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特開2022-67244金属板の研削装置および研削方法、ならびに金属板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067244
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】金属板の研削装置および研削方法、ならびに金属板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/00 20060101AFI20220425BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20220425BHJP
   B24B 27/033 20060101ALN20220425BHJP
【FI】
B24B27/00 L
B24B49/10
B24B27/033 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175859
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
(72)【発明者】
【氏名】枡田 健太
(72)【発明者】
【氏名】石田 匡平
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
【Fターム(参考)】
3C034AA20
3C034BB92
3C034CA11
3C034CB01
3C034DD20
3C158AA01
3C158AA13
3C158BA02
3C158BA07
3C158BB02
3C158BB09
3C158BC02
3C158CA01
3C158CA04
3C158CB03
3C158CB05
(57)【要約】
【課題】研削装置本体を大型化することなく、走行する際にケーブルが研削装置本体に引っ掛かることを抑制することができる金属板の研削装置および金属板の研削方法、ならびに金属板の製造方法を提供する。
【解決手段】金属板の研削装置300は、研削装置本体14と、研削装置本体に設けられ、金属板を研削する研削部材22と、金属板10の表面上で研削装置本体14を走行させる走行用駆動機構21と、研削部材22を金属板10の表面に接触させて金属板10を研削するために、研削部材22を駆動する研削用駆動機構と、研削装置本体14の幅方向一端部において研削装置本体14の頂部より低い位置に設けられ、走行用駆動機構および研削用駆動機構に電力を供給する電源ケーブル、または走行用駆動機構および研削用駆動機構を制御する通信ケーブルを接続するためのケーブル接続口28とを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の表面を研削する金属板の研削装置であって、
研削装置本体と、
前記研削装置本体に設けられ、前記金属板を研削する研削部材と、
前記金属板の表面上で前記研削装置本体を走行させる走行用駆動機構と、
前記研削部材を前記金属板の表面に接触させて前記金属板を研削するために、前記研削部材を駆動する研削用駆動機構と、
前記研削装置本体の幅方向一端部において前記研削装置本体の頂部より低い位置に設けられ、前記走行用駆動機構および前記研削用駆動機構に電力を供給する電源ケーブル、および/または前記走行用駆動機構および前記研削用駆動機構を制御する通信ケーブルを接続するためのケーブル接続口と、
を有する金属板の研削装置。
【請求項2】
前記研削部材が設けられている側を前記研削装置本体の前方とした場合に、前記ケーブル接続口は前記研削装置本体の後方に設けられている、請求項1に記載の金属板の研削装置。
【請求項3】
前記ケーブル接続口は、前記研削装置本体に1か所のみ形成されており、
前記ケーブル接続口には、前記電源ケーブルおよび前記通信ケーブルの双方が接続される、
請求項1または請求項2に記載の金属板の研削装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金属板の研削装置によって金属板の表面を研削する際に、位置測定手段からの情報に基づいて前記研削装置本体の自己位置を測定し、前記自己位置に基づいて前記研削装置本体を金属板の表面上で走行させる、金属板の研削方法。
【請求項5】
金属板の表面を研削する際に、前記研削装置本体の走行方向が幅方向他端部側となるよう前記研削装置の移動経路を設定する、請求項4に記載の金属板の研削方法。
【請求項6】
金属板の表面を研削する際に、前記研削装置本体を前後方向に一定距離移動させた後で前記研削装置本体の幅方向他端側に移動させる手順を複数回繰り返す、請求項5に記載の金属板の研削方法。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の金属板の研削方法によって金属板の表面を研削する、金属板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板上を走行して金属板の研削を行う金属板の研削装置および金属板の研削方法、ならびに金属板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厚板鋼材等の金属板の表面を研削する金属板の研削装置として、種々のものが提案されている。例えば特許文献1には、金属板上を走行(自走)して金属板の表面に存在する疵の手入れを行う自走式疵取り装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-237107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている自走式疵取り装置では、装置に電力を供給するための電源供給部を装置よりも高い位置に設けるとともに、電源供給部に接続されるケーブルをケーブルフィーダで吊り上げることにより、装置の走行中に装置とケーブルが干渉する(ケーブルが装置に引っ掛かってしまう)ことを抑制している。
【0005】
しかしながら、引用文献1では電源供給部を装置よりも高い位置に設けるため、電源供給部を支持するとともに電源供給部から装置へ電力を供給するための長い支持材を装置に取り付ける必要があり、装置が大型化してしまう。
【0006】
本発明は、上記事実を鑑み、研削装置本体を大型化することなく、走行する際にケーブルが研削装置本体に引っ掛かることを抑制することができる金属板の研削装置および金属板の研削方法、ならびに金属板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の(1)~(7)を提供する。
【0008】
(1) 金属板の表面を研削する金属板の研削装置であって、
研削装置本体と、
前記研削装置本体に設けられ、前記金属板を研削する研削部材と、
前記金属板の表面上で前記研削装置本体を走行させる走行用駆動機構と、
前記研削部材を前記金属板の表面に接触させて前記金属板を研削するために、前記研削部材を駆動する研削用駆動機構と、
前記研削装置本体の幅方向一端部において前記研削装置本体の頂部より低い位置に設けられ、前記走行用駆動機構および前記研削用駆動機構に電力を供給する電源ケーブル、および/または前記走行用駆動機構および前記研削用駆動機構を制御する通信ケーブルを接続するためのケーブル接続口と、
を有する金属板の研削装置。
【0009】
(2) 前記研削部材が設けられている側を前記研削装置本体の前方とした場合に、前記ケーブル接続口は前記研削装置本体の後方に設けられている、(1)に記載の金属板の研削装置。
【0010】
(3) 前記ケーブル接続口は、前記研削装置本体に1か所のみ形成されており、
前記ケーブル接続口には、前記電源ケーブルおよび前記通信ケーブルの双方が接続される、
(1)または(2)に記載の金属板の研削装置。
【0011】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の金属板の研削装置によって金属板の表面を研削する際に、位置測定手段からの情報に基づいて前記研削装置本体の自己位置を測定し、前記自己位置に基づいて前記研削装置本体を金属板の表面上で走行させる、金属板の研削方法。
【0012】
(5) 金属板の表面を研削する際に、前記研削装置本体の走行方向が幅方向他端部側となるよう前記研削装置の移動経路を設定する、(4)に記載の金属板の研削方法。
【0013】
(6) 金属板の表面を研削する際に、前記研削装置本体を前後方向に一定距離移動させた後で前記研削装置本体の幅方向他端側に移動させる手順を複数回繰り返す、(5)に記載の金属板の研削方法。
【0014】
(7) (4)から(6)のいずれかに記載の金属板の研削方法によって金属板の表面を研削する、金属板の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、研削装置のケーブルの配置、移動ルートを適正化することで研削装置本体を大型化することなく、走行する際にケーブルが研削装置本体に引っ掛かることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る金属板の研削装置を含む全体システムの一例を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る金属板の研削装置を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る金属板の研削装置を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る金属板の研削装置を示す上面図である。
図5】本発明の実施形態に係る金属板の研削装置の要部を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る金属板の研削装置で実際に金属板の研削領域を研削する際の初期状態を示す平面図である。
図7図6の状態から金属板の研削領域を研削する際の研削装置の移動ルートを示す図である。
図8】実施例における研削装置の配置および座標系を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
<金属板用研削装置を含む研削システム>
最初に本発明の実施形態に係る金属板の研削装置を含む研削システムについて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る金属板の研削装置を含む研削システムの一例を示す斜視図である。
【0018】
図1に示すように、研削システム100は、位置測定手段としての屋内位置測定システム200と、金属板の研削装置300(以下、単に研削装置300と記す)とを有する。
【0019】
本例において用いる屋内位置測定システム200は、研削装置300の位置測定手段を構成し、三角測量の原理に基づいて屋内空間での自己位置測定を行うものである。具体的には、屋内位置測定システム200は、屋内に設置された複数の航法用送信機11と、航法用受信機12と、位置演算用ソフトウェアを含むホストコンピュータ13とから構成される。
【0020】
研削装置300は、金属板10上を自走(走行)して、例えば金属板10の表面の微小な疵(欠陥)を研削除去(疵取り)するものであり、研削装置本体を構成する台車14と、金属板10を研削する研削部材22と、研削装置300を別途与えられる所定の目標位置に自律走行させるための制御系とを備える。また、研削装置本体を走行させる走行用駆動機構と、研削用駆動機構も備える。制御系は上記ホストコンピュータ13の一部を含む。研削装置300の詳細な構成は後述する。
【0021】
屋内位置測定システム200には、例えばIGPS(Indoor Global Positioning System)を適用することができる。IGPSは、衛星航法システム(GPS:Global Positioning System)を屋内位置測定システムに適用したものである。IGPSについては、米国特許第6,501,543号明細書に詳細に記載されている。
【0022】
屋内位置測定システム200にIGPSを適用する場合は、各航法用送信機11は、回転ファンビーム(扇形ビーム)を射出する。回転ファンビームはレーザファンビームであってもよく、他の光放射手段であってもよい。航法用受信機12は研削装置300の台車14に搭載され、航法用送信機11から射出される回転ファンビームを受信する。このとき、回転ファンビームは所定の角度でずれており、これを受信する航法用受信機12の3次元座標値(以下、「座標値」という)、すなわち位置または高さを測定することができる。航法用受信機12が受信した受信情報はホストコンピュータ13に無線伝送され、ホストコンピュータ13により、三角測量の原理に従って、航法用受信機12の位置を演算する。複数の航法用送信機11から受信した信号を用いて、また演算を繰り返すことにより、航法用受信機12を搭載した走行中の研削装置300の位置情報をリアルタイムで得ることができる。
【0023】
<研削装置>
[全体構成]
次に、本発明の実施形態に係る研削装置300の全体構成について詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る研削装置300を示すブロック図、図3は研削装置300を示す側面図、図4は研削装置300を示す上面図である。
【0024】
本実施形態において、研削装置300は、上述したように、研削装置本体を構成する台車14と、研削部材22と、研削装置300自体を所定の目標位置に自律走行させるための制御系とを備えている。また、台車14を含む研削装置本体を走行させる走行用駆動機構と、研削部材22を駆動する研削用駆動機構とをさらに備えている。
【0025】
研削用駆動機構は、研削部材22を金属板10の表面に沿った方向(例えば一軸方向)に走査させる走査アクチュエータ15と、上下にスライドして研削部材22を昇降させ、研削部材22を金属板10に垂直に所与の押付荷重で押し付ける昇降アクチュエータ16と、研削部材22を回転させる回転機構(モータ)23とを有する。台車14は車輪20を有し、走行用駆動機構は、車輪20を駆動および旋回させるモータ21を有する。
【0026】
研削部材22としては、例えば、不織布、布、紙、メッシュ等の基材に砥粒を接着剤で固定して構成された研磨布紙を、研削走査方向と垂直に積層させて構成されるホイールタイプのものを用いることができる。このような研磨布紙を積層させたホイールタイプの研削部材を用いる場合、研削部材22を回転機構23に接続し、回転機構23により研削部材22を回転させ、金属板10の表面へ接触させることで金属板10表面を研削し、表面の疵を除去することができる。
【0027】
図2に示すように、研削装置300の制御系は、搭載コンピュータ18を有する。制御系は、さらにI/Oボード17と、コントローラおよびドライバを含む駆動制御部19とを備えている。駆動制御部19は、走行用駆動機構を構成するモータ21、ならびに研削部材22を駆動する研削用駆動機構を構成する走査アクチュエータ15および昇降アクチュエータ16を制御する。上記ホストコンピュータ13もこの制御系の一部として機能する。制御系のホストコンピュータ13以外のものは台車14に搭載される。I/Oボード17は、ホストコンピュータ13と搭載コンピュータ18との間の信号の授受を行う。
【0028】
制御系の一部としても機能するホストコンピュータ13は、図2に示すように、上述した屋内位置測定システム200の航法用受信機12(図1参照)の位置を演算するための現在位置演算用ソフトウェア31と、目標研削位置、経路情報を設定し、また搭載コンピュータ18からの検査データ、研削位置情報を評価する設定ソフトウェア32とを有する。なお、研削装置300の制御系として、ホストコンピュータ13を用いずに、搭載コンピュータ18のみで制御するようにしてもよい。
【0029】
図3図4に示すように、台車14は、研削装置300の基部をなし、研削装置本体の主要部として構成され、車輪20はその一方の端部近傍に設けられている。そして、台車14の車輪20に対応する部分に航法用受信機12が取り付けられている。台車14の他方の端部には、台車14の長手方向に直交する方向に延在する枠部材41が取り付けられており、走査アクチュエータ15は、金属板10の表面に平行な方向である、枠部材41の延在方向に研削部材22を走査させることが可能となっている。研削部材22は、昇降アクチュエータ16を介して走査アクチュエータ15に取り付けられており、昇降アクチュエータ16とともに走査アクチュエータ15により走査される。
【0030】
車輪20と枠部材41との間の部分には、研削装置300を金属板10に固定するための固定部42が設けられている。固定部42は例えば電磁石からなる。台車14の固定部42に対応する部分には、従動車輪43が設けられている。従動車輪43は、駆動側の車輪20の動きに応じて自由に向きを変えることが可能となっている。なお、枠部材41、固定部42、従動車輪43も台車14とともに研削装置本体を構成する。
【0031】
制御系を構成する搭載コンピュータ18は、駆動制御部19と一体となって、台車14の車輪20側の端部に載置されている。
【0032】
研削装置300は、目標ルートに沿って自律走行する機能と、金属板10の疵取りを行う機能の2つの機能を有する。
【0033】
前者の機能については、例示した屋内位置測定システム200のような位置測定手段からの情報に基づいて、搭載コンピュータ18、駆動制御部19、車輪20、およびモータ21が担う。すなわち、前述のホストコンピュータ13における演算結果である研削装置300の位置情報および目標研削位置に関する情報は、それぞれ無線通信により搭載コンピュータ18に無線伝送され、搭載コンピュータ18において目標研削位置に対する現在位置の偏差を演算する。同偏差のうち研削装置300の位置に依存する偏差が0となるように、駆動制御部19から車輪20用のモータ21に速度指令等の制御信号を出力して、車輪20の速度およびステアリング角度のフィードバック制御を行うことで目標走行ルートに沿った自律走行を行わせる。
【0034】
後者の機能については、金属板10と接触させて研削を行う研削部材22の動作について、搭載コンピュータ18からON-OFFの指令を行うとともに、走査アクチュエータ15へ走査回数、昇降指令が送信される。研削部材22は、搭載コンピュータ18からの指令を元に所定の研削位置にて研削が開始されるとともに、昇降アクチュエータ16にて下降が開始され、所定の研削長さ分を走査アクチュエータ15により移動され、金属板10表面を研削する。研削長さ、研削回数についてはあらかじめホストコンピュータ13で設定ソフトウェア24により設定され、I/Oボード17を介して搭載コンピュータ18へデータが転送される。
【0035】
実際の研削の際には、研削装置300を停止させ、例えば電磁石からなる固定部42により研削装置300を金属板10に固定し、昇降アクチュエータ16を下降させて研削部材22を金属板10に押し付けた状態で、走査アクチュエータ15により研削部材22を金属板10表面に沿った方向に走査させることにより、金属板10表面の疵を含む部分を研削する。
【0036】
[研削装置の要部の構成]
次に、本実施形態に係る研削装置300の要部について説明する。
図5は、本実施形態に係る研削装置300の要部を示す斜視図である。図5に示すように、本実施形態では、電源26から研削装置300の研削用駆動機構(走査アクチュエータ15、昇降アクチュエータ16、および回転機構23)および走行用駆動機構(モータ21)へ電力を供給する電源ケーブル29と、研削用駆動機構および走行用駆動機構を遠隔から通信により制御を行うための通信ケーブル30の双方が研削装置本体に形成された1つのケーブル接続口28に接続される。
【0037】
研削部材22(図3図4参照)が設けられた側を研削装置本体の前方とした場合に、ケーブル接続口28は研削装置本体の後方かつ研削装置本体の幅方向一端部の、研削装置本体の頂部の高さより低い位置に設けられる。なお、「研削装置本体の後方」とは、研削装置本体の前後方向(台車の長手方向)において、寸法中心より後ろ側(研削部材22とは反対側)の部分を指す。また、「研削装置本体の幅方向」とは、平面視において前後方向と直交する方向を指す。本実施形態では、研削装置本体を構成する台車14の側面にケーブル接続口28が形成されており、ケーブル接続口28には電源ケーブル29および通信ケーブル30が一体となったケーブル25が接続されている。台車14の内部にはケーブル接続口28と駆動機構(研削用駆動機構および走行用駆動機構)とを繋ぐ内部線50が設けられている。
【0038】
このように、ケーブル類を接続するケーブル接続口28を研削装置本体(台車14)の後方かつ幅方向端部に1か所のみ形成することで、ケーブル同士(電源ケーブル29と通信ケーブル30)の干渉、台車14への干渉(引っ掛かり)を防止することが可能となる。
【0039】
特に、ケーブル接続口28を研削装置本体の後方(すなわち研削部材22とは反対側)に設けることで、研削装置300を前進させて研削部材22で金属板を研削する際に、研削部材22にケーブル25(電源ケーブル29および通信ケーブル30)が接触することを抑制することができる。
【0040】
また、ケーブル接続口28を研削装置本体の頂部の高さより低い位置に設けることで、研削装置本体(台車14)にケーブル接続口を直接形成することができ、支持材等の別部材を用いる必要がないため、研削装置300の大型化を抑制することができる。
【0041】
さらに、ケーブル接続口を研削装置本体の頂部より高い位置に設ける構成と比較して、ケーブル接続口28から駆動機構(研削用駆動機構および走行用駆動機構)等までの距離が短くなるため、ケーブル接続口28と駆動機構とを繋ぐ内部線50を短くすることができ、研削装置300の構成を簡略化することができる。
【0042】
また、本実施形態において、図6に示すように、研削装置300において、ケーブル接続口28が台車14の後方かつ幅方向一端部に存在し、研削装置300の前方に存在する金属板10の研削領域27を研削する場合、研削装置300の移動ルート(移動経路)を、図7に示す(1)~(11)の順序とすることが好ましい。すなわち、研削装置300は、研削開始位置から前後方向(Y方向)の前方に移動した後、幅方向(X方向)他端部側(ケーブル接続口が形成されている側とは反対側)へ移動する手順を繰り返す。このときのX方向の送りは、研削装置300のY方向位置を元の位置に戻しながら行われる。なお、図6図7では、電源ケーブル29のみを図示しており、通信ケーブル30は図示を省略している。
【0043】
このように、研削装置300の移動ルートを、研削開始位置からケーブル接続口28の前方方向とし、かつ幅方向の送りをケーブル接続口28とは反対方向とすることで、台車14とケーブル25の干渉をより有効に抑制することが可能となり、より簡便な方法でのケーブルハンドリングが可能となる。
【0044】
通常、ケーブル類をハンドリングする際には、タワー型のケーブルハンドリング装置(例えば特許文献1に開示されていたケーブルフィーダ)を設置するが、このような手法を用いることでハンドリング装置を設置することなく、かつ研削装置本体(台車14)も複雑な移動経路を設定することなく研削動作が可能となる。
【0045】
なお、上記実施形態では、一例として研削装置本体を構成する台車14にケーブル接続口28が形成されている場合を示したが、研削装置本体を構成する枠部材41や固定部42等にケーブル接続口28を形成してもよい。また、上記実施形態では一例としてケーブル接続口28を研削装置本体(台車14)の後方かつ幅方向一端部に形成していたが、ケーブル接続口を研削装置本体(台車14)の幅方向他端部側(一端部とは反対側)または研削装置本体の前方側に形成してもよい。その場合は、ケーブル接続口の位置に応じて研削装置本体の移動ルートを別途規定する必要がある。すなわち、研削装置本体の前後方向(Y方向)および幅方向(X方向)の移動ルートを、ケーブル接続口の形成位置とは反対側とする必要がある。
【0046】
また、上記実施形態では一例として、研削部材22を基材(布や紙)に砥粒を接着剤で固定した研磨布紙を研削走査方向とは垂直に積層させたホイールタイプとしたが、研削部材の形状(方式)はこれに限らず積層せずベルト状にしたベルトタイプや、ディスク状に設置したディスクタイプ等であってもよい。また、本実施形態では、ケーブル接続口28に接続されるケーブルが電源ケーブル29と通信ケーブル30の2つとされていたが、どちらか一方のみでもよい。
【実施例0047】
図1に示す研削システムを用いて金属板表面の研削を実施した。装置構成については、図2に示すものを用い、研削装置の配置、座標系については図8に概要図を示す。比較例として本発明の範囲外の条件にて金属板表面の研削を実施した。表1に本発明例と比較例の比較結果を示す。
【0048】
表1に示すように本発明例のケーブル配置および研削時の移動ルートを用いて研削処理を行うことにより、研削装置のケーブル干渉を発生させることなく安定した研削動作が可能であることが明らかとなった。
【0049】
【表1】
【符号の説明】
【0050】
10 金属板
11 航法用送信機
12 航法用受信機
13 ホストコンピュータ
14 台車
15 走査アクチュエータ
16 昇降アクチュエータ
17 I/Oボード
18 搭載コンピュータ
19 駆動制御部
20 車輪
21 モータ
22 研削部
25 ケーブル
26 電源
27 研削領域
28 ケーブル接続口
29 電源ケーブル
30 通信ケーブル
100 研削システム
200 屋内位置測定システム
300 金属板用研削装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8