(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067134
(43)【公開日】2022-05-02
(54)【発明の名称】草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/43 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
A01D34/43
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037670
(22)【出願日】2022-03-11
(62)【分割の表示】P 2021026472の分割
【原出願日】2016-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】長畑 友之
(57)【要約】
【課題】アーム連結型草刈り機において、草刈り作業時の草刈作業部やアームが障害物に衝突したときに、トラクタや草刈機がダメージを受けにくい構成のアーム連結型草刈機を提供する。
【解決手段】主フレーム2に対するマストフレーム22の回動を固定するストッパ手段6が設けられていて、ストッパ手段6は、マストフレーム22の回動方向に一定以上の回動力が作用すると、固定が解除されてマストフレーム22が回動自在となる保護装置であり、ストッパ手段6の固定が解除される前に、設定した回動力以上の回動力が作用すると草刈作業部4を上昇させ、回動力が一定以下になると上昇を停止させることを特徴とした草刈機による。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主フレームに対し前後方向に回動可能なマストフレームと、
前記マストフレームに一端を回動中心にして他端を回動可能に設けたアーム部と、
前記アーム部の他端先端部に設けた草刈作業部と、
前記主フレームは前記マストフレームの前記主フレームに対する回動を固定するストッパ手段と、を備え、
前記ストッパ手段は、前記主フレーム又は前記マストフレームの一方に設けられた一端側を支点に他端を回動可能に設けるとともに、前記主フレーム又は前記マストフレームの他方に設けた係合受部と係合する係合部を設けた可動フックと、を備え、
前記主フレームに対する前記マストフレームの回動方向の回動力が一定以上になると、前記可動フックが回動して前記係合部と前記係合受部の係合が解除され、前記マストフレームの回動方向の固定が解除されるように構成され、
前記ストッパ手段は前記可動フックの回動を検知したことによって信号を発することが可能な検知手段と、
を備えることを特徴とした草刈機。
【請求項2】
前記可動フックは前記係合部を前記係合受部に向けて押圧するとともに、前記押圧の押圧力を調整できる弾性部材と、
を備えることを特徴とした請求項1に記載の草刈機。
【請求項3】
前記アーム部は昇降を自由状態に切り換え可能にする切換バルブと、
前記切換バルブは前記切換バルブを切換えるための切換バルブ切換スイッチと、を備え、
前記アーム部は前記切換バルブ切換スイッチが押されているときのみに動作する構成であることを含む、
ことを特徴とした請求項1又は2に記載の草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの3点リンク機構等に装着されて草刈り作業を行うアーム連結型農業用草刈機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の刈取り装置の従来技術として特許第3806465号公報の「作業車両用の作業装置」や、特許第5512151号公報の「アーム連結型草刈機」が開示されている。
【0003】
特許第3806465号公報には、「第1アーム(11)の先端寄り部に第2アーム(12)の上部を車幅方向(W)へ回動可能に支持し、上記の第2アーム(12)の下部に第3アーム(13)を上記の車体(2)の前後方向に回動可能に支持し、上記の第3アーム(13)の下部に作業機(30)を上記の車幅方向(W)へ回動可能に支持し、・・・・・第3アーム(13)を車幅方向(W)へも回動可能に支持した作業装置」であり、第1アーム(11)を支持するブラケット(10)は、枢支ピン(14)の回りに水平旋回可能に支持されていて、位置決め孔(16)のいずれかにピン(17)を差し込んで回動を固定する作業装置の開示がされている。また、特許第5512151号公報には、「支持部材の車幅方向一端部に枢支された第1アームと、第1アームに回動可能に連結され、先端に草刈機本体を装着した第2アームとを備えるアーム連結型草刈機において、リフトシリンダと第1リンクと第2リンクによって、草刈機本体を草刈り作業状態と格納状態とに容易に切り替えることができるアーム連結型草刈機」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3806465号公報
【特許文献2】特許第5512151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラクタに装着されて使用されるアーム連結型草刈機の場合、草刈作業部をトラクタの側方に大きくオフセットさせて作業が行われる。作業時においては、トラクタと草刈作業部とを連結するアームが障害物等に不用意に衝突することや、草刈作業部が草に隠れた障害物に衝突することが少なくない。衝突すると衝撃により草刈機やトラクタにダメージを与えことになり、故障や破損の原因となる問題があった。また、衝突すると、アームが長いためトラクタが振られて転倒や走路からの逸脱等が発生して安全に問題があった。
【0006】
従来技術の特許文献1や、特許文献2に示される作業装置や草刈機は、作業時のアームの回動は固定されていて、前記のような問題の解決には至っていない構成である。
【0007】
このため本発明の目的は、アーム連結型草刈り機において、草刈り作業時の草刈作業部やアームが障害物に衝突したときに、トラクタや草刈機がダメージを受けにくい構成のアーム連結型草刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の態様は、主フレームに対し前後方向に回動可能なマストフレームと、マストフレームに一端を回動中心にして他端を回動可能に設けたアーム部と、アーム部の他端先端部に設けた草刈作業部と、主フレームはマストフレームの主フレームに対する回動を固定するストッパ手段と、を備え、ストッパ手段は、主フレーム又はマストフレームの一方に設けられた一端側を支点に他端を回動可能に設けるとともに、主フレーム又はマストフレームの他方に設けた係合受部と係合する係合部を設けた可動フックと、を備え、主フレームに対するマストフレームの回動方向の回動力が一定以上になると、可動フックが回動して係合部と係合受部の係合が解除され、マストフレームの回動方向の固定が解除されるように構成され、ストッパ手段は可動フックの回動を検知したことによって信号を発することが可能な検知手段と、を備える草刈機であることを要旨とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、可動フックは係合部を前記係合受部に向けて押圧するとともに、押圧の押圧力を調整できる弾性部材と、を備えてもよい。また、アーム部は昇降を自由状態に切り換え可能にする切換バルブと、切換バルブは切換バルブを切換えるための切換バルブ切換スイッチと、を備え、アーム部は切換バルブ切換スイッチが押されているときのみに動作する構成を含んでもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、第1ブームと草刈作業部を設けた第2ブームがマストフレームに設けられていて、マストフレームがトラクタに装着された主フレームに対し前後方向に回動が可能であり、一定以上の回動力が作用すると固定が解除されるストッパ手段により回動が固定されている構成によって、ブームや草刈作業部が不用意に障害物等に衝突したときに、ストッパ手段が外れてマストフレームが後方に回動することにより、草刈機への衝撃を吸収して草刈機を保護するとともに、装着しているトラクタへの衝撃を吸収する。また、ストッパ手段の固定が解除される前に、設定した回動力以上の回動力が作用すると草刈作業部を上昇させることによって、草刈作業部への障害物や凹凸部圃場面からの受ける抵抗をストッパ手段が外れる前に軽減するため、ストッパ手段が外れた後の再復帰作業を行なう必要がなく、効率よく作業が行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を実施した草刈機の作業状態の平面図である。
【
図2】本発明を実施した草刈機のストッパ手段が外れた状態の平面図である。
【
図4】主フレームに対するマストフレームの回動支点部の断面した側面図である。
【
図5】本発明を実施した草刈機のストッパ手段が外れる過程を示した説明図である。
【
図8】本発明を実施した草刈機の油圧回路図である。
【
図9】本発明を実施した草刈機の操作部の斜視図である。
【
図10】本発明を実施した草刈機のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施の一形態に係る実施例を、図面に基づいて説明する。
Aは、本発明の実施例に係る草刈機である。1は、草刈機Aを装着して駆動する農業用トラクタである。本例の説明においては、
図1に示す左側を進行方向の前方側、右側を後方側として説明する。
【0013】
本例に示す草刈機Aは、トラクタ1の後方に設けたトラクタ3点リンク機構12に装着され、トラクタ1からの動力により駆動され使用されるものである。10は、トラクタトップリンク、11,11はトラクタロアリンクである。それぞれ農業用トラクタ1後部に設けられ、トップリンク10、ロアリンク11,11でトラクタの3点リンク機構を構成していて、装着された草刈機Aを昇降可能に連結して牽引する。
【0014】
本例の草刈機Aは、トラクタ1に装着する装着部20を前方に設けた主フレーム2の中央付近に、縦方向の回動中心軸23を設け、回動中心軸23を中心に前後方向に回動自在に設けたマストフレーム22を備え、マストフレーム22にアーム部3を設け、アーム部3の先端部に草刈作業部4を設けている。アーム部3は、マストフレーム22に一端を進行方向と直交する方向に回動自在に設けた第1ブーム30と、第1ブーム30の回動端側に一端を回動自在に連結された第2ブーム32からなり、トラクタ1の側方に草刈作業部4を位置させて草刈作業を行う。
【0015】
主フレーム2は、農業用トラクタ1後部に連結され、草刈機Aの車幅方向の一端に油圧オイルタンク50が載置される。他端側に位置する22はマストフレームである。マストフレーム22は、一端側を主フレーム2の左右中央部に縦方向の回動中心軸23により回動自在に保持されていて、この実施例では
図1に図示されるように、草刈機A後面視左端に位置している。300は、リフトシリンダである。リフトシリンダ300は、基部がリフトシリンダ軸301で回動自在にマストフレーム22に取り付けられる。リフトシリンダ300の先端側は第1ブーム30の先端側に連結されている。リフトシリンダ300の先端部はリフトシリンダ先端軸302によって連結される。
【0016】
リフトシリンダ300を伸縮すると、第1ブーム30がマストフレーム22側の第1ブーム回動軸303を中心に上下に回動する。
【0017】
第2ブーム32は、本例においては、第1ブーム30に連結され進行方向左右方向に回動する側方回動アーム320と、側方回動アーム320に一端を連結され進行方向前後方向に回動する前後方向回動アーム321とで構成されていて、前後方向回動アーム321の回動端側に前後方向回動自在に連結された草刈作業部保持アーム326を介して草刈作業部4が設けられている。前後方向回動アーム321を回動させることにより、草刈作業部4をトラクタ1に対し前後に移動させることが可能である。
【0018】
側方回動アーム320と第1ブーム30端部は、前後方向に設けられる第2ブーム回動軸324により連結される。第2ブーム回動シリンダ322の伸縮に応じて側方回動アーム320は、第2ブーム回動軸324を回動中心として上下方向即ち車幅方向に回動する。
第2ブーム回動シリンダ322は、基部が第1ブーム30のマストフレーム22寄りに取り付けられる。第2ブーム回動シリンダ322先端部は、側方回動アーム320の第2ブーム回動軸324よりも第1ブーム30側に延設された位置に設けられた第2ブーム回動シリンダ先端軸327に連結されている。第1ブーム30と側方回動アーム320はそれぞれ上下方向に回動自在である。
【0019】
前後方向回動アーム321は、中空円筒状の金属製角パイプからなる。323は、第2ブーム前後方向回動シリンダである。第2ブーム前後方向回動シリンダ323の基部は側方回動アーム320に取り付けられる。第2ブーム前後方向回動シリンダ323の先端は、前後方向回動アーム321の略中央部に取り付けられる。前後方向回動アーム321は側方回動アーム320に対し前後方向すなわち、進行方向あるいは後退方向に回動自在である。
【0020】
側方回動アーム320は、第1ブーム30に対して前後方向回動アーム321を、回動方向が90度異なる上下方向及び前後方向に回動するように、第1ブーム30と前後方向回動アーム321とを連結する。前後方向回動アーム321は、側方回動アーム320と反対側の一端に連結された草刈作業部保持アーム326を介して、先端に草刈作業部4を連結する。第2ブーム回動シリンダ322及び第2ブーム前後方向回動シリンダ323の伸縮に応じて前後方向回動アーム321は、第2ブーム回動軸324と側方回動アーム320に設けた回動支点軸325を回動中心として上下方向と前後方向すなわち、車幅方向と進行方向あるいは後退方向に回動する。
【0021】
前後方向回動アーム321は、前後方向回動アーム321と草刈作業部保持アーム326を介して草刈作業部4とを連結する。前後方向回動アーム321と草刈作業部保持アーム326は前後方向すなわち、進行方向あるいは後退方向に回動支点328を回動中心として回動自在である。
【0022】
334は、草刈作業部回動シリンダである。草刈作業部回動シリンダ334は、草刈作業部保持アーム326に対し草刈作業部4を前後方向の草刈作業部回動軸337を回動中心として上下方向に回動させる。
【0023】
33は、草刈作業部リンク機構である。草刈作業部リンク機構33は、草刈作業部保持アーム326側に一端を回動自在に連結された第1リンクアーム330と、一端を回動自在に草刈作業部4側に連結された第2リンクアーム331とが回動自在に連結され、第2リンクアーム331と草刈作業部保持アーム326側とに架け渡され回動自在に連結された草刈作業部回動シリンダ334で構成されている。
【0024】
第1リンクアーム330は半円形ほどのリング状からなり、第2リンクアーム331も全体として略半円形ほどのリング状からなり、第1リンクアーム330と第2リンクアーム331は取付軸332で連結される。第1リンクアーム330は、取付軸333で草刈作業部保持アーム326に連結される。第2リンクアーム331と草刈作業部4は、取付軸335で草刈作業部4に連結される。前後方向の草刈作業部回動軸337を回動中心として草刈作業部4は回動可能に連結される。そのため、草刈作業部4は草刈作業部保持アーム326に対し上下方向に回動自在である。
【0025】
第2リンクアーム331と、草刈作業部回動シリンダ334は、第1リンクアーム330と第2リンクアーム331との連結軸332よりも、草刈作業部4側の取付軸335から離れた位置の取付軸336で回動自在に連結される。第1リンクアーム330と第2リンクアーム331とで略円形リング状からなる。そのため、移動量が大きくなり、全体としての回動量を大きくすることが可能となる。
【0026】
前後方向回動アーム321の中空円筒状の金属製角パイプ内には、側方回動アーム320と草刈作業部保持アーム326とを回動自在に連結するロッド(図示せず)が設けられていて、前後方向回動アーム321とで平行リンクが構成されている。このため、前後方向回動アーム321が前後方向に回動した場合においても草刈作業部保持アーム326が進行方向に対し直交した状態を維持するように構成されている。従って、草刈作業部4も直交した状態を維持する。
【0027】
草刈作業部4は、進行方向と直交する方向の草刈作業部回転軸40に、草刈刃41が多数突設させて取り付けられる。草刈作業部4の上方は回転する草刈刃41からの飛散を防ぐ保護カバーが設けられている。42はゲージローラで、草刈作業部回転軸40の後方に位置して水平方向の回転軸を有していて、作業時は圃場面に接地して刈り高さを安定させる。43は油圧モータである。油圧モータ43は、油圧ポンプ51で発生した油圧により回転して、草刈刃41を取付けた草刈作業部回転軸40を回転駆動させる。
【0028】
草刈機Aの各油圧作動部は、主フレーム2の前方部中央に設けられ、トラクタ1からの動力で回転駆動される油圧ポンプ51から発生される油圧によって作動する。トラクタ1からの動力は、油圧ポンプ51の前方に突設して設けた入力軸21とトラクタ1のPTO軸(図示せず)とをユニバーサルジョイント等で連結して入力される。主フレーム2の
図3に示す右側には油圧オイルタンク50が設けられ、各油圧作動部に配管されて使用されるオイルが貯留されている。また、各油圧作動部への配管の切換を行う油圧操作バルブ(図示せず)は油圧オイルタンク50の中央側側方部のカバー内に設けられている。油圧操作バルブは電動で作動する電動バルブが採用されていて、トラクタ1内の運転席近傍に設けられた電動操作レバー7によって操作される。各油圧作動部は油圧ホース等(図示せず)で配管されている。
【0029】
図8は、本発明の草刈機Aの油圧回路図である。油圧の発生源である油圧ポンプ51は、トラクタ1からの動力によって回転され油圧を発生させる。本例において油圧ポンプ51は、草刈作業部4を回転させるための油圧系統と、各油圧シリンダを操作するための油圧系統との2系統に分かれて設けられている。草刈作業部4を回転させるための油圧モータ43は、油圧ポンプ51から草刈刃回転操作バルブ524を通って配管されている。草刈刃回転操作バルブ524は、電動で作動する電磁バルブとなっていて、油圧モータ43の回転方向を正逆に切り替えるポートとニュートラルポートが備えられている。ニュートラル時は、油圧モータ43の正逆回転回路と油圧オイルタンク50へ通ずるドレーン回路が連通した状態となり、正逆回転切替時や停止操作時の油圧モータ43からの惰性回転による逆油圧発生を防止する。また、加圧側の回路にはリリーフバルブ54が設けられていて、回路内が一定の圧力以上となった場合に油圧オイルタンク50にオイルが逃げて圧力が一定以上に上昇しないようになっている。
【0030】
各油圧シリンダを操作するための油圧系統は、油圧ポンプ51と各シリンダとの間に油圧操作バルブ52が設けられていて各シリンダの伸縮作動を切替操作する。油圧操作バルブ52は、リフトシリンダ操作バルブ520、第2ブーム回動シリンダ操作バルブ521、第2ブーム前後方向回動シリンダ操作バルブ522、草刈作業部回動シリンダ操作バルブ523が一体となって設けられている。各操作バルブの加圧側回路内には、リリーフバルブ54が設けられていて、回路内が一定の圧力以上となった場合に油圧オイルタンク50にオイルが逃げて圧力が一定以上に上昇しないようになっている。各バルブは、電動で作動する電磁バルブであり、トラクタ1運転席近傍に設けた操作レバー7によって電気的に操作される。
【0031】
リフトシリンダ操作バルブ520は、第1ブーム30の昇降を行うリフトシリンダ300の伸縮を操作するためのバルブである。リフトシリンダ300の第1ブーム30を持ち上げる側のポートとリフトシリンダ操作バルブ520との間には、切換バルブ53が設けられている。切換バルブ53は、第1ブーム30が下降する方向が阻止され、上昇する方向が自由状態となっているチェックバルブ530側と、回路が解放され第1ブーム30の昇降が自由状態となる側とに切換が行える。
【0032】
切換バルブ53をチェックバルブ530側に切換えた状態で、第1ブーム30を持ち上げる方向にリフトシリンダ操作バルブ520を切換えると、オイルは切換バルブ53のチェックバルブ530を通過してリフトシリンダ300の本例における縮む側のポートに流れ、他方のポートのオイルは油圧オイルタンク50への戻り側の回路に流れる。第1ブーム30を下降させる方向にリフトシリンダ操作バルブ520を切換えると、切換バルブ53が回路を解放された側に切り替わる。切替は電気的に制御されていてリフトシリンダ操作バルブ520を切換えると自動的に切り替わるように設定されている。このため、リフトシリンダ300が本例における伸びる方向のポートにオイルが流入するとともに、他方のポートからは切換バルブ53を経由してオイルは油圧オイルタンク50への戻り側の回路に流れる。
【0033】
リフトシリンダ操作バルブ520がニュートラル状態では、第1ブーム30が下降する方向、即ち本例におけるリフトシリンダ300が伸びる方向の回路が切換バルブ53のチェックバルブ530によって封鎖された状態となって、第1ブーム30の下降がロックされた状態となる。このとき、第1ブーム30を上昇させる方向に外力が作用したときには、チェックバルブ530が開き上昇方向には自由に第1ブーム30が動くことができる。このため、草刈作業部4が障害物等により不用意に持ち上げられたときには、アーム部3に過大な負荷が作用することを防止して草刈機Aを保護する。
【0034】
また、草刈作業時に草刈作業部4が圃場面に接地した状態で、リフトシリンダ操作バルブ520をニュートラル状態にして、切換バルブ53を回路が解放された側に切換えると、第1ブーム30の昇降が自由状態になるため、草刈作業部4の自重によって刈取り圃場面の凹凸に合わせて草刈作業部4が自動的に追従して刈取り高さを一定にすることができる。このため作業者は、刈取り圃場面の凹凸に合わせて頻繁に操作レバー7を操作する必要が無いため、容易に作業が行える。切換バルブ53を回路が解放された側に切換えるには、トラクタ1の運転席近傍に設けた操作レバー7の切換バルブ切換スイッチ72を押すと切換えられる。切換バルブ切換スイッチ72は、押しているときのみ切り替えが行われる。リフトシリンダ300の第1ブーム30が上昇する側のポートの回路には、圧力センサ55が設けられていて、圧力が設定した圧力以下のときのみ切換バルブ53が切換できるように電気的に制御されている。このため、草刈作業部4が圃場面から上昇した状態でリフトシリンダ300に圧力が作用した状態では、切換バルブ53の切換ができないため、草刈作業部4を不用意に落下させることがなく、安全に作業が行えるとともに草刈作業部4の破損等を防止できる。
【0035】
第2ブーム回動シリンダ操作バルブ521、第2ブーム前後方向回動シリンダ操作バルブ522、草刈作業部回動シリンダ操作バルブ523は、それぞれ同一の回路構成となっていて、第2ブーム回動シリンダ322、第2ブーム前後方向回動シリンダ323、草刈作業部回動シリンダ334にそれぞれ配管されている。各操作バルブは、ニュートラル状態では、各シリンダの伸縮が阻止された状態に回路が閉じられる。各操作バルブをそれぞれ伸縮方向に切換えると、各シリンダが伸縮してアーム部3を動かして草刈作業部4の傾斜姿勢や位置を操作することができる。
【0036】
各操作バルブの操作は、トラクタ1の運転席近傍に設置した操作レバー7によって電気的に操作される。
図9は操作レバー7を示したものである。本例においては、運転席左側に設置され、
図9においては右側が前方側となる。操作レバー7は、片手で握れるような棒状のグリップ状となっていて、前後左右に傾倒することによって各シリンダを操作する。操作レバー7は矩形のボックスの上方に設けられていて、前方部には草刈作業部4の回転方向を切換える回転方向切換スイッチ70が設けられている。回転方向切換スイッチ70は、前後方向に倒すと草刈作業部4の回転方向が変更され、中央部に位置させると油圧回路がフリー状態となり回転が停止する。矩形のボックス内には、操作レバー7からの信号によって各操作バルブを作動させるための制御部が内蔵されている。
【0037】
操作レバー7の上面部には、左右に並んでシリンダ切換スイッチ71と切換バルブ切換スイッチ72が備えられている。各スイッチは押しているときのみ作動するスイッチであり、操作レバー7を握った状態で親指で操作する。切換バルブ切換スイッチ72を押すと、切換バルブ53を回路が解放された側に切換えることができる。本例においては、操作レバー7を
図9の前方に倒すとリフトシリンダ300が伸びて第1ブーム30を下方に回動させ、後方に倒すとリフトシリンダ300が縮んで第1ブーム30を上方に回動させる。また、左に倒すと第2ブーム回動シリンダ322が縮んで第2ブーム32が側方外側に回動し、右に倒すと第2ブーム回動シリンダ322が伸びて第2ブーム32が側方内側に回動する。さらに、シリンダ切換スイッチ71を押しながら左に倒すと、草刈作業部回動シリンダ334が伸びて草刈作業部4を下方に回動させ、右に倒すと、草刈作業部回動シリンダ334が縮んで草刈作業部4を上方に回動させる。さらにまた、シリンダ切換スイッチ71を押しながら操作レバー7を前方に倒すと、第2ブーム前後方向回動シリンダ323が伸びて第2ブーム32の前後方向回動アーム321が前方に回動し、後方に倒すと第2ブーム前後方向回動シリンダ323が縮んで第2ブーム32の前後方向回動アーム321が後方に回動する。
【0038】
主フレーム2の中央付近に、縦方向の回動中心軸23を設け、これを中心に前後方向に回動自在に設けたマストフレーム22は、マストフレーム22の回動端側に設けたストッパ手段6によって主フレーム2に係止されていて回動が阻止されている。ストッパ手段6は、マストフレーム22の回動方向に一定以上の回動力が作用すると係止が解除される構成となっている。
【0039】
図5は、本例のストッパ手段6を説明するための要部断面図である。(a)はストッパ手段6が主フレーム2側に係止されてマストフレーム22との回動が阻止された状態で、(b)はストッパ手段6が解除される直前の状態を示したもので、(c)はストッパ手段の係合が外れた状態を示したものである。ストッパ手段6は、主フレーム2とマストフレーム22とに架け渡されて係合する可動フック60と、可動フック60の回動支点となるマストフレーム22に固着された支点ピン62と、可動フック60を押圧するスプリング61と、スプリング61と可動フック60をガイドする支持軸63と、支持軸63の端部に螺合されてスプリング61の押圧力を調整するナット64と、可動フック60の回動を検知する検知手段であるリミットスイッチ66で構成される。
【0040】
支持軸63は、マストフレーム22に垂直方向に立設して固着されている。可動フック60の中央部付近には支持軸63に挿入するためのガイド孔600が設けられ、一端側にはマストフレーム22に固着された支持ピン62に挿入されるための保持孔601が設けられている。支持軸63に挿入された可動フック60は、さらに支持軸63に挿入されたスプリング61によって下方に押圧される。支持軸63の上方端部にはナット64が螺合されていて、押圧力を調整できる構造となっている。
【0041】
可動フック60の保持孔601と反対側の端部は、主フレーム2側に片持ち状に延出されていて、端部には下方に向いた山形状に突設した係合部602が設けられている。また、この係合部602に対向した主フレーム2側には、同じく可動フック60側に向け山形状に突設した係合受部65が固着して設けられ、双方の突設部斜面が重なり合って係合した状態となっている(a)。水平回動を阻止する方向の突設部の斜面同士が相対した状態となっていて、主フレーム2とマストフレーム22の回動が阻止された状態となっている。可動フック60の押圧力に抗して水平方向の回動力の分力により可動フック60の突設部が斜面に沿って押し上げられ(b)、突設部同士が外れるとマストフレーム22の回動が自由状態となる。可動フック60は、必ずしもマストフレーム22側に設ける必要はなく、主フレーム2側に設けた構成でもよい。可動フック60の押圧力に抗して可動フック60が係合受部65の傾斜面に沿って押し上げられ回動すると、下方面に当接している検知手段であるリミットスイッチ66のアームが回動してスイッチが作動し制御部に信号が送られる。
【0042】
制御部に信号が送られると、可動フック60が外れるまでの間は、草刈作業部4を上昇させるためにリフトシリンダ300が縮み、草刈作業部4に作用している抵抗を解除するように作用する。草刈作業部4に作用する抵抗は、例えば、
図6に示すような突起物に衝突したときの抵抗や、
図7に示すような急激な凸部による抵抗などがあり、草刈作業部4が上昇して抵抗が解除されると、可動フック60が外れる前に戻りリミットスイッチ66のアームを押してリフトシリンダ300の作動を停止させる。ストッパ手段6の保持力よりも大きな回動力が作用すると、可動フック60の係合が解除され
図5の(c)の状態となり、可動フック60がリミットスイッチ66のアームを押し、マストフレーム22が後方に回動した状態となる。
【0043】
リミットスイッチ66の作動により制御部がリフトシリンダ300を縮めて草刈作業部4を上昇させる制御は、本例の場合、切換バルブ切換スイッチ72が押されているときのみ作動するように制御されている。
図10は、制御のフロー図である。切換バルブ切換スイッチ72が押され(a1)草刈作業が行われると、ストッパ手段6の可動フック60の回動を検知する可動フックセンサーであるリミットスイッチ66が検知可能状態となる。作業部に抵抗が作用して可動フック60が回動すると、リミットスイッチ66がON(a2)となり、切換バルブ切換スイッチ72がOFF(a3)となるとともに、リフトシリンダ300が縮み草刈作業部4を上昇させる(a4)。草刈作業部4が上昇して回動方向の抵抗が下がると可動フック60が戻り、リミットスイッチ66が押されOFFとなる(a5)。OFFとなるとリフトシリンダ300の作動が停止される(a6)。尚、ストッパ手段6の係合保持力よりも大きい回動力が作用した場合、可動フック60の回動に伴いリミットスイッチ66がONとなり、切換バルブ切換スイッチ72がOFF(a3)され、リフトシリンダ300が作動するが、可動フック60の係合が外れると、リミットスイッチ66が再び可動フック60に押されOFFとなり、リフトシリンダ300も停止する。本例の場合、切換バルブ切換スイッチ72が押されているときのみ草刈作業部4を上昇させて抵抗を解除するように制御しているが、いづれの作業状態でも作動できるように制御してもよい。
【0044】
この構成のため、マストフレーム22に設けられたアーム部3や草刈作業部4がトラクタ1の前進によって障害物等に衝突等したときに、可動フック60の係合部602が係合受部65から外れ、マストフレーム22の前後方向の回動が自由状態となり、アーム部3と草刈作業部4とともに後方に回動して衝撃を吸収し草刈機Aへのダメージを回避する。
図2が後方に回動された状態を示した平面図である。回動された状態から草刈作業状態に復帰させるには、草刈作業部4を接地させた状態で、トラクタ1を後退させると、マストフレーム22が前方に回動し、可動フック60の係合部602と主フレーム2側の係合受部65が係合して回動が固定される。
【0045】
図4は、マストフレーム22の回動中心軸23の要部の断面を示した側面図である。主フレーム2の前方には、トラクタ1へ連結するための装着部20が設けられていて、その後方部にマストフレーム22を主フレーム2に対し回動させる回動中心軸23が垂直方向に同心で2カ所設けられている。装着部20は、主フレーム2の前方側に設けた上方中央部に位置する左右水平方向のトップピン202と、その下方左右に設けた左右水平方向のロアピン203に、トラクタ1側の3点リンク機構12にトップリンクピン200とロアリンクピン201によって取付けられたクイックヒッチ13を係合させてトラクタ1に装着する。クイックヒッチ13は、上方中央部にトップピン202と係合するフック部が設けられ、下方左右にロアピン203と係合するフック部が設けられていて、フック部を係合させて連結される。
【0046】
マストフレーム22の回動中心軸23は、クイックヒッチ13が連結される装着部20の左右中央部の後方に位置する。即ち、トラクタ1の左右中央線上に位置する。このため、アーム部3や草刈作業部4がトラクタ1の前進によって障害物等に衝突してマストフレーム22が回動するとき、トラクタ1に偏心した反力が作用しにくい。また、後方に回動したマストフレーム22を復帰させるためにトラクタ1を後退させるときの運転操作が容易である。
【0047】
次にこの発明の草刈機Aを用いて草刈り作業を行う場合について説明する。トラクタ1の後方に設けた左右一対のロアリンク11とその中央上方に設けたトップリンク10とからなるトラクタ3点リンク機構12にクイックヒッチ13を取付け、草刈機の主フレーム2前方に設けたロアピン203とトップピン202にクイックヒッチ13のフック部を係合させトラクタ1と草刈機を連結する。また、草刈機前方中央部に設けた油圧ポンプ51の入力軸21とトラクタ1のPTO軸とをユニバーサルジョイント等により連結させ、油圧ポンプ51を駆動可能にする。
【0048】
草刈り圃場においてトラクタ1のPTO軸を回転させ油圧ポンプ51を駆動し、操作レバー7を操作してアーム部3を作動させ草刈作業部4を草刈圃場面に位置させる。そしてトラクタ1運転席部の操作レバー7部に設けた回転方向切換スイッチ70を操作して草刈作業部4を回転駆動させる。そして、トラクタ1を走行させると草刈作業が行われる。草刈作業部4のゲージローラ42が自重により圃場面の凸凹に当接して追従し刈取り高さを一定にする。草刈作業部4やアーム部3が障害物等に衝突した場合は、ストッパ手段6が外れマストフレーム22が後方に回動して衝撃力を緩和して、草刈機を保護する。後方に回動したマストフレーム22を復帰させるには、草刈作業部4を接地させてトラクタ1を低速で後退させるとマストフレーム22が前方側に回動してストッパ手段6が係合して作業状態となる。切替バルブ切換スイッチ72を押しての作業時は、マストフレーム22への軽度の回動負荷の場合はストッパ手段6が外れる前に、リフトシリンダ300が作動して草刈作業部4を上昇させ、障害物等を自動回避させる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は、トラクタ等の走行機後方に装着されて使用される草刈り作業をするためのアーム連結型草刈機に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 トラクタ
10 トップリンク
11 ロアリンク
12 3点リンク機構
13 クイックヒッチ
2 主フレーム
20 装着部
200 トップリンクピン
201 ロワーリンクピン
202 トップピン
203 ロアピン
21 入力軸
22 マストフレーム
23 回動中心軸
3 アーム部
30 第1ブーム
300 リフトシリンダ
301 リフトシリンダ軸
302 リフトシリンダ先端軸
303 第1ブーム回動軸
32 第2ブーム
320 側方回動アーム
321 前後方向回動アーム
322 第2ブーム回動シリンダ
323 第2ブーム前後方向回動シリンダ
324 第2ブーム回動軸
325 回動支点軸
326 草刈作業部保持アーム
327 第2ブーム回動シリンダ先端軸
328 回動支点軸
33 草刈作業部リンク機構
330 第1リンクアーム
331 第2リンクアーム
332 取付軸
333 取付軸
334 草刈作業部回動シリンダ
335 取付軸
336 取付軸
337 草刈作業部回動軸
4 草刈作業部
40 草刈作業部回転軸
41 草刈刃
42 ゲージローラ
43 油圧モータ
50 油圧オイルタンク
51 油圧ポンプ
52 油圧操作バルブ
520 リフトシリンダ操作バルブ
521 第2ブーム回動シリンダ操作バルブ
522 第2ブーム前後方向回動シリンダ操作バルブ
523 草刈作業部回動シリンダ操作バルブ
524 草刈刃回転操作バルブ
53 切換バルブ
530 チェックバルブ
54 リリーフバルブ
55 圧力センサ
6 ストッパ手段
60 可動フック
600 ガイド孔
601 保持孔
602 係合部
61 スプリング
62 支点ピン
63 支持軸
64 ナット
65 係合受部
66 リミットスイッチ
7 操作レバー
70 回転方向切換スイッチ
71 シリンダ切換スイッチ
72 切換バルブ切換スイッチ