(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006720
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】香料配合組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20220105BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20220105BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/34 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/215 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/11 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/245 20060101ALI20220105BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220105BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20220105BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A23L33/10
A61P1/08
A61K45/00
A61K31/045
A61K31/122
A61K31/34
A61K31/215
A61K31/015
A61K31/11
A61K31/245
A23L33/105
A23G3/34 101
A23G3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109123
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】土居 哲平
(72)【発明者】
【氏名】川村 淳
(72)【発明者】
【氏名】奥山 知子
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B014GK05
4B014GL03
4B014GL05
4B014GL08
4B018LB01
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD09
4B018MD18
4B018ME14
4C084AA17
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA14
4C086AA01
4C086AA02
4C086CA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA14
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA04
4C206CA13
4C206CB02
4C206CB15
4C206DB04
4C206DB15
4C206DB43
4C206DB49
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206ZA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】映像酔いを顕著に軽減できる香料配合組成物の提供。
【解決手段】香料を配合した映像酔い軽減用組成物であって、該香料が、ペパーミント香料、グレープフルーツ香料、ぶどう香料から選択される。ペパーミント香料として、1-メントール、1-メントン、1,8-シネオール及びメンチルアセテートを含有し、グレープフルーツ香料として、リモネン、オクタナール、酢酸エチル、α-ピネン及びd-ノートカトンを含有し、ぶどう香料として、酢酸エチル、2-メチル酢酸エチル及びアントラニル酸メチルを含有するエステル類を含有する、該映像酔い軽減用組成物。香料が組成物重量に対して0.3~0.6%配合される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料を配合した映像酔い軽減用組成物。
【請求項2】
前記香料が、ペパーミント香料、グレープフルーツ香料、ぶどう香料から選択される、請求項1に記載の映像酔い軽減用組成物。
【請求項3】
前記ペパーミント香料は、1-メントール、1-メントン、1,8-シネオールおよびメンチルアセテートを含有する、請求項2に記載の映像酔い軽減用組成物。
【請求項4】
前記ペパーミント香料は、官能評価によって当該ペパーミント香料と実質的に同一と認められるものを含む、請求項2または3に記載の映像酔い軽減用組成物。
【請求項5】
前記グレープフルーツ香料は、リモネン、オクタナール、酢酸エチル、α-ピネンおよびd-ノートカトンを含有する、請求項2に記載の映像酔い軽減用組成物。
【請求項6】
前記ぶどう香料は、酢酸エチル、2-メチル酢酸エチルおよびアントラニル酸メチルを含有するエステル類を含有する、請求項2に記載の映像酔い軽減用組成物。
【請求項7】
香料が、組成物重量に対して0.3%から0.6%で配合された請求項1から6のいずれか一項に記載の映像酔い軽減用組成物。
【請求項8】
前記組成物が、キャンディである請求項1から7のいずれか一項に記載の映像酔い軽減用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、映像酔いを顕著に軽減できる香料配合組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンをはじめとするデジタル技術の進歩により、手元の端末で場所や時間を選ばず動画視聴ができるようになった。すなわちスマートフォンなどのモバイル端末は普及率94.8%(2017年調査)となっており、一人一台の時代である。特に首都圏では電車移動中のスマートフォンの使用、動画やゲームを注視している人を多くみる。この場合、電車内の揺れにより前庭器官で受け取る平衡感覚情報、視点の動きの大きな映像の視覚情報との間で混乱が生じ、「酔い」が誘発される。酔いはごく軽いめまいが起こり始め、次第に頭痛や冷汗、唾液分泌の増加、胃の違和感、吐き気へと重症化し、酷く酔った状態は動揺病と呼ばれる。このように毎日の生活の中では、動揺病とはならないまでも揺れや映像の視覚刺激からくるストレスを感じている人は多いと推察される。そのため、日常生活の中で乗り物の揺れや視覚的な揺れストレスに対して軽減できる食品があれば国民の健康に対して貢献できると考えられる。
【0003】
一般的にいうストレスの緩和方法の一つとして、ある種の香りを吸引することによる嗅覚の刺激が昔から知られているが、上記の映像酔いから生じるストレスに対し、特定の香りを有する食品がストレス緩和効果を発揮するかは知られていない。
【0004】
一般的に、チューインガムなどの食品を摂取することにより、乗り物酔いを低減させることができることは種々検討されている。
【0005】
特許文献1には、ヘキシルアセテートとゲラニルアセテートを所定量含有する乗り物酔い防止に関する検討がされ、特許文献2には、茉莉花抽出物および3-メチルオクタノ-4-ラクトンおよびボルニルアセテートの交感神経抑制効果に関する検討がされている。非特許文献1には、振動再生装置によって乗り物酔いを再現した状況下において、ミント系の板ガム咀嚼による効果を確認した試験に関する検討がされ、非特許文献2には、加振装置を用いて乗り物酔いを再現し、フルーツ系ガム咀嚼とアメ嘗味の乗り物酔い低減効果の対比を行った試験に関する検討がされ、非特許文献3には、被加振時におけるガム咀嚼(メントール系ガム)が主観評価および心拍変動に与える影響について確認した試験に関する検討がされ、非特許文献4には、ショウガ成分の入ったミントフレーバーガムをドライビングシミュレータ操作中に喫食し、乗り物酔い低減効果を確認した試験に関する検討がされている。
【0006】
しかしながら、上記した先行技術は、食品由来の組成物による乗り物酔いや交感神経に関する検討がなされているだけである。また、特許文献2は映像酔いに関しては全く触れられておらず、非特許文献4は映像酔いには関連するものの、ガムに配合する成分それぞれが動揺病の抑制にどの程度寄与するかについては不明、と記載されている。したがって、上記の映像酔いから生じるストレスに対しての特定の香りを有する食品がストレス緩和効果を発揮するか否かはいまだ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-178905号公報
【特許文献2】特開2009-235015号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「チューインガム咀嚼による乗り物酔い発生低減効果」日本咀嚼学会誌7巻2号 (1997) 41-47
【非特許文献2】「アメとガムの乗り物酔い低減効果」人間工学 Vol37. No.3 (2001)105-111
【非特許文献3】「ガム咀嚼が被加振時の生理指標に与える影響」人間工学 Vol.38 No.3 (2002) 162-167
【非特許文献4】「試験成分入りチューインガムによる動揺病の予防効果」人間工学 vol.43, No.6 (2007) 341-348
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
日常生活の中で、単に摂取するだけで映像酔いを軽減できる口腔用組成物や食品を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、香料を配合した映像酔い軽減用組成物に関する。
【0011】
本発明の一実施形態は、ペパーミント香料、グレープフルーツ香料、ぶどう香料から選択される、香料を配合した映像酔い軽減用組成物に関する。
【0012】
本発明の一実施形態は、1-メントール、1-メントン、1,8-シネオールおよびメンチルアセテートを含有するペパーミント香料を配合した映像酔い軽減用組成物に関する。
【0013】
本発明の一実施形態は、リモネン、オクタナール、酢酸エチル、α-ピネンおよびd-ノートカトンを含有するグレープフルーツ香料を配合した映像酔い軽減用組成物に関する。
【0014】
本発明の一実施形態は、酢酸エチル、2-メチル酢酸エチルおよびアントラニル酸メチルなどを含有するエステル類を含有するぶどう香料を配合した映像酔い軽減用組成物に関する。
【0015】
本発明の一実施形態は、組成物重量に対して香料が0.3%から0.6%の比率で配合された、香料を配合した映像酔い軽減用組成物に関する。
本発明の一実施形態は、前記組成物がキャンディである香料を配合した映像酔い軽減用組成物に関する。
【発明の効果】
【0016】
種々の香料の中で、ペパーミント香料、グレープフルーツ香料、ぶどう香料から選択される香料を配合した組成物はその他の香料を配合した組成物や無香料の組成物に比べて、映像酔いに対するストレスを軽減する効果が認められた。さらに、ペパーミント香料を配合した組成物の中でも、ペパーミント香料中の主成分(l-メントール、l-メントン、1,8-シネオールおよびメンチルアセテート)を特定量含む香料を配合した組成物は、香料非配合の組成物、メントールを単独配合した組成物、および、4成分(l-メントール、l-メントン、1,8-シネオールおよびメンチルアセテート)の割合が上記特定量含む香料と異なるペパーミント香料配合組成物に比べて、映像酔いに対する高いストレスを顕著に軽減する効果が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】キャンディに配合される香料別の、SSQふらつき感スコアの比較を示すグラフ。
【
図2】キャンディに配合される香料別の、SSQ気持ち悪さスコアの比較を示すグラフ。
【
図3】SSQふらつき感スコアにおける各香料配合キャンディ摂取時と無香料キャンディ摂取時の被験者毎の比較(N=14)を示すグラフ。
【
図4】SSQ気持ち悪さスコアにおける各香料配合キャンディ摂取時と無香料キャンディ摂取時の被験者毎の比較(N=14)を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具体的な実施例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明で言うペパーミント香料とは、l-メントール、l-メントン、1,8-シネオールおよびメンチルアセテートを成分として含むものを指す。本発明で言うグレープフルーツ香料とは、リモネン、オクタナール、酢酸エチル、α-ピネンおよびd-ノートカトンを成分として含むものを指す。本発明で言うぶどう香料とは、酢酸エチル、2-メチル酢酸エチルおよびアントラニル酸メチルなどを含有するエステル類を成分として含むものを指す。
【実施例0019】
(被験者の選別方法)
「ヘルシンキ宣言」および「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の精神に則り、常に被験者の人権保護に配慮して実施された。
被験協力者は成人男女28名であり、その中から以下の採用基準および除外基準にしたがって15名を選抜した。試験中に1名が棄権し、最終的に14名が実験を完了した。
【0020】
(採用基準)
・試験用VR映像を鑑賞し、ふらつき感を感じる者(SSQスコア40以上)
・試験前日に酒類(アルコール飲料)の摂取を禁止できる者
・試験前日に睡眠を十分にとって、コンディションを一定にできる者
【0021】
(除外基準)
・妊娠中・授乳中の者
・食品アレルギーを有する者
・乗り物酔いや映像酔いで過去に重度な症状が出たことがある者
・乗り物酔いや映像酔いに対して全く感じない者
【0022】
クロスオーバー試験とし、被験者が摂取する試験食品は乱数を用いてランダム化して割り付けた。
【0023】
(実施例1から9及び比較例1)
試験食品(被験食品及び対照食品)はハードキャンディとし、ハードキャンディに配合したフレーバー香料を表1に示し、実施例1から9とした。なお香料を配合していないハードキャンディは比較例1とした。キャンディの重量は4.0gとした。原料は一般的にキャンディ製造に使われてきたものであり、砂糖、水飴、香料で構成される。香料の配合はキャンディ重量に対してグレープフルーツ香料は0.6%で他はすべて0.3%の比率で香料配合ハードキャンディを作製した。香料はいずれも原料メーカーから食品用の香料規格として提供されたものを使用した。各食品は1~10で任意に符号化された。ハードキャンディに各香料を所定量配合したものを、VR視聴によりふらつき感を感じる者を対象に、当該VR視聴中に喫食させた。実験終了後にキーオープンし、解析を行った。
【0024】
なお、ミント系香料については、主要成分であるl-メントール、l-メントン、1,8-シネオールおよびメンチルアセテートについて香料中の濃度%を表2に示す。また、試験に使用したぶどう香料には、酢酸エチル、2-メチル酢酸エチルおよびアントラニル酸メチルなどを含有するエステル類が含まれる。グレープフルーツ香料には、リモネン、オクタナール、酢酸エチル、α-ピネンおよびd-ノートカトンが含まれる。
【0025】
【0026】
【0027】
(映像酔いの評価)
映像酔いはVRによる立体視の動画にて誘導した。VRデバイスはiPod(登録商標) touch(4インチ)およびVRグラス(ELECOM社製)を用い、動画素材はインターネットサイトから選んだ。動画は自身がトロッコに乗ってレールの上を走るといったアニメーションであり、前後左右に視点が動いて酔いを誘発する。被験者には試験食品を摂取しながら約8分間鑑賞してもらった。その後、映像酔いの症状評価はSSQ(Simulation Sickness Questionnaire動揺病質問票)の項目を用いて行った。SSQは表3に示す16の質問からなり、各質問に0~3点の4段階評価を行う。評価はNausea(N;気持ち悪さ)、Oculomotor(O;眼の疲れ)、Disorientation(D;ふらつき感)の3つであり、それぞれの症状を示す7つずつの質問に対応している。7つの質問の評価点数を加算し、症状の重みづけ(ウェイト)にしたがって気持ちの悪さ(N)では9.54、眼の疲れ(O)では7.58、ふらつき感(D)では13.92を掛け算すると酔い指数として得られる。
【0028】
【0029】
(評価解析方法)
実施計画に適合した対象集団Per Protocol Set(PPS)について解析した。キャンディの香気成分毎、キャンディ摂取で群分けされた。無香料キャンディを対照としてSSQアンケートDisorientation(D;ふらつき感)のスコアを有意水準5%でDunnett検定した。SSQアンケートNausea(N;気持ち悪さ)については副次アウトカムとして扱い、同様にDunnett検定した。
【0030】
(評価結果)
被験者のSSQアンケートより、ふらつきスコアおよび気持ち悪さスコアを算出した(
図1、
図2)。キャンディ摂取なしでVR映像をみた場合にはふらつきスコアが最も高く、無香料キャンディでもふらつき感は軽減した。ペパーミント香料を含むキャンディでは明らかなふらつき感軽減効果がみられ、無香料キャンディ群と比べて統計的にも有意に軽減した。また、グレープフルーツ香料、ぶどう香料、ペパーミント調合香料(A)、メントールを含むキャンディにも軽減傾向がみられた。一方でミルク香料やチョコレート香料、スペアミント香料を含むキャンディでは無香料キャンディと比べて変化はなかった。
【0031】
気持ち悪さスコアについても、ふらつき感と同様の傾向があったが、いずれの香料においても有意差は認められなかった。
図3乃至
図4には、SSQふらつき感および気持ち悪さスコアにおける各香料配合キャンディ摂取時と無香料キャンディ摂取時の被験者毎の比較(N=14)を示した。
【0032】
動揺病(酔い)の一般的な症状は顔面蒼白、冷や汗、頭痛、唾液分泌の増加、吐き気および嘔吐などが挙げられる。重篤な症状に至る前の前兆としては、ふらつき感、欠伸、眠気、疲労感などが現れる。
【0033】
酔いを引き起こす機序は明らかになっておらず、諸説ある中で有力なのが「感覚不一致説」である。これは過去の経験によって記憶された感覚情報(前庭覚、視覚など)の組み合わせと実際の感覚情報が比較され、記憶で想定された情報と異なる場合に「酔い」が誘起されると考えるものである。この説明で感覚情報の記憶が新しい経験によって更新されると考えることによって「順応」が説明できるとされる。また、酔いには船、列車、自動車、飛行機などに乗っているときに加わる振動、遠心力、重力による感覚不一致でおきる「乗り物酔い」、視覚情報の感覚不一致で起こる「映像酔い」、さらに重力欠如で起こる「宇宙酔い」が挙げられる。いずれも感覚情報の不一致からもたらされ脳での情報処理に混乱が生じていると考えられ、結果として自律神経のバランスを失い、酔いの症状がでると考えられる。
【0034】
一方、香気成分は嗅覚受容体に結合し、嗅覚で入力されて嗅神経を介して視床下部にも伝達される。視床下部は自律神経を調節する中枢であり、「酔い」を起こす刺激で感覚情報処理に混乱が生じる過程で、何らかの影響を及ぼしていると考えられるが、「乗り物酔い」と「映像酔い」は前者が振動、遠心力、重力によって、後者が視覚情報によって感覚の不一致が起こることからして、両者は身体に与えるストレスの種類として明確に区別されるものであり、同一ではない。その上で、本発明では特にペパーミント香料、ぶどう香料あるいはグレープフルーツ香料を含む組成物が映像酔いの軽減効果を有することを確認した。
【0035】
本試験では、主にペパーミント香料、グレープフルーツ香料、ぶどう香料に、映像酔いにおけるふらつき感や気持ち悪さの軽減効果が示唆された。特にペパーミント香料では無香料と比べ約40%スコアを下げ、ふらつき感や気持ち悪さに優れた軽減効果を有することが示唆された。ペパーミント香料の香気はメントール、メントン、1,8-シネオールが主成分である。本試験ではメントール単一による酔い軽減効果よりもペパーミント香料で強い効果が得られたため、複数の香気成分が複合的に機能性に関与して効果を増強すると考えられる。また、グレープフルーツ香料の香気はリモネンおよびd-ノートカトンが主成分で、交感神経を亢進することが知られているが、本試験では酔いによる自律神経失調の調節に対しても効果が示唆された。ぶどう香料の香気成分としてはエチルアセテート、メチルアンスラニレートなどのエステル類をはじめ、リナロール、ヘキサノール、フラネオールなどがあげられるが、自律神経への作用は知られていない。なお、本発明の組成物は、ハードキャンディに限られず、例えばチューインガムやソフトキャンディ、グミ、錠菓などの菓子や食品、または口腔用組成物とすることが可能である。更に、本発明で使用される各香料は、多少の構成成分濃度の差異がある場合であっても、効果が認められた香料と区別できない程度に香りとして同一と認識される香料も含まれる。
また、本発明で使用される香料と多少の構成成分の濃度差異がある場合であっても、香りとして同等と認識される以上、当該香料は本発明の効果である映像酔いの軽減効果においても同様な効果を有することが予想される。
【0036】
なお、本発明で言う、多少の構成成分の濃度差異がある場合であっても香りとして同一か否かにおいては、下記の三点試験法において香りとしての同等性が認められる場合を指す。以下に具体的な評価方法を示す。
被験者は60名以上を対象とする。
試験目的の告知については、回答にバイアスが入らない範囲で評価者に試験の目的を知らせる。準備した試料のセットは、評価者にランダムに呈示する。したがって、ある評価者は試料A二つと試料B一つを受け取り、他の評価者は試料B二つと試料A一つを受け取るように設定する。評価者は、あらかじめ決められた順序でセット中の3試料を試験する。評価者が違いを検出しないと主張しても、どの試料が他の二つと異なるかを回答させるようにする。
試験監督者は5%の有意水準を選択する。すなわち、試料間に差がないのに試験結果が差ありを示す危険を5%許容する。2項分布の片側検定により有意差(p<0.05)が認められない場合は同等性があると認定する。