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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067277
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/20 20060101AFI20220425BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
B60C9/20 G
B60C9/20 J
B60C9/20 L
B60C9/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175906
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田 和貴
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BA05
3D131BB03
3D131BC31
3D131BC34
3D131BC36
3D131BC39
3D131BC51
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA43
3D131EA02U
3D131EB24Z
3D131KA02
3D131KA03
(57)【要約】
【課題】ベルトプライの端部でのセパレーションを抑制することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤは、カーカスと、トレッドにおけるカーカスの外周にタイヤ径方向内側から外側へ向かって順に積層される第1、第2、及び第3のベルトプライと、を備え、第3のベルトプライの端部は、第2のベルトプライの端部よりもタイヤ幅方向内側に位置し、且つタイヤ径方向において第2のベルトプライの外周面から離間して位置しており、第3のベルトプライの端部と第2のベルトプライの外周面との間に配置されるベルト間ゴムと、第1及び第2のベルトプライの端部とカーカスの外周面との間に配置されるベルト下ゴムと、を備え、ベルト間ゴムは、ベルト下ゴムよりもゴム硬度が高く、且つベルト下ゴムは、ベルト間ゴムよりも損失正接tanδが小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスと、トレッドにおける前記カーカスの外周にタイヤ径方向内側から外側へ向かって順に積層される第1、第2、及び第3のベルトプライと、を備え、
前記第3のベルトプライの端部は、前記第2のベルトプライの端部よりもタイヤ幅方向内側に位置し、且つタイヤ径方向において前記第2のベルトプライの外周面から離間して位置しており、
前記第3のベルトプライの端部と前記第2のベルトプライの外周面との間に配置されるベルト間ゴムと、前記第1及び第2のベルトプライの端部と前記カーカスの外周面との間に配置されるベルト下ゴムと、を備え、
前記ベルト間ゴムは、前記ベルト下ゴムよりもゴム硬度が高く、且つ前記ベルト下ゴムは、前記ベルト間ゴムよりも損失正接tanδが小さい、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第3のベルトプライの端部から前記第2のベルトプライの端部までのタイヤ幅方向の距離は、前記第2のベルトプライの端部からタイヤ外表面までのタイヤ幅方向の距離よりも小さい、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第3のベルトプライの端部から前記トレッドの外表面までのタイヤ径方向の距離は、前記第3のベルトプライの端部からサイドウォールの外表面までのタイヤ幅方向の距離よりも小さい、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックやバスに用いられる空気入りタイヤとして、トレッドにおけるカーカスの外周に3枚以上のベルトプライが設けられたタイヤが公知である。例えば、特許文献1には、4枚のベルトプライを設けた空気入りタイヤが開示されている。
【0003】
ところで、ベルトプライの端部では、歪が集中して、セパレーションが発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-99077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、ベルトプライの端部でのセパレーションを抑制することができる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の空気入りタイヤは、カーカスと、トレッドにおける前記カーカスの外周にタイヤ径方向内側から外側へ向かって順に積層される第1、第2、及び第3のベルトプライと、を備え、
前記第3のベルトプライの端部は、前記第2ベルトプライの端部よりもタイヤ幅方向内側に位置し、且つタイヤ径方向において前記第2のベルトプライの外周面から離間して位置しており、
前記第3のベルトプライの端部と前記第2のベルトプライの外周面との間に配置されるベルト間ゴムと、前記第1及び第2のベルトプライの端部と前記カーカスの外周面との間に配置されるベルト下ゴムと、を備え、
前記ベルト間ゴムは、前記ベルト下ゴムよりもゴム硬度が高く、且つ前記ベルト下ゴムは、前記ベルト間ゴムよりも損失正接tanδが小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における切断面の片側を示す半断面図
図2図1に示す空気入りタイヤのII領域拡大図
図3図2に示す空気入りタイヤのIII領域拡大図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、図1図3を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0009】
各図において、第1の方向D1は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の回転中心であるタイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2である。なお、タイヤ周方向(図示していない)は、タイヤ回転軸周りの方向である。
【0010】
タイヤ幅方向D1において、内側は、タイヤ赤道面S1に近い側となり、外側は、タイヤ赤道面S1から遠い側となる。また、タイヤ径方向D2において、内側は、タイヤ回転軸に近い側となり、外側は、タイヤ回転軸から遠い側となる。
【0011】
タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面のことである。また、タイヤ赤道線とは、タイヤ1のタイヤ径方向D2の外表面(後述する、トレッド面3a)とタイヤ赤道面S1とが交差する線のことである。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア(図示していない)を有する一対のビード(図示していない)と、各ビードからタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール2と、一対のサイドウォール2のタイヤ径方向D2の外端に連接され、タイヤ径方向D2の外表面が路面に接地するトレッド3とを備えている。本実施形態においては、タイヤ1は、内部に空気が入れられる空気入りタイヤ1であって、リムに装着される。
【0013】
また、タイヤ1は、一対のビードコアの間に架け渡されるカーカス4と、カーカス4の内側に配置され、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れるインナーライナ5とを備えている。カーカス4及びインナーライナ5は、ビード、サイドウォール2、及びトレッド3に亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
【0014】
トレッド3は、路面に接地するトレッド面3aを有するトレッドゴム30と、トレッドゴム30とカーカス4との間に配置されるベルト6とを備えている。そして、トレッド面3aは、実際に路面に接地する接地面を有しており、当該接地面のうち、タイヤ幅方向D1の外端は、接地端3bという。なお、該接地面は、タイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤ1を平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド面3aを指す。
【0015】
正規リムは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ1ごとに定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRA及びETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0016】
正規内圧は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATIONPRESSURE」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には180kPaとするが、タイヤに、Extra Load、又は、Reinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。
【0017】
正規荷重は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には内圧180kPaの対応荷重の85%とする。
【0018】
トレッドゴム30は、トレッド面3aを有するキャップゴム30aと、キャップゴム30aのタイヤ径方向D2内側に設けられるベースゴム30bと、を有する。キャップゴム30aは、タイヤ周方向に延びる複数の主溝31aを備えている。主溝31aは、タイヤ周方向に連続して延びている。主溝31aは、例えば、摩耗するにしたがって露出することで摩耗度合が分かるように、溝を浅くしてある部分、所謂、トレッドウエアインジケータ(図示していない)を備えていてもよい。また、例えば、主溝31aは、5mm以上の溝幅を有していてもよい。なお、主溝31aの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、二つとしている。
【0019】
トレッドゴム30は、複数の主溝31a及び一対の接地端3bによって区画される複数の陸3c,3dを備えている。なお、陸3c,3dの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、三つとしている。
【0020】
主溝31aと接地端3bによって区画される陸3cは、ショルダー陸3cといい、隣接される一対の主溝31aによって区画される陸3dは、センター陸3dという。ショルダー陸3cは、タイヤ周方向に延びる副溝31bを備える。また、センター陸3dは、タイヤ周方向に延びる一対の副溝31cを備える。副溝31b,31cの溝幅は、主溝31aの溝幅よりも狭く、例えば5mm以下である。
【0021】
トレッド3におけるカーカス4の外周には、カーカス4を補強するためのベルト6が設けられている。ベルト6は、タイヤ径方向D2内側から外側へ向かって順に積層される4枚のベルトプライ61~64を備える。4枚のベルトプライ61~64は、何れもタイヤ赤道面S1を挟んでタイヤ幅方向D1の両側に連続して配置される。
【0022】
4枚のベルトプライ61~64は、それぞれ簾状に平行配列した複数本のコードを含み、それらをゴム被覆して形成されている。コードはスチールコードが好ましい。
【0023】
4枚のベルトプライ61~64のうち、カーカス4から外周に向けて第1番目となる第1ベルトプライ61のコードは、タイヤ周方向に対して35~75°の角度で傾斜して延びている。本実施形態において、第1ベルトプライ61のコードは、タイヤ周方向に対して55°の角度で傾斜している。
【0024】
また、4枚のベルトプライ61~64のうち、カーカス4から外周に向けて第2番目となる第2ベルトプライ62及び第3番目となる第3ベルトプライ63のコードは、タイヤ周方向に対して互いに逆方向に傾斜して交差している。また、第2ベルトプライ62と第3ベルトプライ63のコードは、タイヤ周方向に対して同じ角度で傾斜している。第2ベルトプライ62及び第3ベルトプライ63は、合わせてワーキングベルトとも称される。第2ベルトプライ62及び第3ベルトプライ63のコードは、タイヤ周方向に対して10~30°の角度で傾斜して延びている。本実施形態において、第2ベルトプライ62及び第3ベルトプライ63のコードは、タイヤ周方向に対して20°の角度で傾斜している。また、第2ベルトプライ62のコードは、タイヤ周方向に対して第1ベルトプライ61のコードと同じ向きに傾斜している。
【0025】
また、4枚のベルトプライ61~64のうち、カーカス4から外周に向けて第4番目となる第4ベルトプライ64のコードは、タイヤ周方向に対して10~30°の角度で傾斜して延びている。本実施形態において、第4ベルトプライ64のコードは、タイヤ周方向に対して20°の角度で傾斜している。また、第4ベルトプライ64のコードは、タイヤ周方向に対して第3ベルトプライ63のコードと同じ向きに傾斜している。
【0026】
第2ベルトプライ62の端部62aは第1ベルトプライ61の端部61aよりもタイヤ幅方向D1外側に位置する。また、第3ベルトプライ63の端部63aは、第1ベルトプライ61の端部61aよりもタイヤ幅方向D1外側に位置し、且つ第2ベルトプライ62の端部62aよりもタイヤ幅方向D1内側に位置する。また、第4ベルトプライ64の端部64aは、第1ベルトプライ61の端部61aよりもタイヤ幅方向D1内側に位置する。よって、第1~第4ベルトプライ61~64は、第4ベルトプライ64、第1ベルトプライ61、第3ベルトプライ63、第2ベルトプライ62の順にタイヤ幅方向D1の幅が広くなっている。
【0027】
第1ベルトプライ61の端部61a、第2ベルトプライ62の端部62a、及び第3ベルトプライ63の端部63aは、副溝31bよりもタイヤ幅方向D1外側に位置する。また、第4ベルトプライ64の端部64aは、主溝31aよりもタイヤ幅方向D1外側且つ副溝31bよりもタイヤ幅方向D1内側に位置する。
【0028】
第1ベルトプライ61の外周面は、第2ベルトプライ62に隙間なく接触している。一方、第1ベルトプライ61の内周面は、タイヤ幅方向D1の内側部分がカーカス4と隙間なく接触し、タイヤ幅方向D1の外側部分がカーカス4と離間するように配置されている。なお、第1ベルトプライ61の内周面のうちタイヤ幅方向D1の外側部分は、エッジテープ65で被覆されている。エッジテープ65は、部材同士の接着性を向上させるためのものである。
【0029】
第3ベルトプライ63の端部63aと第2ベルトプライ62の外周面との間には、ベルト間ゴム71が配置されている。ベルト間ゴム71のうちタイヤ幅方向D1内側の部分は、第3ベルトプライ63の内周面と第2ベルトプライ62の外周面とで挟み込まれている。一方、ベルト間ゴム71のうちタイヤ幅方向D1外側の部分は、ベースゴム30bと接触しており、ベースゴム30bの内周面と第2ベルトプライ62の外周面とで挟み込まれている。また、ベルト間ゴム71のうちタイヤ幅方向D1外側の部分は、第2ベルトプライ62の外周面に沿って延び、端部62aに達している。なお、第2ベルトプライ62の端部62aと第3ベルトプライ63の端部63aは、それぞれエッジテープ65で包み込まれている。
【0030】
第1ベルトプライ61の端部61a及び第2ベルトプライ62の端部62aとカーカス4の外周面との間には、ベルト下ゴム72が配置されている。ベルト下ゴム72のうちタイヤ幅方向D1内側の部分は、第1ベルトプライ61の内周面及び第2ベルトプライ62の内周面とカーカス4の外周面とで挟み込まれている。一方、ベルト下ゴム72のうちタイヤ幅方向D1外側の部分は、ベースゴム30bと接触しており、ベースゴム30bの内周面とカーカス4の外周面とで挟み込まれている。また、ベルト下ゴム72のうちタイヤ幅方向D1外側の部分は、第2ベルトプライ62の端部62aを越えてサイドウォール2まで延び、サイドウォール2の外表面に配置されるサイドウォールゴム21と接している。
【0031】
ところで、第3ベルトプライ63は、ワーキングベルトのうちタイヤ径方向D2外側のベルトプライであり、第3ベルトプライ63の端部63aでは特に歪が集中して、セパレーションが発生しやすい。本実施形態に係る構成によれば、第3ベルトプライ63の端部63aが第2ベルトプライ62の端部62aから離れているため、第3ベルトプライ63の端部63aにかかる歪が低減され、第3ベルトプライ63の端部63aでのセパレーションが抑制される。
【0032】
ベルト間ゴム71は、ベルト下ゴム72よりもゴム硬度が高くなっている。ベルト間ゴム71のゴム硬度を高くすることで、第3ベルトプライ63の端部63aの動きが抑制されるため、第3ベルトプライ63の端部63aでのセパレーションが効果的に抑制される。なお、本発明のゴム硬度は、JISK6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)により25℃で測定したゴム硬度である。本実施形態においては、例えば、ベルト間ゴム71のゴム硬度は65~75°であり、ベルト下ゴム72のゴム硬度は50~60°である。
【0033】
ベルト間ゴム71のゴム硬度は、ベースゴム30bのゴム硬度よりも高くなっている。この構成によれば、ベルト間ゴム71に高硬度のゴムを配置することにより、第3ベルトプライ63の端部63aの動きを抑制しセパレーションを防止することができる。例えば、ベースゴム30bのゴム硬度は60~65°である。
【0034】
また、ベルト下ゴム72のゴム硬度は、ベースゴム30bのゴム硬度よりも低くなっている。この構成によれば、トレッド面3aに近い部材であるベースゴム30bに高硬度のゴムを配置することにより、第2ベルトプライ62の端部62a及び第3ベルトプライ63の端部63aの動きを抑制しセパレーションを防止することができる。
【0035】
また、ベルト下ゴム72のゴム硬度は、サイドウォールゴム21のゴム硬度よりも低くなっている。この構成によれば、ベルト下ゴム72に低硬度のゴムを配置することにより、第2ベルトプライ62の端部62aにかかる歪を吸収しセパレーションを防止することができる。例えば、サイドウォールゴム21のゴム硬度は60~65°である。
【0036】
ベルト下ゴム72は、ベルト間ゴム71よりも損失正接tanδが小さくなっている。すなわち、ベルト下ゴム72は、ベルト間ゴム71よりも発熱性が低い。ベルト下ゴム72の損失正接tanδを小さくする(低発熱性とする)ことで、第2ベルトプライ62の端部62aでの発熱を抑えることができ、第2ベルトプライ62の端部62aでのセパレーションが抑制される。なお、本発明の損失正接tanδは、USM社製レオスペクトロメーターE4000を用いて、周波数50Hz、静歪み10%、動歪み2%、温度0℃の条件で損失係数tanδを測定したものである。本実施形態において、例えば、ベースゴム30bの損失正接tanδを“100”とした場合、ベルト下ゴム72の損失正接tanδは“60”であり、ベルト間ゴム71の損失正接tanδは“130”である。
【0037】
ベースゴム30bの損失正接tanδは、ベルト間ゴム71の損失正接tanδよりも小さくなっている。この構成によれば、ベースゴム30bに低発熱性のゴムを配置することにより、第2ベルトプライ62の端部62a及び第3ベルトプライ63の端部63aにおける発熱によるセパレーションの発生を防止することができる。例えば、ベースゴム30bの損失正接tanδを“100”とした場合、ベルト間ゴム71の損失正接tanδは、“130”である。
【0038】
また、ベルト下ゴム72の損失正接tanδは、ベースゴム30bの損失正接tanδよりも小さくなっている。この構成によれば、ベルト下ゴム72に低発熱性のゴムを配置することにより、第2ベルトプライ62の端部62aにおける発熱によるセパレーションの発生を防止することができる。例えば、ベースゴム30bの損失正接tanδを“100”とした場合、ベルト下ゴム72は“60”である。
【0039】
また、ベルト下ゴム72の損失正接tanδは、サイドウォールゴム21の損失正接tanδよりも小さくなっている。この構成によれば、ベルト下ゴム72に低発熱性のゴムを配置することにより、第2ベルトプライ62の端部62aにおける発熱によるセパレーションの発生を防止することができる。例えば、ベースゴム30bの損失正接tanδを“100”とした場合、サイドウォールゴム21の損失正接tanδは“170”である。
【0040】
ベルト間ゴム71は、エッジテープ65と同様、接着性に優れたゴムで形成される。これにより、加硫成型前の未加硫タイヤにおいて、第2ベルトプライ62と第3ベルトプライ63の間の接着性を高めて、未加硫タイヤ成形時におけるエア入りを抑制することができる。
【0041】
図2に示すように、第3ベルトプライ63の端部63aにおけるコード631と、このコード631に最も近い第2ベルトプライ62のコード621との間の距離Dは、1.8~3.8mmであるのが好ましい。距離Dを1.8~3.8mmとすることで、耐偏摩耗性を維持しながら耐久性を向上できる。距離Dが1.8mmよりも小さいと、ショルダー部の接地長が短くなるため、(ショルダー部の接地長B)/(センター部の接地長A)が小さくなり、耐久性は向上するが、耐偏摩耗性は悪化するおそれがある。一方、距離Dが3.8mmよりも大きいとき、ショルダー部の接地長が長くなるため、(ショルダー部の接地長B)/(センター部の接地長A)が大きくなり、耐偏摩耗性は向上するが、耐久性が悪化するおそれがある。なお、ショルダー部の接地長Bは、具体的には接地端3bでの接地長であり、センター部の接地長Aは、具体的にはタイヤ赤道面S1での接地長である。
【0042】
第3ベルトプライ63の端部63aから第2ベルトプライ62の端部62aまでのタイヤ幅方向D1の距離Wは、4~17mmであるのが好ましい。距離Wが4mmよりも小さいと、ベルト6とトレッドゴム30の間、具体的には第2ベルトプライ62の端部62a及び第3ベルトプライ63の端部63a付近にエア溜まりが発生し、耐久性が悪化するおそれがある。一方、距離Wが17mmよりも大きいと、第2ベルトプライ62の端部62aに歪が集中し、耐久性が悪化するおそれがある。
【0043】
また、距離Wは、第2ベルトプライ62の端部62aからサイドウォール2の外表面2aまでのタイヤ幅方向D1の距離Xよりも小さいのが好ましい。この構成によれば、第2ベルトプライ62の端部62aが第3ベルトプライ63の端部63aから離れすぎず、また、第2ベルトプライ62の端部62aがサイドウォール2の外表面2aからある程度離れるため、第2ベルトプライ62の端部62aに歪が集中するのを防いで、第2ベルトプライ62の端部62aでのセパレーションが抑制される。
【0044】
図3に示すように、第3ベルトプライ63の端部63aからトレッド面3aまでのタイヤ径方向D2の距離Yは、第3ベルトプライ63の端部63aからサイドウォール2の外表面2aまでのタイヤ幅方向D1の距離Zよりも小さい。この構成によれば、第3ベルトプライ63の端部63aがサイドウォール2の外表面2aからある程度離れるため、第3ベルトプライ63の端部63aに歪が集中するのを防いで、第3ベルトプライ63の端部63aでのセパレーションが抑制される。
【0045】
なお、断面形状、及び部材の位置(距離W、距離X、距離Y、距離Zなど)は、例えば、タイヤ1をタイヤ周方向に100mm程度の長さで2箇所切断して作成したカットサンプルにおいて、ビード間隔が正規リム装着状態になるように、ガムテープ等を貼ることで保持した状態にて計測される。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、カーカス4と、トレッド3におけるカーカス4の外周にタイヤ径方向D2内側から外側へ向かって順に積層される第1、第2、及び第3のベルトプライ61,62,63と、を備え、第3のベルトプライ63の端部63aは、第2のベルトプライ62の端部62aよりもタイヤ幅方向D1内側に位置し、且つタイヤ径方向D2において第2のベルトプライ62の外周面から離間して位置しており、第3のベルトプライ63の端部63aと第2のベルトプライ62の外周面との間に配置されるベルト間ゴム71と、第1及び第2のベルトプライ61,62の端部61a,62とカーカス4の外周面との間に配置されるベルト下ゴム72と、を備え、ベルト間ゴム71は、ベルト下ゴム72よりもゴム硬度が高く、且つベルト下ゴム72は、ベルト間ゴム71よりも損失正接tanδが小さいものである。
【0047】
この構成によれば、第3のベルトプライ63の端部63aが第2のベルトプライ62の端部62aから離れているため、第3のベルトプライ63の端部63aにかかる歪が低減され、第3のベルトプライ63の端部63aでのセパレーションが抑制される。また、ベルト間ゴム71のゴム硬度を高くすることで、第3のベルトプライ63の端部63aの動きが抑制されるため、第3のベルトプライ63の端部63aでのセパレーションが効果的に抑制される。さらに、ベルト下ゴム72の損失正接tanδを小さくすることで、第2のベルトプライ62の端部62aでの発熱を抑えることができ、第2のベルトプライ62の端部62aでのセパレーションが抑制される。
【0048】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第3のベルトプライ63の端部63aから第2のベルトプライ62の端部62aまでのタイヤ幅方向D1の距離Wは、第2のベルトプライ62の端部62aからタイヤ外表面までのタイヤ幅方向D1の距離Xよりも小さい、という構成である。
【0049】
この構成によれば、第2のベルトプライ62の端部62aに歪が集中するのを防いで、第2のベルトプライ62の端部62aでのセパレーションが抑制される。
【0050】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第3のベルトプライ63の端部63aからトレッド3の外表面3aまでのタイヤ径方向D2の距離Yは、第3のベルトプライ63の端部63aからサイドウォール2の外表面2aまでのタイヤ幅方向D1の距離Zよりも小さい。この構成によれば、第3のベルトプライ63の端部63aがサイドウォール2の外表面2aからある程度離れるため、第3のベルトプライ63の端部63aに歪が集中するのを防いで、第3のベルトプライ63の端部63aでのセパレーションが抑制される。
【0051】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0052】
上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第3のベルトプライ63の端部63aから第2のベルトプライ62の端部62aまでのタイヤ幅方向D1の距離Wは、第2のベルトプライ62の端部62aからタイヤ外表面までのタイヤ幅方向D1の距離Xよりも小さい、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、かかる構成に限られない。例えば、トレッドゴム30の物性値や厚みを適宜調整することで、距離Wを距離Xよりも大きくすることもできる。
【符号の説明】
【0053】
1…空気入りタイヤ、2…サイドウォール、2a…サイドウォールの外表面、3…トレッド、3a…トレッド面、3b…接地端、3c,3d…陸、4…カーカス、5…インナーライナ、6…ベルト、21…サイドウォールゴム、30…トレッドゴム、30a…キャップゴム、30b…ベースゴム、31a…主溝、31b,31c…副溝、61…第1ベルトプライ、61a…第1ベルトプライの端部、62…第2ベルトプライ、62a…第2ベルトプライの端部、63…第3ベルトプライ、63a…第3ベルトプライの端部、64…第4ベルトプライ、64a…第4ベルトプライの端部、71…ベルト間ゴム、72…ベルト下ゴム、621…コード、631…コード、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、S1…タイヤ赤道面
図1
図2
図3