(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066719
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】火災感知器又は電気機器の固定クランプ
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
G08B17/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175228
(22)【出願日】2020-10-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】520407046
【氏名又は名称】八洲防災設備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】一條 陽一
(72)【発明者】
【氏名】村田 厚
(72)【発明者】
【氏名】矢部 伸太郎
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA01
5G405AB01
5G405AB02
5G405FA07
5G405FA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建具を傷つけず、かつ、取付け作業性のよい火災感知器又は電気機器の固定クランプを提供する。
【解決手段】固定クランプ100において、建具21を挟持する第1挟持片1及び第2挟持片2と、第1挟持片を第2挟持片に近づく向き及び離れる向きに移動させる第1ボルト3と、第2挟持片を第1挟持片に近づく向き及び離れる向きに移動させる第2ボルト4と、第1ボルト及び第2ボルトを介して第1挟持片及び第2挟持片と連結されたアーム6と、アームの第1挟持片及び第2挟持片とは反対側の面に設けられ、火災感知器20が取り付けられる取付台8と、を備える。第1挟持片が第2挟持片に近づくように第1ボルトがアームにねじ込まれた状態において、第1ボルトの頭は、アームに収容され、第2挟持片が第1挟持片に近づくように第2ボルトがアームにねじ込まれた状態において、第2ボルトの頭はアームに収容される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具を挟持する第1挟持片及び第2挟持片と、
前記第1挟持片を、前記第2挟持片に近づく向き及び離れる向きに移動させる第1ボルトと、
前記第2挟持片を、前記第1挟持片に近づく向き及び離れる向きに移動させる第2ボルトと、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトがねじ込まれ、前記第1ボルト及び前記第2ボルトを介して、前記第1挟持片及び前記第2挟持片と連結されたアームと、
前記アームに設けられ、火災感知器又は電気機器が取り付けられる取付台とを備え、
前記第1挟持片が前記第2挟持片に近づくように前記第1ボルトが前記アームにねじ込まれた状態において、前記第1ボルトの頭は前記アームに収容され、
前記第2挟持片が前記第1挟持片に近づくように前記第2ボルトが前記アームにねじ込まれた状態において、前記第2ボルトの頭は前記アームに収容される
火災感知器又は電気機器の固定クランプ。
【請求項2】
前記第1挟持片の先端及び前記第2挟持片の先端には、弾性体が設けられている
請求項1記載の火災感知器又は電気機器の固定クランプ。
【請求項3】
前記取付台には、前記第1挟持片及び前記第2挟持片が設けられた側と、その反対側とを貫通させる開口が設けられている
請求項1又は請求項2に記載の火災感知器又は電気機器の固定クランプ。
【請求項4】
前記取付台には、前記第1挟持片及び前記第2挟持片とは反対側の面に設けられ、ビスが挿入される長尺の溝が形成されている
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の火災感知器又は電気機器の固定クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器又は電気機器を建具に固定する固定クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
建物には、火災を検出する火災感知器の設置が義務づけられている。一般家庭及び商業施設等においては、煙又は熱を検知するスポット型の火災感知器が使用されることが多いが、重要文化財又は歴史的建造物等においては、スポット型の火災感知器は美観を損ないうるため、空気管式熱感知器が使用されることが多かった。空気管式熱感知器は、空気管となる銅パイプを、建物の天井等の屋内に張り巡らせることで、比較的広範囲な場所を監視できる点で優れている。ところが、空気管式熱感知器は、煙を検知する火災感知器に比べて火災の検出までに時間がかかる。このため、重要文化財又は歴史的建造物等においても、煙を検知するスポット型の火災感知器を設置することが望まれている。
【0003】
しかし、火災感知器を天井又は壁にネジ止め固定すると、天井又は壁を傷つけてしまう。重要文化財又は歴史的建造物等においては、とりわけ、そのような傷を避けたいという要請がある。
【0004】
施工面を傷つけることなく取付け及び取外しを行うことができる火災警報器として、建具を挟持する一対の挟持片12、13と、挟持片13を移動自在に支持する支持部14と、挟持片13の移動を規制する固定部15とを備えた火災警報器が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1において、挟持片13にはT字型形状に突出する係合部13aが設けられており、この係合部13aが、支持部14に形成された溝部14aに移動自在に係合されている。そして、固定された挟持片12に対して、挟持片13が近づけられることで、挟持片12と挟持片13との間に建具が挟持される。さらに、挟持片13の外側に固定片15aを当接させ、この固定片15aをネジ部16でネジ止めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の火災警報器は、固定された挟持片12に対して他方の挟持片13を移動させて建具を挟み込む構造である。すなわち、一対の挟持片12及び13のうちの一方のみを移動させて建具を挟み込むので、建具を挟み込んだときに挟持片12が建具に加える力と、挟持片13が建具に加える力とのバランスをとるのが難しかった。このため、建具を過度な力で挟んで建具を傷つけたり、建具を挟む力が不足して火災警報器を落下させたり、力のバランスが悪くて火災警報器が傾いたり、といった不具合が生じる可能性があった。このような不具合を生じさせないように火災警報器を取り付けるためには、作業への熟練あるいは作業の微調整が必要であり、作業性の向上が望まれていた。また、重要文化財又は歴史的建造物等を含む建物には、火災感知器以外にも非常灯、スピーカ、防犯センサ等の電気機器を、建具を傷つけずに取り付けたいという要望がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、建具を傷つけず、かつ取付け作業性のよい火災感知器又は電気機器の固定クランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る火災感知器又は電気機器の固定クランプは、建具を挟持する第1挟持片及び第2挟持片と、前記第1挟持片を、前記第2挟持片に近づく向き及び離れる向きに移動させる第1ボルトと、前記第2挟持片を、前記第1挟持片に近づく向き及び離れる向きに移動させる第2ボルトと、前記第1ボルト及び前記第2ボルトがねじ込まれ、前記第1ボルト及び前記第2ボルトを介して、前記第1挟持片及び前記第2挟持片と連結されたアームと、前記アームに設けられ、火災感知器又は電気機器が取り付けられる取付台とを備え、前記第1挟持片が前記第2挟持片に近づくように前記第1ボルトが前記アームにねじ込まれた状態において、前記第1ボルトの頭は前記アームに収容され、前記第2挟持片が前記第1挟持片に近づくように前記第2ボルトが前記アームにねじ込まれた状態において、前記第2ボルトの頭は前記アームに収容されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建具を傷つけることなく火災感知器又は電気機器を建具に取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る固定クランプの斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る固定クランプの斜視図であり、第1挟持片、第2挟持片、第1ボルト及び第2ボルトが取り外された状態を示している。
【
図3】実施の形態に係る固定クランプの平面図である。
【
図4】実施の形態に係る固定クランプへの被取付機器の取り付け態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る固定クランプの実施の形態を、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これらは説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0012】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る固定クランプ100の斜視図である。固定クランプ100は、第1挟持片1と、第2挟持片2と、第1ボルト3と、第2ボルト4と、アーム6と、取付台8とを備える。
【0013】
第1挟持片1及び第2挟持片2は、柱又は竿縁等の建具を挟持する部材である。本実施の形態の第1挟持片1及び第2挟持片2は、円柱状あるいは円盤状であり、外周に角がないので、建具を挟んだときに建具に第1挟持片1及び第2挟持片2の縁の跡が付きにくい。なお、第1挟持片1及び第2挟持片2の形状は、円柱状あるいは円盤状に限定されず、多角柱状であってもよい。
【0014】
第1挟持片1及び第2挟持片2は、例えばシリコンなどのクッション性又は弾性を有する材料で構成されているとよい。このようにすることで、第1挟持片1及び第2挟持片2で建具を挟み込んだときに、建具に傷を付けにくくなる。あるいは、第1挟持片1及び第2挟持片2に、互いに対向する面を少なくとも覆うカバーを取り付けてもよい。カバーは、例えばシリコンなどのクッション性又は弾性を有する材料で構成される。このような弾性体からなるカバーを第1挟持片1及び第2挟持片2に取り付けることで、第1挟持片1及び第2挟持片2で建具を挟み込んだときに、建具に傷を付けにくくなる。また、第1挟持片1及び第2挟持片2に対して着脱自在のカバーは、劣化した場合には取り替えることができるので、長期間にわたって固定クランプ100の性能を維持することができる。カバーの厚みは、0.5mm~3mm程度、例えば2mm程度とすることができるが、この具体的数値に限定されない。
【0015】
また、第1挟持片1及び第2挟持片2の互いに向かい合う表面は、平らとすることもできるし、凹凸を設けることもできる。また、上述の第1挟持片1及び第2挟持片2を覆うカバーの表面に、同じく凹凸を設けてもよい。このような凹凸を設けることで、建具との間の摩擦力が向上し、建具を第1挟持片1及び第2挟持片2で挟み込んだときの位置ズレを抑制することができる。
【0016】
第1ボルト3は、第1挟持片1を、第2挟持片2に近づく向き及び離れる向きに移動させる。第1ボルト3の先端には、第1挟持片1が連結されている。ここで、第1ボルト3の頭を、本実施の形態では把持部5と称する。第1ボルト3と第1挟持片1とは、溶接等により連結されていてもよいし、一体成形されていてもよい。また、第1挟持片1に設けられたネジ穴に第1ボルト3をねじ込むことで、第1挟持片1と第1ボルト3とを連結する構成であってもよい。このようにすることで、第1挟持片1と第1ボルト3とが着脱可能であるので、第1挟持片1又は第1ボルト3のいずれかが劣化した場合には、一方のみを交換することができ、メンテナンスコストを抑制できる。さらに、長さの異なる第1ボルト3を第1挟持片1に取り付けることも可能になるので、建具の幅に応じた長さの第1ボルト3を使用できるようになる。
【0017】
第1ボルト3の頭である把持部5は、作業者が把持する部位である。作業者は、把持部5を把持して時計回り又は反時計回りに回転させることで、第1ボルト3を移動させる。本実施の形態の把持部5は、第1ボルト3及び第2ボルト4のねじが切られた軸よりも直径の大きい円柱状であり(
図4参照)、把持部5を回す作業者が作業を行いやすくなっている。なお、把持部5の形状及び大きさは、図示の例に限定されない。また、第1ボルト3とは別体の把持部5を、第1ボルト3の頭にかぶせるようにして設けてもよい。
【0018】
さらに本実施の形態では、把持部5には、レンチ穴5aが設けられている。レンチ穴5aは、レンチが挿入される穴である。
図1では、六角形のレンチ穴5aを例示しているが、レンチ穴5aの形状はこれに限定されない。レンチ穴5aを設けることで、把持部5を回転させた後、レンチを用いてさらに第1ボルト3を締め付けることができる。
【0019】
第2ボルト4は、第2挟持片2を、第1挟持片1に近づく向き及び離れる向きに移動させる。第2ボルト4の一端には、第2挟持片2が連結されている。また、
図1では図示されていないが、第2ボルト4も把持部5を有している。第2ボルト4と第2挟持片2との連結に係る構造は、第1ボルト3に関して説明したものと同様の構造が適用される。
【0020】
アーム6は、第1ボルト3及び第2ボルト4がねじ込まれるネジ穴を有する部材である。アーム6は、第1ボルト3を介して第1挟持片1と連結され、第2ボルト4を介して第2挟持片2と連結されている。アーム6は、正面視において概ねU字形状の部材であり、一方の腕に第1ボルト3がねじ込まれ、他方の腕に第2ボルト4がねじ込まれている。
【0021】
アーム6には、第1開口10が設けられている。第1開口10は、アーム6を貫通する穴である。本実施の形態では、アーム6の2つの腕のそれぞれに、第1開口10が1つずつ設けられている。第1開口10は、電気配線又は結束バンドを通すための穴である。第1開口10を設けることで、被取付機器に接続されている電気配線の取り回しを容易にすることができる。また、結束バンドを第1開口10に通して、電気配線あるいは被取付機器を固定することもできるので、被取付機器を建具に取り付ける際の作業者の作業性を向上させることができる。結束バンドで電気配線を固定することで、電気配線が垂れ下がるのを抑制できるので、美観もよい。なお、
図1に示した第1開口10の形状、位置及び数は一例であり、図示のものに限定されない。
【0022】
取付台8は、火災感知器又は電気機器等の被取付機器が取り付けられる台である。火災感知器が取りつけられる場合、火災感知器のベースが取付台8に取り付けられる。取付台8に取り付けられる電気機器としては、非常灯、スピーカ、防犯センサ、スイッチ、電気配線等が挙げられる。
【0023】
アーム6及び取付台8は、合成樹脂又はアルミ、より好ましくは難燃性の合成樹脂で構成されているとよい。合成樹脂及びアルミは、鉄と比べて軽量であるため、建具に固定クランプ100が取り付けられたときに建具に係る荷重を軽減できる。したがって、建具の損傷を抑制できる。また、アーム6及び取付台8には、肉抜きを設けるとよい。このように肉抜きを設けることで、固定クランプ100を軽量化できるので、建具の損傷を抑制する効果を高めることができる。また、固定クランプ100を軽量化することで、固定クランプ100に取り付けられた火災感知器又は電気機器等の被取付機器の落下を抑制することができる。さらに好ましくは、アーム6及び取付台8は、難燃性に関するUL94規格の要件を満たす材料で構成されているとよい。また、合成樹脂で構成されたアーム6又は取付台8に、アルミ等の金属製の補強板を入れてもよい。
【0024】
また、本実施の形態では、取付台8に、溝9が設けられている。溝9は、取付台8の、アーム6が設けられた面とは反対側の面に設けられている。溝9は、火災感知器又は電気機器等の被取付機器を取付台8に取り付ける際に、ネジ又はボルトを挿入するためのものである。
【0025】
図2は、実施の形態に係る固定クランプ100の斜視図であり、第1挟持片1、第2挟持片2、第1ボルト3及び第2ボルト4が取り外された状態を示している。アーム6の一対の腕には、それぞれ、ボルト収容部7が形成されている。ボルト収容部7は、アーム6に形成された空間である。アーム6に、第1ボルト3又は第2ボルト4が螺合するネジ穴を形成することで、ボルト収容部7が構成されている。さらに本実施の形態のボルト収容部7は、把持部5も収容する。本実施の形態では、把持部5は第1ボルト3又は第2ボルト4よりも直径が大きい。したがって、ボルト収容部7において把持部5が収容される部位(
図2の紙面右側の符号7参照)は、第1ボルト3又は第2ボルト4のねじが切られた軸が挿入される部位(
図2の紙面左側の符号7参照)と比較して径が大きい(
図4参照)。
【0026】
図3は、実施の形態に係る固定クランプ100の平面図である。取付台8には、溝9と、第2開口11が設けられている。
図3に示す取付台8の外形は一例である。取付台8の周縁に凹みを設け、この凹みに電気配線を配置できるようにしてもよい。
【0027】
溝9は、取付台8の長手方向に沿う長尺形状である。長尺の溝9を設けることで、被取付機器を取付台8に取り付ける際の、ネジ又はボルトの締め付け位置の自由度を高めることができる。本実施の形態では、一条の溝9を設けた例を示すが、複数条の溝9を設けてもよい。
【0028】
第2開口11は、電気配線又は結束バンドを通すための穴である。第2開口11を設けることで、被取付機器に接続されている電気配線の取り回しを容易にすることができる。また、結束バンドを第2開口11に通して、電気配線あるいは被取付機器を固定することもできるので、被取付機器を建具に取り付ける際の作業者の作業性を向上させることができる。結束バンドで電気配線を固定することで、電気配線が垂れ下がるのを抑制できるので、美観もよい。
図3では、第2開口11として、大きさの異なる複数の開口を例示している。開口面積の大きい第2開口11は、例えば電気配線を通すために用いられ、開口面積の小さい第2開口11は、例えば結束バンドを通すために用いられる。このように、大きさの異なる第2開口11を設けることで、太さの異なる配線又はバンドの位置ズレ防止に適した方の第2開口11を作業者は使用することができる。なお、
図3に示した第2開口11の形状、位置及び数は一例であり、図示のものに限定されない。
【0029】
図4は、実施の形態に係る固定クランプ100への被取付機器の取り付け態様を説明する図である。
図4では、被取付機器の一例であるスポット型の火災感知器20及び建具21を併せて図示している。
図4に示すように、固定クランプ100の取付台8における紙面上側に、火災感知器20が取り付けられる。なお、
図4では、固定クランプ100に火災感知器20が取り付けられた状態を示しているが、固定クランプ100の建具21への固定の後に、火災感知器20を固定クランプ100に取り付けてもよい。
【0030】
図4(a)は、固定クランプ100が建具21に取り付けられていない状態を示している。建具21への取付け前において、第1挟持片1と第2挟持片2との距離が、建具21の幅よりも大きくなるように、第1ボルト3及び第2ボルト4の回転位置が調整されている。このとき、把持部5は、アーム6の端部から突出しており、作業者は把持部5を掴むことができる。
【0031】
作業者は、第1挟持片1及び第2挟持片2が建具21を挟み込むように、固定クランプ100を配置する。そして、作業者は、第1ボルト3及び第2ボルト4のそれぞれに設けられた把持部5を回転させる。これにより、第1挟持片1及び第2挟持片2が、互いに近づく。把持部5を回転させると、把持部5が徐々にアーム6に形成されたボルト収容部7に入っていく。そして、締め付けの最終段階においては、図示しないレンチを用いて第1ボルト3及び第2ボルト4が締め付けられる。
【0032】
図4(b)は、第1ボルト3及び第2ボルト4の締め付けが完了した状態を示している。第1ボルト3及び第2ボルト4の締め付けが完了すると、第1挟持片1と第2挟持片2とによって、建具21が挟持される。第1ボルト3及び第2ボルト4がアーム6に螺合しているため、建具21の両側から押圧力が加えられて、固定クランプ100は安定的に建具21に固定される。
【0033】
本実施の形態によれば、第1挟持片1と第2挟持片2とで建具21を挟み込むので、建具21に傷をつけることがない。また、第1挟持片1と第2挟持片2の両方を移動させて、建具21を挟持するため、第1挟持片1から建具21へ加える力と、第2挟持片2から建具21に加える力とのバランスを取りやすい。したがって、過度な力で挟んで建具21を傷つけたり、建具21を挟む力が不足して被取付機器を落下させたり、力のバランスが悪くて被取付機器が傾いたり、といった取付に係る不具合を回避しやすい。このよう日本実施の形態によれば、建具21を傷つけることなく被取付機器を建具21に取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【0034】
また、本実施の形態によれば、第1ボルト3及び第2ボルト4を回転させると、第1挟持片1及び第2挟持片2が互いに近づく。第1ボルト3及び第2ボルト4の回転による進行方向と、第1挟持片1及び第2挟持片2が互いに近づく方法とは、一致している。このため、例えば作業者は両手で同時に第1ボルト3及び第2ボルト4を回転させることで、第1挟持片1及び第2挟持片2の移動量をより均等に近づけることができる。したがって、第1挟持片1側と第2挟持片2側とで、バランスよく建具21を挟持するための作業性がよい。例えば特許文献1の構造は、挟持片12と挟持片13とが建具を挟む方向と、挟持片13を固定するネジ部16の挿入方向とが異なっており、ネジ部16を止める際には挟持片12及び挟持片13がずれないように押さえておくための作業又は構造が必要であった。しかし、本実施の形態によれば、第1挟持片1と第2挟持片2とで建具21を挟んで固定する作業が単純化されており、作業性がよい。
【0035】
また、本実施の形態によれば、第1ボルト3及び第2ボルト4がアーム6にねじ込まれた状態において、把持部5が、ボルト収容部7に収容される。このため、アーム6の左右の端部からは、把持部5が突出していない。建具21の幅と第1ボルト3及び第2ボルト4との長さによっては、把持部5が多少突出することもありうるが、把持部5の大部分はボルト収容部7に収容される。
図4(b)に例示されるように、固定クランプ100の左右の端部は、紙面上下に渡って概ね直線状となり、凹凸がないか又はごくわずかである。したがって、固定クランプ100が建具21に取り付けられたときに、すっきりとした美観を生じさせることができる。このように本実施の形態の固定クランプ100は美観がよいので、重要文化財又は歴史的建造物等の美観が重視される建物に火災感知器又は電気機器等の被取付機器を取り付ける際にも、美観を損なうことがない。
【0036】
なお、第1挟持片1と第2挟持片2が最も離れた状態における両者の距離L1は、例えば、約50mmとし、第1挟持片1と第2挟持片2が最も近づいた状態における両者の距離L2は、約30.303mm(1寸)とすることができる。このように距離L2を設定することで、幅1寸である標準的な竿縁天井の竿縁に、固定クランプ100を取り付けることができる。また、上述のように本実施の形態では、第1ボルト3は第1挟持片1に対して取り外し可能であり、また、第2ボルト4は第2挟持片2に対して取り外し可能であるので、異なる長さの第1ボルト3及び第2ボルト4を用いることもできる。そうすると、竿縁よりも幅が大きいあるいは小さい建具21に対して、固定クランプ100を取り付けることもできる。したがって、取付先の建具21の自由度が向上するので、固定クランプ100を用いて様々な建物に被取付機器を取り付けることができる。
【0037】
また、アーム6及び取付台8の幅方向における中心、すなわち
図4における左右方向の中心に、位置決めのための目印を設けてもよい。目印は、例えば、突起又は塗料により設けられる。このような突起を設けることで、建具21と固定クランプ100とで中心を合わせやすくなるため、建具21への固定クランプ100のバランスのよい取り付けが容易になる。
【符号の説明】
【0038】
1 第1挟持片、2 第2挟持片、3 第1ボルト、4 第2ボルト、5 把持部、5a レンチ穴、6 アーム、7 ボルト収容部、8 取付台、9 溝、10 第1開口、11 第2開口、20 火災感知器、21 建具、100 固定クランプ。