(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067009
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220422BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220422BHJP
H01M 6/12 20060101ALI20220422BHJP
H01M 6/16 20060101ALI20220422BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220422BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/058
H01M6/12 Z
H01M6/16 C
H01M2/26 A
H01M4/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175673
(22)【出願日】2020-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】399131116
【氏名又は名称】トライポッド・デザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 聰
(72)【発明者】
【氏名】大井 寛崇
【テーマコード(参考)】
5H024
5H028
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H024AA02
5H024AA03
5H024AA14
5H024CC07
5H024CC11
5H024DD09
5H024DD11
5H024HH04
5H024HH13
5H028AA06
5H028CC08
5H028CC11
5H028FF08
5H028HH05
5H028HH10
5H029AJ02
5H029AK03
5H029AL06
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029AM16
5H029HJ04
5H029HJ18
5H043AA03
5H043AA12
5H043BA03
5H043BA17
5H043BA19
5H043CA11
5H043EA31
5H043EA60
5H050AA02
5H050BA03
5H050BA15
5H050BA17
5H050CA05
5H050CA08
5H050CB07
5H050CB13
5H050DA20
5H050FA01
5H050HA03
5H050HA18
(57)【要約】
【課題】
高電圧を出力することのできる電池を提供することを目的とする。
【解決手段】
第1電極から第2n電極までの2n個の電極と、1個以上n個未満の電解質部と、を備え、第(2k-1)電極と第2k電極とは、電解質部を介して接触し、直接的には非接触であり、第2m電極が第(2m+1)電極と電気的に接続し、一の電解質部は二以上の電極と接触している、電池(nは2以上の整数であり、kは1以上、n以下の整数であり、mは1以上、(n-1)以下の整数である。)。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極から第2n電極までの2n個の電極と、
1個以上n個未満の電解質部と、
を備え、
第(2k-1)電極と第2k電極とは、電解質部を介して接触し、直接的には非接触であり、
第2m電極が第(2m+1)電極と電気的に接続し、
一の電解質部は二以上の電極と接触している、電池(nは2以上の整数であり、kは1以上、n以下の整数であり、mは1以上、(n-1)以下の整数である。)。
【請求項2】
第(2k-1)電極と、第2k電極の間の電位差が200mV以上である、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
第1電極から第2n電極までの2n個の電極が、1個の電解質部を介して接触している、請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
電極の厚さが、0.05μm~500μmである、請求項1~3のいずれかに記載の電池。
【請求項5】
電解質部の厚さが、0.1μm~1mmである、請求項1~4のいずれかに記載の電池。
【請求項6】
相互に電気的に接続されていない電極間の距離が、0.01mm~100mmである、請求項1~5のいずれかに記載の電池。
【請求項7】
電解質部が、膜又はシート状であり、
第(2k-1)電極と第2k電極が、電解質部が有する同一の面上に形成された、請求項1~6のいずれかに記載の電池。
【請求項8】
電解質部が、膜又はシート状であり、
第(2k-1)電極が、電解質部が有する一の面上に形成され、第2k電極が、前記一の面とは逆側の面上に形成された、請求項1~6のいずれかに記載の電池。
【請求項9】
第2m電極と第(2m+1)電極の短絡電流の絶対値|I2m|と、
第(2m-1)電極と第2m電極の短絡電流の絶対値|I2m-1|と、の比|I2m-1|/|I2m|が10以上である、前記[1]~[8]に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、デバイスを駆動するためのエネルギー源としても最も身近なものである。代表的なデバイスと、その駆動電圧を例示すると、例えば、LED(発光ダイオード)の順方向電圧は2V~3V程度、ICの駆動電圧は3.3Vや5V、パーソナルコンピュータの動作電圧は19V程度である。このように、ほとんどのデバイスは2V以上の電圧によって駆動される。
【0003】
一方、代表的な電池として、正極に酸化マンガン、負極に亜鉛、電解液として塩化亜鉛水溶液を用いたマンガン電池が挙げられる。マンガン電池の出力電圧は約1.5Vであり、これ単体では前述するようなデバイスは駆動できない。電池を用いて高電圧を得る方法は多く存在し、代表的なものとして、電池の直列接続、標準電極電位差の大きい電極を用いた電池が挙げられる。
【0004】
直列接続により高電圧を得る方法としては、複数の電池を、電池の外部で配線することで直列接続することが一般的である。例えば、直列接続されるように配線された電池ホルダーに複数の電池を入れる方法、複数の電池を直列接続し、改めて1つのパッケージに封入しプラス極とマイナス極を外部に露出させる方法がある。1.5Vの乾電池を6つ直列接続し、1つのパッケージに封入した9V電池等が広く市販されている。
【0005】
しかしながらこの方法では、各乾電池のパッケージ以外に、それらを外部で接続し一体化させるためのホルダー又はパッケージが必要であり、材料の無駄が多いという問題があった。さらに、一体化させる乾電池と乾電池の間に隙間が生じるため空間利用効率が低いという問題もあった。また、特許文献1では、絶縁性の側壁を有する電気化学エレメントを水平方向に配置し、各電気化学エレメントを直列接続し、1つのパッケージに封入することで高電圧を出力する電池とする構成が開示されている。この方法であれば、複数の電気化学エレメントを電池内部で直列接続できるため、パッケージ材料を減らすことができる。しかしながら、電気化学エレメント同士を側壁により絶縁しなければならず、製造の難易度は非常に高い。また、特許文献2では、集電体の片方の面に正極、もう一方の面に負極を形成した電極を、ゲル電解質部を介して積層することで電気化学エレメント直列接続し、1つのパッケージに封入することで高電圧電池とする構成が開示されている。しかしながら、電極及びゲル電解質部を確実に絶縁するために、高い位置精度でシール材料を配置しなければならず、製造の難易度は非常に高く、その製造装置も市場には流通していない。さらに、シール材料が外部応力によって剥離することが示唆されている。剥離後、電解質部がショートすることで出力電圧が低下する可能性が考えられる。
【0006】
標準電極電位差の大きい電極を用いた電池として、正極にコバルト酸リチウム、負極にカーボン、電解液としてリチウム塩を溶解させた有機溶媒を用いたリチウムイオン電池(LIB)が実用化されている。一般的なLIBの開放電圧は3.6V程度である。また、特許文献3では、開放電圧が4.75Vになる、スピネル系結晶構造を有するリチウム金属複合酸化物を用いたLIBの構成が開示されている。しかしながら、電解質部の電気分解のため4.75V以上の電圧を得ることは不可能である。さらに、電解液として有機溶剤を使用するため、発火・爆発の危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-24922号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0091771号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/083481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高電圧を出力することのできる電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
電池内で電気化学エレメントを直列接続するために、電解質同士を分離することが重要だと考えられてきた。特許文献1、特許文献2では電解質と電解質の間に絶縁層を設けることで電解質同士を分離している。
【0010】
これに対し本発明者らは、電解質を共有した複数の電気化学エレメントを直列接続した構成によっても、高電圧を得られる方法を見出した。
【0011】
本発明の目的は、以下の[1]~[9]により、達成される。
[1]第1電極から第2n電極までの2n個の電極と、1個以上n個未満の電解質部と、を備え、第(2k-1)電極と第2k電極とは、電解質部を介して接触し、直接的には非接触であり、第2m電極が第(2m+1)電極と電気的に接続し、一の電解質部は二以上の電極と接触している、電池(nは2以上の整数であり、kは1以上、n以下の整数であり、mは1以上、(n-1)以下の整数である。);
[2]第(2k-1)電極と、第2k電極の間の電位差が200mV以上である、前記[1]に記載の電池;
[3]第1電極から第2n電極までの2n個の電極が、1個の電解質部を介して接触している、前記[1]又は[2]に記載の電池。
[4]電極の厚さが、1μm~500μmである、前記[1]~[3]のいずれかに記載の電池。
[5]電解質部の厚さが、0.1mm~1mmである、前記[1]~[4]のいずれかに記載の電池。
[6]相互に電気的に接続されていない電極間の距離が、0.01mm~100mmである、前記[1]~[5]のいずれかに記載の電池。
[7]電解質部が、膜又はシート状であり、第(2k-1)電極と第2k電極が、電解質部が有する同一の面上に形成された、前記[1]~[6]のいずれかに記載の電池。
[8]電解質部が、膜又はシート状であり、第(2k-1)電極が、電解質部が有する一の面上に形成され、第2k電極が、前記一の面とは逆側の面上に形成された、前記[1]~[6]のいずれかに記載の電池。
[9]第2m電極と第(2m+1)電極の短絡電流の絶対値|I2m|と、第(2m-1)電極と第2m電極の短絡電流の絶対値|I2m-1|の比|I2m-1|/|I2m|が10以上である、前記[1]~[8]のいずれかに記載の電池。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
【
図2】本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
【
図4】本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
【
図5】本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
【
図6】本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
【
図7】本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
【
図8】本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一部を表す図である。
【
図9】本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一部を表す図である。
【
図10】本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一部を表す図である。
【
図11】本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
【
図12】本発明の実施の形態にかかる円筒型電池の模式図である。
【
図13】本発明の実施の形態にかかる円筒型電池における電極の配置を示す図である。
【
図14】本発明の実施の形態にかかる円筒型電池の模式図である。
【
図15】本発明の実施の形態にかかる円筒型電池の模式図である。
【
図16】本発明の実施の形態にかかる円筒型電池の模式図である。
【
図17】本発明の実施の形態にかかる円筒型電池の一部を表す図である。
【
図18】本発明の実施の形態にかかる円筒型電池の断面を示す図である。
【
図19】本発明の実施の形態にかかる円筒型電池の製造装置の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について以下詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
(用語)
電気化学エレメント:正極、負極、電解質から成り、正極と負極の間に電解質が配置され、正極と負極の間に電位差を発生させる構造物のことを言う。
【0015】
(基本構成)
本実施形態の電池は、第1電極から第2n電極までの2n個の電極を有する電極部と、1個以上、n個未満の電解質部と、を備え、第(2k-1)電極と第2k電極とは、電解質部を介して接触し、第2m電極が第(2m+1)電極と電気的に接続し、1つの電解質部は2つ以上の電極と接触している。ここで、nは2以上の整数であり、kは1以上、n以下の整数である。mは1以上、(n-1)以下の整数である。なお、便宜上、kとmの異なる記号を用いて電極の番号を定義しているが、同じ番号の電極について、kとmのいずれを用いて定義することも可能である。例えば、第3電極は、k=2であるときの第(2k-1)電極であり、m=1であるときの第(2m+1)電極である。
【0016】
さらに、第(2k-1)電極と、第2k電極の間の電位差が200mV以上であることが好ましい。
【0017】
第(2k-1)電極と第2k電極との間に電解質部が配置されることで、第(2k-1)電極と第2k電極の間に起電力が発生する。第(2k-1)電極及び第2k電極は、一部又は全部が、電解質部と接触しているが、第(2k-1)電極と第2k電極は、それぞれ互いに非接触である。「非接触」とは、例えば、ある電極と他の電極とが直接接触していない状態をいう。
【0018】
第2m電極が第(2m+1)電極と電気的に接続することで、第(2m-1)電極と第2m電極を含む電気化学エレメントと、第(2m+1)電極と第(2m+2)電極を含む電気化学エレメントとが直列接続され、高電圧を得ることができる。電極数nは特に限定はなく、nが大きいほど高電圧を得ることができる。用途に合わせてnを適宜設定することが好ましい。
【0019】
また、タブ電極が、第1電極及び第2n電極に電気的に接続されていてもよい。
【0020】
電解質部は、イオン伝導性の部材で、他の電解質部からイオン的に分離した単位のことを言う。電解質部は、概ね均質であってもよいし、組成に分布を有してもよい。
【0021】
電解質部の数は1個以上、n個未満であれば特に限定はないが、1つであれば製造が容易であるため好ましく、3の倍数個であれば自己放電を少なくする構成を形成可能であるため好ましい。電解質部の数がn個未満であるということは、少なくとも1のmにおいて、第(2m-1)電極、第2m電極、第(2m+1)電極及び第(2m+2)電極が、1個の電解質部を介して接触している。この場合、前記1のmとは異なる値のmにおいては、第(2m-1)電極及び第2m電極が、1個の電解質部を介して接触し、第(2m+1)電極及び第(2m+2)電極が、第(2m-1)電極及び第2m電極と接触している電解質部とは異なる1個の電解質部を介して接触していてもよい。なお、複数個の電解質部を有する場合において、それぞれの電解質部の組成は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0022】
1つの電解質部に接触している電極の数は、2個以上であれば特に限定はない。
【0023】
本実施形態の電池のうち、最も簡単な構成は、第1電極、第2電極、第3電極及び第4電極までの4個の電極と、1個の電解質部とを備えたものである。第1電極と第2電極とは電解質部を介して接触し、直接的には非接触である。また、同様に、第3電極と第4電極とは電解質部を介して接触し、直接的には非接触である。一方で、第2電極は第3電極と電気的に接続している。タブ電極が、第1電極及び第4電極に電気的に接続されていてもよい。
【0024】
第(2k-1)電極の標準電極電位が、第2k電極の標準電極電位よりも大きい場合は、1~n-1までのすべてのkにおいて、第(2k-1)電極の標準電極電位を、第2k電極の標準電極電位よりも大きくする。ただし、この場合において、第2k電極の標準電極電位が、第(2k+1)電極の標準電極電位よりも大きくてもよい。
【0025】
一方で、第(2k-1)電極の標準電極電位が、第2k電極の標準電極電位よりも小さいものを用いる場合は、1~n-1までのすべてのkにおいて、第(2k-1)電極の標準電極電位が、第2k電極の標準電極電位よりも小さいものを用いる。ただし、この場合においても、第2k電極の標準電極電位が、第(2k+1)電極の標準電極電位よりも小さくてもよい。
【0026】
そのため、第(2k-1)電極については、すべてのkにおいて同じ種類の活物質を用い、第2k電極については、第(2k-1)電極とは異なるもので、すべてのkにおいて同じ種類の活物質を用いることができる。
【0027】
電池の電極数を少なくし小型化が可能となるため、第(2k-1)電極と、第2k電極との間の電位差は、200mV以上であることが好ましく、500mV以上であることがより好ましく、700mV以上であることがさらに好ましい。また、電解質部において有機系電解質を用いる場合は、有機系電解質が分解しないようにするため、第(2k-1)電極と、第2k電極との間の電位差は、5.0V以下であることが好ましい。電解質部において水系電解質を用いる場合は、水系電解質を分解しないようにするため、第(2k-1)電極と、第2k電極との間の電位差は、2.5V以下であることが好ましく、1.5V以下であることがより好ましい。第(2k-1)電極と、第2k電極との間の電位差を200mV以上とするための方法としては、正極となる電極では、標準電極電位が大きい活物質を用い、負極となる電極では、標準電極電位が小さい活物質を用いる方法があげられる。
【0028】
上記構成によって、電解質を共有する電気化学エレメントを直列接続することができ、小型で高電圧出力の電池を実現できる。さらに、水系電解質を用いれば、発火の危険性もなくなる。これは、高電圧を得るためには発火の危険性のある非水系電解質を用いなければならないという従来の常識を覆すものである。
【0029】
第1電極と第2n電極の間の電位差が2.0V以上であればLEDを駆動でき、電位差が3.3V以上であれば多くのICを駆動でき、電位差が12V以上であれば多くの家電製品を駆動でき、電位差が24V以上であれば液晶ディスプレイが駆動できる。また、感電防止の観点から、電位差が200V以下であることが好ましく、100V以下であることがより好ましく、60V以下であることがさらに好ましい。
【0030】
第2m電極と第(2m+1)電極の短絡電流の絶対値|I2m|と、第(2m-1)電極と第2m電極の短絡電流の絶対値|I2m-1|の比|I2m-1|/|I2m|は、直列接続により高電圧を得ることができるため、10以上であることが好ましく、電池を大きな電流を流す用途に用いてもエネルギーのロスが少ないため、100以上であることが好ましく、電池を長期間保存できるため、1,000以上であることが、さらに好ましい。また、比|I2m-1|/|I2m|は、電池のサイズを小さくすることができるため、1,000,000,000以下であることが好ましく、高価な材料を用いることなく電池サイズの小型化を実現可能なため、1,000,000以下であることがより好ましい。
【0031】
第1電極と第2n電極の短絡電流の絶対値|Ibat|と、第2m電極と第(2m+1)電極の短絡電流の絶対値|I2m|の比|Ibat|/|I2m|は、直列接続により高電圧を得ることができるため、10以上であることが好ましく、電池を大きな電流を流す用途に用いてもエネルギーのロスが少ないため、100以上であることが好ましく、電池を長期間保存できるため、1,000以上であることが、さらに好ましい。また、比|I2m-1|/|I2m|は、電池のサイズを小さくすることができるため、1,000,000,000以下であることが好ましく、高価な材料を用いることなく電池サイズの小型化を実現可能なため、1,000,000以下であることがより好ましい。
【0032】
第1電極と第2n電極の短絡電流の絶対値|Ibat|と、1≦m≦(n-1)における第2m電極と第(2m+1)電極の短絡電流の絶対値の平均値Σm|I2m|/(n-1)の比|Ibat|/{Σm|I2m|/(n-1)}は、直列接続により高電圧を得ることができるため、10以上であることが好ましく、電池を大きな電流を流す用途に用いてもエネルギーのロスが少ないため、100以上であることが好ましく、電池を長期間保存できるため、1,000以上であることが、さらに好ましい。また、比|I2m-1|/|I2m|は、電池のサイズを小さくすることができるため、1,000,000,000以下であることが好ましく、高価な材料を用いることなく電池サイズの小型化を実現可能なため、1,000,000以下であることがより好ましい。
【0033】
短絡電流は、例えばポテンショスタットや無抵抗電流計、デジタルマルチメーターを用いて測定することができる。例えば無抵抗電流計を用いた測定は以下のように行うことができる。電気化学エレメントの正極を0V、負極を無抵抗電流計の入力端子に接続し、入力端子は0Vとバーチャルショートする。無抵抗電流計の出力端子からは、正極―負極間を流れる電流に比例した電圧が出力されるので、これに比例定数を乗じることで短絡電流を算出することができる。または、デジタルマルチメーターを電流測定モードにし、正極と負極を、デジタルマルチメーターを介して接続することでも短絡電流を測定することができる。
【0034】
第2m電極と第(2m+1)電極の短絡電流を評価するには、第2m電極と第(2m+1)電極とが電気的に接続していない状態にした後、上記方法にて評価する必要がある。
【0035】
電解質部の抵抗は分布を有してもよい。例えば、電解質部の第(2k-1)電極と第2k電極に挟まれた領域の抵抗は、それ以外の領域の抵抗よりも低いことが好ましい。高抵抗領域の抵抗は、低抵抗領域の抵抗に対し、10倍以上であれば直列接続により高電圧を得ることができるため好ましく、100倍以上であれば大きな電流を流す用途に用いてもエネルギーのロスが少ないためより好ましく、1,000倍以上であれば電池を長期間保存できるためさらに好ましい。
【0036】
電解質の抵抗は、例えば、ポテンショスタットや無抵抗電流計を用いて測定することができる。例えば、無抵抗電流計を用いた測定は以下のように行うことができる。電解質の2か所に電極A及び電極Bを接触させ、電極Aには交流電源、電極Bには無抵抗電流計を接続する。交流電源から信号(例えば、0.2Vpp、500Hz)を電極Aに入力し、無抵抗電流計で電流を測定する。入力信号の振幅を測定された電流値の振幅で割ることで、電解質の抵抗を求めることができる。
【0037】
電気的に接続していない状態における第2m電極と第(2m+1)電極との間の抵抗は、第(2m-1)電極と第2m電極間の抵抗及び第(2m+1)電極と第(2m+2)電極との間の抵抗のいずれか大きい方の値に対し、10倍以上であれば直列接続により高電圧を得ることができるため好ましく、100倍以上であれば大きな電流を流す用途に用いてもエネルギーのロスが少ないためより好ましく、1,000倍以上であれば電池を長期間保存できるためさらに好ましい。電気的に接続していない状態における第2m電極と第(2m+1)電極との間の抵抗は、第(2m-1)電極と第2m電極間の抵抗及び第(2m+1)電極と第(2m+2)電極との間の抵抗のいずれか大きい方の値に対し、1,000,000倍以下であることが好ましく、100,000倍以下であることがより好ましく、10,000倍以下であることがさらに好ましい。
【0038】
電気的に接続していない状態における第2m電極と第(2m+1)電極との間の抵抗、第(2m-1)電極と第2m電極間の抵抗、及び、第(2m+1)電極と第(2m+2)電極との間の抵抗は、それぞれ電極間の距離を変更することで、調整することができる。
【0039】
電極間の抵抗は、例えばポテンショスタットやガルバノスタットを用いて、交流抵抗法等を用いて測定することができる。
【0040】
(具体的構成例)
本実施形態の電池は、上述の基本構成を満たせばどのような構造体であっても構わない。好適な構造として、例えば、積層型、円筒型構造等をとることができる。
【0041】
(積層型)
積層型電池は、薄膜等の膜状又はシート状の電極部と薄膜状の電解質部とが積層された構造を有する。
【0042】
図1に示す積層型電池1においては、第1電極10
1から第2n電極10
2nまでの2n個の電極が、同一面上に形成され、これら電極10と接するように、電解質部20が積層されている。このような構成にすることで、非常に簡易な構造で高電圧の電池を得ることができる。
【0043】
電極10は、支持体30上に形成され、電解質部20と積層されてもよいし、電解質部20上に直接形成されてもよい。
【0044】
電解質部20としては、電解液を含んだセパレーター、電解液を含んだゲル材料、固体電解質等を用いることができる。支持体30は特に限定されないが、例えば、プラスチックフィルム(PET、PEN、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル、ポリシクロオレフィン、TAC等)、不織布、紙を用いることができる。
【0045】
電極10の並び方は特に限定されてないが、
図1のように一列に並んだ形態、
図2のように蛇行するように並んだ形態、
図3のように、所定のルールに沿って配置された形態等が例示される。その他、電極はランダムに配置されていてもよい。
【0046】
積層型電池1においては、タブ電極が、第1電極101及び第2n電極102nに電気的に接続されていてもよい。
【0047】
電極10及び電解質部20を積層した積層体は、外装材料に収納されてもよい。
【0048】
積層型電池1の製造方法として、特に限定はないが、例えば、電極10を形成した支持体30とセパレーターとを積層した後、電解液をセパレーターに含ませる方法、セパレーターに電極10を直接形成した後、電解液をセパレーターに含ませる方法、ゲル電解質上に電極10を直接形成する方法、電極10を形成した支持体30上にゲル電解質を積層する方法などが例示される。
【0049】
積層型電池1における薄膜状又はシート状の各電極10の厚さは特に限定されない。各電極10の厚さは、同一の厚さであってもよく、それぞれ異なる厚さであってもよい。各電極10の厚さは、例えば、0.05μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。各電極10の厚さは、例えば、500μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。
【0050】
積層型電池1における電解質部20の厚さは特に限定されない。電解質部20の厚さは、同一の厚さであってもよく、電解質部20の位置によって異なる厚さであってもよい。電解質部20の厚さは、例えば、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。電解質部20の厚さは、例えば、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.1m以下であることがさらに好ましい。
【0051】
積層型電池1における支持体30の厚さは特に限定されない。支持体30の厚さは、同一の厚さであってもよく、それぞれ異なる厚さであってもよい。支持体30の厚さは、例えば、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。支持体30の厚さは、例えば、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0052】
積層型電池1において、相互に電気的に接続されていない隣接する電極10間の距離は、0.01mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、1mm以上であることがさらに好ましい。隣接する電極10間の距離は、100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。
【0053】
図1は、本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
図1では、第1電極10
1、第2電極10
2、第3電極10
3、第4電極10
4、第5電極10
5、・・・第(2n-4)電極10
2n-4、第(2n-3)電極10
2n-3、第(2n-2)電極10
2n-2、第(2n-1)電極10
2n-1、第2n電極10
2nといったように、各電極が横一列に並んでいる。nは2以上の整数である。
図1(a)は、支持体30の面に対して垂直な方向(つまり、積層方向)に垂直な面における、積層型電池1の断面図である。
図1(b)は、積層型電池1を、積層方向に垂直な方向(つまり、側面方向)から視た図である。奇数番号の電極と偶数番号の電極のいずれを正極としてもよく、いずれを負極としてもよい。各電極の縦方向の長さWnと横方向の幅Wmは、同一であってもよい。第1電極10
1と第2電極10
2のように、第(2k-1)電極と第2k電極は、電気的に接続されておらず、距離をおいて配置されている。一方で、第2電極10
2と第3電極10
3のように、第2m電極と第(2m+1)電極は、電気的に接続されており、相互の電極の横方向側面の全部又は一部で接触している。
図1(b)から分かるように、各電極は、電解質部20と接触している。
【0054】
図2は、本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
図2は、支持体30の面に対して垂直な方向(つまり、積層方向)に垂直な面における、積層型電池1の断面図である。
図2では、第1電極10
1、第2電極10
2及び第3電極10
3が、支持体30の幅方向に沿って並び、第3電極10
3に続く、第4電極10
4が該幅方向に対して垂直な方向に配置され、さらに、第1電極10
1~第3電極10
3と同じ数の第4電極10
4、第5電極10
5及び第6電極10
6が、支持体30の幅方向に沿って、第1電極10
1~第3電極10
3と平行に並んでいる。さらに、第6電極10
6に続く、第7電極10
7が該幅方向に対して垂直な方向に配置され、さらに、第4電極10
4~第6電極10
6と同じ数の第7電極10
7、第8電極10
8及び第9電極10
9が、支持体30の幅方向に沿って並んでいる。このように、各電極が蛇行して配列されている。奇数番号の電極と偶数番号の電極のいずれを正極としてもよく、いずれを負極としてもよい。偶数番号の電極は、隣接する奇数番号の電極のうちのいずれかと1つと電気的に接続されており、各電極の縦方向の長さと横方向の幅は、同一であってもよい。第(2k-1)電極と第2k電極は、電気的に接続されておらず、距離をおいて配置されている。第2m電極と第(2m+1)電極は、電気的に接続されている。図では、第2m電極と第(2m+1)電極は、直接接触するように配置されていてもよい。また、各電極は、電解質部20と接触している。
【0055】
図3は、本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
図3は、支持体30の面に対して垂直な方向(つまり、積層方向)に垂直な面における、積層型電池1の断面図である。所定のルールに沿って、電極が配置されている。各電極は、電解質部20と接触している。
【0056】
積層型電池1は、電極が複数の層に分かれていてもよい。
図4は、本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。例えば、
図4に示すように、第(2k-1)電極と第2k電極とをZ軸方向に積層することで電気化学エレメントを構成し、n個の電気化学エレメントをXY平面上に配置することができる。このような配置をすることで、第(2k-1)電極と第2k電極の間の距離を短くすることができ、電池の内部抵抗を小さくすることができ、また、高電圧を得やすくなる。電気化学エレメントがZ軸方向に複数積層されてもよい。
【0057】
図4(a)は、積層型電池1の斜視図であり、
図4(b)は、積層体型電池の一部についてのZY平面に平行な面での断面図である。
図4では、第1電極10
1と第2電極10
2、第3電極10
3と第4電極10
4といったように、第(2k-1)電極と第2k電極とがXYの座標を同じくしつつ、Z軸方向に積層されている。第(2k-1)電極と第2k電極との間には電解質部20が存在し、第(2k-1)電極と第2k電極は、電解質部20のZ軸に沿った両方向から、電解質部20と接触している。また、第2m電極と第(2m+1)電極は、X軸方向又はY軸方向に並んで配置され(或いは、XY平面に平行な面上に並んで配置され)、導電材料40により電気的に接続されている。
図4のような積層型電池1では、電極番号が2nを超えない範囲において、第(4j-3)電極、第(4j)電極がXY平面に平行な面上に並んで配置され、Z軸方向の座標は異なるが、これらの電極と対になる位置で、第(4j-2)電極、第(4j-1)電極がXY平面に平行な面上に並んで配置されている(jはnが奇数の場合は1≦j≦(n+1)/2、nが偶数の場合は1≦j≦n/2であり、当然ながら2nを超える番号の電極は形成されない)。このように、異なる2層のそれぞれに対となる電極を配置した積層型電池1とすることで、薄型の積層型電池1を得ることができる。
【0058】
図5及び
図6は、本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
図5及び
図6は、Z軸方向に電気化学エレメントを2つ積層した構造の例である。電池の用途や形状に合わせて電気化学エレメントの配置を適宜選択することができる。
【0059】
図5は、4層型の積層型電池1を表す図である。
図5は、積層型電池1の斜視図である。この積層型電池1は、第1電極10
1から第16電極10
16により構成されている。ここで、jは1~3までの整数である。第(4j-3)電極、第(4j-2)電極、第(4j-1)電極、第4k電極が、XYの座標を同じくしつつ、Z軸方向に積層されている。第(4j-3)電極と第(4j-2)電極との間、第(4j-1)電極と第4j電極との間には、それぞれ電解質部20が存在している。第(4j-2)電極、第(4j-1)電極は電気的に接続されている。また、第4j電極と第(4j+1)電極は、X軸方向又はY軸方向に並んで配置され(或いは、XY平面に平行な面上に並んで配置され)、電気的に接続されている。一方で、第(4j+1)電極、第(4j+2)電極、第(4j+3)電極、第(4j+4)電極が、XYの座標を同じくしつつ、Z軸方向に積層されている。第(4j+1)電極と第(4j+2)電極との間、第(4j+3)電極と第(4j+4)電極との間には、それぞれ電解質部20が存在している。第(4j+2)電極、第(4j+3)電極は電気的に接続されている。
図5の積層型電池1では、第1電極10
1、第8電極10
8、第9電極10
9、第16電極10
16がXY平面に平行な面上に並んで配置され、Z軸方向の座標は異なるが、これらの電極と対になる位置で、第2電極10
2、第7電極10
7、第10電極10
10、第15電極10
15がXY平面に平行な面上に並んで配置されている。同様に、これらの電極と対になる位置で、第3電極10
3、第6電極10
6、第11電極10
11、第14電極10
14がXY平面に平行な面上に並んで配置されている。さらには、第4電極10
4、第5電極10
5、第12電極10
12、第13電極10
13がXY平面に平行な面上に並んで配置されている。このように、異なる4層のそれぞれに対となる電極を配置した積層型電池1とすることで、薄型の積層型電池1を得ることができる。
【0060】
図6は、
図4の2層型の積層型電池2つをZ方向に重ねて、4層型の積層型電池としたものである。
【0061】
図7は、本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
図7は、支持体30の面に対して垂直な方向(つまり、積層方向)に垂直な面における、積層型電池1の断面図である。
図7の積層型電池1は、薄膜状の電解質部20と、第1電極10
1から第2n電極10
2nまでの2n個の薄膜状の電極を有している。前記電解質部20は、第1面と、第1面とは反対側に第2面とを有する。第1電極10
1から第2n電極10
2nのうち、第1面には第(4j-3)電極及び第4j電極が形成され、第2面には第(4j-2)電極及び第(4j-1)電極が形成されている(jはnが奇数の場合は1≦j≦(n+1)/2、nが偶数の場合は1≦j≦n/2であり、当然ながら2nを超える番号の電極は形成されない)。これら電極は、各面において番号順に一列に配置され、第(4j-3)電極と第(4j-2)電極は、電解質部20を挟んで向かい合う位置に配置され、また第(4j-1)電極と第4j電極は、電解質部20を挟んで向かい合う位置に配置されている。第(4j-2)電極と第(4j-1)電極は電気的に接続され、また、第(4j+1)電極と第4j電極とは電気的に接続されている。第1電極10
1、第4電極10
4、第5電極10
5など、前記第1面に形成された電極は、支持体30aに支持され、第2電極10
2、第3電極10
3、第6電極10
6など、前記第2面に形成された電極は、支持体30bに支持される。支持体30aと支持体30bとの間は、シール材50により封止される。
【0062】
第(4j-3)電極及び第4j電極が第1の支持体30上に形成され、第(4j-2)電極及び第(4j-1)電極が第2の支持体30上に形成されてもよい。
【0063】
第(4j-3)電極及び第4j電極が電解質部20の第1面に形成され、第(4j-2)電極及び第(4j-1)電極が電解質部20の第2面に形成されてもよい。
【0064】
タブ電極が、第1電極及び第2n電極に電気的に接続されていてもよい。
【0065】
図8は、
図7の積層型電池1の一部を表す図である。第(2m-1)電極10
2m-1の電解質部20に接する面と、第2m電極10
2mの電解質部20に接する面との距離(
図8のL)は、1mm以下であれば電池の内部抵抗を低減できるため好ましく、0.5mm以下であれば電池を小型化できるためより好ましく、0.1mm以下であれば折り曲げへの耐久性が向上するためさらに好ましい。また、第(2m-1)電極10
2m-1の電解質部20に接する面と、第2m電極10
2mの電解質部20に接する面との距離(
図8のL)は、0.1μm以上であれば絶縁性を保てるため好ましく、1μm以上であれば既存の部材及び設備での生産が可能となり歩留まりを向上できるため好ましく、5μm以上であれば外部応力が加わっても絶縁性を保てるためさらに好ましい。
【0066】
第(2m-1)電極10
2m-1と第(2m+2)電極10
2m+2との最も近接する部分間の距離(
図8のW)は、0.01mm以上であれば直列接続により高電圧が得られるため好ましく、0.1mm以上であれば加工が容易になりコスト削減の観点からより好ましく、1mm以上であれば自己放電を小さくできるためさらに好ましい。また、第(2m-1)電極10
2m-1と第(2m+2)電極10
2m+2との最も近接する部分間の距離(
図8のW)は、小型化の観点から100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。
【0067】
電解質部20の厚さ(
図8のd)は、1mm以下であれば電池の内部抵抗を低減できるため好ましく、0.5mm以下であれば電池を小型化できるためより好ましく、0.1mm以下であれば折り曲げへの耐久性が向上するためさらに好ましい。電解質部20の厚さは、0.1μm以上であれば絶縁性を保てるため好ましく、1μm以上であれば既存の部材及び設備での生産が可能となり歩留まりを向上できるため好ましく、5μm以上であれば外部応力が加わっても絶縁性を保てるためさらに好ましい。
【0068】
電解質部20はイオン伝導度の分布を有してもよい。例えば、第(2m-1)電極10
2m-1と、第(2m+2)電極10
2m+2の間に位置する電解質部20のイオン伝導度は、第(2m-1)電極10
2m-1と第2m電極10
2mの間のイオン伝導度よりも小さくすることが好ましい。具体的には、(第(2m-1)電極と第(2m+2)電極の間に位置する電解質部のイオン伝導度)/(第(2m-1)電極と第2m電極の間に位置する電解質部のイオン伝導度)は、1/2以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましく、1/50以下であることがさらに好ましい。イオン伝導度の分布を有する電解質部20の構成は特に限定されない。
図9は、
図7の積層型電池1の一部の一例を表す図である。例えば、
図9に示すように、電解質部20の構成としては、第(2m-1)電極10
2m-1と第(2m+2)電極10
2m+2の間の部分に、イオン伝導性の低い材料が形成された構成などが例示される。図中の21は高イオン伝導度を有する領域であり、22は低イオン伝導度を有する領域である。イオン伝導性の低い材料は、塗布・貼合等の手段により形成されてもよい。
【0069】
電解質部20はイオン伝導度に異方性を有していてもよい。例えば、第(2m-1)電極の面及び第2m電極の面に対して垂直方向へのイオン伝導度が、前記面に対して水平方向へのイオン伝導度よりも高いことが好ましい。垂直方向のイオン伝導度は、水平方向のイオン伝導度の2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましい。
【0070】
図10は、積層型電池1の一部を表す図である。電解質部20の、電気化学エレメントが並ぶ向きに直行する向きの大きさ(
図10のWe)は、電極10の幅(
図10のWm)と概同一であることが好ましい。We/Wmの値は、0.90以上であれば内部抵抗を小さくできるためが好ましく、0.95以上であれば活物質の利用効率が高いためより好ましく、0.97以上であれば電極同士の接触を防止できるためさらに好ましい。また、We/Wmの値は、1.1以下であれば直列接続により高電圧を得ることができるため好ましく、1.05以下であれば自己放電を小さくできるためより好ましく、1.03以下であれば材料の利用効率が高く低コスト化できるためさらに好ましい。
【0071】
電極10と電解質部20が積層された積層体が、外装材料に収納されてもよい。外装材料としてラミネートフィルム等を用いることができる。また、外装部材に電極10又は/及び電解質部20を形成してもよい。外装材料の開口部は、接着剤等で封止することができる。
【0072】
図11は、本発明の実施の形態にかかる積層型電池の一例を表す図である。
図11の積層型電池1は、第1電極10
1から第2n電極10
2nまでの2n個の薄膜状の電極10及び電解質部20が、薄膜の電極10の面に対して垂直方向に積層された構造をしている。
【0073】
薄膜状の電極10は、第1面と第2面とを有し、電極10の第1面は電解質部20に接触している。(2k+1)が2nを超えない範囲において、第2k電極102kの第2面と第(2k+1)電極102k+1の第2面は電気的に接続されており、これらは溶接等の手段で一体化されていてもよい。
【0074】
電解質部20は、第(2k-1)電極と第2k電極の間に配置される。電解質部20は、
図11(a)のように、電極を挟むようにジグザグに折りたたまれていてもよいし、
図11(b)のように、複数の電解質部20の間に電極が配置されてもよい。
【0075】
(円筒型)
本実施形態の電池は、円筒形状をであってもよい。円筒型電池の構成例を以下に示すが、これに限定されない。
【0076】
円筒型電池は、電極と電解質部とが積層され、これを渦巻き状に巻回した構造を有している。一の電極と他の電極は、電解質部を挟むように配置されていてもよい。また、一の電極と他の電極は、絶縁層を挟むように配置されていてもよい。
【0077】
タブ電極が、第1電極及び第2n電極に電気的に接続されていてもよい。
【0078】
電極及び電解質部を積層した積層体は、外装材料に収納されてもよい。
【0079】
円筒型電池における薄膜状又はシート状の各電極の厚さは特に限定されない。各電極の厚さは、同一の厚さであってもよく、それぞれ異なる厚さであってもよい。各電極の厚さは、例えば、0.05μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。各電極の厚さは、例えば、500μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。
【0080】
円筒型電池における電解質部の厚さは特に限定されない。電解質部の厚さは、同一の厚さであってもよく、電解質部の位置によって異なる厚さであってもよい。電解質部の厚さは、例えば、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。電解質部の厚さは、例えば、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることがさらに好ましい。
【0081】
円筒型電池における絶縁層の厚さは特に限定されない。絶縁層の厚さは、同一の厚さであってもよく、それぞれ異なる厚さであってもよい。絶縁層の厚さは、例えば、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。絶縁層の厚さは、例えば、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0082】
図12は、本発明の実施の形態にかかる円筒型電池の模式図である。2n個の電極10は、
図12(a)のように電解質部20の片面に接触するように配置されてもよいし、
図12(b)のように第(2k-1)電極10
2k-1と第2k電極10
2kが電解質部20を挟むように配置されてもよい。
図12(a)では、電極10は、電解質部20と接触している側とは反対側で、絶縁層60と接触している。
図12(b)では、第(2k-1)電極10
2k-1の一部が、第2k電極10
2kとの間に絶縁層60を挟むように配置されており、第(2k-1)電極10
2k-1の一部が、第2k電極10
2kとの間に電解質部20を挟むように配置されている。
【0083】
図13は、円筒型電池における電極の配置の一例を示す図である。電解質部20は、第1面と、第1面とは反対側に第2面とを有する。第1電極10
1から第2n電極10
2nのうち、第1面には第(4j-3)電極及び第4j電極が形成され、第2面には第(4j-2)電極及び第(4j-1)電極が形成されている(jはnが奇数の場合は1≦j≦(n+1)/2、nが偶数の場合は1≦j≦n/2であり、当然ながら2nを超える番号の電極は形成されない)。これら電極は、各面において番号順に一列に配置され、第(4j-3)電極と第(4j-2)電極は電解質部20を挟んで向かい合う位置に配置され、また第(4j-1)電極と第4j電極は電解質部20を挟んで向かい合う位置に配置されている。第(4j-2)電極と第(4j-1)電極は電気的に接続されているが、第(4j-3)電極と第(4j-2)電極は電気的に接続されていない。また、第(4j+1)電極と第4j電極とは電気的に接続されている。
【0084】
図13では、第1電極10
1と第2電極10
2は電解質部20を挟む位置に配置され、また第3電極10
3と第4電極10
4は電解質部20を挟む位置に配置されている。第2電極10
2と第3電極10
3は電気的に接続されているが、第1電極10
1と第4電極10
4は電気的に接続されていない。同様に、第5電極10
5と第6電極10
6は電解質部20を挟む位置に配置されている。第4電極10
4と第5電極10
5は電気的に接続されているが、第3電極10
3と第6電極10
6は電気的に接続されていない。以下、第7電極10
7~第14電極10
14まで同様に構成される。このようにして、第1電極10
1及び第2電極10
2を最も内側に位置する電極として、電極の番号が大きくなるにつれて、外側になるように巻回された構造とすることができる。
【0085】
円筒型電池は、電極10と電解質部20と絶縁層60が積層され、巻回した構造を有してもよい。絶縁層60を用いることで、内側の電気化学エレメントと外側の電気化学エレメントを分離することができるため、より高い電圧を得ることができる。
【0086】
円筒型電池は、絶縁層60は絶縁性の支持体30を用いることでも形成できるし、電極10や電解質部20に絶縁性のコーティングを施して形成してもよい。
【0087】
図14は、絶縁性の支持体30に電極部を形成した部材と、電解質部20とを積層し巻回して作製した円筒型電池2の模式図である。
【0088】
支持体30は、第1面と第2面とを有する薄膜状の部材である。支持体30の第1面には第(4j-3)電極104j-3及び第4j電極104jが配置され、支持体30の第2面には第(4j-2)電極104j-2及び第(4j-1)電極104j-1が形成されている(jはnが奇数の場合は1≦j≦(n+1)/2、nが偶数の場合は1≦j≦n/2)。つまり、第1面には、第1電極、第4電極、第5電極、第8電極、・・・第(2n-3)電極、第2n電極といったように、複数の電極が形成される。また、第2面には、第2電極、第3電極、第6電極、第7電極、・・・第(2n-2)電極、第(2n-1)電極といったように、複数の電極が形成される。また、第(4j-2)電極104j-2と第(4j-1)電極104j-1は電気的に接続されている。また、第(4j-3)電極104j-3と第4j電極104jは電気的に接続されていないが、第(4j+1)電極と第4j電極104jとは電気的に接続されている。これら電極10は番号順に一列に配置されてもよいし、その他の規則に沿って配置されてもよく、不規則に配置されてもよい。第1電極(j=1)は、タブ電極70bに接続され、第2n電極(j=n/2)は、タブ電極70aに接続される。
【0089】
円筒型電池2は、上記の支持体30と電極10とを積層したものと、電解質部20とを積層させ、得られた積層体とを巻回することで得られる。円筒型電池2では、第(4j-3)電極104j-3と第(4j-2)電極104j-2は電解質部20を介して向かい合う位置に、第(4j-1)電極104j-1と第4j電極104jは電解質部20を介して向かい合う位置に配置されている。この構成であれば、少ない部材数で円筒型電池2を構成でき、電池内の活物質量を大きくできるため、電池容量を大きくすることができる。
【0090】
図15は、電解質部20に電極部を形成した部材と、支持体30とを積層し巻回して作製した円筒型電池2の模式図である。
【0091】
電解質部20は、第1面と第2面とを有する薄膜状の部材である。電解質部20の第1面には第(4j-3)電極104j-3及び第4j電極104jが配置され、電解質部20の第2面には第(4j-2)電極104j-2及び第(4j-1)電極104j-1が形成されている(jはnが奇数の場合は1≦j≦(n+1)/2、nが偶数の場合は1≦j≦n/2)。つまり、第1面には、第1電極、第4電極、第5電極、第8電極、・・・第(2n-3)電極、第2n電極といったように、複数の電極が形成される。また、第2面には、第2電極、第3電極、第6電極、第7電極、・・・第(2n-2)電極、第(2n-1)電極といったように、複数の電極が形成される。また、第(4j-2)電極104j-2と第(4j-1)電極104j-1は電気的に接続されている。また、第(4j-3)電極104j-3と第4j電極104jは電気的に接続されていないが、第(4j+1)電極と第4j電極104jとは電気的に接続されている。これら電極10は番号順に一列に配置されてもよいし、その他の規則に沿って配置されてもよく、不規則に配置されてもよい。第1電極(j=1)は、タブ電極70bに接続され、第2n電極(j=n/2)は、タブ電極70aに接続される。
【0092】
円筒型電池2は、上記の電解質部20と電極10との積層体したものと、支持体30とを積層させ、得られた積層体とを巻回することで得られる。円筒型電池2では、第(4j-3)電極104j-3と第(4j-2)電極104j-2は電解質部20を介して向かい合う位置に、第(4j-1)電極104j-1と第4j電極104jは電解質部20を介して向かい合う位置に配置されている。この構成であれば、少ない部材数で円筒型電池2を構成でき、電池内の活物質量を大きくできるため、電池容量を大きくすることができる。さらに、電解質部20と電極との位置関係が巻回前に決まるため、位置ずれの問題が生じにくい。
【0093】
図16は、電解質部20に電極部の一部を形成した部材と、支持体30に電極部の一部を形成した部材とを積層し巻回して作製した円筒型電池2の模式図である。
【0094】
電解質部20及び支持体30は、第1面と第2面とを有する薄膜状の部材である。電解質部20の第1面には第(4j-3)電極104j-3及び第4j電極104jが配置され、支持体30の第1面には第(4j-2)電極104j-2及び第(4j-1)電極104j-1が形成されている(jはnが奇数の場合は1≦j≦(n+1)/2、nが偶数の場合は1≦j≦n/2)。つまり、電解質部20の第1面には、第1電極、第4電極、第5電極、第8電極、・・・第(2n-3)電極、第2n電極といったように、複数の電極が形成される。また、支持体30の第1面には、第2電極、第3電極、第6電極、第7電極、・・・第(2n-2)電極、第(2n-1)電極といったように、複数の電極が形成される。また、第(4j-2)電極104j-2と第(4j-1)電極104j-1は電気的に接続されている。また、第(4j-3)電極104j-3と第4j電極104jは電気的に接続されていないが、第(4j+1)電極と第4j電極104jとは電気的に接続されている。これら電極10は番号順に一列に配置されてもよいし、その他の規則に沿って配置されてもよく、不規則に配置されてもよい。第1電極(j=1)は、タブ電極70bに接続され、第2n電極(j=n/2)は、タブ電極70aに接続される。
【0095】
円筒型電池2は、上記の支持体30と電極10とを積層したものと、電解質部20と電極10とを積層したものを、支持体30の第2面に電解質部20の第1面の電極10が接触するように積層させ、得られた積層体とを巻回することで得られる。円筒型電池2では、第(4j-3)電極104j-3と第(4j-2)電極104j-2は電解質部20を介して向かい合う位置に、第(4j-1)電極104j-1と第4j電極104jは電解質部20を介して向かい合う位置に配置されている。この構成であれば、少ない部材数で円筒型電池2を構成でき、電池内の活物質量を大きくできるため、電池容量を大きくすることができる。さらに、電解質または支持体30の片面に電極を形成すればよいため、製造が容易である。
【0096】
(円筒型電池の最適なパラメーター)
以下に示すパラメーターは、円筒型電池の状態において、高電圧を出力可能となる円筒型電池の好適なパラメーターである。
【0097】
図17は、本発明の実施の形態にかかる円筒型電池の一部を表す図である。第(2m-1)電極10
2m-1の電解質部20に接する面と、第2m電極10
2mの電解質部20に接する面との距離(
図17のW)は、1mm以下であれば電池の内部抵抗を低減できるため好ましく、0.5mm以下であれば電池を小型化できるためより好ましく、0.1mm以下であれば折り曲げへの耐久性が向上するためさらに好ましい。また、第(2m-1)電極10
2m-1の電解質部20に接する面と、第2m電極10
2mの電解質部20に接する面との距離(
図17のW)は、0.1μm以上であれば絶縁性を保てるため好ましく、1μm以上であれば既存の部材及び設備での生産が可能となり歩留まりを向上できるため好ましく、5μm以上であれば外部応力が加わっても絶縁性を保てるためさらに好ましい。
【0098】
第(2m-1)電極10
2m-1と第(2m+2)電極10
2m+2とをつなぐ電解質部20の部位の大きさ(
図17のL)は、0.01mm以上であれば直列接続により高電圧が得られるため好ましく、0.1mm以上であれば加工が容易になりコスト削減の観点からより好ましく、1mm以上であれば自己放電を小さくできるためさらに好ましい。また、第(2m-1)電極10
2m-1と第(2m+2)電極10
2m+2とをつなぐ電解質部20の部位の大きさ(
図17のL)は、小型化の観点から100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。
【0099】
電解質部20の厚さ(
図17のd)は、1mm以下であれば電池の内部抵抗を低減できるため好ましく、0.5mm以下であれば電池を小型化できるためより好ましく、0.1mm以下であれば折り曲げへの耐久性が向上するためさらに好ましい。また、電解質部20の厚さ(
図17のd)は、0.1μm以上であれば絶縁性を保てるため好ましく、1μm以上であれば既存の部材及び設備での生産が可能となり歩留まりを向上できるため好ましく、5μm以上であれば外部応力が加わっても絶縁性を保てるためさらに好ましい。
【0100】
電解質部20はイオン伝導度の分布を有してもよい。例えば、第(2m-1)電極102m-1と第(2m+2)電極102m+2の間に位置する電解質部20のイオン伝導度は、第(2m-1)電極102m-1と第2m電極102mの間のイオン伝導度よりも小さくすることが好ましい。具体的には、(第(2m-1)電極と第(2m+2)電極の間に位置する電解質部20のイオン伝導度)/(第(2m-1)電極と第2m電極の間のイオン伝導度)の比は、1/2以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましく、1/50以下であることがさらに好ましい。イオン伝導度の分布を有する電解質部20の構成は特に限定されないが、例えば、電解質部20の第(2m-1)電極102m-1と第(2m+2)電極102m+2の間の部分に、イオン伝導性の低い材料が形成された構成などが例示される。イオン伝導性の低い材料は、塗布・貼合等の手段により形成されてもよい。
【0101】
電解質部20はイオン伝導度に異方性を有していてもよい。例えば、第(2m-1)電極102m-1の面及び第2m電極102mの面に対して垂直方向へのイオン伝導度が、前記面に対して水平方向へのイオン伝導度よりも高いことが好ましい。垂直方向のイオン伝導度は、水平方向のイオン伝導度の2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましい。
【0102】
図18は、本発明の実施の形態にかかる円筒型電池の、円柱の高さ方向の円の中心を通る面で切った断面を示す図である。電解質部20の、電気化学エレメントが並ぶ向きに直行する向きの大きさ(
図18のWe)は、電極の幅(
図18のWm)と概同一であることが好ましい。We/Wmの値は、0.90以上であれば内部抵抗を小さくできるためが好ましく、0.95以上であれば活物質の利用効率が高いためより好ましく、0.97以上であれば電極同士の接触を防止できるためさらに好ましい。また、We/Wmの値は、1.1以下であれば直列接続により高電圧を得ることができるため好ましく、1.05以下であれば自己放電を小さくできるためより好ましく、1.03以下であれば材料の利用効率が高く低コスト化できるためさらに好ましい。
【0103】
(部材)
(電極部)
本実施形態の電池は、2n個の電極を含む電極部を有する。この2n個の電極のうち、n個は電気化学エレメントの正極となり、残るn個が負極となる。
【0104】
電極は、単一の材料から構成されてもよいし、複数の材料を複合化して構成してもよい。電極は、例えば、集電体、電極活物質、バインダー、導電助剤、電解質、溶媒、添加剤等を複合化して構成してもよい。
【0105】
(集電体)
集電体は、電極活物質が酸化還元反応して生成したキャリアを伝導する役割を有するため、電気抵抗率の小さい材料を用いることが好ましい。集電体の電気抵抗率は、10mΩcm以下であることが好ましく、1mΩcm以下であることがより好ましく、100μΩcm以下であることがさらに好ましい。
【0106】
集電体の電気抵抗は、1kΩ以下であることが好ましく、100Ω以下であることがより好ましく、10Ω以下であることがさらに好ましい。
【0107】
集電体の材料としては、導電性があれば特に限定はなく、例えば炭素系材料、金属材料、導電性セラミックス、導電性プラスチックス等を用いることができる。炭素系材料としては、活性炭、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等)、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレンなどが例示される。金属材料としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ニオブ、モリブデン、パラジウム、カドミウム、インジウム、錫、アンチモン、ランタン、タンタル、タングステン、プラチナ、鉛等の金属及びこれら金属の酸化物、窒化物、炭化物、塩、合金などを用いることができる。導電性セラミックスとしては、インジウムースズ酸化物、インジウム―亜鉛酸化物、インジウム―ガリウム―亜鉛酸化物などが例示される。導電性有機物としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、PEDOT等のπ共役分子及びPEDOT/PSS等のπ共役分子とドーパントからなる材料等を用いることができる。集電体は、使用環境においてそれ自体酸化還元しない安定な材料又は安定な被膜を形成する材料であることが好ましく、特に炭素系材料、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン及びこれらの合金であることが好ましい。
【0108】
(導電助剤)
導電助剤は、導電性を有する粉体材料を用いることができる。
【0109】
導電助剤の材料としては、導電性があれば特に限定はなく、例えば炭素系材料、金属材料、導電性セラミックス、導電性プラスチックス等を用いることができる。炭素系材料としては、活性炭、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等)、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレンなどが例示される。金属材料としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ニオブ、モリブデン、パラジウム、カドミウム、インジウム、錫、アンチモン、ランタン、タンタル、タングステン、プラチナ、鉛等の金属及びこれら金属の酸化物、窒化物、炭化物、塩、合金などを用いることができる。導電性セラミックスとしては、インジウムースズ酸化物、インジウム―亜鉛酸化物、インジウム―ガリウム―亜鉛酸化物などが例示される。導電性有機物としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、PEDOT等のπ共役分子及びPEDOT/PSS等のπ共役分子とドーパントからなる材料等を用いることができる。導電助剤は、使用環境においてそれ自体酸化還元しない安定な材料又は安定な被膜を形成する材料であることが好ましく、特に炭素系材料、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン及びこれらの合金であることが好ましい。また、これら導電性の材料が、シリカやアクリルビーズ等の粉体材料の表面にコーティングされた材料を用いることもできる。
【0110】
導電助剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることがさらに好ましい。また、導電助剤の平均粒子径は、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0111】
導電助剤の形状は、特に限定はなく、球、多面体、円柱、円錐、円筒、角錐、角柱等であってもよい。
【0112】
導電助剤として、導電性繊維を用いることもできる。導電性繊維としては、例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、繊維の中に導電性の金属や炭素系材料を分散させた導電性繊維、繊維表面に導電性材料をコーティングした導電性繊維等を用いることができる。
【0113】
(バインダー)
バインダーは、電極活物質、導電助剤、集電体を結着固定することができれば特に限定されない。例えば、でんぷん、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン―ブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸等)、ビニル樹脂(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等)、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネートなどを用いることができる。
【0114】
(正極)
第(2k-1)電極と第2k電極のいずれかを正極とすることができる。正極においては、電子を消費して還元反応が起こる。従って、正極自体は標準電極電位が大きいことが好ましい。正極の標準電極電位は、―300mV以上であることが好ましく、0V以上であることがより好ましく、+500mV以上であることがさらに好ましい。また、正極の標準電極電位は、3.5V以下であれば有機溶媒系の電解質で利用可能となり、2.5V以下であれば水系電解質で利用可能であり、1.5V以下であれば水をほぼ電気分解することなく利用できる。
【0115】
正極の電気抵抗は、利用時にジュール熱としてエネルギーロスの原因となるため、100kΩcm以下であることが好ましく、10kΩcmであることがより好ましく、1kΩcmであることがさらに好ましい。
【0116】
(正極活物質)
正極において、正極活物質の還元が起こる。
【0117】
正極活物質の標準電極電位は、-300mV以上であることが好ましく、0mV以上であることがより好ましく、+500mV以上であることがさらに好ましい。また、正極活物質の標準電極電位は、3.5V以下であれば有機溶媒系の電解質で利用可能となり、2.5V以下であれば水系電解質で利用可能であり、1.5V以下であれば水をほぼ電気分解することなく利用できる。
【0118】
正極活物質としては、上記標準電極電池を有する材料であれば特に限定されないが、有機材料、無機材料、有機無機複合を用いることができる。具体的な材料は、論文、特許、電気化学便覧等、既報文献に記載の材料の中から適切な標準電極電位を有する物質を選んで用いることができる。特に、水系電解質を用いる場合は、酸化マンガン(MnO2、Mn2O3、MnO(OH)、MnO、Mn3O4、MnO3、Mn2O7等)、酸化銀(AgO2等)、酸素、オゾン、酸化鉛(PbO2等)、酸化ニッケル(Ni2O3等)、水酸化ニッケル(Ni(OH)2等)、オキシ水酸化ニッケル(NiO(OH)等)、酸化銅(Cu2O、CuO等)、酸化クロム(CrO、Cr2O3、CrO2、CrO3等)、酸化鉄(Fe2O3、FeO、Fe3O4等)を用いることができる。また、非水系電解質を用いる場合は、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カルシウムイオン電池、マグネシウム電池等に使用される正極活物質を用いることができる。具体的には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属とそれ以外の金属(Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Alなど)とで構成される金属酸化物が例示される。
【0119】
(負極)
第(2k-1)電極と第2k電極のいずれかを負極とすることができる。負極においては、負極活物質が酸化され、電子を放出する。従って、負極には標準電極電位が小さい物質を用いることが好ましい。負極の標準電極電位は、-200mV以下であることが好ましく、-500mV以下であることがより好ましく、-700mV以下であることがさらに好ましい。また、負極の標準電極電位は、-3.5V以上であれば有機溶媒系の電解質で利用可能となり、-2.5V以上であれば水系電解質で利用可能であり、-1.5V以上であれば水をほぼ電気分解することなく利用できる。
【0120】
負極の電気抵抗は、利用時にジュール熱としてエネルギーロスの原因となるため、100kΩcm以下であることが好ましく、10kΩcmであることがより好ましく、1kΩcmであることがさらに好ましい。
【0121】
(負極活物質)
負極では、負極活物質の還元が起こる。
【0122】
負極活物質の標準電極電位は、-200mV以下であることが好ましく、-500mV以下であることがより好ましく、-700mVmV以下であることがさらに好ましい。また、負極活物質の標準電極電位は、-3.5V以上であれば有機溶媒系の電解質で利用可能となり、―2.5V以上であれば水系電解質で利用可能であり、―1.5V以上であれば水をほぼ電気分解することなく利用できる。
【0123】
負極活物質としては、上記標準電極電池を有する材料であれば特に限定されないが、有機材料、無機材料、有機無機複合を用いることができる。具体的な材料は、論文、特許、電気化学便覧等、既報文献に記載の材料の中から適切な標準電極電位を有する物質を選んで用いることができる。特に、水系電解質を用いる場合は、Zn、Pb、Cd、Mg、水素吸蔵合金、メタノール、ヒドラジン、水素、一酸化炭素、ギ酸、アミノカルボン酸系キレート剤(エチレンジアミンテトラ酢酸等)を用いることができる。また、非水系電解質を用いる場合は、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カルシウムイオン電池、マグネシウム電池等に使用される正極活物質を用いることができる。具体的には、炭素系材料(ハードカーボン、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体、コークス類、炭化ケイ素等)、導電性高分子(ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、PEDOT等)、金属(Li、Sn、Si、Al、Zr、Mg、Ti等)及びこれらの合金、金属酸化物(酸化チタン、リチウム―チタン酸化物、ケイ素酸化物等)等が例示される。
【0124】
(電解質部)
電解質部はイオン伝導性を有する部材である。
【0125】
電解質部の形態としては、液体、固体、ゲル及びこれらを組み合わせた形態等を利用できる。
【0126】
電解質部を構成する材料に特に限定はないが、電解質、溶媒、セパレーター、マトリックスポリマー、添加剤等を利用できる。電解質部の構成として、具体的には、電解質と溶媒から成る電解液を含んだセパレーター、電解液がマトリックスポリマーにゲル化されてなるゲル電解質、少量の溶媒を含有した固体の電解質、無機固体電解質、高分子固体電解質などが例示される。
【0127】
(電解質)
電解質は、溶媒中に溶解した際に陽イオンと陰イオンに電離する材料である。電解質の種類に特に制限はない。電解質として、酸、塩基、塩のいずれも用いることができる。酸としては、例えば、ハロゲン化水素(HCl、HBr、HF、HI等)、ハロゲンオキソ酸(次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸等)、H2SO4、フルオロスルホン酸、HNO3、H3PO4、H3BO3、スルホン酸(p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等)、カルボン酸(酢酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸等)等が例示される。塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物(KOH、NaOH、LiOH等)、アルカリ土類金属水酸化物(Ca(OH)2等)NH3等が例示される。塩としては、例えば、上記した酸と塩基を反応して生成する物質を用いることができる他、一般的な電池に用いられる電解質(例えば、ZnCl2、NH4Cl、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiCl、LiBr、LiN(CF3SO2)2等)を用いることができる。
【0128】
(溶媒)
溶媒は、電解質を溶解できれば特に限定されず、水、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒等を用いることができる。溶媒としては、例えば、水、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、フェノール、エチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル等)、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、4メチル1,3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が例示される。
【0129】
(セパレーター)
セパレーターには、多孔性の部材を用いることができる。セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系微多孔膜や、ビニロン繊維、ナイロン繊維、マーセル化パルプ、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等を用いた不織布等が例示される。
【0130】
セパレーターの厚さは、正極と負極とを確実に隔離するために1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0131】
セパレーターの空孔率は、電池の内部抵抗を低減するために、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。セパレーターの空孔率は、セパレーターの強度を高め電池の安全性を確保するために、70%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましく、60%以下であることがさらに好ましい。
【0132】
セパレーターの孔径は、イオンの透過性を向上させ内部抵抗を低減するために、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることがさらに好ましく、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。
【0133】
(マトリックスポリマー)
ゲル電解質のマトリックスポリマーとしては、溶媒を吸収してゲル化するものであれば制限はなく、例えば、上記バインダーと同様の材料を用いることができる。
【0134】
(少量の溶媒を含有した固体の電解質)
板状に成型した塩に溶媒を含ませることで、電解質部とすることができる。
【0135】
(無機固体電解質)
無機固体電解質は、窒化リチウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。
【0136】
(高分子固体電解質)
高分子固体電解質は、電解質塩とそれを溶解する高分子化合物からなる。高分子化合物としては、ポリ(エチレンオキサイド)や同架橋体などのエーテル系高分子、ポリ(メタクリレート)エステル系、アクリレート系などを単独または分子中に共重合若しくは混合して用いることができる。
【0137】
(支持体)
支持体は、電極部や電解質部及びそれらの積層体を支持するために用いる。
【0138】
支持体としては、電極、電解質部等を支持できれば特に限定はなく、有機材料、無機材料、有機無機複合材料等を用いることができる。
【0139】
有機材料として具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、シリコーン、セルロース、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、天然ゴム、合成ゴム、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。無機材料として具体的には、アルミナ、セラミックス、ガラス等を用いることができる。
【0140】
また、支持体の形態としては、板、フィルム、多孔性ポリマー膜、不織布、織布等が例示される。
【0141】
(製造装置)
図19は、円筒型電池の製造装置の一例を表す図である。この製造装置100は、電極部が形成されたシート状部材を繰り出す電極部繰り出し部110と、電解質部が形成されたシート状部材を繰り出す電解質部繰り出し部120と、それらシート状部材を積層する積層部130と、積層した部材を円筒状に巻回する巻回部140とを有する。電極部が形成されたシート状部材は、ローラ150a、150bの回転により積層部130へと繰り出され、電解質部が形成されたシート状部材は、ローラ150c、150dの回転により積層部130へと繰り出される。
【0142】
(電極部の製造方法)
シート状の電極部は例えば以下のように作製することができる。活物質、バインダー、導電助剤等を混合した電極スラリーを作製する。第1面と第1面とは反対側に第2面とを有する薄膜状の集電体の、第1面に粘着剤を配置し、第2面に電極スラリーを塗布することで電極を作製する。上記電極を、フィルム状の支持体30上の所定の位置に貼合することでシート状の電極部を作製することができる。
【0143】
フィルム状の支持体30上に集電体を貼合し、フォトリソグラフィによりパターニングする。パターニングされた集電体の所定の位置に電極スラリーを塗布することでも、シート状の電極部を形成することができる。
【0144】
(組み立て工程)
巻回機を用いて、シート状の電極部とセパレーターとを積層・巻回することで、電極巻回体を形成する。外装材料の中に、この電極巻回体と電解液を入れ、外装材料を封止することで電池を作製することができる。
【実施例0145】
(起電力の評価方法)
以下の実施例・比較例にて作製した電池の起電力は、デジタルマルチメーター(横河計測株式会社、型番73401)を用いて評価した。
【0146】
(短絡電流の評価方法)
以下の実施例・比較例にて作製した電池の短絡電流は、以下の方法にて評価した。デジタルマルチメーター(横河計測、型番73401)を電流測定モードにし、電極間を、デジタルマルチメーターを介して接続し、電流を測定した。ここで、第1電極と第2n電極との短絡電流の絶対値を順電流と呼ぶことにし、1≦m≦(n-1)における第2m電極と第(2m+1)電極との短絡電流の平均値の絶対値を逆電流と呼ぶことにする。
【0147】
(電極間抵抗の評価方法)
以下の実施例・比較例にて作製した電池の2つの電極間の抵抗は、(起電力)/{(順電流)×n}によって求めた。
【0148】
(製造例1)
製造例1にかかる正極を以下のようにして作成した。
黒鉛粉末(アズワン株式会社、品番3-8530-04)3g、二酸化マンガン粉末(アズワン株式会社、品番89-0065-27)1.5g、AntiTerra250(BYK社)0.3g、木工用接着剤(セメダイン株式会社、品番CA224)4.5g、蒸留水3gを、乳鉢を用いて混合し、正極ペースト1を作成した。
厚さ0.032mmの銅箔上に、正極ペースト1をウェット膜厚0.15mmとなるように塗布し、80℃で10分間加熱乾燥することで、正極を作成した。
【0149】
(実施例1-1)
実施例1-1の電池を以下のようにして作成した。
【0150】
(電極部)
電極シートは、PETフィルム(厚さ0.025mm)上に、第1電極、第3電極及び第5電極として厚さ0.032mmの亜鉛薄膜を、第2電極、第4電極及び第6電極として製造例1の正極を形成した。製造例1の正極は、銅箔側の面がPETフィルムに接触するようにした。各電極の大きさは縦20mm、横25mmである。第1電極から第2n電極(n=3)は、電極の番号の順にしたがって、すべて同一平面上に横方向が一列になるように配置した。第1電極と第2電極、第3電極と第4電極、第5電極と第6電極の間には5mmの隙間を設けた、第2電極と第3電極を電気的に接続し、第4電極と第5電極を電気的に接続した。タブ電極として銅箔を第1電極と第6電極にはんだ付けによって電気的に接続した。
【0151】
(電解質部)
幅30mm、長さ250mm、厚さ50μm、坪量45gのセルロース紙に、10%食塩水を含ませた。
【0152】
(組み立て)
電極シートの各電極が形成された面が、電解質部に接触するように、また、各電極の位置関係を維持したまま、電極シート、電解質部の順に積層し、実施例1-1の電池を作製した。電極シート、電解質部を積層する際には、電極の縦方向と電解質部の幅方向が一致し、電極の横方向と電解質部の長さ方向が一致するように積層した。
【0153】
(評価)
実施例1-1の電池は、起電力2.4V、短絡電流2.5mAであった。本電池において、正極活物質は二酸化マンガンであり、負極活物質は亜鉛であると考えられる。作製した電池の起電力、電極間抵抗、短絡電流、電解質部の抵抗の評価結果について、表1に示す。
【0154】
(実施例1-2~実施例1-4)
実施例1-2の電池は、第1電極と第2電極の間の距離、第3電極と第4電極の間の距離、第5電極と第6電極の間の距離を、それぞれ1mmにした以外は実施例1-1と同様にして作製した。実施例1-3の電池は、第1電極と第2電極の間の距離、第3電極と第4電極の間の距離、第5電極と第6電極の間の距離を、それぞれ10mmにした以外は実施例1-1と同様にして作製した。実施例1-4の電池は、第1電極と第2電極の間の距離、第3電極と第4電極の間の距離、第5電極と第6電極の間の距離を、それぞれ20mmにした以外は実施例1-1と同様にして作製した。作製した電池の起電力、電極間抵抗、短絡電流、電解質部の抵抗の評価結果について、表1に示す。
【0155】
(実施例1-5)
実施例1-5の電池を以下のようにして作成した。
【0156】
(電極部)
電極シートは、PETフィルム(厚さ0.025mm)上に、第1電極、第3電極、第5電極及び第7電極として厚さ0.032mmの亜鉛薄膜を、第2電極、第4電極、第6電極及び第8電極として製造例1の正極を形成した。各電極の大きさは縦20mm、横25mmである。第1電極から第2n電極(n=4)は、電極の番号の順にしたがって、すべて同一平面上に横方向が一列になるように配置した。第1電極と第2電極、第3電極と第4電極、第5電極と第6電極、及び、第7電極と第8電極の間にはそれぞれ5mmの隙間を設け、第2電極と第3電極を電気的に接続し、第4電極と第5電極を電気的に接続し、第6電極と第7電極を電気的に接続した。タブ電極として銅箔を第1電極と第8電極にはんだ付けによって電気的に接続した。
【0157】
(電解質部)
幅30mm、長さ340mm、厚さ50μm、坪量45gのセルロース紙に、10%食塩水を含ませた。
【0158】
(組み立て)
電極シートの各電極が形成された面が、電解質部に接触するように、また、各電極の位置関係を維持したまま、電極シート、電解質部の順に積層し、実施例1-5の電池を作製した。電極シート、電解質部を積層する際には、電極の縦方向と電解質部の幅方向が一致し、電極の横方向と電解質部の長さ方向が一致するように積層した。作製した電池の起電力、電極間抵抗、短絡電流、電解質部の抵抗の評価結果について、表1に示す。
【0159】
(実施例1-6、実施例1-7)
実施例1-6及び実施例1-7の電池は、電解質部に用いるセルロース紙の幅をそれぞれ25mm、20mmにした以外は、実施例1-1と同様にして作製した。作製した電池の起電力、電極間抵抗、短絡電流、電解質部の抵抗の評価結果について、表1に示す。
【0160】
(実施例2-1)
実施例2-1の電池を以下のようにして作製した。
【0161】
(電極部)
第1電極、第3電極、第5電極及び第7電極として厚さ0.032mmの亜鉛薄膜を、第2電極、第4電極、第6電極及び第8電極として製造例1の正極を用いた。各電極の大きさは縦20mm、横25mmである。第1の電極シートを、以下のように作製した。第1のPETフィルム(厚さ0.025mm)上に、第1電極、第4電極、第5電極及び第8電極を、電極の番号の順にしたがって、隣り合う電極との距離を5mm設け、横方向が一列になるように形成した。第4電極と第5電極とを電気的に接続し、第1電極と第4電極の間に5mmの隙間を設け、第5電極と第8電極との間に5mmの隙間を設けた。タブ電極として銅箔を第1電極及び第8電極に電気的に接続した。また、第2の電極シートを以下のように作製した。第2のPETフィルム(厚さ0.025mm)上に、第2電極、第3電極、第6電極及び第7電極を、電極の番号の順にしたがって、隣り合う電極との距離を5mm設け、横方向が一列になるように形成した。第2電極と第3電極とを電気的に接続し、第6電極と第7電極とを電気的に接続した。第3電極と第6電極の間は5mmの隙間を設けた。
【0162】
(電解質部)
幅20mm、長さ180mm、厚さ50μm、坪量45gのセルロース紙に、10%食塩水を含ませた。
(組み立て)
第1の電極シート、電解質部、第2の電極シートの順に積層し、実施例2-1の電池を作製した。この場合において、電極の位置関係を維持したまま、第1の電極シートの各電極が形成された面が、電解質部に接触するように、また、電極の位置関係を維持したまま、第2の電極シートの各電極が形成された面が、電解質部に接触するように、第1の電極シート、電解質部及び第2の電極シートを積層した。第1の電極シート、電解質部、第2の電極シートを積層する際には、電極の縦方向と電解質部の幅方向が一致し、電極の横方向と電解質部の長さ方向が一致するように積層した。また、第1電極と第2電極の縦方向と横方向を一致させ、第1電極と第2電極の平面全体が重なるような位置で、積層した。同様に、第(2k-1)電極と第2k電極(本実施例の場合、第3電極と第4電極、第5電極と第6電極、第7電極と第8電極)のそれぞれについても、縦方向と横方向を一致させ、電極の平面全体が重なるような位置で、積層した。
【0163】
(評価)
実施例2-1の電池は、起電力3.4V、短絡電流58mAであった。本電池において、正極活物質は二酸化マンガンであり、負極活物質は亜鉛であると考えられる。作製した起電力、電極間抵抗、短絡電流、電解質部の抵抗の評価結果について、表2に示す。
【0164】
(実施例2-2~実施例2-4)
実施例2-2の電池は、第1電極と第4電極との間の距離、第3電極と第6電極との間の距離及び第5電極と第8電極との間の距離を、10mmに変更した以外は、実施例2-1と同様にして作製した。実施例2-3の電池は、第1電極と第4電極との間の距離、第3電極と第6電極との間の距離及び第5電極と第8電極との間の距離を、20mmに変更した以外は、実施例2-1と同様にして作製した。実施例2-4の電池は、第1電極と第4電極との間の距離、第3電極と第6電極との間の距離及び第5電極と第8電極との間の距離を、1mmに変更した以外は、実施例2-1と同様にして作製した。製した電池の起電力、電極間抵抗、短絡電流、電解質部の抵抗の評価結果について、表2に示す。
【0165】
(実施例2-5)
実施例2-5の電池は、以下に示す電極シートを用いたこと及び電解質部に用いるセルロース紙の長さを310mmにしたこと以外は実施例2-1と同様にして作製した。
【0166】
(電極シート)
第1電極、第3電極、第5電極、第7電極、第9電極、第11電極、第13電極、第15電極、第17電極及び第19電極として厚さ0.032mmの亜鉛薄膜を、第2電極、第4電極、第6電極、第8電極、第10電極、第12電極、第14電極、第16電極、第18電極及び第20電極として製造例1の正極を用いた。各電極の大きさは縦20mm、横25mmである。第1の電極シートを、以下のように作製した。第1のPETフィルム(厚さ0.025mm)上に、第1電極、第4電極、第5電極、第8電極、第9電極、第12電極、第13電極、第16電極、第17電極及び第20電極を、電極の番号の順にしたがって、隣り合う電極との距離を5mm設け、横方向が一列になるように形成した。第4電極と第5電極とを電気的に接続し、第8電極と第9電極とを電気的に接続し、第12電極と第13電極とを電気的に接続し、第16電極と第17電極とを電気的に接続した。タブ電極として銅箔を第1電極及び第20電極に電気的に接続した。また、第2の電極シートを以下のように作製した。第2のPETフィルム(厚さ0.025mm)上に、第2電極、第3電極、第6電極、第7電極、第10電極、第11電極、第14電極、第15電極、第18電極及び第19電極を、電極の番号の順にしたがって、隣り合う電極との距離を5mm設け、横方向が一列になるように形成した。第2電極と第3電極とを電気的に接続し、第6電極と第7電極とを電気的に接続し、第10電極と第11電極とを電気的に接続し、第14電極と第15電極とを電気的に接続し、第18電極と第19電極とを電気的に接続した。
【0167】
作製した電池の起電力、電極間抵抗、短絡電流、電解質部の抵抗の評価結果について、表2に示す。
【0168】
(実施例2-6)
実施例2-6の電池は、第2k電極として製造例1の正極の代わりに厚さ0.032mmの銅箔を用いた以外は、実施例2-5と同様にして作製した。この場合、正極活物質は銅箔表面に形成された酸化銅であり、負極活物質は亜鉛であると考えられる。作製した電池の起電力、電極間抵抗、短絡電流、電解質部の抵抗の評価結果について、表2に示す。
【0169】
(実施例2-7)
実施例2-7の電池は、製造例1の正極に代わって厚さ0.032mmの銅箔を用いた以外は、実施例2-4と同様にして作製した。この場合、正極活物質は銅箔表面に形成された酸化銅であり、負極活物質は亜鉛であると考えられる。作製した電池の起電力、電極間抵抗、短絡電流、電解質部の抵抗の評価結果について、表2に示す。
【0170】
(実施例2-8~実施例2-11)
実施例2-8~実施例2-11の電池は、電解質部に用いるセルロース紙の幅をそれぞれ25mm、21mm、20mm、19mmにした以外は、実施例2-1と同様にして作製した。作製した電池の起電力、電極間抵抗、短絡電流、電解質部の抵抗の評価結果について、表2に示す。
【0171】
作製した電池は発火及び爆発の危険性のない水系電解液を用いながら、起電力2.0~7.1Vという、水系電解質の常識を覆す高電圧を出力した。厚さは0.2mm程度のフィルム状であり、小型化にも成功した。
【0172】
【0173】