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特開2022-66984Li2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラス及びLi2O-Al2O3-SiO2系結晶性ガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022066984
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】Li2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラス及びLi2O-Al2O3-SiO2系結晶性ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/12 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
C03C10/12
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175622
(22)【出願日】2020-10-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】502295490
【氏名又は名称】湖州大享玻璃制品有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】503267973
【氏名又は名称】大享容器工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】許 國銓
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA11
4G062BB01
4G062DA06
4G062DB04
4G062DC01
4G062DD02
4G062DD03
4G062DE02
4G062DE03
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4G062EE01
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4G062KK10
4G062MM01
4G062MM27
4G062NN29
4G062NN33
4G062QQ09
4G062QQ10
(57)【要約】
【課題】リチウムを含有する原料の使用量を減らしても衝撃強度と熱衝撃強度に優れ且つ残留気泡が少ないLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを提供する。
【解決手段】LiO-Al-SiO系結晶化ガラス及びLiO-Al-SiO系結晶性ガラスは、質量百分率で、SiO 60.0~70.0%、Al 15.0~25.0%、LiO 1.0~6.0%、TiO 1.0~4.0%、ZrO 0.5~3.0%、MnO 0.1~3.0%、NaO 0.1~2.0%、KO 0.1~2.0%、P 0.1~2.0%、MgO 0.1~1.5%、ZnO 0.1~3.0%及びBaO 0.1~2.5%を含み、Asが0.1%未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量百分率で、
SiO 60.0~70.0%、
Al 15.0~25.0%、
LiO 1.0~6.0%、
TiO 1.0~4.0%、
ZrO 0.5~3.0%、
MnO 0.1~3.0%、
NaO 0.1~2.0%、
O 0.1~2.0%、
0.1~2.0%、
MgO 0.1~1.5%、
ZnO 0.1~3.0%及び
BaO 0.1~2.5%を含み、
Asが0.1%未満である、
LiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項2】
質量百分率で、As及びSbが合計0.2%未満である、請求項1に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項3】
F 0.1~1.0%をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項4】
、CoO、Cr、Fe及びNiOからなる群から選ばれる少なくとも1種の着色剤をさらに含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項5】
主結晶としてβ-石英固溶体又はβ-スポジュメン固溶体を有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項6】
質量百分率で、
SiO 60.0~70.0%、
Al 15.0~25.0%、
LiO 1.0~6.0%、
TiO 1.0~4.0%、
ZrO 0.5~3.0%、
MnO 0.1~3.0%、
NaO 0.1~2.0%、
O 0.1~2.0%、
0.1~2.0%、
MgO 0.1~1.5%、
ZnO 0.1~3.0%及び
BaO 0.1~2.5%を含み、
Asが0.1%未満である、
LiO-Al-SiO系結晶性ガラス。
【請求項7】
質量百分率で、As及びSbが合計0.2%未満である、請求項6に記載のLiO-Al-SiO系結晶性ガラス。
【請求項8】
F 0.1~1.0%をさらに含む、請求項6又は請求項7に記載のLiO-Al-SiO系結晶性ガラス。
【請求項9】
、CoO、Cr、Fe及びNiOからなる群から選ばれる少なくとも1種の着色剤をさらに含む、請求項6~請求項8のいずれか1項に記載のLiO-Al-SiO系結晶性ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、LiO-Al-SiO系結晶化ガラス及びLiO-Al-SiO系結晶性ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
石油ストーブ、薪ストーブ及びその他のストーブの前面窓、カラーフィルター及びイメージセンサー等の電子製品用基板、電子部品焼成用セッター、電子レンジ用棚板、電磁調理器用トッププレート、防火戸用窓ガラス等の材料として、LiO-Al-SiO系の低膨張な結晶化ガラスが用いられている。例えば、特公昭39-21049号公報、特公昭40-20182号公報、特開平1-308845号公報、特開平6-329439号公報、特開平9-188538号公報、特開2001-48582号公報、特開2001-48583号公報には、主結晶としてβ-石英固溶体又はβ-スポジュメン固溶体を析出してなるLiO-Al-SiO系結晶化ガラスが開示されている。
【0003】
β-石英固溶体又はβ-スポジュメン固溶体を析出してなるLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、熱膨張係数が低く機械的強度が高く、優れた熱的特性を有している。また、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化工程における熱処理条件を変更することによって析出結晶を変化させることができるので、同一組成の原ガラス(つまり、結晶性ガラス)から、透明な結晶化ガラスと不透明な結晶化ガラスの両方を製造することが可能であり、用途に応じて作り分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭39-21049号公報
【特許文献2】特公昭40-20182号公報
【特許文献3】特開平1-308845号公報
【特許文献4】特開平6-329439号公報
【特許文献5】特開平9-188538号公報
【特許文献6】特開2001-48582号公報
【特許文献7】特開2001-48583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(1)近年、車の電動化が加速し、リチウムイオン二次電池の需要が急激に拡大している。それに伴い、リチウムイオン二次電池の正極材料の原料である炭酸リチウムと、炭酸リチウムの原料であるリチウムを含有する鉱物(例えば、リチア輝石、葉長石、リチア雲母など)の値段がどんどん高くなっている。
一方で、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスを製造する際に、結晶を構成する成分を得るために、リチア輝石(LiAlSi)、葉長石(LiAlSi10)、リチア雲母(K(Li,Al)(AlSi10)(OH,F))などのリチウムを含有する鉱物、又は炭酸リチウムを大量に使っている。LiO-Al-SiO系結晶化ガラスの製造コストを削減するためには、リチウムを含有する原料の使用量を減らすことが好ましい。しかし、リチウムを含有する原料の使用量を減らすと、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスの結晶成分が少なくなってしまい、結晶の形成が難しくなって、従来と同じ結晶化熱処理のヒーティングカーブで処理した結晶化ガラスの結晶量が比較的少なってしまう。結晶化ガラスは、一般的には、結晶量の減少に従って衝撃強度と熱衝撃強度が弱くなる。
【0006】
(2)従来、As、Sbなどの多価イオン酸化物が、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスの清澄剤として使われてきた。これらの清澄剤は一般的にはNaNO又はKNOと併用される。As、Sbなどの清澄剤は、NaNO又はKNOが比較的低温で分解して放出する酸素をいったん捕まえて、捕まえた酸素を高温に至って放ち、それによって発生する酸素ガスがガラスの清澄に有効に作用する。また、As、Sbなどの清澄剤の一部も高温に至って気化するので、ガラスの清澄に有効に作用する。ただし、NaNO及びKNOを使わなければ、As、Sbなどの清澄剤の効果は低いものである。
上記に説明した機序によって、As、Sbなどの清澄剤は、NaNO又はKNOと一緒にガラス原料に使用したとき有効な清澄剤として作用する。しかし、As及びSbは、気化によって環境を汚染する。環境汚染を抑制するために熱処理温度を比較的低くしてAs及びSbの気化を抑えた場合、As又はSbが残留したガラスは欧州連合のREACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)に不適合であり、欧州連合域内では販売できない。また、NaNO及びKNOはそれぞれ化学反応し、NaOとKOとしてガラスに残る。NaO及びKOの含有量が多いほど結晶化ガラスの衝撃強度が弱くなるし、熱膨張係数が大きくなって熱衝撃強度が弱くなる。
【0007】
本開示の実施形態は、上記(1)及び(2)の状況のもとになされた。
本開示は、リチウムを含有する原料の使用量を減らしても衝撃強度と熱衝撃強度に優れ且つ残留気泡が少ないLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が種々の実験を行った結果、MnOを含有することにより、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスの機械的強度が高まり、衝撃強度と熱衝撃強度に優れることを見出した。さらに、驚くべきことに、As及びSbの使用量を低減しても、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおける気泡の残留を抑制できることを見出した。
【0009】
本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス及びLiO-Al-SiO系結晶性ガラスは、質量百分率で、SiO 60.0~70.0%、Al 15.0~25.0%、LiO 1.0~6.0%、TiO 1.0~4.0%、ZrO 0.5~3.0%、MnO 0.1~3.0%、NaO 0.1~2.0%、KO 0.1~2.0%、P 0.1~2.0%、MgO 0.1~1.5%、ZnO 0.1~3.0%及びBaO 0.1~2.5%を含み、Asが0.1%未満である。
【0010】
本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス及びLiO-Al-SiO系結晶性ガラスの実施形態の一例は、質量百分率で、SiO 60.0~70.0%、Al 15.0~25.0%、LiO 1.0~6.0%、TiO 1.0~4.0%、ZrO 0.5~3.0%、MnO 0.1~3.0%、NaO 0.1~2.0%、KO 0.1~2.0%、P 0.1~2.0%、MgO 0.1~1.5%、ZnO 0.1~3.0%及びBaO 0.1~2.5%を含み、Asが0.1%未満であり、Sbが0.1%未満である。
【0011】
本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス及びLiO-Al-SiO系結晶性ガラスの実施形態の一例は、質量百分率で、As及びSbが合計0.2%未満である。
【0012】
本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス及びLiO-Al-SiO系結晶性ガラスの実施形態の一例は、F 0.1~1.0%をさらに含む。
【0013】
本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス及びLiO-Al-SiO系結晶性ガラスの実施形態の一例は、V、CoO、Cr、Fe及びNiOからなる群から選ばれる少なくとも1種の着色剤をさらに含む。
【0014】
本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、主結晶としてβ-石英固溶体又はβ-スポジュメン固溶体を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、リチウムを含有する原料の使用量を減らしても衝撃強度と熱衝撃強度に優れ且つ残留気泡が少ないLiO-Al-SiO系結晶化ガラスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0017】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス及びLiO-Al-SiO系結晶性ガラスについて、その組成範囲を特定した理由を以下に述べる。
【0019】
SiOはガラスのネットワークフォーマーであるとともに結晶を構成する成分であるところ、60.0%より少ないとガラスの熱膨張係数が高くなるとともに機械的強度が低くなり、70.0%より多いとガラスの溶融が困難となって泡や失透物等の欠陥が発生することがある。
【0020】
Alは結晶を構成する成分であるところ、15.0%より少ないとガラスの失透性が強くなるとともに化学耐久性が低下し、25.0%より多いと溶融時の粘性が高くなり過ぎて均一なガラスが得にくくなる。
【0021】
LiOは結晶を構成する成分であるところ、1.0%より少ないと所望の結晶が析出しにくくなるとともにガラスの溶融性が低下する。一方、6.0%より多いとガラスの失透性が強くなり、成形が困難になる。
【0022】
結晶を構成する成分であるSiOとAlとLiOとの総量は、リチウムを含有する原料の使用量を減らす観点からは、90%以下が好ましく、88%以下がより好ましく、86%以下が更に好ましく、結晶化ガラスが衝撃強度と熱衝撃強度とに優れる観点からは、80%以上が好ましく、82%以上がより好ましく、84%以上が更に好ましい。
【0023】
TiOは核形成剤として作用するところ、1.0%より少ないと結晶化を促進する効果が得られず、所望の結晶が得にくくなり、4.0%より多いと液相温度が高くなり、成形作業が困難になる。また、4.0%より多いと、透明結晶化ガラスを製造する場合、ガラスが濃褐色に着色して透明性が損なわれる。
【0024】
ZrOは核形成剤として作用するところ、0.5%より少ないと結晶化を促進する効果が得られず、所望の結晶が得にくくなり、3.0%より多いとZrOの未溶融物が生じ、ガラス中に失透物が発生する。
【0025】
MnOは結晶化を促進する効果があるところ、0.1%より少ないと結晶化を促進する効果が得られず、所望の結晶が得にくくなり、結晶化ガラスの衝撃強度と熱衝撃強度とを高める効果が得られない。加えて、本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、MnOに残留気泡を低減する効果が認められた。MnOの含有量は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは0.8%以上であり、更に好ましくは1.0%以上であり、更に好ましくは1.5%以上である。また、MnOは着色剤として作用するので、MnOを使用することにより、高価なVとCoOの使用量を少なくすることができる。一方、MnOが3.0%より多いとガラスの失透性が強くなり、成形が困難になる。
【0026】
NaOはガラスの溶融性を向上させる効果があるところ、0.1%より少ないとその効果が得られず、2.0%より多いとガラスの熱膨張係数及び誘電損失が大きくなる。また、2.0%より多いと衝撃強度及び化学耐久性が低下する。
【0027】
Oはガラスの溶融性を向上させる効果があるところ、0.1%より少ないとその効果が得られず、2.0%より多いとガラスの熱膨張係数及び誘電損失が大きくなる。また、2.0%より多いと衝撃強度及び化学耐久性が低下する。
【0028】
はZrOの難溶融性を改善する効果があるところ、0.1%より少ないとその効果が得られず、2.0%より多いとガラスが分相しやすくなって均一なガラスが得られない。また、2.0%より多いと結晶量が多くなって透明な結晶化ガラスが得にくくなる。
【0029】
MgOはガラスの溶融性を向上させ、泡欠陥の発生を防止する成分であるところ、0.1%より少ないとその効果が得られず、泡が発生しやすくなる。一方、1.5%より多いとガラスの熱膨張係数が大きくなって熱的特性が劣る。また、透明結晶化ガラスを製造する場合、TiOの存在によってガラスが黄色く着色されることがあるが、MgOが1.5%より多いと着色が濃くなって透明性が損なわれる。
【0030】
ZnOはガラスの溶融性を向上させ、泡欠陥の発生を防止する成分であるところ、0.1%より少ないとその効果が得られず、泡が発生しやすくなる。一方、3.0%より多いとガラスの誘電損失が大きくなって電子レンジに使用するとホットスポットが発生することがある。また、透明結晶化ガラスを製造する場合、TiOの存在によってガラスが黄色く着色されることがあるが、ZnOが3.0%より多いと着色が濃くなって透明性が損なわれる。
【0031】
BaOはガラスの溶融性を向上させ、泡欠陥の発生を防止する成分であるところ、0.1%より少ないとその効果が得られず、泡が発生しやすくなる。また、0.1%より少ないと液相温度が高くなり、成形作業が困難になる。一方、2.5%より多いとガラスの熱膨張係数が大きくなって熱的特性が劣る。また、2.5%より多いとガラスの誘電損失が大きくなる。
【0032】
Asの含有量は、環境負荷の観点から少ないほど好ましい。Asの含有量は、0.1%未満であり、0%が特に好ましい。
Asは従来、結晶化ガラスの清澄剤として使われているが、本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、驚くべきことに、Asの使用量が少ない又は使用しない場合でも、残留気泡がほとんどなかった。残留気泡が少ないことによって、結晶化ガラスの歩留まり率が向上し、また、結晶化ガラスの衝撃強度及び熱衝撃強度が高くなる。
結晶化ガラスの清澄剤としてAsを使う場合、熱処理温度が比較的高温でないと清澄効果が低いが、結晶化ガラスの清澄剤としてAsを使わなければ、熱処理温度を比較的高温にする必要がなくなり、製造コストを削減する点でも有利である。
【0033】
Sbの含有量は、環境負荷の観点から少ないほど好ましい。Sbの含有量は、0.1%未満が好ましく、0%が特に好ましい。
Sbは従来、結晶化ガラスの清澄剤として使われているが、本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、驚くべきことに、Sbの使用量が少ない又は使用しない場合でも、残留気泡がほとんどなかった。残留気泡が少ないことによって、結晶化ガラスの歩留まり率が向上し、また、結晶化ガラスの衝撃強度及び熱衝撃強度が高くなる。
結晶化ガラスの清澄剤としてSbを使う場合、熱処理温度が比較的高温でないと清澄効果が低いが、結晶化ガラスの清澄剤としてSbを使わなければ、熱処理温度を比較的高温にする必要がなくなり、製造コストを削減する点でも有利である。
【0034】
As及びSbの合計量は、0.2%未満が好ましく、0.1%未満がより好ましく、0%が特に好ましい。
【0035】
Fはガラスの溶融性を向上させる効果がある。本開示の結晶化ガラス及び結晶性ガラスがFを含有する場合、0.1~1.0%が好ましい。0.1%以上であるとその効果が得られ、1.0%以下であると溶融炉に対する侵食を抑えられる。
【0036】
、CoO、Cr、Fe及びNiOは着色剤として作用する。これらを使用する場合、総量0.1~3.0%が好ましい。総量が0.1%以上であると着色効果が得られやすく、総量が3.0%以下であるとコストを抑えられる。
【0037】
本開示のLiO-Al-SiO系結晶性ガラスは、ガラス原料を調合し、ガラス原料を溶融して溶融ガラスを得て、溶融ガラスを成形することで製造できる。
本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、本開示のLiO-Al-SiO系結晶性ガラスを結晶化熱処理することで製造できる。結晶化熱処理の昇温速度、保持温度及び保持時間は特に制限されず、所望の結晶(好ましくは、β-石英固溶体又はβ-スポジュメン固溶体)が充分に析出し成長する条件を選択することができる。
【0038】
本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、熱膨張係数を低くする観点から、主結晶としてβ-石英固溶体(LiO・Al・nSiO,n≧2)又はβ-スポジュメン固溶体(LiO・Al・nSiO,n≧4)を有することが好ましい。
【実施例0039】
以下に実施例を挙げて、本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス及びLiO-Al-SiO系結晶性ガラスをさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り変更することができる。したがって、本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス及びLiO-Al-SiO系結晶性ガラスの範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0040】
表1及び表2は、本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの実施例(試料No.1~8)及び比較例(試料No.9~10)を示している。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1及び表2中の各試料は次のようにして調製した。
表1及び表2の組成になるようにガラス原料を調合し、均一に混合した後、坩堝を用いて1660℃で12時間溶融した。次いで、溶融したガラスを金属製定盤の上に流し出し、ステンレスローラーを用いて4mm厚の板ガラスに成形した。次いで、各板ガラスを表1及び表2に示す通りの熱処理条件で結晶化させた後、炉冷して試料を得た。
【0044】
各試料について、主結晶、外観、色調、残留気泡、衝撃強度及び熱衝撃強度を観察した。
主結晶は、X線回折法により同定した。
外観と色調は、肉眼で観察した。
残留気泡は、300mm×300mm×4mmのガラス板を肉眼で観察して、気泡の数を数えた。
衝撃強度は、535gの鋼球を自由落下させて、300mm×300mm×4mmのガラス板の中心点に衝撃を与え、ガラス板が割れたときの鋼球の高さで評価した。はじめに10cmの高さから鋼球を自由落下させ、ガラス板が割れなければ鋼球の高さを10cmずつ上げて、ガラス板が割れるまで繰り返した。
熱衝撃強度は、300mm×300mm×4mmのガラス板を高温の炉内に30分間置き、次いで、炉内からガラス板を取り出し、ガラス板を水(常温)に投げ込んで、ガラスが割れたときの炉内温度で評価した。はじめに炉内温度を水(常温)との温度差800℃(ガラス板の色調が不透明の場合は温度差500℃)にし、ガラス板が割れなければ炉内温度を10℃ずつ上げて、ガラス板が割れるまで繰り返した。温度差800℃(ガラス板の色調が不透明の場合は温度差500℃)でガラス板が割れた場合は、炉内温度を10℃ずつ下げて、ガラス板が割れなくなるまで繰り返した。
【0045】
表1及び表2から分かるように、熱処理条件によって、β-石英固溶体を主結晶とする透明な結晶化ガラスと、β-スポジュメン固溶体を主結晶とする不透明な結晶化ガラスとが得られた。
【0046】
表1及び表2に示す結果は、MnOを0.1%~3.0%含有し且つAsが0.1%未満であるLiO-Al-SiO系結晶化ガラスが、結晶を構成する成分が比較的少なくても衝撃強度と熱衝撃強度に優れ且つ残留気泡が少ないことを示している。
表1及び表2に示す結果は、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスとして、MnOが0.1%~3.0%であり、Asが0.1%未満であり、Sbが1%未満である形態が好ましいことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、衝撃強度と熱衝撃強度に優れ且つ残留気泡が少ない。加えて、本開示のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、その組成を先述のとおり特定したことによって物理的特性と化学的特性も安定している。それゆえ、ストーブ前面窓、電子製品用基板、電子部品焼成用セッター、電子レンジ用棚板、電磁調理器用トッププレート等の多くの工業用材料として使用することが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量百分率で、
SiO 60.0~70.0%、
Al 15.0~25.0%、
LiO 1.0~6.0%、
TiO 1.0~4.0%、
ZrO 0.5~3.0%、
MnO 1.5~3.0%、
NaO 0.1~2.0%、
O 0.1~2.0%、
0.1~2.0%、
MgO 0.1~1.5%、
ZnO 0.1~3.0%及び
BaO 0.1~2.5%を含み、
SiO とAl とLi Oの総量が88%以下であり、
Asが0.1%未満である、
LiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項2】
質量百分率で、As及びSbが合計0.2%未満である、請求項1に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項3】
F 0.1~1.0%をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項4】
、CoO、Cr、Fe及びNiOからなる群から選ばれる少なくとも1種の着色剤をさらに含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項5】
主結晶としてβ-石英固溶体又はβ-スポジュメン固溶体を有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項6】
Li O-Al -SiO 系結晶化ガラスの原ガラスであって、
質量百分率で、
SiO 60.0~70.0%、
Al 15.0~25.0%、
LiO 1.0~6.0%、
TiO 1.0~4.0%、
ZrO 0.5~3.0%、
MnO 1.5~3.0%、
NaO 0.1~2.0%、
O 0.1~2.0%、
0.1~2.0%、
MgO 0.1~1.5%、
ZnO 0.1~3.0%及び
BaO 0.1~2.5%を含み、
SiO とAl とLi Oの総量が88%以下であり、
Asが0.1%未満である、
LiO-Al-SiO系結晶性ガラス。
【請求項7】
質量百分率で、As及びSbが合計0.2%未満である、請求項6に記載のLiO-Al-SiO系結晶性ガラス。
【請求項8】
F 0.1~1.0%をさらに含む、請求項6又は請求項7に記載のLiO-Al-SiO系結晶性ガラス。
【請求項9】
、CoO、Cr、Fe及びNiOからなる群から選ばれる少なくとも1種の着色剤をさらに含む、請求項6~請求項8のいずれか1項に記載のLiO-Al-SiO系結晶性ガラス。