(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066783
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】ブレーカー及びそれを備えた安全回路、2次電池パック
(51)【国際特許分類】
H01H 37/54 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
H01H37/54 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175316
(22)【出願日】2020-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】390025140
【氏名又は名称】ボーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】浪川 勝史
【テーマコード(参考)】
5G041
【Fターム(参考)】
5G041AA13
5G041BB06
5G041DA11
5G041DB01
5G041DB07
5G041DC11
(57)【要約】
【課題】導通抵抗が小さいブレーカーを提供する。
【解決手段】ブレーカー1は、固定接点21が形成される第1端子片2と、可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより可動接点41が固定接点21から離隔するように可動片4を作動させる熱応動素子5と、可動片4と電気的に接続される第2端子片3とを備え、可動片4は、第2端子片3に接触する接触領域45の内側に、熱応動素子5の側に突出する凸部44aを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点が形成される第1端子片と、
可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、
温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離隔するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、
前記可動片と電気的に接続される第2端子片とを備えたブレーカーであって、
前記可動片は、前記第2端子片に接触する接触領域の内側に、前記熱応動素子の側に突出する凸部を有する、
ブレーカー。
【請求項2】
前記可動片は、前記第2端子片よりも前記熱応動素子の側に配されている、請求項1記載のブレーカー。
【請求項3】
前記第1端子片の一部が埋設され、前記熱応動素子が収容される第1ケースと、
前記第2端子片の一部が埋設され、前記可動片が収容される第2ケースとを備え、
前記第1ケースと前記第2ケースとが、固着されている、請求項1又は2に記載のブレーカー。
【請求項4】
前記可動片は、前記接触領域で前記第2端子片と溶接されており、
前記可動片と前記第2端子片との溶接箇所は、前記可動片の長手方向で前記凸部と重複している、請求項1ないし3のいずれかに記載のブレーカー。
【請求項5】
前記溶接箇所の中心は、前記凸部の中心よりも前記可動接点の側に位置ずれとしている、請求項4記載のブレーカー。
【請求項6】
前記可動片は、前記可動接点が前記固定接点に接近するように曲げられる曲げ部を有する、請求項1ないし5のいずれかに記載のブレーカー。
【請求項7】
前記可動片の厚さ方向から視て、前記熱応動素子の端縁は、前記接触領域と重複としている、請求項1ないし6のいずれかに記載のブレーカー。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のブレーカーを備えた、電気機器用の安全回路。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載のブレーカーを備えた、2次電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に内蔵される小型のブレーカー等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電気機器の2次電池やモーター等の保護装置(安全回路)としてブレーカーが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気機器の高出力化が進展し、より導通抵抗の小さい(すなわち、電流容量が大きい)ブレーカーが要望されている。このようなブレーカーは、例えば、弾性力が大きい可動片を用いることにより実現できる。しかしながら、このような可動片を適用した場合、限られたサイズの熱応動素子によって可動片を押し上げることが困難となる。このため、ブレーカーのサイズ及び機器の安全性を維持した上で、導通抵抗を十分に低下させるのは、困難を伴っていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、導通抵抗が小さいブレーカーを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固定接点が形成される第1端子片と、可動接点を有し、前記可動接点を前記固定接点に押圧して接触させる可動片と、温度変化に伴って変形することにより前記可動接点が前記固定接点から離隔するように前記可動片を作動させる熱応動素子と、前記可動片と電気的に接続される第2端子片とを備えたブレーカーであって、前記可動片は、前記第2端子片に接触する接触領域の内側に、前記熱応動素子の側に突出する凸部を有する。
【0007】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記可動片は、前記第2端子片よりも前記熱応動素子の側に配されている、ことが望ましい。
【0008】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記第1端子片の一部が埋設され、前記熱応動素子が収容される第1ケースと、前記第2端子片の一部が埋設され、前記可動片が収容される第2ケースとを備え、前記第1ケースと前記第2ケースとが、固着されている、ことが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記可動片は、前記接触領域で前記第2端子片と溶接されており、前記可動片と前記第2端子片との溶接箇所は、前記可動片の長手方向で前記凸部と重複している、ことが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記溶接箇所の中心は、前記凸部の中心よりも前記可動接点の側に位置ずれとしている、ことが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記可動片は、前記可動接点が前記固定接点に接近するように曲げられる曲げ部を有する、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記ブレーカーにおいて、前記可動片の厚さ方向から見て、前記熱応動素子の端縁は、前記接触領域と重複としている、ことが望ましい。
【0013】
本発明は、前記ブレーカーを備えた、電気機器用の安全回路である。
【0014】
本発明は、前記ブレーカーを備えた、2次電池パックである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の前記ブレーカーによれば、前記可動片が、前記第2端子片に接触する前記接触領域の内側に、前記熱応動素子の側に突出し、前記熱応動素子と接触する凸部を有するので、前記接触領域まで前記熱応動素子の端縁を延長できる。従って、前記ブレーカーのサイズを維持しつつ、大型の前記熱応動素子を適用可能となり、熱変形時に前記可動片を押し上げる力を容易に確保できるようになる。これにより、弾性力が大きい前記可動片を適用し、前記固定接点と前記可動接点との間の接触抵抗を減少させ、容易にブレーカーの高容量化を図ることが可能となる。また、このような前記可動片は、それ自体の導通抵抗が小さいので、ブレーカーの高容量化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態によるブレーカーの概略構成を示す組み立て前の斜視図。
【
図2】通常の充電又は放電状態における上記ブレーカーを示す断面図。
【
図3】過充電状態又は異常時などにおける上記ブレーカーを示す断面図。
【
図4】第2端子片及び可動片が一体化された蓋部材を示す斜視図。
【
図5】第2端子片の接合部及び可動片の接合部の周辺を拡大して示す断面図。
【
図6】第2端子片及び可動片が一体化された蓋部材を示す平面図。
【
図7】本発明の上記ブレーカーを備えた2次電池パックの構成を示す平面図。
【
図8】本発明の上記ブレーカーを備えた安全回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。
図1乃至
図3は、ブレーカーの構成を示している。
【0018】
図1に示されるように、ブレーカー1は、固定接点21が形成される第1端子片2と、可動接点41を有する可動片4と、可動片4と電気的に接続される第2端子片3と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6等によって構成されている。第1端子片2及び第2端子片3が外部回路と接続されることにより、ブレーカー1は、電気機器の安全回路の主要部を構成する
【0019】
第1端子片2、第2端子片3、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6は、ケース10に収容されている。ケース10は、ケース本体(第1ケース)7とケース本体7の上面に装着される蓋部材(第2ケース)8等によって構成されている。
【0020】
第1端子片2は、例えば、銅等を主成分とする金属板(この他、銅-チタニウム合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより板状に形成され、ケース本体7にインサート成形により埋め込まれている。
【0021】
固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル-銀合金の他、銅-銀合金、金-銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により、形成されている。固定接点21は、第1端子片2のうち、可動接点41に対向する位置に形成され、ケース本体7の内部に形成されている開口73aの一部からケース本体7の収容凹部73に露出されている。
【0022】
固定接点21を挟んで、第1端子片2の一端側には外部回路と電気的に接続される第1端子22が形成され、他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。第1端子22は、ケース本体7の側壁から突出し、外部回路の回路基板のランド部とはんだ付け等の手法により接続される。
【0023】
本出願においては、特に断りのない限り、第1端子片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち
図1において上側の面)を第1面、その反対側の底面を第2面として説明している。他の部品、例えば、第2端子片3、可動片4及び熱応動素子5、ケース10等についても同様である。
【0024】
支持部23は、ケース本体7の内部に形成されている開口73dの一部からケース本体7の収容凹部73に露出し、PTCサーミスター6と電気的に接続される。
【0025】
図2に示されるように、第1端子片2は、階段状(側面視でクランク状)に曲げられた段曲げ部25を有する。段曲げ部25は、固定接点21と支持部23とを繋ぎ、固定接点21と支持部23とを高さ違いに配置する。これにより、PTCサーミスター6をコンパクトに収納可能となる。
【0026】
第2端子片3は、第1端子片2と同様に、銅等を主成分とする金属板をプレス加工することにより板状に形成され、蓋部材8にインサート成形により埋め込まれている。第2端子片3は、可動片4が接合される接合部31と、外部回路と電気的に接続される第2端子32とを有している。接合部31は、第2端子片3の一端側に形成され、第2端子32は、第2端子片3の他端側に形成されている。
【0027】
接合部31は、蓋部材8の収容凹部82に露出し、可動片4と電気的に接続される。第2端子32は、蓋部材8の側壁から突出し、第2接続面32aが回路基板のランド部とはんだ付け等の手法により接続される。
【0028】
可動片4は、銅等を主成分とする金属材料をプレス加工することにより板状に形成されている。可動片4は、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。
【0029】
可動片4の一端部には、可動接点41が形成されている。可動接点41は、固定接点21と同等の材料によって可動片4の第2面に形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。
【0030】
可動片4の他端部には、第2端子片3の接合部31と接合される接合部42が形成されている。第2端子片3の接合部31の第2面と可動片4の接合部42の第1面とは、例えば、レーザー溶接によって固着されている。これにより、第2端子片3と可動片4とが電気的に接続される。レーザー溶接とは、レーザー光をワーク(本実施形態では、第2端子片3及び可動片4が相当)に照射し、ワークを局部的に溶融及び凝固させることによってワーク同士を接合する溶接手法である。レーザー光が照射されたワークの表面には、他の溶接手法(例えば、ジュール熱を利用する抵抗溶接)による溶接痕とは異なる形態のレーザー溶接痕が形成される。
【0031】
可動片4は、可動接点41と接合部42との間に、弾性部43を有している。弾性部43は、接合部42から可動接点41の側に延出されている。これにより、接合部42は、弾性部43を挟んで可動接点41とは反対側に設けられる。
【0032】
接合部42において第2端子片3の接合部31と固着されることにより可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点41が固定接点21の側に押圧されて接触し、第1端子片2と可動片4とが通電可能となる。可動片4と第2端子片3とは、接合部31及び接合部42において電気的に接続されているので、第1端子片2と第2端子片3とが通電可能となる。
【0033】
可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、作動温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部43の第2面には、熱応動素子5に対向して一対の凸部(接触部)44a,44bが形成されている。凸部44a,44bと熱応動素子5とは接触して、凸部44a,44bを介して熱応動素子5の変形が弾性部43に伝達される(
図1及び
図3参照)。
【0034】
熱応動素子5は、可動片4の状態を可動接点41が固定接点21に接触する導通状態から可動接点41が固定接点21から離隔する遮断状態に移行させる。熱応動素子5は、円弧状に湾曲した初期形状をなし、熱膨張率の異なる薄板材を積層することにより形成される。過熱により作動温度に達すると、熱応動素子5の湾曲形状は、スナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形状が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅-ニッケル-マンガン合金又はニッケル-クロム-鉄合金、低膨脹側に鉄-ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
【0035】
PTCサーミスター6は、可動片4が遮断状態にあるとき、第1端子片2と第2端子片3及び可動片4とを導通させる。PTCサーミスター6は、第1端子片2の支持部23と熱応動素子5との間に配設されている。熱応動素子5の逆反り動作により第1端子片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、作動電流、作動電圧、作動温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタニウム酸バリウム、チタニウム酸ストロンチウム又はチタニウム酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
【0036】
ケース10を構成するケース本体7及び蓋部材8は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の絶縁材料を適用してもよい。
【0037】
ケース本体7には、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための内部空間である収容凹部73が形成されている。収容凹部73は、可動片4を収容するための開口73a,73b、可動片4及び熱応動素子5を収容するための開口73c、並びに、PTCサーミスター6を収容するための開口73d等を有している。なお、ケース本体7に組み込まれた熱応動素子5の端縁は、収容凹部73の内部に形成されている枠によって適宜当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
【0038】
蓋部材8には、第2端子片3がインサート成形によって埋め込まれている。第2端子片3は、
図2及び
図3に示すように、可動片4の第1面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、蓋部材8のひいては筐体としてのケース10の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。蓋部材8には、可動片4収容するための内部空間である収容凹部82が形成されている。第2端子片3は、収容凹部82に露出されている。
【0039】
図1に示されるように、固定接点21、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容したケース本体7の開口73a、73b、73c等を塞ぐように、蓋部材8が、ケース本体7に装着される。ケース本体7と蓋部材8とは、例えば超音波溶着によって接合される。このとき、ケース本体7と蓋部材8とは、それぞれの外縁部の全周にわたって連続的に接合され、ケース10の気密性が向上する。これにより、収容凹部73及び収容凹部82がもたらすケース10の内部空間は密閉され、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等の部品がケース10の外部の雰囲気から遮断され、保護されうる。
【0040】
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持(逆反り前)している。弾性部43の弾性変形によって、可動接点41が固定接点21の側に押圧され、接触する。これにより、可動片4の弾性部43などを通じてブレーカー1の第1端子片2と第2端子片3との間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とが接触し、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び第1端子片2は、回路として導通していてもよい。
【0041】
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、作動温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点41とが離隔する。ブレーカー1の内部で熱応動素子5が変形し、可動片4を押し上げるときの熱応動素子5の作動温度は、例えば、70℃~90℃である。このとき、固定接点21と可動接点41の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点41の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
【0042】
図4は、第2端子片3及び可動片4が一体化された蓋部材8を、第2面の側から示す斜視図である。蓋部材8は、ケース本体7と固着される固着面81を有している。固着面81は、ケース本体7の固着面71と、例えば、超音波溶着によって固着される。
【0043】
収容凹部82は、固着面81から陥没するように蓋部材8の内部に形成されている。蓋部材8にインサート成形された第2端子片3は、収容凹部82の空間内に露出している。は、可動片4の接合部42は、収容凹部82内で第2端子片3の接合部31と接合される。
【0044】
可動片4の接合部42は、第2端子片3に接触する接触領域45を構成する。
図4において、接触領域45は、ハッチングにて示される領域である。接触領域45において第2端子片3との電気的な接触が確保される場合、可動片4は、第2端子片3に固着されてなくてもよい。
【0045】
可動片4の弾性部の一部(先端部分)及び可動接点41は、蓋部材8の固着面81からケース本体7の側に突出している。これにより、蓋部材8がケース本体7と固着されたとき、弾性部43が弾性力を発生し、可動接点41を固定接点21の側に押圧する。
【0046】
図5は、第2端子片3の接合部31及び可動片4の接合部42の周辺を拡大して示している。弾性部43の第2面には、熱応動素子5に対向して凸部44aが形成されている。凸部44aは熱応動素子5の側に突出する。凸部44aは、複数個設けられていてもよい。凸部44aは、熱応動素子5の第2端子32側の端縁部51に対向し、端縁部51と接触可能に形成されている。そして、本ブレーカー1では、凸部44aは、接触領域45の内側に設けられる。熱応動素子5の端縁部51は、例えば、端縁52から内側に向かって熱応動素子5の長さの15%以内の領域を意図している。
【0047】
本実施形態のブレーカー1によれば、可動片4が、接触領域45の内側に、熱応動素子5の側に突出し、熱応動素子5と接触する凸部44aを有するので、接触領域45まで熱応動素子5の端縁部51を延長できる。従って、ブレーカー1のサイズを維持しつつ、大型の熱応動素子5を適用可能となり、熱変形時に可動片4を押し上げる力を容易に確保できるようになる。これにより、弾性力が大きい可動片4を適用し、固定接点21と可動接点41との間の接触抵抗を減少させ、容易にブレーカー1の高容量化を図ることが可能となる。また、このような可動片4は、それ自体の導通抵抗が小さいので、ブレーカー1の高容量化に寄与する。
【0048】
図4に示されるように、本実施形態の弾性部43には、凸部44a及び凸部44bが形成されている。しかしながら、可動接点41に隣接して配される凸部44bは省かれていてもよい。
【0049】
可動片4は、第2端子片3よりも熱応動素子5の側に配されている、のが望ましい。これにより、ブレーカー1の厚さを削減し、容易に低背化を図ることが可能となる。
【0050】
可動片4は、接触領域45で第2端子片3と溶接されている、のが望ましい。これにより、可動片4が第2端子片3に強固に固定され、可動片4と第2端子片3との接触抵抗が低減される。また、可動片4の姿勢が安定するため、可動接点41と固定接点との接触抵抗が低減される。
【0051】
図6は、第2端子片3及び可動片4が一体化された蓋部材8を、第2面の側から示す平面図である。
図6において、溶接箇所9は、ハッチングにて示される領域である。上記の通り、可動片4と第2端子片3との溶接箇所9は、接触領域45に配される。溶接箇所9は、可動片4の長手方向、すなわち、で凸部44aの少なくとも一部と重複している、のが望ましい。これにより、容易にブレーカー1の小型化を図ることが可能となる。
【0052】
溶接箇所9の中心91は、凸部44aの中心(頂部)よりも可動接点41の側に位置ずれとしている、のが望ましい。このような構成によれば、凸部44a及び熱応動素子5の端縁部51を第2端子32の側に配することにより、ケース10のサイズを維持しつつ容易に熱応動素子5を大型化し、熱変形時に可動片4を押し上げる力を容易に確保できるようになる。
【0053】
図5に示されるように、可動片4は、可動接点41が固定接点21に接近するように曲げられる曲げ部46を有する、のが望ましい。本実施形態では、曲げ部46は、接合部42と弾性部43との境界部に配されている。可動片4に曲げ部46が形成されることにより、弾性部43が発生する弾性力が大きくなり、可動接点41と固定接点21との間の接触抵抗がより一層低減される。
【0054】
本実施形態の曲げ部46は、可動片4の第1面の側に凸な第1曲げ部46aと、可動片4の第2面の側に凸な第2曲げ部46bとを含んでいる。第1曲げ部46aは、第2曲げ部46bよりも第2端子32の側に配されている。第1曲げ部46a及び第2曲げ部46bを含む曲げ部46によれば、可動接点41と固定接点21との間の接触抵抗が低減されつつ、第2端子片3と弾性部43との間に弾性部43が変形するための空間が生じ、
図3に示される遮断時において、可動接点41と固定接点21とのギャップが容易に確保される。
【0055】
可動片4の厚さ方向から見て、熱応動素子5の端縁52は、接触領域45と重複としている、のが望ましい。このような構成によれば、ケース10のサイズを維持しつつ容易に熱応動素子5を大型化し、熱変形時に可動片4を押し上げる力を容易に確保できるようになる。
【0056】
以上、本発明のブレーカー1等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。すなわち、ブレーカー1は、少なくとも、固定接点21が形成される第1端子片2と、可動接点41を有し、可動接点41を固定接点21に押圧して接触させる可動片4と、温度変化に伴って変形することにより可動接点41が固定接点21から離隔するように可動片4を作動させる熱応動素子5と、可動片4と電気的に接続される第2端子片3とを備え、可動片4は、第2端子片3に接触する接触領域45の内側に、熱応動素子5の側に突出する凸部44aを有していればよい。
【0057】
また、本実施形態では、PTCサーミスター6による自己保持回路を有しているが、このような構成を省いた形態であっても適用可能であり、ケース10の小型化を図りつつ容易に熱応動素子5を大型化し、熱変形時に可動片4を押し上げる力を容易に確保できるようになる。
【0058】
また、本発明のブレーカー1等は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。
図7は2次電池パック500を示す。2次電池パック500は、2次電池501と、2次電池501の出力端回路中に設けたブレーカー1等とを備える。
図8は電気機器用の安全回路502を示す。安全回路502は2次電池501の出力回路中に直列にブレーカー1等を備えている。ブレーカー1等を備えたコネクタを含むケーブルによって安全回路502の一部が構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ブレーカー
2 第1端子片
3 第2端子片
4 可動片
5 熱応動素子
9 溶接箇所
21 固定接点
22 第1端子
32 第2端子
41 可動接点
44a 凸部
44b 凸部
45 接触領域
46 曲げ部
52 端縁
91 中心
500 2次電池パック
501 2次電池
502 安全回路