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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066634
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】汚染土壌における杭の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/00 20060101AFI20220422BHJP
   E02D 7/22 20060101ALI20220422BHJP
   E02D 9/02 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
E02D7/00 A
E02D7/22
E02D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175089
(22)【出願日】2020-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592198404
【氏名又は名称】千代田工営株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596146821
【氏名又は名称】菱建基礎株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】市川 和臣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勲
(72)【発明者】
【氏名】里城 義武
(72)【発明者】
【氏名】深谷 利行
(72)【発明者】
【氏名】水島 章二
(72)【発明者】
【氏名】一色 登志夫
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA06
2D050AA07
2D050CA01
2D050CA04
2D050CB03
2D050CB11
2D050CB23
2D050DA01
(57)【要約】
【課題】不透水層の下の層に汚染が広がるのを防止でき、かつ汚染土壌の地表への排土を防止できる汚染土壌における杭の施工方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る杭の施工方法は、先端部外周面に推進翼7を有するケーシング管9と、ケーシング管9の先端開口を閉塞可能な閉塞蓋11とを備えた杭施工装置13を用いて、閉塞蓋11によりケーシング管9の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で不透水層3まで回転圧入するケーシング管圧入工程と、閉塞蓋11を取り外して、ケーシング管9内に所定の強度と量の流動固化体17を投入する流動固化体投入工程と、流動固化体17が投入されたケーシング管9内に既成杭21を施工して支持層5まで打設する既成杭打設工程と、ケーシング管9を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に汚染層、その下方に不透水層、さらにその下方に支持層がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、
先端部外周面に推進翼を有するケーシング管と、該ケーシング管の先端開口を閉塞可能な閉塞蓋とを備えた杭施工装置を用いて、該閉塞蓋により前記ケーシング管の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で前記不透水層まで回転圧入するケーシング管圧入工程と、
前記閉塞蓋を除去して、前記ケーシング管内に所定の強度と量の流動固化体を投入する流動固化体投入工程と、
前記流動固化体が投入された前記ケーシング管内に既成杭を施工して前記支持層まで打設する既成杭打設工程と、
前記ケーシング管を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたことを特徴とする杭の施工方法。
【請求項2】
上部に汚染層、その下方に不透水層、さらにその下方に支持層がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、
先端部外周面に推進翼を有するケーシング管と、該ケーシング管の先端開口を閉塞可能な閉塞蓋とを備えた杭施工装置を用いて、該閉塞蓋により前記ケーシング管の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で前記不透水層まで回転圧入するケーシング管圧入工程と、
前記閉塞蓋を除去して、前記ケーシング管内に既成杭を施工して前記支持層まで打設する既成杭打設工程と、
前記ケーシング管と前記既成杭との間に所定の強度と量の流動固化体を投入する流動固化体投入工程と、
前記ケーシング管を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたことを特徴とする杭の施工方法。
【請求項3】
上部に汚染層、その下方に不透水層、さらにその下方に支持層がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、
先端部外周面に推進翼を有するケーシング管と、該ケーシング管の先端開口を閉塞可能な回転翼を有する鋼管杭とを備えた杭施工装置を用いて、前記鋼管杭を前記ケーシング管に挿入し、かつ前記回転翼により前記ケーシング管の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で前記不透水層まで前記ケーシング管を回転圧入するケーシング管圧入工程と、
前記ケーシング管内に所定の強度と量の流動固化体を投入する流動固化体投入工程と、
前記ケーシング管内の前記鋼管杭を施工して前記支持層まで打設する鋼管杭打設工程と、
前記ケーシング管を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたことを特徴とする杭の施工方法。
【請求項4】
上部に汚染層、その下方に不透水層、さらにその下方に支持層がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、
先端部外周面に推進翼を有するケーシング管と、該ケーシング管の先端開口を閉塞可能な回転翼を有する鋼管杭とを備えた杭施工装置を用いて、前記鋼管杭を前記ケーシング管に挿入し、かつ前記回転翼により前記ケーシング管の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で前記不透水層まで回転圧入するケーシング管圧入工程と、
前記ケーシング管内の前記鋼管杭を前記支持層まで打設する鋼管杭打設工程と、
前記ケーシング管内に所定の強度と量の流動固化体を投入する流動固化体投入工程と、
前記ケーシング管を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたことを特徴とする杭の施工方法。
【請求項5】
上部に汚染層、その下方に不透水層、さらにその下方に支持層がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、
先端部外周面に推進翼を有するケーシング管と、該ケーシング管の先端開口を閉塞可能な閉塞蓋とを備えた杭施工装置を用いて、前記閉塞蓋により前記ケーシング管の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で前記不透水層まで回転圧入するケーシング管圧入工程と、
前記閉塞蓋を除去して、前記ケーシング管内に掘削ドリルを挿入して該ケーシング管内及び前記支持層まで掘削して、場所打ち杭を打設する場所打ち杭打設工程と、
前記ケーシング管を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたことを特徴とする杭の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部に汚染層、その下方に不透水層、さらにその下方に支持層がある地盤に杭を施工する杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の地層が汚染されている地盤内に杭を施工する際、汚染層より下方に存在する不透水層を打ち抜いて、その下にある支持層まで施工しなければならない場合がある。
この場合、オーガー等で地盤を支持層まで掘削してしまうと、汚染層の汚染された土壌や水が、不透水層を通過して下まで移動してしまい、汚染範囲が広がってしまう恐れがある。
そのため、ケーシングと呼ばれる鋼管を回転等で圧入しながら管内を掘削して地上へ排土し、その後に場所打ち杭を構築して、その後ケーシングを引き抜くというのが一般的である。
【0003】
しかしながら、ケーシングの引き抜き時に不透水層の杭周辺に水みちができてしまい、汚染が不透水層の下の層まで広がる可能性がある。
この点、ケーシングを引き抜くことなく地中に残置することも可能であるが、ケーシングは非常に高価であり、コスト面から現実的ではない。
【0004】
このような課題に対しては、例えば非特許文献1には、不透水層までケーシングを圧入し、その後遮水材を充填後に杭を施工する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版) Appendix-12 平成24年8月 環境省 水・大気環境局 土壌環境課
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、非特許文献1の方法によれば、ケーシングの引き抜きによる水みちができることを防止することは可能である。
しかし、非特許文献1の方法であっても、ケーシングの回転圧入時において汚染土壌を地表へ排土することが必要なため、その処理に多額の費用を要するという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、不透水層の下の層に汚染が広がるのを防止でき、かつ汚染土壌の地表への排土を防止できる汚染土壌における杭の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る杭の施工方法は、上部に汚染層、その下方に不透水層、さらにその下方に支持層がある地盤に杭を施工する方法であって、
先端部外周面に推進翼を有するケーシング管と、該ケーシング管の先端開口を閉塞可能な閉塞蓋とを備えた杭施工装置を用いて、該閉塞蓋により前記ケーシング管の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で前記不透水層まで回転圧入するケーシング管圧入工程と、
前記閉塞蓋を除去して、前記ケーシング管内に所定の強度と量の流動固化体を投入する流動固化体投入工程と、
前記流動固化体が投入された前記ケーシング管内に既成杭を施工して前記支持層まで打設する既成杭打設工程と、
前記ケーシング管を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上部に汚染層、その下方に不透水層、さらにその下方に支持層がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、
先端部外周面に推進翼を有するケーシング管と、該ケーシング管の先端開口を閉塞可能な閉塞蓋とを備えた杭施工装置を用いて、該閉塞蓋により前記ケーシング管の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で前記不透水層まで回転圧入するケーシング管圧入工程と、
前記閉塞蓋を除去して、前記ケーシング管内に既成杭を施工して前記支持層まで打設する既成杭打設工程と、
前記ケーシング管と前記既成杭との間に所定の強度と量の流動固化体を投入する流動固化体投入工程と、
前記ケーシング管を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上部に汚染層、その下方に不透水層、さらにその下方に支持層がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、
先端部外周面に推進翼を有するケーシング管と、該ケーシング管の先端開口を閉塞可能な回転翼を有する鋼管杭とを備えた杭施工装置を用いて、前記鋼管杭を前記ケーシング管に挿入し、かつ前記回転翼により前記ケーシング管の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で前記不透水層まで前記ケーシング管を回転圧入するケーシング管圧入工程と、
前記ケーシング管内に所定の強度と量の流動固化体を投入する流動固化体投入工程と、
前記ケーシング管内の前記鋼管杭を施工して前記支持層まで打設する鋼管杭打設工程と、
前記ケーシング管を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上部に汚染層、その下方に不透水層、さらにその下方に支持層がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、
先端部外周面に推進翼を有するケーシング管と、該ケーシング管の先端開口を閉塞可能な回転翼を有する鋼管杭とを備えた杭施工装置を用いて、前記鋼管杭を前記ケーシング管に挿入し、かつ前記回転翼により前記ケーシング管の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で前記不透水層まで回転圧入するケーシング管圧入工程と、
前記ケーシング管内の前記鋼管杭を前記支持層まで打設する鋼管杭打設工程と、
前記ケーシング管内に所定の強度と量の流動固化体を投入する流動固化体投入工程と、
前記ケーシング管を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
(5)また、上部に汚染層、その下方に不透水層、さらにその下方に支持層がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、
先端部外周面に推進翼を有するケーシング管と、該ケーシング管の先端開口を閉塞可能な閉塞蓋とを備えた杭施工装置を用いて、前記閉塞蓋により前記ケーシング管の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で前記不透水層まで回転圧入するケーシング管圧入工程と、
前記閉塞蓋を除去して、前記ケーシング管内に掘削ドリルを挿入して該ケーシング管内及び前記支持層まで掘削して、場所打ち杭を打設する場所打ち杭打設工程と、
前記ケーシング管を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、先端部外周面に推進翼を有するケーシング管と、該ケーシング管の先端開口を閉塞可能な閉塞蓋とを備えた杭施工装置を用いて、該閉塞蓋により前記ケーシング管の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で前記不透水層まで回転圧入するケーシング管圧入工程と、前記閉塞蓋を除去して、前記ケーシング管内に所定の強度と量の流動固化体を投入する流動固化体投入工程と、前記流動固化体が投入された前記ケーシング管内に既成杭を施工して前記支持層まで打設する既成杭打設工程と、
前記ケーシング管を引き抜くケーシング管引抜工程と、を備えたことにより、汚染土壌を地表に排出せずに杭を施工できるため、汚染土壌の処理費用が発生せず、杭の施工工事を安価に実施できる。また、汚染土壌や汚染水が不透水層を通過して鉛直下方に広がる危険性がなく、安全に杭の施工を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1に係る杭の施工方法の説明図である。
図2】本発明の実施の形態2に係る杭の施工方法の説明図である。
図3】本発明の実施の形態3に係る杭の施工方法の説明図である。
図4】本発明の実施の形態4に係る杭の施工方法の説明図である。
図5】本発明の実施の形態5に係る杭の施工方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る杭の施工方法は、図1に示すように、上部に汚染層1、その下方に不透水層3、さらにその下方に支持層5がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、ケーシング管圧入工程と(図1(a)参照)、流動固化体投入工程と(図1(b)(c)参照)、既成杭打設工程と(図1(d)参照)、ケーシング管引抜工程(図1(e)参照)と、を備えたものである。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0016】
<ケーシング管圧入工程>
ケーシング管圧入工程は、図1(a)に示すように、先端部外周面に推進翼7を有するケーシング管9と、ケーシング管9の先端開口を閉塞可能な閉塞蓋11とを備えた杭施工装置13を用いて、閉塞蓋11によりケーシング管9の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で不透水層3まで回転圧入する工程である。
【0017】
推進翼7は、ケーシング管9の最先端より少し上方に取り付けるのが望ましい(図1(a)参照)。この位置に取り付けることで、ケーシング管9の先端が不透水層3に貫入した際に、推進翼7が不透水層3に入らないため、不透水層3が推進翼7により乱されるのを防止できるからである。
なお、推進翼7の位置としては、ケーシング管9の先端から、200mm~500mm程度が望ましい。
【0018】
上記の位置に推進翼7を取り付けた場合には、ケーシング管9の先端が不透水層3に到達した後、閉塞蓋11を引き上げ、その後、推進翼7が不透水層3に入らない程度までケーシング管9を回転圧入する。このようにすれば、閉塞蓋11を不透水層3に入れることが避けられ、不透水層3の乱れを最小限に抑えることができる。
【0019】
閉塞蓋11は、ケーシング管9の圧入後に除去するため、図1(a)に示すように、閉塞蓋の上面から延出する棒状部材15を設けておき、除去の際には棒状部材15を引き上げるようにすればよい。
なお、閉塞蓋11はケーシング管9の先端開口を閉塞可能でかつ除去できるものであればよく、ケーシング管9の先端開口に着脱可能に連結してもよいし、連結することなく、ケーシング管9の先端の貫入と合わせて棒状部材15で押し込んだり、回転圧入させたりしてもよい。
【0020】
<流動固化体投入工程>
流動固化体投入工程は、閉塞蓋11を取り外して、ケーシング管9内に所定の強度と量の流動固化体17を投入する工程である(図1(b)(c)参照)。
閉塞蓋11の取外しは、上述したように、閉塞蓋11の上面に連結された棒状部材15を引き抜くようにする。この際、地下水等の状況によってはケーシング管9内で土砂が吹き上がるボイリングが発生する可能性があり、そのような場合には流動固化体17を除々に出しながら閉塞蓋11を引き上げることにより、ボイリングを防止することができる。
【0021】
閉塞蓋11を除去した後、ケーシング管9内に流動固化体17を投入する。流動固化体17とは、投入時には流動体であるが、一定時間経過後には固体となるもので、コンクリート、セメントミルクや流動化処理土等が該当する。
投入に際して、一般的にはトレミー管19をケーシング管9内に挿入し、下端から充填していく。この時の流動固化体17の強度は地盤の水平抵抗に影響するため、どのような強度にするかを事前に検討しておくことが望ましい。
また、次工程で杭が挿入された時に地表面に溢れないように流動固化体17の上面を所定の高さにし、また施工中に硬化しないようにするため、充填量や硬化時間についても事前に検討しておくことが望ましい。
【0022】
<既成杭打設工程>
既成杭打設工程は、流動固化体17が投入されたケーシング管9内に既成杭21を施工して支持層5まで打設する工程である(図1(d)参照)。
既成杭21の打設工法によっては、排土が発生するが、排土されるものは汚染土壌ではないため、通常の杭施工と同様の対応が可能である。
また、ケーシング管9が、不透水層3に到達するまで施工されており、汚染された土壌や水は不透水層3及びケーシング管9によって遮断され、既成杭21の打設によって鉛直下方向に汚染が広がることはない。
なお、施工時間によっては、流動固化体17が固化しないよう、薬剤などで固化時間を調整することが望ましい。
【0023】
<ケーシング管引抜工程>
ケーシング管引抜工程は、既成杭21の打設後にケーシング管9を引き抜く工程である。
ケーシング管9の引き抜きは、逆回転にて地上に抜き上げるようにする。この際、連続的に逆回転するのではなく、例えば1回転引き抜く毎にケーシング管9を下方に押し付けるようにすれば、推進翼7部分の乱れた土砂を締め固める効果があり望ましい。
【0024】
ケーシング管9は不透水層3を貫通していないので、ケーシング管9を引き抜いたとしても、不透水層3を上下に貫通する水みちができることがなく、不透水層3の下の層に汚染が広がることはない。
【0025】
以上のように、本実施の形態によれば、汚染土壌の地表への排土を防止できると共に、不透水層3の下の層に汚染が広がるのを防止することができる。
また、本実施の形態では、ケーシング管9内に既成杭21を打設する前に流動固化体を投入するので、杭径が細い場合であってもトレミー管の配置等が容易で投入作業の作業性に優れる。
【0026】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、ケーシング管9内に流動固化体17を投入した後に既成杭21を打設するが、本実施の形態は、ケーシング管9内に既成杭21を打設した後に既成杭21が打設されているケーシング管9内に流動固化体17を投入するようにしたものであり、その他の工程は実施の形態1と同様である。
【0027】
具体的には、本実施の形態の杭の施工方法は、図2に示すように、先端部外周面に推進翼7を有するケーシング管9と、ケーシング管9の先端開口を閉塞可能な閉塞蓋11とを備えた杭施工装置13を用いて、閉塞蓋11によりケーシング管9の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で不透水層3まで回転圧入するケーシング管圧入工程と(図2(a)参照)、閉塞蓋11を除去して、ケーシング管9内に既成杭21を施工して支持層5まで打設する既成杭打設工程と(図2(b)(c)参照)、ケーシング管9と既成杭21との間に所定の強度と量の流動固化体17を投入する流動固化体投入工程と(図2(d)参照)、ケーシング管9を引き抜くケーシング管引抜工程と(図2(e)参照)、を備えたものである。
【0028】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、汚染土壌の地表への排土を防止できると共に、不透水層3の下の層に汚染が広がるのを防止することができる。
また、本実施の形態では、既成杭21が打設されたケーシング管9に流動固化体17を投入するので、実施の形態1と比較すると流動固化体17の投入量や固化時間の管理が容易である。
他方、杭径が細い場合などには、流動固化体17の充填性が悪いという問題もあるので、実施の形態1と本実施の形態とのどちらの方法を選択するは土質や深度、杭径に応じて決めることが望ましい。
【0029】
[実施の形態3]
本実施の形態に係る杭の施工方法は、図3に示すように、上部に汚染層1、その下方に不透水層3、さらにその下方に支持層5がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、ケーシング管圧入工程と(図3(a)参照)、流動固化体投入工程と(図3(b)参照)、鋼管杭打設工程と(図3(c)参照)、ケーシング管引抜工程(図3(d)参照)と、を備えたものである。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0030】
<ケーシング管圧入工程>
本実施の形態のケーシング管圧入工程は、図3(a)に示すように、先端部外周面に推進翼7を有するケーシング管9と、ケーシング管9の先端開口を閉塞可能な回転翼23を有する鋼管杭25とを備えた杭施工装置27を用いて、鋼管杭25をケーシング管9に挿入し、かつ回転翼23によりケーシング管9の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で不透水層3までケーシング管9を回転圧入する工程である。
【0031】
ケーシング管9に挿入する鋼管杭25は、圧入のみ、あるいは逆回転させることによって、地表に土砂を排土せずに施工することができる。
推進翼7の取付位置等については、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0032】
<流動固化体投入工程>
流動固化体投入工程は、図3(b)に示すように、鋼管杭25を管内に配置した状態でケーシング管9内に所定の強度と量の流動固化体17を投入する工程である。
投入する流動固化体17や投入方法は実施の形態1、2と同様である。
【0033】
<鋼管杭打設工程>
鋼管杭打設工程は、ケーシング管9内の鋼管杭25を回転圧入して支持層5まで打設する工程である。
この工程では、鋼管杭25の先端は不透水層3にまで到達しており、また鋼管杭25を回転圧入するので、短時間でかつ無排土にて施工することができる。
【0034】
<ケーシング管引抜工程>
ケーシング管引抜工程は、鋼管杭25の打設後にケーシング管9を引き抜く工程であり、その方法は実施の形態1、2と同様である。
【0035】
本実施の形態においても、実施の形態1、2と同様に、汚染土壌の地表への排土を防止できると共に、不透水層3の下の層に汚染が広がるのを防止することができる。
また、本実施の形態では、ケーシング管圧入工程においてケーシング管9の先端開口を塞ぐ部材として、鋼管杭25の先端に設けた回転翼23を用いているので、別途閉塞蓋11を準備する必要がない。
さらに、ケーシング管圧入工程の後で、閉塞蓋11等を除去する必要もない。
またさらに、ケーシング管圧入工程において、鋼管杭25はケーシング管9と共に不透水層3まで圧入されるので、鋼管杭打設工程では、不透水層3から支持層5まで打設すればよく、施工効率がよいという効果もある。
【0036】
[実施の形態4]
実施の形態3においては、ケーシング管9内に流動固化体17を投入した後に鋼管杭25を支持層5まで打設するが、本実施の形態は、ケーシング管9内の鋼管杭25を支持層5まで打設した後にケーシング管9内に流動固化体17を投入するようにしたものであり、その他の工程は実施の形態3と同様である。
【0037】
具体的には、本実施の形態の杭の施工方法は、図4に示すように、上部に汚染層1、その下方に不透水層3、さらにその下方に支持層5がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、先端部外周面に推進翼7を有するケーシング管9と、ケーシング管9の先端開口を閉塞可能な回転翼23を有する鋼管杭25とを備えた杭施工装置27を用いて、鋼管杭25をケーシング管9に挿入し、かつ回転翼23によりケーシング管9の先端が閉塞された状態で、土砂を側方に押し広げながら無排土で不透水層3まで回転圧入するケーシング管圧入工程と(図4(a)参照)、ケーシング管9内の鋼管杭25を施工して支持層5まで打設する鋼管杭打設工程と(図4(b)参照)、ケーシング管9内に所定の強度と量の流動固化体17を投入する流動固化体投入工程と(図4(c)参照)、ケーシング管9を引き抜くケーシング管引抜工程と(図4(d)参照)、を備えたものである。
【0038】
本実施の形態においても、実施の形態3と同様の効果が得られている。
【0039】
[実施の形態5]
実施の形態1~4は、鋼管杭25を含む既成杭21を施工するものであったが、本実施の形態は場所打ち杭を施工する方法に関するものである。
具体的には、図5に示すように、上部に汚染層1、その下方に不透水層3、さらにその下方に支持層5がある地盤に杭を施工する杭の施工方法であって、ケーシング管圧入工程と(図5(a)参照)、場所打ち杭打設工程と(図5(b)~図5(d)参照)、ケーシング管引抜工程と(図5(e)参照)、を備えたものである。
ケーシング管圧入工程とケーシング管引抜工程は、実施の形態1と同様なので、以下においては、場所打ち杭打設工程について説明する。
【0040】
<場所打ち杭打設工程>
場所打ち杭打設工程は、閉塞蓋11を除去して、ケーシング管9内に掘削ドリル29を挿入してケーシング管9内及び支持層5まで掘削して、場所打ち杭31を打設する工程である。
閉塞蓋11の態様や閉塞蓋11の取外しについては、実施の形態1と同様である。
【0041】
掘削ドリル29によりケーシング管9内及び支持層5まで掘削する際には、掘削した土砂が地表に排土されるが、掘削前に、ケーシング管9が不透水層3まで挿入されており、掘削ドリル29で掘削する地層は、不透水層3よりも下方の地層である。そのため、掘削ドリル29による排土には汚染土壌は含まれていない。
掘削ドリル29による掘削後に、トレミー管19を支持層5まで挿入してコンクリート33を打設し、場所打ち杭31を構築する。
なお、場所打ち杭31は、汚染土壌への影響を最小限とするためできるだけ径を細くすることが望ましく、拡底杭や、上部に鋼管を配置した耐震場所打ち杭とするのが好ましい。
【0042】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、汚染土壌の地表への排土を防止できると共に、不透水層3の下の層に汚染が広がるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 汚染層
3 不透水層
5 支持層
7 推進翼
9 ケーシング管
11 閉塞蓋
13 杭施工装置(実施の形態1、2、5)
15 棒状部材
17 流動固化体
19 トレミー管
21 既成杭
23 回転翼
25 鋼管杭
27 杭施工装置(実施の形態3、4)
29 掘削ドリル
31 場所打ち杭
33 コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5