IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 長谷川 栄子の特許一覧

特開2022-67021りんご繊維を含むグルテンフリーパン用ミックス粉及びパン生地、及びパン
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067021
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】りんご繊維を含むグルテンフリーパン用ミックス粉及びパン生地、及びパン
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/36 20060101AFI20220422BHJP
   A21D 10/00 20060101ALI20220422BHJP
   A21D 13/066 20170101ALI20220422BHJP
【FI】
A21D2/36
A21D10/00
A21D13/066
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020185425
(22)【出願日】2020-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】517441642
【氏名又は名称】長谷川 栄子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 栄子
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DG08
4B032DG20
4B032DK16
(57)【要約】
【課題】小麦を使用しないグルテンフリーパンでは、小麦の粘り成分のグルテンが含まれない為、生地に粘りが少ない。形を成形し、また気泡を保持した膨らみのあるパンを作る為に、代替の増粘剤が添加されている事が多い。
本課題は、食経験の長い身近な食材を増粘剤として用いる事により、喫食者が安心感を持って食すことができ、食感、食味に優れ、且つ健康機能性の高いグルテンフリーパンを提供する事である。
【解決手段】身近な食材であるりんごの繊維を加える事により、成形性及び食感・食味に優れ、かつ健康機能性が期待される、グルテンフリーミックス粉、パン生地、パンを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルテンフリー粉に、少なくともりんご繊維を加えたパン用ミックス粉。
【請求項2】
請求項1に記載のパン用ミックス粉を含むパン生地。
【請求項3】
請求項2に記載のパン生地を焼成してなるパン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦グルテンを加える事なく、その代替の増粘剤として身近な食材を利用する事で、小麦グルテン不耐症の方、小麦グルテンの摂取で不調を呈する方、主食として米を積極的に選択する方などが、安心して食感・食味の優れたパンを食す事を可能としたミックス粉、パン生地、パンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小麦を使用しないグルテンフリー食品を選択する人が増えてきた。本来小麦で作られる焼き菓子など様々な食品を、グルテンフリーで再現し、製造販売されている商品も多く見かけるようになってきた。
小麦で作られる代表的な食品であるパンに於いても、グルテンフリーで製造する技術が開発されてきている。
【0003】
特許文献1では、副材料の糖分、塩分、油分、酵母以外は、米粉のみで膨らみのある食パンを実現している。日本の主要穀物である米の割合が多い、食パンの製造技術である。
しかしこのパンは、緩いバッター状生地を型に流すことによって作られる。その為、小麦パンのような固まりのドウ状生地で作る、丸みのあるパン及び、大きさや形を好みで調節するパンは作る事ができない。
【0004】
小麦グルテンを含む、いわゆるドウ状生地は、例えるならば粘土状の様態であり、自由に大きさや形を整える成形性がある。また通常、パンが膨らむ作用はドウ状生地が、酵母により生じる気泡を保持する事で生まれる。
【0005】
グルテンフリー粉は、水を加えて撹拌するだけでは通常粘りが不足した生地となる。その為、成形性があり、気泡を保持して膨らむドウ状生地を調整する為に、グルテンの代替として様々な増粘剤が用いられている。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、サイリウムハスクなどの増粘剤である。特許文献2は、サイリウムハスクを用いた製造方法についてである。
【0006】
ここで言うグルテンフリー粉とは、穀物粉を主体とした小麦を含まない粉である。例えば米粉、ホワイトソルガム粉、テフ粉、あわ粉、きび粉、ひえ粉などの穀物粉、とうもろこし粉などの穀物に準じる粉、大豆粉、そら豆粉、ひよこ豆粉など豆の粉、コーンスターチ、タピオカ粉、片栗粉、葛粉などのでんぷん粉があげられる。
日本では米粉の使用が多い。単体でも、数種組み合わせも、予め配合したものを用いてよい。
【0007】
これらをグルテンフリーの粉に添加したミックス粉、パンは既に商品化されている。
しかし、従来使用されてきた増粘剤は日常に食されている食材ではなく、馴染みのない添加物の為、例えその安全性が確認されているものであっても、食経験の長い食材の使用を求める声も多くなってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-023043
【0009】
【特許文献2】特開2019-024347
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
食経験の長い、身近な食材を増粘剤として使用した、成形性があり食感食味のよいグルテンフリーパンのミックス粉、パン生地、パンを提供する事である。
【0011】
即ち、少なくともりんご繊維を用い、化学的な処理のなされた増粘剤や、食経験の乏しい原料を含まない、喫食者にとって安心感のあるグルテンフリーミックス粉、パン生地、パンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は鋭意検討した結果、グルテンフリー粉にりんご繊維を加える事で、製パン性に優れたドウ状生地を調整する事ができ、その生地で製造したパンはふんわりとした食感で食味の良いものになるという知見を得た。
【0013】
本発明に係わるパン用ミックス粉は、グルテンフリー粉に、少なくともりんご繊維を加えた事を特徴とする。
【0014】
本発明に係わるパン生地は、上記パン用ミックス粉を含む事を特徴とする。
【0015】
本発明に係わるパンは、上記パン生地を焼成する事を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、身近な食材であるりんごの繊維を使用して、自由な形でかつ食感食味のよいグルテンフリーパンを作る事ができる。それにより小麦アレルギーの方が安全で安心感のある美味しいパンを喫食する事ができる。また、日本の主要穀物である米を使用する事で、今後の米の消費拡大や生産安定に期待がもてる。
【0017】
昔より「りんご1個で医者いらず」という言い伝えがある。
りんごの繊維の成分であるペクチン、ポリフェノールには、血圧降下作用、整腸作用、血糖値上昇抑制、コレステロール代謝制御などの作用があるとされている。その為、りんご繊維入りのグルテンフリーパンは、健康増進機能が期待できる。
【0018】
本発明のグルテンフリーパンは、特定アレルギー7品目を含まずに製造することが可能である。即ち、小麦、卵、乳という通常パンに含まれる事が多い食品を含まない。更に粉の選択により大豆、そばも含まないパンを製造する事ができる。つまり小麦に限らずアレルギーの症状が重症化しやすい原材料を使用しないでパンを作る事ができる。その為、食品アレルギーの方が安心してパンを喫食する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施態様は、グルテンフリー粉に少なくともりんご繊維を予め加えて調整したグルテンフリーパン用ミックス粉である。本実施態様のグルテンフリーミックス粉より製造される加工食品としては、グルテンフリーパンが上げられる。この実施態様において、グルテンを使用しないパンが簡易に作る事ができる。
【0020】
本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様のグルテンフリーミックス粉を使用したパン生地である。本実施態様のパン生地は、第1の実施態様のグルテンフリーミックス粉に少なくとも水分、糖分、塩分、油分、酵母などを1つ以上添加し、混練したものである。
【0021】
本発明の第3の実施態様は、第2の実施態様からなるパン生地を成形、発酵させ、フライパンやオーブンなどで焼成することからなるグルテンフリーパンである。
【0022】
本発明の第4の実施態様は、グルテンフリー粉にりんご繊維を加え、更に少なくともベーキングパウダーを加え調整したグルテンフリーミックス粉である。
これにより、グルテンフリーのパンを、更に時間を短縮して簡便に作る事ができる。
【0023】
本発明の第5の実施態様は、第4の実施態様のグルテンフリーミックス粉を使用したパン生地である。本実施態様のパン生地は、第4の実施態様のグルテンフリーミックス粉に少なくとも水分、糖分、塩分、油分などを1つ以上添加し、撹拌したものである。
【0024】
本発明の第6の実施態様は、第5の実施態様からなるパンの生地を成形し、フライパンやオーブンなどで焼成することからなるグルテンフリーパンである。
【0025】
りんご繊維が、グルテンフリーパンの増粘剤として効果的に作用する仕組みは明確には解明されていない。成分であるペクチンの保水性、不溶性繊維によるパン生地の骨格成形が作用していると考えられる。
【0026】
ペクチンや不溶性繊維の含まれる身近な食材は他にもある。発明者の試作によれば、苦みや青臭みが有るため改善調整の工程が必要となる。大量生産では溶剤を用いるなどより複雑な或いは化学的な処理を要する。また食感が柔らかすぎる、固すぎるなど適切な効果を得る事は難しかった。りんご繊維は、その調整方法がシンプルであり、食味・食感も良く、グルテンフリーパンに用いる身近な食材からなる増粘剤としては適した素材と言える。
【産業上の利用可能性】
【0027】
食料自給率の観点より、米粉の利用が重要課題である。グルテンフリー粉の主な材料として米粉を使用する事ができるので、米粉利用拡大に貢献する事が期待できる。
【0028】
りんご繊維は、りんごジュースを搾汁した残渣より作る事ができる。リサイクルの仕組みが整う事で利用のメリットも高い事が期待される。