(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067077
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】調整可能共振周波数を有する電気機械デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20220422BHJP
H03H 9/145 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
H03H9/25 Z
H03H9/145 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021168587
(22)【出願日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】2010704
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・レ
(72)【発明者】
【氏名】アクセル・ソバージュ
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA13
5J097BB02
5J097BB11
5J097CC01
5J097DD01
5J097DD14
5J097DD19
5J097DD21
5J097GG04
5J097HA02
5J097KK03
5J097LL01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】調整可能共振周波数を有する電気機械デバイスを提供する。
【解決手段】表面又は互いに平行な2つの表面によって画定された圧電支持体と、この支持体上の前記表面に対して平行に伝播する弾性波のための共振器(80)とを含む電気機械デバイス(8)であって、共振器は、共振器を画定し、前記波を反射する2つの反射器(R1、R2)と、電気信号から前記波を生成するためのいくつかインターフェーシングトランスデューサ(T
I)と、前記共振周波数を制御するためのいくつかのトランスデューサ(T
T)とを含み、各トランスデューサが、互いにかみ合った第1の電極(10、30)と第2の電極(20、40)とを含み、トランスデューサは共振器内で前記波がたどる伝播パス(C)に沿って、インターフェーシングトランスデューサ(T
I)とチューニングトランスデューサ(T
T)とが交互に前記パスに沿って配置されている、電気機械デバイス。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整可能共振周波数を有する電気機械デバイス(5;8;9;12;14;16)であって、
表面(S)によって、または互いに平行な2つの表面(S1、S2)によって画定された圧電支持体(100;200)と、
この支持体上に作られた、前記表面(S;S1、S2)に対して平行に伝播する弾性波のための共振器(50;80;90;120;140)であって、少なくとも、
共振器を画定し、前記波を反射する2つの反射器(R1、R2)と、
2つの反射器の間の、電気信号から前記波を生成するように構成されたいくつかのインターフェーシングトランスデューサ(TI)と、
前記共振周波数を制御するためのいくつかのチューニングトランスデューサ(TT)とを含み、
前記トランスデューサ(TI、TT)のそれぞれが、各々が圧電支持体(100、200)の前記表面(S)上または前記表面(S1、S2)のうちの1つの上に作られた互いにかみ合った第1の電極(10、30)と第2の電極(20、40)とを含む、共振器(50;80;90;120;140)と、
前記共振周波数を制御するための電気デバイス(79)であって、第1の端子(77)と第2の端子(78)とを含み、これらの2つの端子の間に調整可能電気インピーダンス(Z)を有する、電気デバイス(79)と
を含み、
各チューニングトランスデューサ(TT)ごとに、トランスデューサの第1の電極(30)および第2の電極(40)がそれぞれ、前記電気制御デバイス(79)の第1の端子および第2の端子(77、78)に接続されていることと、
異なるインターフェーシングトランスデューサ(TI)の第1の電極(10)が互いに電気的に接続され、インターフェーシングトランスデューサ(TI)の第2の電極(20)も互いに電気的に接続されていることと、
インターフェーシングトランスデューサ(TI)とチューニングトランスデューサ(TT)とが、共振器内で前記波がたどる伝播パス(C)に沿って、インターフェーシングトランスデューサ(TI)とチューニングトランスデューサ(TT)とが交互に位置付けられ、各チューニングトランスデューサ(TT)が2つの連続するインターフェーシングトランスデューサ(TI)の間、または反射器(R1、R2)の一方と隣接インターフェーシングトランスデューサ(TI)との間に挿入されていることとを特徴とする、デバイス(5;8;9;12;14;16)。
【請求項2】
インターフェーシングトランスデューサ(TI)の少なくともいくつかについて、
これらのインターフェーシングトランスデューサ(TI)の第1の電極(10)が、1つ以上の第1の電気トラック(12’)によって互いに接続され、
これらのインターフェーシングトランスデューサ(TI)の第2の電極(20)が、1つ以上の第2の電気トラック(22)によって互いに接続され、
前記チューニングトランスデューサ(TT)の少なくともいくつかについて、
これらのチューニングトランスデューサ(TT)の第1の電極(30)が、1つ以上の第3の電気トラック(32)によって互いに接続され、
これらのチューニングトランスデューサ(TT)の第2の電極(40)が、1つ以上の第4の電気トラック(42)によって互いに接続され、
前記電気トラック(12’、22、32、42)のそれぞれが圧電支持体(100;200)の表面(S)上または2つの表面(S1、S2)のうちの1つの上に作られる、請求項1に記載のデバイス(8;9;12;14;16)。
【請求項3】
圧電支持体の同一表面(S;S1、S2)上に作られたトラックは互いに重なり合わない、請求項2に記載のデバイス(8;9;12;14;16)。
【請求項4】
前記互いにかみ合った電極(10、20、30、40)の各1つは、1本以上のフィンガ(11、21、31、41)と、そこから前記フィンガが延び、電極の主本体を形成する長手方向導電ストリップとを含み、
インターフェーシングトランスデューサ(TI)について、
前記第2の電極(20)のそれぞれが、その第2の電極が関連付けられている第1の電極(10)よりも少なくとも1本多いフィンガ(21)を含み、この第2の電極(20)の2本の周辺フィンガ(21)が第1の電極(10)のフィンガ(11)の完全なセットを囲み、これら2本の周辺フィンガ(21)がそれぞれ、第2の電極(20)の主本体の反対側の、前記伝播パス(C)の第1の側(71)に位置する端部を有し、
前記第2のトラック(22)の各1つが、前記第2の電極(20)のうちの1つの周辺フィンガ(21)のうちの1つの端部を、次の第2の電極(20)の周辺フィンガ(21)のうちの1つの端部に接続し、前記第2の電極(20)の主本体とそれら第2の電極(20)の周辺フィンガ(21)とが、第2のトラック(22)とともに、チューニングトランスデューサ(TT)を迂回することによって伝播パス(C)に沿って前記パスの両側を蛇行する大域的トラックを形成する、請求項2または3に記載のデバイス(8;9;12)。
【請求項5】
各インターフェーシングトランスデューサ(TI)ごとに、トランスデューサの第2の電極(20)の主本体が、この第2の電極(20)の周辺フィンガ(21)のうちの1つによってだけでなく、伝播パス(C)に対して横方向に延び、伝播パス(C)を横断し、当該インターフェーシングトランスデューサ(TI)とそれに隣接するチューニングトランスデューサ(TT)との間に位置する1つ以上の追加フィンガ(26)によっても、前記第2のトラック(22)のうちの1つに、接続されている、請求項4に記載のデバイス(9)。
【請求項6】
前記第2のトラック(22)のそれぞれが、チューニングトランスデューサ(TT)のうちの1つの第2の電極(40)とともに、伝播パス(C)の第1の側(71)に位置する同じ長手方向導電ストリップを形成し、
前記第4のトラック(42)のそれぞれが、インターフェーシングトランスデューサ(TI)のうちの1つの第2の電極(20)とともに、伝播パス(C)の第2の側(71)に位置する同じ長手方向導電ストリップを形成し、
インターフェーシングトランスデューサ(TI)の第2の電極(20)は、少なくともそれら第2の電極の周辺フィンガ(21、41)を介して、チューニングトランスデューサ(TT)の第2の電極(40)と電気的に接触し、第2の電極(20、40)の主本体とそれら第2の電極の周辺フィンガ(21、41)とがともに、チューニングトランスデューサ(TT)とインターフェーシングトランスデューサ(TI)の第1の電極(10、30)を迂回することによって伝播パス(C)に沿って前記パスの両側を蛇行する同じ主トラック(60)を形成する、請求項4または5に記載のデバイス(9;12)。
【請求項7】
第1および第2の電気トラック(12、22)は、弾性波の伝播パス(C)の第1の側(71)に位置し、一方、
第3および第4の電気トラック(32、42)は、弾性波の伝播パス(C)の反対側の、第2の側(72)に位置する、請求項4から6のいずれか一項に記載のデバイス(8;9;12)。
【請求項8】
前記第1の電極(10)のそれぞれの主本体は伝播パス(C)の第1の側(71)に位置し、前記第2の電極(20)のそれぞれの主本体は導波路(C)の第2の側(72)に位置し、
前記第1のトラック(12)のそれぞれは、第1の電極(10)のうちの1つの主本体を次の第1の電極(10)の主本体に接続する、請求項4から7のいずれか一項に記載のデバイス(8;9;12)。
【請求項9】
前記支持体(200)は、互いに平行な前記2つの表面(S1、S2)によって画定された薄板を形成する、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス(12;14;16)。
【請求項10】
インターフェーシングトランスデューサ(TI)とチューニングトランスデューサ(TT)とは、前記支持体(100、200)の同一表面(S;S1)上に作られている、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス(5;8;9;12)。
【請求項11】
インターフェーシングトランスデューサ(TI)は板(200)の表面のうちの1つの表面(S1)上に作られ、一方、チューニングトランスデューサ(TT)は板(200)の他方の表面(S2)上に作られる、請求項9に記載のデバイス(16)。
【請求項12】
インターフェーシングトランスデューサ(TI)の第2の電極は、チューニングトランスデューサ(TT)の第2の電極(40)と電気的に接触し、
インターフェーシングトランスデューサの第1の電極、
または、チューニングトランスデューサの第1の電極、
または、インターフェーシングトランスデューサ(TI)とチューニングトランスデューサ(TT)の第2の電極(20、40))、
が前記板(200)の表面のうちの1つの表面(S2)上に作られ、
インターフェーシングトランスデューサ(TI)およびチューニングトランスデューサ(TT)の他方の電極(10、30)は前記板(200)の他方の表面(S1)上に作られる、請求項9に記載のデバイス(14)。
【請求項13】
第1および第2の電極(10、20、30、40)はそれぞれ、前記伝播パス(C)に対して横方向に延びる1本以上のフィンガ(11、21、31、41)を含み、第1および第2の電極の少なくともいくつかについて、電極のフィンガの総数は10以下である、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス(5;8;9;12;14;16)。
【請求項14】
第1および第2の電極(10、20、30、40)はそれぞれ、前記伝播パス(C)に対して横方向に延びる1本以上のフィンガ(11、21、31、41)を含み、第1および第2の電極の少なくともいくつかについて、電極のフィンガの総数は1本と3本の間に含まれる、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス(12;14;16)。
【請求項15】
チューニングトランスデューサ(TT)とインターフェーシングトランスデューサ(TI)の異なる電極(10、20、30、40)をまとめてグループ化するアセンブリが、総数40本以上の電極フィンガ(11、21、31、41)を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のデバイス(5;8;9;12;14;16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、電気共振器機能を実行する目的で弾性波の伝播を利用する電気機械デバイスの技術分野であり、これらの共振器は、フィルタ、周波数基準などのより複雑な機能を実装するのに適する。これらのデバイスは、典型的には数百kHzから数GHzまでの範囲にわたることが可能な共振周波数を有する。
【背景技術】
【0002】
この分野では、弾性表面波(「SAW」、Surface Acoustic Waveの略)共振器に基づくデバイスが知られている。このようなデバイスは一般に、比較的厚い固体圧電基板を含む。問題とする弾性波はレーリー波型、表面横波(「STW」)型、または表面スキミングバルク波(「SSBW」)型であり、基板の表面をその表面に平行に伝播する。
【0003】
この場合、弾性表面波共振器を形成するために、これらの表面波を反射し、互いに対向して位置する2つの反射器が基板の表面上に作られる。これらの反射器は、基板の表面上に金属電極を堆積させることによって得られ、これらの電極はそれぞれが、一種のブラッグミラーを形成するために周期的に配置されたいくつかの金属ストリップを含む。
【0004】
この共振器と電気的に相互作用することができるようにするために、互いに入り組んだ櫛の形態の2つの電極を含むトランスデューサが一般に基板の表面に、2つの反射器の間に作製される。これら2つの電極は、それぞれ2つの接続端子に接続される。それで、これら2つの端子間で共振器内の弾性波共振と関連付けられる電気共振が得られる。この電気共振は、例えばフィルタまたは発振器を実装するための基礎として使用することができる。
【0005】
弾性波の伝播のための支持体が、厚い基板ではなく薄い圧電板である弾性波共振器が知られている。したがってそのような板は、ラム波などのいわゆる「板」波の伝播の支持体として使用することができる。また、これらの弾性波は、板の表面に平行に伝播する。したがって板波共振器は、例えば、上述の反射器のような2つの反射器を得るように、この板の表面のうちの1つの上に金属電極を堆積させることによって作ることができる。
【0006】
表面弾性波共振器または板波共振器は、典型的には、多くの電波通信用途(携帯電話通信、WiFi、Bluetoothなど)に好適な数十メガヘルツと数ギガヘルツの間に含まれる共振周波数を有する。さらに、これらの共振器は一般に、高いQ値を有し、小サイズ電子チップに集積することができる。
【0007】
いくつかの種類の用途、特に無線通信の分野では、このような共振器の共振周波数を随意に調整することができることが関心を引いている。
【0008】
実際、無線通信のめざましい発展により、電波スペクトルの飽和および妨害作用が増大する傾向にあり、そのために一層、しかじかの種類のプロトコルに割り振られる周波数帯が一般に固定している。使用される通信周波数を変更することができる、よりアジャイルな無線通信管理は、この問題を部分的に解消することを可能にするであろう。また、最新世代の携帯電話端末は、現在、約40の異なる周波数帯で動作することができ、すべての事例に提供するためには、これは極めて複雑なデータ処理回路を必要とする。その動作周波数を電子的に制御可能なコンポーネントを有することは、これらのアーキテクチャを確実に簡素化することができるであろう。
【0009】
共振周波数を調整可能な上述のような弾性表面波共振器が、以下の論文:P.S.Cross et al.,“Electronically variable surface-acoustic-wave velocity and tunable SAW resonators”,Appl.Phys.Lett.28.1(1976)に説明されている。
【0010】
この共振器は、上述の2つの反射器と、これら2つの反射器の間の、共振器と電気的にインターフェースするための入力トランスデューサと出力トランスデューサとを含む(このデバイスは、伝送時に電気信号のための入力ポートと出力ポートとともに動作する)。この共振器は、さらにまた、2つの反射器の間に位置し、2つの互いに入り組んだ櫛(すなわち:互いにかみ合った櫛)を形成する2つの金属電極を含む周波数チューニングトランスデューサを含む。これらの2つの電極の間に可変キャパシタが接続される。この場合、このデバイスの共振周波数(ここでは最大伝送に対応する電気共振周波数)を、このキャパシタのキャパシタンスを変化させることによって調整することができる。
【0011】
これらの2つの電極の間に接続された電気キャパシタンスに応じてのこのデバイスの共振周波数の変化は、圧電材料の表面を伝播する弾性表面波が電気成分を有することに注目することによって説明することができる。この材料の表面における電界に特定の状態を与えると、したがって、これらの弾性波の伝播に影響を及ぼし、この効果は一般に音響電気効果と呼ばれる。
【0012】
したがって、例えばこの材料の表面を全体的にメタライズすると、この表面が電気的に自由な(すなわち電界について制約がない)ままにされているときよりも遅い伝播速度が得られる。それで、インピーダンスが調整可能な上述のキャパシタは、チューニングトランスデューサが占めるゾーンにおいて弾性波の有効速度を、短絡状態の速度と開回路状態の速度との間で調整することを可能にし、それが共振器の共振周波数を変更することを可能にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】P.S.Cross et al.,“Electronically variable surface-acoustic-wave velocity and tunable SAW resonators”,Appl.Phys.Lett.28.1(1976)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、この論文に説明されているデバイスでは、共振周波数を調整可能な範囲は依然として限定されている(この範囲は共振周波数の約0.1%の幅を有する)。
【0015】
より拡張された調整範囲を得るために、1つの可能性は、周波数チューニングトランスデューサの互いにかみ合った電極のフィンガの数(言い換えると歯の数)を、(歯間の周期を同じにしたまま)増加させることである。共振器では、これはチューニングトランスデューサが占めるゾーンの長さ、したがって伝播速度が変更される長さを増加させる。
図2に示すデジタルシミュレーション(以下で詳述する)の結果が、周波数チューニングトランスデューサT
Tの互いにかみ合った電極のフィンガの数N2が増加すると、同調性の範囲の幅が効果的に増加することを確証している。
【0016】
このフィンガの数N2(および、また場合によっては共振器と電気的にインターフェースするために使用されるインターフェーシングトランスデューサTIのフィンガの数N1)が増加することは、すべてのトランスデューサについて50オームに極めて近いインピーダンスをさらに得ることを可能にする。
【0017】
しかし、発明人らは、フィンガの数N2の増加は、望ましくない効果につながることを観察した。具体的には、N2が増加すると、固定周波数寄生共振(
図2で参照符号Rpで指し示されている)が次第に目立ってくる。この効果は、N2が増加するときの、インターフェーシングトランスデューサT
IとチューニングトランスデューサT
Tとの間の界面における音波の反射率の増加によって説明することができる。この界面におけるこのより強力な反射は、そして、反射器R1と界面T
I/T
Tの間の共振器の一部のみにある共振モード(したがってインターフェーシングトランスデューサT
I上に主としてあるモード)に有利に働く傾向がある。この寄生効果は特に不都合である場合がある。例えば、N1=11およびN2=31の場合に対応する曲線では、
図2で、この寄生共振Rpは(少なくとも小さいキャパシタンス値の場合)「主」調整可能周波数共振と同程度に大きい振幅を有することがわかる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このようなコンテキストで、通常とは異なり、互いにかみ合った電極を備えたいくつかのインターフェーシングトランスデューサと、やはり互いにかみ合った電極を備えたいくつかの周波数チューニングトランスデューサとを含む弾性波共振器を含む電気機械デバイスであって、これらの異なるトランスデューサが、インターフェーシングトランスデューサとチューニングトランスデューサとを弾性波の伝播パスに沿って互い違いにすることによってこのパスに沿って位置付けられている、電気機械デバイスが提案される。
【0019】
したがって、多数のフィンガを含む単一のインターフェーシングトランスデューサと、それの後に(外部の調整可能インピーダンスに接続された)やはり順次配置された多数のフィンガを含む単一の周波数チューニングトランスデューサとを使用するのではなく、各トランスデューサが限られた数のフィンガを含み、弾性波の伝播経路に沿って互いに交互になった多数のインターフェーシングトランスデューサと複数のチューニングトランスデューサとがここで使用される。
【0020】
これは、(共振周波数の広い調整範囲を得るために)共振器の全長にわたって伝播速度を制御する電極を分散させることを可能にし、これは、共振器の一部のみにあるはずの寄生共振モードの出現を限定した状態で、(例えば50オームに近いインピーダンスを得るために)相当な総数のフィンガを使用することも可能にする。
【0021】
言い換えると、共振器全体に分散された大域的共振モードが、こうして有利に働く。
【0022】
この特定の配置によって可能とされたこの改善を、例示の実施形態について
図3に示す。この図は、
図1および
図2のデバイスと類似しているが、弾性波の伝播パスに沿って互いに交互になった3つのインターフェーシングトランスデューサと3つの周波数チューニングトランスデューサとを含むデバイスについて得られた電気共振曲線を示している。この図でわかるように、交互になったトランスデューサを備えたこの構成は、調整可能周波数を有し、振幅が上述の寄生共振の振幅よりも明確に大きい主共振を得ることを可能にする。
【0023】
本技術は、より正確には調整可能共振周波数を有する電気機械デバイスであって:
- 表面によって、または互いに平行な2つの表面によって画定された圧電支持体と、
- この支持体上の、前記表面に対して平行に伝播する弾性波のための共振器であって、少なくとも:
- 共振器を画定し、前記波を反射する2つの反射器と、
- 2つの反射器の間の、電気信号から前記波を生成するように構成されたいくつかのインターフェーシングトランスデューサと、
- 前記共振周波数を制御するためのいくつかのトランスデューサとを含み、
- 前記トランスデューサのそれぞれが、各々が圧電支持体の前記表面上または前記表面のうちの1つの上に延びる互いにかみ合った第1の電極と第2の電極とを含む、共振器と、
- 前記共振周波数を制御するための電気デバイスであって、第1の端子と第2の端子とを含み、これら2つの端子の間に調整可能電気インピーダンスを有する電気デバイスとを含み、
- チューニングトランスデューサごとに、トランスデューサの第1の電極と第2の電極とがそれぞれ前記電気制御デバイスの第1の端子と第2の端子に接続され、
- 異なるインターフェーシングトランスデューサの第1の電極が互いに電気的に接続され、インターフェーシングトランスデューサの第2の電極も互いに電気的に接続され、
- インターフェーシングトランスデューサとチューニングトランスデューサとは、共振器内で前記波がたどる伝播パスに沿って、インターフェーシングトランスデューサとチューニングトランスデューサとが交互に位置付けられ、各チューニングトランスデューサが2つの連続したインターフェーシングトランスデューサの間、または反射器のうちの1つと隣接インターフェーシングトランスデューサとの間に挿入されている、デバイスに関する。
【0024】
問題とする波は、支持体の表面を伝播する(例えばレーリー波型の)表面波とすることができ、それでこの支持体は比較的厚い。この場合、トランスデューサの異なる電極と、反射器とは、例えば支持体の開放表面(free surface)に対応する同一表面上に作製される。
【0025】
圧電支持体は、一方が上面で他方が下面であって互いに平行な(実際には、最も近い10度より良好に平行な)上記の2つの表面によって画定された薄い圧電板の形態とすることも可能である。この場合、弾性波の伝播によって生じる変形は、板の厚さ全体にわたって、またはその厚さの少なくとも大部分で分散される。例えばラム波型のこれらの弾性波は、それで、板波と呼ばれる。
【0026】
圧電支持体が薄板の形態であるとき、トランスデューサのいくつかの電極が板の2つの表面のうちの1つの上に置かれ得、他の電極はこの板の他方の表面上に位置する。また、この種の支持体は一般に、表面波の伝播が意図された固体の(厚い)支持体よりも強い電気機械結合を得ることを可能にする。上記の薄板は、弾性波が誘導された状態を保つ、懸垂膜(suspended membrane)の形態、またはいくつかの層のスタック、圧電層の形態とすることができる。
【0027】
いずれの場合も(表面波の場合または板波の場合)、支持体は同じ圧電材料、例えば単結晶または実質的に単結晶の材料(石英、ニオブ酸リチウム、またはタンタル酸リチウム)から形成された単一体からなり得る。しかし、この支持体は層のスタックの形態であることもでき、これらの層のうちの1つ以上の層(ただし必ずしもその全部ではない)が圧電体である。
【0028】
伝播パスは、共振器内で弾性波がたどる平均線である。共振器が互いに対向して位置する厳密に2つの反射器を含むとき、この伝播パスは反射器のうちの1つから他方の反射器まで延びるセグメントである。
【0029】
実際には、共振器の共振周波数を調整するために、上記のように、調整可能電気インピーダンス、例えば調整可能キャパシタンスを有するキャパシタが、周波数チューニングトランスデューサの第1の電極と第2の電極の間に接続される。デバイスの共振周波数が高いため、使用されるキャパシタンス値は一般に小さく、ピコファラッド程度である。このコンテキストで、第1の電極相互の接続と、第2の電極相互の接続は、追加の寄生インピーダンス、特に寄生キャパシタンスを導入するのを防ぐために、特に細心である必要がある。具体的には、このコンテキストでは、電極に溶着されたワイヤによる電極間の接続(「ワイヤボンディング」型の接続)は一般に最適ではない。
【0030】
また、このような寄生インピーダンスの出現を制限するために:
- インターフェーシングトランスデューサのうちの少なくともいくつかについて、さらにインターフェーシングトランスデューサの全部についてであっても:
- これらのインターフェーシングトランスデューサの第1の電極が1つ以上の第1の電気トラックによって互いに接続され、
- これらのインターフェーシングトランスデューサの第2の電極が1つ以上の第2の電気トラックによって互いに接続され、
- 前記チューニングトランスデューサのうちの少なくともいくつかについて、さらにインターフェーシングトランスデューサの全部についてであっても、
- これらのチューニングトランスデューサの第1の電極が1つ以上の第3の電極トラックによって互いに接続され、
- これらのチューニングトランスデューサの第2の電極が1つ以上の第4の電気トラックによって互いに接続され、
- 前記電気トラックのそれぞれが、圧電支持体の表面上、または2つの表面のうちの1つの上に作られることが提供され得る。
【0031】
圧電支持体の同一表面上に作られるトラックは互いに重なり合わないことが、さらに提供され得る。
【0032】
この場合、支持体の同一表面上にあるトラックは、互いに重ね合わされず、互いの上を通らないという意味で、重なり合わない。言い換えると、この表面上の突起において交差しない(すなわち、この表面上の突起において交わらない)。トラック間の重なりを防ぐことを可能にする異なる特徴を以下に提示する。
【0033】
上記に提示した特徴に加えて、上述の電気機械デバイスは、以下の特徴のうちの1つ以上の追加の特徴を、個別にまたは任意の技術的に可能な組み合わせで有することができる:
- 前記互いにかみ合った電極のそれぞれが1本以上のフィンガと、前記フィンガがそこから延び、電極の主本体を形成する長手方向の導電ストリップとを含み;
- インターフェーシングトランスデューサについて:
- 前記第2の電極のそれぞれが、その第2の電極が関連付けられている前記第1の電極よりも少なくとも1本多いフィンガを含み、この第2の電極の2本の周辺フィンガが第1の電極のフィンガの完全なセットを囲み、これらの2本の周辺フィンガがそれぞれ第2の電極の主本体とは反対側の前記伝播パスの第1の側に位置する端部を有し、
- 前記第2のトラックのそれぞれが、前記第2の電極のうちの1つの周辺フィンガのうちの1つの端部を次の第2の電極の周辺フィンガのうちの1つの端部に接続し、前記第2の電極の主本体とそれらの周辺フィンガとが、第2のトラックとともに、チューニングトランスデューサを迂回することによって前記パスの両側を伝播パスに沿って蛇行する大域トラックを形成する;
- インターフェーシングトランスデューサごとに、トランスデューサの第2の電極の主本体が、この第2の電極の周辺フィンガのうちの1つによってだけでなく、伝播パスに対して横方向に延びて伝播パスを横断し、当該インターフェーシングトランスデューサとそれに隣接するチューニングトランスデューサとの間に位置する1つ以上の追加のフィンガによっても、前記第2のトラックのうちの1つに接続される;
- 前記第2のトラックのそれぞれが、チューニングトランスデューサのうちの1つの第2の電極とともに、伝播パスの第1の側に位置する同じ長手方向導電ストリップを形成する;
- 前記第4のトラック(42)のそれぞれが、インターフェーシングトランスデューサ(TI)のうちの1つの第2の電極(20)とともに、伝播パスの第2の側に位置する同じ長手方向導電ストリップを形成する;
- インターフェーシングトランスデューサの第2の電極が、少なくともそれらの周辺フィンガを介してチューニングトランスデューサの第2の電極と電気的に接触し、第2の電極の主本体とそれらの周辺フィンガがともに、チューニングトランスデューサとインターフェーシングトランスデューサの第1の電極を迂回することによって伝播パスに沿って前記パスの両側を蛇行する同じ主トラックを形成する;
- 第1および第2の電気トラックが弾性波の伝播パスの第1の側に位置し、一方、第3および第4の電気トラックが弾性波の伝播パスの反対側の第2の側に位置する;
- インターフェーシングトランスデューサについて:
- 前記第1の電極のそれぞれの主本体が伝播パスの第1の側に位置し、第2の電極のそれぞれの主本体が伝播パスの第2の側に位置し、
- 前記第1のトラックのそれぞれが第1の電極のうちの1つの主本体を次の第1の電極の主本体に接続する;
- 前記支持体が、互いに平行な前記2つの表面によって画定された薄板を形成し;例えば懸垂されたこの板が、板に対して垂直な方向に従って少なくとも部分的に自由に変形させられることが可能である;
- インターフェーシングトランスデューサとチューニングトランスデューサとが前記支持体の同一表面上に作られる;
- インターフェーシングトランスデューサは板の表面のうちの1つの上にあり、一方、チューニングトランスデューサは板の他方の表面上にある;
- インターフェーシングトランスデューサの第2の電極がチューニングトランスデューサの第2の電極と電気的に接触し:
- インターフェーシングトランスデューサの第1の電極、
- または、チューニングトランスデューサの第1の電極、
- または、インターフェーシングトランスデューサとチューニングトランスデューサトランスデューサの第2の電極が、
前記板の表面のうちの1つの上にあり、インターフェーシングトランスデューサとチューニングトランスデューサの他方の電極が前記板の他方の表面上にある;
- 前記第1および第2の電極がそれぞれ、前記伝播パスに対して横方向に延びる1本以上のフィンガを含み、第1および第2の電極のうちの少なくともいくつかの電極について、さらに第1および第2の電極の全部についてであっても、電極のフィンガの総数が10本以下、さらに5本または6本以下である;
- 第1および第2の電極のうちの少なくともいくつかの電極について、さらに第1および第2の電極の全部についてであっても、電極のフィンガの総数が1本と3本の間であり、さらに1本と2本の間に含まれる;
- チューニングトランスデューサとインターフェーシングトランスデューサの異なる電極をまとめてグループ化するアセンブリが、総数40本以上、さらに80本以上、さらにまたは150本以上の電極フィンガを含み;
- インターフェーシングトランスデューサの数が3以上であり、さらに4以上または5以上である;
- チューニングトランスデューサの数が3以上、さらに4以上または5以上である。
【0034】
本技術およびその異なる応用は、以下の説明を読み、添付図面を検討すると、よりよくわかるであろう。
【0035】
図面は、情報のために提示し、いかなる点でも限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】上から見た、周波数アジャイル表面波共振器を含む電気機械デバイスを図式的に示す図である。このデバイスは、比較のために示され、厳密に言えば本技術を実装しない。
【
図2】この図では周波数制御電極のフィンガの数が構成ごとに変化する、
図1のデバイスの電気共振曲線を図式的に示す図である。
【
図3】
図1のデバイスと類似しているが、共振器の軸に沿って互いに交互になっているいくつかのインターフェーシングトランスデューサと共振周波数を制御するためのいくつかのトランスデューサとを含むデバイスの、電気共振曲線を図式的に示す図である。
【
図4】斜視で見た、周波数アジャイル表面波共振器を含む電気機械デバイスを図式的に示す図である。
【
図5】上から見た、
図4のデバイスを図式的に示す図である。
【
図6】
図4のデバイスの電気共振曲線を図式的に示す図である。
【
図7】
図8に示す表面波共振器を含む別の周波数アジャイル電気機械デバイスの電気共振曲線を図式的に示す図である。
【
図8】上から見た、周波数アジャイル表面波共振器を含む電気機械デバイスを図式的に示す図である。
【
図9】上から見た、周波数アジャイル表面波共振器を含むさらに別の電気機械デバイスを図式的に示す図である。
【
図10】
図9のデバイスの電気共振曲線を図式的に示す図である。
【
図11】斜視で見た、周波数アジャイル板波共振器を含む電気機械デバイスを図式的に示す図である。
【
図12】上から見た、
図11のデバイスを図式的に示す図である。
【
図13】
図11のデバイスの電気共振曲線を図式的に示す図である。
【
図14】上から見た、周波数アジャイル板波共振器を含む別の電気機械デバイスを図式的に示す図である。
【
図15】断面および側面図として見た、
図14のデバイスの一部を図式的に示す図である。
【
図16】断面および側面図として見た、周波数アジャイル板波共振器を含む別の電気機械デバイスの一部を図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1に、単一のインターフェーシングトランスデューサT
Iと単一の共振周波数チューニングトランスデューサT
Tとを含む弾性波共振器2を含む、電気機械デバイス1を図式的に示す。この事例は、共振器内で弾性波がたどる伝播パスCに沿って互いにインターリーブされた、いくつかのインターフェーシングトランスデューサといくつかのチューニングトランスデューサとを有するそのような共振器を装備する利点をよりよく例示するために、比較を目的として提示するものである。
【0038】
このデバイス1は、ニオブ酸リチウムLiNbO3からなる固体圧電基板を、この基板の表面を伝播する弾性表面波の伝播の支持体として機能する断面Xとして含む。共振器2は、基板の開放表面上に金属層(ここではアルミニウムの層)を堆積させ、次に、2つの反射器R1およびR2と、トランスデューサTTおよびTIの電極と、電極を外部要素、例えば調整可能キャパシタンスを有するキャパシタに(例えば接触ゾーンに溶着された導体ワイヤを用いて)接続することを可能にする接触ゾーンとを画定するように、この層のリソグラフィとエッチングとを実行することによって作ることができる。
【0039】
2つの反射器R1およびR2はそれぞれ、問題とする弾性波のための反射性周期的配列を形成するように規則的にスペースがとられたいくつかの平行金属ストリップを含む(一種のブラッグミラー;周期、すなわちこの配列のピッチは典型的にはλ/2であり、ここでλはこの共振器の期待される共振、例えばチューニングトランスデューサが開回路であるときの波長である)。上から見ると、これらの反射器の各1つの反射器は、はしごの形状を有することができ、問題とするストリップの各1つがはしごの横木のうちの1つを形成する。これらの反射器は一般に、互いに電気的に接続された(短絡された)2つの電極から形成される。しかし、反射器は、電気的にフローティング(開回路にある)のままとされた電極で形成されることも可能である:この場合、反射器は、互いに接続されていない金属線を有する同一周期のネットワークの形態をとる。
【0040】
2つの反射器は、互いに対向して位置する。2つの反射器は、同一軸、ここでは基板の結晶軸Zに平行な軸上に配置されている。これらの反射器の各1つの金属ストリップは、各反射器が弾性波を他方の反射器の方向に反射する程度に、この軸に対して垂直である。したがって、共振器2内の弾性波の伝播の平均方向は、軸Zの方向である。共振器内で弾性波がたどる伝播パスCは、2つの反射器R1およびR2によって画定されたセグメントであり、したがって、ここでは軸Zに平行である。
【0041】
インターフェーシングトランスデューサTIとチューニングトランスデューサTTは両方とも、伝播パスC上に、2つの反射器R1とR2の間に一方が他方に続いて位置する。これらのトランスデューサTIおよびTTはそれぞれ、互いにかみ合った第1の電極と第2の電極とを含む。これらの電極の各1つは、互いに平行であって伝播パスCに対して垂直な1本以上のフィンガを含む。電極がいくつかのフィンガを含むとき、フィンガは櫛を形成するように配置される。この場合、各フィンガは自由端と反対側の端部とを有する金属ストリップの形態を有し、フィンガが反対側の端部を通して「バス」と呼ばれる(フィンガに対して垂直な)共通の長手方向ストリップに接続される。第1の電極のフィンガと第2の電極のフィンガとは互いにインターリーブしている。これらのフィンガは、第1の電極からの1つのフィンガ、次に第2の電極からのフィンガというように毎回交互にすることによって、伝播パスCに沿って配置される(したがって、場合によって櫛の端部のフィンガを除き、第1の電極の各フィンガは、第2の電極の2本のフィンガの間に延びる)。
【0042】
インターフェーシングトランスデューサTIのフィンガの総数は、その第1の電極のフィンガの数とその第2の電極のフィンガの数との和に等しく、N1として示す。チューニングトランスデューサTTのフィンガの総数は、N2として示す。
【0043】
図2に、以下の3つの構成についてデジタルシミュレーションによって得られた、
図1のデバイス1の電気共振曲線を示す:
- N1=11およびN2=3(
図2の曲線(a))、
- N1=11およびN2=21(
図2の曲線(b))、および
- N1=11およびN2=31(
図2の曲線(c))。
【0044】
これらの構成について、
図2に、デバイス1の、チューニングトランスデューサT
Tの2つの電極が調整可能キャパシタンスを有するキャパシタCtに接続された状態の、周波数f(メガヘルツ単位)に応じたインターフェーシングトランスデューサT
Iの2つの電極の間のアドミタンスY(アドミタンスYはジーメンス単位で表される)を示す(数量Yはより正確には問題とするアドミタンスのモジュールに等しい)。
【0045】
これらの3つの構成の各1つについて、キャパシタCtの3つの異なる値にそれぞれ対応する3つの曲線が示されている。したがって
図2は、各構成(a)、(b)および(c)について:
- 極めて低いキャパシタンス値Ct(この状況は、実質的にチューニングトランスデューサT
Tの開回路での2つの電極に等価である)に対応する第1の曲線A1であり、共振周波数が最大である曲線と、
- 中間のキャパシタンス値Ct(約0.3ピコファラッド、この場合のキャパシタのインピーダンスは約1キロオームである)に対応する第2の曲線A2であり、共振周波数が中間の曲線と、
- 極めて高いキャパシタンス値Ct(この状況は、実質的にチューニングトランスデューサT
Tの短絡した2つの電極に等価である)に対応する第3の曲線A3であり、共振周波数が最小の状況である、第3の曲線A3と
を示す。
【0046】
この図でわかるように(また「発明の概要」部ですでに説明したように)、チューニングトランスデューサTTのフィンガの数N2を増加させることはデバイス1をよりアジャイルにする:その共振周波数は、より広い範囲(N2=3の場合は約1MHzで、N2=31の場合は2.5MHz強の範囲)にわたって調整可能である。しかし、固定周波数寄生共振RPの出現も顕著であり、N2が大きくなるにつれてますます際立つ。例えば、N2=31の場合、開回路状況(曲線A1)では、この寄生共振は、主調整可能周波数共振と同程度に大きい振幅を有し、したがって特に不都合である。すでに示したように、この寄生共振(約334メガヘルツの周波数で発生する)は、共振器2の一部のみにある共振モードに関連し、これはインターフェーシングトランスデューサTIが占める部分の特定の音響共振にある程度対応する(これは、この寄生共振RPがチューニングトランスデューサTTの電極間に接続されたインピーダンスとは独立した固定周波数を有することを説明している)。
【0047】
図3に、
図1のデバイスと類似しているが、弾性波の伝播パスに沿って互いに交互になった3つのインターフェーシングトランスデューサと3つの周波数チューニングトランスデューサとを含むデバイスの電気共振曲線を示す。
【0048】
これらのトランスデューサの各1つは、上述のように互いにかみ合った第1の電極と第2の電極とを含む。各インターフェーシングトランスデューサごとに、トランスデューサのフィンガの総数、N1、はここでは46に等しい(これは、その第1の電極のフィンガの数と、その第2の電極のフィンガの数との和である)。また、各チューニングトランスデューサごとに、トランスデューサのフィンガの総数、N2、はここでは14に等しい。
【0049】
3つのチューニングトランスデューサの第1の電極は、互いに電気的に接続されている。3つのチューニングトランスデューサの第2の電極も互いに電気的に接続され、一方のこれらの第1の電極と他方のこれらの第2の電極との間に、調整可能電気キャパシタンスを有するキャパシタが接続されている。
【0050】
3つのインターフェーシングトランスデューサの第1の電極は互いに電気的に接続され、これらのトランスデューサの第2の電極も互いに電気的に接続されている。
図3に、周波数f(メガヘルツ単位)に応じた、このデバイスの、一方のこれらの第1の電極と他方のこれらの第2の電極との間のアドミタンスY(ジーメンス単位)を示す。上記の3つのキャパシタンス値(極めて低いキャパシタンスと、約0.3ピコファラッドの中間キャパシタンスと、極めて高いキャパシタンス)に対応する(この場合もデジタルシミュレーションにより得られた)3つの曲線A1、A2およびA3が、
図3に示されている。
【0051】
図3でわかるように、(単一体からなる単一のより長いチューニングトランスデューサではなく)伝播パス全体にわたって分散され、インターフェーシングトランスデューサの間に挿入されたいくつかのチューニングトランスデューサを使用することが、その振幅が指し示されている、この図で観察される寄生共振の振幅より明確により大きい主調整可能周波数共振を得ることを可能にする。曲線A1では、共振が得られる周波数が
図3で参照符号f
R,1で指し示されている。さらに曲線A3では、共振が得られる周波数が参照符号f
R,3で指し示されている。これらの曲線の各1つで、共振は反共振から特によく離隔されており、高い電気機械結合係数を示していることにも留意されたい。
【0052】
すでに説明したように、インターフェーシングトランスデューサとチューニングトランスデューサとが交互にされたこのような構成は、(共振周波数の広い調整範囲を得るために)共振器全体にわたる伝播速度を制御する電極を分散させることを可能にして、共振器の一部のみにある寄生共振モードの出現を限定したまま、(例えば50オームに近いインピーダンスを得るために)トランスデューサの完全セットにかなり多めのフィンガの総数を使用することを可能にする。
【0053】
さらに、本技術は一般に、調整可能共振周波数を有し電気機械デバイス5;8;9;12;14;16であって:
- 表面Sによって、または互いに平行な2つの表面S1およびS2によって画定された圧電の支持体100;200と、
- この支持体100;200上の、前記表面S;S1、S2に対して平行に伝播する弾性波のための共振器50;80;90;120;140とを含み、共振器は:
- 共振器を画定し、前記波を反射する2つの反射器R1およびR2と、
- いくつかのインターフェーシングトランスデューサTIと、
- 前記共振周波数を制御するためのいくつかのトランスデューサTTとを含み、インターフェーシングトランスデューサTIとチューニングトランスデューサTTとが、共振器内で前記波がたどる伝播パスCに沿ってインターフェーシングトランスデューサとチューニングトランスデューサとが交互になった状態でこの伝播パスに沿って配置された、電気機械デバイスに関する。
【0054】
インターフェーシングトランスデューサTIとチューニングトランスデューサTTは、連続して、インターフェーシングトランスデューサTI、次にチューニングトランスデューサTT、次にインターフェーシングトランスデューサTIを有して、伝播パスCに沿って互いに続いて配置される。したがって、伝播パスCの2端に位置する2つのトランスデューサ(TIまたはTT)以外は、各チューニングトランスデューサTTが(その最も近い近隣である)2つのインターフェーシングトランスデューサTIの間に位置し、同様に、各インターフェーシングトランスデューサTIが(その最も近い近隣である)2つのチューニングトランスデューサTTの間に位置する。伝播パスCの2端に位置する2つのトランスデューサTIまたはTTに関しては、それらはそれぞれ、一方の2つの反射器R1、R2のうちの1つと、他方の別の種類のトランスデューサTTまたはTIとの間に挿入される。
【0055】
図3の共振曲線に対応する実施形態に加えて、本明細書ではこのデバイスの6つの異なる実施形態5;8;9;12;14および16について説明する。これらのデバイスをそれぞれ、
図5、
図8、
図9、
図12、
図14および
図16に示す。
【0056】
図5、
図8および
図9に示す実施形態では、デバイスの支持体100は固体の厚い支持体であり、共振器50;80;90は、この支持体の開放表面S上に作られた表面波共振器である(
図4参照)。ここで、表面は平面である。
【0057】
図12、
図14および
図16の他の3つの実施形態では、支持体、200、は上述の2つの表面S1およびS2によって画定された薄い圧電板(
図11参照)であり、共振器は板波共振器である。2つの表面S1およびS2は、ここでは平面である。
【0058】
これらの異なる実施形態は、多くの共通点を有する。また、実施形態ごとに、同一または対応する要素は、可能な限り同じ参照符号で指し示され、必ずしもそのたびごとに説明しない。
【0059】
これらの実施形態の各1つについて順次、詳細に説明する前に、まず、これらの実施形態に共通する特徴を提示する。
【0060】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、共振器は厳密に2つの反射器を含む。これらの2つの反射器R1およびR2は、類似した構造を有し、
図1の共振器と同じでさえもある:共振器はそれぞれ、対象の弾性波のために反射性の周期的配列を形成するように規則的にスペースがとられたいくつかの平行な金属ストリップを含む。これらの2つの反射器は、同一軸上に互いに対向して配置される。共振器内で、弾性波はこの軸に沿って伝播し、これらの反射器R1およびR2の一方で、次に他方でというように交互に反射する。共振器内で弾性波がたどる伝播パスCは、2つの反射器R1およびR2によって画定されたセグメントである。
【0061】
インターフェーシングトランスデューサT
Iについては、支持体200が薄板の形態で作られるとき、インターフェーシングトランスデューサT
Iのそれぞれが、支持体200の表面S(
図4)または支持体200の2つの表面S1またはS2の一方の上にそれぞれ作られた、互いにかみ合った第1の電極10と第2の電極20とを含む。
【0062】
同様に、各チューニングトランスデューサT
Tは、それぞれが支持体200の表面S(
図4)または支持体200の2つの表面S1またはS2の一方の上に作られた、第1の電極30と互いにかみ合った第2の電極40とを含む。
【0063】
これらの電極10、20、30、40はそれぞれ、互いに平行であって伝播パスCに対して垂直な1本以上のフィンガ11、21、31、41を含む。電極がいくつかのフィンガを含むとき、フィンガは櫛を形成するように配置される。各フィンガ11、21、31、41は、このようにして、自由端と、その反対側の端部とを有する、金属ストリップを形成し、反対側の端部を通してそのフィンガがこの櫛の異なるフィンガに共通した(フィンガに対して垂直の)、「バス」と呼ばれる電極の主本体(櫛の主本体)を形成する長手方向ストリップに接続される。第1の電極10、30のフィンガと第2の電極20、40のフィンガは互いの間に挿入される:それらは第1の電極10、30からの1つのフィンガ11、31、次に第2の電極20、40からのフィンガ21、41というように毎回交互にすることによって、伝播パスCに沿って配置される。
【0064】
特定の場合(例えば
図16のデバイスの場合)には、同じトランスデューサの第1の電極と第2の電極が、それぞれ単一のフィンガを含み得ることに留意されたい。また、同じトランスデューサの第1の電極と第2の電極が、支持体200の2つの異なる表面上に作られてもよい(例えば
図15参照)。
【0065】
電極1つ当たりのある程度多数のフィンガ数を選定することにつながる基準については、図面自体の説明の後で後述する。
【0066】
電気機械デバイス5;8;9;12;14;16は、各インターフェーシングトランスデューサTIがチューニングトランスデューサTTとは独立して給電されるかまたはデバイスの外部の要素から外部の要素に電気的に接続され得るように構成される。チューニングトランスデューサTTについては、それらは、電気機械デバイス5;8;9;12;14;16に属する、調整可能電気インピーダンスを有する電気デバイス79に(インターフェーシングトランスデューサとは独立して)接続される。
【0067】
したがって、インターフェーシングトランスデューサTIごとに、(チューニングトランスデューサTTとは独立してこのトランスデューサTIに給電/接続可能とするために)トランスデューサの2つの電極のうちの少なくとも一方がチューニングトランスデューサTTの異なる電極に対して電気的に分離される。同様に、チューニングトランスデューサTTごとに、トランスデューサの2つの電極のうちの少なくとも一方がインターフェーシングトランスデューサトランスデューサTIの異なる電極に対して電気的に分離されている。
【0068】
ここで説明する実施形態では、異なるインターフェーシングトランスデューサT
Iの第1の電極10は互いに電気的に接続されている(すなわち、中間の電気コンポーネントなしに導電体によって直接接続されている)。第1の電極10は、電気機械デバイスの第1の接続端子、75に電気的に接続されている(例えば
図8参照)。異なるインターフェーシングトランスデューサT
Iの第2の電極20も、互いに電気的に接続されている。これらの電極は、電気機械デバイスの第2の接続端子、76に電気的に接続されている。2つの端子75および76は、電気機械デバイスを外部要素に接続することを可能にする。これらの端子は、完全な電子回路、例えば同調可能周波数を有する周波数アジャイルフィルタリング回路または信号生成回路における、例えば電気機械デバイス(調節可能電気共振器として使用される)を接続することを可能にする。実際には、2つの接続端子75および76は、支持体100;200の表面S上、または表面S1、S2のうちの1つの上に作られた、2つの幅広い電気トラックに、または2つの「パッド」接続ゾーンに、直接対応し得る。
【0069】
異なるチューニングトランスデューサT
Tの第1の電極30も互いに電気的に接続されている。これらの電極は、調整可能インピーダンスZを有するデバイス79の第1の端子77に接続される(例えば
図8参照)。異なるチューニングトランスデューサT
Tの第2の電極40も互いに電気的に接続されている。これらの電極は、デバイス79の第2の端子78に電気的に接続されている。デバイス79は、その端子77と78の間に、調整可能(例えば電気的に操縦可能(pilotable))電気インピーダンスZを有する。電気的な観点からは、デバイス79は具体的には調整可能電気キャパシタンスを有するキャパシタに等価であり得る(さらに、調整可能キャパシタンスを有するキャパシタであり得る)。
【0070】
共通の電気接地を備えた特定の実施形態(例えば
図9および
図12の実施形態)では、チューニングトランスデューサT
Tの第2の電極40はインターフェーシングトランスデューサT
Iの第2の電極20に電気的に接続される(電極40と電極20が互いに短絡される)ことに留意されたい。しかし、チューニングトランスデューサT
Tの第1の電極30は、この場合、インターフェーシングトランスデューサT
Iの第1の電極10から電気的に分離されたままである。
【0071】
表面波共振器
以下、共振器が表面波共振器である電気機械デバイス5;8;9の最初の3つの実施形態について、より詳細に説明する。
【0072】
すでに示したように、これらの3つの実施形態では、支持体100が固体の厚い支持体(厚さは例えば、動作周波数で使用される音波の波長の6倍以上、すなわち、電気機械デバイスで使用される電極の周期の12倍以上)である。ここでは、支持体100は断面Xとして(すなわち開放表面Sが結晶軸Xに対して直角である)ニオブ酸リチウムLiNbO3からなる。また、共振器の軸、すなわち共振器における弾性波の伝播の軸は、結晶軸Xに平行である(言い換えると、伝播パスCは軸Zに平行である)。
【0073】
反射器R1、R2と、異なるトランスデューサTT、TIの電極10、20、30、40は導電材料、例えば金属材料からなる。ここでは、これらはアルミニウムからなる。これらの厚さ(表面Sに対して垂直な延長)は、典型的には0.02ミクロンと1.5ミクロンの間に含まれる;ここでは、例えば0.7ミクロンである。トランスデューサと反射器は、例えば20%と60%の間に含まれるメタライゼーション率で作られる。ここでは、例えばメタライゼーション率は50%である。メタライゼーション率は:
- 互いにかみ合った電極フィンガ11、21、31、41のうちのいずれかのフィンガの幅(すなわち伝播パスCに平行なフィンガの延長)を、
- 2つの連続するフィンガの間のピッチ(空間周期)で割った値に等しい。
【0074】
ここでは、例えば各フィンガは2.5ミクロンの幅を有し、2つの連続するフィンガ間の空き空間も2.5ミクロンの幅を有する(メタライゼーション率50%)。したがって問題とするピッチは、5ミクロンに等しい。さらに、同じ電極の2つの連続するフィンガ間の空間周期は、10ミクロンである。
【0075】
図4および
図5に示す
第1の実施形態では、電気機械デバイス5の共振器50は、5つのインターフェーシングトランスデューサT
Iと5つの周波数チューニングトランスデューサT
Tを含む。インターフェーシングトランスデューサT
Iごとに、トランスデューサの第1の電極10は4本のフィンガ、11、を含み、一方、第2の電極20は5本のフィンガ21を含む。同様に、チューニングトランスデューサT
Tごとに、トランスデューサの第1の電極30は4本のフィンガ31を含み、一方、第2の電極40は5本のフィンガ、41を含む。したがって、全トランスデューサは、弾性波の伝播パスCに沿って規則的(周期的)に分散された90本のフィンガを含む。
【0076】
電極10、20、30および40の各1つは、電極の電気的接続が意図された比較的幅広い電気トラック17、27、37、47(幅約30ミクロン、長さ約100ミクロン以上)によって、互いにかみ合ったフィンガの反対側に延ばされている。この実施形態では、電極間の電気接続は、「ブリッジング」によって、すなわち、互いに電気的に接続される2つの電極を接続するために電気配線を溶着すること(「ワイヤボンディング」と呼ばれる接続)によって作られる。したがって、例えば第1の電極10は、これらの溶着配線によって互いに接続される(同じことは電極20、または電極30または40にも当てはまる)。
【0077】
図6に、電気機械デバイス5によって提示される、その第1の接続端子(第1の電極10に接続されている)とその第2の接続端子(第2の電極20に接続されている)との間のアドミタンスYを測定することによって得られた3つの共振曲線A1、A2およびA3を示す。曲線A3は、チューニングトランスデューサT
Tについて、第1の電極30を第2の電極40と短絡させる(これは、電気的な観点からは、極めて高いキャパシタンスを有するキャパシタをこれらの電極の間に接続することに等価である)ことによって得られる。曲線A2は、第1の電極30と第2の電極40との間に0.3ピコファラッドのキャパシタを接続することによって得られる。さらに、曲線A1は、開回路、すなわち、第1の電極30と第2の電極40の間に電気コンポーネントを接続せずに(これは、電気的な観点からは、これらの電極の間に接続された極めて低いキャパシタンスを有するキャパシタに等価である)得られる。
【0078】
図6でわかるように、電気機械デバイス5は、寄生共振のないきれいな電気共振を有する。その共振周波数は、周波数チューニングトランスデューサT
Tの端子に接続されたキャパシタのキャパシタンスを変化させることによって効果的に変更することができる。しかし、得られる周波数変化は低く、約100kHzである。さらに、共振と反共振との差は、デジタルシミュレーション(例えば
図3)に照らして期待され得る差よりも小さい。
【0079】
この限定された同調性は、(「ブリッジング」による)配線接続に関連する望ましくない効果、具体的には、固定値の寄生キャパシタンスまたはインダクタンスの導入に起因する。
【0080】
また、他の実施形態では、電気機械デバイス8;9;12;14;16の電極間の電気接続は、例えば
図8に示すように、支持体100の表面S上、または支持体200の表面S1、S2のうちの1つの上に作られた電気トラックによって作られる。実際には、これは、「ブリッジング」を介しての接続を用いてよりも広い範囲の同調性を得ることを効果的に可能にする(例えば
図7の実験曲線参照)。
【0081】
次に、
図8および
図9を参照しながら以下で説明するように、支持体の同一表面上に作られる電気トラック間の重なり(この場合も寄生キャパシタンスおよび/またはインダクタンスの源になることとなる重なり)を防ぐために、特別な配置が実装される。
【0082】
第2および第3の実施形態を、それぞれ
図8および
図9に示す。
【0083】
これらの2つの実施形態では、電気トラック間の重なりを防ぐために:
- インターフェーシングトランスデューサTIの電極を接続する電気トラックが、伝播パスCの第1の側71に作られ、
- 一方、チューニングトランスデューサTTの電極を接続する電気トラックが、伝播パスの他方の側(この伝播パスの第2の側、72)に作られる。
【0084】
(トラック間の交差または重なりを防ぐように)伝播パスCの一方の側または他方の側にこれらの接続を作るために、特別な配置が採用される:いくつかの電極が(例えば電極10の場合のように)それらの主本体によってではなく、革新的なやり方で、伝播パスの適切な側に位置するという利点を有するそれらの周辺フィンガ21の端部(例えば電極20)によって、互いに接続される。
【0085】
伝播パスの第1の側71とは、伝播パスCの一方の側、例えば伝播パスCの左側に位置する表面Sの部分(または、より一般的にはこの空間のゾーン)を指定する。伝播パスの第2の側とは、伝播パスCの他方の側、例えば伝播パスCの右側に位置する表面Sの部分(また、より一般的にはこの空間のゾーン)を指定する。すでに示したように、共振器内で弾性波がたどる平均伝播パスに対応する伝播パスCは、反射器R1から反射器R2まで延びるセグメントである。このセグメントは、互いにかみ合った電極の各フィンガのほぼ中央(それは共振器の軸と一致する)を通る。互いにかみ合った電極の各フィンガは、伝播パスCの一方の側から他方の側に延びる(すなわちパスCを横断する)。
【0086】
インターフェーシングトランスデューサTIごとに、トランスデューサの第1の電極10のフィンガ11は、伝播パスCの第1の側、71で互いに接続される。言い換えると、櫛の形状の電極10の本体(ある意味で電極の主本体)を形成するこれらの異なるフィンガ11が接続されている共通の長手方向導電ストリップ(フィンガに対して垂直なストリップ)が、伝播パスCの第1の側、71に位置する。
【0087】
第1の電極10は、完全に伝播パスCの第1の側71に位置する第1の電気トラック、12、によって互いに接続される。近隣の(すなわち、間に単一のチューニングトランスデューサTTが挿入されて伝播パスに沿って直接続く)第1の電極10のペアごとに、その2つの電極10のそれぞれの本体が、第1のトラック12’のうちの1つによって互いに接続される。第1の電極10と第1のトラック12’とのアセンブリは全体的な櫛形の形状を有し(ある意味で大規模な櫛)、そのそれぞれの歯が(それ自体がいくつかのフィンガ11から形成される)電極10のうちの1つに対応する。この櫛の本体は、パスCの第1の側71に位置する。
【0088】
インターフェーシングトランスデューサTIごとに、トランスデューサの第2の電極20のフィンガ21がパスCの第2の側、72(第1のトラック12’の反対側)で互いに接続される:櫛の形態のこの電極の本体が伝播パスCの第2の側に位置する。この第2の電極20は、それに関連付けられている第1の電極10より(すなわち、この第2の電極20のフィンガ21が挿入されているフィンガ11の間の第1の電極10より)1本多いフィンガを含む。この電極20の2本の周辺フィンガ21は、第1の電極10のフィンガ11の完全なセットを囲み、その両側に位置する(ある意味で取り囲む)。当該第2の電極20の2本の周辺フィンガ21は、この電極の互いに最も遠く離れた2本のフィンガである(ただし、依然として、当該トランスデューサの第1の電極10のフィンガ11のうちの1つを最も近い近隣として有する)。これらの2本の周辺フィンガ21はそれぞれ、第2の電極20の本体にそれを介して接続される第1の端部と、伝播パスCの第1の側71に位置する反対側の第2の端部とを有する。
【0089】
近隣の(すなわち伝播パスに沿って互いに続いている)第2の電極20のペアごとに、問題とする2つの電極20は第2のトラック22によって互いに接続される。この第2のトラックは、完全に伝播パスの第1の側71に延びている。この第2のトラックは:
- これらの2つの電極20のうち一方の周辺フィンガ21の1つ(ここでは、当該ペアの他方の電極20に最も近いこの電極の周辺フィンガ)の第2の端部を、
- 当該ペアの他方の電極20の周辺フィンガ21の1つ(ここでは、当該ペアの他方の電極20に最も近いこの電極の周辺フィンガ)の第2の端部に接続する。
【0090】
したがって、(例えば第1の電極10の場合のように)2つの電極20のうち一方の本体を当該ペアの他方の電極20の本体に接続するのではなく、これらの2つの電極20は、それぞれの周辺フィンガ21によって、より正確には、伝播パスCの第1の側71に位置するという利点を有するこれらの周辺フィンガ21の第2の端部によって接続される。したがって、第2の電極20の本体がパスCの第2の側に位置している場合でも、これらの電極はこのパスの第2の側71のみを通ることによって接続され得、したがって、チューニングトランスデューサTTの電極の接続のために伝播パスの第2の側72を空けておくことができる。
【0091】
トラック22とトラック22が接続する2本の周辺フィンガ21とを含むアセンブリは、一種のC字形状のトラックを形成し、2つの電極20の間に位置するチューニングトランスデューサTTを迂回するために(伝播パスの第2の側から第1の側に通るためにパスCを横断し、次に、パスCに平行に(およびこの伝播パスの第1の側に)延ばされ、次に、問題とするチューニングトランスデューサTTを越えた後、他方の電極20の本体に接続されるように再びパスCを横断して第2の側72に戻る。
【0092】
第2のトラック22と、第2の電極20の本体と、これらの電極20の各1つの2本の周辺フィンガ21とを含む集合体は、パスCに沿って蛇行し、インターフェーシングトランスデューサT
Iの間に挿入されたチューニングトランスデューサT
Tを迂回するようにこのパスを数回横断し、再横断して蛇行路を形成する、主トラックを形成する(例えば
図8参照)。
【0093】
チューニングトランスデューサTTの電極30、40を接続するトラック32、42が、トラック12、22と比較し得るやり方であるが伝播パスの第2の側72に作られる。
【0094】
したがって、チューニングトランスデューサTTごとに、トランスデューサの第1の電極30のフィンガ31が伝播パスCの第2の側72で互いに接続される。したがって電極30の本体はこのパスの第2の側72に位置する。近隣の第2の電極30のペアごとに、問題とする2つの電極は完全にパスCの第2の側72に位置する第3のトラック32によって互いに接続される。第1の電極30と第3のトラック32とのアセンブリは、各歯が電極30のうちの1つに対応する大域的な櫛の形状を有し(ある意味で大規模な櫛)、この櫛の本体がパスCの第2の側72に位置する。
【0095】
また、チューニングトランスデューサTTごとに、トランスデューサの第2の電極40のフィンガ41が伝播パスCの第1の側71で互いに接続され、したがってこの電極の本体はパスCの第1の側に位置する。この第2の電極40は、関連付けられている第1の電極よりも1本多いフィンガを含む。この電極40の2本の周辺フィンガ41が第1の電極30のすべてのフィンガ31を囲んでいる。これらの2本の周辺フィンガ41はそれぞれ、それを介して電極40の本体に接続される第1の端部と、伝播パスCの第2の側72に位置する反対側の第2の端部とを有する。
【0096】
近隣の(すなわち伝播パスに沿って互いに続く)第2の電極40のペアごとに、問題とする2つの電極40が第4のトラック42によって互いに接続される。この第4のトラックは、完全に伝播パスの第2の側72に延びている。第4のトラックは、
- これら2つの電極40のうちの1つの周辺フィンガ41のうちの1つ(ここでは、当該ペアの他方の電極40に最も近いこの電極の周辺フィンガ)の第2の端部を、
- 当該ペアの他方の電極40の周辺フィンガ41の1つ(ここでは、当該ペアの他方の電極40に最も近いこの電極の周辺フィンガ)の第2の端部に接続する。
【0097】
この場合も、4つのトラック42と、第2の電極40の本体と、これらの電極40の各1つの2本の周辺フィンガ41とを含むアセンブリは、パスCに沿って蛇行し、チューニングトランスデューサTTの間に挿入されたインターフェーシングトランスデューサTIを迂回するようにこのパスを数回横断し、再横断して蛇行路をなす、主トラックを形成する。
【0098】
図8の実施形態では(
図9の実施形態とは異なり)、インターフェーシングトランスデューサT
Iの第2の電極20がチューニングトランスデューサT
Tの第2の電極40から電気的に分離されたままである。
【0099】
図のように、デバイス8の共振器80は、5つのインターフェーシングトランスデューサTIと5つの周波数チューニングトランスデューサTTとを含む。各インターフェーシングトランスデューサTIごとに、トランスデューサの第1の電極10は4本のフィンガ11を含み、一方、第2の電極20は5本のフィンガ21を含む。同様に、各チューニングトランスデューサTTごとに、トランスデューサの第1の電極30は4本のフィンガ31を含み、第2の電極40は5本のフィンガ41を含む。したがって全トランスデューサで、弾性波の伝播パスCに沿って規則的に(周期的に)分散された90本のフィンガを含む。
【0100】
図7に、周波数f(メガヘルツ単位で表される)に応じた、電気機械デバイス8によって提示される、その第1の接続端子75と第2の接続端子76との間のアドミタンスY(ジーメンス単位で表される)を測定することによって得られた3つの共振曲線A1、A2およびA3を示す。曲線A3は、チューニングトランスデューサT
Tについて、第1の電極30を第2の電極4と短絡させることによって得られる(Z=0)。それに対して曲線A1は開回路(無限Z)で得られ、曲線A2は、第1の電極30と第2の電極40との間に1ピコファラッドの中間キャパシタを接続することによって得られる。
【0101】
図7でわかるように、電気機械デバイス8は、寄生共振のない、明らかにデバイス5よりも拡張された同調性の範囲(約1MHz)を有する、反共振からよりよく離隔された共振を有する(約1.8MHzの差)、きれいな電気共振を有し、この場合に使用される特定の接続モード(トラックを介しての、重なりのない接続)の利点を示している。
【0102】
図8の電気機械デバイス8では、各第2の電極20がその周辺フィンガ21のうちの1つによって第2のトラック22のうちの1つに接続される。あるいは、各第2の電極20が、その周辺フィンガ21の1つによってだけでなく、伝播パスに対して横方向に延び、伝播パスCを横断し、(
図9の場合のように)当該インターフェーシングトランスデューサT
Iと隣接チューニングトランスデューサT
Tとの間に位置する1つ以上の追加のフィンガによっても、第2のトラック22のうちの1つに接続されるようにしてもよい。同様に、各第2の電極40は、その周辺フィンガ41の1つだけでなく1つ以上のそのような追加のフィンガによっても第4のトラック42のうちの1つに接続されてもよい。したがって、第2の電極20を第2のトラック22(または第2の電極40のうちの1つと第4のトラック42のうちの1つ)に、1つのフィンガだけでなくいくつかのフィンガによって接続することは、2つの連続した第2の電極20間の電気抵抗とインダクタンスとを低減させることができる。言い換えると、これは、第2の電極20(または40)のうちの1つから次の第2の電極への共通電位のより良好な伝達を可能にする。しかし、インターフェーシングトランスデューサT
Iと近隣チューニングトランスデューサT
Tとの間にいくつかのこのような「電位伝達」フィンガが挿入されると、これは音響的観点からは、これらの2つのトランスデューサT
IとT
Tの間に部分反射器を挿入することに立ち戻る。これは、共振器の2つの隣接セクションの分離の一因となり、したがって結果としてデバイスの電気機械結合係数の低減と、トランスデューサのこれらのセクションの特定の共振(共振器の一部のみにあるモード)の寄与の増加をもたらす可能性がある。
【0103】
したがって、一方では電気接触抵抗およびインダクタンスの低減(電位伝達フィンガの数の増加を促す)と、他方では連続するトランスデューサ間の反射率の低減(電位伝達フィンガの数の制限を促す)との間の妥協点を見つけることが望ましい。デジタルシミュレーションの結果は、電位伝達フィンガ(第2の電極自体の周辺フィンガ21、41を含む)の総数が1本と10本の間、さらには1本と4本の間に含まれることが好ましいことを示している。
【0104】
図9の実施形態は、
図8の実施形態と比較し得るが、インターフェーシングトランスデューサT
Iの第2の電極20とチューニングトランスデューサT
Tの第2の電極40が互いに電気的に接続(短絡)されて共通の電気接地を形成する。
【0105】
また、この実施形態では、第2のトラック22の各1つが、チューニングトランスデューサT
Tのうちの1つの第2の電極40とともに、伝播パスCの第1の側71に位置する同じ長手方向導電ストリップを形成する。言い換えると、この第2のトラック22とこの第2の電極40は互いにひとまとめにされている(
図9参照)。
【0106】
同様に、第4のトラック42の各1つが、インターフェーシングトランスデューサTIの1つの第2の電極20とともに、今度は伝播パスの第2の側72に位置する同一の長手方向導電ストリップを形成する。
【0107】
インターフェーシングトランスデューサTIのうちの1つと、このインターフェーシングトランスデューサTIの隣接チューニングトランスデューサTT(このインターフェーシングトランスデューサの最も近い近隣)のうちの1つとを含むペアごとに:インターフェーシングトランスデューサTIの第2の電極20が、それぞれの周辺フィンガ、21および41を介して、およびここでは2つのトランスデューサTIとTTの間に挿入された(より正確には、問題とする周辺フィンガ21と41との間に挿入された)追加のフィンガ26も介して、チューニングトランスデューサTTの第2の電極40と電気的に接触している。これらの追加のフィンガ26の各1つは、第2の電極20を第2の電極40に接続するために、伝播パスCに対して横方向に延び、伝播パスCを横断している。
【0108】
図9の実施例では、インターフェーシングトランスデューサT
Iのうちの1つとこのインターフェーシングトランスデューサの隣接チューニングトランスデューサT
Tのうちの1つとのペアごとに、これら2つのトランスデューサの間に位置するすべての電位伝達フィンガ、すなわち2本の周辺フィンガ21および41と追加のフィンガ26とが、合計10本のフィンガ(すなわち8本の追加フィンガ26)を含む。しかし、これに代えて異なる数の電位伝達フィンガ、例えばより少ない数の電位伝達フィンガが選定されてもよい。
【0109】
図9の共振器90では、第2の電極20および40の主本体と、それらの周辺フィンガ21および41と、上述の追加フィンガ26とがともに、チューニングトランスデューサT
TとインターフェーシングトランスデューサT
Iの第1の電極10および30を迂回することを可能にする蛇行路を形成することによって、伝播パスCに沿ってこのパスの両側を蛇行する(伝播パスを数回横断し、再横断する)同一の主トラック60を形成する。
【0110】
図10に、周波数f(メガヘルツ単位で表される)に応じた、電気機械デバイス9によって提示される、その第1の接続端子(第1の電極10に接続)と第2の接続端子(第2の電極20に接続)との間のアドミタンスY(ジーメンス単位で表される)を測定することによって得られた3つの共振曲線A1、A2およびA3を示す。曲線A3は、チューニングトランスデューサT
Tについて、第1の電極30における第2の電極40との短絡として得られる(Z=0)。それに対して曲線A1は開回路で得られ(無限Z)、曲線A2は第1の電極30と第2の電極40との間に3ピコファラッドの中間キャパシタを接続することによって得られる。
【0111】
図10でわかるように、電気機械デバイス9は満足のいく同調性の範囲のきれいな電気共振を有する。しかし、この同調性の範囲は、
図8のデバイス8の場合よりもわずかに小さく、共振は反共振から、よりわずかに離隔されている。寄生共振(局在化モードに対応)は、
図8のデバイス8の場合よりも全体として若干際立っている。これらの観察は、電位伝達フィンガの数(ここではこの数は10に等しい)がこの実施例では共振器80の場合より多く、したがって2つの連続するトランスデューサの間の界面における部分反射の程度が増加することによって説明され得る。
【0112】
上記で提示した表面波電気機械デバイス5、8、9にはその性能(特に周波数のアジリティ)をさらに改善するために異なる代替を与えることができる。
【0113】
例えば、より高い電気機械結合係数を得るために、ニオブ酸リチウム基板(または別の種類の基板が選定されてもよい)のために異なる結晶配向を選定することができる。したがって、断面Xを使用するのではなく、配向Y+64°またはY+128°が使用されてもよい。
【0114】
反射率、したがって共振器のQ値を改善するために、異なる数のフィンガ(周期の数)、例えばより多数のフィンガを含む反射器が使用されてもよい。
【0115】
共振器の全体的寸法の縮小(特に連続するフィンガ間のピッチの縮小)は、動作周波数を増加させる(より高い共振周波数)ことを可能することになる。
【0116】
また、支持体として単結晶基板を使用する代わりに、表面付近によりよく閉じ込められ、より速く、それらの伝播特性が温度とともにドリフトすることがより少ない波の使用を許す多層構造体に頼ってもよい。
【0117】
板波共振器
共振器が板波共振器である電気機械デバイス12;14および16の第4、第5および第6の実施形態を、
図12、
図14および
図16をそれぞれ参照しながら提示する。
【0118】
すでに示したように、これらの3つの実施形態では、支持体200は全体として6波長未満(または電極の周期の12倍)の厚さの薄板である。
【0119】
ここでは、これは厚さ0.39ミクロンの断面Xとしてのニオブ酸リチウム板の使用を伴う。反射器R1およびR2は、共振器内の弾性波の伝播の軸、これら2つの反射器を接続する軸が、切断面において結晶軸Yと170°の角度を作るように配置される。
【0120】
トランスデューサの電極と、反射器と、電気接続トラックとは、導電性材料、例えば金属材料からなる。ここでは、これらはアルミニウムからなる。これらの厚さ(面Sに対して垂直な延長)は、典型的には0.01ミクロンと1ミクロンの間に含まれる;ここでは、厚さは例えば235ナノメートルである。トランスデューサと反射器は、例えば10%と60%の間(ここでは約30%)のメタライゼーション率で作られる。トランスデューサの電極の異なるフィンガ11、12、31、41と反射器R1、R2は、ここでは2.3ミクロンの空間周期で2つずつ離隔され、それぞれが0.7ミクロンの幅(伝播パスCに平行な特定の延長)を有する。各電極における波の反射率を低減するために、表面波共振器よりもわずかに低いメタライゼーション率が使用され、これにより共振器の単一領域における波の局在を防ぐ。
【0121】
実際に、電極の厚さは板200のそれと比較し得るため、板波はその通過中に各電極フィンガの下で多少強い反射を被る(対応する反射率は例えば30%に達し得る)。これらの状態で、連続する歯のセット間の弾性結合が伝播パスCに沿って急速に低くなる。したがって、これらの板波共振器120;140が、フィンガ11、21を実質的に連続して交互にし、それによって共振器とフィンガ31、41の電気的インターフェーシングを可能にし、周波数制御を可能にすることが望ましい。
【0122】
また、この種の共振器では、前記電極10、20、30および40の各1つが最大で3本のフィンガを含むことが提供される。
【0123】
より正確には、第4および第5の実施形態(それぞれ
図12および
図14)では、第1の電極10および30の各1つが単一のフィンガを含み、第2の電極20および40の各1つが、対応する第1の電極の単一のフィンガを囲むフィンガを2本のみ含む。したがって、これら2つの実施形態の場合、各トランスデューサは合計で3本のフィンガを含む。
【0124】
これらの3つの板波共振器デバイス12;14;16では、トランスデューサの電極10、20、30、40はこの場合も、それぞれが支持体200の2つの表面S1およびS2のうちの1つまたは他方の上に作られた電気トラック12、22、32および42によって互いに電気的に接続される。この支持体の同一表面、S1またはS2、上に作られるトラックは重なり合わない。
【0125】
第4の実施形態(図11および図12)では、共振器120の異なる要素、すなわち、反射器R1、R2と、トランスデューサT
T、T
Iと、接続トラック12、22、32、42とは、支持体200の同一表面、S1、上に作られる。トラック間の重なり合いを防ぐために、この場合、上記で提示した、表面波を使用するデバイス8および9と同じ配置に頼る。
【0126】
インターフェーシングトランスデューサTIの場合、第1の電極10が、完全に伝播パスCの第1の側71に位置する第1のトラック12’によって互いに接続される。さらに、第2の電極20も、やはり完全に伝播パスの第1の側71に位置する第2のトラック22によって互いに接続される。
【0127】
また、チューニングトランスデューサTTの場合、第1の電極30が、完全に伝播パスCの第2の側72に位置する第3のトラック32によって互いに接続される。さらに、第2の電極40も、やはり完全に伝播パスの第2の側72に位置する第4のトラックによって互いに接続される。
【0128】
ここでは、第1の電極10がそれぞれ単一のフィンガを有するため、これらの第1の電極10とそれらを接続する第1のトラック12’とを含むアセンブリが櫛を形成し、櫛の本体が実質的に伝播パスCの全長にわたってこのパスの第1の側71にパスCに対して平行に延び、その各フィンガが第1の電極10のうちの1つによって、すなわちこの電極の1つしかないフィンガによって形成される。
【0129】
第1の電極30とそれらを接続する第1のトラック32とを含むアセンブリも櫛を形成し、櫛の本体が実質的に伝播パスCの全長にわたってこのパスの第2の側72にパスCに対して平行に延び、その各フィンガが第1の電極30の1つによって(すなわちこの電極の1つしかないフィンガによって)形成される。問題とする2つの櫛は互いにかみ合っている:第1の電極10のうちの各1つにより構成されるフィンガが、それぞれ第1の電極30のうちの1つを構成する2本のフィンガの間に挿入される。
【0130】
第2の電極20および40とそれらを接続する第2のトラック22、42に関しては、これらはともに同一の主トラック60を形成し、主トラック60は、伝播パスCに沿ってこのパスの両側を蛇行し、単一のフィンガを有する第1の電極10を交互に迂回し(第2の側72を通ることによって迂回する)、次に単一のフィンガを有する第1の電極30を交互に迂回し(第1の側を通過することによって迂回する)、以下同様に蛇行する。この主トラック60は、ここでは、このように伝播パスCに沿って蛇行する単体のストリップから形成される(第2の電極20および40のフィンガ21および41は2つずつひとまとめにされ、単一のフィンガ21/42が電極10を次の電極30から離隔させる)。このストリップは例えば一定した幅を有する。
【0131】
図11および
図12には、共振器120のフィンガの一部のみが示されている。実際には、共振器120はここに説明した他の共振器50;80;90;140と同様に、40本以上、さらには80本以上、またはさらには150本以上のフィンガの総数(反射器を含まない)を含む。多数のフィンガの総数の使用は、特に、電気機械デバイスの第1の端子と第2の端子との間の50オームに比較的近いインピーダンス(当然ながら共振周波数および反共振周波数の外側で)を得ることを可能にする。
【0132】
図13に、周波数f(ギガヘルツ単位)に応じた、デバイス12により提示される、その第1の接続端子75と第2の接続端子76との間のアドミタンスYを示す(ジーメンス単位で表す)。デジタルシミュレーションを介して得られた7つの電気共振曲線が示されている。曲線A7は、チューニングトランスデューサT
Tについて、第1の電極30を第2の電極40と短絡させることによって得られる(Z=0)。曲線A1は、1pFキャパシタをこれらの同じ電極の間に接続することによって得られ、曲線A3は4pFキャパシタを第1の電極30と第2の電極40の間に接続することによって得られる。
【0133】
図13でわかるように、板波共振器デバイス12は:
- 共振ピークの-3dBにおける幅の少なくとも10倍に等しい幅の、極めて広い同調性の範囲(約0.1GHzまたは平均共振周波数の14%)と、
- 極めて鋭い共振ピークと、
- 特によく離隔された反共振と共振と
を得ることを可能にする。
【0134】
第5および第6の実施形態(
図15および
図16にそれぞれ示す)では、いくつかの電極が電気機械デバイス14;16の支持体の第1の表面S1(上面)上に作られ、一方、他の電極がこの支持体の第2の表面S2(下面)上に作られる。これは、デバイス14;16の製造を(
図11および
図12のデバイス12に対して)複雑にし得るが、これは重なりの可能性を限定するため、電極間の接続を簡素化する。
【0135】
第5の実施形態(図14および図15)では、インターフェーシングトランスデューサT
Iの第2の電極20とチューニングトランスデューサT
Tの第2の電極40とが電気的に接触し、ともに同じ共通の電気接地を形成する。これらの電極20、40とそれらを接続する電気トラックとは、
図15でわかるように支持体200の第2の表面S2上に作られている。
図15は、支持体200に対して垂直な、伝播パスCを含む切断面に沿ったデバイス14の一部の図式的な断面図である。
【0136】
インターフェーシングトランスデューサT
Iの第1の電極10とチューニングトランスデューサT
Tの第1の電極30が、支持体の第1の表面S1上に作られる。
図14は、支持体200が見えない(言わば透明に示されている)デバイス14の上面図であることに留意されたい。したがって、この図では、いくつかのトラックまたはフィンガが交差しているように見えるが、実際には異なる表面上に作られているため、実際には交差していない。
【0137】
(単一のフィンガを有する)第1の電極10とそれらを互いに接続する第1のトラック12’とを含むアセンブリが櫛を形成し、(第4の実施形態と同様に)櫛の本体が伝播パスの第1の側71に位置する。また、(単一のフィンガを有する)第1の電極30とそれらを接続する第1のトラック32とを含むアセンブリが櫛を形成し、櫛の本体が伝播パスの第2の側72に位置する(これらの2つの櫛は、互いにかみ合っている)。
【0138】
すべての第2の電極20および40によって形成される接地トラックも、伝播パスの第1の側または第2の側(ここでは第2の側)に位置する主本体と、それぞれが(表面S1上の突起において)第1の電極10の1つと近隣の第1の電極30との間に延びるフィンガとを有する櫛を形成する。ここでは、第1の電極10の1つと、近隣の第1の電極30とを含むペアごとに、この接地トラックの単一のフィンガが問題とする第1の電極10と第1の電極30との間に挿入される。
【0139】
第6の実施形態では、
図16でわかるように、インターフェーシングトランスデューサT
Iが支持体200の第1の表面S1上に作られ、チューニングトランスデューサT
Tが支持体200の第2の表面S2上に作られる。
図16は、切断面が支持体に対して垂直(すなわち、表面S1およびS2に対して垂直)であり伝播パスCを含む、この第6の実施形態によるデバイス16の一部の断面図である。この第6の実施形態では、各電極10、20、30、40が単一のフィンガを含む(したがって各トランスデューサが合計2本のフィンガを含む)。
【0140】
インターフェーシングトランスデューサがともに、互いにかみ合い、実質的に全伝播パスにわたって延びる2つの長い櫛(一方は第1の電極のため、他方は第2の電極のため)を形成する。同様に、チューニングトランスデューサが全体として、互いにかみ合い、実質的に全伝播パスにわたって延びる2つの長い櫛を形成する。
【0141】
すでに示したように、各チューニングトランスデューサT
Tは、伝播パスの端部に位置する制御トランスデューサT
Tを除き、2つのインターフェーシングトランスデューサT
Iの間に挿入される。したがって、2つの表面S1、S2のうちの1つの上の突起において、問題とするチューニングトランスデューサT
Tは2つのインターフェーシングトランスデューサT
Iの間に位置する(言わば挿入されている)(
図16)。
【0142】
上述の電気機械デバイス5;8;9;12;14;16に対して異なる代替を作ることができる。
【0143】
具体的には、トランスデューサは提示されたものとは異なる数のフィンガを含んでもよい。
【0144】
1トランスデューサ当たりのフィンガの数は、具体的には各フィンガにおける弾性波の所望の反射率に応じて、および/または、共振器の一部のみに局在するモードに対応する寄生共振の存在に対し多かれ少なかれ耐性のある目的用途に応じて、選定することができる。
【0145】
例えば電極があまり厚くないために、各フィンガにおいて予期される反射率が低いとき、1トランスデューサ当たり比較的多数のフィンガを使用することができる。例えば、この反射率が5%未満の場合、10本より多い、1トランスデューサ当たりのフィンガの総数を選定することができる(ただし、この場合、より少ない本数も適切であり得る)。一方、問題とする反射率が例えば20%より大きい場合は、3本または4本以下の、1トランスデューサ当たりのフィンガの総数を選定するのが好ましいであろう。
【0146】
次に、目的用途に関して、例えば、共振周波数がフィルタの帯域の中央に位置するいわゆる直列共振器と、反共振周波数がこの同じ帯域の中心に位置する並列共振器とからなるフィルタの場合は、寄生共振(したがってフィルタの帯域内に収まる可能性がある)の存在が、並列共振器に対してよりも直列共振器に対してより悪影響があることになる。直列共振器の場合、1トランスデューサ当たりの低減されたフィンガの総数(例えば10本以下)を選定するのが好ましいであろう。
【符号の説明】
【0147】
1、5、8、9、12、14、16 電気機械デバイス
10、30 第1の電極
11、21、31、41 フィンガ
12’ 第1のトラック
17、27、37、47 トラック
20、40 第2の電極
21 周辺フィンガ
22 第2のトラック
32 第3のトラック
42 第4のトラック
50、80、90、120、140 共振器
71 第1の側
72 第2の側
75 第1の接続端子
76 第2の接続端子
77 第1の端子
78 第2の端子
79 電気デバイス
100、200 支持体
C 伝播パス
R1、R2 反射器
S、S1、S2 表面
TI インターフェーシングトランスデューサ
TT チューニングトランスデューサ
【外国語明細書】