(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067057
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】リングフィルタを使用した多波長レーザ生成器
(51)【国際特許分類】
H01S 5/14 20060101AFI20220422BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
H01S5/14
G02B6/12 341
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021148581
(22)【出願日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】17/074,050
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593096712
【氏名又は名称】インテル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(74)【代理人】
【識別番号】100135105
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 直満
(72)【発明者】
【氏名】カラン メータ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ランジート クマール
(72)【発明者】
【氏名】グワン-リン スウ
(72)【発明者】
【氏名】ドワンニー ホワーン
(72)【発明者】
【氏名】ハイシュヨン ローン
【テーマコード(参考)】
2H147
5F173
【Fターム(参考)】
2H147AB16
2H147BC05
2H147BD03
2H147EA13
5F173MA10
5F173MB03
5F173MB10
5F173MC15
5F173MF02
5F173MF12
5F173MF25
5F173MF28
5F173MF40
(57)【要約】
【課題】リングフィルタを使用した多波長レーザ生成器を提供する。
【解決手段】本開示の実施形態は、多波長レーザ生成器を対象とし、等間隔の周波数ラインを有する周波数コムを有する光を生成してもよい。様々な実施形態では、レーザ生成器は、第一に、半導体利得素子を含み、利得を生成される光に提供するために使用される。第二に、リング共振子フィルタ又はリングフィルタが、波長コム間隔を選択するために使用される。第三に、狭帯域DBR又は狭帯域ミラーが、レーザ発振する波長の数を選択するために使用される。第四に、広帯域又は狭帯域ミラーが、光フィードバックを提供し、光キャビティを形成するために使用される。第五に、位相同調部が、モード損失を低減又は最小化するために、キャビティモードをリング共振(すなわち、リングフィルタモード)と整合させるために使用される。他の実施形態も記載され/特許請求の範囲に記載され得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出力するためのレーザ源と、
前記レーザ源に光学的に結合され、複数のモードで前記光の放射を実現するように配置された1つ以上のミラーと、
前記ミラーに光学的に結合された利得素子と、
前記利得素子に光学的に結合され、前記レーザ源の複数のモードの波長を同調させるための位相同調器と、
前記位相同調器に光学的に結合され、前記レーザ源の前記モードの間の間隔を選択するためのリングフィルタと
を含むレーザ装置。
【請求項2】
前記リングフィルタは、同調可能リングフィルタを含む、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記1つ以上のミラーのうち少なくとも1つは、レーザ波長範囲において制御可能な阻止帯域幅を有する分布ブラッグ反射器(DBR)又はミラーである、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記複数のモードは予め決定される、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記光の放射は周波数コムを含む、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記利得素子は、前記レーザ装置における唯一の利得素子である、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記リングフィルタの半径は、前記レーザ源の前記モードの間の周波数間隔を決定する、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記1つ以上のミラーは、第1及び第2のミラーを含み、
前記第1のミラーは分布ブラッグ反射器(DBR)であり、前記第2のミラーは広帯域ミラーである、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記リングフィルタに光学的に結合され、光キャビティ内への光子の逆反射を防止するための吸収器を更に含む、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記位相同調器及び前記リングフィルタは、第1の光路及び第2の光路を有する分割光路に光学的に結合される、請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記第1の光路又は前記第2の光路に光学的に結合され、光キャビティへの光子の逆反射を防止する吸収器を更に含む、請求項10に記載のレーザ装置。
【請求項12】
決定された周波数範囲にわたって周波数において等間隔の透過ピークの周波数コムを生成するための方法であって、
リングフィルタによって入力光をフィルタリングし、周波数において等間隔の透過ピークの透過スペクトルを有する出力光を生成するステップと、
光学的に結合された分布ブラッグ反射器(DBR)ミラーによって反射された前記リングフィルタからの前記出力光を、前記DBRミラーの反射スペクトルに制限するステップと
を含み、
前記周波数コムの前記決定された周波数範囲は、前記DBRミラーの反射スペクトルである、方法。
【請求項13】
周波数において等間隔の透過ピークの透過スペクトルを有する前記出力光は、周波数コム形状を形成する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記リングフィルタは同調可能リングフィルタである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記同調可能リングフィルタの直径は、前記透過ピークの間の距離を変化させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
他のミラーを前記リングフィルタに光学的に結合するステップを更に含み、前記他のミラーは、広帯域ミラー又は広帯域ループミラーである、請求項12乃至15のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
光学コネクタと、
前記光学コネクタに光学的に結合されたレーザ装置であり、複数のモードでレーザ源によって生成された光の光フィードバックを提供するミラーと、前記ミラーに光学的に結合され、利得を前記複数のモードの前記光に提供するための利得素子と、前記利得素子に光学的に結合され、複数のモードの前記光の波長を調整するための位相同調器と、前記位相同調器に光学的に結合され、前記光の波長の間の間隔を選択するためのリングフィルタとを含むレーザ装置と
を含むシステム。
【請求項18】
前記レーザ装置は、レーザキャビティを更に含み、前記レーザキャビティの複数のモードは、前記レーザキャビティの複数のファブリペローモードを更に含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記利得素子は、前記レーザ装置における唯一の利得素子である、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記リングフィルタの半径は、前記光の波長の間の周波数間隔を選択する、請求項17乃至19のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
決定された周波数範囲にわたって周波数において等間隔の透過ピークの周波数コムを生成するための装置であって、
リングフィルタによって入力光をフィルタリングし、周波数において等間隔の透過ピークの透過スペクトルを有する出力光を生成する手段と、
光学的に結合された分布ブラッグ反射器(DBR)ミラーによって反射された前記リングフィルタからの前記出力光を、前記DBRミラーの反射スペクトルに制限する手段と
を含み、
前記周波数コムの前記決定された周波数範囲は、前記DBRミラーの反射スペクトルである、装置。
【請求項22】
周波数において等間隔の透過ピークの透過スペクトルを有する前記出力光は、周波数コム形状を形成する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記リングフィルタは同調可能リングフィルタである、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記同調可能リングフィルタの直径は、前記透過ピークの間の距離を変化させる、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
他のミラーを前記リングフィルタに光学的に結合する手段を更に含み、前記他のミラーは、広帯域ミラー又は広帯域ループミラーである、請求項21乃至24のうちいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概してレーザの分野に関し、特に多波長レーザ生成器に関する。
【背景技術】
【0002】
計算プラットフォームは、シリコンベースのフォトニック素子をますます使用している。これらのフォトニック素子は、シングルモードファイバ又はマルチモードファイバに取り付けられたフォトニック集積回路(PIC, photonic integrated circuit)として実装されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0003】
実施形態は、添付の図面と共に以下の詳細な説明によって容易に理解される。この説明を容易にするために、同様の参照番号は、同様の構造的要素を示す。実施形態は、例示として示されており、添付の図面の図に限定されるものではない。
【
図1】様々な実施形態による8波長コムレーザ(comb laser)の例示的なスペクトルである。
【
図2】様々な実施形態によるリングベースのコムレーザ装置のブロック図である。
【
図3】様々な実施形態によるリングフィルタ透過スペクトル及び分布ブラッグ反射器(DBR, distributed Bragg reflector)反射スペクトルの重なりのプロットを示す。
【
図4】様々な実施形態によるリングフィルタ透過スペクトル及びレーザキャビティのファブリペロー(Fabry-Perot)キャビティモードの重なりのプロットを示す。
【
図5】様々な実施形態に従ってコム周波数レーザを生成するレーザアーキテクチャの第1の実施形態を示す。
【
図6】様々な実施形態に従ってコム周波数レーザを生成するレーザアーキテクチャの第2の実施形態を示す。
【
図7】様々な実施形態によるコム周波数レーザ生成器を作成するためのプロセスである。
【
図8】一実施形態による計算デバイス800を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本開示の実施形態は、レーザキャビティ内でリングフィルタ及び1つ以上のDBRミラーを使用する多波長レーザ生成器を対象とする。リングフィルタの半径は、生成される多波長レーザの周波数間隔を設定するために使用される。DBR阻止帯域幅は、レーザモードの数を決定する。いくつかの実施形態では、位相同調器も使用される。位相同調器は、キャビティモードがリングフィルタモードと実質的に整合することを確保することによって、モード損失を低減又は最小化するように配置される。
【0005】
実施形態では、多波長レーザ生成器は、等間隔の周波数ラインを有する周波数コム(comb)を有する光を生成してもよい。様々な実施形態では、レーザ生成器は、少なくとも5つの構成要素を含む。第一に、半導体利得素子が、利得を生成される光に提供するために使用される。第二に、リング共振子フィルタ又はリングフィルタが、波長コム間隔を選択するために使用される。第三に、狭帯域DBR又は狭帯域ミラーが、レーザ発振する波長の数を選択するために使用される。第四に、広帯域又は狭帯域ミラーが、光フィードバックを提供し、光キャビティを形成するために使用される。第五に、位相同調部が、モード損失を低減又は最小化するために、キャビティモードをリング共振(すなわち、リングフィルタモード)と整合させるために使用される。実施形態では、リングフィルタは、レーザ源と組み合わせて、周波数において等間隔のピークを有する光を透過する。周波数において等間隔のピークを有する光は、周波数コム形状とも呼ばれてもよい。
【0006】
本明細書に記載の実施形態は、周波数/波長において均一に離間した任意の数の出力波長を有するカスタム周波数又は波長コムスペクトルを生成するためのレーザ生成器の設計を対象とする。実施形態では、レーザ生成器の設計は、1つの利得素子のみを使用してもよい。実施形態は、シリコンフォトニクス技術を使用するリングフィルタ及び分布DBRを含むミラー設計を含んでもよい。本明細書に記載の実施形態は、レーザアレイを含む従来の技術と比較して、よりコンパクトなコムレーザ源を可能にする。本明細書に記載の実施形態は、100Gb以下及びそれ以上の単一又は複数の回路を有する波長分割多重化(WDM, wavelength-division multiplexing)に使用されてもよい。
【0007】
コムスペクトルを実現するための従来のアーキテクチャは、典型的には、シングルモード動作、複数リングフィルタ、又は複数のシングルモードレーザを実現することに焦点を当てている。本明細書に記載の実施形態は、リングフィルタ及び/又はDBR設計を変更することによって、単一レーザアーキテクチャが様々な波長間隔及び複数の波長を有する多波長レーザを作成するために使用されることを可能にする。
【0008】
実施形態では、波長選択は、リングフィルタを使用することによって、例えばIII-V材料を使用して、利得素子の構成から切り離される。リングフィルタは、波長がIII-V材料の変動及びダイオード電流から独立することを確保し、これは、利得素子における自己加熱を生じさせ、したがって、製造性及び波長ターゲティング要件を改善し得る。実施形態において、リングフィルタの半径は、リングフィルタが多波長コム生成又はシングルモード狭線幅動作のためにどのように使用されるかを示してもよい。リングの半径は、リングモードの自由スペクトル範囲(FSR, free spectral range)を設定するために使用される。
【0009】
以下の説明では、例示的な実装の様々な態様について、これらの研究の内容を当業者に伝えるために、当業者によって一般的に使用される用語を使用して説明する。しかし、本開示の実施形態は、記載の態様のいくつかのみで実施され得ることは、当業者にとって明らかである。説明の目的で、例示的な実装の完全な理解を提供するために、具体的な数、材料及び構成が記載されている。本開示の実施形態が具体的な詳細なしに実施され得ることは、当業者にとって明らかである。他の例では、例示的な実装を不明瞭にしないために、周知の特徴は省略又は簡略化される。
【0010】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面に参照が行われ、ここで、同様の数字は全体を通じて同様の部分を示しており、本開示の対象物が実施され得る例示的な実施形態によって示される。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、構造的又は論理的な変更が行われてもよいことが理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲及びこれらの均等物によって定義される。
【0011】
本開示の目的で、「A及び/又はB」という語句は、(A)、(B)又は(A及びB)を意味し、本開示の目的で、「A、B及び/又はC」という語句は、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)又は(A、B及びC)を意味する。
【0012】
説明は、上部/下部、内/外、上/下等のような観点に基づく説明を使用することがある。このような説明は、単に議論を容易にするために使用されているに過ぎず、本明細書に記載の実施形態の適用をいずれかの特定の方向に限定することを意図するものではない。
【0013】
説明は、「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句を使用することがあり、これは、同じ実施形態又は異なる実施形態のうち1つ以上をそれぞれ示してもよい。さらに、本開示の実施形態に関して使用される「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」having)」等の用語は同義語である。
【0014】
「結合された」という用語は、本明細書においてその派生語と共に使用されることがある。「結合された」は以下のことのうち1つ以上を意味してもよい。「結合された」は、2つ以上の要素が直接に物理的又は電気的に接触していることを意味してもよい。しかし、「結合された」はまた、2つ以上の要素が間接的に互いに接触するが、依然として互いに協働又は相互作用することを意味してもよく、1つ以上の他の要素が、互いに結合されたと言われる要素の間で結合又は接続されることを意味してもよい。「直接結合された」と言う用語は、2つ以上の要素が直接に接触していることを意味してもよい。
【0015】
図1は、様々な実施形態による例示的なレーザの8波長コムの例示的なスペクトルである。波長スペクトル100は、等間隔の8つの波長102、104、106、108、110、112、114、116を含む。これらの波長のそれぞれは、シンボルλによってチャネル(CH, channel)、周波数、ライン又はレーザ線として示されることがあり、光学的に伝送されるべきデータ又はデータの部分を符号化するために使用されてもよい。
【0016】
実施形態では、各波長、例えば波長106は、特定の波長範囲118内に入ってもよい。実施形態では、これは、Δλとして表されてもよく、これは、コム波長の許容可能な誤差である。波長108と波長110との間のような波長の間の距離は、±係数Yの波長範囲120内に入ってもよく、YはリングフィルタのFSRに対応する。他の実施形態では、波長スペクトル100内で、データ又はデータの一部が符号化されて伝送され得るN個の異なる波長が存在してもよい。異なる実施形態は、以下に説明する構成要素の特性によって決定され得る異なる波長間隔を使用してもよい点に留意する。実施形態では、等間隔の波長は、WDM又は他の用途のための光源として使用されてもよい。
【0017】
図2は、様々な実施形態によるリングベースのコムレーザ装置のブロック図である。
図200は、レーザキャビティの波長選択ミラーとして作用するミラー222、230を含む。実施形態では、ミラー222、230のうち少なくとも1つは、N個のモードのみをレーザ発振することを可能にするように設計されたDBRである。他のミラーは、広帯域ミラー、例えばループミラー又は他のDBRでもよい。注意:狭帯域DBRは、レーザ波長の数を選択する際に使用される。ミラー及びこれらの配置について、以下の
図5に関してより詳細に説明する。
【0018】
利得素子228は、レーザの活性部、例えば、光利得を提供するIII/V活性領域である。実施形態では、利得素子228は、量子ドット(Quantum Dot)、例えば、三次元における量子閉じ込め(quantum confinement)を含んでもよい。実施形態において、利得素子228は、量子ワイヤ(Quantum Wire)、例えば、2次元における量子閉じ込めを含んでもよい。実施形態において、利得素子228は、量子ワイヤ(Quantum Well)、例えば、一次元における量子閉じ込めを含んでもよい。実施形態では、利得素子228は、量子閉じ込めを有さないバルク材料を含んでもよい。利得素子について、以下の
図5に関して更に説明する。
【0019】
同調可能リングフィルタ224は、モードの間の間隔又はFSRを選択する。この間隔は以下の式で与えられる。
【0020】
【0021】
【数2】
ここで、cは光の速度であり、n
gはグループインデックスであり、Δv及びΔλはそれぞれ周波数及び波長空間におけるFSRであり、Rはリングフィルタの半径である。
【0022】
したがって、リングフィルタは、これらの共振波長のエネルギーのみが低損失で通過することを可能にする。絶対波長は、例えば、正確な波長ターゲティングを可能にするリングフィルタと一体化されたヒータを使用することによって調整できる。したがって、リングフィルタの半径は、コムの周波数間隔、例えば、
図1の波長距離120を選択し、一方、同調可能リングフィルタは、絶対波長ターゲティングを可能にする。
【0023】
位相同調部226は、キャビティのファブリペローモードの絶対波長に影響を与え、キャビティモードは、リングフィルタのFSRよりも小さいFSRを有する。これは、キャビティモードとリングモードとの間にずれが存在し得ることを意味し、これは損失を増加させる。位相同調部226は、キャビティモードの波長がリングのモードと整列させることによって、全てのレーザモードの全体的な損失を低減又は最小化するように同調することを可能にする。これは、
図4に関して以下により詳細に示される。
【0024】
図3は、様々な実施形態によるリングフィルタ透過スペクトル及びDBR反射スペクトルの重なりのプロットを示す。プロット300は、リング共振とも呼ばれてもよいリングフィルタ330の透過スペクトルを示しており、これは、格子(grating)スペクトルと呼ばれてもよいDBR反射スペクトル332と重ね合わされている。
【0025】
リングフィルタのスペクトルにおける透過ピーク330aは、例えば、周波数において全て等間隔、例えば、Δvである。実施形態では、これは、コムレーザスペクトルを生成するための基礎である。曲線330は、例えば、屈折率を変化させ、次いで共振波長Δvを変化させる温度変化を引き起こす一体化されたヒータを使用することによって、リングフィルタチューナによって周波数/波長において同調できる。
【0026】
図示のように、DBR332aの阻止帯域内のリングモードのみが、例えばフィードバックとして反射される。DBR332aの阻止帯域外の全てのリングモードは、高い損失を受け、したがって、これらのリングモードはレーザ発振しない。プロット300に示すように、約5つのリングモードが、DBR332aの阻止帯域内に適合する。この数は、DBR格子深さ、デューティサイクル、屈折率コントラスト、格子との光学モードのオーバーラップを変化させることによって、DBR結合係数を変化させることで容易に変化させることができ、これは格子の光閉じ込め係数と呼ばれてもよい。例えば、より高い結合係数は、DBR332aの阻止帯域の幅を増加させ、より多くのモードを組み込む。
【0027】
図4は、様々な実施形態によるリングフィルタ透過スペクトル及びレーザキャビティのファブリペローキャビティモードの重なりのプロットを示す。プロット400は、リングフィルタの透過スペクトル430及びレーザキャビティのファブリペローモード434の重なりを示す。
図3は、DBR及びリングスペクトルに関するものであり、モード間隔及びレーザモードの数に影響を与える点に留意すべきである。
図4は、リングフィルタ及びファブリペローキャビティモードに関するものであり、レーザモードの光学的損失を低減又は最小化することに関するものである。
【0028】
図5は、様々な実施形態に従ってコム周波数レーザを生成するレーザアーキテクチャの第1の実施形態を示す。第1の実施形態500は、利得部544と光学的に結合された第1のミラー542を含む。利得部544は、位相同調器546と光学的に結合され、位相同調器546は、吸収器548と光学的に結合される。位相同調器546と吸収器548との間に、リングフィルタ550が存在してもよい。位相同調器546は、利得部544のいずれの側にあってもよい点に留意する。実施形態では、リングフィルタ550は、同調可能リングフィルタでもよい。実施形態では、リングフィルタ550は、第2のミラー552と光学的に結合されてもよく、これにより、光キャビティが完成する。
【0029】
第1のミラー542又は第2のミラー552のうち一方は、モードの数を選択するために使用されるDBR又は狭帯域DBRである。他方のミラーは、広帯域ミラー、例えば、より広い阻止帯域を有するDBR又はループミラーでもよい。実施形態では、第1のミラー542及び第2のミラー552は、レーザキャビティのための波長選択ミラーとして作用し、少なくとも1つのミラー542、552は、N個のモードのみをレーザ発振することを可能にするDBRである。
【0030】
利得部544は、レーザの活性部であり、光利得を提供するためのIII/V活性領域を含んでもよい。位相同調器546は、キャビティ共振をリングフィルタ550モードと整列させることによって、キャビティモードがキャビティ共振に同調し、レーザモードの全体損失を低減することを可能にする。これの一例が、
図4に関して示される。吸収器548は、リングフィルタ550によって波長が拒絶される光キャビティ内への光子の逆スプリアス反射を防止する。位相同調器546は、利得部544のいずれの側にあってもよい。実施形態では、リングフィルタ550、利得部544及び位相同調器546は、2つのミラー542、552内に任意の順序で配置されてもよい。
【0031】
このコムレーザ設計は、リングフィルタ550の半径が周波数コム間隔を設定し、リングフィルタ550の調整が絶対波長を制御するように、高度にカスタマイズ可能である。DBR542及び/又は552の阻止帯域幅又は結合係数は、レーザモードの数を決定する。位相同調器546は、キャビティモードがリングフィルタモードと整合することを確保することによって損失を最小化する。リングフィルタ550の共振波長は、一体化されたリングヒータ(図示せず)によって、電荷注入によって、或いはデプリーション(depletion)によって調整されてもよい。
【0032】
図6は、様々な実施形態に従ってコム周波数レーザを生成するレーザアーキテクチャの第2の実施形態を示す。第2の実施形態600は、第1の実施形態500及び
図5と同様でもよい。しかし、第2の実施形態600では、1つのミラー642のみが存在し、ミラー642は、利得部544と同様でもよい利得部544に結合された
図5の第1のミラー542と同様でもよい。ミラー642は、レーザ発振し得る波長の数を選択するために使用されるDBR又は狭帯域DBRである。位相同調器646は、
図5の位相同調器546と同様でもよい。しかし、位相同調器646の後に、光結合は、2つの光路647、651に分かれる。実施形態では、リングフィルタ650は、広帯域ミラーとして機能する。光が入射する経路647は、リングフィルタ650を介して経路651をループバックし、その逆もリングフィルタ650を通じて経路651~647からフィードバックする。双方の経路647、651は、リングフィルタ650モードと波長が共振しない光子を吸収する吸収器648、649と結合される。
【0033】
図7は、様々な実施形態に従ってコム周波数レーザ生成器を作成するためのプロセスである。プロセス700は、本明細書に記載の構成要素及び技術を使用して、特に、
図1~6に関して実施されてもよい。
【0034】
ブロック702において、当該プロセスは、透過スペクトルを生成するためにリングフィルタを同定することを含む。実施形態では、リングフィルタは、
図5のリングフィルタ550と同様でもよい。実施形態では、リングフィルタは、レーザ発振される波長の数を制御するために調整可能な直径を有する同調可能リングフィルタでもよい。
【0035】
ブロック704において、当該プロセスは、反射スペクトルを生成するためにDBRミラーをリングフィルタに光学的に結合することを含んでもよく、反射スペクトルの一部は透過スペクトルの一部を含み、透過スペクトルの一部は多波長コムレーザである。実施形態では、DBRミラーは、
図5の第1のミラー542又は第2のミラー552と同様でもよい。リングフィルタは、
図5のリングフィルタ550を含んでもよい。透過スペクトルの一部を含む反射スペクトルの部分は、
図3の領域332aに示されるものでもよい。
【0036】
本開示の実施形態は、所望の通り構成するようにいずれか適切なハードウェア及び/又はソフトウェアを使用してシステムに実装されてもよい。
図8は、一実施形態による計算デバイス800を概略的に示す。図示のコンピュータシステム800(電子システム800とも呼ばれる)は、本開示に記載のいくつかの開示の実施形態及びこれらの均等物のいずれかに従って、多波長コム周波数レーザ生成器を具現化できる。特に、通信回路814、815のうち1つ以上は、多波長コム周波数レーザ生成器を具現化してもよい。コンピュータシステム800は、ネットブックコンピュータのようなモバイルデバイスでもよい。コンピュータシステム800は、無線スマートフォンのようなモバイルデバイスでもよい。コンピュータシステム800はデスクトップコンピュータでもよい。コンピュータシステム800は、ハンドヘルドリーダでもよい。コンピュータシステム800はサーバシステムでもよい。コンピュータシステム800は、スーパーコンピュータ又は高性能計算システムでもよい。
【0037】
一実施形態では、電子システム800は、電子システム800の様々な構成要素を電気的及び/又は光学的に結合するシステムバス820を含むコンピュータシステムである。システムバス820は、様々な実施形態による単一のバス又はバスのいずれかの組み合わせである。電子システム800は、電力を集積回路810に供給する電圧源830を含む。いくつかの実施形態では、電圧源830は、システムバス820を通じて電流を集積回路810に供給する。
【0038】
集積回路810は、システムバス820に電気的に結合され、一実施形態によるいずれかの回路又は回路の組み合わせを含む。一実施形態では、集積回路810は、いずれかの種類のプロセッサ812を含む。本明細書で使用される場合、プロセッサ812は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、グラフィックスプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ又は他のプロセッサのようないずれかの種類の回路を意味してもよいが、これらに限定されない。一実施形態では、プロセッサ812は、本明細書に開示のように、多波長コム周波数レーザ生成器を含むか或いはこれに結合される。一実施形態では、SRAMの実施形態が、プロセッサのメモリキャッシュ内に存在する。集積回路810に含まれることができる他の種類の回路は、カスタム回路又は特定用途向け集積回路(ASIC, application-specific integrated circuit)であり、例えば、携帯電話、スマートフォン、ページャ、ポータブルコンピュータ、双方向ラジオ及び同様の電子システムのような無線デバイスにおいて使用される通信回路814、又はサーバ用の通信回路である。一実施形態では、集積回路810は、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM, static random-access memory)のようなオンダイメモリ816を含む。一実施形態では、集積回路810は、埋め込み式ダイナミックランダムアクセスメモリ(eDRAM, embedded dynamic random-access memory)のような埋め込み式オンダイメモリ816を含む。
【0039】
一実施形態では、集積回路810は、後続の集積回路811によって補足される。有用な実施形態は、デュアルプロセッサ813と、デュアル通信回路815と、SRAMのようなデュアルオンダイメモリ817とを含む。一実施形態では、デュアル集積回路810は、eDRAMのような埋め込み式オンダイメモリ817を含む。
【0040】
一実施形態では、電子システム800はまた、外部メモリ840を含み、次いで、当該外部メモリは、RAMの形式のメインメモリ842、1つ以上のハードドライブ844、及び/又はディスケット、コンパクトディスク(CD compact disk)、デジタル可変ディスク(DVD, digital variable disk)、フラッシュメモリドライブ及び当該技術分野において既知の他の取り外し可能媒体のような取り外し可能媒体846を扱う1つ以上のドライブのような、特定の用途に適した1つ以上のメモリ素子を含んでもよい。一実施形態によれば、外部メモリ840はまた、ダイスタック内の第1ダイのような埋め込み式メモリ848でもよい。
【0041】
一実施形態では、電子システム800はまた、表示デバイス850、オーディオ出力860も含む。一実施形態では、電子システム800は、キーボード、マウス、トラックボール、ゲームコントローラ、マイクロホン、音声認識デバイス、又は情報を電子システム800に入力するいずれかの他の入力デバイスでもよいコントローラ870のような入力デバイスを含む。一実施形態では、入力デバイス870はカメラである。一実施形態では、入力デバイス870はデジタルサウンドレコーダである。一実施形態では、入力デバイス870は、カメラ及びデジタルサウンドレコーダである。
【0042】
本明細書に示すように、集積回路810は、いくつかの開示の実施形態及びこれらの均等物のうちいずれかによる、多波長コム周波数レーザ生成器を有するパッケージ、電子システム、コンピュータシステム、集積回路を製造する1つ以上の方法、及び様々な実施形態及び当技術分野において認識される均等物において本明細書に記載のいくつかの開示の実施形態のうちいずれかによる、多波長光カプラを有するパッケージを含む電子アセンブリを製造する1つ以上の方法を含む、多数の異なる実施形態において実装できる。素子、材料、幾何学形状、寸法及び動作シーケンスは全て、いくつかの開示の多波長コム周波数レーザ及びこれらの均等物のうちいずれかに従って、プロセッサ実装基板に埋め込まれたマイクロエレクトロニクスダイについてのアレイ接触数、アレイ接触構成を含む特定のI/O結合要件に適合するように変更できる。
図8の破線で表されるように、基礎の多層PCBが含まれてもよい。
図8にも示すように、受動デバイスも含まれてもよい。
【0043】
理想的には、各ブロック810、811及び840は、これらが互いに光学的に接続されるように、すなわち、これらが光信号の形式で互いにデータを送信することができるように、自身の光トランシーバを有するべきである。光信号は、1つのブロック(810、811及び840)内で、また、これらのブロックの間で通信するために使用されてもよい。バス820は、光及び電気バスを表すことができる。
【0044】
様々な実施形態は、上記の結合形式(及び)(例えば、「及び」は「及び/又は」でもよい)で記載された実施形態の代替(又は)実施形態を含む、上記の実施形態のいずれか適切な組み合わせを含んでもよい。さらに、いくつかの実施形態は、実行されると上記の実施形態のいずれかの動作を生じる命令を記憶した1つ以上の製造物(例えば、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体)を含んでもよい。さらに、いくつかの実施形態は、上記の実施形態の様々な動作を実行するためのいずれか適切な手段を有する装置又はシステムを含んでもよい。
【0045】
要約に記載されているものを含み、示された実装の上記の説明は網羅的であること、又は本開示の実施形態を開示の正確な形式に限定することを意図するものではない。具体的な実装及び例が例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者が認識するように、様々な等価な修正が本開示の範囲内で可能である。
【0046】
これらの修正は、上記の詳細な説明を鑑みて本開示の実施形態に対して行われてもよい。以下の特許請求の範囲で使用される用語は、本開示の様々な実施形態を、本明細書及び特許請求の範囲に開示の特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきでない。むしろ、当該範囲は、以下の特許請求の範囲によって完全に決定されるべきであり、これは、特許請求の範囲の解釈の確立された原則に従って解釈されるべきである。
【0047】
いくつかの非限定的な例が以下に提供される。
【0048】
[例]
例1は、光を出力するためのレーザ源と、前記レーザ源に光学的に結合され、複数のモードで前記光の放射を実現するように配置された1つ以上のミラーと、前記ミラーに光学的に結合された利得素子と、前記利得素子に光学的に結合され、前記レーザ源の複数のモードの波長を同調させるための位相同調器と、前記位相同調器に光学的に結合され、前記レーザの前記モードの間の間隔を選択するためのリングフィルタとを含むレーザ装置である。
【0049】
例2は、例1の装置を含み、前記リングフィルタは、同調可能リングフィルタを含む。
【0050】
例3は、例1の装置を含んでもよく、前記1つ以上のミラーのうち少なくとも1つは、レーザ波長範囲において制御可能な阻止帯域幅を有する分布ブラッグ反射器(DBR)又はミラーである。
【0051】
例4は、例1の装置を含んでもよく、前記複数のモードは予め決定される。
【0052】
例5は、例1の装置を含んでもよく、前記光の放射は周波数コムを含む。
【0053】
例6は、例1の装置を含んでもよく、前記利得素子は、前記レーザ装置における唯一の利得素子である。
【0054】
例7は、例1の装置を含んでもよく、前記リングフィルタの半径は、前記レーザの前記モードの間の周波数間隔を決定する。
【0055】
例8は、例1の装置を含んでもよく、前記1つ以上のミラーは、第1及び第2のミラーを含み、前記第1のミラーは分布ブラッグ反射器(DBR)であり、前記第2のミラーは広帯域ミラーである。
【0056】
例9は、例1の装置を含んでもよく、前記リングフィルタに光学的に結合され、光キャビティ内への光子の逆反射を防止するための吸収器を更に含む。
【0057】
例10は、例1の装置を含んでもよく、前記位相同調器及び前記リングフィルタは、第1の光路及び第2の光路を有する分割光路に光学的に結合される。
【0058】
例11は、例1~10のうちいずれか1つの装置を含んでもよく、前記第1の光路又は前記第2の光路に光学的に結合され、光キャビティへの光子の逆反射を防止する吸収器を更に含む。
【0059】
例12は、決定された周波数範囲にわたって周波数において等間隔の透過ピークの周波数コムを生成するための方法でもよく、リングフィルタによって入力光をフィルタリングし、周波数において等間隔の透過ピークの透過スペクトルを有する出力光を生成するステップと、光学的に結合された分布ブラッグ反射器(DBR)ミラーによって反射された前記リングフィルタからの前記出力光を、前記DBRミラーの反射スペクトルに制限するステップとを含み、前記周波数コムの前記決定された周波数範囲は、前記DBRミラーの反射スペクトルである。
【0060】
例13は、例12の方法を含んでもよく、周波数において等間隔の透過ピークの透過スペクトルを有する前記出力光は、周波数コム形状を形成する。
【0061】
例14は、例12の方法を含んでもよく、前記リングフィルタは同調可能リングフィルタである。
【0062】
例15は、例14の方法を含んでもよく、前記同調可能リングフィルタの直径は、前記透過ピークの間の距離を変化させる。
【0063】
例16は、例12~15のうちいずれか1つの方法を含んでもよく、他のミラーを前記リングフィルタに光学的に結合するステップを更に含み、前記他のミラーは、広帯域ミラー又は広帯域ループミラーである。
【0064】
例17は、光学コネクタと、前記光学コネクタに光学的に結合されたレーザ装置であり、複数のモードでレーザ源によって生成された光の光フィードバックを提供するミラーと、前記ミラーに光学的に結合され、利得を前記複数のモードの前記光に提供するための利得素子と、前記利得素子に光学的に結合され、複数のモードの前記光の波長を調整するための位相同調器と、前記位相同調器に光学的に結合され、前記光の波長の間の間隔を選択するためのリングフィルタとを含むレーザ装置とを含むシステムである。
【0065】
例18は、例17のシステムを含んでもよく、前記レーザ装置は、レーザキャビティを更に含み、前記レーザキャビティの複数のモードは、前記レーザキャビティの複数のファブリペローモードを更に含む。
【0066】
例19は、例17のシステムを含んでもよく、前記利得素子は、前記レーザ装置における唯一の利得素子である。
【0067】
例20は、例17~19のうちいずれか1つのシステムを含んでもよく、前記リングフィルタの半径は、前記光の波長の間の周波数間隔を選択する。
【外国語明細書】