(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066872
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】ゴムローラの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20220422BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20220422BHJP
B29C 48/154 20190101ALI20220422BHJP
B29C 48/157 20190101ALI20220422BHJP
B29C 48/34 20190101ALI20220422BHJP
【FI】
G03G15/00 551
F16C13/00 B
B29C48/154
B29C48/157
B29C48/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175457
(22)【出願日】2020-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 寛之
(72)【発明者】
【氏名】中田 貴久
【テーマコード(参考)】
2H171
3J103
4F207
【Fターム(参考)】
2H171FA07
2H171FA30
2H171GA15
2H171PA02
2H171PA03
2H171PA09
2H171PA14
2H171PA18
2H171XA02
3J103AA13
3J103AA23
3J103AA32
3J103AA51
3J103AA74
3J103AA85
3J103BA41
3J103EA07
3J103EA11
3J103EA13
3J103FA15
3J103GA02
3J103GA54
3J103GA57
3J103GA58
3J103GA60
3J103HA12
4F207AA45
4F207AD15
4F207AD18
4F207AD19
4F207AD36
4F207AH04
4F207KA01
4F207KB18
4F207KJ05
4F207KL58
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生産効率が良く、高品質なゴムローラが得られるゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】軸体21の外周に、押出成形により弾性層を設けるゴムローラの製造方法であって、軸体21の軸方向の両端に保護キャップ22を設ける第1工程と、軸体21をダイス穴16に送り込み、ゴム組成物14を押出機13から押し出し、軸体21の外周にゴム組成物14を被覆しながら、ゴム組成物14が被覆された軸体21をダイス口17から押し出す第2工程と、を有し、第2工程において、ダイス口17から押し出される軸体21に、軸体21が押し出される方向とは逆向きの方向に、軸体21を保持する力F1を加え、かつ、F1とゴム組成物14を押し出す力F2とが、下記式1の関係を満たすゴムローラの製造方法である。
F1>F2(式1)
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周に、押出成形により弾性層を設けるゴムローラの製造方法であって、
前記軸体の軸方向の両端に保護キャップを設ける第1工程と、
前記軸体をダイス穴に送り込み、ゴム組成物を押出機から押し出し、前記軸体の外周に前記ゴム組成物を被覆しながら、前記ゴム組成物が被覆された前記軸体をダイス口から押し出す第2工程と、
を有し、
前記第2工程において、前記ダイス口から押し出される前記軸体に、前記軸体が押し出される方向とは逆向きの方向に、前記軸体を保持する力F1を加え、かつ、前記F1と、前記ゴム組成物を押し出す力F2とが、下記式1の関係を満たすゴムローラの製造方法。
F1>F2 式1
【請求項2】
前記軸体のジャーナル部分と前記保護キャップとの間に弾性部材が介在する請求項1記載のゴムローラの製造方法。
【請求項3】
前記弾性部材が、Oリングである請求項2記載のゴムローラの製造方法。
【請求項4】
前記保護キャップの外径が、前記軸体の外径に対し、95%以上100%以下である請求項1から3いずれか1項記載のゴムローラの製造方法。
【請求項5】
前記軸体を前記ダイス穴に送り込む力F3と、前記ゴム組成物を押し出す力F2とが、下記式2の関係を満たす請求項1から4いずれか1項記載のゴムローラの製造方法。
F3>F2 式2
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラ、クリーニングローラ等、軸体の外周に弾性層が設けられた各種ゴムローラを備える。
【0003】
これらのゴムローラの弾性層は、軸体の外周にゴム組成物を、例えば、クロスヘッド式の押出成形機で被覆した後、加硫することによって形成される。軸体の軸方向の両端には、軸受けに支持されるジャーナル部分を有する。ジャーナル部分は、軸体の弾性層が設けられる部分の外径より小さいため、ゴム組成物を押出成形で形成する際、このジャーナル部分に余分なゴム組成物が入り込むため、加硫後の成形工程で除去する必要がある。
そこで、特許文献1には、余分なゴム組成物の使用を避け、かつ清掃工程を簡略にするため、軸体の軸方向の両端に、例えば円筒形のマスキングを設けて押出成形することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような円筒形のマスキングが簡易的に取り付けられた場合は、ゴム組成物の押し出す力によって、マスキングがずれてしまい、その隙間にゴム組成物が入り込み、マスキング近傍で、弾性層の外径が不均一になるという場合がある。また、侵入したゴム組成物の清掃に時間がかかり、生産効率の低下を招くという問題もある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、生産効率が良く、高品質なゴムローラが得られるゴムローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、軸体の外周に、押出成形により弾性層を設けるゴムローラの製造方法であって、軸体の軸方向の両端に保護キャップを設ける第1工程と、軸体をダイス穴に送り込み、ゴム組成物を押出機から押し出し、軸体の外周にゴム組成物を被覆しながら、ゴム組成物が被覆された軸体をダイス口から押し出す第2工程と、を有し、第2工程において、ダイス口から押し出される軸体に、軸体が押し出される方向とは逆向きの方向に、軸体を保持する力F1を加え、かつ、F1と、ゴム組成物を押し出す力F2とが、下記式1の関係を満たすゴムローラの製造方法である。
F1>F2 式1
【0007】
軸体のジャーナル部分と保護キャップとの間に弾性部材が介在することが好ましい。
【0008】
弾性部材は、Oリングであってもよい。
【0009】
保護キャップの外径は、軸体の外径に対し、95%以上100%以下であることが好ましい。
【0010】
軸体をダイス穴に送り込む力F3と、ゴム組成物を押し出す力F2とは、下記式2の関係を満たすことが好ましい。
F3>F2 式2
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴムローラの製造方法によれば、生産効率が良く、高品質なゴムローラが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】保護キャップを設けた軸体を示す断面図である。
【
図2】保護キャップのジャーナル部分を示す拡大断面図である。
【
図4】弾性層が被覆された軸体を示す断面図である。
【
図5】保護キャップを除去したゴムローラを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明のゴムローラの製造方法は、軸体の外周に、押出成形により弾性層を設けるゴムローラの製造方法であり、第1工程と第2工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0014】
(第1工程)
第1工程は、
図1に示すように、軸体21の軸方向の両端に保護キャップ22を設ける工程である。軸体21は、軸受け部(不図示)に支持されるジャーナル部分21aを有する。保護キャップ22は、ジャーナル部分21aに簡便な方法で取り外し可能に設けられている。例えば、保護キャップ22は、
図2に示すように、ジャーナル部分21aの形状に対応するように、内部に凹部が設けられ、凹部の内壁に溝部22aが設けられ、溝部22aに、ゴム製のOリング24が配置されたものを用いることができる。このような保護キャップ22とジャーナル部分21aとは、Oリング24によって締め付けられて固定される。
【0015】
軸体21は、好ましくは、導電特性を有する、従来公知の現像ローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体21は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群より選択される少なくとも1種の金属で構成されていることが好ましい。
【0016】
軸体21は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。軸体21は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、この芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体21は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
軸体21は、良好な導電特性を得るために、芯金であることが好ましい。
【0017】
軸体21の形状は、例えば、棒状、管状等であることが好ましい。軸体21の断面形状は、例えば、円形、楕円形であってもよく、多角形等の非円形であってもよい。軸体21の外周面には、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0018】
軸体21の軸方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してもよい。また、軸体21の外径も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整すればよい。
【0019】
保護キャップ22の材料としては、軸体21と同様の材料の他、軸体21に用いられる金属以外の金属、ポリアセタール樹脂等を用いることができる。
保護キャップ22の外径は、軸体21の外径に対し、95%以上100%以下であることが好ましい。保護キャップ22の内径は、ジャーナル部分21aの外径より僅かに大きいことが好ましい。
図2では、保護キャップ22とジャーナル部分21aとは、Oリング24によって、締め付けられて固定された場合を説明したが、保護キャップ22とジャーナル部分21aとの間に弾性部材が介在することが、保護キャップ22の脱着及び固定の点で好ましい。例えば、シート状の弾性材を所定幅にカットして、ジャーナル部分21aの外周にC字状に配置して、保護キャップ22とジャーナル部分21aとを固定してもよい。また、保護キャップの内部に所定の幅にカットした弾性部材を配置し、ジャーナル部分を挿入して固定してもよい。
【0020】
(第2工程)
図3に本発明に用いる押出成形機の概略断面図を示す。
本発明には、
図3に示すように、クロスヘッドタイプの押出成形機を用いることができる。押出成形機は、主に、インダイス11と、アウトダイス12と、インダイス11とアウトダイス12との間にゴム組成物14を押し出す押出機13と、ローラ15と、を備える。
互いに対向して配置されたローラ15は、軸体21を挟み込み、ダイス穴16に送り込む。一方、ゴム組成物14は押出機13のスクリューによって押し出され、インダイス11とアウトダイス12との間に流入する。軸体21は、ダイス穴16を通過しながら、ゴム組成物14が外周に塗布されて、ダイス口17から押し出される。ゴム組成物14の押出速度は、ゴム組成物14の粘度、弾性層23の厚さ等を考慮して適宜決定される。
【0021】
軸体21の外周面には、弾性層23(
図4及び
図5参照)との接着性を向上させるため、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0022】
第2工程において、ダイス口17から押し出される軸体21に、軸体21が押し出される方向とは逆向きの方向に、軸体21を保持する力F1(
図3参照)が加えられている。そして、軸体21を保持する力F1と、ゴム組成物14を押し出す力F2(
図3参照)とは、下記式1の関係を満たす。
F1>F2 式1
【0023】
F1及びF2は、それぞれ、式1を満たすように、50N以上300N以下であることが好ましい。F1は、軸体21を支持するシリンダー内の圧力を変えることによって調整することが可能である。また、F2は、ゴム組成物14の押出速度を変化させることによって調整することが可能である。
F1とF2との差は、弾性層の厚さ調整のし易さを考慮すると、2N以上200N以下であることが好ましい。
【0024】
F1とF2とが上記関係を有することにより、保護キャップ22が押出成形中に外れることがなく、ゴム組成物14を軸体及びキャップの外周に均一な厚さで被覆することが可能である。また、ゴム組成物14がジャーナル部分21aに入り込まないので、後の工程で清掃を簡略化することができ、生産効率の向上が図られる。
【0025】
また、軸体21をダイス穴16に送り込む力F3(
図3参照)と、ゴム組成物14を押し出す力F2とは、下記式2の関係を満たすことが好ましい。
F3>F2 式2
F3は、軸体21を送り込むローラ15の回転速度を変えることによって調整することが可能である。
F2とF3とが、上記関係を有することにより、軸体21の搬送を良好に行うことができ、軸体21はダイス口17から押し出されると同時に、良好にゴム組成物14を被覆することができる。
【0026】
ゴム組成物14としては、押出成形可能なゴム組成物であればよい。例えば、ゴム組成物14のゴムとしては、シリコーン又はシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム又はウレタンゴムであるのが好ましく、シリコーン又はシリコーン変性ゴムが、圧縮永久歪を低減することができるとともに、低温環境下における柔軟性に優れる点、さらには、耐熱性、帯電特性等に優れる点で、特に好ましい。シリコーンゴムとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンの架橋物が挙げられる。ゴム組成物14には、発泡剤、触媒、架橋剤、導電剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0027】
ダイス口17から押し出された軸体21の外周には未加硫の弾性層23aが形成されており、軸体21は、引取り機(不図示)により1本ずつ分離される(
図4参照)。分離された軸体21は加熱炉に送られて、未加硫の弾性層23aが加硫されて弾性層23が形成される。加硫後、保護キャップ22上の余分な弾性層23を切除する。最後に保護キャップ22を取り外して、ゴムローラ20を完成させる(
図5参照)。
【符号の説明】
【0028】
11 インダイス
12 アウトダイス
13 押出機
14 ゴム組成物
15 ローラ
16 ダイス穴
17 ダイス口
20 ゴムローラ
21 軸体
21a ジャーナル部分
22 保護キャップ
22a 溝部
23 弾性層
23a 未加硫の弾性層
24 Oリング