例えばNational Cancer Instituteおよび/またはFood and Drug Administrationによって挙げられる、または承認されるような)によって決定される。
【0142】
他の適用では、本発明の抗NTB-A抗体は、臨床診断もしくは処置に関して、または研究において、NTB-Aの検出に用いられ得る。がん上のNTBAの発現は、そのがんが本発明の抗体による処置の対象となることを示す。抗体はまた、NTB-Aを有する細胞および様々な刺激に対するそれらの応答を検出する実験室的研究のための研究試薬として、販売もされ得る。このような使用では、抗NTB-A抗体は、蛍光分子、スピン標識分子、酵素、または放射性同位体で標識され得、そしてNTB-Aについてのアッセイを行うために必要な試薬を全て有するキットの形態で提供され得る。抗体はまた、例えば、アフィニティクロマトグラフィーによって、NTB-Aを精製するためにも用いられ得る。
【0143】
上記または以下で言及される全ての特許出願、他の刊行物、アクセッション番号等は、それぞれの個々の項目が、具体的および個々にそのように参考として援用されることが示されている場合と同程度に、その全体が本明細書において全ての目的のために参考として援用される。異なる時点で、アクセッション番号に、異なるバージョンの配列が関連付けられている場合、本出願の有効な出願日においてアクセッション番号に関連付けられているバージョンを意味する。有効な出願日とは、該当する場合は、アクセッション番号に言及する、実際の出願日または優先権出願の早い方を意味する。同様に、異なる時点で刊行物の異なるバージョンが発行されていた場合、異なる指示がない限り、本出願の有効な出願日に最も近く発行されたバージョンを意味する。本発明の任意の特徴、工程、要素、実施態様、または局面は、特に異なって指示されない限り任意の他のものと組み合わせて用いられ得る。本発明は、明快さおよび理解のため、例証または例示の形で一部の詳細を説明されたが、添付された特許請求の範囲の範囲内で、特定の変化または改変を行い得るということが明らかである。
【実施例0144】
実施例1:多発性骨髄腫細胞株におけるNTB-Aの発現
Amo-1、JJN-3、Karpas-620、KMS-12-BM、MOLP-8、OPM-2(DSMZ;RPMI1640+20%FBS)、L-363(DSMZ;RPMI1640+15%FBS)、LP-1、SK-MM-2(DSMZ;RPMI1640+10%FBS)、EJM(DSMZ;EMEM+20%FBS)、MM.1R、MM.1S、NCI-H929、RPMI-8226(ATCC;RPMI1640+10%FBS)、およびU-266(ATCC;RPMI1640+15%FBS)細胞株を、5%CO2、37℃で培養した。500,000細胞を、FACsバッファー(PBS+3%FBS+0.02%アジ化ナトリウム)中で45分間、氷上で、抗NTB-A抗体NT-7および11A1を用いて染色した。PE結合体化二次抗体を検出に用いた。FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて、染色された細胞を分析した。
【0145】
15中5つの多発性骨髄腫細胞株、Karpas620、EJM、MM.1R、MM.1SおよびU-266上で、NTB-Aが発現していることが示された。
【0146】
実施例2:多発性骨髄腫患者サンプルにおけるNTB-Aの発現
凍結ヒト多発性骨髄腫患者骨髄吸引サンプル(500万~1000万細胞)を、BioServe(Beltsville,MD)、AllCells(Emeryville,CA),Conversant Healthcare Systems(Huntsville,AL)、およびProteoGenex(Culver City,CA)から購入した。MM患者骨髄細胞を37℃で解凍し、予め温められたRPMI1640培地に移し、そして細胞の凝集を最小化するために室温で10分間DNaseI(0.05mg/ml)により処理した。次に、細胞を遠心分離(1,400rpm;5分)し、RPMI1640+10%FBSに再懸濁し、そして、トリパンブルー排除法によって細胞数/生存を測定した。次に、患者細胞を遠心分離し、氷上のFACsバッファー(PBS+3%FBS、+0.02%アジ化ナトリウム)に再懸濁し、いかなる残骸も取り除くように100μmセルストレーナーによってろ過し、そして100μLの細胞懸濁液を染色のためにV底96ウェルプレートのウェルに分注した(1.2×105~1.0×106生存細胞数/ウェル)。患者骨髄吸引細胞を、抗hCD38-FITC、抗hCD45-APC、およびPE結合体化抗NTB-A(クローン:NT-7)もしくはアイソタイプ対照IgGにより3重染色した(氷上で30分)。染色した細胞を、FACsバッファー中で2回洗浄し、FACsCaliburフローサイトメーターを用いてフローサイトメトリーによる分析を行った。NTB-Aの細胞表面の発現を、多発性骨髄腫細胞CD38+/CD45-にゲーティングされた亜集団について定量した。CD138(クローン:1D4)陽性対照多発性骨髄腫抗原の発現もまた測定した。
【0147】
15中13の患者サンプルの表面上で、NTB-Aが発現していることが示された。以下の表3を参照:
【表3-1】
【表3-2】
【0148】
実施例3:抗体選択
NTB-A抗体産生マウスの脾臓およびリンパ節から回収したリンパ球を、骨髄腫細胞に融合した。融合細胞を、ハイブリドーマ生育培地中で一晩回復させた。回復に続いて、細胞をスピンダウンし、次に半固体培地中に播種した。ハイブリドーマをインキュベートし、IgG産生ハイブリドーマクローンを選び取った。ハイブリドーマ培養上清をスクリーニングし、NTB-A陽性細胞の表面上の蛍光シグナルの測定によって、478中313のハイブリドーマクローンが、NTB-A細胞外ドメインに対して特異的に結合することが見出された。細胞外ドメインNTB-Aへの蛍光標識ADCの特異的結合を、2.0μg/mlの濃度のNTB-A発現性の多発性骨髄腫細胞のパネルを用いて、フローサイトメトリー(BD Biosciences FACSCalibur)によって確認した。NTB-Aに結合する313のハイブリドーマを、国際出願第2011/109308号において説明される方法を用いてvc-MMAEと直接結合体化するために、展開した。直接結合体化された抗体のパネルを、結合アッセイおよび細胞傷害アッセイにおいて試験した。多発性骨髄腫細胞株との細胞傷害について、313のNTBA-A結合ADCをスクリーニングした。細胞傷害研究を、適切な生育培地にウェルあたり15,000の多発性骨髄腫細胞を播種することにより行った。細胞ベースの結合アッセイのために、抗NTB-A vcMMAE4-ロード抗体薬物結合体を、細胞上で12.5、50.0、および200ng/mLの最終濃度で試験し、37℃で合計96時間インキュベートした。細胞の生存を、Cell Titer Glo(Promega)蛍光アッセイを用いて測定し、ADCの効能を、非処理対照細胞に対する生存のパーセントに基づいて評価した。IC50値を、Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて作った用量曲線から生成した。細胞傷害の閾値は、50ng/ml以下のIC50に設定した。ADCとして最も強力な69の抗NTBAモノクローナル抗体が、次へ進んだ。69の最も強力なADCのうち6つのみが、12.5ng/mlより小さいIC50値を示した。飽和結合曲線およびKd値を、高度に細胞傷害性の抗NTB-A ADCの小さいパネルについてフローサイトメトリーによって測定した。抗NTB-A 11A1および26B7抗体を有するADCが、最も細胞傷害性であることが決定された。
【0149】
実施例4:抗NTB-A内部移行アッセイ
マウス11A1抗体mcMMAF結合体を、そのNTB-A
+細胞株U-266中に内部移行する能力について評価した(
図1)。
【0150】
U-266抗原陽性細胞を、5μg/mLの、抗ヒトNTB-A抗体薬物結合体である11A1-mcMMAF(マレイミドカプロイルリンカー(mc)を介して、システイン結合を介した抗体あたり薬物4つのストイキオメトリに結合体化された抗有糸分裂作用物質MMAF)と4℃で30分間、シェーカー上でインキュベートした。細胞を、RPMI1640培地+10%ウシ胎児血清で3回洗浄し、次に2つの同一の96ウェルU底プレート(BioSciences,San Jose,CA)中に、ウェルあたり5×105細胞/100μLでプレートアウトした。1つのプレートを37℃に配置し、他方を4℃に配置した。1つのサンプルは、時間0のために、直ちに洗浄および染色した。両方のプレートから0.5、1、2、8、および24時間の時点で細胞を回収し、低温洗浄バッファー(PBS+2.5%ウシ胎児血清)で2回洗浄し、そして、10μg/mLのヤギ抗マウスIgG-PE(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)により、氷上で光から保護して30分間染色した。再び細胞を洗浄バッファーで2回洗浄し、500μLのPBS+1%パラホルムアルデヒドによって固定した。一旦全ての細胞を回収および染色したら、FACsCaliburフローサイトメーター(BD BioSciences,San Jose,CA)上でそれらを分析し、そして、データは、時間0のMFIのパーセントとして表現された。
【0151】
実施例5:ADC細胞傷害アッセイ
抗体-薬物結合体(ADC)を、マウス抗NTB-Aモノクローナル抗体11A1および26B7について調製した。抗有糸分裂作用物質モノメチルオーリスタチンE(MMAE)を、カテプシンで切断可能なバリン-シトルリン(vc)リンカーを介して抗NTB-A mAbに結合体化し、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)を、マレイミドカプロイル(mc)リンカーを介して、米国特許第7,659,241号および第7,498298号において説明されるように、システイン結合を介した抗体あたり薬物4つのストイキオメトリに結合体化した。抗NTB-A-vc-MMAE(4)ADCおよび抗NTB-A-mc-MMAF(4)ADCを、10点の用量曲線(1,000ng/mL~0.05081ng/mL)を作製するために、培地中で3倍に連続的に希釈し、96ウェルアッセイプレート中で培養した多発性骨髄腫細胞にアプライした。Karpas-620、EJM、MM.1R、MM.1S、U-266(NTB-A+)、およびL363(NTB-A-)多発性骨髄腫細胞株を、抗NTB-A ADCにより4連で処理し、37℃、5%CO2で96時間インキュベートした。細胞を、Cell Titer Glo蛍光細胞傷害アッセイ(Promega)を用いて生存についてアッセイし、そしてEnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いてデータを収集した。用量効果曲線およびIC50値を、GraphPad Prismソフトウェアを用いて計算した。
【化2】
【化3】
【0152】
実施例6:競合的結合アッセイ
本実施例で説明されるアッセイは、11A1マウス抗体と結合について競合するサンプル抗体の能力を評価するために用いられる方法を詳述する。この特定の研究のために、26B7抗体およびNT-7抗体(クローン:NT-7(Biolegend #317208))の11A1抗体と競合する能力を評価した。また11A1抗体のそれ自体と競合する能力についても評価した。アッセイは、マウス11A1 IgG1抗体を含む「リファレンス抗体」(すなわち、天然(native)(天然(natural))の抗体の2価構造中のVHドメインおよびVLドメイン、すなわち、イムノグロブリン鎖の2つの同一のペアからなる4量体であって、それぞれのペアは、1つの軽鎖および1つの重鎖を有する)を利用する。
【0153】
細胞あたり約24,500のNTB-A表面分子を発現させる指数増殖NTB-A陽性細胞(例えば、Ramos細胞)を回収し、等張リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、氷上で保管した。NTB-A陽性細胞は、氷上の96ウェルV底プレートのウェルに、ウェルあたり100μLの体積中のウェルあたり2×105細胞で、分注した。
【0154】
蛍光標識(例えば、AF647)と結合体化したリファレンス抗体の2倍濃縮物を、PBS/FBS(2%ウシ胎児血清(FBS)を含むPBS/0.02%アジ化ナトリウム)中で調製し、1倍濃縮物が0.0188μg/mL(11A1mAbのKd値濃度)と等しくなるようにした。次に、このPBS/FBS/標識Ab溶液を、96ウェル希釈プレート(200μL/ウェル)のウェルに分注した。ウェルの行Aは、PBS/FBS/標識Ab溶液中の非標識サンプル抗体の最初の2倍ミックスのために残した(以下の項目(4)を参照);対照のために十分なウェルもまた残した。
【0155】
非標識サンプル抗体(競合的結合について評価される)の2倍濃縮物を、PBS/FBS AF標識Ab溶液(20μg/mLのサンプル抗体;したがって、1倍濃縮物は10μg/mLに等しい)中で調製した。次に、非標識サンプル抗体の2倍濃縮物を、96ウェル希釈プレートの最初の列のウェルに分注した。次に、サンプルを5倍の希釈系列(最初のサンプル希釈から50μLを、次の行の200μLのPBS/FBS/標識Ab溶液に加え、それをプレートの行から行へと繰り返す)で連続的に希釈した。
【0156】
十分なウェル(例えば、ウェルA1からA6)を、フローサイトメトリーのセットアップおよび非染色ウェルのために残し、PBS/FBSのみ(標識リファレンス抗体なし)を加えた。これらのウェルは、非染色対照(0%染色)として用いた。十分なウェル(例えば、ウェルA7からA12)をまた、100%染色として働くように残し、非標識サンプル抗体なしのPBS/FBS/標識Ab溶液を入れた。
【0157】
次に、希釈プレートの100μLの希釈されたサンプルを、V底プレートの細胞(100μL)の対応するウェルに2連で移動させ、1倍の濃縮物を得た。次に、これらのサンプルを光から保護して氷上で1時間インキュベートした。
【0158】
次に、PBS/FBSで細胞を2回洗浄した。例えば、プレートを1000rpmで5分間スピンダウンし、上清を捨て、細胞を分散させるためにプレートをボルテックスし、そして洗浄バッファー(PBS/FBS)を加えた(約200μL/ウェル/洗浄);最後のスピンの後、プレートを裏返し、穏やかに乾燥させた。
【0159】
洗浄に続いて、細胞ペレットを250μLのPBS/FBSに再懸濁し、そして、フローサイトメーター(例えば、LSRIIフローサイトメーター、BD BioSciences,San Jose,CA)上で分析するまで、光から保護して2~8℃で細胞を保管した。
【0160】
フローサイトメーター上では、目的の細胞集団を、集団プロットを得るための前方散乱および側方散乱集団(FSC/SSC)のゲーティングにより単離し、蛍光標識の蛍光シグナルを取得した。
【0161】
次に、フローサイトメトリーのデータを、シグモイド用量-応答分析(可変勾配)を用いて分析した。非標識抗体のIC50を、あてはめた曲線から決定した(すなわち、標識リファレンス抗体が最大結合の50%を示す非標識サンプル抗体の濃度)。
【0162】
11A1抗体は、それ自体と、および抗体26B7と競合したが、抗体NT-7とは競合しなかった。非標識サンプル抗体の10ug/mlの濃度における最大の結合の45%未満まで(好ましくは、20%未満まで、または10%未満にまでも)11A1結合を低減させるこれらの抗体のみが、NTB-Aへの結合について11A1と競合すると考えられる。
【0163】
11A1および26B7抗体を、米国特許第7,874,067号において説明されるFACSに基づく競合アッセイを用いて、480.12抗体との競合についても試験した。11A1および26B7抗体は、そのようなアッセイでは、480.12抗体と結合について競合しなかった(データは示されていない)。
【0164】
実施例7:mAbアフィニティ測定および結合特異性
Alexa Fluor 647と結合体化したマウス抗ヒトNTB-A抗体(11A1および26B7)の用量滴定を用いて、飽和結合曲線を生成した。抗原陽性Ramos細胞を、96ウェルV底プレート(Thermo Scientific,Rochester,NY)に、ウェルあたり1×105細胞で播種した。2倍濃縮抗体の3倍連続希釈をFACsバッファー(PBS+2%ウシ胎児血清+0.02%アジ化物)中で調製し、2連で細胞に加えた。抗体溶液を氷上で1時間、光から保護して細胞とインキュベートした。細胞をFACsバッファーで2回洗浄し、そしてLSRIIフローサイトメーター(BD BioSciences,San Jose,CA)上で分析した。GraphPad Prismソフトウェア(La Jolla,CA)によりKD値を決定した。
【0165】
マウス抗ヒトNTB-A抗体11A1および26B7を、U-266多発性骨髄腫細胞、ならびに293-F17/hNTB-Aアイソフォーム4および293-F17/カニクイザルNTB-Aの安定な形質導入体に対する結合について試験した。細胞を、FACSバファー(PBS+2%ウシ胎児血清+0.02%アジ化物)中で2.5×105細胞/ウェルで播種し、そして氷上で45分間2μg/mLの抗体とインキュベートした。細胞を2回洗浄し、氷上で光から保護して30分間、ヤギ抗マウスIgG-PE(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)により染色した。細胞を再びFACsバッファーで2回洗浄し、そして、500μLの1×PBS+1%パラホルムアルデヒドで固定した。染色された細胞を、FACs Caliburフローサイトメーター(BD BioSciences,San Jose,CA)上で分析した。
【化4】
【0166】
実施例8:インビボMM異種移植研究
NODscidIL2レセプターガンマ鎖ノックアウト(NSG)マウスを用いて、腫瘍細胞が骨髄区画に局在化する、多発性骨髄腫の播種性細胞株モデルを開発する。100万個のMM.1R多発性骨髄腫細胞または500万個のU-266多発性骨髄腫細胞をマウスに移植し、次に、腫瘍細胞移植の5日後に抗NTB-A抗体薬物結合体を投薬する。4つのvcMMAE分子をロードしたvcMMAE抗NTB-A抗体薬物結合体を、1.0および3.0mg/kgの単回用量で腹腔内注射によりマウスに送達する。多発性骨髄腫腫瘍細胞により分泌される循環ラムダ軽鎖Igのレベルについて、抗体薬物結合体の投薬後、2から3週間ごとにELISAアッセイによりマウス血清をモニターする。それぞれの研究グループのマウスは、疾患進行の徴候、および罹患率について評価し、疾患の進行した徴候により屠殺する。対照および処置研究グループについて、Kaplan-Meier生存プロットを生成し、それぞれのADC用量レベルにおいて観察された抗腫瘍活性の、ビヒクル対照もしくは非結合対照ADCに対する有意性を決定するために統計的分析を行う。