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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067017
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】木材加工装置
(51)【国際特許分類】
   B27C 9/04 20060101AFI20220422BHJP
   B27G 13/14 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
B27C9/04
B27G13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175696
(22)【出願日】2020-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】390017385
【氏名又は名称】宮川工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155549
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 敏之
(72)【発明者】
【氏名】中川 活秀
(72)【発明者】
【氏名】小松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】袴田 健寛
(57)【要約】      (修正有)
【課題】仕口を含めた加工木材に対する切削加工を好適に実施可能な木材加工装置を提供する。
【解決手段】木材プレカット加工装置は、オス材の蟻部141を切削加工によって形成可能に鋭角な断面形状の外周部分を有する第1カッタ151と、第1カッタ151の外径より大きな円柱状の外周部分152aを有する第2カッタ152とを組み合わせた組合せ刃物44cで加工木材Kを加工し、横架材に利用可能なオス材143の仕口としての蟻部141と腰掛部142とを形成し、また、柱材の「ほぞ」を形成することができる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状の異なる複数の刃部を回転させることによって加工木材に対してオス材の仕口の切削加工が可能に構成された木材加工装置であって、
前記刃部を備えた刃物として、1つの回転軸に対して、形状の異なる加工をするための2つの刃部を組み合わせた組合せ刃物が設けられ、
当該組合せ刃物として、オス材の蟻部を切削加工によって形成可能に鋭角な断面形状の外周部分を有する刃部としての第1カッタと、当該第1カッタの外径より大きな円柱状の外周部分を有する刃部としての第2カッタとが組み合わされた組合せ刃物が少なくとも1以上設けられ、
前記第2カッタを用いて、横架材に使用可能なオス材の腰掛部と、柱材に使用可能なオス材のほぞとを、切削加工によって形成することを特徴とする木材加工装置。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を加工可能な木材加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の木材加工装置として、継手に使用される仕口の加工が可能な刃物を利用する構成が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-080860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仕口の加工が可能な刃物に関する構成について、未だ改良の余地がある可能性があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、仕口を含めた加工木材に対する切削加工を好適に実施可能な木材加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1に記載の木材加工装置は、
形状の異なる複数の刃部を回転させることによって加工木材に対してオス材の仕口の切削加工が可能に構成された木材加工装置であって、
前記刃部を備えた刃物として、1つの回転軸に対して、形状の異なる加工をするための2つの刃部を組み合わせた組合せ刃物が設けられ、
当該組合せ刃物として、オス材の蟻部を切削加工によって形成可能に鋭角な断面形状の外周部分を有する刃部としての第1カッタと、当該第1カッタの外径より大きな円柱状の外周部分を有する刃部としての第2カッタとが組み合わされた組合せ刃物が少なくとも1以上設けられ、
前記第2カッタを用いて、横架材に使用可能なオス材の腰掛部と、柱材のほぞとを、切削加工によって形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の木材加工装置によれば、1つの組合せ刃物を用いて、横架材に利用可能なオス材の仕口として蟻部と腰掛部とを形成し、また、柱材の「ほぞ」を形成することができる。このため、1つの刃物を用いて加工可能な対象を増やすことができ、木材加工装置に別の刃物を追加し易くすることもできる。よって、仕口を含めた加工木材に対する切削加工を好適に実施可能な木材加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】木材プレカット加工装置の平面図である。
図2】木材加工機の斜視図である。
図3】木材加工機を搬送経路に交差する側面側から見た図である。
図4】木材加工機を搬送経路に沿った方向側から見た図である。
図5】搬送装置の上側搬送部を説明するための図である。
図6】保持機構を示した図である。
図7】(A)は、チェーンソーと取付部とを示した斜視図であり、(B)は、(A)に対してチェーンソーと取付部とが連結された状態の連結部分を示した斜視図である。
図8】チェーンソーの給油装置を示した図である。
図9】(A)は、組合せ刃物を例示した図であり、(B)は、組合せ刃物によって加工が可能なオス材と、メス材との組合せの説明図である。
図10】別の組合せ刃物を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、木材プレカット加工装置10の平面図であり、図2は、図1の木材プレカット加工装置10に用いられる木材加工機41の斜視図である。
【0010】
木材プレカット加工装置10は、木造の建築構造物に使用される柱や梁、羽柄材などの構造材(部品)を切削加工によって製造可能な装置であり、例えば、CADにより製図することで生成される加工データを利用して木材の切削加工を可能に構成されている。木造の建築構造物としては、一般的な住宅の他に、住宅と比べて大型の校舎や体育館、福祉施設などが例示される。この種の大型の建築構造物には、大型の断面サイズ(例えば、一辺が50cm以上の柱など)の部品を必要とする場合が多く、木材プレカット加工装置10は、小型の部品から大型の部品までの多様な部品を加工可能に構成されている。
【0011】
木材プレカット加工装置10は、図1に示すように、加工前の加工木材Kを投入する投入装置20と、投入装置20に投入された加工木材Kを搬送経路Lに沿って搬送する搬送装置30と、加工木材Kを加工する木材加工関連装置40と、投入装置20、搬送装置30及び木材加工関連装置40等の動作を制御する制御装置Sとを備えている。
【0012】
投入装置20は、加工前の加工木材Kを並んだ状態で支持し、1本ずつ搬送装置30へ投入する装置である。投入装置20への加工木材Kの投入は、フォークリフトやクレーンを利用したり、作業車の手作業によって実行される。投入装置20には、種々の長さ及び断面サイズの加工木材Kが搬入され、製造される部品の長さや形状に適した加工木材Kを用いて木材加工関連装置40による加工が行われる。投入装置20には、1本の加工木材Kを搬送装置30側へ移動する移動機構(図示せず)が設けられ、この移動機構の動作が制御装置Sに制御されて、加工木材Kが1本ずつ搬送装置30へ投入される。
【0013】
搬送装置30は、木材加工関連装置40に対して上流側(-X方向側)から下流側(+X方向側)へと連続する搬送経路Lに沿って加工木材Kを搬送可能に構成される。具体的には、搬送装置30は、木材加工関連装置40に対して搬送経路Lの上流側に配置される上流側搬送装置30aと、木材加工関連装置40に対して搬送経路Lの下流側に配置される下流側搬送装置30bとを組み合わせて構成される。各搬送装置30は、加工木材Kの下側に位置する下側搬送部31と、下側搬送部31によって支持された加工木材Kに接触して加工木材Kを搬送する上側搬送部32とを組み合わせて構成されている。
【0014】
搬送装置30の上側搬送部32には、投入装置20から投入される加工木材Kの長さ及び断面サイズを計測するための検出器が設けられている。木材加工関連装置40での切削加工が行われる場合、その加工の前に、製造される部品に適応した加工木材Kであることが制御装置Sによって判定されてから、加工木材Kの切削加工が行われる。この加工木材Kを計測する機能の詳細については、後述する。
【0015】
木材加工関連装置40は、2つの木材加工機41と、加工木材Kが加工される加工空間を覆うケース体42と、ツールストッカ43とを備えている。ケース体42は、金属板や透明な樹脂板を用いて形成された箱状の部材であり、ケース体42には、搬送装置30の搬送経路Lに沿って加工木材Kが通過可能な通過口が設けられている。このケース体42の通過口から加工木材Kが加工空間内に進入して加工木材Kの切削加工が行われる。また、ケース体42には、加工木材Kや、ツールストッカ43に保管された刃物44を、加工空間の内外に出入可能とする開閉可能な扉(スライド扉や蛇腹式の扉)が設けられている(図示せず)。
【0016】
ツールストッカ43は、複数種類の刃物44を保管する装置であり、ケース体42の外側に取り付けられている。ツールストッカ43には、加工木材Kに接触する刃部の形が異なる複数種類の刃物44が保管される。刃部としては、棒軸状のキリ(エンドミル)や、円盤状のノコ(丸鋸)、ソーチェーンなどが例示される。
【0017】
2つの木材加工機41は、図1に示すように、上面視において、ケース体42に対してX方向に沿った搬送経路Lに交差するY方向の両側に1つずつ配置されている。本実施形態においては、2つの木材加工機41は、同一形状の構成であり、以下、木材加工機41の具体的な構成について説明する。なお、2つの木材加工機41は、必ずしも同一形状の構成とする必要はなく、異なる形状部分を含むように構成してもよい。
【0018】
木材加工機41は、加工ヘッドとしての取付部51に取り付けられた刃物44の回動力を発生し、また、刃物44を、直交する3軸の方向へ移動させたり、複数の方向へ回動させたりして加工木材Kの切削加工を行う装置である。木材加工機41は、図2に示すように、取付部51と、回動機構52と、第1移動部材53と、第2移動部材54と、支持部材55とを備えている。取付部51は、加工木材Kを加工可能な刃物44を取付可能であり、形状の異なる複数種類の刃部を備えた刃物44の中から製造される部品の加工に適した1つの刃物44が取付部51に選択的に取り付けられて加工木材Kの加工が行われる。
【0019】
取付部51は、木材加工機41が設置される地面に対して2つの移動部材53,54と回動機構52とを介して配置され、移動部材53,54の移動によって3方向(X,Y,Z方向)への移動動作が行われ、回動機構52によって3方向(R1,R2,R3の方向)への回動動作が可能に構成されている。木材加工関連装置40によって切削加工が可能な加工位置まで、搬送装置30(上流側搬送装置30a)により加工木材Kが搬送された後に、取付部51が移動動作と回動動作とをすることにより、取付部51に取り付けられた刃物44による加工木材Kの加工が実施される。
【0020】
取付部51には、刃物44が取付可能な取付孔が設けられ、この取付孔に刃物44の一部が収容された状態としてからロック機構(図示せず)が作動して、刃物44と取付部51とが一体化される。また、取付部51には、電動モータ(図示せず)が内蔵され、電動モータの出力軸が刃物44に連結されて回動力を伝達することで、刃物44の刃部が回転する。なお、取付部51のロック機構や、電動モータによる動力伝達機構としては、種々の機構を用いることができ、例えば、ロック機構として、油圧や空圧によって移動可能なロック体の動作による構成を用いてもよいし、電磁力を用いて刃物44を装着する機構を含むようにしてもよい。
【0021】
回動機構52は、モータ(図示せず)によって回動動作が可能な複数の部品を組み合わせて構成され、制御装置Sによって回動機構52が制御されることで、回動機構52の一端側に接続される取付部51の向き(姿勢)を変化させる。具体的には、回動機構52は、第1移動部材53に対して取付部51を、直交する3つの回転方向としてのR1,R2,R3の方向側に回動可能に構成されている。なお、回動機構52の構造としては、ベアリングを用いた支持構造など、種々の機構を利用することができ、また、回動機構52の動力源としても、モータに限らず、油圧や空圧によって構成してもよいし、2種以上の動力源を組み合わせてもよい。
【0022】
第1移動部材53は、一端側に回動機構52が設けられている。また、第1移動部材53は、図1に示すように、上面視において、搬送経路Lに交差する交差方向側(Y方向側)へ長く連続する棒状の部材によって構成され、Y方向側への移動動作が可能に設けられている。
【0023】
具体的には、第1移動部材53は、図2に示すように、第2移動部材54に連結部材56を介して支持されている。第1移動部材53における搬送経路Lに沿った搬送方向側(X方向側)の両側面には、ガイドレール61が設けられ、ガイドレール61に対してベアリング(図示せず)を介して連結部材56が取り付けられている。これにより、ガイドレール61の長さ分、第1移動部材53は、第2移動部材54に対してY方向側に移動可能に支持される。
【0024】
第2移動部材54は、図1に示すように、上面視において、搬送経路Lに沿った搬送方向側(X方向側)へ長く連続する板状の部材によって構成され、上下方向側への移動動作が可能に設けられている。支持部材55には、上下方向側へ連続するガイドレール62が設けられ、このガイドレール62に対して、搬送経路Lに沿った搬送方向(X方向)の両端側において第2移動部材54の両端部分が連結されている。これにより、支持部材55によって第2移動部材54が上下方向側へ移動可能に支持される。
【0025】
また、第2移動部材54の上面には、搬送経路Lに沿った搬送方向側(X方向側)へ長く連続するガイドレール63が設けられ、このガイドレール63に対してベアリングを介して連結部材56が取り付けられている。これにより、ガイドレール63の長さ分、第1移動部材53は、第2移動部材54に対してX方向側に移動可能に支持される。
【0026】
支持部材55は、第2移動部材54を上下方向に移動可能に支持する部材である。この第2移動部材54を介して、支持部材55は、第1移動部材53と、連結部材56と、回動機構52と、取付部51と、刃物44とを支持する部材として機能する。ここで、支持部材55は、支持部材55によって支持される第2移動部材54と、刃物44との距離が大きく離間した状態であっても、第2移動部材54がたわんだり、変形したりすることを少なくするように、第2移動部材54の搬送経路Lに沿った両側を支持するように構成されている。
【0027】
また、支持部材55は、床面に設置される台座64と、台座64の上側に設けられる2つの支持柱65と、2つの支持柱65の上側を連結する連結片66とを備えている。連結片66は、2つの支持柱65の剛性を高める金属製の部品であり、連結片66と、台座64とによって支持柱65の上下が連結固定されることで、2つの支持柱65が高い剛性を確保し易くしている。なお、必ずしも、支持部材55を構成する2つの支持柱65を一体化する必要はなく、別々に支持柱65を設けてもよく、また、支持柱65の上側または下側のいずれかのみを連結するように構成してもよい。
【0028】
支持柱65には、第2移動部材54を上下方向に移動させる駆動力を発生し、また、第2移動部材54の上下の位置を制御するためのサーボモータ67と、ボールねじ68とが設けられている。制御装置Sの制御によってサーボモータ67が動作し、サーボモータ67の動力がボールねじ68を通じて第2移動部材54へ伝達されることで、第2移動部材54は、上下に移動する。また、第2移動部材54に支持された第1移動部材53のX方向及びY方向の動作機構についても、サーボモータと、ボールねじとを組み合わせて構成される。
【0029】
なお、2つの移動部材53,54を移動動作させる機構としては、サーボモータを用いたボールねじによる機構に限らず、ベルトを用いた機構など、種々の機構を利用することができる。また、2つの移動部材53,54を移動動作させる動力として、油圧や空圧を用いてもよいし、2種以上の動力を組み合わせてもよい。
【0030】
ここで、支持柱65は、図1に示すように、上面視において、X方向側と比べて、第1移動部材53が移動可能なY方向(交差方向)側の方が長い略矩形の断面形状に形成された金属製の縦長の部材によって構成される。そして、支持柱65は、図2に示すように、Y方向側に沿った+Y方向側と-Y方向側の両端部分に、上下方向に連続するガイドレール62が配置されている。また、第2移動部材54についても、上下方向(Z方向)側と比べて、第1移動部材53が移動可能なY方向(交差方向)側へ長い略矩形の断面形状に形成され、そのY方向側に沿った+Y方向側と-Y方向側の両端部分にて支持部材55(ガイドレール62)に取り付けられている。これにより、第1移動部材53が+Y方向側へ大きく移動して、取付部51及び刃物44が第2移動部材54から離れた位置に配置されても、第2移動部材54が重みによって回転方向にたわんでしまう事態を回避可能な高い剛性を確保し易くし、且つ、支持部材55と第2移動部材54の大きさは比較的コンパクトにすることができる。
【0031】
制御装置Sは、木材プレカット加工装置10を制御する装置であり、例えば、パーソナルコンピュータによって構成される。制御装置Sには、建築構造物に必要な部品の加工データを入力する入力部(例えば、記憶媒体としてのCD-ROMのデータを読み出し可能なドライブ装置)や作業者によって操作される操作部、加工に関する情報(例えば、加工木材Kの大きさや加工の状況)を表示する表示装置等が設けられている。
【0032】
また、制御装置Sには、投入装置20、搬送装置30、木材加工機41などの動作部分を含む多数の動作部の駆動力を発生する複数のモータやエアシリンダ等の駆動装置、動作部の位置を検出する多数のセンサなどが接続され(図示せず)、センサの位置検出によって動作部の位置や角度を制御する等して、加工木材Kに対して切削加工が行われる。
【0033】
次に、2つの木材加工機41による加工木材Kの加工について、図3及び図4を主に参照して、説明する。図3は、木材加工機41を搬送経路Lに交差する水平方向の一側面側(-Y方向側)から見た図であり、図3(A)は、木材加工機41の全体を示し、図3(B)及び図3(C)は、図3(A)におけるツールストッカ43の周辺部分を示している。また、図3(A)は、刃物44(チェーンソー44a)が待機位置に配置された状態を示し、図3(B)は、チェーンソー44aがケース体42の内部に進出した状態を示し、図3(C)は、チェーンソー44aが取付部51に取り付けられて加工空間の内側へ移動した状態を示している。また、図4は、木材加工機41を搬送経路Lに沿った方向側から見た図である。なお、図3及び図4には、理解の容易のために、刃物44を保管するツールストッカ43の配置位置を一点鎖線で図示し、刃物44を太い実線で示し、保持機構45を細い実線で図示し、加工木材Kを二点鎖線で図示している。
【0034】
2つの木材加工機41は、図3及び図4に示すように、加工木材Kに対して、加工木材Kの上面と下面との両方を同時に加工可能なように構成される。木材加工機41の取付部51に取り付けられる刃物44は、加工木材Kに対して、X,Y,Z方向へ移動可能に設けられ、第2移動部材54のZ方向の移動量と、第1移動部材53のY方向の移動量は、加工対象として設定される最大の加工木材Kの断面形状に対して、十分な移動量となるように、ガイドレール61~63(図2参照)の長さを含む各部分の長さが設定される。
【0035】
ここで、第2移動部材54による第1移動部材53のX方向の移動量は、2つの刃物44が接触することなくX方向に並んだ状態で加工木材Kの加工ができる長さに設定されることが好ましい。これにより、2つの木材加工機41によって加工木材Kの上面と下面とを同時に加工し易くしたり、加工木材Kの上面または下面のいずれかを同時に加工し易くすることができる。加工木材Kの上面と下面との同時加工や、加工木材Kの上面または下面のいずれかに対しての2カ所の同時加工等、加工の内容や加工の順序は、加工木材Kに対しての加工内容に応じて予め制御装置Sの制御プログラムに設定しておくことができる。
【0036】
2つの木材加工機41に対して、加工木材Kは、図4に示すように、厚み方向を上下方向に向けた横倒しの状態で搬送装置30によって2つの木材加工機41の間部分に設けられる加工位置へと搬送される。加工位置まで加工木材Kが搬送されると、2つの木材加工機41は、加工木材Kが横倒しの状態のままで、加工木材Kに対して必要な加工を実行する。
【0037】
このように、木材プレカット加工装置10によれば、第2移動部材54が搬送経路Lに沿った両端側にて支持部材55に支持されるので、第2移動部材54が支持される剛性を高め易く、第2移動部材54が水平に近い状態を維持したまま、たわみを少なくした状態で第2移動部材54を上下方向へ移動し易くすることができる。
【0038】
また、第2移動部材54に対して第1移動部材53を上下方向に近い位置に配置することができるので、第1移動部材53の一端側に回動機構52を介して設けられる取付部51(刃物44)が第2移動部材54から搬送経路側へ大きく離間した状況においても、取付部51及び回動機構52の自重や刃物44の重量等によって第2移動部材54に第1移動部材53が支持される部分までを腕部分とするたわみ量を少なくし易くすることができる。このため、第2移動部材54から搬送経路L側へ取付部51が移動可能な量を大きく設定し易くすることができ、大型の断面形状の加工木材Kであっても精度良く加工し易くすることができる。
【0039】
また、搬送経路L側へ取付部51が移動可能な量を大きく設定し易いため、厚み方向に対して幅の大きな断面形状の加工木材Kについても、厚み方向を上下方向に向けた横倒しの状態にして、2つの木材加工機41を用いて効率良く加工を行うことができる。このため、加工木材Kを起立させたり、横置きとする工程を不要にすることで、全体の工程を簡略化することができ、また、加工木材Kが搬送中に転倒してしまう可能性を低減して安全に加工木材Kを搬送し易くすることができる。
【0040】
ここで、木材プレカット加工装置10には、ケース体42の内部(加工空間)における加工木材Kの加工の状況や、木材加工機41とツールストッカ43との刃物44の受け渡し状況等を撮影可能な1又は複数のカメラ装置と、カメラ装置によって撮影された画像(動画)を表示する表示装置(例えば、液晶ディスプレイ)とを設けるようにすることが好ましい。これにより、加工空間内の状況等を、制御装置Sの設置箇所などの別の場所から確認可能とすることができる。このため、2つの木材加工機41が搬送経路Lの両側に設けられたり、大型の加工木材Kを加工可能とするように設備が大型化することで、死角が生じ易くなっても、カメラ装置の撮影画像を用いて、安全に加工木材Kの加工を可能とし、また、問題の発生を検出し易くすることができる。なお、1以上のカメラ装置は、2つの木材加工機41の間部分に設置することが好ましく、また、搬送経路Lより高い位置において2つの木材加工機41の側を向くように(反対方向側を向くように)した2箇所以上に設置することが好ましい。また、1以上のカメラ装置に対して、撮影位置を上下方向に移動可能としたり、撮影方向を異ならせるように回動可能とした動作機構が設けられるようにしてもよい。また、カメラ装置及び表示装置の構成は上記に限るものでなく、例えば、カメラ装置をケース体42の内部のみに設ける必要はなく、これに代えて、又は、これに加えて、搬送装置30やツールストッカ43などの別の場所を撮影可能に設置してもよいし、撮影画像を表示する表示装置を複数箇所に設置するようにしてもよい。
【0041】
次に、搬送装置30について、図1及び図5を主に参照して説明する。図5は、搬送装置30の上側搬送部32を説明するための図であり、図5(A)は、上側搬送部32の一部を示した斜視図、図5(B)及び図5(C)は、異なる断面形状の加工木材Kを、2つのクランプ73で挟んだ状態を示した図である。なお、図5(A)には、搬送経路Lの中心位置を細い一点鎖線で示している。また、図5(B)及び図5(C)には、クランプ動作部74と、スライド移動部75と、下側搬送部31の外形形状を一点鎖線で示している。
【0042】
木材プレカット加工装置10は、加工木材Kの外形寸法を計測する機能(計測機能)と、異なる断面形状の加工木材Kを異なる力で挟んだ状態にして位置決め固定や搬送を行うことのできるクランプ機能とを有している。この計測機能と、クランプ機能は、搬送装置30を制御装置Sで制御することによって実現されている。
【0043】
搬送装置30は、図1に示すように、下側搬送部31と、上側搬送部32とを組み合わせて構成されている。下側搬送部31は、搬送経路Lに沿って加工木材Kを移動可能に加工木材Kの下側を支持する部分である。具体的には、下側搬送部31には、2本のレール71に挟まれた多数のローラ72が、床面から離れた高さ位置に設けられ、ローラ72が、制御装置Sに制御される動力源(例えば、モータ)によって回動することで、搬送経路Lに沿って、加工木材Kが移動する。
【0044】
上側搬送部32は、図5に示すように、加工木材Kを、水平方向(Y方向)の両側から挟み込む2つのクランプ73と、2つのクランプ73を、搬送経路Lに交差する交差方向側に動作させるクランプ動作部74と、クランプ動作部74を搬送経路Lに沿った方向側に移動可能とスライド移動部75とを組み合わせて構成されている。
【0045】
2つのクランプ73は、図5(B)に示すように、下側搬送部31(ローラ72)に下側を支持された加工木材Kに対して、水平方向の両側に位置するようにして設けられている。2つのクランプ73は、搬送経路Lに対しては、搬送経路Lに交差する水平方向に沿った両側(図5(B)の二点鎖線参照)に位置するようにして設けられている。
【0046】
2つのクランプ73には、図5(A)に示すように、クランプ動作部74に設けられるクランプモータ76が動作機構(図5(A)の太い一点鎖線)を介して連結されている。2つのクランプ73は、搬送経路Lの中心に対して均等な距離分、水平方向の両側に離間するようにして配置され、クランプモータ76の動作によって、搬送経路Lの中心に対して近づく方向側と、離れる方向側とに移動可能に構成される。2つのクランプ73とクランプモータ76とを連結する動作機構は、例えば、クランプモータ76の出力軸の動力を伝達するギアが内蔵されたギア機構77と、ギア機構77に連結されるボールねじ78とによって構成される。
【0047】
図5(A)には、クランプモータ76の出力軸からボールねじ78を経由する力の伝達経路を、太い一点鎖線で示している。クランプモータ76が制御装置Sによって制御されることにより、2つのクランプ73が直線的に移動する。なお、クランプ73の移動方向は、必ずしも直線的な移動方向とする必要はなく、曲線的な移動方向とするなど、他の移動方向としてもよい。
【0048】
2つのクランプ73は、図5(A)に示すように、クランプ73の移動方向(Y方向)を厚み方向とする板状に形成されている。また、2つのクランプ73は、ボールねじ78が上端部に接続されて上下方向に長く形成された部分(本体部)と、本体部より上下方向の長さが短く一方側(図5(A)の+X方向側)に突出した部分(突出部)とを有する形状とされている。突出部は、本体部に対して、搬送経路Lに沿った一方側で、木材加工機41及びケース体42(加工空間)の位置する側に突出するようにして設けられる。図1に示すように、上側搬送部32は、加工空間を形成するケース体42(木材加工機41)に対して上流側(-X方向側)と、下流側(+X方向側)とに配置され、上流側の上側搬送部32については、図5(A)に示すように、本体部に対して搬送経路Lの下流側(+X方向側)に突出部が位置し、これとは逆に、下流側の上側搬送部32については、本体部に対して搬送経路Lの上流側(-X方向側)に突出部が位置するように構成される(図示せず)。この突出部が設けられることにより、クランプ73の動作機構をケース体42から離れて配置しつつ、ケース体42の近くで、クランプ73によって加工木材Kを挟んだ状態とすることができ、これにより、短い長さの加工木材Kについても木材プレカット加工装置10で加工可能とすることができる。
【0049】
2つのクランプ73は、図5(B)に示すように、下側搬送部31に下側を支持された加工木材Kに対して、搬送経路Lに交差する水平方向に沿った両端側の側面から離れた離間位置(図5(B)の一点鎖線の位置)と、加工木材Kに接触する接触位置との間を移動する。2つのクランプ73は、加工木材Kの一部に接触した接触位置において、2つのクランプ73が近づく方向側へ移動しようとする駆動力が予め定めた目標値に到達するまで駆動力が高まるように制御装置Sで制御される。これにより、加工木材Kの一部が2つのクランプ73に挟まれた状態(クランプされた状態)となって、加工木材Kの移動が制限される。この2つのクランプ73による加工木材Kの移動の制限により、加工木材Kが切削加工される際の位置決め固定が行われたり、2つのクランプ73を、スライド移動部75によって加工木材Kの長手方向に移動することで加工木材Kの搬送(移動)が行われる。
【0050】
投入装置20から搬送装置30へ加工木材Kを投入する場合には、加工木材Kが投入装置20へ投入される位置よりも搬送経路Lの進行方向側(図1の+X方向側)に2つのクランプ73を備えたクランプ動作部74が位置するように、制御装置Sが各部位を制御する。加工木材Kが搬送経路Lに投入された後、クランプ動作部74が位置する部分まで、下側搬送部31によって加工木材Kを進行させると、2つのクランプ73の間に加工木材Kが移動し、2つのクランプ73によって加工木材Kを挟んで移動が制限された状態とすることができる。
【0051】
ここで、投入装置20から搬送装置30へ加工木材Kを投入する場合、加工木材Kの搬送経路Lに沿った方向に加工木材Kの長手方向が一致するようにして投入される。また、加工木材Kの断面形状(長手方向に交差する加工木材Kの断面)が長方形である場合には、一辺の長さが短い方向(厚み方向)が投入後に上下方向となり、一辺の長さが長い方向(幅方向)が投入後に水平方向となる状態(横倒しの状態)にして、加工木材Kが基本的に投入される。これにより、加工木材Kの自重によって安定した状態で搬送装置30へ加工木材Kを安全に投入することができ、また、搬送装置30による搬送の際にも加工木材Kが転倒してしまうことを防止することができる。
【0052】
また、大型の加工木材Kであっても、厚み方向を上下方向に向けた横倒しの状態にして加工をすることができるので、木材プレカット加工装置10として、大型の加工木材Kを加工可能としつつ、加工に必要となる上下方向の長さを短くすることができる。このため、高い天井を備えた工場や、床面に対しての穴加工を不要とし、工場の大きさや木材加工機41の配置に問題が生じてしまう事態を回避し易くすることができる。
【0053】
なお、加工木材Kの断面形状が長方形でなく、楕円形や、四角形とは異なる多角形の場合でも、自重によって最も安定する状態で加工木材Kを搬送することが好ましく、厚み方向を上下方向とし、厚み方向より長さの長い幅方向を水平方向とした横倒しの状態とすることが好ましい。また、必ずしも全ての加工木材Kについて、上下方向が厚み方向となるようにして搬送装置30へ投入する必要はなく、断面形状が略正方形の場合や、長方形や多角形の場合であっても幅に対して厚みの長さ比が1に近い場合(例えば、0.8以上の場合)など、搬送や切削加工の際に加工木材Kが転倒する可能性が低いと判断できれば、厚み方向を水平方向にして搬送する例外的な場合があってもよい。ただし、以下の説明においては、断面の厚み方向を上下方向にした横倒しの状態で加工木材Kを搬送して切削加工を行う基本的な場合について説明する。
【0054】
クランプモータ76は、2つのクランプ73が離間位置から接触位置に近づく一方側と逆側とに移動する動作力を発生する駆動手段を構成するものであり、フィードバック制御が可能なサーボモータによって構成されている。クランプモータ76の動作力は、制御装置Sによって制御される。
【0055】
クランプモータ76は、動力を発生する電動モータと、電動モータの状態を検出する検出器(センサ)と、サーボアンプとを組み合わせて構成されている。サーボアンプは、制御装置Sからの指令(目標値)に応じて電動モータを制御する制御部であり、検出器からの情報入力に応じて制御装置Sからの指令と一致するように電動モータへの電力供給を制御するフィードバック制御を実行する。
【0056】
クランプモータ76の検出器は、2つのクランプ73の配置位置に対応する位置情報を検出し、その位置情報が制御装置Sに出力される。制御装置Sは、検出器から出力された位置情報によって2つのクランプ73の配置位置を検出し、これにより、加工木材Kの幅方向の寸法を計測する。
【0057】
制御装置Sは、クランプモータ76のサーボアンプに対して目標値としての値に達するまで、一定の方向への2つのクランプ73が移動するように指令を出すことでクランプモータ76を制御する。クランプモータ76においては、制御装置Sの制御(指令)によってサーボアンプを通じて電動モータの動作が制御され、目標値に対応した位置又は接触力となるまで電動モータが回動するように電力が制御される。これにより、クランプモータ76に連結されたクランプ73の配置位置を、目標値として設定した位置まで移動させたり、2つのクランプ73が加工木材Kに接触して加工木材Kが挟まれる接触力(以下、クランプ力ともいう)を目標値として設定されたクランプ力に達するまで上昇させることができる。
【0058】
ここで、クランプ73の移動制御やクランプ力の制御は、サーボアンプと制御装置Sとを組み合わせて実行される。これにより、制御装置Sの制御を簡略化しつつ、高速に2つのクランプ73を移動可能とすることができる。また、本実施形態においては、クランプモータ76として、汎用品のサーボモータが用いられる。これにより、専用のモータを準備するより安価な構成で、大型の断面形状の加工木材Kの幅寸法であっても短時間で測定可能とすることができる。なお、クランプモータ76の動力源として、モータに代えて、油圧や空圧の動力源を用いてクランプ73の移動機構46を構成してもよい。また、サーボモータに限らず、モータとエンコーダ等の検出器とを別々に組み合わせて、クランプモータ76を構成してもよい。
【0059】
制御装置Sには、クランプ力として、2種以上の異なる大きさのクランプ力が設定されている。具体的には、加工木材Kの大きさ(重量)、形状、材質等、加工木材Kの種類や用途に応じて、2種以上の異なるクランプ力で加工木材Kがクランプされるように、制御装置Sがクランプモータ76を制御する。
【0060】
例えば、加工木材Kの大きさ(重量)によってクランプ力を異ならせる制御が行われる。加工木材Kの重さが重いものには、高い値のクランプ力が目標値として設定され、軽いものには、重いものよりも低い値のクランプ力が設定される。これにより、高い接触力が加工木材Kの表面に作用して、クランプ73と接触した加工木材Kとの表面部分が変形したり、破損したりしてしまう事態を回避し易くすることができる。
【0061】
また、加工木材Kの断面形状によってクランプ力を異ならせる制御が行われる。図5(B)に示すような、幅方向における両端側の面積が大きな場合(両端側の上下長さが長い場合)と比べて、図5(C)に示すような両端側の先端部分が尖った形状の場合には、クランプ力を低い値とする制御が行われる。これにより、尖った形状の先端部分が変形することを防止することができる。
【0062】
クランプ力の制御は、1つの加工木材Kの加工途中まで高い値とし、その後に低い値となるように変化させてもよい。例えば、図5(B)に示すような断面形状から、図5(C)に示すような断面形状に形状が変化するように加工が行われる場合には、断面形状が変化する前には大きなクランプ力で加工木材Kをクランプして高速での切削加工を可能とし、断面形状が変化した後にはクランプ力を低下させて、切削加工に必要なクランプ力が少なくて済むような加工を行うように、制御装置Sの制御を実行してもよい。
【0063】
また、切削加工前や切削加工中と比べて、加工木材Kの搬送の際に低い値となるようにクランプ力を変化させてもよい。切削加工に必要なクランプ力と比較して、搬送の際に必要なクランプ力は低くてもよく、また、切削加工によって加工木材Kが分断されたり切削されたりすることで加工後の加工木材Kは軽量となる。このため、図5(C)に示すような断面形状に形状が変化した後において、その形状が変化した部位を、低い値のクランプ力でクランプして搬送することができる。すなわち、搬送の際に低い値となるようにクランプ力を変化させることで、クランプする部位の自由度を高めつつ、変形や破損が生じることなく加工木材K(又は加工後の部品)を搬送することができる。
【0064】
また、クランプ73で加工木材Kをクランプする場合に、搬送経路Lに沿ったX方向において、クランプ73と加工木材Kとが接触する区間の長さによって、クランプ力を変化させてもよい。例えば、短い加工木材Kを加工する場合には、クランプ73の上下長さが短い突出部のみで加工木材Kをクランプする必要があり、この場合には、本体部を含めてクランプする場合と比べて、クランプ力を低くするように制御することが好ましい。突出部のみで加工木材Kをクランプすると、ボールねじ78によってクランプ73にクランプ力が作用する部分と、加工木材Kにクランプ73が接触する位置とが大きく離れる分、クランプ73が変形し易く、また、小さな突出部の接触によって加工木材Kの表面の一部に凹みが生じる可能性がある。このため、クランプ73の突出部のみで加工木材Kをクランプする場合、本体部を用いる場合と比べて、低い値となるようにクランプ力を変化させることが好ましい。
【0065】
また、上記の他に、クランプ力を低く設定する場合として、表面の柔らかい加工木材Kの加工や、加工木材Kの表面が、建築構造物の施工後において、外観の一部として視認可能となる場合などが例示される。
【0066】
クランプ力の制御は、制御装置Sがクランプモータ76を構成するサーボモータに目標値を指示して行われる。このため、加工木材Kとクランプ73との接触力や、クランプ73の配置位置が目標値に到達するように制御装置Sが全ての制御を実行する場合と比較して、フィードバック制御をサーボモータに行わせることができ、制御装置Sの制御を簡略化することができる。
【0067】
クランプ73の移動を停止した場合における加工木材Kの接触位置に対応する位置情報は、クランプモータ76の検出器によって検出され、制御装置Sの制御に利用される。例えば、制御装置Sは、幅寸法が許容寸法の範囲外となっている場合には、加工木材Kの加工を停止し、他の加工木材Kを投入するように、作業者に、変更の指示をする制御を行う。また、幅寸法が許容寸法の範囲内のうち最短の長さとなっているなど短い長さである場合、他の部材との接合に用いる金物を取り付けるための穴の深さが不足する可能性があるため、幅寸法が短い分、穴の深さを深く設定する制御を実行する。
【0068】
ここで、投入装置20から搬送装置30へ加工木材Kを投入する場合には、図1に示すように、上面視において、搬送経路Lの中心に加工木材Kの幅方向の中心が位置するように加工木材Kを搬送装置30へ投入することが好ましい。例えば、投入装置20から搬送装置30へ加工木材Kを投入する際に、搬送経路Lの中心に加工木材Kの幅方向の中心が位置するタイミングで、加工木材Kにストッパ部材(図示せず)が接触するように、ストッパ部材を設けるようにしてもよいし、投入された加工木材Kの幅方向の両側をモータ以外の動作機構(例えば、エアシリンダ)によりクランプして中央側に加工木材Kを高速で移動する機構を備えてもよい。これにより、搬送装置30のクランプ73の移動によって加工木材Kの幅方向の外形寸法を測定する場合において、2つのクランプ73が加工木材Kに同時に接触し易くすることができ、加工木材Kの幅方向の外形寸法を短時間で検出し易くすることができる。
【0069】
木材プレカット加工装置10における計測機能としては、加工木材Kの幅方向以外の外形寸法も計測可能とすることができる。例えば、加工木材Kの長さ寸法は、投入装置20から搬送装置30へ加工木材Kが投入された後、上側搬送部32のスライド移動部75によって、2つのクランプ73を移動動作させることによって実行することができる。例えば、図5(A)に示すように、2つのクランプ73には、2つのクランプ73の間部分における加工木材Kの存否を検出可能なクランプセンサ79が設けられている。
【0070】
クランプセンサ79は、例えば、非接触式の光電センサを上下方向に複数並べて構成された多軸の光電センサ(エリアセンサ)によって構成され、クランプセンサ79が制御装置Sに接続されている。制御装置Sは、上側搬送部32のスライド移動部75を制御して2つのクランプ73を、加工木材Kの全長を超える区間移動させ、加工木材Kの長手方向に沿ったクランプセンサ79による加工木材Kの存否の状況を検出することで加工木材Kの長さ寸法を検出する。スライド移動部75は、搬送経路Lに沿ってクランプ動作部74を動作させることが可能であればよく、例えば、サーボモータとラックとピニオンとを組み合わせて動作機構を構成してもよい。
【0071】
このように、木材プレカット加工装置10によれば、クランプモータ76の検出器等によって加工木材Kの大きさ(外形寸法)を計測し、制御装置Sは、加工木材Kの外形寸法の計測結果に基づいて、必要な部品を製造できるか否かを判定し、必要な部品が製造できる場合には加工を行い、製造できない場合には、加工木材Kの変更を作業者に促す制御を実行する。これにより、加工木材Kの寸法不良や変形によって必要な部品を製造できない加工木材Kを用いて加工が開始されてしまう事態を回避することができる。
【0072】
また、制御装置Sは、クランプモータ76の検出器等によって加工木材Kの大きさを判定し、加工木材Kが基準としての設計寸法(中央値)とは異なる場合に加工の大きさ(量)を変化させる制御を実行する。これにより、加工木材Kに取り付けられる別部品の取り付けを確実に可能としたり、必要な強度を確保し易くしつつ、構造材を加工可能な加工木材Kに対しての許容範囲を大きく設定し易くすることができる。したがって、加工木材Kを安価で入手し易く、また、不良品となる加工木材Kを少なくすることができ、不良品の混入によって部品の製造期間が長期化してしまうような事態を回避することができる。
【0073】
また、制御装置Sの制御により、クランプ73のクランプ力として、2種以上の異なる大きさのクランプ力が設定可能とされ、加工木材Kの大きさ(重量)、形状、材質等、加工木材Kの種類や用途に応じて、2種以上の異なるクランプ力で加工木材Kがクランプされる。このため、搬送や位置決めに必要なクランプ力を加工木材Kの種類に応じて変化させることができ、加工木材Kの表面部分が変形したり、破損したりしてしまう事態を回避し易くすることができる。
【0074】
また、複数種類の加工木材Kを加工する場合における、材料としての加工木材Kの正否の確認、加工内容の決定、及び、搬送や位置決めに必要な力の制御において、加工木材Kの搬送に用いる上側搬送部32のクランプ73の構成を利用している。このため、複数種類の加工木材Kに対応可能とするために必要なコストを低減しつつ、加工木材Kに必要な材料コストを低減し、また、見栄えの良い状態に部品を製造し易くすることができる。
【0075】
なお、木材プレカット加工装置10における計測機能としては、加工木材Kの幅方向及び長さ方向に限らず、他の外形寸法を計測可能としてもよい。例えば、下側搬送部31に下側を支持された加工木材Kに対して上方側から加工木材Kの上面に接触可能なクランプ又は検出器をサーボモータにより動作させたり、加工木材Kに対して上下2方向から2つのクランプをサーボモータにより動作させて、加工木材Kの上下方向の外形寸法を計測可能に構成してもよい。
【0076】
また、上方側から加工木材Kの上面に接触して上下方向(厚み方向)における加工木材Kの位置決めに必要な力を発生するクランプが設けられる場合に、当該クランプの動力源として、フィードバック制御が可能なサーボモータを用いてもよいが、フィードバック制御を有しないギアードモータを用いたり、油圧や空圧によって動作するシリンダーを用いることが好ましい。これにより、サーボモータを用いる装置を限定してコスト増を抑えつつ、横倒しの状態で大型の加工木材Kを加工可能とした場合の加工木材Kの計測や位置決め等を、高速に且つ精度良く実行可能とすることができる。また、クランプの動力源として、サーボモータと、サーボモータ以外とを組み合わせて構成する好適な例としては、加工木材Kの加工が許容される断面サイズとして、幅方向が120cmまで、厚み方向が60cmまでとした場合が例示される。このように、許容される断面サイズとして、厚み方向が幅方向より短い場合で、特に、厚み方向が幅方向の略半分以下のように大きく異なる場合については、厚み方向のクランプの動力源として、サーボモータ以外の動力源とすることが好ましい。
【0077】
次に、ツールストッカ43に関する構成として、木材加工機41の取付部51から取り外された刃物44を保持する保持機構45について、図6を主に参照して説明する。図6(A)は、保持機構45によって刃物44が保持された状態を示した図であり、図6(B)は、保持機構45から刃物44が取り外される状態を示した図である。なお、図6(A)及び図6(B)には、保持機構45を、隙間形成部94の側から見た正面図と下側から見た図とを、上下に並べて図示している。
【0078】
木材プレカット加工装置10には、図3等に示すように、加工木材Kの切削加工が可能な複数の刃物44を予め定めた待機位置に保持する刃物保持手段としての保持機構45が複数箇所に設けられている。各々の刃物44には、図6(A)に示すように、切削加工を行う刃部81(図6には、棒軸状のキリを例示)と、保持機構45に刃物44を保持するために形成された被保持部82と、木材加工機41の取付部51に係合することで切削加工用のモータの回転力を刃部81に伝達する主軸部83とが設けられている。
【0079】
各々の刃物44は、木材加工機41による取付部51の移動動作によって保持機構45に保持される。また、切削加工に必要な刃物44が木材加工機41の取付部51に取り付けられた状態となった後、図6(B)に示すように、取付部51の移動(図6(B)の+S方向への移動)によって保持機構45から刃物44が取り外される。
【0080】
保持機構45は、図6に示すように、2つの刃物保持部材84と、制限部材85と、コイルバネ86と、ベース体87とを備えている。ベース体87は、2つの刃物保持部材84を回動可能に支持する2つの第1回動軸88と、制限部材85を回動可能に支持する第2回動軸89と、刃物保持部材84の回動範囲を制限するストッパ部91とを有し、これらが一体化された金属製の部品によって構成されている。
【0081】
2つの刃物保持部材84は、刃物44を中心とした対称の形状とされ、第1回動軸88を中心(中心軸)にして刃物44に対して両側に均等に動作可能に構成される。刃物保持部材84は、回動動作によって、図6(A)に示すように、刃物44を保持する保持姿勢(第1姿勢)と、図6(B)に示すように、刃物44の取り付け及び取り外しが可能な解除姿勢(第2姿勢)との間を変位可能に設けられる。なお、2つの刃物保持部材84の両方を動作可能とする必要はなく、一方の刃物保持部材84を動作不能とし、他方の刃物保持部材84のみを動作可能としてもよい。
【0082】
刃物保持部材84には、図6(A)に示すように、回動動作の中心となる第1回動軸88に対して一方側となる第1の方向側(図6の+S方向側)に、刃物44の外周部分(被保持部82)に接触して刃物44を待機位置に保持可能とする円弧形の凹状に形成された刃物保持部92が設けられている。刃物保持部92は、2つの刃物保持部材84のそれぞれにおいて円弧状に設けられ、2つの刃物保持部92の間部分に、刃物44の外周部分が接触して刃物44を待機位置に保持可能に構成される。
【0083】
なお、刃物保持部92の形状は、刃物44の外周部分に接触して刃物44を安定した状態に保持可能であればよく、円弧状に限らず、多角形状などの他の形状であってもよい。また、必ずしも2つの刃物保持部材84の刃物保持部92を対称形状とする必要はなく、片方側の円弧状部分の長さが短く形成されるなど対称形状とは異なる形状としてもよい。
【0084】
刃物保持部92は、上下方向の中央部分が僅かに小さな内径となるようにする突条部93を有する形状とされ、この突条部93が、刃物44(被保持部82)の外周部分に形成される溝状の支持部82aに入り込み可能に構成される。この支持部82aに突条部93が入り込むことで、刃物保持部92に刃物44が挟まれた状態において刃物44の上下方向への移動が制限される。
【0085】
第1回動軸88に対して刃物保持部92より第1の方向側(図6の+S方向側)に遠く離れた側には、解除姿勢に配置された場合に刃物保持部92から刃物44を抜け出させることが可能な大きさの隙間が形成される隙間形成部94が設けられている。隙間形成部94は、保持姿勢に配置された場合には、隙間形成部94の隙間幅が解除姿勢に配置された場合よりも縮小することで、刃物44の外周部分が刃物保持部92に挟み込まれた状態となり、刃物44が刃物保持部材84に保持された状態となる。
【0086】
コイルバネ86は、2つの刃物保持部材84に対して保持姿勢となる一方側への回動力を発生させるようにして、2つの刃物保持部材84に取り付けられている。具体的には、コイルバネ86は、第1回動軸88に対して、刃物保持部92が設けられる第1の方向側とは反対側(第2の方向側、図6の-S方向側)に圧縮された状態にして配置され、2つの刃物保持部92が近づく方向側の付勢力を発生する。これにより、刃物保持部材84は、常に、隙間形成部94の隙間幅を狭める方向側に、コイルバネ86の付勢力が作用し、刃物保持部92によって刃物44が保持された状態を維持可能に構成される。なお、必ずしもコイルバネ86によって刃物保持部材84の姿勢を変化させる構成とする必要はなく、モータや油圧、空圧等の駆動力を用いて刃物保持部材84の姿勢を変化させる構成としても良く、この姿勢変化に駆動力を用いる場合には、駆動力の制御を制御装置Sによって行うようにしてもよい。
【0087】
刃物保持部92に支持された状態の刃物44を、隙間形成部94の側へ移動した場合(図6の+S方向側へ刃物44を移動した場合)、刃物44の外周部分が、隙間形成部94の隙間を拡げる方向側(図6(A)のR方向側)へ刃物保持部材84を回動させる。制限部材85による回動動作の制限がない状況では、コイルバネ86が次第に圧縮されつつ隙間形成部94の隙間が拡がっていく。図6(B)に示す解除姿勢まで、刃物保持部材84が回動すると、刃物44が刃物保持部92から抜け出し可能な状態となる。刃物44の主軸部83は、木材加工機41の取付部51が連結される連結部分として機能し、刃物44の主軸部83に、木材加工機41の取付部51が連結され、木材加工機41の動力によって刃物44に動力が伝達されて、刃物44は、刃物保持部92から取り外される。なお、刃物44が取り外される方向は、必ずしも刃物保持部92に対して隙間形成部94が設けられる方向側(図6(A)の+S方向側)とする必要はなく、別の方向側へ移動するようにしてもよい。例えば、刃物44に対して取付部51が位置する方向側へ刃物44を移動させて、刃物44を刃物保持部92から取り外すようにしてもよい。
【0088】
刃物保持部材84に刃物44を保持させる場合には、まず、刃物保持部92の突条部93と、刃物44の外周部分の支持部82aの高さ位置を一致させた状態に刃物44を移動する。その後、隙間形成部94より第1回動軸88から離れた側から隙間形成部94へ刃物44を近づける(図6の-S方向側へ刃物44を移動する)。
【0089】
その後、刃物44の外周部分と、隙間形成部94とが接触し、更に刃物44を移動(進行)すると、コイルバネ86が次第に圧縮されつつ隙間形成部94の隙間が徐々に拡がり、刃物44が刃物保持部92内に次第に入り込む。更に、刃物44を移動すると、刃物44は、刃物保持部92の間に完全に入り込んだ状態となり、コイルバネ86の付勢力により刃物保持部92によって刃物44の外周部分が挟み込まれて、刃物44が刃物保持部92に保持(支持)された状態となる。
【0090】
隙間形成部94は、下面視において、刃物保持部92より遠く離れた側ほど大きな隙間幅となるように形成され、隙間形成部94の間部分に刃物44が入り込み易く構成されている。また、2つの刃物保持部材84の間には、ストッパ部91が設けられ、ストッパ部91に刃物保持部材84が接触することによって刃物保持部材84が刃物保持部92を狭み込む方向側への回動範囲が制限される。このストッパ部91が設けられることで、刃物44が保持機構45に保持されていない状況でも、刃物保持部材84が保持姿勢に維持される。
【0091】
制限部材85は、回動動作によって刃物保持部材84の動作を制限可能とする部材である。制限部材85が第2回動軸89を中心(中心軸)とする回動動作をすることで、刃物保持部材84の回動動作を保持姿勢に制限する制限状態と、保持姿勢から解除姿勢まで刃物保持部材84を回動可能とする解除状態とを、切り替え可能に構成される。制限部材85は、第2回動軸89によって回動可能に設けられ、第2回動軸89が駆動手段(例えば、エアシリンダやモータ)に接続されている。駆動手段は、制御装置Sによって駆動制御され、制限部材85の姿勢が、制限状態と解除状態とに切り替わる。
【0092】
制限部材85は、第2回動軸89の軸方向視(下面視)において、第2回動軸89の中心位置に相当する制限部材85の回転中心から刃物保持部材84に接触する外周部分までの距離が異なる形状に形成されている。具体的には、第2回動軸89の軸方向視において、制限部材85は、略円形の断面を有する外形形状に対して平行な平面によって第2回動軸89の回動中心から一定距離離間した端部分を切除したような形状とされ、第2回動軸89の中心位置から一定の距離分離間した円弧状の外形形状によって構成される接触部95と、接触部95よりも第2回動軸89の中心位置に近い解除部96とを有する形状とされている。
【0093】
また、制限部材85は、第2回動軸89を中心にして略90度の回転動作をすることで、2つの刃物保持部材84に対向する部分(以下、ロック部97ともいう)が接触部95となる制限姿勢と、2つの刃物保持部材84に接触する部分が解除部96となる解除姿勢とを切り替える。
【0094】
制限部材85が制限姿勢をとった状態において、接触部95は、刃物保持部材84に対して隙間形成部94の隙間幅が拡げられる場合に動作するR方向側に対向する位置に配置される。また、刃物保持部材84が保持姿勢から解除姿勢をとるように回動動作しようとしても、第2回動軸89の中心から接触部95までの長さは、解除姿勢をとれる程度にはロック部97との隙間がないように設定されている。これにより、制限姿勢をとった制限部材85によって刃物保持部材84が保持姿勢に維持されたロック状態とすることができる。
【0095】
このように、制限部材85が回動動作することで刃物保持部材84の一部(ロック部97)と接触部95との距離が変化する構成とされ、刃物保持部材84の回動動作が保持姿勢に制限される制限状態と、解除姿勢まで刃物保持部材84が回動可能とされる解除状態とが、制限部材85によって切り替え可能に構成されている。このため、刃物保持部材84によって刃物44を取り外し不能なロック状態と、ロック状態が解除された非ロック状態とを、制限部材85の一定の回転動作のみで切り替えることができ、簡易な構成によって刃物44を確実に保持機構45で保持可能とすることができる。
【0096】
また、刃物保持部材84を回動可能とする第1回動軸88に対して、一方側(+S方向側)に刃物保持部92と隙間形成部94とが設けられ、反対側(-S方向側)に制限部材85が設けられている。このため、制限部材85は、刃物保持部92と隙間形成部94とから離れた位置に配置されることとなり、木材加工機41の取付部51に対しての刃物44の取付や取り外しの際に、制限部材85や制限部材85を駆動する機構が邪魔になるような事態を回避し易くすることができる。また、制限部材85は、2つの刃物保持部材84に対しては、刃物44が位置する側と同一の方向側(すなわち、2つの刃物保持部材84の間部分)に配置すればよく、制限部材85を追加しても刃物保持部材84を含めた保持機構45のサイズは小型に構成し易くすることができる。
【0097】
また、刃物保持部材84を回動可能とする第1回動軸88に対して、コイルバネ86が間に位置するようにして、制限部材85が配置されている。このため、制限部材85と刃物保持部材84とが接触する位置と第1回動軸88との距離を広く設定して制限部材85によるロック機構の破損を抑制し易くし、且つ、それらの間部分のスペースにはコイルバネ86を配置して保持機構45の小型化を実現することができる。
【0098】
ここで、制限部材85は、必ずしもすべての保持機構45に設ける必要はない。コイルバネ86による保持姿勢の状態で、刃物44が確実に待機位置に保持可能であれば、制限部材85と、制限部材85を動作させる駆動機構部分は省略してもよい。制限部材85を設けることによる好適な例として、例えば、待機位置に保持された刃物44を、移動動作させた後に、木材加工機41の取付部51に取り付けられるように構成する場合が例示される。チェーンを用いて切削加工を行うチェーンソー44aや円盤状のノコなどの刃物44は、棒軸状のキリやルータビット等の刃物44と比べて、大型化し易く、重量が嵩んでしまう場合がある。このため、一部の刃物44に対しては、刃物44の移動動作が可能で制限部材85を設けた保持機構45を採用し、これにより、刃物保持部材84の移動動作の勢いによって刃物44が刃物保持部材84から外れてしまう事態を回避しやすくすることができる。
【0099】
また、大型の刃物44の待機位置まで木材加工機41の取付部51を移動可能にすると、木材加工機41によって切削加工が可能な範囲を狭めてしまう可能性がある。このため、本実施形態においては、チェーンソー44aと、キリより太い円柱状に形成されて平面形状を効率よく形成可能なカッター44bと、大型のノコ(図示せず)について、待機位置から刃物44を移動可能とする移動機構46が設けられている(図3参照)。
【0100】
なお、制限部材85は、一定の方向に回動をし続けるように動作可能としてもよいし、略90度の回動動作範囲内で動作し、制限状態へ移行するときと解除状態へ移行するときとで回動方向が反転するようにしてもよい。また、制限部材85の外形形状は、上記に限らず、制限部材85の回動動作による接触部95の移動によって制限状態と解除状態とが切り替え可能であればよく、上記した形状とは異なる形状によって構成してもよい。
【0101】
以下において、図3を主に参照して、保持機構45を移動動作可能とする移動機構46について説明する。移動機構46は、チェーンソー44aと、カッター44bとに対して設けられており、同一の構成であるため、チェーンソー44aの移動機構46を例示して説明する。
【0102】
移動機構46は、刃物保持部材84と制限部材85とを、一体化された状態で、待機位置と、待機位置に対して加工空間の内部へ進出した進出位置との間を移動可能とする機構である。移動機構46は、直線的な動作が可能な動作軸101と、動作軸101を動作させる駆動モータ102とを備えている。駆動モータ102は、木材加工関連装置40のケース体42に固定され(図示せず)、動作軸101が、保持機構45の本体部分を構成するベース体87に接続されている。
【0103】
動作軸101の動作範囲は、直進的な動作によってケース体42の内側となる加工空間の内部に刃物保持部材84(チェーンソー44a)が進出した進出状態に対応する進出位置と、ケース体42の外側であって加工空間の外部へ刃物保持部材84(チェーンソー44a)が退避した待機状態に対応する待機位置との間を移動可能に設定される。これにより、移動機構46によって、刃物保持部材84と制限部材85とが、一体化された状態で、待機位置と、待機位置に対して加工空間の内部へ進出した進出位置との間を移動可能とすることができる。
【0104】
制御装置Sは、移動機構46による刃物保持部材84の移動動作と、制限部材85の回動動作と、木材加工機41の取付部51の位置及び向きを制御する制御プログラムを記憶している。
【0105】
制御プログラムによる移動機構46と制限部材85と木材加工機41の動作制御は、以下のようにして行われる。まず、制御装置Sの制御によって、制限部材85と、制限部材85が制限状態をとった状態において刃物保持部材84を待機位置(図3(A)参照)から進出位置(図3(B)参照)へと移動させる。
【0106】
進出位置への移動後には、刃物保持部材84に保持されたチェーンソー44aが木材加工機41の取付部51に取り付けられるように、木材加工機41の動作を制御する。この木材加工機41の動作によって、取付部51が、チェーンソー44aの主軸部83に係合して、取付部51にチェーンソー44aが取り付けられ、ロック機構の動作によって一体化される。
【0107】
木材加工機41の取付部51にチェーンソー44aが取り付けられた後には、制限部材85を解除状態に切り替えるように、制限部材85を回動する(図6(B)参照)。制限部材85を解除状態とした後には、刃物保持部材84に対して木材加工機41の取付部51がケース体42の内側(図3の-X方向側)へ移動するように、木材加工機41の動作を制御する(図3(C)参照)。
【0108】
取付部51の移動に伴って刃物保持部92からチェーンソー44aが抜け出すように移動し、刃物保持部材84からチェーンソー44aが取り外される。これにより、木材加工機41での切削加工として、チェーンソー44aを用いた切削加工が可能となる。
【0109】
ここで、移動機構46による刃物保持部材84の移動方向(+X方向及び-X方向)は、保持機構45における第1回動軸88に対して刃物保持部92と隙間形成部94とが位置する方向(+S方向及び-S方向)と一致する構成とされている。また、進出位置へ進出する進行方向先端側に隙間形成部94が位置するように構成されている。このため、移動機構46による刃物保持部材84の移動によって、ケース体42の内側に形成される加工空間の内側へチェーンソー44aを大きく進行し易く、また、保持機構45に保持されたチェーンソー44aを取付部51に取り付けた後には、加工空間の内側に位置する加工木材Kに向けてチェーンソー44aを進行させることができる。
【0110】
チェーンソー44aでの切削加工中には、移動機構46によって刃物保持部材84は待機位置へ移動させておく。切削加工が終わった後には、再び、刃物保持部材84を進出位置へと移動し、取付部51の移動によってチェーンソー44aを刃物保持部材84(保持機構45)に保持された状態とする。そして、刃物保持部材84にチェーンソー44aが保持された状態となった後に、制限部材85を制限状態に切り替える。その後、チェーンソー44aから取付部51が取り外されて、移動機構46により待機位置へとチェーンソー44aが移動する。
【0111】
ここで、制限部材85が制限状態にされたことを検出可能な検出器(例えば、制限部材85を動作させるエアシリンダの動作位置の検出器)を制御装置Sに接続し、制限部材85が制限状態にされたことを検出器で検出することを条件にして、刃物44が保持された保持機構45を移動機構46によって移動するようにしてもよい。また、刃物44が刃物保持部材84に保持されたことを検出可能な検出器(例えば、刃物保持部92の側を向く非接触式の検知センサ)を設けて制御装置Sに接続し、刃物保持部材84に刃物44が保持されたことを検出器で検出した後に、制限状態となるように制限部材85を回動させる構成としてもよい。
【0112】
このように、移動機構46による保持機構45(刃物保持部材84)の移動動作中には、制限部材85を制限状態にすることで、刃物44を取り外し不能なロック状態とされる。このため、チェーンソー44aのような重量が嵩む刃物44であっても、刃物保持部材84の移動動作の勢いによって刃物44が刃物保持部材84から外れてしまう事態を回避することができる。
【0113】
また、待機位置に対して進出位置が位置する側(-X方向側)に木材加工機41が配置され、切削加工が行われる位置に近い側にチェーンソー44aを移動してから、刃物保持部材84からチェーンソー44aが取り外される。このため、切削加工が行われる位置に近い側にチェーンソー44aを予め移動しておくことができ、これにより、加工開始までの時間を短縮することができる。
【0114】
次に、木材加工関連装置40の構成として、多種の刃物44が待機位置に配置される場合における刃物44の待機位置の配置と、移動機構46に関する構成について説明する。
【0115】
木材加工関連装置40には、図1に示すように、上面側からみて、搬送経路Lに沿った3つの箇所に、ツールストッカ43が配置されている。具体的には、図3(A)に示すように、2つの木材加工機41の間部分に位置するケース体42の上部に配置される第1ツールストッカ43aと、第1ツールストッカ43aに対して加工木材Kの搬送経路Lに沿った下流側(+X方向側)に配置される第2ツールストッカ43bと、第1ツールストッカ43aに対して加工木材Kの搬送経路Lに沿った上流側(-X方向側)に配置される第3ツールストッカ43cとが設けられている。
【0116】
3つのツールストッカ43には、上下方向の一方側に刃物44の刃部81が位置し、他方側に主軸部83が位置するように配置されている。この配置とすることで、保持機構45(刃物保持部材84)によって刃物44を安定した状態で支持することができる。なお、必ずしも上下方向の一方側に刃物44の刃部81が位置し、他方側に刃物44の主軸部83が位置するように配置する必要はない。木材加工関連装置40に設けられる少なくとも一部の刃物44として、斜め方向又は水平方向に刃物44の刃部81と主軸部83とが並ぶように待機位置に配置される刃物44を含むように保持機構45を設けてもよい。
【0117】
3つのツールストッカ43のうち、第1ツールストッカ43aは、加工空間の上側に設けられ、上下方向の上側に刃物44の刃部81が位置し、刃部81よりも下側に被保持部82と主軸部83とが位置するように配置されている。刃物44の刃部81は、加工の種類によって形状や大きさが異なり、木材加工関連装置40の設置後に、更に、大きな刃部81を有する刃物44が使用される可能性もある。これに対して、刃物44の刃部81を加工空間の上側に配置し、刃部81が上側に突出するように待機位置に刃物44を配置することで、刃物44の刃部81が加工空間内に入り込む事態を回避し易くすることができる。また、加工空間の上側にて上方側に刃部81が位置するように刃物44を配置することで、木材加工関連装置40の上方側の空間を利用して刃物44に近づき易くすることができ、刃物44の保守管理を行い易くすることができる。
【0118】
第2ツールストッカ43bは、搬送経路Lを通過する加工木材Kに対して下側に重なる位置に設けられ、第3ツールストッカ43cは、搬送経路Lを通過する加工木材Kに対して上側に重なる位置に設けられている。また、第2ツールストッカ43bは、加工空間に対して搬送経路Lの上流側に配置され、第3ツールストッカ43cは、加工空間に対して第2ツールストッカ43bとは逆側(搬送経路Lの下流側)に設けられている。これにより、加工空間に近い位置におけるスペースを有効活用して加工が行われる加工木材Kの近くにツールストッカ43と刃物44とを配置し易く、また、第2ツールストッカ43bと第3ツールストッカ43cとの距離を大きくして、2つの木材加工機41の刃物44を同時に交換可能とすることができる。
【0119】
3つのツールストッカ43のうち、第1ツールストッカ43aには、上下方向へ刃物44を移動可能な移動機構(図示せず)が設けられ、搬送経路Lに近づくように加工空間内に上方側から刃物44が進行して、木材加工機41の刃物44を交換可能に構成される。この第1ツールストッカ43aの刃物44の移動機構としては、1つの刃物44を上下方向に移動可能な移動機構を含むようにしてもよいし、2個以上(例えば、6個)の刃物44を同時に上下動させることが可能な移動機構を含むようにしてもよい。例えば、合計48個の刃物44が、6個を単位として、上下に動作可能に移動機構を設けてもよい。また、必ずしも第1ツールストッカ43aに保管される全ての刃物44に移動機構を設ける必要はなく、一部の刃物44又は全ての刃物44に対しての移動機構を省略してもよい。
【0120】
第2ツールストッカ43bと第3ツールストッカ43cには、加工空間内に向かって、水平方向側に刃物44が進行可能に、移動機構46が設けられている。この第2ツールストッカ43bと第3ツールストッカ43cとには、1つだけの刃物44を保管しても、2個以上の刃物44を保管してもよく、2個以上の刃物44を保管する構成とした場合には、移動機構46として、1つの刃物44を移動可能とする移動機構46を含むようにしてもよいし、2個以上の刃物44を同時に移動可能な移動機構を含むようにしてもよい。
【0121】
また、第2ツールストッカ43bと第3ツールストッカ43cは、図3(A)に示すように、高さ方向において、木材加工機41の加工空間(ケース体42の内部空間)の高さ範囲内に位置するように配置されている。このため、第2ツールストッカ43bと、第3ツールストッカ43cに配置された刃物44は、加工空間内に向けて水平方向側に刃物44が移動するようにして、取付部51への刃物44の取付及び取り外しを可能とすることができる。よって、チェーンソー44a等の大型の刃物44を、移動機構46によって上下方向側へ移動する場合と比べて、保持機構45による刃物44の保持を容易にし、移動機構46による刃物44の落下を防止したり、保持機構45を簡易な構成で安価に製造し易くすることができる。
【0122】
また、チェーンソー44a等の大型の刃物44は、加工空間から離れた位置に、未使用の際に配置して、木材加工機41の加工空間を広く設定し易くすることができ、また、保守作業の頻度が高い刃物44(例えば、チェーンソー44a)は、作業者から手が届きやすい低い位置に配置可能にして、保守管理を簡便にし、作業効率を高め易くすることができる。なお、木材加工関連装置40に移動機構46は必ずしも設ける必要はなく、省略してもよい。また、保持機構45を移動可能とする方向は、上記した水平方向や上下方向に限らず、斜め方向などの別の方向でもよいし、折れ線状などの所定の経路に沿った方向に保持機構45を移動可能に構成してもよい。
【0123】
次に、チェーンソー44aに関する構成について、図7及び図8を主に参照して説明する。図7(A)は、チェーンソー44aと木材加工機41の一部(取付部51)とを示した斜視図であり、図7(B)は、図7(A)に対してチェーンソー44aと取付部51とが連結された状態の連結部分を示した斜視図である。図8は、チェーンソー44aの給油装置114を模式的に示した図であり、チェーンソー44aと取付部51の外形形状を細い実線で示し、空気の供給経路を一点鎖線で示し、油の供給経路を実線で示し、油と空気とが混合した流体(霧状の油)の経路を点線で示している。
【0124】
チェーンソー44aは、木材加工機41の取付部51に取り付けられることによって使用可能な刃物44の1つである。チェーンソー44aには、木材を切削する複数の刃111(図6(A)には、一部のみ図示)が一定の間隔を空けて配置された刃部81としてのソーチェーン112と、ガイド部材113とが設けられ、ソーチェーン112がガイド部材113の周りを周回可能に取り付けられる。チェーンソー44aには、ソーチェーン112の回動力を木材加工機41から伝達する主軸部83が設けられ、取付部51の内部に設けられる作動モータ(図示せず)の回動力が、主軸部83を介してソーチェーン112に伝達される。制御装置Sが、木材加工機41の取付部51の動作を制御することで、チェーンソー44aの位置、姿勢及び動作が制御されて、木材の切削加工が行われる。
【0125】
チェーンソー44aは、圧縮空気を用いてソーチェーン112に油(潤滑油)を供給する給油装置114を備えている。給油装置114に用いられる圧縮空気は、木材加工機41の取付部51を通じて供給される圧縮空気が用いられる。すなわち、木材加工機41の取付部51にチェーンソー44aが取り付けられた場合においてのみ、給油装置114が作動してソーチェーン112に油が供給される。
【0126】
なお、必ずしも木材加工機41の取付部51を通じて給油装置114に圧縮空気が供給される構成とする必要はなく、例えば、保持機構45(図3(A)等参照)が設けられる待機位置にて給油装置114に圧縮空気を供給する構成としてもよい。また、必ずしもチェーンソー44aに給油装置114を一体的に設ける必要はなく、例えば、木材加工関連装置40の加工空間の一部に、チェーンソー44aとは別に給油装置114を固定的に又は移動動作可能に配置し、給油が必要なタイミングでチェーンソー44aを給油装置114が配置される位置まで移動して給油を行うように構成してもよい。
【0127】
木材加工関連装置40には、圧縮空気供給手段としてのコンプレッサが設けられ(図示せず)、コンプレッサの圧縮空気が木材加工関連装置40における種々の機能を発揮させるために利用される。例えば、木材加工機41の取付部51と刃物44とを連結固定するロック機構の動作や、刃物44の周りの木屑を高速の空気によって除去する場合に圧縮空気が利用される。コンプレッサは、ケース体42の外部の床面に設置され、コンプレッサから木材加工機41の取付部51まで、2つの移動部材53,54(図2参照)に沿った経路を含む配管の経路を経由することで、コンプレッサから取付部51(具体的には、取付部51の内部に形成される空気の経路)を通じてチェーンソー44aに圧縮空気が伝達される。
【0128】
チェーンソー44aは、給油装置114として、油貯留部121と、給油空気通過路124aを含む流体通過部124と、供給機構123とを備えている。また、流体通過部124は、流体としての空気、油、及び、空気と油の混合気体のいずれかが通過する配管部分によって構成され、流体通過部124としては、屈曲可能な金属製のチューブ、屈曲不能に成形された金属製のパイプ、部材の内部に形成される内部通路、及び、複数の配管を接続する継手等が用いられる。なお、流体通過部124として、樹脂製のチューブなどの他の部品を用いてもよく、給油装置114に必要な流体の種類や経路に応じたいずれの組合せによって構成してもよい。また、図7(A)には、チェーンソー44aの外部に露出する流体通過部124を点線で模式的に示している。
【0129】
油貯留部121は、油(潤滑油)を内部に貯留する貯留タンクによって構成される。油貯留部121には、図8に示すように、油を貯留する内部空間を形成する貯留部121aと、貯留部121aの外壁部分の一部を構成する可動壁121bと、可動壁121bから貯留タンクの外側に突出する突出部121cとが設けられ、突出部121cの突出量によって油の残量が検出(確認)可能に構成される。
【0130】
供給機構123は、油貯留部121に貯留された油の一部を給油空気通過路124aに供給する機構であり、例えば、圧縮空気のオンオフによって作動状態が切り替わるエアシリンダによって構成されている。供給機構123には、図8に示すように、流体通過部124の一部である供給機構用通路124cを介してコンプレッサが接続され、制御装置Sによる制御弁の制御によって供給機構123が1回分の作動をすると、一定量(例えば、略5ml)の油が油貯留部121から給油空気通過路124aへ向けて出力される。
【0131】
給油空気通過路124aは、流体通過部124の一部であり、制御装置Sによって圧縮空気の出力のオンオフが制御される制御弁を介してコンプレッサに接続されている。給油空気通過路124aには、制御装置Sの制御により供給される圧縮空気(高速の空気)が通過可能で、給油空気通過路124aの出口部分にソーチェーン112が位置するように構成される。
【0132】
油貯留部121と給油空気通過路124aとの間には、図8に示すように、油供給路124bが設けられ、油供給路124bと給油空気通過路124aとが継手125によって接続されている。油供給路124bの途中部分には、給油空気通過路124a側から油貯留部121へ油が逆流することを防止するチェック弁126が設けられている。油貯留部121のエアシリンダが1回分の作動(例えば、1往復のピストンの移動)をすると、油供給路124bを通じて給油空気通過路124aに、一定量の油が供給される。なお、必ずしも油供給路124bを通じて給油空気通過路124aに油が供給されるように構成する必要はなく、油貯留部121に貯留された油が直接給油空気通過路124aへ供給されるように流体通過部124を構成してもよい。
【0133】
給油空気通過路124aに進入した一定量の油は、給油空気通過路124aの出口127に向かって供給される。この場合に、油は、給油空気通過路124aを高速で空気が通過している状態で供給され、これにより、油が少量ずつの霧状となって、給油空気通過路124aの出口127に向かって進行する。給油空気通過路124aの出口127には、ソーチェーン112とガイド部材113の間部分が位置し、霧状の油がソーチェーン112とガイド部材113との間部分に吹き付けられる。なお、必ずしもソーチェーン112とガイド部材113との間部分に向けて油を吹き付ける必要はなく、ソーチェーン112に向けて給油を行うようにしてもよい。
【0134】
油貯留部121への油の注入時期は、油貯留部121に設けられる突出部121cの突出量を作業者が目視で確認して判断することができる。なお、突出部121cの突出量を検出するセンサを設けて検知して制御装置Sの制御によってセンサの状態を通じて油の残量の少ない時期を検出し、表示装置に油が少ない状態に対応した情報(例えば、「油残量小」等の表示)を必要に応じて出力して油の補給時期を告知するようにしてもよい。
【0135】
油貯留部121への油の注入は、油貯留部121と油供給路124bとを接続する継手を取り外して実施される。なお、油供給路124bとは別に油貯留部121へ油を注入するための入口部分を設けて、油貯留部121へ油を注入可能としてもよい。
【0136】
次に、給油装置114を用いたチェーンソー44aへの給油の実施例について、説明する。給油装置114を用いたチェーンソー44aへの給油は、制御装置Sの制御プログラムによって、圧縮空気の供給の制御をすることで実行する。また、チェーンソー44aへの給油は、取付部51にチェーンソー44aが取り付けられてから切削加工が行われるまでの間と、チェーンソー44aが取付部51に取り付けられた状態での切削加工の途中において実行される。
【0137】
まず、チェーンソー44aが取付部51に取り付けられるように、取付部51と、移動機構46の動作が制御されて、取付部51にチェーンソー44aが取り付けられる(図7(B)の状態)。その後、給油空気通過路124aを空気が出口127に向かって通過するように、コンプレッサの出力を制御する。また、ソーチェーン112が回動するように、主軸部83の回転を制御する。
【0138】
給油空気通過路124aを空気が通過し、ソーチェーン112が回動した状態となると、その状態を継続したままで、供給機構123を1回動作させて、油貯留部121に貯留された油を、一定量分、油供給路124bから給油空気通過路124aに供給する。これにより、コンプレッサによって供給された空気により、一定量の油が霧状となってソーチェーン112に吹き付けられる。なお、給油空気通過路124aを空気が通過するように制御するタイミングは、必ずしも給油空気通過路124aへ油が供給される前とする必要はなく、油が供給された後に空気の通過が開始されるよう制御してもよいし、油の供給と同時に、又は油の供給中に空気の通過が開始されるように制御してもよい。
【0139】
前回の供給機構123の動作から一定の時間(例えば、2秒)が経過すると、再び、供給機構123を1回動作させて、再び、一定量の油が霧状となってソーチェーン112に吹き付けられる。この動作が複数回(例えば、3回)にわたって繰り返されることにより、供給機構123によって供給される一定量の油が霧状となって、ソーチェーン112に供給されることが繰り返される。
【0140】
ソーチェーン112への給油は、チェーンソー44aを一定の位置に停止させたままで実行してもよいし、チェーンソー44aを移動している期間を用いて行ってもよい。例えば、チェーンソー44aを待機位置から、加工木材Kを最初に加工する位置まで移動する間の移動期間を利用してソーチェーン112への給油を行ってもよく、これにより、加工木材Kの加工時間を短縮し易くすることができる。
【0141】
また、ソーチェーン112への給油をチェーンソー44aの移動中に行う場合、次の切削加工の開始までに、給油に必要な予め定めた時間(例えば、10秒)以上の移動時間が確保できるか否かや、予め定めた回数(例えば、3回)以上の供給機構123の動作による給油が可能であるか否かを制御装置Sにより判定し、その時間がある移動期間中に給油を行うようにしてもよい。
【0142】
また、切削加工が開始されると木屑が散乱することとなり、切削加工中に給油を行うと、霧状の油が木屑に付着して、その油が付着した木屑によって加工木材Kが汚れてしまう可能性がある。このため、切削加工中に給油が実施されないように制御してもよく、例えば、ソーチェーン112を回転させるモータの電流値を検出して切削加工中であるか否かを制御装置Sで判定可能とし、その電流値が木材の切削中に対応する値である場合に給油を制限し、空転中の値である場合に給油が行われるようにしてもよい。この場合に、給油の最中に加工が開始された場合には、1回分の供給機構123の動作による給油が終わったタイミングで給油を終了するように制御してもよいし、加工の開始が検出されたら給油の動作中であっても給油を終了(停止)するように制御してもよい。
【0143】
このように、供給機構123の動作により給油空気通過路124aに供給される油が、コンプレッサの空気を用いて少量ずつの霧状にしてソーチェーン112に供給される。このため、ソーチェーン112とガイド部材113との接触部分が高温になりすぎるのを抑制し、且つ、ソーチェーン112に供給された油が切削加工中の加工木材Kに付着する事態を回避し易くすることができる。
【0144】
また、複数回の供給機構123の動作によって、油貯留部121から供給される油を少量ずつの複数回に分けて霧状にしてソーチェーン112に供給される。このため、空気と油とが混合した霧状の流体における油の濃度を低くしてソーチェーン112に油を供給することができ、ソーチェーン112の全体に油を供給し易くすることができる。
【0145】
また、供給機構123を構成するエアシリンダの動力源として、油を吹き付ける際に利用するコンプレッサが利用される。このため、木材加工機41に設けられる空気の配管の一部を、エアシリンダと油の吹きつけとにおいて共通化することができ、空気の配管を単純化し易くすることができる。また、空気を動力とすることでモータ等を用いるよりも供給機構123を軽量に構成し易くすることができ、ソーチェーン112を用いたチェーンソー44aの重量増を抑えて高速な刃物44の移動を実現し易くすることができる。
【0146】
また、木材加工機41の取付部51にチェーンソー44aが取り付けられた場合に、コンプレッサによって供給された空気が給油空気通過路124aに供給されて、ソーチェーン112に油の一部が吹き付けられる。このため、給油の際のソーチェーン112の回転は、木材加工機41による切削加工の動力を使用することができ、給油装置114の給油に必要な動力は、取付部51への刃物44の接続を通じて確保することができる。よって、チェーンソー44aに給油機能を付加するために、専用の動力源や、配管の接続制御等を不要とすることができ、単純な構造と制御を用いて、チェーンソー44aに給油機能を安価に付加し易くすることができる。
【0147】
次に、チェーンソー44aと取付部51との連結部分の構成について、図7及び図8を主に参照して説明する。チェーンソー44aは、木材加工機41の取付部51に対して、主軸部83が取付孔131に差し込まれ、2つのガイドピン132が2つのガイド穴133に差し込まれて連結される。2つのガイドピン132は、主軸部83に対して、主軸部83の回転中心軸Cから離れた位置に配置される。2つのガイドピン132は、主軸部83の回転中心軸Cを中心にして略90度の角度分離れた位置に配置される。この2つのガイドピン132と、主軸部83とによって、主軸部83を中心としたチェーンソー44aの回転が支えられるように構成されている。
【0148】
ここで、ガイドピン132は、1つだけ設けられてもよいが、主軸部83の回転中心軸Cを中心にした2カ所以上に離間して設けられることが好ましい。これにより、ソーチェーン112の先端が主軸部83から遠く離れて位置するチェーンソー44aに作用する大きな回転モーメントに対しての抵抗力を発生し易くし、且つ、チェーンソー44aと取付部51との連結部分を小型に形成し易くして切削加工の自由度を高めることができる。
【0149】
また、ガイドピン132は、図7に示すように、2つとも略円形の断面形状を有する棒軸状に形成され、ガイド穴133は、ガイドピン132と略同一の略円形の断面形状を有する穴形状とされている。なお、ガイドピン132とガイド穴133は、略円形の断面形状に限らず、主軸部83を中心としたチェーンソー44aの回転に抵抗可能であればよく、例えば、ガイド穴133を長円形の断面形状や主軸の回転中心軸Cから離れた方向側に連続する溝状に形成するなど、他の形状により構成してもよい。
【0150】
また、ガイドピン132の内部には、ガイドピン132の中心軸部分に、コンプレッサの空気が通過する流体通過部124の一部が設けられている。具体的には、一方のガイドピン132には、給油空気通過路124aの一部が形成され、別のガイドピン132には、供給機構用通路124cの一部が形成される。これにより、チェーンソー44aと取付部51との連結動作によって、圧縮空気の通路の接続を実施可能とすることができる。
【0151】
ここで、ガイドピン132の突出方向の先端部分(図7(A)の下端部分)には、ガイド穴133の奥底部分に接触して変形可能な筒状のゴム部材134が設けられている。ガイド穴133にガイドピン132が差し込まれると、ゴム部材134が圧縮されて僅かに変形し、変形したゴム部材134によって空気の配管の一部が構成される。これにより、ガイドピン132と取付部51との間の空気の漏れを抑制することができる。
【0152】
次に、木材加工機41によって切削加工が行われることで発生する木屑の処理について説明する。木材加工関連装置40による木屑の処理装置としては、加工位置に配置された加工木材Kの下側に第1のベルトコンベアを設け、搬送経路Lの方向に沿って、加工空間の下側から加工空間の下から外れた外側(例えば、下流側搬送装置30bの側)へ木屑を排出するように構成することが好ましい。大型の断面形状の加工木材Kを加工可能な構成とした場合には、搬送経路Lの水平方向の幅も広くなってしまうため、搬送経路Lの下側の空間を利用して木屑が外部に排出されるようにすることが、木材プレカット加工装置10の大型化を抑制することができで好ましい。また、第1のベルトコンベアに対して、2つの木材加工機41に近い側から、搬送経路Lの下側へ向けて木屑を移送する2つのベルトコンベアを設けて、第1のベルトコンベアへ木屑を移送可能にしてもよい。加工空間の下側における木材加工機41に近い位置に落下した木屑を含めて、第1のベルトコンベアによって木屑を移送することができる。
【0153】
また、木屑の処理装置として、第1のベルトコンベアの下流側にて搬送経路Lに交差する方向側に連続する第2のベルトコンベアを備える構成とし、第2のベルトコンベアから排出される木屑がまとめられた状態となるようにしてもよい。ここで、木屑は、大きさによって仕分けした状態にまとめられることが好ましく、例えば、小さな木屑は、第2のベルトコンベアの上から横方向や上方向からの負圧によって木屑を吸い込む集塵機を用いて第2のベルトコンベアでの搬送途中で回収し、第2のベルトコンベアの排出先に一定以上の大きな木屑(木っ端)を収容可能な回収箱を設けて大きな木屑を回収するようにしてもよい。
【0154】
また、第2のベルトコンベアが、木屑を一定の高さ位置まで上昇させるように斜め上方側へ連続する区間を有する構成とし、一定の高さまで上昇した木屑を、金網等のフィルターの上に落下させて、フィルターを通過しない大きな木屑は、フィルターの上に残存することで手作業等によって回収可能とし、金網の下に落ちた小さな木屑は、金網の下側の空間に対して横方向から木屑を吸い込む集塵機を用いて回収するようにしてもよい。
【0155】
次に、仕口の加工に好適な刃物44(組合せ刃物44c)について、図9を主に参照して説明する。図9(A)は、仕口の種類として、蟻部141と、腰掛部142とを備えたオス材143の切削加工が可能な組合せ刃物44cを例示した図である。また、図9(B)は、組合せ刃物44cによって加工が可能な蟻部141と腰掛部142とを備えたオス材143と、メス材144との組合せの説明図である。なお、図9(A)には、組合せ刃物44cの一部を断面視して示している。
【0156】
仕口は、2つ以上の部品(構造材)の接合部であり、上側から嵌め合わされる部品(オス材143)の端部に形成された凸型の部分(凸状部145)と、下側に位置する部品(メス材144)の一部に形成された凹型の部分(凹状部146)との組合せによって構成される。この仕口の種類の1つとして、蟻部141と、腰掛部142とを備えた仕口があり、蟻部141は、図9(B)に示すように、オス材143の凸状部145の先端側から次第に外形が小さくなる形状部分によって構成される。腰掛部142は、蟻部141よりも凸状部145の先端側から遠い根元側(本体側)に位置し、蟻部141より外形形状が大きな段差部分によって構成される。この蟻部141と腰掛部142とに対応するように、メス材144の凹状部146を形成することにより、2つの部品を直交するようにして接合することができる。
【0157】
組合せ刃物44cは、形状の異なる複数の刃部としての第1カッタ151と、第2カッタ152とを有し、この複数のカッタ151,152の回転によって加工木材Kに対してオス材143の仕口の切削加工が可能に構成されている。組合せ刃物44cは、木材プレカット加工装置10(図1参照)に使用可能であり、木材加工機41の取付部51に取り付けられることによって加工木材Kに対してオス材143の仕口を形成することができる。
【0158】
組合せ刃物44cは、刃物44の主軸部83と一体化される1つの回転軸153に対して、形状の異なる加工をするための2つのカッタ151,152が組み合わされて構成されている。
【0159】
第1カッタ151は、オス材143の仕口における蟻部141を切削加工によって形成可能なように、図9(A)に示すような鋭角な断面形状の外周部分を有している。また、第1カッタ151は、回転軸153に接続される本体部と、本体部の外側に設けられて木材を加工する刃とを有している。第1カッタ151は、図9(A)に示す側面視においては、上側の辺が長い逆台形の外形形状に形成されている。この第1カッタ151の外周部分151aは、先端側から外形が次第に細くなる円錐台形の外周形状に形成されている。第1カッタ151の外周部分151aには、加工木材Kを切削可能な刃が取り付けられている。
【0160】
また、第1カッタ151の先端側の端面151bは、外周に近い一部が切削可能な刃を設けて構成される。この第1カッタ151の先端側の端面151bを、オス材143の本体側に位置するようにし、蟻部141を形成する部分に沿って第1カッタ151を移動しながら加工木材Kを切削することにより、図9(B)に示すような、オス材143の端部に蟻部141を形成することができる。この蟻部141を含めた加工木材Kに対する切削加工の制御は、制御装置Sの制御プログラムとして記憶され、制御装置Sが木材加工機41の動作制御をすることによって実施される。
【0161】
第2カッタ152は、第1カッタ151の外径より大きな外径をした円柱状の外周部分152aを有している。また、第2カッタ152は、回転軸153に接続される本体部と、本体部の外側に設けられて木材を加工する刃とを有している。
【0162】
第2カッタ152の外周部分152aに対して回転軸153の軸方向に沿った両側の端面152bには、外周部分152aに近い一部を切削可能な刃が設けられている。この第2カッタ152の外周部分152aを加工木材Kの表面に接触させつつ直線的に進行させることにより、加工木材Kに、第2カッタ152の円柱状部分の長さHと同一長さの溝を形成することができる。よって、第2カッタ152を用いて、加工前の加工木材Kの外周部分を加工して、加工木材Kの断面サイズより一回り小型の断面形状を有する直方体状の部位を形成することができ、この直方体状の部位を、柱材の端部とすることで、柱材の「ほぞ」として利用することができる。
【0163】
第2カッタ152は、図9(A)に示す側面視においては、横長の長方形の外形形状に形成されている。第2カッタ152の角部152cには、図9(A)に一点鎖線で囲んで一部を拡大視して示すように、先端部分を鋭角にして外側に突出した突部が設けられている。この突部は、第2カッタ152の長さHの方向における両側に設けられ、これにより、第2カッタ152による加工部分の仕上げを高品質にすることができる。
【0164】
ここで、第2カッタ152の角部152cにおける突部は、0.5mm以上の高さに設定することで木材の繊維を分断でき、突部として1mmを超えるように、例えば、1.5mmの高さに形成してもよい。1mmを超える高さとした場合には、単に繊維を分断するだけでなく、面取り加工に利用することができる。例えば、第2カッタ152の長さHを、仕口として形成する、「ほぞ」の長さと同一長さ(例えば、45mm)としてもよく、これにより、第2カッタ152で加工木材Kの長さ方向における途中部分に対して、4面に溝を形成することで、「ほぞ穴」に差し込み可能な「ほぞ」を形成することができ、その「ほぞ」の先端部分には、略1.5mmの面取り加工を施すことができる。
【0165】
第2カッタ152は、腰掛部142の形成に使用することができる。腰掛部142を形成する場合、第2カッタ152の一方側の端面152bが、オス材143の本体側に位置し、蟻部141に対しては、その一方側の端面152bが蟻部141よりも本体側に近くなるようにし、且つ、蟻部141よりも外側に位置するようにして、第2カッタ152の位置が制御される。そして、腰掛部142を形成する部分に沿って第2カッタ152を移動しながら加工木材Kを切削することで、蟻部141に対応した形状の腰掛部142が形成されたオス材143を製造することができる。
【0166】
ここで、「ほぞ」は、建築現場において直立するようにして設置される柱材に設けられる部位であり、腰掛部142は、建築現場において水平方向側に連続するようにして設置される横架材に設けられる部位である。木材プレカット加工装置10においては、多種の部品を製造可能とし、柱材と横架材との双方を加工するように、制御装置Sが各部位を制御する。この木材プレカット加工装置10において、第2カッタ152を用いることで、横架材に使用可能なオス材143の腰掛部142と、柱材の「ほぞ」とを、1つの刃物44だけで両方形成することができる。
【0167】
このように、木材プレカット加工装置10は、第1カッタ151と第2カッタ152とを組み合わせた組合せ刃物44cで加工木材Kを加工し、横架材に利用可能なオス材143の仕口として、蟻部141と腰掛部142とを形成することができ、また、柱材の「ほぞ」を形成することもできる。このため、1つの刃物44を用いて加工可能な対象を増やすことができ、木材プレカット加工装置10として設置可能な刃物44の数が限られている中で、別の種類の刃物44を設置し易くすることができる。
【0168】
なお、第1カッタ151と、第2カッタ152とは、回転軸153の軸方向に沿って、相対移動が可能なように構成してもよいし、相対移動ができないように一体化してもよい。
【0169】
次に、上記した組合せ刃物44cとは別の種類の組合せ刃物44dについて説明する。図10は、組合せ刃物44dを例示した図であり、図10には、組合せ刃物44cの外形形状と、別の木材加工機として、2つの組合せ刃物44c,44dを回動させることが可能な動力源(モータ)とを、二点鎖線で示し、組合せ刃物44dの一部を断面視して示している。以下において、組合せ刃物44dの説明として、組合せ刃物44cと同一の構成については、説明を省略する。
【0170】
組合せ刃物44dは、図10に示すように、第2カッタ162の円柱状の外周部分162aに対して一方側が更に外形が大きな段差部分を有した形状とされている。また、段差部分の内側(奥側)に相当する角部162cには、上記した第2カッタ152の角部152cに設けられた突部より長さが長く設定された傾斜部分が設けられている。この角部162cの傾斜部分から外形が大きな外周部分に連続して、加工木材Kを切削可能な刃が取り付けられ、これにより、第2カッタ162では、「ほぞ」の先端部分として、上記した第2カッタ152よりも大きな面取り加工を先端部分に形成可能とすることができる。
【0171】
また、第1カッタ161は、上記した組合せ刃物44cの第1カッタ151に対して、外形の大きさが異なるように構成されている。この第1カッタ161の外形の大きさが異なることにより、加工木材Kの種類(例えば、堅さ)等に適した一方の刃物44を用いて切削加工を行うことができる。この外形の大きさは、必ずしも異ならせる必要はなく、組合せ刃物44cの第1カッタ151と同一サイズの第1カッタ161を用いて組合せ刃物44dを構成してもよい。
【0172】
なお、組合せ刃物44c,44dは、取付部51を備えた木材加工機41によって加工木材Kを加工する木材プレカット加工装置10に必ずしも使用する必要はなく、他の木材プレカット加工装置10に利用してもよい。例えば、2つの組合せ刃物44c,44dを、両側で回動させることが可能な動力源(モータ)を備えた木材加工機171の両側部分に取り付けるように構成し、組合せ刃物44cを、搬送経路Lに対して上下方向及び水平方向に移動制御して、横架材の仕口や、柱材の「ほぞ」の切削加工を可能に構成してもよい。
【0173】
なお、本発明は、上記実施形態に限られることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものであり、例えば、以下に記載するように変形して実施してもよく、この場合に、以下に記載する各構成を上記実施形態に対して適用してもよく、以下に記載する複数の構成を組み合わせて上記実施形態に対して適用してもよい。
【0174】
例えば、木材プレカット加工装置10は、必ずしも上記した構成とする必要はなく、一部の構成を異ならせるようにしてもよい。例えば、必ずしも同一形状の2つの木材加工機41を備える構成とする必要はなく、2つの木材加工機41が異なる大きさや形状によって構成されてもよい。
【0175】
また、2つの木材加工機41に加えて、別の木材加工機を有するように構成してもよい。例えば、木材加工機41として、搬送装置30と投入装置20の間に、別の木材加工機を設置して、加工木材Kの長手方向の両端部分の加工が予め行われるようにしてもよい。この場合には、加工木材Kの長手方向の両端部分の加工が行われた後に、搬送装置30による加工木材Kの長手方向の長さが計測されることが好ましい。
【0176】
また、上記実施形態においては、下側搬送部31に動力源を設けてローラ72が回動することによって加工木材Kを搬送可能とする場合について説明したが、ローラ72が必ずしもモータ等の動力源によって回動可能に構成する必要はない。下側搬送部31のローラ72は、自由に回転が可能なフリーローラによって構成し、下側搬送部31のみでは加工木材Kが移動できず、上側搬送部32によって加工木材Kを移動するようにしてもよい。
【0177】
また、上記実施形態においては、2つの移動部材53,54を備えた木材加工機41と、検出器で位置を検出可能なクランプ73(クランプ動作部74)と、制限部材85を備えた保持機構45と、給油装置114を備えたチェーンソー44aという4種類の装置を含む木材プレカット加工装置10について説明したが、上記4種類の装置のうち3つ以下の一部の装置については、上記した装置とは別の構成としてもよく、その場合であっても残りの1以上の装置に対応した効果を奏する木材プレカット加工装置10を提供することができる。このため、例えば、木材加工機41として腕部分が回動することで、取付部51の位置を移動制御する多関節ロボットを用いる構成としてもよいし、搬送装置30として上側搬送部32におけるクランプ73の位置を検出可能な検出器を備えない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0178】
以上説明したように、この発明は、木材を加工可能な木材加工装置に適している。
【符号の説明】
【0179】
10:木材プレカット加工装置(木材加工装置)、41:木材加工機、44c,44d:刃物(組合せ刃物)、51:取付部、141:蟻部、142:腰掛部、143:オス材、151,161:第1カッタ(刃部)、152,162:第2カッタ(刃部)、153:回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10