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特開2022-66820仕分け装置における出庫指示の設定方法、および、出庫指示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066820
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】仕分け装置における出庫指示の設定方法、および、出庫指示システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
B65G1/137 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175369
(22)【出願日】2020-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100167232
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 みな
(72)【発明者】
【氏名】宇都野 正史
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀生
(72)【発明者】
【氏名】若林 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賢司
(72)【発明者】
【氏名】小原 生光
【テーマコード(参考)】
3F522
【Fターム(参考)】
3F522AA02
3F522BB01
3F522BB24
3F522BB29
3F522BB32
3F522CC03
3F522CC05
3F522CC06
3F522DD02
3F522DD22
3F522DD34
3F522FF04
3F522FF35
3F522FF36
3F522GG13
3F522GG23
3F522GG25
3F522GG43
3F522GG48
3F522GG49
3F522HH16
3F522JJ01
3F522KK02
3F522KK07
3F522LL02
3F522LL25
3F522LL32
(57)【要約】
【課題】仕分け装置において、出庫性能が高い出庫指示を設定する効率を高める。
【解決手段】仕分け装置における個々の荷の出庫時刻を含む出庫指示を設定する方法において、複数の荷は、予め複数のグループに分類されており、個々の荷ごとに、予め定められた基準時刻に対して、予め定められた数値範囲内の荷別加算時間と、グループごとに異なる値が定められたずらし時間と、を加算することで、個々の荷に対応した初期出庫時刻を導出して、出庫指示を設定するための初期値を生成し、同一のグループに分類される荷を連続して出庫すると共に、複数の荷をグループごとに順次出庫する出庫性能が、予め定めた基準性能以上となるように、最適化アルゴリズムを用いて、初期値から出庫指示を生成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入庫された複数の荷の順序を入れ替えることによって仕分けして出庫する仕分け装置において、個々の前記荷の出庫時刻を含む出庫指示を設定するための出庫指示の設定方法であって、
前記複数の荷は、予め複数のグループに分類されており、
個々の前記荷ごとに、予め定められた基準時刻に対して、予め定められた数値範囲内の荷別加算時間と、前記グループごとに異なる値が定められたずらし時間と、を加算することで、個々の前記荷に対応した初期出庫時刻を導出して、前記出庫指示を設定するための初期値を生成し、
同一の前記グループに分類される前記荷を連続して出庫すると共に、前記複数の荷をグループごとに順次出庫する出庫性能が、予め定めた基準性能以上となるように、最適化アルゴリズムを用いて、前記初期値から前記出庫指示を生成する
出庫指示の設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の出庫指示の設定方法であって、
前記複数のグループは、出庫の順序が予め定められており、
前記ずらし時間は、出庫の順序が後の前記グループほど、長く設定されている
出庫指示の設定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の出庫指示の設定方法であって、
前記初期値において、前記複数のグループのうちの第1グループに属する前記荷のうちで前記初期出庫時刻が最も遅い荷の初期出庫時刻は、前記第1グループの次に出庫されるべき第2グループに属する前記荷のうちで前記初期出庫時刻が最も早い荷の初期出庫時刻よりも早く設定される
出庫指示の設定方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の出庫指示の設定方法であって、
前記最適化アルゴリズムは、遺伝的アルゴリズムであり、
前記荷別加算時間は、各々の前記グループに含まれる前記荷の数に制限される数値範囲でランダムに導出される
出庫指示の設定方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の出庫指示の設定方法であって、
前記基準性能は、前記複数の荷の出庫の順序において、連続して出庫される同一の前記グループに属する荷の中に、異なる前記グループに属する荷が混入することなく、単位時間あたりの出庫数が予め定めた基準出庫数以上になるように設定されている
出庫指示の設定方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の出庫指示の設定方法であって、
前記初期値は、個々の前記荷に対応した前記初期出庫時刻と共に、個々の前記荷の前記仕分け装置内における収納場所を示す情報の初期情報を含み、
前記収納場所を示す情報の初期情報として、前記初期値を生成する際に既に前記仕分け装置内における収納場所が決定されている収納場所決定済み荷については、決定された前記収納場所を示す情報を用い、前記初期値を生成する際に前記仕分け装置内における収納場所が決定されていない収納場所未決定荷については、該収納場所未決定荷の収納に先立って個々の前記収納場所未決定荷に対して仮に設定した情報を用い、
前記最適化アルゴリズムを用いて、前記出庫指示として、個々の前記荷の出庫時刻に加えて、前記収納場所未決定荷の収納場所を示す情報を含む指示を生成する
出庫指示の設定方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の出庫指示の設定方法であって、
前記仕分け装置は、
複数の前記荷を収納可能な複数の保管棚と、
前記複数の保管棚の任意の箇所に収納された前記荷を、該荷に対応して前記出庫指示で規定されている前記出庫時刻に、前記保管棚から取り出す取り出し部と、
前記複数の保管棚から前記取り出し部によって順次取り出される前記荷を、予め定めた排出アルゴリズムに従って前記仕分け装置から順次出庫する出庫部と、
を備え、
前記初期値から前記出庫指示を生成する動作は、前記出庫部が前記排出アルゴリズムに従って前記荷を出庫するときに、前記出庫性能が前記基準性能以上となるように行われる
出庫指示の設定方法。
【請求項8】
入庫された複数の荷の順序を入れ替えることによって仕分けして出庫する仕分け装置において、個々の前記荷の出庫時刻を含む出庫指示を設定する出庫指示システムであって、
前記複数の荷は、予め複数のグループに分類されており、
個々の前記荷ごとに、予め定められた基準時刻に対して、予め定められた数値範囲内の荷別加算時間と、前記グループごとに異なる値が定められたずらし時間と、を加算することで、個々の前記荷に対応した初期出庫時刻を導出して、前記出庫指示を設定するための初期値を生成する初期値生成部と、
同一の前記グループに分類される前記荷を連続して出庫すると共に、前記複数の荷をグループごとに順次出庫する出庫性能が、予め定めた基準性能以上となるように、最適化アルゴリズムを用いて、前記初期値から前記出庫指示を生成する出庫指示生成部と、
前記出庫指示に含まれる前記出庫時刻に、個々の前記荷を出庫する動作を行う取り出し部と、
を備える出庫指示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仕分け装置における出庫指示の設定方法、および、出庫指示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷を入出庫する装置として、種々の構成が知られている。例えば、特許文献1には、複数段の荷棚を備える自動倉庫において、出庫により荷棚に空き空間が生じたときには、空き空間を詰めるように荷を再載置して、保管スペースの利用率を向上させる構成が開示されている。また、特許文献2には、ロータリーラックを備える自動倉庫において、一連の出庫要求に対して、トレー列の回送距離が最短となるように、トレー列の回送方向パターンと荷選定パターンを選択して、出庫効率を高める構成が開示されている。また、特許文献3には、搬送する物品群をグループ別に仕分ける際に、グループに対応する仕分け先が割り当てられたシュートにおいて搬送量の偏りが大きくならないように、仕分け先毎に分けられた物品単位をまとめた切り出し単位を形成し、切り出し単位毎に物品を搬送する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-138955号公報
【特許文献2】特開2014-51391号公報
【特許文献3】特開2008-150191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
入庫された複数の荷をグループごとに仕分けして、仕分けした順で出庫する場合には、仕分け装置において、入庫された荷の順序を、グループ順となるように入れ替えて出庫する必要がある。このような仕分け装置では、入庫された複数の荷の各々に対して、どのような順序やタイミングで出庫指示を出すかによって、グループ順で荷を出庫する際の仕分け効率が変わる。出庫の効率を高めるには、出庫に先立って、出庫効率が高くなるように、出庫時刻を含む出庫指示を予め設定すればよいが、入庫する荷の数が多いほど、出庫効率が高くなる出庫指示を設定するための計算量が膨大となり得る。そのため、出庫性能が高い出庫指示を設定する効率を、高める技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態は、入庫された複数の荷の順序を入れ替えることによって仕分けして出庫する仕分け装置において、個々の前記荷の出庫時刻を含む出庫指示を設定するための出庫指示の設定方法であって、前記複数の荷は、予め複数のグループに分類されており、個々の前記荷ごとに、予め定められた基準時刻に対して、予め定められた数値範囲内の荷別加算時間と、前記グループごとに異なる値が定められたずらし時間と、を加算することで、個々の前記荷に対応した初期出庫時刻を導出して、前記出庫指示を設定するための初期値を生成し、同一の前記グループに分類される前記荷を連続して出庫すると共に、前記複数の荷をグループごとに順次出庫する出庫性能が、予め定めた基準性能以上となるように、最適化アルゴリズムを用いて、前記初期値から前記出庫指示を生成する。
この形態の出庫指示の設定方法によれば、予め定められた基準時刻に対して、予め定められた数値範囲内の荷別加算時間と、グループごとに異なる値が定められたずらし時間と、を加算して初期出庫時刻を導出して初期値を生成し、最適化アルゴリズムを用いて初期値から出庫指示を生成するため、出庫性能が高い出庫指示を設定する効率を、高める効果が得られる。
(2)上記形態の出庫指示の設定方法において、前記複数のグループは、出庫の順序が予め定められており、前記ずらし時間は、出庫の順序が後の前記グループほど、長く設定されていることとしてもよい。この形態の出庫指示の設定方法によれば、出庫性能が高い出庫指示を設定する効率を、さらに高めることができる。
(3)上記形態の出庫指示の設定方法は、前記初期値において、前記複数のグループのうちの第1グループに属する前記荷のうちで前記初期出庫時刻が最も遅い荷の初期出庫時刻は、前記第1グループの次に出庫されるべき第2グループに属する前記荷のうちで前記初期出庫時刻が最も早い荷の初期出庫時刻よりも早く設定されることとしてもよい。この形態の出庫指示の設定方法によれば、出庫性能が高い出庫指示を設定する効率を、さらに高めることができる。
(4)上記形態の出庫指示の設定方法において、前記最適化アルゴリズムは、遺伝的アルゴリズムであり、前記荷別加算時間は、各々の前記グループに含まれる前記荷の数に制限される数値範囲でランダムに導出されることとしてもよい。この形態の出庫指示の設定方法によれば、初期収束等の不都合を抑え、出庫指示の最適化が容易になる。
(5)上記形態の出庫指示の設定方法において、前記基準性能は、前記複数の荷の出庫の順序において、連続して出庫される同一の前記グループに属する荷の中に、異なる前記グループに属する荷が混入することなく、単位時間あたりの出庫数が予め定めた基準出庫数以上になるように設定されていることとしてもよい。この形態の出庫指示の設定方法によれば、グループ順が一致しない出庫を抑えつつ、出庫効率を高めることができる。
(6)上記形態の出庫指示の設定方法において、前記初期値は、個々の前記荷に対応した前記初期出庫時刻と共に、個々の前記荷の前記仕分け装置内における収納場所を示す情報の初期情報を含み、前記収納場所を示す情報の初期情報として、前記初期値を生成する際に既に前記仕分け装置内における収納場所が決定されている収納場所決定済み荷については、決定された前記収納場所を示す情報を用い、前記初期値を生成する際に前記仕分け装置内における収納場所が決定されていない収納場所未決定荷については、該収納場所未決定荷の収納に先立って個々の前記収納場所未決定荷に対して仮に設定した情報を用い、前記最適化アルゴリズムを用いて、前記出庫指示として、個々の前記荷の出庫時刻に加えて、前記収納場所未決定荷の収納場所を示す情報を含む指示を生成することとしてもよい。この形態の出庫指示の設定方法によれば、出庫指示を設定する動作を開始するときに、収納場所決定済み荷と収納場所未決定荷とが存在する場合であっても、高い効率で、適切な出庫指示を設定することができる。
(7)上記形態の出庫指示の設定方法において、前記仕分け装置は、複数の前記荷を収納可能な複数の保管棚と、前記複数の保管棚の任意の箇所に収納された前記荷を、該荷に対応して前記出庫指示で規定されている前記出庫時刻に、前記保管棚から取り出す取り出し部と、前記複数の保管棚から前記取り出し部によって順次取り出される前記荷を、予め定めた排出アルゴリズムに従って前記仕分け装置から順次出庫する出庫部と、を備え、前記初期値から前記出庫指示を生成する動作は、前記出庫部が前記排出アルゴリズムに従って前記荷を出庫するときに、前記出庫性能が前記基準性能以上となるように行われることとしてもよい。この形態の出庫指示の設定方法によれば、出庫部の排出アルゴリズムに応じて出庫指示を設定して、出庫性能を高めることができる。
本開示は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、出庫指示を設定するための出庫指示システムや、仕分け装置で用いる出庫指示の設定アルゴリズム、出庫指示の設定アルゴリズムを用いて出庫指示を設定する処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】出庫指示システムの概略構成を表す説明図。
図2】出庫側昇降機の内部構成の概略を模式的に表す説明図。
図3】制御部を機能ブロックによって示した説明図。
図4】出庫指示設定処理ルーチンを表すフローチャート。
図5】個々のコンテナについて生成される初期出庫時刻の範囲を示す説明図。
図6】出庫時刻の初期値の一例を示す説明図。
図7】最適化の世代数と、目的関数との関係を示す説明図。
図8】比較例の個々のコンテナについて生成される初期出庫時刻範囲を示す説明図。
図9】比較例の出庫時刻の初期値の一例を示す説明図。
図10】ずらし時間とコンテナ仕分け量との関係を示す説明図。
図11】第2実施形態の制御部を、機能ブロックによって示した説明図。
図12】出庫指示設定処理ルーチンを表すフローチャート。
図13】第3実施形態の制御部を、機能ブロックによって示した説明図。
図14】出庫指示設定処理ルーチンを表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
(A-1)仕分け装置の構成:
図1は、第1実施形態の出庫指示システム10の概略構成を表す説明図である。出庫指示システム10は、仕分け装置20と、仕分け装置20における仕分けの動作を制御する制御部60と、を備える。なお、図1、および後述する図2には、仕分け装置20における搬送方向を特定するために、互いに直交するXYZ軸を示している。各図に示されるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ同じ向きを表す。本願明細書においては、Z軸は鉛直方向を示し、X軸およびY軸は水平方向を示している。
【0008】
仕分け装置20は、予め複数のグループに分類された複数のコンテナ22が入庫されて、入庫された複数のコンテナ22をグループ別に仕分けして、グループごとに順次出庫する装置である。具体的には、属するグループが異なるコンテナ22が混在する状態で入庫されたコンテナ22の順序を入れ替えて、同一のグループに属するコンテナ22を連続して出庫すると共に、予め定めたグループの順序でコンテナ22を出庫する装置である。仕分け装置20は、例えば、物流の拠点としての配送センターに設置して、届け先が種々異なっている複数のコンテナ22を、配送センターが受け入れた順で入庫し、届け先別に仕分けして、同じ届け先のコンテナ22をまとめて出庫するために用いることができる。このとき、届け先の別が、上記したグループに該当する。なお、コンテナ22は、「荷」とも呼ぶ。
【0009】
仕分け装置20は、入庫コンベア32と、入庫側昇降機34と、保管棚40a~40dと、出庫側昇降機50と、出庫コンベア51と、を備える。入庫コンベア32は、前工程から送られたコンテナ22、例えば、仕分け装置20が設置された配送センターに搬入されたコンテナ22を、仕分け装置20の内部に向けて順次搬送する装置である。
【0010】
本実施形態では、入庫コンベア32において、グループ識別部30が設けられている。グループ識別部30は、入庫コンベア32によって搬送される個々のコンテナ22の属するグループの別を、グループ識別部30を通過する順に識別する。グループ識別部30は、例えば、各コンテナ22の届け先を示すために各コンテナ22に貼付されたラベルを読み取って、各コンテナ22の属するグループを識別する装置とすることができる。グループ識別部30は、各コンテナ22のグループを識別可能であれば異なる構成としてもよく、例えば、作業員が各コンテナ22の届け先を読み取って、読み取った情報を作業員が入力装置から入力する構成としてもよい。グループ識別部30において識別された情報は、制御部60に送信される。
【0011】
入庫側昇降機34は、昇降機構を備え、入庫コンベア32によって搬送されたコンテナ22を、鉛直方向(Z軸方向)に搬送して、保管棚40a~40dのいずれかに分配する。本実施形態では、入庫側昇降機34は、制御部60から送信された入庫指示に基づいて、コンテナ22の分配を行う。制御部60から送信される「入庫指示」は、個々のコンテナ22の仕分け装置20内における収納場所を示す情報であって、各コンテナ22について、保管棚40a~40dのうちのいずれの保管棚に分配すべきかを指示する情報を含む。
【0012】
保管棚40a~40dは、仕分け装置20に入庫されたコンテナ22を、一旦収納するための構造である。保管棚40a~40dは、この順で鉛直上方に向かって(+Z方向に)積み上げられた4階建て構造となっている。保管棚の階層の数は、仕分け対象として取り扱うコンテナ22の数に応じて、適宜設定すればよい。以下では、図1に基づいて、4階の保管棚40dの構造を説明するが、各保管棚40a~40dは、いずれも同じ構造を有している。
【0013】
保管棚40dは、-Y方向側に設けられた左棚42と、+Y方向側に設けられた右棚44と、左棚42と右棚44との間に設けられた排出コンベア46と、を備える。左棚42と右棚44と排出コンベア46とは、いずれも、X軸方向に延びるように設けられており、-X方向にコンテナ22を搬送可能となっている。
【0014】
保管棚40dには、さらに、入庫側昇降機34との接続部である+X方向の端部に、分岐装置36が設けられている。入庫側昇降機34によって4階まで搬送されたコンテナ22は、分岐装置36によって、左棚42と右棚44とのうちの一方に分配される。制御部60から送信される既述した入庫指示は、各コンテナ22について、左棚42と右棚44とのうちのいずれの保管棚に分配すべきかを指示する情報をさらに含む。分岐装置36は、入庫指示に従って左棚42と右棚44のいずれかに、コンテナ22を分配する。
【0015】
左棚42は、X軸方向に連続して配置された複数の分割棚43に分割されている。個々の分割棚43は、コンテナ22を一つずつ載置可能な大きさに形成されている。また、個々の分割棚43は、独立したコンベアとして形成されており、下流側(-X方向)に隣接する分割棚43へとコンテナ22を搬送可能となっている。左棚42に分配されたコンテナ22は、上流側(+X方向)から下流側(-X方向)へと、個々の分割棚43によって搬送されて、例えば、下流側(-X方向)の端部から順に詰めた状態で収納される。右棚44も同様に、X軸方向に連続して配置された複数の分割棚45に分割されており、右棚44に分配されたコンテナ22は、個々の分割棚45によって搬送されて、例えば、下流側(-X方向)の端部から順に詰めた状態で収納される。
【0016】
保管棚40dは、さらに、切り出し装置48を備える。図1では、右棚44に沿って切り出し装置48が設けられる様子が示されているが、左棚42の-Y方向側にも、同様の切り出し装置48が右棚44側と対称に設けられている。切り出し装置48は、X軸方向に延びるシャフト48aと、シャフト48aに沿ってX軸方向に移動すると共にY軸方向に伸縮するアーム48bと、を備える。切り出し装置48は、制御部60から送信される出庫指示に従い、左棚42あるいは右棚44の特定の位置に収納されているコンテナ22を、排出コンベア46へと移動させる。上記出庫指示は、個々のコンテナ22についての出庫時刻を含む。切り出し装置48は、出庫指示に従い、出庫指示が指定するコンテナ22に対応する位置へといずれかの切り出し装置48のアーム48bを移動させて、アーム48bを伸張させることによって、指定されたコンテナ22を、出庫指示が指定する出庫時刻に排出コンベア46に向かって押し出す。切り出し装置48は、「取り出し部」とも呼ぶ。
【0017】
なお、切り出し装置48によって特定のコンテナ22を排出コンベア46に移動させた後には、移動されたコンテナ22よりも上流側(+X方向側)に配置されているコンテナ22は、-X方向側に移動させて下流側に詰めることとしてもよいし、移動されたコンテナ22が配置されていた分割棚43,45は、空けておくこととしてもよい。切り出し装置48によって排出コンベア46に押し出されたコンテナ22は、排出コンベア46によって、出庫側昇降機50に向かって-X方向に搬送される。
【0018】
保管棚40a~40dのいずれかに一旦収納された後に、保管棚40a~40dの排出コンベア46から排出されたコンテナ22は、昇降機構を備える出庫側昇降機50によって鉛直方向(Z軸方向)に搬送されて、出庫コンベア51に排出される。本実施形態では、出庫側昇降機50は、制御部60によって駆動制御され、出庫側昇降機50に搬入されたコンテナ22を、より早く排出するために予め設定された排出アルゴリズムに従って動作する。一例として、本実施形態の排出アルゴリズムでは、各々のコンテナ22が属するグループの別を考慮することなく、出庫側昇降機50に搬入された各々のコンテナ22が出庫側昇降機50から排出されるまでの時間が、予め定めた上限時間を超えない範囲で、出庫側昇降機50における単位時間あたりのコンテナ22の排出量ができるだけ多くなるように、出庫側昇降機50内における動作パターンが定められている。出庫側昇降機50は、「出庫部」とも呼ぶ。
【0019】
図2は、出庫側昇降機50の内部構成の概略を、模式的に表す説明図である。出庫側昇降機50は、個別にZ軸方向に昇降動作を行う上流側昇降ボックス52および下流側昇降ボックス54を備える。上流側昇降ボックス52は、Z軸方向に並んで形成されて、コンテナ22を一つずつ収納可能な4つの授受室53a~53dを備える。上流側昇降ボックス52の昇降動作に伴い、授受室53aは、保管棚40aの排出コンベア46に搬送されたコンテナ22を受け入れ可能となり、授受室53bは、保管棚40aまたは40bの排出コンベア46に搬送されたコンテナ22を受け入れ可能となり、授受室53cは、保管棚40bまたは40cの排出コンベア46に搬送されたコンテナ22を受け入れ可能となり、授受室53dは、保管棚40cまたは40dの排出コンベア46に搬送されたコンテナ22を受け入れ可能となる。
【0020】
下流側昇降ボックス54は、Z軸方向に並んで形成されて、コンテナ22を一つずつ収納可能な4つの授受室55a~55dを備える。下流側昇降ボックス54は、上流側昇降ボックス52との間でコンテナ22の授受を行う。具体的には、下流側昇降ボックス54および上流側昇降ボックス52の昇降動作に伴い、授受室55aは授受室53aまたは53bとの間でコンテナ22をやり取り可能となり、授受室55bは、授受室53a、53b、または53cとの間でコンテナ22をやり取り可能となり、授受室55cは、授受室53b、53c、または53dとの間でコンテナ22をやり取り可能となり、授受室55dは、授受室53cまたは53dとの間でコンテナ22をやり取り可能となる。
【0021】
出庫側昇降機50において、下流側昇降ボックス54の授受室55aまたは55bに移動したコンテナ22は、出庫側昇降機50に設けられた出口部56から、出庫コンベア51へと排出される。例えば、保管棚40dから上流側昇降ボックス52の授受室53dに搬入されたコンテナ22は、最短の経路で移動する場合には、まず、下流側昇降ボックス54の授受室55dまたは55cに移動し、さらに上流側昇降ボックス52の授受室53bまたは53cに移動し、その後、下流側昇降ボックス54の授受室55aまたは55bに到達して、出庫コンベア51に排出される。ただし、例えば、移動先となる授受室に既に他のコンテナ22が存在する場合には、上流側昇降ボックス52や下流側昇降ボックス54が昇降しても、次の授受室に移動できず、次の授受室が空くまで待機する待ち時間が生じる可能性がある。既述した排出アルゴリズムでは、このような待ち時間ができるだけ短くなり、出庫側昇降機50における出庫効率ができるだけ高くなるように、上流側昇降ボックス52と下流側昇降ボックス54との間の授受の動作のルールが、予め定められている。なお、出庫側昇降機50の動作を制御する際に、いずれの保管棚から出庫側昇降機50にコンテナ22が搬入されたのかを示す情報は、各コンテナ22に対する出庫指示が示すコンテナの収納場所および出庫時刻から求めてもよく、出庫側昇降機50における各保管棚との接続部にセンサを設けて、いずれの保管棚からコンテナ22が搬入されたのかを検知することとしてもよい。
【0022】
出庫コンベア51に排出されたコンテナ22は、出庫コンベア51に搬送されて、次工程に供される。図1では、A、B、C、Dの4種のグループのいずれかに属する複数のコンテナ22が、バラバラな順序で仕分け装置20に入庫され、グループ別に仕分けされた後に、予め定めたグループの順序である、グループA、B、C、Dの順で出庫される様子を示している。次工程では、例えば、届け先が異なるグループごとに用意されて、上記予め定めたグループの順序で待機するトラックに、各コンテナ22を順次積載することとすればよい。
【0023】
制御部60は、論理演算を実行するCPUやROM、RAM等を備えたいわゆるマイクロコンピュータで構成され、仕分け装置20全体を駆動制御する。制御部60は、グループ識別部30等、仕分け装置20の各部に設けたセンサからの検出信号や、仕分け装置20に設けた入力装置からの入力信号を取得して、必要な演算を行う。また、入庫コンベア32、入庫側昇降機34、保管棚40a~40d、出庫側昇降機50、および出庫コンベア51の各部に駆動信号を出力し、各部の動作を制御する。
【0024】
図3は、制御部60を、制御部60が実行する機能の一部を表す機能ブロックによって示した説明図である。制御部60は、機能ブロックとして、入庫順情報取得部62、初期値生成部64、出庫指示生成部66、排出アルゴリズム記憶部68、および出庫側昇降機駆動部69を備える。これらの機能ブロックの動作は、後に詳しく説明する。
【0025】
(A-2)出庫指示の最適化方法:
本実施形態では、バラバラに入庫されたコンテナ22について、最適化アルゴリズムを用いて出庫指示を最適化して設定している。以下では、このような出庫指示の設定の動作について説明する。なお、既述した説明では、個々のコンテナ22についての出庫時刻を含む出庫指示と、個々のコンテナ22の仕分け装置20内における収納場所を示す情報である入庫指示とを区別していた。しかしながら、個々のコンテナ22の収納場所によって出庫時刻の最適化の結果が影響を受けるため、以下の説明では、「出庫指示」は、個々のコンテナ22の出庫時刻に加えて、個々のコンテナ22の仕分け装置20内における収納場所を示す情報を含むこととする。
【0026】
図4は、制御部60で実行される出庫指示設定処理ルーチンを表すフローチャートである。本ルーチンは、制御部60による出庫指示の設定の動作を開始可能となったときに起動される。具体的には、例えば、前工程から入庫コンベア32へと複数のコンテナ22の搬送が開始されて、仕分け対象コンテナのうちの最後のコンテナ22が、グループ識別部30が設置された箇所を通過してグループ別が識別されたときに、起動される。本実施形態では、最後のコンテナ22がグループ識別部30を通過して、出庫指示設定処理ルーチンが起動された時点では、先頭のコンテナ22を含むすべてのコンテナ22は、入庫側昇降機34に搬入されていない。
【0027】
本ルーチンが起動されると、制御部60の入庫順情報取得部62は、個々のコンテナ22の属するグループの別を入庫順に示す情報(以下、「入庫順情報」とも呼ぶ)を取得する(ステップS100)。例えば、グループ識別部30が識別して取得した入庫順情報を、制御部60内の記憶装置に記憶しておき、ステップS100では、入庫順情報取得部62は、上記記憶装置から、すべての仕分け対象コンテナに関する入庫順情報を取得することとすればよい。入庫順情報取得部62が取得した入庫順情報は、初期値生成部64に送られる。
【0028】
次に、制御部60の初期値生成部64は、入庫順情報を取得した上記コンテナ群について、複数組の出庫時刻の初期値を作成する(ステップS110)。ステップS110において個々のコンテナ22について生成される出庫時刻を「初期出庫時刻」と呼び、すべてのコンテナ22について生成された初期出庫時刻の集合を、「出庫時刻の初期値」と呼ぶ。ステップS110で作成する出庫時刻の初期値は、最適化アルゴリズムを用いて出庫指示を最適化して設定するために用いる初期値である。
【0029】
図5は、個々のコンテナ22について生成される初期出庫時刻のとり得る範囲を示す説明図である。本実施形態では、個々のコンテナ22が属するグループごとに、限られた範囲内の時刻において、初期出庫時刻が生成される。具体的には、本実施形態では、以下の(1)式により、個々のコンテナ22の初期出庫時刻tiniが設定される。
【0030】
初期出庫時刻tini=基準時刻tstn+荷別加算時間tadd+ずらし時間ts …(1)
【0031】
ここで、基準時刻tstnとは、出庫時刻を定めるための基準として予め定められた時刻である。本実施形態では、例えば、最後のコンテナ22がグループ識別部30を通過した時刻としている。荷別加算時間taddとは、コンテナ22ごとに、予め定められた数値範囲内で導出される値である。本実施形態では、荷別加算時間taddは、個々のコンテナ22が属するグループに含まれるコンテナ22の数に制限される数値範囲内の値としている。具体的には、荷別加算時間taddは、0から、コンテナ22が属するグループに含まれるコンテナ22の数までの数値範囲からランダムに選択される数としている。ずらし時間tsは、グループごとに異なる値が定められている。本実施形態では、既述したように、グループA、B、C、Dの順で仕分け装置20から出庫されるが、ずらし時間tsは、グループA、B、C、Dの順で長くなるように定められている。グループA~Dの各々に属するコンテナ22の初期出庫時刻tiniを生成するために用いるずらし時間tsを、それぞれ、ずらし時間tsA、ずらし時間tsB、ずらし時間tsC、ずらし時間tsDとすると、例えば、ずらし時間tsBは、ずらし時間tsAの2倍、ずらし時間tsCは、ずらし時間tsAの3倍、ずらし時間tsDは、ずらし時間tsAの4倍、のように設定することができる。ただし、グループごとに設定するずらし時間tsの設定方法は、上記とは異なる方法であってもよい。
【0032】
上記のようにして初期出庫時刻tiniを生成することにより、初期出庫時刻tiniがとり得る範囲は、図5に示すように、グループ内のコンテナ数に制限される範囲内であって、これらの範囲がグループA、B、C、Dの順で時刻が遅くなるようにシフトしたパターンとなる。図5では、さらに、続けて出庫されるグループ間において、ギャップ時間が設けられる様子を示している。グループA内のコンテナ22の初期出庫時刻tiniとしてとり得る最も遅い時刻と、グループB内のコンテナ22の初期出庫時刻tiniとしてとり得る最も早い時刻との間には、ギャップ時間G1が設けられている。同様に、グループBとグループCとの間にはギャップ時間G2が設けられており、グループCとグループDとの間にはギャップ時間G3が設けられている。なお、図5の例では、基準時刻tstnと、グループA内のコンテナ22の初期出庫時刻tiniとしてとり得る最も早い時刻との間には、ギャップ時間G0が設けられている。
【0033】
図6は、個々のコンテナ22について生成された初期出庫時刻tiniの集合である出庫時刻の初期値の一例を示す説明図である。図6では、コンテナ全体における入庫順にかかわらず、グループごとに、生成された各々の初期出庫時刻tiniを示している。図6に示す「コンテナNo.」は、グループ内での入庫順を示す。既述したように、(1)式の荷別加算時間taddは、0からグループ内コンテナの数までの数値範囲からランダムに選択される数であるため、初期出庫時刻tiniは、図5に示すグループごとの初期出庫時刻のとり得る範囲内で、ランダムに生成される。
【0034】
図4に戻り、ステップS110において、図6に示すような初期出庫時刻tiniの集合である「出庫時刻の初期値」を複数作成すると、制御部60の初期値生成部64は、出庫時刻の初期値ごとに「入庫指示の初期値」を与えて、出庫時刻の初期値と入庫指示の初期値とを合わせた「出庫指示の初期値」を作成する(ステップS120)。入庫指示、すなわち、保管棚40a~40dのうちのいずれの保管棚に分配するか、および、分配先の保管棚において、左棚42と右棚44とのいずれの保管棚に分配すべきか、に関する指示の初期値は、本実施形態では、乱数を用いてランダムに与えている。
【0035】
ステップS120で作成する出庫指示の初期値は、最適化アルゴリズムを用いた最適化のための解候補の初期値であり、「第1世代の解候補」とも呼ぶ。第1世代の解候補を含めて、最適化アルゴリズムを用いた最適化の過程で生成される各世代の解候補の数(個体数)は、例えば、数十~数百とすることができる。各世代の解候補の数は、十分な最適化を行う観点から、20以上とすることが好ましく、30以上とすることがより好ましい。また、各世代の解候補の数は、最適化の処理を軽減する観点から、300以下とすることが好ましく、100以下とすることがより好ましい。また、解候補の数は、全世代で同じであってもよく、世代によって異なる数としてもよい。
【0036】
ステップS120において、解候補の初期値を複数作成すると、制御部60の出庫指示生成部66は、作成された各々の解候補の初期値に従ってコンテナの入庫および出庫の動作を制御した場合に、結果として生じるコンテナ順の不一致数および出庫時間(以後、これらを「コンテナの出庫状態」とも呼ぶ)を計算する(ステップS130)。すなわち、各々の解候補の初期値に含まれる入庫指示の初期値に基づいて、すべてのコンテナ22を仕分け装置20内のいずれかの保管棚40a~40dのいずれかの分割棚43,45に収納し、その後、上記解候補の初期値に含まれる出庫時刻において、切り出し装置48を用いて出庫時刻に対応するコンテナ22を排出コンベア46へと移動させ、既述した排出アルゴリズムに従って動作する出庫側昇降機50からコンテナ22を順次搬出させたときに、出庫側昇降機50から排出されるコンテナ22の順序およびコンテナ22が出庫されるまでに要する時間を算出する。出庫側昇降機50が動作時に従う排出アルゴリズムを示す情報は、制御部60の排出アルゴリズム記憶部68に記憶されており(図3参照)、出庫指示生成部66は、排出アルゴリズム記憶部68に記憶される上記情報を参照して、コンテナの出庫状態を算出する。なお、仕分け装置20がコンテナ22を仕分けする動作を実際に行う際には、制御部60の出庫側昇降機駆動部69が、排出アルゴリズム記憶部68に記憶される上記情報を参照して、排出アルゴリズムに従って出庫側昇降機50を駆動制御する。
【0037】
コンテナの出庫状態のうち「コンテナ順の不一致数」とは、予め定められたグループ順でコンテナ22を出庫する際に、連続して出庫される同一のグループに属するコンテナ22の中に、異なるグループに属するコンテナ22が混入している数を指す。すなわち、グループA、B、C、Dの順のように、予め定められたグループの出庫順から外れて、異なるグループに混じって出庫されたコンテナ22の数を指す。コンテナの出庫状態のうち「出庫時間」とは、すべてのコンテナ22を出庫するまでに要する時間であり、本実施形態では、最後のコンテナ22がグループ識別部30を通過してから、最後のコンテナ22が出庫側昇降機50から排出されるまでの時間としている。なお、出庫時間の起点を、最後のコンテナ22がグループ識別部30を通過したときのように、最後のコンテナ22の入庫時を用いているのは、最初のコンテナ22が入庫されてから最後のコンテナ22が入庫されるまでの間に、コンテナ22の搬入のための待ち時間が存在することにより、出庫性能の評価結果が変動する場合を考慮したものである。そのため、すべてのコンテナ22が一定の時間間隔で連続して入庫される場合等には、出庫時間の起点として、例えば、最初のコンテナ22の入庫時を用いてもよい。
【0038】
ステップS120で各々の解候補の初期値についてコンテナの出庫状態を計算すると、制御部60の出庫指示生成部66は、計算したコンテナの出庫状態を目的関数に代入し、目的関数の値と、予め定めた基準値とを比較する(ステップS140)。目的関数は、以下の(2)式で表すことができる。
【0039】
目的関数=出庫時間+コンテナ順の不一致数×200 …(2)
【0040】
上記(2)式において、コンテナ順の不一致数に乗算する値200は、コンテナ順に不一致が生じる解を高い精度で除外できるように設定された値であり、異なる値を設定してもよい。また、ステップS140で用いる基準値は、出庫対象となるコンテナ数や、グループごとのコンテナ数に応じて、コンテナ順の不一致が生じておらず、出庫効率が十分に高い解候補を選択可能となるように、適宜設定すればよい。ステップS140では、目的関数の値が基準値以下となることで、仕分け装置20がコンテナをグループごとに順次出庫する出庫性能が、予め定めた基準性能以上となったことを判定している。すなわち、上記基準性能とは、コンテナ順の不一致が生じることなく、出庫時間が上記基準値以下となり、単位時間あたりの出庫数が予め定めた基準出庫数以上になることをいう。上記基準出庫数とは、仕分け装置20による仕分けに供したコンテナ22の総数を、上記基準値で除した値である。
【0041】
ステップS140において、目的関数の値が基準値以下であると判断すると、出庫指示生成部66は、目的関数が基準値以下を満たす解候補を、出庫指示として設定し(ステップS150)、本ルーチンを終了する。目的関数の値を計算した複数の解候補の中で、目的関数の値が基準値以下となる解候補が複数存在する場合には、ステップS150では、例えば最良の解候補、すなわち、目的関数の値が最も小さくなる解候補を、出庫指示として設定すればよい。
【0042】
ステップS140において、目的関数の値が基準値を超えると判断すると、制御部60の出庫指示生成部66は、ステップS120で作成した複数の解候補の初期値の中から、目的関数の値が小さいものから順に4つの解候補を選択する(ステップS160)。このステップS160では、後述する遺伝的アルゴリズムを用いた最適化のための次世代の解候補を作成するために用いる解候補を選択している。ステップS160で選択する解候補の数は、4以外であってもよく、次世代の解候補の数よりも小さい任意の自然数とすることができる。ステップS160で選択する解候補の数は、次世代の解候補の数が30~300程度の場合には、最適化の効率を高める観点から、2以上とすることが望ましく、3以上とすることがより望ましい。また、ステップS160で選択する解候補の数は、次世代の解候補の数が30~300程度の場合には、最適化の処理を軽減する観点から、10以下とすることが望ましく、5以下とすることがより望ましい。
【0043】
なお、ステップS160で解候補を選択する方法は、上記のように、目的関数の値が小さい上位の解候補を、予め定めた数だけ選択する方法の他、他の方法を採用してもよい。例えば、解候補の評価値に比例して次世代に残る確率が決まるルーレット選択(具体的には、目的関数の値が小さいほど次世代に残る確率を高めて選択する方法)により、解候補を選択してもよい。
【0044】
その後、制御部60の出庫指示生成部66は、ステップS160で選択した解候補を元にして、最適化アルゴリズムである遺伝的アルゴリズムを用いて、次世代の解候補として、予め設定した数の解候補を作成する(ステップS170)。次世代の解候補の一部は、例えば、ステップS160で選択した解候補をそのまま残すエリート保存により作成すればよい。また、次世代の解候補の他の一部は、ステップS160で選択した解候補を用いて、交差、あるいは突然変異により作成すればよい。
【0045】
ステップS170において、次世代の解候補として、予め設定した数の解候補を作成すると、制御部60の出庫指示生成部66は、ステップS130に戻り、ステップS130以降の処理を繰り返す。すなわち、作成した次世代の解候補の各々について、コンテナ順の不一致数および出庫時間を計算して(ステップS130)、目的関数の値を求めて、目的関数の値と基準値とを比較する(ステップS140)。そして、ステップS150において目的関数の値が基準値を下回る解候補が得られるまで、遺伝的アルゴリズムを用いて次世代の解候補を作成し(ステップS160,S170)、目的関数の値と基準値とを比較する動作を繰り返す。
【0046】
ステップS150において出庫指示が設定されると、制御部60は、出庫指示に含まれる仕分け装置20内における収納場所を示す情報に従い、入庫側昇降機34および分岐装置36を含む各部に駆動信号を送信して、個々のコンテナ22を、仕分け装置20内に収納する。そして、制御部60は、出庫指示に含まれる出庫時刻を示す情報に従って、切り出し装置48を用いて出庫時刻に対応するコンテナ22を排出コンベア46へと移動させ、既述した排出アルゴリズムに従って動作する出庫側昇降機50に搬入する。
【0047】
以上のように構成された本実施形態の出庫指示システム10および出庫指示の設定方法によれば、仕分け装置20において個々のコンテナ22の出庫時刻を含む出庫指示を設定する際に、個々のコンテナ22ごとに、予め定められた基準時刻tstnに対して、予め定められた数値範囲内の荷別加算時間taddと、グループごとに異なる値が定められたずらし時間tsと、を加算することで、個々のコンテナ22に対応した初期出庫時刻tiniを導出して、出庫指示を設定するための初期値を生成する。そして、複数のコンテナ22をグループごとに順次出庫する出庫性能が、予め定めた基準性能以上となるように、最適化アルゴリズムである遺伝的アルゴリズムを用いて、上記初期値から出庫指示を生成する。そのため、入庫された複数のコンテナ22をグループごとに仕分けして順次出庫するための、出庫性能が高い出庫指示を設定する効率を、高めることができる。すなわち、出庫指示を設定するための初期値を生成する際に、グループ内の出庫時刻の初期値は限られた範囲内で設定すると共に、このようなグループごとの出庫時刻の初期値の範囲を、グループの出庫順になるようにずらしているため、初期値からの出庫指示の最適化が容易になる。
【0048】
また、本実施形態では、初期出庫時刻tiniにおいて、続けて出庫されるグループ間において、ギャップ時間が設けられている(図5参照)。そのため、遺伝的アルゴリズムを用いた最適化において、より短い世代数で、コンテナ順の不一致が無く、出庫性能が高い解を得ることが可能になる。なお、例えば(1)式のずらし時間tsによっては、続けて出庫されるグループ間のうち、少なくともいずれかのグループ間において、初期出庫時刻tiniとしてとり得る範囲が重なり、ギャップ時間が設けられない場合があってもよい。ただし、先に出庫されるグループと後に出庫されるグループとの間で、初期出庫時刻tiniの範囲の重なりが小さい方が、所望の解が得られるまでに要する世代数を削減することが容易になり、望ましい。以下では、本実施形態の効果を、具体例を挙げて説明する。
【0049】
図7は、遺伝的アルゴリズムを用いた最適化の世代数と、目的関数(出庫時間+コンテナ順の不一致数×200)との関係を示す説明図である。図7において、グラフ(α)は、仕分け対象となるコンテナ総数が50個であって、(1)式に対応する既述したずらし時間tsAが10秒の場合を示し、グラフ(β)は、コンテナ総数が150個であって、ずらし時間tsAが15秒の場合を示す。また、グラフ(γ)は、比較例を示し、コンテナ総数が50個であって、図4のステップS110において、実施形態の出庫時刻の初期値に代えて、ランダムな出庫時刻の初期値を生成した場合を表す。図7は、仕分け装置の制御部に対して、図4のステップS100に対応する処理として予め定めた入庫順情報を与えて、出庫指示の最適化の処理を実行させたシミュレーション結果を表す。以下では、さらに、グラフ(γ)の比較例について説明する。比較例では、実施形態と類似する動作により出庫指示を設定しており、ステップS110の動作のみが異なっている。
【0050】
図8は、比較例において、個々のコンテナ22について生成される初期出庫時刻のとり得る範囲を、図5と同様にして示す説明図である。比較例では、個々のコンテナ22の初期出庫時刻tiniは、コンテナ22が属するグループに関わらず、一定の数値範囲内でランダムに設定される。比較例における個々のコンテナ22の初期出庫時刻tiniは、以下の(3)式により設定される。
【0051】
初期出庫時刻tini=基準時刻tstn+荷別加算時間tadd …(3)
【0052】
比較例では、荷別加算時間taddは、0からコンテナ総数までの数値範囲から、ランダムに選択される数としている。また、比較例では、実施形態の(1)式とは異なり、ずらし時間tsが加算されない。よって、図8に示すように、いずれのグループに属するコンテナ22も、同様の広い数値範囲内で、ランダムに初期出庫時刻tiniが設定される。
【0053】
図9は、比較例の個々のコンテナ22について生成された初期出庫時刻tiniの集合である出庫時刻の初期値の一例を、図6と同様にして示す説明図である。図9では、全体の入庫順にかかわらず、グループごとに、グループ内での入庫順に従って、生成された各々の初期出庫時刻tiniを示している。既述したように、(2)式の荷別加算時間taddは、0からコンテナ総数までの数値範囲からランダムに選択される数であるため、初期出庫時刻tiniは、図8に示すグループ間で共通する初期出庫時刻のとり得る範囲内で、ランダムに生成される。
【0054】
図7では、縦軸の左側には、「目的関数(出庫時間+コンテナ順の不一致数×200)」の値を示している。また、縦軸の右側には、「コンテナ順の不一致数」を示している。また、図7の各グラフは、最適化の過程の各世代において、目的関数の値が最も小さくなる解候補についての結果を示している。グラフ(α)およびグラフ(β)は、世代数と「目的関数(出庫時間+コンテナ順の不一致数×200)」の値との関係を示し、グラフ(γ)は、世代数と「コンテナ順の不一致数」との関係を示す。
【0055】
図7に示すように、コンテナ総数が50個でずらし時間tsAが10秒であるグラフ(α)では、3世代の計算で、コンテナ順の不一致を解消して、基準性能以上の出庫性能が得られた。また、コンテナ総数が150個でずらし時間tsAが15秒であるグラフ(β)では、5世代の計算で、コンテナ順の不一致を解消して、基準性能以上の出庫性能が得られた。これに対して、比較例のグラフ(γ)では、50世代まで計算しても、コンテナ順の不一致を解消することができなかった。
【0056】
図10は、ずらし時間tsAとコンテナ仕分け量との関係を示す説明図である。コンテナ仕分け量とは、仕分け装置20による仕分けに供したコンテナ22の総数を、出庫時間で除した値である。図10では、横軸にずらし時間tsAを示し、縦軸にコンテナ仕分け量を示している。図10では、コンテナ総数が100個であり、各世代の解候補の数を100個とした場合の算出結果を示す。
【0057】
図10では、最適化アルゴリズムを用いた最適化のための出庫指示の初期値である第1世代の解候補に係る結果を、グラフ(a)で示し、第10世代の解候補に係る結果を、グラフ(b)で示す。各グラフは、各々の世代に属する解候補のうち、コンテナ仕分け量が最も多くなる解候補(以下、最良解候補とも呼ぶ)の結果を示している。図10では、第1世代と第10世代の2つの世代の結果のみを示すが、第1世代と第10世代の間の世代の結果は、(a)(b)2つのグラフに挟まれた領域に存在し、世代数が進むほど、グラフ(a)からグラフ(b)に近づく形状のグラフとなる(データ示さず)。図10では、これらの間の世代も含めて、コンテナ順の不一致が解消された解候補が一つも得られない領域を、「コンテナ順不一致領域」として示している。
【0058】
図10に示す例において、第1世代では、ずらし時間tsAを14秒以上とすることで、コンテナ順の不一致を解消した個体(解候補)が得られた。また、第1世代において、ずらし時間tsAが15から18秒の範囲では、コンテナ仕分け量として特に大きな値が得られた。第10世代では、ずらし時間tsAを10秒以上とすることで、コンテナ順の不一致を解消した個体(解候補)が得られた。そして、第10世代では、ずらし時間tsAが10秒以上であれば、計算したずらし時間tsA25秒までの範囲全体で、第1世代に比べてコンテナ仕分け量が多くなった。第10世代では、第1世代とは異なり、コンテナ仕分け量は、ずらし時間tsAを長くしても低下することがなく、安定して高い水準を示した。さらに、第1世代と第10世代の最良解候補を比較して調べると、解候補におけるギャップ時間の平均値(図5に示すギャップ時間G1、G2等の平均値)は、18秒から12秒まで短くなっていた(データ示さず)。これは、交差や突然変異といった遺伝的操作を行いながら世代数が進むにつれて、解候補の最適化の度合いが高まり、コンテナ仕分け量(単位時間あたりの出庫数)がより多くなった結果、ギャップ時間が短くなったと考えられる。
【0059】
上記のように、図7および図10から、(1)式を用いて初期出庫時刻tiniを設定することにより、コンテナ順の不一致を抑えつつ、出庫効率が高い出庫指示を設定する効率を高める効果が得られることが、確認された。
【0060】
なお、コンテナ順の不一致を解消するために要するずらし時間tsは、例えば、出庫側昇降機50における排出アルゴリズムや、仕分け装置20の使用状況(例えば、仕分け対象となるコンテナ総数、コンテナが属するグループの数、各グループに含まれるコンテナの数など)によって変わり得る(例えば、図7のグラフ(α)(β)、および図10を参照)。そのため、ずらし時間tsは、出庫側昇降機50における排出アルゴリズムや、仕分け装置20の使用状況に応じて、これらの条件ごとに、適宜設定すればよい。
【0061】
B.第2実施形態:
図11は、第2実施形態の出庫指示システム10が備える制御部160を、制御部160が実行する機能の一部を表す機能ブロックによって示した説明図である。第2実施形態の出庫指示システム10は、第1実施形態と同様に、予め複数のグループに分類された複数のコンテナ22が入庫されて、入庫された複数のコンテナ22をグループ別に仕分けして、グループごとに順次出庫する装置である。第2実施形態の出庫指示システム10において、第1実施形態の出庫指示システム10と共通する部分には、同じ参照番号を付す。図11に示すように、制御部160は、機能ブロックとして、第1実施形態と同様に初期値生成部64、出庫指示生成部66、排出アルゴリズム記憶部68、および出庫側昇降機駆動部69を備えると共に、入庫順情報取得部62に代えて収納場所取得部61を備える。
【0062】
第1実施形態では、仕分け対象コンテナのうちの最後のコンテナがグループ識別部30を通過して、制御部60が最適化の動作を開始する時点で、すべての仕分け対象コンテナが入庫側昇降機34に搬入されておらず、最適化の結果として設定される出庫指示は、すべての仕分け対象コンテナについて、入庫指示を含んでいる。これに対して、第2実施形態では、制御部160が最適化の動作を開始する時点で、すべての仕分け対象コンテナが、既に、保管棚40a~40dのうちのいずれかにおいて、左棚42または右棚44に収納されている。そのため、第2実施形態で設定される出庫指示は、個々のコンテナ22の出庫時刻は含むが、入庫指示は含まない。
【0063】
図12は、第2実施形態の出庫指示システム10の制御部160で実行される出庫指示設定処理ルーチンを表すフローチャートである。本ルーチンは、仕分け装置20へのコンテナ22の入庫が開始されて、すべての仕分け対象コンテナについての入庫指示(保管棚40a~40dのいずれにおいて、左棚42と右棚44のいずれに収納するのかを示す指示)が決定されたときに起動される。
【0064】
なお、コンテナ22の収納場所は、予め定めた何らかのアルゴリズムに従って決定すればよい。例えば、保管棚40a、40b、40c、40dの順で、収納先を順次割り振ることとしてもよい。また、左棚42と右棚44との間で、収納先を交互に割り振ることとしてもよい。あるいは、保管棚40a~40dの中から、収納先の保管棚をランダムに選択すると共に、左棚42と右棚44との間で、収納先をランダムに選択することとしてもよい。また、このとき、保管棚40a~40d、およびそれぞれの保管棚の左棚42と右棚44とのうち、既に入庫したコンテナ数が少ない棚ほど、コンテナ22が入庫され易いように重み付けして収納先を決定してもよい。
【0065】
図12の出庫指示設定処理ルーチンが起動されると、制御部160の収納場所取得部61は、入庫されたコンテナ22の収納場所を示す情報を取得する(ステップS200)。制御部160は、仕分け対象コンテナの収納先を決定した結果を記憶しており、収納場所取得部61は、上記した記憶した結果を用いて、個々のコンテナ22の収納場所を示す情報、具体的には、保管棚40a~40dのうちの、左棚42または右棚44における収納場所(いずれの分割棚43または分割棚45に収納されているか)を取得する。
【0066】
その後、制御部160の初期値生成部64は、個々のコンテナ22の出庫時刻の初期値を、解候補の初期値として、複数作成する(ステップS210)。ステップS210の処理は、既述した第1実施形態のステップS110と同様の処理であり、図6に示すような(1)式により得られる初期出庫時刻tiniの集合である「出庫時刻の初期値」を、「出庫指示の初期値」として複数作成する。なお、第2実施形態では、図12に基づいて出庫指示を設定する際に、グループ識別部30から得られる入庫順情報は不要である。そのため、(1)式により個々のコンテナ22の初期出庫時刻tiniを設定する際に用いる基準時刻tstnとしては、最後のコンテナ22がグループ識別部30を通過した時刻に代えて、例えば、最後のコンテナ22の収納場所が決定された時刻とすることができる。
【0067】
その後、制御部160の出庫指示生成部66は、ステップS210で作成した解候補の初期値を用いて、遺伝的アルゴリズムを用いた最適化により、出庫指示を設定する(ステップS230~ステップS270)。このステップS230~ステップS270の処理は、図4のステップS130~ステップS170と同様の処理である。
【0068】
このような構成とすれば、(1)式を用いて初期出庫時刻tiniを生成して、出庫指示の初期値を作成し、遺伝的アルゴリズムを用いた最適化により出庫指示を設定しているため、既に入庫が完了している複数のコンテナを仕分け対象コンテナとする場合であっても、第1実施形態と同様に、出庫性能が高い出庫指示を設定する効率を、高める効果が得られる。
【0069】
C.第3実施形態:
図13は、第3実施形態の出庫指示システム10が備える制御部260を、制御部260が実行する機能の一部を表す機能ブロックによって示した説明図である。第3実施形態の出庫指示システム10は、第1実施形態と同様に、予め複数のグループに分類された複数のコンテナ22が入庫されて、入庫された複数のコンテナ22をグループ別に仕分けして、グループごとに順次出庫する装置である。第3実施形態の出庫指示システム10において、第1実施形態の出庫指示システム10と共通する部分には、同じ参照番号を付す。制御部260は、機能ブロックとして、第1実施形態と同様に、入庫順情報取得部62、初期値生成部64、出庫指示生成部66、排出アルゴリズム記憶部68、および出庫側昇降機駆動部69を備えると共に、さらに、第2実施形態と同様に、収納場所取得部61を備える。
【0070】
第1実施形態では、最適化の結果として設定される出庫指示は、すべての仕分け対象コンテナについて入庫指示を含んでおり、第2実施形態では、最適化の結果として設定される出庫指示は、すべての仕分け対象コンテナについて入庫指示を含んでいない。これに対して、第3実施形態では、仕分け対象コンテナのうちの最後のコンテナ22がグループ識別部30を通過して最適化の動作を開始する時点で、先頭のコンテナ22を含む一部のコンテナ22について、既に、仕分け装置20内における収納場所が決定されており、そのうちの少なくとも一部のコンテナ22は、保管棚40a~40dのうちのいずれかにおいて、左棚42または右棚44に収納されている。そのため、第3実施形態では、入庫指示を含む出庫指示を設定可能となった時点、具体的には、例えば、最後のコンテナ22がグループ識別部30を通過した時点で、仕分け装置20内における収納場所が決定されていないコンテナ22、具体的には、例えば入庫側昇降機34に搬入されていないコンテナ22についてのみ、入庫指示を含む出庫指示を設定することとしている。出庫指示の最適化の処理を開始する際に、仕分け装置20内における収納場所が決定されているコンテナ22を、「収納場所決定済みコンテナ」とも呼び、仕分け装置20内における収納場所が決定されていないコンテナ22を、「収納場所未決定コンテナ」とも呼ぶ。
【0071】
図14は、第3実施形態の出庫指示システム10の制御部260で実行される出庫指示設定処理ルーチンを表すフローチャートである。本ルーチンは、制御部260による出庫指示の設定の動作を開始可能となったときに起動される。具体的には、例えば、前工程から入庫コンベア32へと複数のコンテナ22の搬送が開始されて、仕分け対象コンテナのうちの最後のコンテナ22がグループ識別部30を通過したときに起動される。本実施形態では、既述したように、最後のコンテナ22がグループ識別部30を通過して、出庫指示設定処理ルーチンが起動される時点よりも早くに、先頭のコンテナ22を含む一部のコンテナについては入庫指示が設定されて、入庫側昇降機34を介して各保管棚40a~40dへの入庫の動作が開始されている。なお、収納場所決定済みコンテナについて、出庫指示設定処理ルーチンが起動される前に決定される収納場所は、第2実施形態と同様に、予め定めた何らかのアルゴリズムに従って決定すればよい。
【0072】
本ルーチンが起動されると、制御部260の収納場所取得部61が、収納場所決定済みコンテナの収納場所を示す情報を取得すると共に、入庫順情報取得部62が、個々のコンテナ22の入庫順情報を取得する(ステップS300)。収納場所決定済みコンテナについて決定されている収納場所は、制御部260が備える記憶装置内に記憶されている。また、入庫順情報取得部62が取得する入庫順情報は、収納場所決定済みコンテナよりも後に入庫する収納場所未決定コンテナについての入庫順情報であって、グループ識別部30によって識別されて制御部260内の記憶装置に記憶された入庫順情報である。ステップS300で取得された収納場所を示す情報および入庫順情報は、初期値生成部64に送られる。
【0073】
次に、制御部260の初期値生成部64は、仕分け対象コンテナについて、複数組の出庫時刻の初期値を作成する(ステップS310)。ステップS310の処理は、第1実施形態のステップS110の処理と同様の処理である。すなわち、図6に示すような(1)式により得られる初期出庫時刻tiniの集合である「出庫時刻の初期値」を、複数作成する。第3実施形態では、ステップS310において(1)式により個々のコンテナ22の初期出庫時刻tiniを設定する際に用いる基準時刻tstnとしては、例えば、第1実施形態と同様に、最後のコンテナ22がグループ識別部30を通過した時刻とすればよい。
【0074】
ステップS310において、初期出庫時刻tiniの集合である「出庫時刻の初期値」を複数作成すると、制御部260の初期値生成部64は、出庫時刻の初期値ごとに、ステップS300で取得した収納場所を示す情報、または、「入庫指示の初期値」を与えて、「出庫指示の初期値」を作成する(ステップS320)。ステップS320では、収納場所決定済みコンテナについては、ステップS300で取得した収納場所を示す情報、すなわち、既に決定された入庫指示が与えられる。また、収納場所決定済みコンテナよりも後に入庫する収納場所未決定コンテナについては、第1実施形態のステップS120と同様にして、個々の収納場所未決定荷に対して仮に設定した入庫指示の初期値が与えられる。
【0075】
その後、制御部260の出庫指示生成部66は、ステップS310で作成した解候補の初期値を用いて、遺伝的アルゴリズムを用いた最適化により、出庫指示を設定する(ステップS330~ステップS370)。このステップS330~ステップS370の処理は、図4のステップS130~ステップS170と同様の処理である。ただし、第3実施形態では、次世代の解候補を作成する際に、収納場所決定済みコンテナの入庫指示については、世代数を重ねても不変としている。
【0076】
このような構成とすれば、(1)式を用いて初期出庫時刻tiniを生成して、出庫指示の初期値を作成し、遺伝的アルゴリズムを用いた最適化により出庫指示を設定しているため、一部のコンテナについては既に入庫が完了している複数のコンテナを仕分け対象コンテナとする場合であっても、第1実施形態と同様に、出庫性能が高い出庫指示を設定する効率を、高める効果が得られる。
【0077】
D.他の実施形態:
(D-1)荷について:
上記実施形態では、仕分け装置20が仕分けする荷は、物品を収納したコンテナ22としたが、異なる構成としてもよい。荷は、例えば、個別の物品でもよく、単独で移送の単位となるものであればよい。
【0078】
(D-2)荷別加算時間taddについて:
上記実施形態では、(1)式を用いて初期出庫時刻tiniを生成する際に用いる荷別加算時間taddは、0から、コンテナ22が属するグループに含まれるコンテナ22の数までの数値範囲からランダムに選択される数としたが、異なる構成としてもよい。例えば、荷別加算時間taddは、上記のようにしてランダムに選択した数に、さらに、予め定めた係数を乗算した数としてもよい。このとき、上記係数は、グループごとに異なる数としてもよい。あるいは、荷別加算時間taddは、ランダムに設定しなくてもよく、例えば、個々のコンテナ22のグループ内での入庫順序を荷別加算時間taddとして用いてもよい。ただし、荷別加算時間taddをランダムに設定すれば、初期収束等の不都合を抑えて、遺伝的アルゴリズムを用いた最適化によって所望の解に到達する効率が高まり易いため、望ましい。また、荷別加算時間taddは、個々のコンテナ22が属するグループに含まれるコンテナ数に制限される数値範囲内でなくてもよく、予め設定された数値範囲内であればよい。
【0079】
(D-3)ずらし時間tsについて:
上記実施形態では、(1)式を用いて初期出庫時刻tiniを生成する際に用いるずらし時間tsは、出庫の順序が後のグループほど長く設定されているが、異なる構成としてもよい。初期出庫時刻tiniを生成する際に、予め定められた数値範囲の荷別加算時間taddと共に、グループごとに異なる値が定められたずらし時間tsを加算して、グループごとの出庫時刻が互いにシフトするように初期出庫時刻tiniを生成することにより、出庫指示を最適化するための処理を軽減する効果が得られる。ただし、出庫指示を最適化するための処理を軽減する効果を高めるためには、実施形態のように、出庫の順序が後のグループほどずらし時間tsを長く設定することが望ましい。
【0080】
(D-4)仕分け装置について:
上記実施形態では、仕分け装置20は、図1に示す構成としたが、異なる構成としてもよい。例えば、仕分け装置は、「複数の荷を収納可能な複数の保管棚」と、「複数の保管棚の任意の箇所に収納された荷を、定められた出庫時刻に保管棚から取り出す取り出し部」と、「複数の保管棚から取り出し部によって順次取り出される荷を仕分け装置から順次出庫する出庫部」と、を備えていればよい。具体的には、例えば、荷を複数の保管棚に分配する入庫側昇降機34や、取り出し部である切り出し装置48および出庫部である出庫側昇降機50に代えて、スタッカークレーンを用いてもよい。
【0081】
(D-5)排出アルゴリズムについて:
上記実施形態では、出庫側昇降機50は、各々の排出コンベア46に搬送されたコンテナ22を順次受け入れて、コンテナ22の属するグループを考慮することなく、予め定められた排出アルゴリズムに従って搬出の動作を行っているが、異なる構成としてもよい。例えば、出庫側昇降機50において、出庫側昇降機50に搬入されるコンテナ22の属するグループを識別し、グループの別を考慮した排出アルゴリズムにより出庫側昇降機50内の動きを制御したり、出庫側昇降機50への搬入に先だって出庫側昇降機50の入り口部でコンテナ22を待機させたりすることにより、コンテナ22の順序がグループ順に従うように、出庫側昇降機50内で積極的にコンテナ22を入れ替える構成も採用可能である。ただし、上記実施形態では、グループ別を考慮しない排出アルゴリズムを用いると共に、最適化の過程でグループ順不一致を起こす解の選択を抑えることにより、出庫性能が高い出庫指示設定の効率向上に加えて、出庫側昇降機50の駆動制御のための処理の軽減を可能にしている。
【0082】
(D-6)最適化アルゴリズムについて:
上記実施形態では、出庫指示を最適化して設定するための最適化アルゴリズムとして、遺伝的アルゴリズムを用いたが、異なる構成としてもよい。例えば、タブー・サーチ(TS)、シミュレーテッド・アニーリング(SA、焼きなまし法)、あるいはシミュレーテッド・エボリューション(SimE)等、組み合わせの最適化に用いることができる種々の最適化アルゴリズムを用いることができる。このような場合であっても、最適化の初期値を作成する際に、(1)式のようにグループ間で異なるずらし時間tsを設定することで、出庫性能が高い所望の出庫指示を設定する効率を、高めることができる。
【符号の説明】
【0083】
10…出庫指示システム
20…仕分け装置
22…コンテナ
30…グループ識別部
32…入庫コンベア
34…入庫側昇降機
36…分岐装置
40a~40d…保管棚
42…左棚
43,45…分割棚
44…右棚
46…排出コンベア
48…切り出し装置
48a…シャフト
48b…アーム
50…出庫側昇降機
51…出庫コンベア
52…上流側昇降ボックス
53a~53d…授受室
54…下流側昇降ボックス
55a~55d…授受室
56…出口部
60,160,260…制御部
61…収納場所取得部
62…入庫順情報取得部
64…初期値生成部
66…出庫指示生成部
68…排出アルゴリズム記憶部
69…出庫側昇降機駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14