(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067196
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】アナモックス菌群保持用担体、アナモックス菌群付着体、及び、廃水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/10 20060101AFI20220425BHJP
C02F 3/34 20060101ALI20220425BHJP
C02F 3/06 20060101ALI20220425BHJP
C02F 3/08 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
C02F3/10 A
C02F3/34 101D
C02F3/06
C02F3/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175775
(22)【出願日】2020-10-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】501061319
【氏名又は名称】学校法人 東洋大学
(71)【出願人】
【識別番号】500004069
【氏名又は名称】アイオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】角野 立夫
(72)【発明者】
【氏名】小船 秀典
(72)【発明者】
【氏名】本間 隆章
(72)【発明者】
【氏名】真野 稔正
【テーマコード(参考)】
4D003
4D040
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AA13
4D003EA01
4D003EA19
4D003EA30
4D003EA38
4D003FA06
4D003FA10
4D040BB02
4D040BB42
4D040BB52
4D040BB82
4D040DD03
4D040DD14
4D040DD31
(57)【要約】
【課題】立ち上げ期間を短縮し、窒素処理の速度の向上を可能とするアナモックス菌群保持用担体、アナモックス菌群付着体、及び、廃水処理装置を提供する。
【解決手段】平均セル径が700μm以上1500μm以下である複数のセル12と、セル12の内部に、径が500μm以下であり、セル12同士を連通する連通孔14と、を有し、気孔率が85%以上95%以下であるアナモックス菌群保持用担体10である。また、アナモックス菌群保持用担体10にアナモックス菌群が付着されているアナモックス菌群付着体、及び、このアナモックス菌群付着体が、廃水処理槽内に配置されている廃水処理装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均セル径が700μm以上1500μm以下である複数のセルと、
前記セルの内部に、径が500μm以下であり、前記セル同士を連通する連通孔と、を有し、
気孔率が85%以上95%以下である、
アナモックス菌群保持用担体。
【請求項2】
セル径が700μm以上1500μm以下の前記セルの数をL、径が100μm以上500μm以下の前記連通孔の数をMとしたとき、
M/Lが、0.5以上5.8以下である、
請求項1に記載のアナモックス菌群保持用担体。
【請求項3】
セル径が900μm以上1100μm以下の前記セルの数をL、径が200μm以上300μm以下の前記連通孔の数をMとしたとき、
M/Lが、0.8以上5.0以下である、
請求項1に記載のアナモックス菌群保持用担体。
【請求項4】
材質がポリビニルアセタール系スポンジである、
請求項1から3のいずれか1項に記載のアナモックス菌群保持用担体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のアナモックス菌群保持用担体に、アナモックス菌群が付着されている、アナモックス菌群付着体。
【請求項6】
請求項5に記載のアナモックス菌群付着体が、廃水処理槽内に配置されている、
廃水処理装置。
【請求項7】
前記アナモックス菌群付着体を、前記廃水処理槽の内部で、流動床、又は、固定床として保持する、
請求項6に記載の廃水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナモックス菌群保持用担体、アナモックス菌群付着体、及び、廃水処理装置に係り、特に、アンモニア含有廃水の処理に用いられるアナモックス菌群保持用担体、アナモックス菌群付着体、及び、廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃水中に含まれるアンモニア性窒素(NH4-N)は、環境保全の観点からその除去が課題となっている。窒素処理法には、生物処理法が多く用いられている。この生物処理法は、微生物が付着した固定化担体を廃水中に投入し、廃水中に含まれる有機物や窒素を微生物が分解する方法である。生物処理法においては、硝化槽と脱窒槽の2槽式で処理されている。しかしながら、2槽式の反応では、脱窒のための水素供与体(薬品添加)が必要である、及び、硝化のために曝気量を多くしなければならない等の課題を有していた。
【0003】
そこで、近年、新たな窒素処理法として、アナモックス菌群によるアナモックス反応を用いた窒素処理法が開発されている(下記特許文献1参照)。アナモックス反応を用いた窒素処理法であれば、薬品添加量や曝気量の削減などの多くの利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アナモックス菌群は、分裂時間が10日程度であり、増殖速度が極めて遅く、そのため、一日あたり単位体積あたりに発生するアンモニア性窒素量として定義される窒素除去速度1kg-N/m3/dayを得るための立ち上げに6ヶ月程度を要していた。この種の装置では、ユーザーサイトでの立ち上げ期間は1ヶ月以内であることが要望されており、単にアナモックス菌群を用いただけでは、ユーザーの要望を満たすことができていなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、立ち上げ期間を短縮し、窒素処理の速度の向上を可能とするアナモックス菌群保持用担体、アナモックス菌群付着体、及び、廃水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために、本発明に係るアナモックス菌群保持用担体は、平均セル径が700μm以上1500μm以下である複数のセルと、セルの内部に、径が500μm以下であり、セル同士を連通する連通孔と、を有し、気孔率が85%以上95%以下である。
【0008】
本発明の一形態は、セル径が700μm以上1500μm以下のセルの数をL、径が100μm以上500μm以下の連通孔の数をMとしとき、M/Lが、0.5以上5.8以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の一形態は、セル径が900μm以上1100μm以下のセルの数をL、径が200μm以上300μm以下の連通孔の数をMとしたとき、M/Lが、0.8以上5.0以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の一形態は、材質がポリビニルアセタール系スポンジであることが好ましい。
【0011】
本発明の目的を達成するために、本発明に係るアナモックス菌群付着体は、上記記載のアナモックス菌群保持用担体に、アナモックス菌群が付着されている。
【0012】
本発明の廃水処理装置は、上記記載のアナモックス菌群付着体が、廃水処理槽内に配置されている。
【0013】
本発明の一形態は、アナモックス菌群付着体を、廃水処理槽の内部で、流動床、又は、固定床として保持することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、立ち上げ期間を短縮し、窒素処理の速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】アナモックス菌群保持用担体の気孔構造を示す概略図である。
【
図2】セルと連通孔の数の比に対する脱窒速度の関係を示す図である。
【
図3】セルと連通孔の数の比に対する脱窒速度の関係を示す図である。
【
図4】アナモックス菌群付着体を流動床式の廃水処理装置に適用した概念図である。
【
図5】アナモックス菌群付着体を固定床式の廃水処理装置に適用した概念図である。
【
図6】実施例1で用いた本発明の担体の電子顕微鏡写真及び気孔径分布である。
【
図7】実施例1で用いた比較例の担体の電子顕微鏡写真及び気孔径分布である。
【
図8】実施例2で使用した廃水処理装置の概念図である。
【
図9】実施例2の運転を開始してからのT-N除去速度の経日変化を示す図である。
【
図10】アナモックス菌群保持用担体の表面写真、及び、アナモックス菌群付着体の表面及び断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面にしたがって、本発明に係るアナモックス菌群保持用担体、アナモックス菌群付着体、及び、廃水処理装置について説明する。なお、本明細書において、「~」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0017】
[アナモックス菌群保持用担体]
まず、アナモックス菌群保持用担体(以下、単に、「担体」ともいう)について説明する。
図1は、本実施形態の担体の気孔構造を示す概略図である。
【0018】
本実施形態のアナモックス菌群保持用担体10は、平均セル径が700μm以上1500μmである複数のセル12と、セル12の内部に、径が500μm以下であり、セル12同士を連通する連通孔14と、を有する。また、担体10の気孔率は、85%以上95%以下である。
【0019】
アナモックス菌群は、増殖速度が極めて遅く、そのため、アナモックス菌群を含む廃水処理装置の立ち上げには6ヶ月程度かかってしまう。本実施形態の担体10によれば、アナモックス菌群を増殖させる際に、セル12内にアナモックス菌を生息させ、連通孔14に共存菌(他の種類の菌)を生息させることができる。アナモックス菌の増殖には、アナモックス菌の他に共存菌と共存させることが好ましく、セル12と連通孔14を設けることで、アナモックス菌と共存菌との棲み分けをすることができ、アナモックス菌の活性を早く発現させることができる。これにより、短期間でアナモックス菌を培養することができ、装置の立ち上げ期間を早めることができる。
【0020】
共存菌としては、従属栄養細菌を挙げることができ、例えば、バチルス菌、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌、及び、ズーグレア菌等を挙げることができる。
【0021】
また、担体10は、セル径が700μm以上1500μm以下のセル12の数をL1、径が100μm以上500μm以下の連通孔14の数をM1としたとき、M1/L1が、0.5以上5.8以下であることが好ましい。
図2は、M1/L1比と脱窒速度(kg-N/m
3/day)との関係を示す図である。M1/L1が0.5以上5.8以下の担体を用いて廃水処理(脱窒処理)を行うことで、脱窒速度が1.0(kg-N/m
3/day)以上である高い脱窒速度を得ることができる。さらに、M1/L1を1.4以上4.6以下とすることで、3.5(kg-N/m
3/day)以上である高い脱窒速度を得ることができるので好ましい。
【0022】
さらに、担体10は、セル径が900μm以上1100μm以下のセル12の数をL2、直径が200μm以上300μm以下の連通孔14の数をM2としたとき、M2/L2が、0.8以上5.0以下であることが好ましい。
図3は、M2/L2比と脱窒速度(kg-N/m
3/day)との関係を示す図である。M2/L2が0.8以上5.0以下の担体を用いて廃水処理(脱窒処理)を行うことで、脱窒速度が2.0(kg-N/m
3/day)以上である高い脱窒速度を得ることができる。さらに、M2/L2を1.0以上3.5以下とすることで、6(kg-N/m
3/day)以上である高い脱窒速度を得ることができるので好ましい。
【0023】
次に、セル12のセル径d1及び連通孔14の径d2を測定する方法について説明する。セル12のセル径d1及び連通孔14の径d2は、電子顕微鏡画像、例えば、SEM(Scanning Electron Microscope)画像を用いて測定することができる。
【0024】
連通孔14の径d
2(
図1参照)は、SEM画像内のすべての連通孔14の径d
2を計測する。画像の倍率は、連通孔14の開口部16の形状が分かるように、高めの倍率の写真を用いて行うことが好ましい。およその形状が分かる開口部16に対して、円又は楕円に近似し、近似した円の直径又は楕円の長径を測定する。開口部16を近似した円の直径、又は、楕円の長径が本発明の連通孔14の径に相当する。
【0025】
また、セル12のセル径d
1(
図1参照)は、計測した連通孔14の径と同じ数となるように、セル径d
1を計測する。画像は、複数の画像を用いて行い、画像の倍率は、連通孔14の径d
2を計測した倍率より低い倍率の写真を用いて行うことが好ましい。およその形状がわかるセル12に対して、円又は楕円に近似し、近似した円の直径又は楕円の長径を測定する。セル12を近似した円の直径、又は、楕円の長径が本発明のセル12のセル径に相当する。また、測定したセル径の平均を平均セル径とする。
【0026】
また、気孔率は、例えば、乾燥状態の担体(スポンジ)を乾式自動密度計にて真体積を測定し、スポンジの見掛け体積との差から算出することができる。
【0027】
担体10の材質としては、ポリビニルアセタール系スポンジ、ポリウレタン系スポンジ、及び、ポリオレフィン系スポンジを用いることができる。
【0028】
担体10の材質としては、中でもポリビニルアセタール系スポンジとすることが好ましい。スポンジなどの形状、大きさを持つ担体を用いることで、粉末状担体に対し、担体10の流出を抑制することができる。また、包括固定化担体などのゲル状担体に対し、ポリビニルアセタール系スポンジを用いた担体10は耐摩耗性が高いため、長期間に渡り処理性能を維持することができる。
【0029】
また、ポリビニルアセタール系スポンジを用いた担体10は、pHが4以上の条件において、マイナスのゼータ電位を示す。担体10のゼータ電位が-35mV以上0mV以下に規制されることで、アナモックス菌群を担体10に一層付着させ易くすることができる。
【0030】
なお、本発明における担体10のゼータ電位とは、以下の方法で測定した値をいう。
【0031】
(1)水50mLに担体1gを粉砕し加える。
【0032】
(2)薬匙で1分間撹拌後、超音波洗浄機(アズワン製超音波洗浄機ASU-10)を用いて周波数40Hz、出力240Wで5分間撹拌する。
【0033】
(3)撹拌後すぐに、ディップセルに(2)を1mL充填し、ゼータ電位測定装置(Malvern社製Ztasizer Nano-ZS90)を用いて波長633nmの赤色レーザーを用いて測定を実施する。測定は3回行い、その平均値を担体のゼータ電位とする。
【0034】
次に担体10の製造方法の一例について説明する。以下の製造方法で製造することで、本実施形態のセル12のセル径、及び、連通孔14の径を満たす担体10を製造することができる。なお、以下の説明では、材質にポリビニルアセタール系スポンジを用いた場合について説明するが、材質、製法は限定されない。
【0035】
(1)気孔材抽出法
ポリビニルアルコール樹脂、アルデヒド類、及び、架橋反応触媒(酸等)を水に混合した混合水溶液に、気孔生材料(個体又は液体)を分散し、架橋反応させる。反応終了後、気孔生材料を除去し、多孔質体とする。
【0036】
(2)発泡法
ポリビニルアルコール樹脂、アルデヒド類、及び、架橋反応触媒(酸等)を水に混合した混合水溶液に、発泡剤を添加し、発泡した状態で架橋反応させ、多孔質体とする。
【0037】
(3)気泡混合法
ポリビニルアルコール樹脂、アルデヒド類、及び、架橋反応触媒(酸等)を水に混合した混合水溶液に、発泡装置又は回転装置等により気泡を巻き込ませ、その状態で架橋反応させることで、多孔質体とする。
【0038】
[アナモックス菌群付着体]
上記の担体10に対して、アナモックス菌群を付着させ、アナモックス菌群付着体とする。本実施形態のアナモックス菌群付着体によれば、担体10にアナモックス菌群を容易に付着させることができるので、廃水処理装置の立ち上げを短期間で行うことができ、廃水の高速処理が可能となる。
【0039】
担体10にアナモックス菌群を付着させる方法としては、廃水処理装置の処理槽に、担体10(アナモックス菌群が付着していない)及びアナモックス菌群を含む汚泥を投入し、処理槽内で、担体10にアナモックス菌群を付着させることができる。
【0040】
なお、担体及びアナモックス菌群付着体の形状としては以下の形状が好ましい。形状として、角形、球状、平板状、リボン状、短冊状、及び、レンコン状の形状が好ましい。流動担体として用いる場合は、球相当径2mm以上50mm以下が好ましく、4mm以上15mm以下がさらに好ましい。球相当径10mm前後の担体及びアナモックス菌群付着体は、それ以外の径の担体及びアナモックス菌群付着体と比較し、活性が2~5倍高く、10mm前後の径とすることが最も好ましい。これは、アナモックス菌と共存菌のバランスが良いことが考えられる。また、従来報告されている微細粒子状担体と比較し、相当径10mm前後の大きさはハンドリングが容易で、装置構造が複雑にならず、装置のイニシャルコストを安価にすることができる。
【0041】
[廃水処理装置]
次に、本実施形態の廃水処理装置について説明する。本実施形態の廃水処理装置は、廃水処理槽内に上記のアナモックス菌群付着体が配置される。アナモックス菌群付着体は、廃水処理槽内で、流動床、又は、固定床として、保持される。以下に、流動床式の廃水処理装置、及び、固定床式の廃水処理装置の構成例を説明する。
【0042】
図4は、アナモックス菌群付着体110(以下、単に、「菌群付着体」ともいう)を流動床式の廃水処理装置100に適用した概念図である。廃水流入部132から廃水が流入される廃水処理槽134に、本実施形態の多数の菌群付着体110が配置される。槽内は撹拌機136がモーター138により撹拌され、菌群付着体110が廃水処理槽134内で流動し、廃水と菌群付着体110とが接触する。従って、廃水中の窒素が生物学的に処理される。廃水処理槽134で処理された処理水は担体流出防止用のスクリーン140を通って処理水流出部142から装置外に排出される。
【0043】
図5は、菌群付着体110を固定床式の廃水処理装置150に適用した概念図である。廃水処理槽152内には上部スクリーン154と下部スクリーン156とが設けられる。この2つのスクリーン154、156の間に本実施形態の多数の菌群付着体110が密に充填され、固定床155が形成される。そして、廃水流入部157から廃水が流入し、固定床155を上向流で流れて処理水流出部159を介して装置外に排出される。
【0044】
本実施形態の菌群付着体110によれば、流動床式、又は、固定床式のいずれの廃水処理装置に対しても効果的に使用することができる。
【実施例0045】
以下に実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。
【0046】
(実施例1)[担体の活性確認]
5種類の担体を用いて、これらの担体にアナモックス菌群を付着させ、活性(窒素除去速度)を測定した。
図6及び
図7に、実施例1で用いた担体の電子顕微鏡写真及び気孔径分布を示す。
図6(a)、(b)が担体Sの電子顕微鏡写真(a)及び気孔径分布(b)であり、
図6(c)、(d)が担体Gの電子顕微鏡写真(c)及び気孔径分布(d)である。また、
図7(a)、(b)が担体Dの電子顕微鏡写真(a)及び気孔径分布(b)であり、
図7(c)、(d)が担体Eの電子顕微鏡写真(c)及び気孔径分布(d)であり、
図7(e)、(f)が担体Eの電子顕微鏡写真(e)及び気孔径分布(f)である。なお、担体S及び担体Gが本発明の担体であり、担体D、担体E及び担体Fが比較例の担体である。
【0047】
図6(a)、(b)に示すように、本発明の担体Sは、100μm~1500μmの範囲に気孔径分布を有する。また、200μm及び1000μmの気孔径にピークを有し、100μm~500μmの小さい気孔径が連通孔14の径であり、700μm~1500μmの大きい気孔径がセル12のセル径であることが確認できる。また、
図6(c)、(d)に示すように、本発明の担体Gは、400μm~1400μmの範囲に気孔径分布を有する。また、400μm及び800μmの気孔径にピークを有し、400μm~500μmの小さい気孔径が連通孔14の径であり、700μm~1400μmの大きい気孔径がセルのセル径であることが確認できる。
【0048】
また、比較例の担体Dの気孔径分布は30μm~140μmであり(
図7(a)、(b))、担体Eの気孔径分布は60μm~260μmであり(
図7(c)、(d))、担体Eの気孔径分布は75μm~425μmであり(
図7(e)、(f))、比較的小さい気孔径のみ有する担体である。
【0049】
これらの担体を用いて、活性を測定した結果を表1に示す。なお、活性の測定は以下の連続処理運転を行い、窒素除去速度を求めた。
【0050】
リアクター1Lにそれぞれの担体(4mm角形)を10%充填し、アナモックス汚泥を200mL投入した。窒素ガス0.2L/minで撹拌し、合成廃水(T-N120~400mg/L)を滞留時間1~6hで処理した。原水T-Nと処理水T-Nを分析し窒素除去速度を求めた。
【0051】
【0052】
表1に示すように、本発明の担体は、比較例の担体と比較し、高い窒素除去速度が得られることが確認できた。
【0053】
(実施例2)[立ち上げ試験]
実施例1で使用した担体S(1cm角形)を用いて、廃水処理装置の立ち上げ試験を行った。使用した廃水処理装置を
図8に示す。廃水処理装置30は、廃水処理槽32を有しており、この廃水処理槽32は、廃水処理を行う廃水処理部34を有している。廃水処理装置30の立ち上げ時には、廃水処理槽32内に担体10が充填される。また、廃水処理槽32は、担体分離部36を有し、担体の流出を防止している。廃水処理槽32は、廃水流入部38からポンプ40により廃水が供給される一方、処理水流出部42から処理水が流出する構造である。また、廃水処理槽32内のpHは、pHコントローラー44を用いて調整される。pHの調整は、0.5N HClが酸性溶液流入部46からポンプ48により廃水処理槽32内に供給される。廃水処理槽32内には撹拌機50が設けられ、撹拌機50がモーター52により回転することで、廃水処理槽32内の廃水及び担体10が撹拌される。
【0054】
立ち上げ試験は、廃水処理槽32内に、担体10としてS担体を充填率10%で投入し、アナモックス汚泥100mLを添加した。合成廃水T-N120mg/Lの原水を連続流入させ、運転を開始した。なお、「T-N」とは全窒素濃度のことであり、ここでは、「NH4-N」、「NO3-N」及び「NO2-N」の合計の窒素濃度のことをいう。
【0055】
供試した合成廃水は、表2に示す無機合成廃水を任意の濃度(本実施例においては、T-N120~400mg/L)になるように水道水で希釈し、調整した。また、アナモックス菌群の生育促進のために、表3及び表4に示す2種類のトレースエレメントを合成廃水1Lごとに1mLずつ添加した。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
運転を開始してからのT-N除去速度の経日変化を
図9に示す。また、
図10は、本実施例で用いられた担体であり、試験前のアナモックス菌群保持用担体の表面写真(a)、及び、アナモックス菌群が付着したアナモックス菌群付着体の表面写真(b)及び断面写真(c)である。
【0060】
図9に示すように、本発明の担体を用いて廃水処理装置の立ち上げをすることで、運転開始後、1ヶ月で窒素除去速度1.4kg-N/m
3/dayを得ることができ、短時間での立ち上げが可能であることが確認できた。さらに、窒素除去速度が極めて優れるといわれている3.0kg-N/m
3/dayを35日程度で達成していることも認められた。また、データは記載していないが、実施例1の比較例の担体(担体F)を用いて行った同様の試験では、運転を開始してから1ヶ月後の窒素除去速度は、0.1kg-N/m
3/day以下であった。本発明の担体を用いることで、立ち上げ期間を短くすることが確認できた。
【0061】
また、このようにしてアナモックス菌群が付着した担体は、
図10に示すように、担体の表面のみでなく、担体の内部まで茶色くなっており、担体内部まで、アナモックス菌が付着していることが確認できた。
10…アナモックス菌群保持用担体(担体)、12…セル、14…連通孔、16…開口部、30、100、150…廃水処理装置、32、134…廃水処理槽、34…廃水処理部、36…担体分離部、38、132…廃水流入部、40、48…ポンプ、42、142、159…処理水流出部、44…pHコントローラー、46…酸性溶液流入部、50…撹拌機、52…モーター、110…アナモックス菌群付着体(菌群付着体)、136…撹拌機、138…モーター、140…スクリーン、154…上部スクリーン(スクリーン)、155…固定床、156…下部スクリーン(スクリーン)