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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067084
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】干渉源識別機能付きライダーシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20220422BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021170014
(22)【出願日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】10 2020 213 163.5
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・マリス・ギルベルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・リヒター
(72)【発明者】
【氏名】カール・クリストフ・ゲーデル
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン・ベル
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA10
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA38
5J084BA48
5J084BB20
5J084BB28
5J084CA03
5J084DA01
5J084EA20
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】干渉源識別機能付きライダーシステムを提供する。
【解決手段】特に車両用の干渉源識別機能付きライダーシステム(1)が記載されている。エミッタユニット(2)および検出器ユニットが設けられているため、周辺環境を走査するために反射光を検出することができる。エミッタユニット(2)から出射された光が窓(4)を透過してハウジングから出射され、周辺環境で反射された光が窓(4)を透過して前記ハウジング内へ入射する。窓の内部の干渉源は、従来技術では特定が難しい。本発明によれば、窓(4)の出力結合面(6)に取り付けられた少なくとも1つの二次検出器(5)が設けられている。二次検出器(5)は、窓(4)の内部を伝播する迷光を検出するように構成されている。ライダーシステム(1)は、少なくとも1つの二次検出器(5)によって検出された迷光(SL)を評価して、窓(4)の表面または内部の干渉源(7、8)を検出するように構成されている制御ユニットを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両用の干渉源識別機能付きライダーシステム(1)であって、
少なくとも1つの光源を含むエミッタユニット(2)と、
周辺環境を走査するために前記エミッタユニット(2)から出射された少なくとも1つの光ビーム(3)の反射光を検出して周辺物体を検知するように構成されている少なくとも1つの一次検出器を含む検出器ユニットと、
前記エミッタユニット(2)から出射された光を外部へ透過させ、周辺環境で反射された光を内部に透過させる1つの窓(4)を含むハウジングと
を備え、
前記ライダーシステム(1)は、前記窓(4)の出力結合面(6)に取り付けられた少なくとも1つの二次検出器(5)を有し、
前記二次検出器(5)は、前記窓(4)の内部を伝播する迷光を検出するように構成され、
前記ライダーシステム(1)は、前記少なくとも1つの二次検出器(5)によって検出された迷光(SL)を評価して、前記窓(4)の表面または前記窓(4)内部の干渉源(7、8)を検出するように構成されている制御ユニットを有する、
ことを特徴とするライダーシステム(1)。
【請求項2】
少なくとも部分的に旋回可能なビーム光学系(10)をさらに備え、
前記ビーム光学系(10)は、周辺環境を複数の異なる方向に走査するために、前記エミッタユニット(2)から出射された少なくとも1つの光ビーム(3)を偏向させ、周辺環境で反射された光を前記検出器ユニットに偏向させるように少なくとも構成され、
前記少なくとも1つの光ビーム(3)は、前記ビーム光学(10)系の偏向によって前記窓(4)の複数の異なる部分を透過し、
前記制御ユニットは、前記ビーム光学系(10)の瞬時の偏向位置と、前記二次検出器(5)によって検出された迷光(SL)の強度とを関連付けて、前記窓(4)の表面または前記窓(4)の内部の干渉源(7、8)の位置を計算するように構成されている、請求項1に記載のライダーシステム(1)。
【請求項3】
前記窓(4)の複数の異なる位置の出力結合面(6)に配置された少なくとも2つの二次検出器(5)を備え、
前記制御ユニットは、前記二次検出器(5)によって検出された迷光信号の差から、前記窓(4)の表面または前記窓(4)の内部の干渉源(7、8)の位置を計算するように構成されている、請求項1または2に記載のライダーシステム(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光源は、限られた波長域で出射し、特に近赤外で出射するレーザであり、
前記出力結合面(6)と前記少なくとも1つの二次検出器(5)との間に、少なくとも前記光源の波長域で透過性を有する波長フィルタ(9)、特にバンドパスフィルタが配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のライダーシステム(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの二次検出器(5)は、アバランシェフォトダイオード、単一光子アバランシェダイオード、ガリウムヒ素検出器、またはインジウムガリウムヒ素検出器である、請求項1から4のいずれか一項に記載のライダーシステム(1)。
【請求項6】
前記制御ユニットは、迷光測定の時間的にずれた複数の測定結果を保存するように構成されているデータベースを含み、
前記制御ユニットは、時間的にずれた複数の測定結果を比較することにより、一時的な干渉源(8)と恒久的な干渉源(7)とを識別するように構成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のライダーシステム(1)。
【請求項7】
前記窓(4)の少なくとも外側を洗浄して一時的な干渉源(8)を除去するように構成されている洗浄ユニットを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のライダーシステム(1)。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記洗浄ユニットによる窓の洗浄の完了後に干渉源測定を行い、その結果得られた測定結果を少なくとも事前に保存された最後の測定結果と比較して、一時的な干渉源(8)と恒久的な干渉源(7)とを識別するように構成されている、請求項6または7に記載のライダーシステム(1)。
【請求項9】
前記制御ユニットは、恒久的な干渉源(7)が識別されると、ユーザに前記恒久的な干渉源(7)の存在を知らせるエラーメッセージを出力するように構成されている、請求項6から8のいずれか一項に記載のライダーシステム(1)。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記検出された迷光の強度から、前記窓(4)の表面または前記窓(4)の内部の前記干渉源(7、8)のサイズおよび/または種類を計算するように構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のライダーシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉源識別機能付きライダー(LiDAR)システム、特に車両用のライダーシステムに関し、当該ライダーシステムは、少なくとも1つの光源を含むエミッタユニットと、周辺環境を走査するためにエミッタユニットから出射された少なくとも1つの光ビームの反射光を検出して周辺物体を検知するように構成されている少なくとも1つの一次検出器を含む検出器ユニットと、エミッタユニットから出射された光を外部へ透過させ、周辺環境で反射された光を内部に透過させる窓部を含むハウジングとを備えるものである。
【背景技術】
【0002】
ライダー(LiDAR:Light Detection And Ranging)システムは、光を出射して周辺環境で反射した光の一部を検知するように動作する。一般的に、エミッタおよび検出器ユニットは、窓(ガラスや他の光学的品質の高い素材で、追加のコーティングがある場合もない場合もある)によって周辺環境の影響から保護されている。この窓の表面や内部における、例えば傷や汚れ、水滴などの干渉源が光路に干渉して信号品質を劣化させる場合がある。本来、この劣化は、信号対雑音比に影響を与える外部要因(太陽光や反射率の低い周辺物体など)とは容易に区別できない。窓は、例えば、ガラスやプラスチックの板で、少なくとも(近)赤外線に対して略透明であることが好ましい。
【0003】
窓は、信号光が2回透過する屈折光学素子である。1回が周辺環境に出射されるときで、別の1回が検出器ユニットに戻ってくるときである。乾燥した滑らかな表面では、略全ての光子が窓を透過するか、またはセンサ内部に反射して戻る。しかし、窓の表面または窓の内部の干渉源は、局所的に窓の透過性を低下させたり、遮蔽したりするため、ライダーシステムの機能に甚だしく干渉する可能性がある。
【0004】
従来技術では、例えば視野内の到達範囲減少をソフトウェアベースで推定することが利用されているが、これではクラッタの遅い識別しかできない(数分またはそれ以上の範囲での遅延を伴う)。しかし、レベル4や5の高度な自動運転車両では、センサ使用の変化に迅速に応答するために、数秒以内の範囲での識別が必要である。
【0005】
米国特許出願公開第2018/0143298号によれば、そのようなソフトウェアベースの比較解決法を提案するライダーシステムが知られている。複数のセンサを使用して、車両の周辺環境の一部を監視する。複数のセンサの出力を比較して、センサのうちの1つが遮蔽されているかどうかを判断する。この判断は、あるセンサの出力と別のセンサの出力とを比較したり、あるセンサの出力が所定の閾値内にあるかどうかを判断したり、複数のセンサの出力の特性を互いに比較したりすることで実行可能なものである。センサが遮蔽されていると判断される場合、システムは洗浄システムに指令を送信して、遮蔽物を自動的に取り除くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0143298号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記解決法は、複数のセンサの測定値を直接比較して干渉源の高速識別を可能にするため、周辺環境が画一化されているか、少なくとも車両が静止状態であることを要する。走行中は、周辺環境が常に変化するため直接比較することは難しく、例えばセンサデータの経時的な平均を比較することなどによって干渉源を識別するためには、通常、長時間の測定が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による上記の如きライダーシステムは、窓の出力結合面に取り付けられた少なくとも1つの二次検出器を備え、二次検出器は、窓の内部を伝播する迷光を検出するように構成され、ライダーシステムは、少なくとも1つの二次検出器によって検出された迷光を評価して、窓の表面または窓の内部の干渉源を検出するように構成されている制御ユニットを含む、冒頭に述べた種類のライダーシステムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
窓の表面の凹凸や水滴、汚れによって、光が複数の方向に散乱したり、意図しない方向に反射したりする場合がある。傷(すなわち、窓の光学材の内部で散乱が発生する)や水滴(水と空気との界面での反射により、広い角度範囲で素材への逆反射が生じる)の場合、光の一部は、窓の(局所的な)表面に対して相対的に、内部全反射の角度よりも小さい角度を有する場合がある。そのような恒久的な干渉源(例えば傷やひび割れ)や一時的な干渉源(例えば水滴や汚れ)によって発生した迷光の一部は、窓の内部から主透過方向に対して横方向に伝播し、(その一部は1つまたは複数の内部全反射の後に)窓の外側端部に到達する。ここで、主透過方向とは、出射された信号光が略透過する窓面に対して(局所的に)垂直な方向を意味する。
【0010】
このとき、そのような光の一部は、いわば導波路として機能する窓の内部に留まり、出力結合面で窓から出射される。窓の出力結合面に取り付けられた検出器は、窓の内部を伝播する迷光を検出するように構成されている。すなわち、従来技術とは異なり、二次検出器は、窓の内部で主透過方向に対して略垂直に伝播する光のみを検出するように構成されている。これにより、二次検出器は、窓を透過する主透過方向に配置された場合よりも、周辺環境から反射されて戻ってくる有用な光に対する迷光の多くの割合を検出することができる。そして、制御ユニットは、二次検出器によって検出された迷光を評価して、窓の表面または窓の内部の干渉源を検出する。
【0011】
ここで、「窓の出力結合面に取り付けられている」という用語は、少なくとも1つの二次検出器が、好ましくは窓の側面または側端に取り付けられていることであると理解できる。しかし、出力結合面は、窓を透過する主透過方向に対して窓の外側に配置され、窓の側面または側端に隣接してもよい。後者の場合、二次検出器が、出射されたレーザ光が及ぶ窓の領域外にあれば、同様に実質的に迷光のみが二次検出器に到達する。
【0012】
すなわち、出力結合面自体は、例えば窓の側端や窓の外側の辺縁に配置されてもよい。出力結合面は、窓の粗面化された表面としてもよい。二次検出器は、窓の表面に直接接触して配置されていてもよいし、窓の材料に合わせた屈折率を有する材料を介在させて光入力を行ってもよい。
【0013】
窓は、例えば平らな直方体形状を有し、少なくとも1つの二次検出器は出力結合面に取り付けられ、または、複数の二次検出器が複数の出力結合面に取り付けられている。しかし、窓は薄い円筒状シェルの形状を有してもよく(図3も参照)、少なくとも1つの二次検出器は、極方向に対して垂直に延在する(円筒座標においてr-z面に平行な)出力結合面に取り付けられていることが好ましい。後者の解決法は、例えば回転ミラーを使用して、大きな角度範囲をカバーするライダーシステムに好ましい解決法である。第1の解決法は、ライダーシステムが限られた角度範囲のみをカバーする場合には、例えば、車両の他の近距離検出器と相互作用する、より感度の高い長距離検出器として好まれる場合がある。
【0014】
窓の出力結合面における少なくとも1つの二次検出器に到達する迷光には、いくつかの源がある。窓には、外部(太陽光、人工光)からも、内部(ライダーシステムの光源)からも入射し得る。「迷光」という用語は、本願では、窓の内部または窓の表面にある干渉源によって偏向/反射/屈折された全ての光、すなわち、例えば水滴によって反射された光であると理解できる。外光は、基本的に干渉源を検出するために使用することができるが、内部光源を使用することで複数の利点が生じ、これについては以下の実施形態で詳述する。
【0015】
二次検出器を使用することにより、本発明に係るライダーシステムは、ライダーシステムが動作中であっても、すなわち、例えば、ライダーシステムを搭載した車両の走行状況においても、より効果的かつ迅速に干渉源を検出することができる。また、干渉源の識別には、主に内部光源からの迷光を使用することができ、周辺環境からの反射光やその他の外光を必要としないため、干渉源の識別は従来技術よりも特に周辺環境依存性が低い。
【0016】
制御ユニットは、設定された、または後に適応的に調整された迷光の最小強度に達すると、干渉源が識別されるように設定することができる。これにより、例えば、窓の表面の極めて軽い汚れ、一時的な強い外部光源、または反射率の高い周辺物体など、それぞれが窓の内部の迷光を(部分的に、一時的に)増加させ得る場合でも、問題のある干渉源として識別されず、例えば、エラー警報を引き起こすことがないという利点がある。
【0017】
一実施形態では、ライダーシステムは、少なくとも部分的に旋回可能なビーム光学系を備え、このビーム光学系は、周辺環境を複数の異なる方向に走査するために、エミッタユニットから出射された少なくとも1つの光ビームを偏向させ、周辺環境で反射された光を検出器ユニットに偏向させるように少なくとも構成され、少なくとも1つの光ビームは、ビーム光学系の偏向によって窓における複数の異なる部分を透過し、制御ユニットは、ビーム光学系の瞬時の偏向位置と、二次検出器によって検出された迷光の強度とを関連付けて窓の表面または窓の内部の干渉源の位置を計算するように構成されている。ライダーシステムでは、角度ごとにライダーセンサの個別のエミッタおよび検出器を用意するよりも、ライダーセンサ自体やビーム光学系の素子を旋回/回転させて障害物周辺を走査する方が、通常ははるかに経済的でありコストもも小さい。ここで、周辺環境の走査は、光信号の出射から検出までの時間差を測定して周辺物体までの距離を検出する伝播時間(Time-of-Flight、ToF)方式を用いて行われることが多い。この実施形態では、制御ユニットは、少なくとも、(光ビームの旋回方向に沿った)干渉源の一次元の位置決定を行うように構成されている。干渉源の位置を可能な限り正確に決定するために、制御ユニットは、迷光の予想強度に対するビーム光学系の偏向位置の状態に関して較正されることが好ましい。例えば、干渉源が二次検出器に比較的近い場合、その干渉源では、同じ干渉源がより遠くにある場合よりも高い強度が予想され、したがって、純粋に幾何学形状的に、および迷光の多重反射により、二次検出器に到達する迷光が少なくなる。
【0018】
好ましくは、ライダーシステムは、窓の複数の異なる位置の出力結合面に配置された少なくとも2つの二次検出器を備え、制御ユニットは、それら二次検出器によって検出された迷光信号の強度差から、窓の表面または窓の内部の干渉源の位置を計算するように構成されている。2つ以上の二次検出器が1つまたは複数の出力結合面に沿った異なる位置に配置されている場合、干渉源がそれぞれの二次検出器に近いほど、高い迷光強度が予想される。そして、制御ユニットは、二次検出器の異なる強度信号から干渉源の(一次元または二次元の)位置を計算するように構成されていてもよい。しかし、窓の表面に同時に複数の干渉源(例えば多数の雨粒)がある場合、迷光の強度だけの比較によって位置決定することはかなり難しく、不可能である。けれども、前述の実施形態のように、ライダーシステムが少なくとも部分的に旋回可能なビーム光学系を有する場合は、光ビームの偏向角との関連付けにより、いかなる場合でも干渉源の少なくとも一次元の位置決定が可能である。
【0019】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの光源は、限られた波長域で出射し、特に光源は近赤外で出射するレーザであり、出力結合面と少なくとも1つの二次検出器との間に、少なくとも光源の波長域で透過性を有する波長フィルタ、特にバンドパスフィルタが配置されている。この実施形態では、窓の表面または窓の内部の干渉源に起因しない外光(例えば太陽光、外部光源など)の影響を低減し、したがってライダーシステムによる干渉源の識別をより正確に行うことができる。バンドパスフィルタについては、その中心波長(例えば、光源の波長)の半値幅が好ましくは50nm以下であり、より好ましくは25nm以下であり、特に好ましくは15nm以下である。ここでいう近赤外とは、780nmから3μmまでの波長域であると理解できる。
【0020】
すなわち、屋外の光と屋内の光とを識別するには、2つの基準を用いることができる。1つは光の波長である。二次検出器の前にライダーシステムの波長で高い透過率を有するバンドパスフィルタを設置すると、主にライダーシステムが出射する光を透過させることができる。他方はタイミング(伝播時間計測に基づくライダーシステムの場合)であり、出射された光パルスがいつ窓に到着し、その持続時間がどれくらいかを知ることができるためである。
【0021】
少なくとも1つの二次検出器は、アバランシェフォトダイオード、単一光子アバランシェダイオード、ガリウムヒ素検出器、またはインジウムガリウムヒ素検出器であることが好ましい。この種類の検出器の感度は高いため、迷光の少ない小さい干渉源でも識別が容易である。また、特にコストを低く抑えたい場合や、光源の光強度が十分に高いため、干渉源から十分な迷光も発生するような場合には、通常のフォトダイオードを使用することもできる。特に光源が、特に短波長の赤外線レーザよりも目の安全性が高い波長1550nmのレーザである場合は、ガリウムヒ素検出器やインジウムガリウムヒ素検出器が特に適している。
【0022】
一実施形態では、制御ユニットは、迷光測定での時間的にずれた複数の測定結果を保存するように構成されているデータベースを含み、制御ユニットは、時間的にずれた複数の測定結果を比較することにより、一時的な干渉源と恒久的な干渉源とを識別するように構成されている。例えば、ライダーシステムの再起動後に、干渉源の新たな測定を行い、以前に保存された最後の測定値と比較して、以前に判断された干渉源が(例えば、窓についた雨粒がその間に蒸発したため)消滅したかどうかを判断することができる。
【0023】
好ましくは、ライダーシステムは、窓の少なくとも外側を洗浄して、一時的な干渉源を除去するように構成された洗浄ユニットを備える。洗浄ユニットは、例えば、洗浄液を窓に塗布することができる液体ノズルを含んでいてもよい。洗浄ユニットは、ワイパーのような1つまたは複数の機械的な洗浄手段を含んでいてもよい。制御ユニットは、所定量の(場合によってはビーム光学系の偏向角に依存する)迷光が二次検出器によって検出されるときに、洗浄ユニットを起動するように構成されていてもよい。代替的に、また追加的に、制御ユニットは、ユーザ(例えば車両の運転手)がボタンや音声指令などで洗浄を開始できるように、ユーザに警告信号を発してもよい。
【0024】
一実施形態では、制御ユニットは、洗浄ユニットによる窓の洗浄の完了後に干渉源測定を行い、その結果得られた測定結果を少なくとも事前に保存された最後の測定結果と比較して、一時的な干渉源と恒久的な干渉源とを識別するように構成されている。洗浄後に干渉源がなくなった場合、制御ユニットは、一時的な干渉源(例えば汚れや水滴)を推定することができる。
【0025】
さらなる実施形態では、制御ユニットは、恒久的な干渉源が識別されると、ユーザに恒久的な干渉源の存在を知らせるエラーメッセージを出力するように構成されている。洗浄後も干渉源が残っている場合、制御ユニットは、洗浄ユニットによる新たな洗浄を開始するか、または窓の損傷の可能性があることを(例えば、視覚的および/または音響的な警告信号を介して)ユーザに知らせることができる。
【0026】
好ましくは、制御ユニットは、検出された迷光の強度から、窓の表面または窓の内部の干渉源のサイズおよび/または種類を計算するように構成されている。二次検出器で測定される迷光の強度は、干渉源から二次検出器までの距離だけでなく、干渉源の大きさ(および種類)にも依存する。(ライダーシステムが少なくとも部分的に旋回可能なビーム光学系を有している場合、および/または複数の二次検出器を含む場合に)干渉源までの距離が計算できる場合、制御ユニットは、迷光の強度から干渉源のサイズ(場合によっては種類)を計算することができる。前述のように、ライダーシステムが表面の水を除去する洗浄ユニットを有する場合、水滴と表面の欠陥とを識別することができる。窓が乾燥した直後に残った迷光は、表面の欠陥に起因する可能性が高い。表面の欠陥は二次検出器での繰り返し信号の原因となるが、一方で水/汚れの影響は時間とともに変化する(例えば雨やしぶきによって液滴が蓄積する、液滴が表面上で移動する、液滴が乾燥する、洗浄ユニットで水/汚れが除去される)。
【0027】
本発明の有利な改善構成は従属請求項に記載され、本明細書で説明されている。
【0028】
本発明の実施例を、図面と以下の説明を参照して詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】窓の表面または窓の内部に干渉源がない場合の、本発明に係るライダーシステムの第1の実施形態を示す図である。
図2】窓の表面および窓の内部に干渉源がある場合の第1の実施形態を示す図である。
図3】窓の内部に干渉源がある場合の、本発明に係るライダーシステムの第2の実施形態を示す図である。
図4】窓の表面および窓の内部に干渉源がある場合の、本発明に係るライダーシステムの第3の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1および図2は、特に車両用の、本発明に係る干渉源識別機能付きライダー(LiDAR)システム1の第1の実施形態を示す。エミッタユニット2は、少なくとも1つの光源(例えばレーザ)を含む。また、ライダーシステム1は、周辺環境を走査するために、エミッタユニット2から出射された少なくとも1つの光ビーム3の反射光を検出して周辺物体を検知するように構成されている、少なくとも1つの一次検出器を含む検出器ユニット(図示せず)を備えている。ハウジングは、エミッタユニットから出射された光を外部へ透過させ、周辺領域で反射された光を内部に透過させる1つの窓4を含む。
【0031】
ライダーシステム1は、窓4の出力結合面(側端)6に取り付けられた少なくとも1つの二次検出器5を含む。二次検出器5は、窓4の内部を伝播する迷光SLを検出するように構成されている。図1とは異なり、図2では、窓4の表面および内部に干渉源7、8があり、これら干渉源7、8がそれぞれ迷光SLを発生させている状況を示す。迷光SLの一部は、図に示すように、例えば内部での全反射によって二次検出器5に到達する。
【0032】
ライダーシステム1は、少なくとも1つの二次検出器5によって検出された迷光SLを評価して、窓4の表面または窓4の内部の干渉源7,8を検出するように構成されている制御ユニット(図示せず)をさらに含む。干渉源7は、窓4の表面の傷やひび割れであり、一方、干渉源8は水滴、すなわち一時的な干渉源である。
【0033】
少なくとも1つの光源は、限られた波長域で出射するもの、好ましくはレーザ、例えば近赤外で放射するものであり、これにより、ライダーシステムが実質的に有利であることが分かっている。出力結合面(側端)6と少なくとも1つの二次検出器5との間には、少なくとも光源の波長域で透過性を有する波長フィルタ9、例えばバンドパスフィルタが配置されている。
【0034】
図1および図2には、例えば直方体形状となり得るプラナー型の(planar)窓4が示されているが、例えば円柱や楕円柱のような他のプラナー形状も想定可能であり、二次検出器5はそれぞれ、光ビーム3の透過方向に対して垂直に伝播する迷光を検出できるように、出射面(短い側端)6(ここでは光ビーム3の透過方向に平行)に沿って配置されている。
【0035】
図3は、本発明に係るライダーシステム1の第2の実施形態を平面図で示しており、対応する構成要素には同じ参照符号が付されている。ここでは、窓4は例示的に半円筒状シェルの形状を有し、ライダーシステム1は、周辺環境における180°よりもやや小さな範囲を走査する。しかし、より大きな、またはより小さな角度範囲も考えられ、窓4はそれに応じてより大きな、またはより小さな極角範囲を占めてもよい。
【0036】
ライダーシステム1は、ここでは、周辺環境を走査するために、エミッタユニット(ここでは図示せず、例えば、ビーム光学系10の図示された回転ミラーの下方または上方の面内に配置されている)から出射された少なくとも1つの光ビーム3を複数の異なる方向に偏向させ、周辺環境で反射された光を検出器ユニットに偏向させるように少なくとも構成されている旋回可能なビーム光学系10を備えている。少なくとも1つの光ビーム3は、ビーム光学系10における偏向によって、異なる時点t=t,t,t,t,tで、窓4における複数の異なる部分を透過する。制御ユニットは、ビーム光学系10における瞬時の偏向位置と、二次検出器5で検出された迷光SLの強度とを関連付けて、窓4の表面または窓の内部の干渉源7の位置を計算するように構成されている。したがって、時点t=t付近で、二次検出器5は、他の時点t=t,t,t,tでは測定できない迷光SLの強度の増加とその後の減少を検出する。このことから、制御ユニットは、時点t=tにおいて、ビーム光学系10の回転角に対応する窓4の部分に干渉源7が存在すると推定することができる。そして、迷光SLの強度から、制御ユニットは、干渉源の大きさをさらに計算することもできる(迷光SLの強度の、干渉源7と二次検出器5との間の距離への依存性を考慮する)。
【0037】
図4は、第1の実施形態と同様の、本発明に係るライダーシステム1の第3の実施形態を平面図で示しており、対応する構成要素には同じ参照符号が付されている。ただし、図1および図2とは対照的に、出力結合面6は、ここでは窓を透過する主透過方向に対して窓4の外側に配置され、窓4の側面または側端に隣接して配置されている。ここでも、二次検出器は(図示のように)、出射された光ビーム3が及ぶ窓4の領域の外側にあるため、二次検出器5は窓4の主透過方向に対して配置されているものの、二次検出器5には実質的に迷光のみが到達する。
【0038】
以上、本発明を好ましい実施例によって詳細に図示し、説明したが、本発明は開示された実施例によって限定されるものではなく、当業者であれば本発明の保護範囲を逸脱することなく、そこから他の変形例を導き出すことができる。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】