IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋刃物株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-中抜き用のスリッタ装置 図1
  • 特開-中抜き用のスリッタ装置 図2
  • 特開-中抜き用のスリッタ装置 図3
  • 特開-中抜き用のスリッタ装置 図4
  • 特開-中抜き用のスリッタ装置 図5
  • 特開-中抜き用のスリッタ装置 図6
  • 特開-中抜き用のスリッタ装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066729
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】中抜き用のスリッタ装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/24 20060101AFI20220422BHJP
   B23D 19/06 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
B26D1/24 B
B26D1/24 E
B23D19/06 F
B23D19/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175242
(22)【出願日】2020-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000222772
【氏名又は名称】東洋刃物株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩司
【テーマコード(参考)】
3C027
3C039
【Fターム(参考)】
3C027VV07
3C027WW02
3C027WW03
3C027WW15
3C039CB25
3C039CB35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡素な構造で中抜き屑を少なくして無駄をなくし、中抜き屑が下刃の間に挟んで絡まってしまうことを防止することができるスリッタ装置を提供する。
【解決手段】被切断部材30を長さ方向に切断して製品(31a、31b)と中抜き屑32を排出する中抜き用のスリッタ装置100において、第1の回転軸1と第2の回転軸2と第3の回転軸3とが平行に備えられ、第1の回転軸1には第1の上刃4が、第2の回転軸2には第2の上刃5が備えられ、第1の上刃4と第2の上刃5とは、中抜き屑32の両側の切断面をそれぞれの鎬面側として、切断方向に前後に配設され、第3の回転軸3には、刃先を第1の上刃の刃先4aと、第2の上刃の刃先5bとそれぞれ対向させてオーバーラップさせた第1の下刃8と、第2の下刃9とが備えられ、第1の下刃8と第2の下刃9とは、刃先を対向させ、軸線方向に中抜き屑32の切断幅W1分の間隔を開けて配設されるようにした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の被切断部材を長さ方向に沿って切断して少なくとも2つ以上の製品と少なくとも1つ以上の中抜き屑を排出する中抜き用のスリッタ装置において、
第1の回転軸と第2の回転軸と第3の回転軸とが平行に備えられ、
前記第1の回転軸には、
少なくとも一つ以上の第1の上刃が備えられ、
前記第2の回転軸には、
少なくとも一つ以上の第2の上刃が備えられ、
前記第1の上刃と前記第2の上刃とは、
切断される前記中抜き屑の一方の切断面を前記第1の上刃の鎬面側とし、
切断される前記中抜き屑の他方の切断面を前記第2の上刃の鎬面側として、
切断方向に前後に配設され、
前記第3の回転軸には、
刃先を前記第1の上刃の刃先と対向させてオーバーラップさせた第1の下刃と、
刃先を前記第2の上刃の刃先と対向させてオーバーラップさせた第2の下刃とが備えられ、
前記第1の下刃と前記第2の下刃とは、
刃先を対向させ、
軸線方向に前記中抜き屑の切断幅分の間隔を開けて配設されるようにしたことを特徴とする中抜き用のスリッタ装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の被切断部材を長さ方向に沿って複数の狭幅帯体に切断するためのスリッタ装置に関する。被切断部材としては、エレクトロニクス、自動車、エネルギー、メディカル、食品包装等の幅広い分野で用いられる、プラスチックフィルム、金属箔、紙、布、または、それらの複合材が挙げられ、特に、それらを帯状にした被切断部材を、切断幅寸法や切り口の品質を高精度に保ちながら切断する中抜き用のスリッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中抜き用のスリッタ装置としては、例えば、特許文献1の図5に示すように、第2の回転軸2にスペーサ(スペーサー:当該文言以下、カッコ内の文言は段落0003まで特許文献1に記載の文言を示す)6を挟んで両側に1対の下刃 (厚刃)55が軸装され、第1の回転軸1に皿ばねのような傾斜を僅かに有する形状をなしている一対の上刃 (薄刃)56をその上刃 (薄刃)56の周側面10が互いに外側となって1対の下刃 (厚刃)55に当接して狭い部位L2に挿入されている。そして広い部位の長さL1と2枚の 下刃(厚刃)55、55、の刃厚の合計長さL3が製品となる金属箔シート等の切断幅に対応し、狭い部位L2に位置するシート状物を中抜き屑として廃棄するようにしたものである。
【0003】
この場合、合計長さL3で切断された被切断部材は、本明細書の図7(a)に示したように、その断面が両面ともダレ面が発生しない左右対称の垂直面101、垂直面102で形成され、切り口の品質を保つことができるので製品31として使用される。一方、狭い部位L2で切断された中抜き屑は特許文献1の図5に示す上刃 (薄刃)56の鎬面(傾斜面、特許文献1では凌ぎと記載)によって本明細書の図7(b)に示したように、両方の切断面にダレ面103,104が形成され、中抜き屑32として廃棄されることになる。つまり、特許文献1の図5に示すスリッタ装置は、切断幅寸法や切り口の品質を高精度に保つことができる製品が要求される場合に用いられる中抜き用のスリッタ装置である。
【0004】
ところで、中抜き用のスリッタ装置において、中抜き幅を狭くしてできるだけ中抜き屑を少なくすることで帯状の被切断部材の無駄をできるだけなくすようにしている。また、その場合に生じる問題として、中抜き屑が下刃の間に挟まることで絡まってしまうことがあげられる。それを解決する手段として、0.1mm~0.5mm程度の厚みのある平面印刷版の中抜き用のスリッタ装置が文献2に開示されている。これは、下刃(中抜下刃:当該文言以下、カッコ内の文言は、段落0013の発明の効果まで特許文献2に記載の文言を示す)36の間に算盤玉状の中抜ホルダ48を配置して、中抜きされた中抜き屑(中抜屑)12Bを折り曲げることで、中抜き屑(中抜屑)12Bと下刃(中抜下刃)36間に隙間が生まれるので、中抜き屑(中抜屑)12Bが下刃(中抜下刃)36間に挟まれなくなるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-318494号公報
【特許文献2】特開2000-108536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の場合、被切断部材(ウエブ)12を複数の狭幅帯体に切断する場合には算盤玉形状をした中抜ホルダ48が複数必要となる。また、算盤玉形状の中抜ホルダ48で中抜き屑(中抜屑)12Bを支えて屈曲させるためには、中抜き屑(中抜屑)12Bを算盤玉形状の中抜ホルダ48に食い込ませるようにしなければならない。そのためには、被切断部材(ウエブ)12の搬送ラインに対して上刃(中抜上刃)52を深く食い込ませて下刃(中抜下刃)36とのオーバーラップ量を大きくする必要がある。しかし、この場合、所定のオーバーラップ量を超えることで、刃先の寿命や、製品の切断面に悪影響を及ぼすことが考えられる。
【0007】
また、上刃(中抜上刃)52の鎬面(傾斜面)もしくは上刃(中抜上刃)52の間に設けたスペーサを算盤玉形状の中抜ホルダ48に合わせたV字状の形状にして中抜き屑(中抜屑)12Bを抑えて屈曲させ塑性変形させる必要があるため、構造が複雑になる。
【0008】
また、厚みのある被切断部材(ウエブ)12の場合、中抜き屑(中抜屑)12BをV字状に屈曲させるための負荷が大きくなるため、駆動モータの容量を大きくする必要がある。また、厚みのある被切断部材(ウエブ)12の場合、中抜き屑(中抜屑)12Bの幅を狭くすると中抜き屑(中抜屑)12BをV字状に屈曲させるのは難しくなる。
【0009】
また、複数の狭幅帯体に切断する場合、中抜き屑(中抜屑)12Bが屈曲したままで複数排出されるため嵩張って収容され、後処理に手間がかかることが考えられる。また、塑性変形しやすいアルミ箔には有効であるが、塑性変形しにくいプラスチック類は切断されて算盤玉形状の中抜ホルダ48から外れた時点で平坦な形状に復帰して、中抜き屑(中抜屑)12Bが下刃(中抜下刃)36の間に挟まってしまうことが考えられ、塑性変形しにくいプラスチック類には適していないと言える。
【0010】
本発明は、上述したような従来の中抜き用のスリッタ装置の欠点に鑑みてなされたものであり、アルミ箔以外の塑性変形しにくい被切断部材(ウエブ)や厚みのある被切断部材(ウエブ)を切断する場合であっても、より簡素な構造で、製品の切断面に悪影響を与えることなく、且つ、中抜き屑の幅を小さくして無駄を少なくすることができ、また、中抜き屑の幅を小さくしても中抜き屑が下刃間に挟まって絡まることの無い中抜き用のスリッタ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述の課題を解決するため、帯状の被切断部材を長さ方向に沿って切断して少なくとも2つ以上の製品と少なくとも1つ以上の中抜き屑を排出する中抜き用のスリッタ装置において、第1の回転軸と第2の回転軸と第3の回転軸とが平行に備えられ、前記第1の回転軸には、少なくとも一つ以上の第1の上刃が備えられ、前記第2の回転軸には、少なくとも一つ以上の第2の上刃が備えられ、前記第1の上刃と前記第2の上刃とは、切断される前記中抜き屑の一方の切断面を前記第1の上刃の鎬面側とし、切断される前記中抜き屑の他方の切断面を前記第2の上刃の鎬面側として、切断方向に前後に配設され、前記第3の回転軸には、刃先を前記第1の上刃の刃先と対向させてオーバーラップさせた第1の下刃と、刃先を前記第2の上刃の刃先と対向させてオーバーラップさせた第2の下刃とが備えられ、前記第1の下刃と前記第2の下刃とは、刃先を対向させ、軸線方向に前記中抜き屑の切断幅分の間隔を開けて配設されるようにしたことを特徴とする中抜き用のスリッタ装置とする。
【0012】
第1の上刃と第2の上刃を切断方向に前後して配設して、中抜き屑の左右の切断面の切断タイミングをずらすようにしたことで、中抜き屑は下刃の間に挟まることがなく、また、被切断部材が0.5mm以上の厚みのあるものでも問題なく切断できるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルミ箔以外の塑性変形しにくい被切断部材(ウエブ)や厚みのある被切断部材(ウエブ)を切断する場合であっても、より簡素な構造で、製品の切断面に悪影響を与えることなく、且つ、中抜き屑の幅を小さくして無駄を少なくすることができ、また、中抜き屑の幅を小さくしても中抜き屑が下刃間に挟まって絡まることの無い中抜き用のスリッタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る中抜き用のスリッタ装置を説明するための正面図。
図2】本発明に係る中抜き用のスリッタ装置を説明するための側面図(図1のA-A矢視図)。
図3図1のB詳細図。
図4図2のC-C断面図
図5図2のD-D断面図
図6】本発明に係る中抜き用のスリッタ装置を説明するための斜視図。
図7】中抜き用のスリッタ装置によって切断された被切断部材の断面図。。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図1図7を用いて説明してゆく。
中抜き用のスリッタ装置100には第1の回転軸1と第2の回転軸2と第3の回転軸3とが平行に備えられ、第1の回転軸1には第1の上刃4,第2の回転軸2には第2の上刃5が備えられている。第1の上刃4及び第2の上刃5はそれぞれ第1の上刃4の鎬面4bから刃先4a側に向かって、第2の上刃5の鎬面5bから刃先5a側に向かって僅かに傾斜して弾性変形可能な環状の皿形形状になっている。第3の回転軸3には剛性のある円筒形の第1の下刃8と剛性のある円筒形の第2の下刃9が、幅W1のスペーサ10cを挟んで隙間を開けて、第1の下刃8の刃先8a、第2の下刃9の刃先9aを対向させて備えられている。また、スペーサ10aは第1の下刃8を挟んでスペーサ10cと反対側に取り付けられ、スペーサ10bは第2の下刃9を挟んでスペーサ10cと反対側に取り付けられ、それぞれ第1の下刃8及び第2の下刃9とほぼ同一外径で形成されて、切断された製品31a,31bの第1の下刃8及び第2の下刃9から軸線方向に離れた部分が垂れないように案内する役目を担う。
【0016】
第1の上刃4の刃先4aと第1の下刃8の刃先8a及び第2の上刃5の刃先5aと第2の下刃9の刃先9aとはそれぞれ対向させS寸法分オーバーラップさせている。また、弾性変形可能な第1の上刃4の刃先4aと第1の下刃8の刃先8a及び弾性変形可能な第2の上刃5の刃先5aと第2の下刃9の刃先9aを圧接させている。第1の上刃4の刃先4aと第1の下刃8の刃先8aの圧接量は第1の回転軸1に嵌装されたスペーサ7a及びスペーサ7bの軸線方向幅寸法により第1の上刃4の刃先4aを第1の下刃8の刃先8aに圧接させて弾性変形させることにより決定される。第2の上刃5の刃先5aと第2の下刃9の刃先9aの圧接量は第2の回転軸2に嵌装されたスペーサ6a及びスペーサ6bの軸線方向幅寸法により第2の上刃5の刃先5aを第2の下刃9の刃先9aに圧接させて弾性変形させることにより決定される。尚、圧接量は第1の上刃4及び第2の上刃5が単体の時に刃先の弾性変形量との関係をあらかじめ測定しておくことで得られる。
【0017】
第1の回転軸1、第2の回転軸2及び第3の回転軸3は図示しない回転駆動伝達部により図2に示す矢印61、62、63の方向に回転し、第1の回転軸1と第3の回転軸3及び第2の回転軸2と第3の回転軸3との間に矢印64の方向に送られた帯状の被切断部材30を長さ方向に沿って製品31a,31bと中抜き屑32に切断する。
【0018】
被切断部材30は、まず、図2及び図4に示すように、切断点Eで第1の上刃4の刃先4aと第1の下刃8の刃先8aで切断され、切断された被切断部材30のうち、第1の上刃4の刃先4a側の被切断部材30は図4及び図6に示すように幅W0の製品31aとして排出される。次に切断された被切断部材30のうち、第1の上刃4の鎬面4b側の被切断部材30は第2の上刃5に送られて、図2及び図5に示すように、切断点Fで第2の上刃5の刃先5aと第2の下刃9の刃先9aで切断され、切断された被切断部材30のうち、第2の上刃5の刃先5a側の被切断部材30は図5及び図6に示すように幅W0の製品31bとして排出され、第2の上刃5の鎬面5b側の被切断部材30は幅W1の中抜き屑32として排出される。
【0019】
中抜き屑32は、最初に図2及び図4に示すように切断点Eで第1の上刃4の刃先4aと第1の下刃8の刃先8aで切断され、次に図2及び図5に示すように切断点Fで第2の上刃5の刃先5aと第2の下刃9の刃先9aで切断されるようにして、左右の切断面の切断タイミングをずらすようにしたので、2つの上刃で同時に切断する場合のように2つの上刃で中抜き屑を下刃の間に同時に押し込むことで、中抜き屑が下刃の間に挟まって絡まってしまうようなことがなくなる。
【0020】
また、中抜き屑32は、最初に切断点Eで切断された後に、一方の切断面が第1の上刃4の鎬面4bに沿って送られ、次に切断点Fで切断された後に、他方の切断面が第2の上刃5の鎬面5bに沿って送られる。つまり、切断された中抜き屑32の両側の切断面は第1の上刃4の鎬面4b側と第2の上刃5の鎬面5b側となり、図7(b)に示すように、両方の切断面にダレ面103,104が形成され、中抜き屑32として廃棄される。
【0021】
また、中抜き屑32は、図2の側面図に示すように、第1の上刃4と第2の上刃5の刃先が当たらない位置に第1の回転軸及び第2の回転軸を配設することで、図1の正面図及び図3の詳細図に示すように、第1の上刃4の刃先4aと第2の上刃5の刃先5aの軸線方向(幅方向)の間隔を第1の上刃4及び第2の上刃5の厚さtよりも小さい幅W1にすることができる。
【0022】
以上のようにすることで、製品31は図7(a)に示すように、切断面に悪影響を受けることなく、垂直面101、垂直面102の品質を高精度に保つことができる。
【0023】
尚、本発明の実施例においては、第1の上刃4の刃先4aと第1の下刃8の刃先8a及び第2の上刃5の刃先5aと第2の下刃9の刃先9aとはそれぞれオーバーラップさせて圧接させていることで説明を行ったが、被切断部材によっては、それぞれ圧接させずに隙間(クリアランス)を設けることでもよい。
【0024】
また、本発明の実施例においては、中抜き屑32を1つ排出する場合について説明したが、中抜き屑32を2つ以上排出する場合も同様であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0025】
1 第1の回転軸
2 第2の回転軸
3 第3の回転軸
4 第1の上刃
4a 第1の上刃4の刃先
4b 第1の上刃4の鎬面
5 第2の上刃
5a 第2の上刃5の刃先
5b 第2の上刃5の鎬面
6a スペーサ
6b スペーサ
7a スペーサ
7b スペーサ
8 第1の下刃
8a 第1の下刃8の刃先
9 第2の下刃
9a 第2の下刃9の刃先
10a スペーサ
10b スペーサ
10c スペーサ
30 被切断部材
31 製品
31a 製品
31b 製品
32 中抜き屑
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7