(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066938
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】避難所用テントユニットと避難所用テント、及び避難所建屋
(51)【国際特許分類】
E04H 15/10 20060101AFI20220422BHJP
E04B 1/343 20060101ALI20220422BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20220422BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20220422BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20220422BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20220422BHJP
F24F 13/08 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
E04H15/10
E04B1/343 Z
E04H9/14 Z
F24F3/044
F24F7/06 B
F24F13/02 B
F24F13/02 D
F24F13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175559
(22)【出願日】2020-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大迫 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美穂
(72)【発明者】
【氏名】青山 剛士
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
【テーマコード(参考)】
2E139
2E141
3L053
3L058
3L080
3L081
【Fターム(参考)】
2E139AB25
2E141AA03
2E141BB01
2E141CC01
2E141GG01
2E141GG11
3L053BB01
3L053BB02
3L053BB04
3L058BD05
3L058BE08
3L058BG01
3L080AA02
3L080AA03
3L080AC01
3L080AC02
3L080AD02
3L081AA01
3L081AB02
3L081BA01
(57)【要約】
【課題】避難施設における占有面積を可及的に抑制することのできる、避難所用テントユニットと避難所用テント、及び避難所建屋を提供すること。
【解決手段】複数の避難所用テント70を備えている、避難所用テントユニット90であり、各避難所用テント70に対してそれぞれ室外分岐エアダクト83が連通し、各室外分岐エアダクト83が共通の主エアダクト82に連通し、主エアダクト82が室外給気ファン81に連通している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の避難所用テントを備えている、避難所用テントユニットであって、
各避難所用テントに対してそれぞれ室外分岐エアダクトが連通し、各室外分岐エアダクトが共通の主エアダクトに連通し、該主エアダクトが室外給気ファンに連通していることを特徴とする、避難所用テントユニット。
【請求項2】
前記避難所用テントは、出入り部を備える壁シートと、天井シートとを備え、
前記出入り部は、前記壁シートに設けられている出入りスリットにより形成され、
前記壁シートにおける該出入りスリットの近傍の左右にはそれぞれ第一面ファスナーが取り付けられ、該出入りスリットの端部から離れた位置には第二面ファスナーが取り付けられており、
左右の前記第一面ファスナー同士が接続されることにより、前記出入り部が閉じられ、
対応する前記第一面ファスナーと前記第二面ファスナーが接続されることにより、前記出入り部が開放されることを特徴とする、請求項1に記載の避難所用テントユニット。
【請求項3】
前記第一面ファスナーは、前記壁シートの室外面と室内面の双方に取り付けられていることを特徴とする、請求項2に記載の避難所用テントユニット。
【請求項4】
前記壁シートは、外部から視認不可な目隠しシートであり、
前記天井シートは、光透過性の透明もしくは半透明の天端シートを少なくとも有していることを特徴とする、請求項2または3に記載の避難所用テントユニット。
【請求項5】
前記天井シートの室内面の少なくとも一部を室内側から被覆する、光不透過性の天井室内シートが、該天井シートの室内面に取り付けられるようになっていることを特徴とする、請求項4に記載の避難所用テントユニット。
【請求項6】
前記避難所用テントの天井には、前記室外分岐エアダクトが連通するチャンバーが設置されており、
前記天端シートは、前記チャンバーが設置される第一開口と、第二開口とを備え、
前記避難所用テントの室内に給気する際、もしくは、給排気を停止する際は、光透過性の透明もしくは半透明の閉塞シートにより前記第二開口が閉塞され、
前記避難所用テントの室内から排気する際は、通気性を有する前記閉塞シートにより前記第二開口が閉塞されるようになっていることを特徴とする、請求項5に記載の避難所用テントユニット。
【請求項7】
前記チャンバーは、内部にフィルターを備え、壁面にチャンバー内ファンを備えており、
前記チャンバー内ファンは、前記室外給気ファンにより前記チャンバーに供給されたエアを前記避難所用テントの室内に供給する給気補助機能と、該避難所用テントの室内のエアを室外に排気する排気機能を備えていることを特徴とする、請求項6に記載の避難所用テントユニット。
【請求項8】
前記避難所用テントの内部には、ベッドが収容されており、
前記ベッドは、
複数の箱が併設されることにより形成されるベッド台と、
前記ベッド台の上に載置されるマットレスと、を備えており、
前記箱は、前記避難所用テントの各構成部材が梱包され、搬送された際に適用されている箱の転用品であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の避難所用テントユニット。
【請求項9】
前記マットレスの上に空調枕が載置され、
前記空調枕と前記チャンバーが、室内エアダクトにより連通しており、
前記チャンバーに供給されたエアが、前記室内エアダクトを介して前記空調枕に供給されることを特徴とする、請求項8に記載の避難所用テントユニット。
【請求項10】
前記空調枕は平面視矩形であり、
前記空調枕における利用者の後頭部が載置される上表面には、エアを吹出す複数の吹出孔を備えた帯状の吹出部が設けられており、
平面視において、前記吹出部は前記空調枕の縦長さの中央より上方に配設され、該吹出部の横長さは、前記後頭部の1.8倍乃至2.2倍の範囲にあることを特徴とする、請求項9に記載の避難所用テントユニット。
【請求項11】
避難所用テントユニットを構成する、複数の避難所用テントであって、
各避難所用テントに対してそれぞれ室外分岐エアダクトが連通し、各室外分岐エアダクトが共通の主エアダクトに連通し、該主エアダクトが室外給気ファンに連通するようになっていることを特徴とする、避難所用テント。
【請求項12】
複数の避難所用テントを備えている、避難所建屋であって、
各避難所用テントに対してそれぞれ室外分岐エアダクトが連通し、各室外分岐エアダクトが共通の主エアダクトに連通し、該主エアダクトが室外給気ファンに連通していることを特徴とする、避難所建屋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難所用テントユニットと避難所用テント、及び避難所建屋に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や台風、大雨といった各種の自然災害の際には、必要に応じて、地域住民等の避難者は最寄りの体育館や公会堂、ホール等の避難施設に避難することになる。避難施設に多数の避難者が避難する場合、プライバシー確保の観点から簡易的な間仕切りが設置されることがある。このように間仕切りにて最低限のプライバシーは確保される一方で、避難者の中に各種感染症に罹患している感染症患者がいる場合、間仕切りでは十分な感染防止を図ることができない。そこで、避難施設にテントを設置し、テント内に感染症患者を収容する試みが図られる場合がある。避難施設にテントを設置することにより、感染症患者の収容のみならず、各種病気を患う患者や高齢者等をテントに収容することも可能になる。
【0003】
ここで、特許文献1には、アレルギー疾患の原因となる空気中エアロゾルの影響を効果的に取り除くことを可能にした、パーソナルクリーンブースが提案されている。このパーソナルクリーンブースは、フィルターを介したクリーンエアーの供給部と、このクリーンエアーの頭上もしくはその近傍からの吹出し部とを有し、シートによりクリーンエアー空間を囲み、天井部もしくは壁部に吊り下げたフレーム体によりシートを支持する。また、クリーンエアー供給部と吹出し部とは、シートダクトによって連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のパーソナルクリーンブースを、例えば上記する避難施設に設置される避難所用テントとして適用することにより、避難所用テント内をクリーンな環境下に置くことができる。
【0006】
特許文献1に具体的な記載はないが、パーソナルクリーンブースの備えるクリーンエアーの供給部には、給気ファンによりエアが供給されるものと考えられる。すなわち、一つのパーソナルクリーンブースに対して一台の給気ファンからエアの供給が行われる。ところで、上記する避難施設においては、一度に多数の避難者が避難するケースも往々にしてあることから、避難者の中には複数の感染症患者が存在することもあり、従って、避難施設内には複数の避難所用テントが設置されることが好ましい。その一方で、避難施設のスペースには限界があることから、可及的に多数の避難所用テントを設置しながらも、占有面積を可及的に抑制できる避難所用テントユニットが望まれる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、避難施設における占有面積を可及的に抑制することのできる、避難所用テントユニットと避難所用テント、及び避難所建屋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による避難所用テントユニットの一態様は、
複数の避難所用テントを備えている、避難所用テントユニットであって、
各避難所用テントに対してそれぞれ室外分岐エアダクトが連通し、各室外分岐エアダクトが共通の主エアダクトに連通し、該主エアダクトが室外給気ファンに連通していることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、複数の避難所用テントに対して共通の室外給気ファンからエアが供給されることにより、室外給気ファンの占有面積を抑制することができ、結果として避難所用テントユニット全体の占有面積を抑制することが可能になる。
【0010】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記テントは、
複数の軸部材により構成される、床骨組みと、天井骨組みと、該床骨組みと該天井骨組みと縦桟とにより形成される壁骨組みと、
前記天井骨組みを少なくとも被覆する天井シートと、前記壁骨組みを被覆して出入り部を備える壁シートと、
前記天井骨組みの内側に設置され、複数の吹出吸込孔が開設されている下面板を備えている、チャンバーと、を有し、
各テントの備える前記チャンバーに対してそれぞれ室外分岐エアダクトが連通し、各室外分岐エアダクトが共通の主エアダクトに連通し、該主エアダクトが室外給気ファンに連通していることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、骨組みを構成する天井骨組みの内側に設置さているチャンバーを介してテントの室内にエアが供給されることにより、室内の全域に効果的にエアを供給することができる。
【0012】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記室外給気ファンが、各テントに供給するエアを、冷気と暖気に切り換え自在であることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、室外給気ファンが、各テントに供給するエアを冷気と暖気に切り換え自在であることにより、季節や昼夜等の避難所建屋内の温度や湿度に応じて、所望温度の冷気もしくは暖気を各テントに供給することができる。
【0014】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記避難所用テントは、出入り部を備える壁シートと、天井シートとを備え、
前記出入り部は、前記壁シートに設けられている出入りスリットにより形成され、
前記壁シートにおける該出入りスリットの近傍の左右にはそれぞれ第一面ファスナーが取り付けられ、該出入りスリットの端部から離れた位置には第二面ファスナーが取り付けられており、
左右の前記第一面ファスナー同士が接続されることにより、前記出入り部が閉じられ、
対応する前記第一面ファスナーと前記第二面ファスナーが接続されることにより、前記出入り部が開放されることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、壁シートに取り付けられている面ファスナー同士を接続して出入り部の開閉姿勢を保持することにより、出入り部の開閉と開閉姿勢の保持をスムーズに行うことができる。また、出入りスリットの端部から離れた位置に第二面ファスナーが取り付けられていることにより、出入りスリットの近傍にある第一面ファスナーと第二面ファスナーを接続した際に、出入り部を大きく開放することが可能になる。
【0016】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記第一面ファスナーは、前記壁シートの室外面と室内面の双方に取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、複数の第一面ファスナーが壁シートの室外面と室内面の双方に取り付けられていることにより、利用者が室内と室外のいずれに居る場合においても、対応する第一面ファスナー同士を接続して出入り部を閉じることができる。
【0018】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、利用者が前記テントから出て前記出入り部を閉じる際には、室外面の前記第一面ファスナー同士が接続され、
利用者が前記テントの内部から前記出入り部を閉じる際には、室内面の前記第一面ファスナー同士が接続されるようになっていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、利用者が室内と室外のいずれに居る場合においても、対応する第一面ファスナー同士を接続して出入り部を閉じることができる。
【0020】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記天井骨組みは平面視矩形枠状であり、該天井骨組みの内側に梯子状の補強桁が取り付けられ、該補強桁に前記チャンバーが載置されており、
前記補強桁は、前記天井骨組みを構成する複数の前記軸部材のうち、該補強桁の長手方向に平行な一つの該軸部材に近接した位置に設置されていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、天井骨組みの内側にある梯子状の補強桁にチャンバーが載置されることにより、チャンバーを安定的に保持することができる。また、補強桁が天井骨組みを構成する複数の軸部材のうち、補強桁の長手方向に平行な一つの軸部材に近接した位置に設置されていること、言い換えれば、補強桁が天井骨組みの中央に無くて一つの端辺の近傍にあることにより、チャンバーが備える給排気のための切り換えボタンを利用者が支障なく押すことができる。
【0022】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記壁シートは、外部から視認不可な目隠しシートであり、
前記天井シートは、光透過性の透明もしくは半透明の天端シートを少なくとも有していることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、壁シートが外部から視認不可な目隠しシートであることにより、テントの室内のプライバシーを確保することができる。また、天井シートが光透過性の透明もしくは半透明の天端シートを少なくとも有していることにより、避難施設の有する天井照明等の光を天井シートを介してテントの室内に取り込むことができる。
【0024】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記天井シートが、前記天端シートの端辺から下方に垂下されている、無端状の上方目隠しシートをさらに備え、
前記天井骨組みと前記壁骨組みの上方に前記天井シートが被せられた際に、前記上方目隠しシートが該壁骨組みの上方を被覆することにより、該天井シートが横ずれせずに設置されるようになっていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、天井シートが天端シートに加えて無端状の上方目隠しシートをさらに備えていることにより、天井骨組みの上方から天井シートを被せて設置する際に、天井シートを横ずれさせることなく、スムーズに設置することができる。
【0026】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様は、前記天井シートの室内面の少なくとも一部を室内側から被覆する、光不透過性の天井室内シートが、該天井シートの室内面に取り付けられるようになっていることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、就寝時に光不透過性の天井室内シートを光透過性の天井シートの室内面に取り付けることにより、テントの室内に光が取り込まれて就寝が阻害されることを抑制できる。
【0028】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記避難所用テントの天井には、前記室外分岐エアダクトが連通するチャンバーが設置されており、
前記天端シートは、前記チャンバーが設置される第一開口と、第二開口とを備え、
前記避難所用テントの室内に給気する際、もしくは、給排気を停止する際は、光透過性の透明もしくは半透明の閉塞シートにより前記第二開口が閉塞され、
前記避難所用テントの室内から排気する際は、通気性を有する前記閉塞シートにより前記第二開口が閉塞されるようになっていることを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、天端シートがチャンバーが設置される第一開口の他に第二開口を備え、テントの室内に給気する際や給排気を停止する際は、光透過性の閉塞シートにて第二開口が閉塞されることにより、テントの閉塞性と光透過性の双方を図ることができる。一方、テントの室内から排気する際に、通気性を有する閉塞シートにて第二開口が閉塞されることにより、排気によってテントの室内が過度の陰圧雰囲気となることを解消できる。
【0030】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記チャンバーは、内部にフィルターを備え、壁面にチャンバー内ファンを備えており、
前記チャンバー内ファンは、前記室外給気ファンにより前記チャンバーに供給されたエアを前記避難所用テントの室内に供給する給気補助機能と、該避難所用テントの室内のエアを室外に排気する排気機能を備えていることを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、チャンバーがチャンバー内ファンを備えていることにより、チャンバーに供給されたエアをテントの室内に十分に供給することができ、また、テントの室内からのエアの排気を効果的に行うことができる。
【0032】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記避難所用テントの内部には、ベッドが収容されており、
前記ベッドは、
複数の箱が併設されることにより形成されるベッド台と、
前記ベッド台の上に載置されるマットレスと、を備えており、
前記箱は、前記避難所用テントの各構成部材が梱包され、搬送された際に適用されている箱の転用品であることを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、ベッドを構成するベッド台が、テントの各構成部材が梱包され、搬送された際に適用されている箱の転用品であることにより、避難施設内に箱を別途収容するスペースを確保する必要がなくなる。ここで、箱としては、比較的剛性があり、梱包用の箱として一般に適用される段ボール箱が好ましい。
【0034】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記マットレスの上に空調枕が載置され、
前記空調枕と前記チャンバーが、室内エアダクトにより連通しており、
前記チャンバーに供給されたエアが、前記室内エアダクトを介して前記空調枕に供給されることを特徴とする。
【0035】
本態様によれば、チャンバーに供給されたエアが室内エアダクトを介して空調枕に供給されることにより、例えば適度な温度及び風量の冷気を利用者の頭部に供給することができ、快適な睡眠環境を形成できる。
【0036】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様は、前記チャンバーの備える前記下面板の縁部において、下方に突出する接続筒が設けられ、
前記空調枕と前記接続筒が、室内エアダクトにより連通しており、
前記室内エアダクトの途中に、前記空調枕へのエアの供給を補助するダクト内ファンが介在していることを特徴とする。
【0037】
本態様によれば、チャンバーの備える下面板の縁部において下方に突出する接続筒が備えてあることにより、室内エアダクトをチャンバーに対してスムーズに取り付けることができる。また、室内エアダクトの途中に空調枕へのエアの供給を補助するダクト内ファンが介在していることにより、空調枕への十分なエア供給を図ることができる。
【0038】
また、本発明による避難所用テントユニットの他の態様において、前記空調枕は平面視矩形であり、
前記空調枕における利用者の後頭部が載置される上表面には、エアを吹出す複数の吹出孔を備えた帯状の吹出部が設けられており、
平面視において、前記吹出部は前記空調枕の縦長さの中央より上方に配設され、該吹出部の横長さは、前記後頭部の1.8倍乃至2.2倍の範囲にあることを特徴とする。
【0039】
本態様によれば、空調枕の備える帯状の吹出部が空調枕の縦長さの中央より上方に配設されていることにより、利用者の後頭部の上部をエア(冷気)にて冷やすことができ、眠りを促進することができる。また、吹出部の横長さが利用者の後頭部の1.8倍乃至2.2倍の範囲にあることにより、空調枕の上で利用者が寝返る等により横向きとなった際にも、頭部を吹出部の上に位置させることができる。
【0040】
また、本発明による避難所用テントの一態様は、
避難所用テントユニットを構成する、複数の避難所用テントであって、
各避難所用テントに対してそれぞれ室外分岐エアダクトが連通し、各室外分岐エアダクトが共通の主エアダクトに連通し、該主エアダクトが室外給気ファンに連通するようになっていることを特徴とする。
【0041】
本態様によれば、複数の避難所用テントに対して共通の室外給気ファンからエアが供給されるようになっていることにより、室外給気ファンの占有面積を抑制することができ、避難所用テントユニット全体の占有面積の抑制に寄与できる。尚、避難所用テントは、複数存在する形態の他にも、一つの避難所用テントが避難施設に設置される形態であってもよい。この形態では、一つの避難所用テントと一つの室外給気ファンが、主エアダクトと室外分岐エアダクトを介して接続される。
【0042】
また、本発明による避難所建屋の一態様は、
複数の避難所用テントを備えている、避難所建屋であって、
各避難所用テントに対してそれぞれ室外分岐エアダクトが連通し、各室外分岐エアダクトが共通の主エアダクトに連通し、該主エアダクトが室外給気ファンに連通していることを特徴とする。
【0043】
本態様によれば、複数の避難所用テントに対して共通の室外給気ファンからエアが供給されることにより、室外給気ファンの占有面積を抑制することができ、避難所用テントユニット全体の占有面積が抑制された避難所建屋を形成することができる。そのため、避難所用テントユニットの占有スペース以外のスペースを可及的に広げることができ、可及的に多数の避難者を収容することが可能になる。
【発明の効果】
【0044】
本発明による避難所用テントユニットと避難所用テント、及び避難所建屋によれば、避難施設における占有面積を可及的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】実施形態に係る避難所建屋の一例の内部と、実施形態に係る避難所用テントユニットと避難所用テントの一例の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る避難所用テントユニットと避難所用テントの一例を、主エアダクトの長手方向に沿って見た正面図である。
【
図3】実施形態に係る避難所用テントの一例の分解斜視図である。
【
図4】チャンバーと、室内エアダクトと、空調枕の一例の分解斜視図である。
【
図5】避難所用テントの室内側から天井を見た斜視図であって、天端シートの全面が光透過性になっている状態を示す図である。
【
図6】避難所用テントの室内側から天井を見た斜視図であって、天井シートの一部に天井室内シートが取り付けられている状態を示す図である。
【
図7】避難所用テントの室内にエアが給気されている状態を示す斜視図である。
【
図8】避難所用テントの室内から排気されている状態を示す斜視図である。
【
図9】避難所用テントの室内に配設されているベッドと空調枕の一例を示す斜視図である。
【
図10】避難所用テントの構成部材が複数の箱に梱包されている状態の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、実施形態に係る避難所用テントユニットと避難所用テント、及び避難所建屋の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0047】
[実施形態に係る避難所建屋と避難所用テントユニット]
はじめに、
図1及び
図2を参照して、実施形態に係る避難所建屋と避難所用テントユニットの一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る避難所建屋の一例の内部と、実施形態に係る避難所用テントユニットと避難所用テントの一例の外観を示す斜視図である。また、
図2は、実施形態に係る避難所用テントユニットと避難所用テントの一例を、主エアダクトの長手方向に沿って見た正面図である。
【0048】
避難所建屋100は、既存の体育館や公会堂、ホール等であり、災害時に一定期間避難施設として指定され、比較的多数の避難者の避難を可能とした建屋である。
【0049】
避難所建屋100の内部には、健康な避難者のための床スペース(図示せず)が確保される他に、感染症患者等を収容する複数(図示例は六つ)の避難所用テント70が設置される。
【0050】
各避難所用テント70には固有の室外分岐エアダクト83が連通し、各室外分岐エアダクト83は、共通の主エアダクト82に連通し、主エアダクト82が室外給気ファン81に連通することにより、避難所用テントユニット90が形成される。このように、避難所建屋100は、既存の体育館等が避難施設とされ、その内部に避難所用テントユニット90が設置された建屋である。
【0051】
図示例では、室外給気ファン81に対してトランス84(ここでは、アップトランス)が電気的に接続され、トランス84にて例えば100Vから200Vに昇圧された電圧が室外給気ファン81に印加される。図示例の室外給気ファン81は二系統の給気系統を備え、各給気系統にそれぞれ固有の主エアダクト82の一端が取り付けられている。
【0052】
各主エアダクト82から三本の室外分岐エアダクト83が分岐し、三室の避難所用テント70の天井上方にあるチャンバー31に対して、対応する室外分岐エアダクト83の一端が取り付けられている。
【0053】
室外給気ファン81から給気されたエアは、二本の主エアダクト82をZ1方向に流通し、各室外分岐エアダクト83をZ2方向に流通してチャンバー31に給気され、チャンバー31を介して避難所用テント70の室内に給気される。ここで、避難所建屋100に設置される避難所用テント70は、図示例以外の数であってもよく、室外給気ファン81から一本の主エアダクト82が延設し、一本の主エアダクト82から複数の室外分岐エアダクト83が分岐する形態であってもよい。
【0054】
室外給気ファン81は、通常のエアコン(エアーコンディショナー)と同様に、給気エアとして冷気と暖気を生成する冷暖房機能を有しているのが望ましく、季節や昼夜等の避難所建屋100内の温度や湿度に応じて、所望温度の冷気もしくは暖気に切り換えられるようになっている。また、室外給気ファン81は、その内部で例えば冷気を生成する際に生じる熱を排熱する室外機を機内に内蔵していてもよい。
【0055】
室外給気ファン81は、制御部(図示せず)を内蔵し、CPU(Central Processing Unit)、NVRAM(Non-Volatile RAM)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びHDD(Hard Disc Drive)等を有し(いずれも図示せず)、各部はバスを介してデータを送受信可能に接続されている。ROMには、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶されている。RAMは、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域として用いられる。CPUは、RAMにロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。HDDには、プログラムやプログラムが利用する各種のデータ等が記憶される。NVRAMには、各種の設定情報等が記憶される。
【0056】
例えば、温度センサや湿度センサ(いずれも図示せず)等からの計測情報に基づき、給気に好適な温度のエアを生成し、各避難所用テント70に給気するように構成されてもよい。
【0057】
また、トランス84には電工ドラム85が電気的に接続され、電工ドラム85から延設する電気配線86が各避難所用テント70の室内に延設し、電気配線86の端部に取り付けられているコンセントが室内に設置されるようになっている。
【0058】
[実施形態に係る避難所用テント]
次に、
図3乃至
図9を参照して、実施形態に係る避難所用テントの一例について説明する。ここで、
図3は、実施形態に係る避難所用テントの一例の分解斜視図であり、
図4は、チャンバーと、室内エアダクトと、空調枕の一例の分解斜視図である。また、
図5は、避難所用テントの室内側から天井を見た斜視図であって、天端シートの全面が光透過性になっている状態を示す図であり、
図6は、
図5に対応する図であって、天井シートの一部に天井室内シートが取り付けられている状態を示す図である。さらに、
図7は、避難所用テントの室内にエアが給気されている状態を示す斜視図であり、
図8は、避難所用テントの室内から排気されている状態を示す斜視図であり、
図9は、避難所用テントの室内に配設されているベッドと空調枕の一例を示す斜視図である。
【0059】
避難所用テント70は、複数の軸部材1により構成される床骨組み5と、複数の軸部材1により構成される天井骨組み6と、床骨組み5及び天井骨組み6を構成する軸部材1と、縦桟2(軸部材の一例)とにより構成される壁骨組み7とを有し、立方体状もしくは直方体状の外郭を備えている。軸部材1や縦桟2は、金属製で比較的小断面寸法(10mm乃至15mm×10mm乃至15mm)の角パイプ等により形成され、アルミニウム素材の角パイプが適用されることにより、軽量で搬送性や組み立て性が良好になる。
【0060】
各軸部材1はそれぞれ単独に存在し、軸部材1の端部同士を接続金具(図示せず)を介して組み付けることにより各骨組みを形成してもよい。また、その他、床骨組み5を構成する三本の軸部材1が丁番やスライドヒンジ等の回動金具(図示せず)を介して相互に接続され、回動金具を介して三本の軸部材1を平面視コの字状に展開させるようにしてもよい。天井骨組み6に関しても、回動金具を介して相互に接続される三本の軸部材1を平面視コの字状に展開した後、他の一本の軸部材1をコの字状の開口に配設することにより、図示例のような四角枠状の天井骨組み6が形成できる。
【0061】
床骨組み5の各隅角部下端には、ストッパー付きのキャスター1aが取り付けられており、避難所用テント70を床面上の所望位置に速やかに移動させ、所望位置に避難所用テント70を移動不可に設置することができる。
【0062】
平面視矩形枠状の天井骨組み6の内側には、梯子状の補強桁8が取り付けられている。ここで、「矩形」には正方形や長方形が含まれ、天井骨組み6の平面寸法としては、例えば2m×2mの正方形が例示できる。
【0063】
補強桁8は、二本の長手桟8aと、二本の長手桟8aを繋ぐ複数(図示例は四本)の短手桟8bとを有し、長手桟8aと短手桟8bは軸部材1と同様にアルミニウム素材で小断面の角パイプ等により形成される。
【0064】
また、
図3に示すように、補強桁8は、天井骨組み6を構成する四本の軸部材1のうち、補強桁8の長手方向に平行な一つの軸部材1に近接した位置に設置されている。補強桁8は、チャンバー31が載置される桁であり、チャンバー31には、
図4に示す各種のスイッチ36が設けられている。補強桁8が一つの軸部材1に近接した位置に設置され、従ってチャンバー31が天井骨組み6の一辺の近傍に存在することにより、テント70の利用者等は、テント70の外側からスイッチ36を操作することが可能になる(例えば、チャンバー31が天井骨組み6の中央にあると、利用者がスイッチ36に届かない)。
【0065】
天井骨組み6の上方から天井シート13がY1方向に被せられることにより、天井シート13は天井骨組み6と壁骨組み7の上方を被覆する。天井シート13は、平面視矩形で光透過性の透明もしくは半透明の天端シート11と、天端シート11の端辺から下方に垂下されている、無端状の上方目隠しシート12とを有する。ここで、光透過性の天端シート11は、透明もしくは半透明の樹脂シートにより形成され、シートの引張強度を高めるべく、シート内に複数の紐材が埋設されていてもよい。
【0066】
天井シート13が光透過性の天端シート11を備えていることにより、避難所建屋100の有する天井照明の光を避難所用テント70の室内に取り込むことが可能になる。すなわち、避難所用テント70は、固有の照明器具を必ずしも必要としない。また、天端シート11を介して外部から避難所用テント70の室内を視認できないことから、透明もしくは半透明の天端シート11を備えていながらも、室内の利用者のプライバシーは確保される。
【0067】
一方、上方目隠しシート12が、文字通りの目隠しシートであることから、上方目隠しシート12を介して避難所用テント70の外部から室内を視認することが抑止される。また、平面視矩形枠状の上方目隠しシート12の四つの隅角部が、壁骨組み7を構成する四本の縦桟2に沿ってそれぞれ被せられることにより、天井骨組み6の上方から天井シート13を被せた際に、天井シート13を横方向にずらすことなく、スムーズに天井シート13を設置することができる。
【0068】
上方目隠しシート12の室外面における下方には、上方目隠しシート12の全周に亘り、無端状の面ファスナー18が取り付けられている。この無端状の面ファスナー18は、帯状に連続する形態であってもよいし、途中に隙間を有して間欠的に連続する形態であってもよい。
【0069】
天端シート11において、補強桁8に対応する位置には、平面視矩形の第一開口14と第二開口15とが、相互に間隔を置いて開設されている。
【0070】
第一開口14は、直方体状もしくは立方体状のチャンバー31がY3方向に遊嵌される開口である。天端シート11の上面において、第一開口14の周囲には無端状のシール材16が取り付けられている。このシール材16は、ゴム等の樹脂や、マジックテープ(登録商標)等の面ファスナーにより形成される。
【0071】
チャンバー31の備える四つの側面にはそれぞれ、係止フランジ31aが張り出しており、各係止フランジ31aがシール材16の上に載置されることにより、チャンバー31とシール材16との間のシール構造が形成される。各係止フランジ31aは、補強桁8の長手桟8aと短手桟8bにより支持される。
【0072】
一方、第二開口15の周囲には、無端状の面ファスナー17が取り付けられている。第二開口15を閉塞する平面視矩形の閉塞シート19は、その下面における面ファスナー17に対応する位置に別途の面ファスナー20を備えており、第二開口15の上方からY4方向に閉塞シート19が取り付けられるようになっている。
【0073】
閉塞シート19には、機能別に異なる素材のシートが適用される。具体的には、
図7に示すように、室外分岐エアダクト83を介してZ2方向に流通するエアを、チャンバー31を介して避難所用テント70の室内にZ3方向に給気する場合や、供給も排気も行わない場合は、天端シート11と同様に、光透過性の透明もしくは半透明の樹脂シート等により形成されている閉塞シート19Aが適用される。
【0074】
一方、
図8に示すように、避難所用テント70の室内からチャンバー31を介してZ6方向に排気する場合は、通気性を有する閉塞シート19Bが適用される。通気性を有する閉塞シート19Bを介して室内に外気をZ7方向に取り込むことにより、排気の際の室内の過度な陰圧雰囲気を解消することができる。ここで、閉塞シート19Bは、チャンバー内ファン34(
図4参照)による排気性能を確保しながら、室内の過度な陰圧雰囲気を解消するべく、低い通気性能を備えた素材が好適であり、一例として不織布等が挙げられる。
【0075】
図3に戻り、壁骨組み7は、壁シート21により被覆される。壁シート21は出入り部を形成する出入りスリット23を備えており、上方の室内面には、壁シート21の全周に亘り、無端状の面ファスナー22が取り付けられている。この面ファスナー22も、面ファスナー18と同様に、帯状に連続する形態であってもよいし、途中に隙間を有して間欠的に連続する形態であってもよい。上方目隠しシート12の室外面にある無端状の面ファスナー18に対して、壁シート21の室内面にある無端状の面ファスナー22が外側からY2方向に接続されることにより、天井シート13と壁シート21が一体とされる。
【0076】
このように、面ファスナー18,22同士を接続することにより、双方を貼り合わせるのみで簡単に天井シート13と壁シート21の接続を行うことができる。例えば、面ファスナーに代わって通常のファスナーを適用すると、ファスナーの操作に手間がかかり、天井シートと壁シートの接続に時間がかかる。
【0077】
ここで、壁シート21は、外部から室内を視認できない目隠しシートである。また、上方目隠しシート12への取り付け性の観点から、壁シート21は二枚の分割シートに分かれており、片方ずつ上方目隠しシート12に取り付けるのが好ましい。
【0078】
壁シート21における出入りスリット23の近傍の左右にはそれぞれ、複数の面ファスナー24(第一面ファスナーの一例)が取り付けられており、出入りスリット23の端部から離れた位置(図示例は、出入りスリット23のある側面とは異なる側面)には、別途の面ファスナー25(第二面ファスナーの一例)が取り付けられている。
【0079】
出入りスリット23の左右にある、対応した面ファスナー24同士がY6方向に接続されることにより、出入り部が閉じられる。より詳細には、出入りスリット23の左右のうち、図示例では、正面左側の壁シート21の室外面の出入りスリット23の近傍において、出入りスリット23に沿う方向に複数の面ファスナー24aが取り付けられている。一方、正面右側の壁シート21の室内面の出入りスリット23の近傍において、出入りスリット23に沿う方向に複数の面ファスナー24bが取り付けられている。
【0080】
利用者が避難所用テント70から出て出入り部を閉じる際には、双方の面ファスナー24a、24b同士をY6方向に接続することにより、テント70の外側にいる利用者が容易に出入り部を閉じることができる。
【0081】
一方、正面左側の壁シート21の室外面の出入りスリット23の近傍においては、出入りスリット23から側方に張り出すようにして別途の複数の面ファスナー24cが取り付けられている。尚、面ファスナー24cは、正面左側の壁シート21の室内面に取り付けられていてもよい。一方、正面右側の壁シート21の室内面の出入りスリット23から若干離れた位置には、さらに別途の面ファスナー24dが取り付けられている。
【0082】
利用者が避難所用テント70の内部から出入り部を閉じる際には、双方の面ファスナー24c、24d同士をY7方向に接続することにより、テント70の内側にいる利用者が容易に出入り部を閉じることができる。
【0083】
また、出入り部を開放する際には、壁シート21の出入りスリット23の近傍にある最下端の面ファスナー24a、24bを、出入りスリット23のある側面とは別の側面にある面ファスナー25に対してY5方向に接続することにより、出入り部を可及的に広く開放することが可能になる。
【0084】
面ファスナー24同士、もしくは面ファスナー24,25を接続することにより、既述するように、双方を貼り合わせるのみで簡単に出入り部の開閉姿勢を保持することができる。
【0085】
壁骨組み7の天端にある天井骨組み6に対して天井シート13がY1方向に設置され、天井シート13に対して壁シート21がY2方向に接続され、さらに、天端シート11の第一開口14を閉塞するようにチャンバー31が設置されることにより、避難所用テント70が形成される。
【0086】
図4に示すように、チャンバー31は、四角筒状の側壁を有し、チャンバー31の内部にはフィルター32が設置されている。また、四つの側壁には、既に説明した係止フランジ31aが取り付けられている。ここで、フィルター32は、例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルターなどの高性能フィルターにより形成される。また、室外給気ファン81の吸込み口や吹出口には、例えば、粗塵フィルターからなるプレフィルタを設けておくことにより、高性能フィルターで構成されたフィルター32を長寿命化させることができる。
【0087】
また、チャンバー31の内部や、チャンバー31の吹出口もしくは吸込み口等において、公知の香り発生器や芳香剤を設けることにより、香りを付与したエアをテント70の室内に供給することができ、室内における快適性を向上させることができる。
【0088】
また、チャンバー31の内部等において消臭剤を設けることにより、防臭した空気をテント70の室内に供給することができ、テント70の室内において例えば長期避難生活中に発生する匂いを消臭することができる。
【0089】
また、チャンバー31の内部等において、二酸化塩素や過酸化水素などの殺菌性ガスを発生する装置を設けることにより、テント70の利用者が入れ替わる際に、殺菌性ガスをテント70の室内に供給して殺菌することができる。
【0090】
チャンバー31の四つの側壁のうちの一つの側壁には開口が開設され、側壁の外側にはフード設置金具33が取り付けられており、フード設置金具33の内部にはチャンバー内ファン34が取り付けられている。フード設置金具33の外側面には、複数の面ファスナー35が取り付けられている。
【0091】
フード設置金具33には、大径筒部と縮径筒部を備えたフード37の当該縮径筒部が嵌め込まれるようになっている。縮径筒部の端部には接合フランジ38があり、接合フランジ38の表面に面ファスナー39が取り付けられている。フード設置金具33に対してフード37をY9方向に嵌め込んだ際に、双方の面ファスナー35,39が接続されることにより、フード設置金具33に対してフード37が固定される。尚、フード37の縮径筒部の内側面にも別途の面ファスナーが取り付けられていてもよい。
【0092】
チャンバー31の四つの側壁のうちの他の一つの側壁には、複数のスイッチ36を備えるスイッチボックスが取り付けられている。スイッチ36は、チャンバー内ファン34を作動させて室内への給気を行う給気スイッチ36aと、チャンバー内ファン34を作動させて室外への排気を行う排気スイッチ36cと、給気と排気の双方を停止させる停止スイッチ36bが含まれる。
【0093】
チャンバー内ファン34は、
図7に示すように、室外給気ファン81によりチャンバー31へZ2方向に供給されたエアを、テント70の室内へZ3方向に供給する給気補助機能を有している。
【0094】
さらに、チャンバー内ファン34は、
図8に示すように、テント70の室内のエアを室外にZ6方向へ排気する排気機能を有している。
【0095】
利用者は、給気スイッチ36aと排気スイッチ36cを手動にて押すことにより、チャンバー内ファン34の有する給気機能と排気機能を得ることができる。尚、既述するように、室内への給気の際には、光透過性の透明もしくは半透明の樹脂シート等により形成されている閉塞シート19Aにて第二開口15を塞いだ後に、給気スイッチ36aを押す。一方、室外への排気の際には、通気性のある閉塞シート19Bにて第二開口15を塞いだ後に、排気スイッチ36cを押す。
【0096】
チャンバー31の下面には、複数の吹出吸込孔42が開設されている下面板41が取り付けられるようになっている。より具体的には、平面視矩形のチャンバー31の下面(フィルター32の外周)周縁の隅角部にボルト孔31bが開設され、同様に平面視矩形の下面板41の隅角部にもボルト孔41aが開設されている。
【0097】
チャンバー31の下面に対して下面板41をY8方向に移載し、対応するボルト孔41a,31bにボルト44をねじ込むことにより、チャンバー31と下面板41が取り付けられる。尚、実際の取り付けは、チャンバー31の下面を上方に向け、下面板41を上方から落とし込む方法で行われる。
【0098】
下面板41の縁部には、下方に突出する接続筒43が設けられている。接続筒43には、テント70の室内に配設される室内エアダクト45の一端がY10方向に嵌め込まれるようになっている。
【0099】
接続筒43の周囲には面ファスナー47が取り付けられており、室内エアダクト45の一端の内側にも面ファスナー(図示せず)が取り付けられている。接続筒43に室内エアダクト45をY11方向に嵌め込んだ際に、双方の面ファスナー同士が接続されることにより、接続筒43に対して室内エアダクト45が固定される。
【0100】
図5に示すように、補強桁8にチャンバー31が載置され、下面板41の接続筒43に固定されている室内エアダクト45は天井から垂下され、壁骨組み7を構成する縦桟2や床骨組み5を構成する軸部材1に対して、面ファスナー(図示せず)等で固定される。尚、ここで使用される面ファスナーは、避難所用テント70の構成部材である、電気配線86等をまとめて搬送用の段ボール箱に梱包する際に適用されていた面ファスナーが転用できる。
【0101】
室内エアダクト45は、床骨組み5を構成する各軸部材1に沿って配設され、その他端は、空調枕51の備えるダクト差し込み部52に差し込まれ、ダクト差し込み部52にある縛り紐53により固定される。
【0102】
図5に示すように、天井シート13の室内面の上方には、複数の面ファスナー61が取り付けられている。ここで、複数の面ファスナー61は、天井骨組み6に取り付けられていてもよい。天井シート13は一般に柔らかいことから、天井シート13に光不透過性の天井室内シート62を取り付ける場合、天井シート13が動いてしまう可能性がある。これに対して、天井骨組み6は剛性があることから、天井骨組み6に対して天井室内シート62を取り付ける場合に、天井骨組み6が動くことがなく、天井室内シート62の取り付け性が一層良好になる。また、天井骨組み6に対して天井室内シート62を取り付ける場合に、天井骨組み6が撓む恐れはない。尚、利用者が起きている際には、光透過性の天端シート11を介して、避難所建屋100の有する天井照明の光が室内に取り込まれる。
【0103】
一方、利用者が就寝する際には、
図6に示すように、天井シート13の室内面の少なくとも一部を室内側から被覆する、光不透過性の天井室内シート62を設置する。天井室内シート62は、その上面に面ファスナー63を備えており、天井シート13の備える複数の面ファスナー61に対して天井室内シート62の備える複数の面ファスナー63を接続することにより、天井シート13の室内面の少なくとも一部に対して天井室内シート62が固定される。
【0104】
就寝時に光不透過性の天井室内シート62が設置されることにより、採光による就寝阻害が抑制される。また、図示例のように、採光が就寝を阻害しない程度広さの天井室内シート62を適用することにより、天井室内シート62の設置が容易となる。ここで、天井室内シート62の平面寸法は、天端シート11の平面寸法の1/3乃至1/2程度に設定できる。尤も、天端シート11の全域をカバーする天井室内シートが適用されてもよい。
【0105】
図4に戻り、室内エアダクト45の途中位置には、空調枕51へのエアの供給を補助するダクト内ファン46が介在している。
図4に示すように、チャンバー内ファン34によりチャンバー31内に取り込まれたエアは、下面板41の備える多数の吹出吸込孔42を介して室内に給気されるとともに、接続筒43に取り付けられている室内エアダクト45を介して空調枕51に供給される。この際、吹出吸込孔42に比べて、室内エアダクト45を介した空調枕51へのエア供給の過程における圧損が相対的に大きいことから、室内エアダクト45への十分なエア供給を図ることは難しくなる。
【0106】
そこで、室内エアダクト45の途中にダクト内ファン46を介在させ、ダクト内ファン46を作動させてエア供給の補助を図ることにより、空調枕51への十分なエア供給が可能になる。
【0107】
図9に示すように、テント70の内部には、ベッド58が収容されている。ベッド58は、複数の箱55が併設されることにより形成されるベッド台56と、ベッド台56の上に載置されるマットレス57とを備えており、マットレス57の上に空調枕51が載置される。
【0108】
箱55は、テント70の各構成部材を収容して搬送する際に適用された箱が転用されるのが好ましい。また、箱55は、比較的剛性があり、梱包用の箱として一般に適用される段ボール箱が好ましい。
【0109】
図9に示すように、室内エアダクトを介してZ4方向に流通するエアは、空調枕51の備える吹出部54を介して上方へZ5方向に吹き出される。
【0110】
空調枕51は、筒状の樹脂材(ストロー材)が収容された布製のメッシュ袋が枕袋に収納されることにより形成され、頭部を支持可能な強度と通気性を備えている。ストロー材は、直径(外形)5mm、長さ7mm、厚み0.1mmの円筒状で、例えばポリプロピレンにより形成される。一方、布製のメッシュ袋において、メッシュの開口率を95%とし、開口の大きさを筒状のストロー材が通過しない程度まで大きくすることにより、より一層通気性が良好になる。そして、枕袋の上表面において、エアを吹出す複数の吹出孔を備えた帯状の吹出部54が設けられている。
【0111】
図4に戻り、空調枕51の平面視において、空調枕51の縦長さをt1,横長さをt2とした際に、帯状の吹出部54は、空調枕51の縦長さの中央(t1/2)より上方に配設される。また、吹出部54の横長さt3は、利用者の後頭部の1倍乃至2.2倍の範囲にあることが好ましい。さらに、吹出部54の横長さt3は、空調枕51の横長さt2の0.6倍乃至0.8倍の範囲にあることが好ましい。
【0112】
吹出部54の横長さt3が利用者の後頭部の1倍以上あれば、利用者が仰向けに寝た際にも後頭部を冷やすことができる。また、横長さt3が利用者の後頭部の1.8倍以上あれば、利用者が仰向けの状態から寝返りをうって横向きになった際にも頭部(特に側頭部)を吹出部54の上に位置させることができる。
【0113】
吹出部54の横長さt3が長過ぎると、利用者の頭部を冷やさない不要な領域が多く存在することになり、また、充分な(冷やして眠りを促進することができるだけの)風速が出難くなることから、吹出部54の横長さt3は、後頭部の2.2倍以下が望ましい。
【0114】
ここで、日本人頭部寸法データベース2001によれば、人の頭幅はおよそ140mm乃至170mm程度であることが分かっている。尚、上記データベースは次のURLを参照。「https://www.airc.aist.go.jp/dhrt/head/index.html」。
【0115】
上記数値範囲の1倍乃至2.2倍を吹出部54の横長さt3とすると、横長さt3は140mm乃至380mm程度になる。
【0116】
また、上記数値範囲の1.8倍乃至2.2倍を吹出部54の横長さt3とすると、横長さt3は250mm乃至380mm程度になる。
【0117】
平均的な頭幅を155mmとした場合、この1.8倍乃至2.2倍を吹出部54の横長さt3とすると、横長さt3は280mm乃至340mm程度になる。
【0118】
また、吹出部54から吹き出されるエアの風速としては、0.33m/sが快適な風速になる。
【0119】
このように、吹出部54が空調枕51の縦長さの中央(t1/2)より上方に配設されていることにより、利用者の後頭部の上部をエア(冷気)にて冷やすことができ、眠りを促進することができる。尚、後頭部の下部(耳よりも下の部分)を冷やすことにより、脳が覚醒して眠りを阻害することからも、吹出部54の設定位置は図示例の位置が好ましい。
【0120】
空調枕51の実施例としては、t1を340mm、t2を500mm、吹出部54の横長さt3を140mm乃至380mm、空調枕51の下辺からの吹出部54の下辺までの長さを180mmとした空調枕が挙げられる。
【0121】
図10は、避難所用テントの構成部材が複数の箱に梱包されている状態の一例を示す平面図である。
【0122】
避難施設には、ベッド台56に転用される複数の段ボール箱に、避難所用テントの各種構成部材が梱包され、避難施設に搬送されてくる。避難施設に搬送された段ボール箱から各種構成部材を取り出し、避難所用テント70を組み立てて所定位置に設置した後、梱包品が取り出されて残った段ボール箱がベッド台56として転用され、ベッド58が形成される。また、電気配線86等を巻いていた面ファスナーは、室内エアダクト45のテント室内における配設固定用のファスナーとして転用される。尚、図示を省略するが、段ボール箱をベッド台56として利用する際に当該段ボール箱を補強する複数の板も、段ボール箱に梱包され、搬送されてもよい。
【0123】
以上で説明した、避難所建屋100を構成する避難所用テントユニット90によれば、複数の避難所用テント70を確保しながら、避難所建屋100における避難所用テントユニット90の占有面積を可及的に抑制することができる。そのため、避難所建屋100における限られたスペースの中で、感染症患者等が収容される複数の避難所用テント70を確保しながらも、可及的に多くの健常な避難者を避難所建屋100内に収容することが可能になる。
【0124】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0125】
1:軸部材
1a:キャスター
2:軸部材(縦桟)
5:床骨組み
6:天井骨組み
7:壁骨組み
8:補強桁
8a:長手桟
8b:短手桟
11:天端シート
12:上方目隠しシート
13:天井シート
14:第一開口
15:第二開口
16:シール材
17,18:面ファスナー
19:閉塞シート
19A:光透過性の閉塞シート
19B:通気性の記閉塞シート
20:面ファスナー
21:壁シート
22:面ファスナー
23:出入りスリット
24,24a~24d:第一面ファスナー(面ファスナー)
25:第二面ファスナー(面ファスナー)
31:チャンバー
31a:係止フランジ
31b:ボルト孔
32:フィルター
33:フード設置金具
34:チャンバー内ファン
35:面ファスナー
36:スイッチ
36a:給気スイッチ
36b:停止スイッチ
36c:排気スイッチ
37:フード
38:接合フランジ
39:面ファスナー
41:下面板
42:吹出吸込孔
43:接続筒
44:ボルト
45:室内エアダクト
46:ダクト内ファン
47:面ファスナー
51:空調枕
52:ダクト差し込み部
53:縛り紐
54:吹出部
55:箱(段ボール箱)
56:ベッド台
57:マットレス
58:ベッド
61:面ファスナー
62:天井室内シート
63:面ファスナー
70:避難所用テント(テント)
81:室外給気ファン
82:主エアダクト
83:室外分岐エアダクト
84:トランス
85:電工ドラム
86:電気配線
90:避難所用テントユニット
100:避難所建屋