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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066979
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】減速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
F16H1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175616
(22)【出願日】2020-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】511122075
【氏名又は名称】テクノダイナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿尚
(72)【発明者】
【氏名】八木 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 裕則
【テーマコード(参考)】
3J009
【Fターム(参考)】
3J009DA17
3J009EA06
3J009EA20
3J009EB04
3J009ED11
(57)【要約】
【課題】コンパクトな減速機を提供することにある。
【解決手段】入力軸と、第1バレルカムと、第1出力テーブルと、中間軸と、第2カムと、第2出力テーブルと、を有する減速機であって、第1出力テーブルには、複数の第1カムフォロアが中間軸の回転中心位置を中心とした同心円状に設けられており、複数の第1カムフォロアのうち或る第1カムフォロアが上下方向における最も一方側の端に移動したときの、或る第1カムフォロアの中心位置を基準位置とした場合に、上下方向において、第1バレルカムの中心位置は、基準位置よりも他方側にシフトしており、前後方向において、第1バレルカムと第1カムフォロアが係合し始める係合開始位置と第1バレルカムと第1カムフォロアが係合し終わる係合終了位置との間の中心に位置する係合中心位置は、基準位置よりも前側若しくは後側にシフトしていることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に沿って設けられ、駆動部により駆動されて回転する入力軸と、
前記入力軸に接続され、前記入力軸の回転に伴って回転する第1バレルカムと、
前記第1バレルカムと係合する複数の第1カムフォロアを備え、前記第1バレルカムが回転することにより回転する第1出力テーブルと、
前記第1出力テーブルに接続され、前記第1出力テーブルの回転に伴って回転する左右方向に沿って設けられた中間軸と、
前記中間軸に接続され、前記中間軸の回転に伴って回転する第2カムと、
前記第2カムと係合する複数の第2カムフォロアを備え、前記第2カムが回転することにより回転する第2出力テーブルであって、回転軸が上下方向に沿う第2出力テーブルと、
を有する減速機であって、
前記第1出力テーブルには、複数の前記第1カムフォロアが前記中間軸の回転中心位置を中心とした同心円状に設けられており、
複数の前記第1カムフォロアのうち或る第1カムフォロワが前記上下方向における最も一方側の端に移動したときの、前記或る第1カムフォロアの中心位置を基準位置とした場合に、
前記上下方向において、前記第1バレルカムの中心位置は、前記基準位置よりも他方側にシフトしており、
前記前後方向において、前記第1バレルカムと前記第1カムフォロアが係合し始める係合開始位置と前記第1バレルカムと前記第1カムフォロアが係合し終わる係合終了位置との間の中心に位置する係合中心位置は、前記基準位置よりも前側若しくは後側にシフトしている、ことを特徴とする減速機。
【請求項2】
請求項1に記載の減速機であって、
前記中間軸の前記回転中心位置と前記基準位置との間隔を1とした場合に、
前記上下方向において、前記第1バレルカムの中心位置と前記基準位置との間隔は、0.2以下であり、
前記前後方向において、前記第1バレルカムの前記係合中心位置と前記基準位置との間隔は、0.2以下であることを特徴とする減速機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の減速機であって、
前記駆動部は、前記第1バレルカムよりも前記前後方向における後側に取り付け可能であり、
前記前後方向において、前記第1バレルカムの前記係合中心位置は、前記基準位置よりも後側にシフトしていることを特徴とする減速機。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の減速機であって、
前記上下方向において、前記第1バレルカムの前記係合中心位置は、前記中間軸の前記回転中心位置よりも上側に位置していることを特徴とする減速機。
【請求項5】
請求項4に記載の減速機であって、
複数の前記第2カムフォロアは、前記上下方向において、前記中間軸よりも上側で前記第2カムと係合しており、
前記上下方向において、前記入力軸の中心位置は、前記第2カムフォロアの中心位置よりも、上側に位置していることを特徴とする減速機。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の減速機であって、
前記駆動部を取り付けたときに、
前記上下方向において、前記第2出力テーブルの上端の方が、前記駆動部の上端よりも上側に位置することを特徴とする減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの回転を段階的に(例えば2段階)減速し、モータの回転数よりも小さい回転数で出力する減速機は良く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-149334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、2段階減速する減速機として、入力軸側にバレルカムを備え、出力軸側に複数のカムフォロアを有する出力テーブルを備え、バレルカムとカムフォロアとを係合させることで出力テーブルの回転を減速させる減速機が知られている。
【0005】
従来の減速機では、トルク伝達能力をなるべく大きくするために、出力テーブル(カムフォロア)の上端部又は下端部位置にて、バレルカムとカムフォロアとを係合させていた。
【0006】
そうすると、入力軸の位置が上端部若しくは下端部となるため、駆動部(モーター)の取り付け位置も上端部若しくは下端部にシフトさせる必要があり、減速機のコンパクト化が難しかった。
【0007】
一方、駆動部(モーター)の取り付け位置を上下方向の中心寄り(中心軸寄り)にすると、軸間距離の減少に伴いトルク伝達能力が低下してしまう。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンパクトな減速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための主たる発明は、前後方向に沿って設けられ、駆動部により駆動されて回転する入力軸と、前記入力軸に接続され、前記入力軸の回転に伴って回転する第1バレルカムと、前記第1バレルカムと係合する複数の第1カムフォロアを備え、前記第1バレルカムが回転することにより回転する第1出力テーブルと、前記第1出力テーブルに接続され、前記第1出力テーブルの回転に伴って回転する左右方向に沿って設けられた中間軸と、前記中間軸に接続され、前記中間軸の回転に伴って回転する第2カムと、前記第2カムと係合する複数の第2カムフォロアを備え、前記第2カムが回転することにより回転する第2出力テーブルであって、回転軸が上下方向に沿う第2出力テーブルと、を有する減速機であって、前記第1出力テーブルには、複数の前記第1カムフォロアが前記中間軸の回転中心位置を中心とした同心円状に設けられており、複数の前記第1カムフォロアのうち或る第1カムフォロワが前記上下方向における最も一方側の端に移動したときの、前記或る第1カムフォロアの中心位置を基準位置とした場合に、前記上下方向において、前記第1バレルカムの中心位置は、前記基準位置よりも他方側にシフトしており、前記前後方向において、前記第1バレルカムと前記第1カムフォロアが係合し始める係合開始位置と前記第1バレルカムと前記第1カムフォロアが係合し終わる係合終了位置との間の中心に位置する係合中心位置は、前記基準位置よりも前側若しくは後側にシフトしている、ことを特徴とする減速機である。
【0010】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンパクトな減速機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る減速機1の斜視図である。
図2図1の矢視Aの図であって、減速機1の正面図である。
図3図1の矢視Bの図であって、減速機1の右側面図である。
図4図2のC-C断面図であって、第1バレルカム14の断面図である。
図5図3のD-D断面図であって、第2カム24の断面図である。
図6】第1バレルカム14と第1カムフォロア20aの位置関係を説明するための図である。
図7】第1バレルカム14のシフト量を示した図である。
図8】第1バレルカム14と第1カムフォロア20aの係合開始位置Ks及び係合終了位置Kfを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0014】
前後方向に沿って設けられ、駆動部により駆動されて回転する入力軸と、前記入力軸に接続され、前記入力軸の回転に伴って回転する第1バレルカムと、前記第1バレルカムと係合する複数の第1カムフォロアを備え、前記第1バレルカムが回転することにより回転する第1出力テーブルと、前記第1出力テーブルに接続され、前記第1出力テーブルの回転に伴って回転する左右方向に沿って設けられた中間軸と、前記中間軸に接続され、前記中間軸の回転に伴って回転する第2カムと、前記第2カムと係合する複数の第2カムフォロアを備え、前記第2カムが回転することにより回転する第2出力テーブルであって、回転軸が上下方向に沿う第2出力テーブルと、を有する減速機であって、前記第1出力テーブルには、複数の前記第1カムフォロアが前記中間軸の回転中心位置を中心とした同心円状に設けられており、複数の前記第1カムフォロアのうち或る第1カムフォロワが前記上下方向における最も一方側の端に移動したときの、前記或る第1カムフォロアの中心位置を基準位置とした場合に、前記上下方向において、前記第1バレルカムの中心位置は、前記基準位置よりも他方側にシフトしており、前記前後方向において、前記第1バレルカムと前記第1カムフォロアが係合し始める係合開始位置と前記第1バレルカムと前記第1カムフォロアが係合し終わる係合終了位置との間の中心に位置する係合中心位置は、前記基準位置よりも前側若しくは後側にシフトしている、ことを特徴とする減速機。
【0015】
このような減速機によると、第1バレルカムの上下方向における中心を中間軸の方向(内側)にシフトすることにより、モータが上下に突出しにくくなり、減速機のコンパクト化が容易となる。さらに、第1バレルカムの軸方向の中心を前後いずれかの方向にシフトすることにより、トルク伝達能力の減少を抑制しつつ、第1バレルカムと第1カムフォロアを係合させることができる。つまり、第1バレルカムを上下方向及び前後方向の両方向(斜め方向)にシフトすることにより、トルク伝達能力を維持しつつ、モータを内側に移動させることができるので、コンパクトな減速機を提供することが可能となる。
【0016】
かかる減速機であって、前記前後方向において、前記第1バレルカムと前記第1カムフォロアが係合し始める係合開始位置と前記第1バレルカムと前記第1カムフォロアが係合し終わる係合終了位置との間の中心に位置する係合中心位置は、前記基準位置よりも前側若しくは後側にシフトしていることが望ましい。
【0017】
このような減速機によると、第1バレルカムと第1カムフォロアを係合させることができるので、コンパクトな減速機を提供することが可能となる。
【0018】
かかる減速機であって、前記中間軸の前記回転中心位置と前記基準位置との間隔を1とした場合に、前記上下方向において、前記第1バレルカムの中心位置と前記基準位置との間隔は、0.2以下であり、前記前後方向において、前記第1バレルカムの前記係合中心位置と前記基準位置との間隔は、0.2以下であることが望ましい。
【0019】
このような減速機によると、トルク伝達能力を維持しつつ、モータを内側に移動させることができる。
【0020】
かかる減速機であって、前記駆動部は、前記第1バレルカムよりも前記前後方向における後側に取り付け可能であり、前記前後方向において、前記第1バレルカムの前記係合中心位置は、前記基準位置よりも後側にシフトしていることが望ましい。
【0021】
このような減速機によると、前側にシフトする場合に比べて、モータ側の入力軸を短くすることができるので、モータ側の入力軸の剛性を高めることができる。
【0022】
かかる減速機であって、前記上下方向において、前記第1バレルカムの前記係合中心位置は、前記中間軸の前記回転中心位置よりも上側に位置していることが望ましい。
【0023】
このような減速機によると、下側で係合した場合に比べて、モータの下側への突出量を抑えることができる。これにより、減速機を設置するための脚の部分を下側に伸ばすことを抑制できるので、コンパクトな減速機を提供することが可能となる。
【0024】
かかる減速機であって、複数の前記第2カムフォロアは、前記上下方向において、前記中間軸よりも上側で前記第2カムと係合しており、前記上下方向において、前記入力軸の中心位置は、前記第2カムフォロアの中心位置よりも、上側に位置していることが望ましい。
【0025】
このような減速機によると、下側に位置する場合に比べて、中間軸と入力軸の軸間距離を大きくすることができるので、減速比を大きくすることができる。
【0026】
かかる減速機であって、前記駆動部を取り付けたときに、前記上下方向において、前記第2出力テーブルの上端の方が、前記駆動部の上端よりも上側に位置することが望ましい。
【0027】
このような減速機によると、第2出力テーブルの上面に大きな作業用テーブルを設置した場合に、モータとの干渉を抑制することができる。
【0028】
===減速機1について===
本実施形態に係る減速機1について、図を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る減速機1の斜視図であり、図2は、図1の矢視Aの図であって、減速機1の正面図であり、図3は、図1の矢視Bの図であって、減速機1の右側面図であり、図4は、図2のC-C断面図であって、第1バレルカム14の断面図であり、図5は、図3のD-D断面図であって、第2カム24の断面図である。なお、本実施の形態に係る図面においては、本発明を解りやすく説明するため適宜部材を省略している場合がある。
【0029】
本実施形態に係る減速機1は、図1図5に示すように、互いに交差する前後方向、左右方向、上下方向を有している。そして、図4における紙面の横方向を前後方向として紙面の左側(右側)を前(後)と呼び、紙面の縦方向を上下方向として紙面の上側(下側)を上(下)と呼ぶ。また、図5における紙面の横方向を左右方向として紙面の左側(右側)を左(右)と呼ぶ。
【0030】
減速機1には、動力源としてモータ10(駆動部に相当)が取り付け可能であり、減速機1は、モータ10の回転数より少ない回転数で第2出力テーブル30を回転させる装置である(回転数の減少は出力トルクの増大となる)。そして、モータ10の回転数を減速させる機構として、減速機1では、第1バレルカム14(入力側減速機構)と第2カム24(出力側減速機構)の2段階のカム機構を用いている。
【0031】
減速機1は、ハウジング3を有し、ハウジング3の内部には、図4図5に示すように、少なくとも入力軸12と、第1バレルカム14と、第1出力テーブル20と、中間軸22と、第2カム24と、が収容されている。
【0032】
モータ10は、ハウジング3の右側後方に設けられており、駆動軸が前後方向に沿うようにして設けられている。そして、モータ10の駆動軸は、図4に示すように、カップリング16によって入力軸12と連結されている。
【0033】
入力軸12は、前後方向に沿って設けられており、入力軸受け18によって回転可能に支持されている。そして、入力軸12の後側は、入力軸受け18よりもさらに後に延出しており、かかる延出部分がカップリング16によってモータ10の駆動軸と連結されている。つまり、入力軸12は、前後方向に沿って設けられ、モータ10により駆動されて回転する。
【0034】
また、入力軸12は、第1バレルカム14の前後方向における前後両端に設けられており、第1バレルカム14と入力軸12は一体的に回転する。つまり、第1バレルカム14は、入力軸12に接続され入力軸12の回転に伴って回転する。
【0035】
また、第1バレルカム14は、第1カム溝14aと第1カムリブ14bを有しており、螺旋状の第1カム溝14aは入力軸12の軸方向に沿って設けられている。そして、第1カムリブ14bに後述する第1出力テーブル20の第1カムフォロア20aを係合させることにより、第1バレルカム14の回転が第1出力テーブル20に伝達される。なお、入力軸12と第1バレルカム14は、別体に加工されたものを接合して一体化しても良いし、一体的に製造された軸状のものにカム溝を加工して製造してもよい。
【0036】
第1出力テーブル20は、円形状をしており、第1バレルカム14(第1カムリブ14b)と係合する複数の第1カムフォロア20aを備え、前後方向に沿った入力軸12周りを第1バレルカム14が回転することにより、左右方向に沿った中間軸22周りに回転する。
【0037】
第1カムフォロア20aは、第1カムリブ14bと係合する部位であり、円筒状の自転可能な回転体であって、自転軸方向が左右方向に沿うように設けられている。そして、中間軸22の回転中心位置22cを中心とした円に沿うように(同心円状に)等間隔に複数備えられている。つまり、第1出力テーブル20には、複数の第1カムフォロア20aが中間軸22の回転中心位置22cを中心とした同心円状に設けられている。本実施の形態においては、第1カムフォロア20aが等間隔に15個(24度毎)備えられている。
【0038】
また、第1カムフォロア20aは、上述したように、第1バレルカム14の第1カムリブ14bと係合しており、この係合している第1カムフォロア20aが第1カムリブ14bに案内されて回転移動する。
【0039】
具体的には、第1バレルカム14が前後方向の後側から見て時計回りに回転すると、係合している第1カムフォロア20aは、螺旋状の第1カムリブ14bに案内されて第1出力テーブル20の周方向に沿って前後方向における前側から後側へ移動する。すなわち、第1出力テーブル20が左右方向の右側から見て(図4に示す側から見て)時計回りに回転する。つまり、第1出力テーブル20は、第1バレルカム14と係合する複数の第1カムフォロア20aを備え、第1バレルカム14が回転することにより回転する。
【0040】
そして、第1出力テーブル20の回転を高精度とするため、すなわち、高精度な出力を実現するため、第1カムフォロア20aと第1カムリブ14bは、バックラッシ、ずれ、ガタツキ等が発生しないように、高い精度にて係合されている。
【0041】
中間軸22は、図5に示すように、左右方向に沿って設けられており、中間軸受け26によって回転可能に支持されている。そして、中間軸22の右側には第1出力テーブル20が連結されており、第1出力テーブル20と中間軸22は一体的に回転する。つまり、中間軸22は、第1出力テーブル20に接続され、第1出力テーブル20の回転に伴って回転する。
【0042】
また、中間軸22は、第2カム24の左右方向の左右両端に設けられており、第2カム24と中間軸22は一体的に回転する。つまり、第2カム24は、中間軸22に接続され中間軸22の回転に伴って回転する。
【0043】
第2カム24は、バレルカムであって、第2カム溝24aと第2カムリブ24bを有しており、螺旋状の第2カム溝24aは中間軸22の軸方向に沿って設けられている。そして、第2カムリブ24bに第2出力テーブル30の第2カムフォロア30aを係合させることにより、第2カム24の回転が第2出力テーブル30に伝達される。具体的な説明については、上述した第1カムリブ14bと第1カムフォロア20aと同じ説明となるので、ここでは省略する。
【0044】
第2出力テーブル30は、図1に示すように、中空部を有する円形状(ドーナッツ形状)の筒形であり、上下方向に沿って設けられている。つまり、第2出力テーブル30の回転軸は、上下方向に沿っており、第2出力テーブル受け32によって回転可能に支持されている。すなわち、第2出力テーブル30は、第2カム24(第2カムリブ24b)と係合する複数の第2カムフォロア30aを備え、第2カム24が回転することにより回転し、かかる回転軸は上下方向に沿っている。
【0045】
第2カムフォロア30aは、第2カムリブ24bと係合する部位であり、円筒状の自転可能な回転体であって、自転軸方向が上下方向に沿うように設けられている。そして、第2出力テーブル30の回転中心位置(回転軸の位置)を中心とした円に沿うように(同心円状に)等間隔に複数備えられている。本実施の形態においては、第2カムフォロア30aが等間隔に24個(15度毎)備えられている。
【0046】
<<<第1バレルカム14の配置について>>>
次に、本実施形態に係る第1バレルカム14の配置について図6を用いて説明する。図6は、第1バレルカム14と第1カムフォロア20aの位置関係を説明するための図である。
【0047】
なお、図6においては、第1カムフォロア20aの位置を固定するため、或る第1カムフォロア20auが最も上側に移動したときの状態を示している。そして、或る第1カムフォロア20auの上下方向における中心を中心位置20chとし、前後方向における中心を中心位置20cvとし、或る第1カムフォロア20auの中心位置20ch及び20cvを基準位置とする。
【0048】
本実施形態においては、図6に示すように、上下方向においては、第1バレルカム14の中心位置14chは基準位置(中心位置20ch)よりも間隔G2だけ下側に位置しており、第1バレルカム14が基準位置よりも下方向にシフトしている。
【0049】
つまり、複数の第1カムフォロア20aのうち或る第1カムフォロア20auが上下方向における最も一方側(上側)の端に移動したときの、或る第1カムフォロア20auの中心位置を基準位置とした場合に、上下方向において、第1バレルカム14の中心位置14chが基準位置(中心位置20ch)よりも他方側(下側)にシフトしている。
【0050】
そうすると、第1バレルカム14の上下方向における中心位置14chを中間軸22の回転中心位置22cの方向(内側)にシフトすることができるので、入力軸12を内側にシフトした位置に設けることができ、これに接続するモータ10を内側に設けることができる。つまり、モータ10が上下方向に突出することを抑制することができるので、コンパクトな減速機1を提供することが可能となる。
【0051】
なお、本実施形態においては、上下方向において、第1バレルカム14が第1カムフォロア20aと上側(回転中心位置22cより上側)で係合しているが、第1バレルカム14が第1カムフォロア20aと下側で係合しても構わない。
【0052】
また、本実施形態においては、前後方向において係合中心位置14cv(前後方向において、第1カムリブ14bと第1カムフォロア20aが係合し始める係合開始位置Ksと係合し終わる係合終了位置Kfとの中心位置のことである。図8参照。詳しくは後述する)が基準位置(中心位置20cv)よりも間隔G1だけ後側に位置している。
【0053】
つまり、前後方向において、第1バレルカム14と第1カムフォロア20aが係合し始める係合開始位置Ksと係合し終わる係合終了位置Kfとの間の係合中心位置14cvは、基準位置(中心位置20cv)よりも後側にシフトしている。
【0054】
そうすると、第1バレルカム14が斜め(後方且つ下方)にシフトして設けられることとなるので、第1カムフォロア20aの配置径(第1カムフォロア20aと回転中心位置22cの間隔を大きく変えることなく、第1バレルカム14と第1カムフォロア20aを係合させることができる。換言すると、第1カムフォロア20aの配置径が大きく変わらないので、トルク伝達能力の減少を抑制しつつ、第1バレルカム14と第1カムフォロア20aを係合させることができる。
【0055】
なお、第1バレルカム14を斜めにシフトして配置する場合、後方且つ下方の斜めにシフトする場合に限るものではなく、例えば、前方且つ下方であっても構わないし、下側で係合して後方且つ上方にシフトしてもよい。
【0056】
<第1バレルカム14のシフト量の上限について>
次に、第1バレルカム14の上下方向及び前後方向へのシフト量(間隔G1及び間隔G2)の上限について説明する。図7は、第1バレルカム14のシフト量を示した図であり、斜め方向にシフトする際の上限値を示している。また、比較例として、上下方向のみにシフトさせた結果も示している。なお、かかる結果(シフト量の上限)は、カム解析結果に基づいており、斜め方向にシフトさせた際に変化する力の方向等からのトルク伝達能力の低減、第1カムフォロア20aへのダメージの増大等を解析し、かかる解析結果に基づいて決定している。
【0057】
また、図7に示す間隔G1、G2の数値は、第1カムフォロア20aの配置半径(中間軸22の回転中心位置22cと第1カムフォロア20aの中心位置の間隔。本実施形態では57.5mm)を1.0とした場合に、間隔G1、G2がいくらに相当するかを表した数値である。また、トルク伝達能力の数値については、従来例を1.0とし、上下方向のみ又は斜め方向にシフトした場合に、それぞれのトルク伝達能力がいくらに相当するかを表した数値である。
【0058】
図7に示すように、間隔G2(上下シフト量)の上限は0.2(本実施形態では11mm)であり、間隔G1(前後シフト量)の上限は0.2(本実施形態では11mm)である。つまり、中間軸22の回転中心位置22cと基準位置との間隔を1とした場合に、上下方向において、第1バレルカム14の中心位置14chと基準位置(中心位置20ch)との間隔G2は、0.2以下であり、前後方向において、第1バレルカム14の係合中心位置14cvと基準位置(中心位置20cv)との間隔G1は、0.2以下である。
【0059】
次に、斜めにシフトした場合のトルク伝達能力を従来例(1.0)と比較すると、トルク伝達能力は1.0と同じである。つまり、第1バレルカム14の上下方向のシフト量を0.2以下、前後方向のシフト量を0.2以下とすることにより、トルク伝達能力を維持しつつ、モータを内側に移動させることができる。
【0060】
なお、上下方向に0.2(11mm)シフトさせ、前後方向にシフト無し(0mm)とした場合、第1カムフォロア20aの配置径を小さくしなければ第1バレルカム14と第1カムフォロア20aを係合させることが難しいので、トルク伝達能力は0.8となり、斜めにシフトさせた場合の1.0に比べて低下する。
【0061】
<<<第1バレルカム14の係合開始位置Ks及び係合終了位置Kfについて>>>
次に、第1カムリブ14bと第1カムフォロア20aの係合開始位置Ks及び係合終了位置Kfについて説明する。図8A及び図8Bは、第1バレルカム14と第1カムフォロア20aの係合開始位置Ks及び係合終了位置Kfを示した図である。図8Aが係合開始位置Ksを示し、図8Bが係合終了位置Kfを示している。
【0062】
本実施形態では、第1出力テーブル20の回転方向において互いに隣り合う2つの第1カムフォロア20a,20aの間に第1カムリブ14bが挟み込まれることによって、第1カムリブ14bと第1カムフォロア20aとが係合する。
【0063】
先ず、図8Aにおいて、第1バレルカム14の前後方向の最も前側に位置する第1カムフォロア20a1と、該第1カムフォロア20a1の後ろ側に隣り合う第1カムフォロア20a2とによって、斜線で示された第1カムリブ14bが挟み込まれることによって、係合が開始される。この場合、斜線で示された第1カムリブ14bと第1カムフォロア20a1とが最初に接触する位置Ksが係合開始位置となる。すなわち、係合開始位置Ksは、第1カムリブ14bと第1カムフォロア20aとが接触する位置のうち、前後方向において最も前側の位置である。
【0064】
図8Aの状態から第1バレルカム14が回転すると、第1カムフォロア20a1及び20a2は、第1カムリブ14bを挟み込んだ状態で第1カムリブ14bに案内されながら前後方向の後側に移動する(第1出力テーブル20の回転方向に沿って回転する)。そして、図8Bにおいて、第1カムフォロア20a1´及び第1カムフォロア20a2´の位置に到達すると係合が終了し、その後、第1カムフォロア20a1´及び第1カムフォロア20a2´は第1カムリブ14bから離脱する。この場合、斜線で示された第1カムリブ14bと第1カムフォロア20a2´とが最後に接触する位置Kfが係合終了位置となる。すなわち、係合終了位置Kfは、第1カムリブ14bと第1カムフォロア20aとが接触する位置のうち、前後方向において最も後側の位置である。
【0065】
なお、本実施形態に係る第1バレルカム14は、図8A及び図8Bに示すように、前端から後端まで連続して第1カムリブ14bが設けられているので、係合開始位置Ksと係合終了位置Kfとの間の中心に位置する係合中心位置cvは、第1バレルカム14の前後方向におけるほぼ中央の位置となる。
【0066】
<<<部品の位置関係とその有効性について>>>
次に、本実施形態における部品の位置関係とその有効性について説明する。部品の位置関係として、第1バレルカム14と第1カムフォロア20aが係合する位置と中間軸22の回転中心位置22cの位置関係、入力軸12と第2カムフォロア30aの位置関係、及び第2出力テーブル30とモータ10の位置関係を説明する。
【0067】
第1バレルカム14と第1カムフォロア20aが係合する位置と中間軸22の回転中心位置22cの位置関係として、上下方向の位置関係を見ると、図4に示すように、第1バレルカム14と第1カムフォロア20aが係合する位置は、中間軸22の回転中心位置22cの上側に位置している。つまり、上下方向において、第1バレルカム14の係合中心位置は、中間軸22の回転中心位置22cよりも上側に位置している。
【0068】
そうすると、第1バレルカム14が中間軸22の回転中心位置22cよりも下側で係合した場合に比べて、モータ10の下側への突出量を抑えることができる。これにより、減速機1を設置するための脚の部分を下側に伸ばすことを抑制できるので、コンパクトな減速機1を提供することが可能となる。
【0069】
次に、前後方向の位置関係を見ると、図4に示すように、第1バレルカム14の前後方向における中心が中間軸22の回転中心位置22cの後側に位置している。そして、上述したように、モータ10は第1バレルカム14の後側に取り付けられる。つまり、モータ10は、第1バレルカム14よりも前後方向における後側に取り付け可能であり、前後方向において、第1バレルカム14の係合中心位置14cvは、基準位置(中心位置20cv)よりも後側にシフトしている。
【0070】
そうすると、第1バレルカム14を前側にシフトする場合に比べて、モータ側(後側)の入力軸12を短くすることができるので、モータ側(後側)の入力軸12の剛性を高めることができる。
【0071】
入力軸12と第2カムフォロア30aの位置関係として、上下方向における入力軸12の中心位置12cと第2カムフォロア30aの中心位置30acの位置関係を見てみると、図5に示すように、入力軸12の中心位置12cの方が上側に位置している。そして、第2カム24はバレルカムなので、第2カムフォロア30aは、中間軸22よりも上側で第2カム24と係合している。つまり、複数の第2カムフォロア30aは、上下方向において、中間軸22よりも上側で第2カム24と係合しており、上下方向において、入力軸12の中心位置12cは、第2カムフォロア30aの中心位置30acよりも、上側に位置している。
【0072】
そうすると、入力軸12の中心位置12cが第2カムフォロア30aの中心位置30acよりも下側に位置する場合に比べて、中間軸22と入力軸12の軸間距離を大きくすることができるので、減速比を大きくすることができる。
【0073】
第2出力テーブル30とモータ10の位置関係として、上下方向における、第2出力テーブル30の上端30uとモータ10の上端10uの位置関係をみると、図4に示すように、第2出力テーブル30の上端30uの方が上側に位置する。つまり、上下方向において、第2出力テーブル30の上端30uの方が、モータ10の上端10uよりも上側に位置する。
【0074】
そうすると、第2出力テーブル30の上面に大きな作業用テーブル等を設置した場合に、モータ10との干渉を抑制することができる。
【0075】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることはもちろんである。
【0076】
また、上記の実施形態においては、第2カム24がバレルカムであったがこれに限るものではなく、例えば、ローラギヤカムであってもよい。
【0077】
また、上記の実施形態においては、第1カムフォロア20aが15個、第2カムフォロア30aが24個であったが、個数についてはこれに限定されるものではない。
【0078】
また、上記の実施形態においては、第1バレルカム14は、前側が係合開始位置Ks、後側が係合終了位置Kfであったが、これに限るものではなく、例えば、第1バレルカム14が逆回転した場合には、後側が係合開始位置Ks、前側が係合終了位置Kfとなる。
【符号の説明】
【0079】
1 減速機、3 ハウジング、10 モータ(駆動部)、10u 上端、12 入力軸、
12c 中心位置、14 第1バレルカム、14a 第1カム溝、14b 第1カムリブ
14ch 中心位置、14cv 係合中心位置、16 カップリング、
18 入力軸受け、20 第1出力テーブル、20a 第1カムフォロア、
20au 或る第1カムフォロア、20ch 中心位置(基準位置)、
20a1 前側第1カムフォロア、20a2 後側第1カムフォロア、
20cv 中心位置(基準位置)、22 中間軸、22c 回転中心位置、
24 第2カム、24a 第2カム溝、24b 第2カムリブ、
26 中間軸受け、30 第2出力テーブル、
30u 上端、30a 第2カムフォロア、30ac 中心位置、
32 第2出力テーブル受け、G1 間隔、G2 間隔、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8