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  • 特開-半導体製造装置部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006662
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】半導体製造装置部材
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/486 20060101AFI20220105BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C04B35/486
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109024
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知典
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信也
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB29
5F004CA06
(57)【要約】
【課題】半導体製造装置部材のtanδを小さくする。
【解決手段】チャンバ20の蓋部22のプラズマに接する面(すなわち、プラズマ接触面)は、CeOおよびZrOを主成分とする多結晶体により形成される。当該多結晶体において、CeOの含有率は12mol%以上かつ30mol%以下であり、残部がZrOである。当該多結晶体の結晶中に含まれる正方晶および立方晶の合計割合は90質量%以上である。当該多結晶体の気孔率は3%以下である。これにより、多結晶体のtanδを小さくすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置において使用される半導体製造装置部材であって、
プラズマに接する面が、CeOおよびZrOを主成分とする多結晶体により形成され、
前記多結晶体において、CeOの含有率は12mol%以上かつ30mol%以下であり、残部がZrOであり、
前記多結晶体の結晶中に含まれる正方晶および立方晶の合計割合は90質量%以上であり、
前記多結晶体の気孔率は3%以下であることを特徴とする半導体製造装置部材。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体製造装置部材であって、
前記多結晶体の周波数1MHzにおけるtanδは、0.5×10-3以下であり、周波数20MHzにおけるtanδは、1.0×10-3よりも小さいことを特徴とする半導体製造装置部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板の製造過程において、プラズマエッチング等のプラズマ処理が半導体基板に対して行われている。特許文献1では、半導体基板にプラズマ処理を施す際に用いられる真空容器の構造材として、耐食性が高いジルコニア(ZrO)製のセラミック構造材が開示されている。
【0003】
ジルコニア製の構造材は、高耐食、高強度である一方、tanδ(すなわち、誘電正接)が大きく、誘電損失が大きいことが知られている。また、ジルコニア製の構造材では、安定化のため、イットリア(Y)等の安定化剤が添加される。非特許文献1では、ジルコニアにおける高い誘電損失は、ジルコニアにイットリアを添加することにより酸素空孔が形成され、酸素空孔とイットリウム(Y)イオンとが近接して双極子のような状態を形成することによる、と説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/203369号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. WELLER and H. SCHUBERT、「Internal Friction, Dielectric Loss, and Ionic Conductivity of Tetragonal ZrO2-3%Y2O3 (Y-TZP)」、Journal of American Ceramic Society, 69 [7]、p. 573-577 (1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体基板に対してプラズマ処理を施す装置では、プラズマ励起のための高周波電界近傍に誘電損失が大きい構造材が用いられると、当該電界のエネルギーが減衰するおそれがある。
【0007】
本発明は、半導体製造装置において使用される半導体製造装置部材に向けられており、少なくともプラズマに接する面がCeOおよびZrOを主成分とする半導体製造装置部材において、当該半導体製造装置部材のtanδを小さくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい一の形態に係る半導体製造装置部材は、プラズマに接する面が、CeOおよびZrOを主成分とする多結晶体により形成される。前記多結晶体において、CeOの含有率は12mol%以上かつ30mol%以下であり、残部がZrOである。前記多結晶体の結晶中に含まれる正方晶および立方晶の合計割合は90質量%以上である。前記多結晶体の気孔率は3%以下である。
【0009】
好ましくは、前記多結晶体の周波数1MHzにおけるtanδは、0.5×10-3以下であり、周波数20MHzにおけるtanδは、1.0×10-3よりも小さい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、半導体製造装置部材のtanδを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】半導体製造装置の断面図である。
図2】蓋部の製造の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る半導体製造装置部材が使用される半導体製造装置1の断面図である。半導体製造装置1は、例えば、半導体基板9(以下、単に「基板9」と呼ぶ。)に対してプラズマエッチング等のプラズマ処理を行う装置である。
【0013】
半導体製造装置1は、チャンバ本体21と、蓋部22と、サセプター23と、電極24と、を備える。チャンバ本体21は、有底略円筒状の部材である。蓋部22は、後述する多結晶体を用いて作成された略円板状の部材である。蓋部22は、チャンバ本体21の図1中における上端部に取り付けられる。半導体製造装置1では、蓋部22によりチャンバ本体21の上部開口が閉塞されることにより、内部に密閉空間を有するチャンバ20が形成される。以下の説明では、図1中の上側および下側を、単に「上側」および「下側」と呼ぶ。また、図1中の上下方向を、単に「上下方向」と呼ぶ。図1中の上下方向は、実際の上下方向と必ずしも一致する必要はない。
【0014】
サセプター23は、チャンバ20の内部空間に収容される。サセプター23は、略円板状の部材である。サセプター23の上面上には、略円板状の基板9が載置される。サセプター23は、基板9を下側から支持する。サセプター23の内部には、バイアス電源に接続される内部電極(図示省略)が設けられている。電極24は、蓋部22の上面上に配置される。電極24は、図示省略の高周波電源に接続される。半導体製造装置1では、電極24に高周波が印可されることにより、チャンバ20内のガスがプラズマ化され、当該プラズマによる基板9に対する処理が行われる。蓋部22は、電極24と、プラズマ処理が行われるチャンバ20の内部空間とを隔てる隔壁である。
【0015】
蓋部22は、セリア(酸化セリウム(CeO))およびジルコニア(二酸化ジルコニウム(ZrO))を主成分とする多結晶体を用いて形成される。蓋部22では、少なくともプラズマに接する面(すなわち、図1中の蓋部22の下面のうち、チャンバ20の内部空間に露出している領域)が、当該多結晶体により形成される。例えば、蓋部22の全体が当該多結晶体により形成されてもよく、蓋部22のプラズマに接する面(以下、「プラズマ接触面」とも呼ぶ。)のみが当該多結晶体により形成されてもよい。
【0016】
蓋部22のプラズマ接触面(すなわち、蓋部22の内壁面)のみが上記多結晶体により形成される場合、例えば、当該多結晶体とは別の材料により形成された略円板状の蓋部本体の下面に、当該多結晶体により形成された略円板状の薄い部材が積層されて接合されてもよい。あるいは、当該多結晶体とは別の材料により形成された略円板状の蓋部本体の下面が、当該多結晶体により形成された被膜により被覆されてもよい。以下の説明では、蓋部22の全体が当該多結晶体を用いて形成されるものとして説明する。
【0017】
上述の多結晶体では、CeOの含有率は12mol%以上かつ30mol%以下であり、残部がZrOである。すなわち、当該多結晶体が実質的にCeOおよびZrOのみからなる場合、多結晶体におけるZrOの含有率は、70mol%以上かつ88mol%以下である。多結晶体は、CeOおよびZrOの含有率に実質的に影響しない程度の微量の焼結助剤および/または不可避化合物を含んでいてもよい。
【0018】
当該多結晶体の結晶相は、主に、正方晶および/または立方晶(すなわち、正方晶ジルコニアおよび/または立方晶ジルコニアと同じ結晶構造)である。多結晶体の結晶中に含まれる正方晶および立方晶の合計割合(以下、「正方・立方割合」とも呼ぶ。)は、90質量%以上である。正方・立方割合は、多結晶体の結晶中に含まれる正方晶の質量と立方晶の質量との和を、多結晶体中の結晶の合計質量によって除算したものである。多結晶体中の結晶の合計質量とは、正方晶の質量と、立方晶の質量と、斜方晶等の他の結晶の質量との和である。正方・立方割合は、リートベルト法により求めることが可能である。
【0019】
多結晶体の気孔率は、3%以下であり、好ましくは1%以下である。当該気孔には、開気孔および閉気孔が含まれる。当該気孔率は、アルキメデス法により求めることが可能である。
【0020】
周波数1MHz~20MHzの範囲における多結晶体の室温(例えば、25℃)でのtanδ(すなわち、誘電正接)は、好ましくは、周波数1MHzで0.5×10-3以下であり、周波数20MHzで1.0×10-3よりも小さい。当該tanδは、「JIS C 2141:1992」および「JIS C 2138:2007」に準じた試験により求めることが可能である。
【0021】
次に、図2を参照しつつ蓋部22の製造方法の一例について説明する。蓋部22を製造する際には、まず、CeOおよびZrOを混合した混合粉末が準備される(ステップS11)。ステップS11では、CeOおよびZrOの粉末が、所定の組成となるように秤量され、ボールミル等により湿式混合される。そして、湿式混合により得られたスラリーを乾燥させ、篩により整粒することにより、上述の混合粉末(すなわち、調合粉末)が得られる。なお、CeOおよびZrOの粉末は、湿式混合ではなく、乾式混合により混合されてもよい。また、混合粉末を生成する際に、焼結助剤の粉末が必要に応じて添加されてもよい。
【0022】
続いて、ステップS11にて準備された混合粉末を、所定形状の成形体に成形する(ステップS12)。ステップS12では、例えば、一軸加圧成形用の粉末プレス機により成形体が成形される。当該成形体の成形は、形状を保持できるのであれば、他の様々な方法により行われてもよい。また、前述のスラリーのように、流動性のある状態のままモールドに流し込んだ後に溶媒成分を除去し、所定形状の成形体としてもよい。その後、当該成形体が焼成され、多結晶体である蓋部22が生成される(ステップS13)。
【0023】
蓋部22は、上記以外の製造方法により製造されてもよい。例えば、ステップS11において、上述のスラリーを乾燥させた後、仮焼成することにより、結晶相が主に正方晶および/または立方晶である仮焼体を得る。そして、当該仮焼体を必要に応じて粉砕した後、ステップS12において仮焼体を成形して成形体が得られる。なお、成形前の仮焼体に、必要に応じて焼結助剤の粉末が添加されてもよい。
【0024】
次に、表1および表2を参照しつつ本発明に係る多結晶体の実施例1~6、および、当該多結晶体と比較するための比較例1~4の多結晶体について説明する。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
表1および表2では、実施例1~6および比較例1~4の多結晶体について、組成(mol%)、焼成温度、結晶相の種類および正方・立方割合、気孔率、並びに、周波数1MHz,20MHzにおける室温でのtanδ(すなわち、誘電正接)を示す。
【0028】
実施例1~6および比較例1~4の多結晶体は、上述のステップS11~S13に示す製造方法により製造した。実施例1~6および比較例1~4では、上述のステップS11において、混合前の第CeOの粉末の平均粒子径は0.25μmであり、ZrOの平均粒子径は0.1μmであった。また、ボールミルによる湿式混合では、φ5mmのジルコニア(3YZ)製の玉石を用い、ポリビニルアルコール(PVA)溶液を溶媒として用い、16時間粉砕混合を行った。ボールミルのポット容積は1L(リットル)であり、当該ポットにおいて、CeOおよびZrOの粉末を合計100g、PVA0.5g、および、水300mLを混合した。湿式混合により得られたスラリーの乾燥は、大気雰囲気下で行った。また、篩は、100メッシュのものを用いた。
【0029】
ステップS12では、一軸加圧成形用の粉末プレス機により、圧力20MPaにて混合粉末をプレスし、縦80mm、横80mm、厚さ10mmの略平板状の試験用成形体を成形した。ステップS13の焼成時の昇温速度は100℃/hであり、最高温度は1400℃~1500℃であった。また、最高温度での保持時間は5時間であった。
【0030】
表1に示すように、実施例1~6および比較例1~4における多結晶体の組成は、CeOおよびZrOである。実施例1~6および比較例3~4では、多結晶体におけるCeOの含有率は12mol%以上かつ30mol%以下であり、残部はZrOである。一方、比較例1では、CeOの含有率は10mol%(すなわち、12mol%未満)であり、比較例2では、CeOの含有率は32mol%(すなわち、30mol%よりも大)である。
【0031】
ステップS13における焼成温度(すなわち、焼成時の最高温度)は、実施例1~4および比較例1~2では1500℃である。一方、比較例3および比較例4ではそれぞれ、焼成温度は1400℃および1450℃と低い。
【0032】
表2に示すように、実施例1~6の多結晶体では、結晶相は正方晶または立方晶であり、正方・立方割合は90質量%以上であった。また、当該多結晶体の気孔率は3%以下であった。周波数1MHzにおける当該多結晶体の室温でのtanδは、0.2×10-3~0.5×10-3(すなわち、0.5×10-3以下)であり、周波数20MHzにおける当該多結晶体の室温でのtanδは、1.0×10-3よりも小さかった(すなわち、1.0×10-3未満であった)。
【0033】
一方、CeOの含有率が10mol%(すなわち、12mol%未満)と低い比較例1では、多結晶体は安定せず崩壊した。なお、比較例1の崩壊した多結晶体では、結晶相は斜方晶であった。CeOの含有率が32mol%(すなわち、30mol%よりも大)と高い比較例2では、周波数1MHzおよび20MHzにおける当該多結晶体の室温でのtanδはそれぞれ、1.0×10-3および1.2×10-3と大きかった。
【0034】
焼成温度が1400℃と低い比較例3では、正方・立方割合が90%未満と低く、気孔率も10%と高かった。また、周波数1MHzおよび20MHzにおける当該多結晶体の室温でのtanδはそれぞれ、2.4×10-3および2.7×10-3と大きかった。焼成温度が1450℃と低い比較例4では、気孔率は5%と高く、周波数1MHzおよび20MHzにおける当該多結晶体の室温でのtanδはそれぞれ、1.1×10-3および1.4×10-3と大きかった。比較例3および比較例4のように気孔率が高い場合、多結晶体の気孔内に存在する雰囲気に含まれる水分量が多くなるため、tanδが大きくなると考えられる。
【0035】
以上に説明したように、半導体製造装置において使用される上述の半導体製造装置部材(上記例では、蓋部22)では、プラズマに接する面(すなわち、プラズマ接触面)が、CeOおよびZrOを主成分とする多結晶体により形成される。当該多結晶体において、CeOの含有率は12mol%以上かつ30mol%以下であり、残部がZrOである。当該多結晶体の結晶中に含まれる正方晶および立方晶の合計割合は90質量%以上でありる。当該多結晶体の気孔率は3%以下である。
【0036】
当該多結晶体では、ZrOの4価のZrイオンに対して、CeOの4価のCeイオンが添加されることにより安定化されるため、価数が不足せず、酸素空孔が形成されない。これにより、表1および表2の実施例1~6に示すように、上述の多結晶体のtanδを小さくし、誘電損失を小さくすることができる。その結果、基板9に対してプラズマ処理を行う半導体製造装置1において、プラズマ接触面が当該多結晶体により形成された蓋部22が使用される場合、プラズマ励起のための高周波電界のエネルギー減衰を抑制することができる。
【0037】
好ましくは、上記多結晶体の周波数1MHzにおけるtanδは、0.5×10-3以下であり、周波数20MHzにおけるtanδは、1.0×10-3よりも小さい。これにより、上述の高周波電界のエネルギー減衰を、好適に抑制することができる。
【0038】
上述の多結晶体および半導体製造装置部材では、様々な変更が可能である。
【0039】
上述の半導体製造装置部材は、必ずしもチャンバ20の蓋部22である必要はなく、例えば、雰囲気に曝したくない高周波電極とプラズマ室との隔壁および当該隔壁に類する部位に使用される。この場合、当該隔壁のうち、少なくともプラズマに接する面(すなわち、プラズマ室に露出する面)は上述の多結晶体により形成される。
【0040】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、半導体製造装置に関する分野、例えば、半導体基板にプラズマ処理を施す半導体製造装置において半導体基板を収容するチャンバの製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 半導体製造装置
22 蓋部
図1
図2