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特開2022-66672ナット保持構造の組立治具及び組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066672
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】ナット保持構造の組立治具及び組立方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20220422BHJP
   F16B 41/00 20060101ALI20220422BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20220422BHJP
   B23P 19/06 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
E04B1/58 508H
F16B41/00 A
E04G21/18 C
B23P19/06 C
B23P19/06 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175156
(22)【出願日】2020-10-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 日鉄物産システム建築株式会社への販売 令和2年7月22日出荷
(71)【出願人】
【識別番号】593022696
【氏名又は名称】中山三星建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】畑田 佳則
(72)【発明者】
【氏名】中田 統章
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】猪股 雄一
【テーマコード(参考)】
2E125
2E174
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB16
2E125AC16
2E125BB13
2E125CA05
2E125EB12
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA14
2E174DA32
2E174DA58
2E174DA63
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ボルト孔に対してホルダーを精度よく位置決めすることのできるナット保持構造の組立治具及び組立方法の提供。
【解決手段】胴縁1に接続ボルトよりも大径のボルト孔7を形成する。ボルト孔7を貫通させる接続ボルトに螺合するフランジ付きナット9を設ける。ボルト孔7に係合しつつフランジ付きナット9を係合可能なナット仮止治具16を設ける。ナット仮止治具16で、フランジ付きナット9をボルト孔7の中心位置に仮止めする。ホルダー8を係合しつつ仮止めされたフランジ付きナット9に係合可能なホルダー位置決め治具17を設ける。ホルダー位置決め治具17でホルダー8を位置決めする。胴縁1にホルダー8を固定する。ホルダー8でフランジ付きナット9を胴縁1の部材中心軸方向に移動可能に保持してナット保持構造とする。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接続部材に接続ボルトよりも大径のボルト孔が形成され、該ボルト孔を貫通する接続ボルトに螺合されるナットが、被接続部材に固定されたホルダーで、ボルト孔の径方向に移動可能に保持された構造のナット保持構造を組み立てるための組立治具であって、
前記ナットを基準位置に仮止めするナット仮止治具と、基準位置にあるナットの移動を許容する位置に前記ホルダーを位置決めするホルダー位置決め治具と、を備え、前記ナット仮止治具は、ボルト孔に係合しつつ、ナットを係合可能とされ、ホルダー位置決め治具は、ホルダーを係合しつつ、仮止めされたナットに係合可能とされたことを特徴とするナット保持構造の組立治具。
【請求項2】
前記ホルダーは、ナットを被接続部材の部材中心軸方向に移動可能に保持することを特徴とする請求項1に記載のナット保持構造の組立治具。
【請求項3】
前記ナットは、下部に鍔を有するフランジ付きナットとされ、
前記ホルダーは、前記鍔を配する隙間を設ける脚片を形成されて被接続部材に止着され、前記鍔を周縁部に係合させてナットを保持すると共に、ナットの上部をガイドしてナットの移動範囲を制限する保持穴が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のナット保持構造の組立治具。
【請求項4】
前記ナット仮止治具に、ホルダーとは反対側からボルト孔に嵌合可能な嵌合部が形成され、該嵌合部に、ナットを螺合可能な雄ねじが突設されたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のナット保持構造の組立治具。
【請求項5】
前記ホルダー位置決め治具に、ホルダーを挟持可能な挟持片と、ナットに嵌合可能な嵌合穴と、が形成されたことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のナット保持構造の組立治具。
【請求項6】
請求項1に記載の組立治具を用いてナット保持構造を組み立てる組立方法であって、
被接続部材のボルト孔にナット仮止治具を係合させ、該ナット仮止治具にナットを係合させて、前記ナットを基準位置に仮止めし、次いで、ホルダー位置決め治具にホルダーを係合させつつ、ナット仮止治具に仮止めされたナットにホルダー位置決め治具を係合させて、基準位置にあるナットの移動を許容する位置にホルダーを位置決めし、さらに、ホルダーを被接続部材に固定した後、ナット仮止治具及びホルダー位置決め治具を取り外すことを特徴とするナット保持構造の組立方法。
【請求項7】
部材端部にナット保持構造が設けられた胴縁であって、
前記ナット保持構造は、前記部材端部に接続ボルトよりも大径かつ円形のボルト孔が形成され、該ボルト孔を貫通する接続ボルトに螺合されるナットが、前記部材端部に固定されたホルダーで、ボルト孔の径方向に移動可能に保持された構造とされたことを特徴とする胴縁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続ボルトに螺合するナットを被接続部材のホルダーで移動可能に保持するナット保持構造を組み立てるための組立治具及び組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物の壁材などを支持する胴縁は、箱型断面の長尺部材とされて2本の柱材に架け渡すように配置され、その両端を、柱材に固定された取付金具にボルト締結されている。胴縁及び取付金具のボルト締結には、両者を上下に貫通するボルトをナットで締め付ける手法を採用することが多く、そのボルトよりもボルト孔を大きく設定することにより、胴縁の長さに対応する両側の取付金具の設置誤差が吸収される。
【0003】
ただ、窓枠の上下に近接させて胴縁を配置するような場合には、その窓枠などがナットやボルトヘッドに干渉することがあり、ボルトを胴縁及び取付金具に上下に貫通させてナットで締め付けることができない。
【0004】
この問題を解決可能な技術として、特許文献1は、胴縁101の端部底面に長孔102を設け、この位置にナット押さえ具103を溶着してナット104を収納し、下方からボルト105を挿入して取付板(取付金具)106に締結する構造を開示している。
【0005】
特許文献1の構造を採用することにより、胴縁及び取付金具を貫通させることなく、ボルトで取付金具に胴縁を締結することができ、さらに、長孔に沿ってボルトを移動させると共に、ナット押さえ具(ホルダー)に沿ってナットを移動させることにより、胴縁の両側の取付金具の設置誤差を吸収することができる。
【0006】
しかも、特許文献1の構造では、ボルト孔を長孔にすると共に、それに合う大きさのホルダーを溶着して、ボルト及びナットのそれぞれの移動範囲を十分に広く設定しているので、ボルト孔に対してホルダーが多少の位置ずれを生じたとしても、ボルト及びナットの移動範囲を十分に重ねることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭56-54140号公報(実用新案登録請求の範囲、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の構造は、ボルト孔として長孔を設けると共に、それに合う大きさのホルダーを溶着しているので、ボルト及びナットの移動可能量が大きく、ボルト及びボルト孔によって位置決めされる胴縁が位置変動の制限を受けにくい分、胴縁の設置誤差が大きくなるおそれがある。
【0009】
これに対して、長孔のボルト孔を円孔に変更すると共に、それに合う大きさのホルダーを溶着して、ボルト及びナットの移動可能量を抑えることが考えられるが、ボルト及びナットのそれぞれの移動範囲が狭くなる分、ボルト孔に対してホルダーが位置ずれした場合には、ボルト及びナットの移動範囲の重なりが極端に狭くなり、ボルト及びナットを移動させて胴縁の両側の取付金具の設置誤差を吸収することができない。
【0010】
本発明は、ボルト孔に対してホルダーを精度よく位置決めすることのできるナット保持構造の組立治具及び組立方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係るナット保持構造の組立治具は、被接続部材に接続ボルトよりも大径のボルト孔が形成され、このボルト孔を貫通する接続ボルトに螺合されるナットが、被接続部材に固定されたホルダーで、ボルト孔の径方向に移動可能に保持された構造のナット保持構造を組み立てるためのものであり、ナットを基準位置に仮止めするナット仮止治具と、基準位置にあるナットの移動を許容する位置にホルダーを位置決めするホルダー位置決め治具と、を備え、さらに、そのナット仮止治具を、ボルト孔に係合しつつナットを係合可能とし、ホルダー位置決め治具を、ホルダーを係合しつつ仮止めされたナットに係合可能とするものである。
【0012】
上記構成によれば、ボルト孔に係合したナット仮止治具にナットを係合させて、ナットを基準位置に仮止めした後、ホルダー位置決め治具を、ホルダーに係合させつつ、仮止めしたナットに係合させることにより、ナット仮止治具、ナット及びホルダー位置決め治具を介し、ボルト孔に対してホルダーを位置決めすることができる。これにより、ナット仮止治具及びホルダー位置決め治具を用いて、基準位置にあるナットの移動を許容する位置に、ホルダーを精度よく位置決めすることができる。
【0013】
また、ホルダーは、ナットを前後左右のいずれの方向にも移動可能なように保持することもできるが、ナットを被接続部材の部材中心軸方向に移動可能に保持するようにしてもよい。
【0014】
この構成によると、ナットを部材中心軸方向に移動させることができるので、胴縁のような長尺部材の両端支持部の相対的な設置誤差を吸収することができる。
【0015】
また、ナットを下部に鍔を有するフランジ付きナットとし、さらに、ホルダーに、鍔を配する隙間を設ける脚片を形成して被接続部材に止着し、そのホルダーに、鍔を周縁部に係合させてナットを保持すると共に、ナットの上部をガイドしてナットの移動範囲を制限する保持穴を形成するようにしてもよい。
【0016】
この構成によると、保持穴の周縁部にナットの鍔を係合させて保持するので、保持穴でガイドしてナットの移動範囲を制限しつつ、保持穴からナットの上部を露出させることができ、仮止めしたナットにホルダー位置決め治具を容易に係合させることができる。
【0017】
また、ナット仮止治具に、ホルダーとは反対側からボルト孔に嵌合可能な嵌合部を形成し、この嵌合部に、ナットを螺合可能な雄ねじを突設するようにしてもよい。
【0018】
この構成によると、ナット仮止治具の嵌合部をホルダーとは反対側からボルト孔に嵌合させることにより、ホルダーを固定する側に雄ねじを突出させることができ、この雄ねじにナットを螺合して、ナットを正確な位置かつ強固に仮止めすることができる。しかも、ナット仮止治具の雄ねじにナットを螺合することにより、ナットを仮止めしつつ、その仮止めをしている間、ボルト孔からの嵌合部の抜け出しを阻止して、ナット仮止治具を固定することができる。
【0019】
また、ホルダー位置決め治具に、ホルダーを挟持可能な挟持片と、ナットに嵌合可能な嵌合穴と、を形成するようにしてもよい。
【0020】
この構成によると、ホルダー位置決め治具に挟持片及び嵌合穴を形成するので、その挟持片でホルダーを挟持すると共に、仮止めしたナットに嵌合穴を嵌合させるだけで、ホルダーを容易に位置決めすることができる。なお、嵌合穴の代わりに大きめの係合穴を形成しておき、ホルダー位置決め治具を押し引きして、仮止めしたナットに係合穴の一縁を掛止することにより、ホルダーを位置決めすることもできる。
【0021】
また、本発明は、上記の組立治具を用いてナット保持構造を組み立てる組立方法を提供する。
【0022】
すなわち、本発明は、被接続部材のボルト孔にナット仮止治具を係合させ、該ナット仮止治具にナットを係合させて、前記ナットを基準位置に仮止めし、次いで、ホルダー位置決め治具にホルダーを係合させつつ、ナット仮止治具に仮止めされたナットにホルダー位置決め治具を係合させて、基準位置にあるナットの移動を許容する位置にホルダーを位置決めし、さらに、ホルダーを被接続部材に固定した後、ナット仮止治具及びホルダー位置決め治具を取り外すことを特徴とするナット保持構造の組立方法を提供する。
【0023】
この構成によると、上記の組立治具の構成を採用することによる効果と同様の効果を奏する。
【0024】
また、本発明は、部材端部にナット保持構造が設けられた胴縁であって、前記ナット保持構造は、前記部材端部に接続ボルトよりも大径かつ円形のボルト孔が形成され、該ボルト孔を貫通する接続ボルトに螺合されるナットが、前記部材端部に固定されたホルダーで、ボルト孔の径方向に移動可能に保持された構造とされたことを特徴とする胴縁を提供する。
【0025】
この構成によると、胴縁の部材端部に設けたナット保持構造のボルト孔を円形にするので、ボルト孔を長孔に設定する場合と比較して、ボルト及びナットの移動可能量を抑えることができる。これにより、胴縁をボルト及びボルト孔によって位置決めすることによる位置変動をより制限することができ、胴縁の設置誤差をより小さくすることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によると、ナット仮止治具をボルト孔及びナットの両者に係合させてナットを仮止めした後、ホルダー位置決め治具をホルダー及びナットに係合させることにより、ボルト孔に対してホルダーを精度よく位置決めするようにしている。
【0027】
これにより、ホルダーが位置ずれしてボルト及びナットの移動範囲の重なりが過度に狭くなるのを防止することができ、ボルト及びこれに螺合したナットの移動により、被接続部材の設置誤差を確実に吸収することができる。さらに、ボルト及びナットの移動範囲の重なりを安定させることができるので、ボルト孔及びホルダーを比較的に小さくして、ボルト及びナットの移動可能量が過度に大きくなるのを防止し、被接続部材の設置誤差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ナット保持構造を有する胴縁の配置図
図2】胴縁の部材端部の斜視図
図3】胴縁の部材端部の水平断面図
図4図3のA-A断面図
図5】ホルダーの斜視図
図6】ナットの斜視図
図7】ナット仮止治具の斜視図
図8】ホルダー位置決め治具の斜視図
図9】ナット保持構造の組立方法を示す図
図10】従来のナット保持構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るナット保持構造の組立治具及び組立方法を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0030】
図1図4に示すように、胴縁1は、建築物の2本の柱材2に架け渡されて壁材などを支持する胴縁のうち、窓部3の下側に近接して配置されるものであり、鋼製で箱型断面の長尺部材で、その両端部にナット保持構造4が設けられて、柱材2に固定された取付金具5に接続ボルト6を用いてボルト締結される。
【0031】
ナット保持構造4は、胴縁1の端部底壁に2つのボルト孔7を部材幅方向に並べて形成し、これらのボルト孔7を覆うホルダー8で、接続ボルト6に螺合する2つのフランジ付きナット9を胴縁1の部材中心軸方向に移動可能に保持したものであり、取付金具5よりも下方から、2つのボルト孔7のそれぞれに接続ボルト6を挿入してフランジ付きナット9を螺合することにより、胴縁1の端部を取付金具5にボルト締結するようになっている。
【0032】
ボルト孔7は、接続ボルト6よりも大径かつ円形とされ、接続ボルト6の外周面とボルト孔7の内縁との隙間により、胴縁1の長さに対応して設置される両側の取付金具5の設置誤差を吸収する。
【0033】
図5に示すように、ホルダー8は、胴縁1の端部内側の底面との間に隙間10を設けるよう、胴縁1の部材軸方向で両縁部を下向きに折曲して脚片11a、11bを形成したU形の鋼製金具とされる。脚片11a、11bを胴縁1の端部内側の底面に当接させて、部材端側の脚片11aの2か所を胴縁1の端部内側の底面に溶接することにより、その2つの溶接部12を介して、ホルダー8が胴縁1の端部内側の底面に固定される。
【0034】
ホルダー8のうちのボルト孔7に対応する部位には、フランジ付きナット9の上部を突出させる2つの長方形の保持穴13が形成され、各保持穴13がフランジ付きナット9を胴縁1の部材中心軸方向にガイドするようになっている。保持穴13は、その幅をフランジ付きナット9の六角形の対辺の間隔よりも僅かに広く設定されて、フランジ付きナット9の回転を規制し、また、長さをフランジ付きナット9の六角形の対角線の長さよりも長く設定されて、フランジ付きナット9を胴縁1の部材中心軸方向に移動可能とすると共に、その移動範囲を制限する。
【0035】
図6に示すように、フランジ付きナット9は、下部に鍔14を有し、その鍔14をホルダー8の隙間10に位置させつつ上部を保持穴13から突出させて、鍔14を保持穴13の周縁部に係合させることにより、ホルダー8で、胴縁1の部材中心軸方向に移動可能に保持される。
【0036】
次に、ナット保持構造4を組み立てる組立治具15について説明する。
【0037】
組立治具15は、フランジ付きナット9を基準位置としてのボルト孔7の中心に仮止めするナット仮止治具16と、ボルト孔7の中心に位置するフランジ付きナット9の移動を許容するよう、保持穴13の中心をボルト孔7の中心に合わせてホルダー8を位置決めするホルダー位置決め治具17と、から構成される。
【0038】
図7に示すように、ナット仮止治具16は、ボルト孔7よりも大径の円柱状の治具とされて、その一端の中央に、ボルト孔7に嵌合可能な断面円形の嵌合部18が形成され、この嵌合部18の中央に、フランジ付きナット9を螺合可能な雄ねじ19が突設されている。嵌合部18をホルダー8とは反対側である胴縁1の下方からボルト孔7に嵌合することにより、雄ねじ19が、その中心をボルト孔7と合わせて、胴縁1の端部底壁から上向きに突出するようになっている。
【0039】
図8に示すように、ホルダー位置決め治具17は、長方形の位置決め治具本体20から中央かつ基端側に把持部21を延設すると共に、その把持部21の先端部に重ね板22を止着した板状の治具とされる。
【0040】
ホルダー位置決め治具17の位置決め治具本体20及び重ね板22は、それらの先端縁を同じ方向に折曲されて挟持片23a、23bが形成され、その内側間隔をホルダー8の脚片11a、11bの外側間隔とほぼ同じ大きさに設定されて、ホルダー8を上面側から胴縁1の部材軸方向に挟持するようになっている。
【0041】
ホルダー位置決め治具17の位置決め治具本体20には、長方形の一辺を山形にした形状の2つの嵌合穴24が形成され、挟持片23a、23bでホルダー8を挟持しつつ、嵌合穴24を仮止めされたフランジ付きナット9に嵌合させるようになっている。
【0042】
次に、組立治具15を用いてナット保持構造4を組み立てる組立方法を説明する。
【0043】
まず、図9(a)に示すように、胴縁1の端部底壁に、2つのボルト孔7を部材幅方向に並べて形成する。
【0044】
図9(b)に示すように、一方のボルト孔7について、胴縁1の下方からナット仮止治具16の嵌合部18をボルト孔7に嵌合することにより、ボルト孔7と中心を合わせて、雄ねじ19を胴縁1の端部底壁から上向きに突出させる。
【0045】
図9(c)に示すように、ナット仮止治具16にフランジ付きナット9を螺合して、ナット仮止治具16をボルト孔7に仮固定しつつ、フランジ付きナット9をボルト孔7の中心に仮止めし、その際、フランジ付きナット9の六角形の対辺を胴縁1の部材中心軸と平行に向ける。
【0046】
図9(d)に示すように、他方のボルト孔7についても同様の手順でフランジ付きナット9を仮止めし、2つのボルト孔7の両方について、ナット仮止治具16でフランジ付きナット9をボルト孔7の中心に仮止めする。
【0047】
図9(e)に示すように、フランジ付きナット9を仮止めした位置にホルダー8を被せることにより、フランジ付きナット9の下部の鍔14をホルダー8の隙間10に位置させて保持穴13の周縁部に係合させると共に、その保持穴13からフランジ付きナット9の上部を突出させる。
【0048】
図9(f)に示すように、ホルダー位置決め治具17の把持部21を持って位置決め治具本体20を上方からホルダー8に被せることにより、挟持片23a、23bでホルダー8を挟持しつつ、仮止めされたフランジ付きナット9に嵌合穴24を嵌合させる。これにより、ホルダー8の保持穴13の中心がボルト孔7の中心に一致し、フランジ付きナット9、ナット仮止治具16及びホルダー位置決め治具17を介して、ホルダー8が、仮止めを解除した後のフランジ付きナット9の移動を許容するよう位置決めされる。
【0049】
さらに、ホルダー8の脚片11a、11bを胴縁1の端部内側の底面に当接させた状態で、胴縁1の部材端側にある脚片11aの2か所を溶接して、ホルダー8を胴縁1に固定し、その後、ナット仮止治具16及びホルダー位置決め治具17を取り外すことにより、ナット保持構造4の組み立てが完了する(図2図4参照)。
【0050】
上記構成によると、胴縁1の端部底壁にボルト孔7を形成し、このボルト孔7を覆うホルダー8でフランジ付きナット9を保持してナット保持構造4を構成するので、上下に胴縁1を貫通させることなく、接続ボルト6で取付金具5に胴縁1をボルト締結することができる。これにより、窓部3の下側に近接して配置される胴縁1についても、接続ボルト6及びフランジ付きナット9が窓部3と干渉するのを回避することができる。
【0051】
また、ボルト孔7を接続ボルト6よりも大径に設定すると共に、ホルダー8でフランジ付きナット9を移動可能に保持するので、ボルト孔7の内側で接続ボルト6を移動させると共に、ホルダー8の保持穴13に沿ってフランジ付きナット9を移動させることにより、胴縁1の両端部をボルト締結する取付金具5の設置誤差を吸収することができる。
【0052】
また、組立治具15を用いてナット保持構造4を組み立てることにより、ボルト孔7に対するホルダー8の位置ずれを防止することができ、接続ボルト6及びフランジ付きナット9の移動範囲を一致させて、接続ボルト6及びフランジ付きナット9を設定した通りの範囲で移動させることができる。これにより、ボルト孔7及びホルダー8を過度に大きくすることなく、取付金具5の設置誤差を十分に吸収することができ、接続ボルト6及びフランジ付きナット9の位置ずれによる胴縁1の設置誤差を小さくすることができる。
【0053】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、フランジ付きナット9をホルダー8で胴縁1の部材中心軸方向に移動可能に保持するだけでなく、フランジ付きナット9を胴縁1の部材中心軸と直交する方向に移動可能に保持するようにしてもよい。また、フランジ付きナット9の下部の鍔14をホルダー8の保持穴13の周縁部に係合させて保持するだけでなく、ナットの全体を収容して保持するホルダーを設け、このホルダーの内面でガイドしつつナットの移動範囲を制限するようにしてもよい。
【0054】
また、ナット仮止治具16は、ボルト孔7に係合しつつフランジ付きナット9を係合可能なものであればよく、必ずしも、嵌合部18及び雄ねじ19を形成したものである必要はない。また、ホルダー位置決め治具17は、ホルダー8を係合しつつフランジ付きナット9に係合可能なものであればよく、必ずしも、挟持片23a、23b及び嵌合穴24を形成したものである必要はない。
【符号の説明】
【0055】
1 胴縁
2 柱材
3 窓部
4 ナット保持構造
5 取付金具
6 接続ボルト
7 ボルト孔
8 ホルダー
9 フランジ付きナット
10 隙間
11a、11b 脚片
12 溶接部
13 保持穴
14 鍔
15 組立治具
16 ナット仮止治具
17 ホルダー位置決め治具
18 嵌合部
19 雄ねじ
20 位置決め治具本体
21 把持部
22 重ね板
23a、23b 挟持片
24 嵌合穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接続部材に接続ボルトよりも大径のボルト孔が形成され、該ボルト孔を貫通する接続ボルトに螺合されるナットが、被接続部材に固定されたホルダーで、ボルト孔の径方向に移動可能に保持された構造のナット保持構造を組み立てるための組立治具であって、
前記ナットを基準位置に仮止めするナット仮止治具と、基準位置にあるナットの移動を許容する位置に前記ホルダーを位置決めするホルダー位置決め治具と、を備え、前記ナット仮止治具は、ボルト孔に係合しつつ、ナットを係合可能とされ、前記ホルダー位置決め治具は、ホルダーを係合しつつ、仮止めされたナットに係合可能とされたことを特徴とするナット保持構造の組立治具。
【請求項2】
前記ホルダーは、ナットを被接続部材の部材中心軸方向に移動可能に保持することを特徴とする請求項1に記載のナット保持構造の組立治具。
【請求項3】
前記ナットは、下部に鍔を有するフランジ付きナットとされ、
前記ホルダーは、前記鍔を配する隙間を設ける脚片を形成されて被接続部材に止着され、前記鍔を周縁部に係合させてナットを保持すると共に、ナットの上部をガイドしてナットの移動範囲を制限する保持穴が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のナット保持構造の組立治具。
【請求項4】
前記ナット仮止治具に、ホルダーとは反対側からボルト孔に嵌合可能な嵌合部が形成され、該嵌合部に、ナットを螺合可能な雄ねじが突設されたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のナット保持構造の組立治具。
【請求項5】
前記ホルダー位置決め治具に、ホルダーを挟持可能な挟持片と、ナットに嵌合可能な嵌合穴と、が形成されたことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のナット保持構造の組立治具。
【請求項6】
請求項1に記載の組立治具を用いてナット保持構造を組み立てる組立方法であって、
被接続部材のボルト孔にナット仮止治具を係合させ、該ナット仮止治具にナットを係合させて、前記ナットを基準位置に仮止めし、次いで、ホルダー位置決め治具にホルダーを係合させつつ、ナット仮止治具に仮止めされたナットにホルダー位置決め治具を係合させて、基準位置にあるナットの移動を許容する位置にホルダーを位置決めし、さらに、ホルダーを被接続部材に固定した後、ナット仮止治具及びホルダー位置決め治具を取り外すことを特徴とするナット保持構造の組立方法。