(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006728
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ガス漏れ防止具
(51)【国際特許分類】
F28G 1/16 20060101AFI20220105BHJP
F23J 3/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
F28G1/16 Z
F23J3/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109140
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】北村 智昭
【テーマコード(参考)】
3K261
【Fターム(参考)】
3K261GC02
3K261GC13
3K261GC39
(57)【要約】
【課題】熱交換器の炉壁にスートブロワのランス管が貫入された箇所に設置されたウォールボックスにおいて、その内部に設置されたシールリングが破損した場合に熱交換器内のガスがハウジング内に漏出することを効率よく防ぐことができるとともに、シールリングの交換頻度を抑制できるガス漏れ防止具を提供する。
【解決手段】本発明のガス漏れ防止具1aは、側面2cに連結具7が設置され、スートブロワのランス管が遊挿される略円筒状のケーシング2と、ケーシング2の内部に設置された一対の支持部3,3と、ケーシング2のウォールボックスに面する側の開口端2aに設置されたシート状のシール部材4と、ケーシング2の側面2cに設けられた排気口2dに一端が接続された排気管5と、弾性を有する多数の紐状体6aからなり、開口端2bに設置された簾状部材6を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに一部が収容されたスートブロワのランス管が熱交換器の炉壁に貫入される箇所に設置され、前記炉壁と前記ランス管との隙間を塞ぐシールリング、及び、前記炉壁の外面側に設置されるとともに前記ランス管が遊挿される挿入孔を有するウォールボックスに取り付けられるガス漏れ防止具であって、
前記ウォールボックスに当接するように設置されるとともに、前記ウォールボックスとの当接面に前記ランス管が遊挿される開口部を有し、この開口部及び前記挿入孔を介して前記ウォールボックスに連通する筒状のケーシングと、
前記ケーシングの側面に連通する排気管と、を備え、
前記ケーシングは、
前記ランス管の径方向への変位を規制しつつ、前記ランス管を軸方向へ変位可能に支持する支持部を備えていることを特徴とするガス漏れ防止具。
【請求項2】
前記ケーシングは、
ヒンジを介して開閉自在に連結された一対の半割体からなることを特徴とする請求項1に記載のガス漏れ防止具。
【請求項3】
前記支持部に代えて、半円筒状をなす一対の分割体と、この分割体の中心軸が中心を通る仮想円の円周方向へ等間隔に配置されるとともに、外面が前記ランス管の側面に対して当接可能に配置された複数の球体と、を備え、
前記球体は、
前記外面を露出させた状態で前記分割体に一部が埋設されるとともに、前記分割体によって、固定された回転軸が無く、あらゆる方向へ回転可能な状態で保持されており、
前記分割体は、
分割面が一対の前記半割体の分割面と一致するように一対の前記半割体の内部にそれぞれ設置されていることを特徴とする請求項2に記載のガス漏れ防止具。
【請求項4】
前記ケーシングの開口端と前記ウォールボックスとの前記当接面がシールされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス漏れ防止具。
【請求項5】
弾性を有する複数の紐状体からなる簾状部材を備え、
前記紐状体の基端は、
前記ケーシングにおいて前記ウォールボックスに当接しない側の開口端に設けられた開口部の内壁面に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガス漏れ防止具。
【請求項6】
前記簾状部材を構成する前記紐状体は、前記内壁面と前記ランス管との間隔よりも短い又は前記間隔よりも太いことを特徴とする請求項5に記載のガス漏れ防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の伝熱エレメントに付着した煤塵の除去に用いられるスートブロワに設置されるガス漏れ防止具に係り、特に、熱交換器の炉壁にスートブロワのランス管が貫入される箇所におけるガス漏れを効率的に防ぐことが可能なガス漏れ防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所等で使用されるガスガスヒータなどの熱交換器では、炉内に設置された伝熱エレメントに煤や灰などの煤塵が付着する。この煤塵が堆積すると、熱交換器の伝熱効率が低下する原因となるため、スートブロワによって蒸気を吹き付けるなどして、煤塵を定期的に除去する必要がある。
【0003】
スートブロワについて
図5及び
図6を用いて説明する。
図5(a)は回転再生式空気予熱器と呼ばれる熱交換器にスートブロワが設置された状態を模式的に示した図であり、
図5(b)は
図5(a)において破線で丸く囲まれた部分(A部)を拡大した図である。また、
図6(a)は
図5(b)におけるB-B線矢視断面図であり、
図6(b)は
図5(b)においてウォールボックスが炉壁の挿通孔の中心軸を通る鉛直平面で切断された状態を示している。
なお、
図5(a)では熱交換器の内部構造を見易くするために手前側の炉壁の図示を省略している。
【0004】
図5(a)に示すように、熱交換器51では、伝熱エレメント(図示せず)が収容されたロータ52がポスト53を中心として回転可能に円筒容器54の内部に設置されており、複数のひだを有する矩形状の板材からなる伝熱エレメントがポスト53を囲むとともにポスト53の回転軸方向に対して板材が平行をなすように配置されている。なお、ロータ52はポスト53の回転軸が鉛直方向に対して平行となるように設置されている。
【0005】
熱交換器51では、セクター板(図示せず)によって完全に分離された状態のロータ52に対し、互いに逆方向から矢印で示すように流れ込んだ排出ガスと燃焼空気に伝熱エレメントを交互に接触させる構造となっている。伝熱エレメントを通過した排出ガスは、ロータ52の出口(排出ガスの出口側の気体流路)付近で最も温度が低下するため、ロータ52の低温側には凝縮した微粒子等が集中して付着する。この微粒子等を圧縮空気や乾燥蒸気によって吹き飛ばすために、ロータ52の低温側には、スートブロワ55が設置されている。
【0006】
スートブロワ55は、蒸気を供給するパイプが内部に設置されたランス管56と、このランス管56の基端部に設置されたモータ57を備えている。ランス管56は、鉛直方向と平行をなす炉壁51aに形成された挿通孔から熱交換機51の内部に挿入されており、炉壁51aには、熱交換器51の内部においてランス管56を支持するための支持具58が設置されている。
【0007】
支持具58は、上端に転動体が回転自在に取り付けられるとともに下端がランス管56に連結された連結部材59と、上記転動体を転動可能に支持して連結部材59を長手方向に案内するレール60からなる。すなわち、ランス管56は支持具58によって水平方向へ移動可能に支持されている。
また、
図5(a)に破線で示すように、ランス管56の基端部とモータ57は、ハウジング61によって囲まれている。
【0008】
図5(b)及び
図6(b)に示すように、熱交換器51の炉壁51aには、スートブロワ55のランス管56を貫入させる箇所において、ランス管56が遊挿される挿入孔62aを有するウォールボックス62がランス管56を覆うように炉壁51aの内面側と外面側にそれぞれ設置されている。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、ウォールボックス62の内部には、炉壁51aの挿通孔51bとの隙間を塞ぐようにカーボン製のシールリング63がランス管56に外挿されている。
【0009】
ランス管56に外挿されたシールリング63は、水平方向へ移動するランス管56との間の摩擦により内周面が摩耗する。この摩耗が成長してシールリング63が破損してしまうと、炉壁51aの挿通孔51bとランス管56の隙間を通って熱交換器51の内部から漏出したガスがハウジング61に充満する。このガスは臭いがきつく、スートブロワ55の点検作業に支障をきたすため、従来、ハウジング61の扉を開けてガスが拡散し易い状況にしたり、送風機を用いて強制換気したりするなどの対策を採る必要があった。
【0010】
したがって、シールリング63が破損した場合には、できるだけ早く新しい物と交換することが望ましい。しかしながら、熱交換器51から漏れ出したガスは腐食性を有するため、シールリング63を交換する際には、熱交換器51の運転を停止することが必要である。熱交換器51の運転を停止すると、発電できない状態となるが、発電を頻繁に停止することは困難である。そのため、シールリング63が破損したとしても、その都度、熱交換器51の運転を停止することは難しい。そこで、熱交換器51の運転を停止する頻度を減らすべく、シールリング63の交換を遅らせ、単位期間あたりの交換頻度を減らすことが望まれる。
【0011】
熱交換器等の炉内にスートブロワのランス管が貫入される箇所からのガス漏れを防ぐ技術に関しては、例えば、特許文献1に「煤吹装置」という名称で、炉内のガスが高圧に維持されたボイラ等の熱交換器に用いられる煤吹装置(スートブロワ)において、炉内のチャーの外部への漏出と噴射管(ランス管)の経路への堆積を防ぐことを目的とする発明が開示されている。
【0012】
特許文献1に開示された発明は、噴射管の炉内挿入位置に炉内と連通するように設けられた連結管と、この連結管に挿入遮断弁を介して接続されるシールボックスを備えており、シールボックス、挿入遮断弁及び連結管を介して噴射管が炉内に抜き挿し可能に配置されるととともに、堆積物除去ガスが連結管に供給される構造となっている。
このような構造によれば、連結管を介して供給される堆積物除去ガスによりチャー等の連結管への堆積を防ぐことができる。
【0013】
また、特許文献2には、「スートブロワ用シール装置」という名称で、管径が途中で変化する噴射管(ランス管)を有するスートブロワにおいて、熱交換機等の炉内からガスが漏出することを防ぐための装置に関する考案が開示されている。
【0014】
特許文献2に開示された考案は、一定の間隔をあけて二枚のシールリングが外挿されたスートブロワの噴射管に対し、スプリングワイヤを束ねて環状に形成されたワイヤブラッシリングが上記シールリングに近接配置された構造となっている。
このような構造によれば、シールリングによるシール効果がワイヤブラッシリングによってさらに高められるという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003-269887号公報
【特許文献2】実開昭56-144940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に開示された発明では、連結管とシールボックスを新たに設置する必要があるため、既存の設備に適用できず、また、設備の製造コストが嵩むという課題があった。さらに、ウォールボックスの内部に設置されたシールリングが破損したような場合、すぐには対応できないという課題もあった。
【0017】
特許文献2に開示された考案では、シールリングが破損した場合にワイヤブラッシリングだけでは、ガスの漏出を十分に防止できないおそれがある。この場合、スートブロワを囲むように設置されたハウジングの内部に、熱交換器の内部から漏出したガスが充満した状態となって、スートブロワの点検作業が困難になる可能性が高い。
【0018】
本発明は、上述の課題に対処してなされたものであり、熱交換器の炉壁にスートブロワのランス管が貫入された箇所に設置されたウォールボックスにおいて、その内部に設置されたシールリングが破損した場合に熱交換器内のガスがハウジング内に漏出することを効率よく防ぐことができるとともに、シールリングの交換頻度を抑制できるガス漏れ防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、ガス漏れ防止具に係る第1の発明は、ハウジングに一部が収容されたスートブロワのランス管が熱交換器の炉壁に貫入される箇所に設置され、炉壁とランス管との隙間を塞ぐシールリング、及び、炉壁の外面側に設置されるとともにランス管が遊挿される挿入孔を有するウォールボックスに取り付けられるガス漏れ防止具であって、ウォールボックスに当接するように設置されるとともに、ウォールボックスとの当接面にランス管が遊挿される開口部を有し、この開口部及び挿入孔を介してウォールボックスに連通する筒状のケーシングと、ケーシングの側面に連通する排気管と、を備え、ケーシングは、ランス管の径方向への変位を規制しつつ、ランス管を軸方向へ変位可能に支持する支持部を備えていることを特徴とするものである。
【0020】
上記構造のガス漏れ防止具においては、熱交換器の炉壁と、この炉壁に貫入されたランス管との隙間を通ってケーシング内に流入した熱交換器内のガスが排気管を経由してケーシングの外部に排出されるという作用を有する。
また、支持部は、ランス管を軸方向へ変位可能に保持するので、スートブロワは、ランス管の中心軸方向への移動を円滑に行うことができる。その一方で、支持部は、ランス管の径方向への変位を規制するので、ランス管の径方向変位やランス管の自重によってシールリングに加わる負荷を軽減できる。
【0021】
第2の発明は、第1の発明において、ケーシングは、ヒンジを介して開閉自在に連結された一対の半割体からなることを特徴とするものである。
このような構造のガス漏れ防止具においては、第1の発明の作用に加え、開いた状態のケーシングをランス管の近くに配置した後、一方の半割体を他方の半割体に対して閉じる方向にヒンジの回動軸を中心として回動させると、ランス管がケーシングに遊挿された状態になるという作用を有する。また、ランス管がケーシングに遊挿された状態において、一方の半割体を他方の半割体に対して開く方向にヒンジの回動軸を中心として回動させると、ケーシングが開放された状態となり、ガス漏れ防止具のランス管からの取り外しが可能になるという作用を有する。
【0022】
第3の発明は、第2の発明において、支持部に代えて、半円筒状をなす一対の分割体と、この分割体の中心軸が中心を通る仮想円の円周方向へ等間隔に配置されるとともに、外面がランス管の側面に対して当接可能に配置された複数の球体と、を備え、球体は、外面を露出させた状態で分割体に一部が埋設されるとともに、分割体によって、固定された回転軸が無く、あらゆる方向へ回転可能な状態で保持されており、分割体は、分割面が一対の半割体の分割面と一致するように一対の半割体の内部にそれぞれ設置されていることを特徴とするものである。
【0023】
なお、本発明において、半円筒状をなす分割体には、略半円筒状をなす分割体も含まれ、ランス管の中心軸を挟んで対称をなすとともに、外面がランス管の側面に対して当接可能に配置された複数の球体には、ランス管の中心軸を挟んで略対称をなすとともに、外面がランス管の側面に対して略当接可能に配置された球体も含まれる。また、仮想円の円周方向へ等間隔に配置された複数の球体には、当該方向へ略等間隔に配置された複数の球体も含まれる。
【0024】
このような構造のガス漏れ防止具においては、第2の発明の作用に加え、外面がランス管の側面に対して当接可能に設置された複数の球体によって、ケーシングのランス管の直径方向への移動が阻止されるため、ケーシングの開口端の内壁面とランス管の側面との間隔が一定に保たれるという作用を有する。また、複数の球体が、固定された回転軸を持たず、あらゆる方向へ回転可能な状態で分割体によって保持されていることから、ランス管が中心軸を中心として回動しながら、中心軸方向へ移動する場合でも球体がランス管の側面に沿って転動することで、球体とランス管の間に発生する摩擦抵抗が小さくなるという作用を有する。
【0025】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明において、ケーシングの開口端とウォールボックスとの当接面がシールされていることを特徴とするものである。
このような構造のガス漏れ防止具においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加えて、ウォールボックスの壁面とケーシングの開口端の間からの熱交換器内のガスの漏出が抑制されるという作用を有する。
【0026】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、弾性を有する複数の紐状体からなる簾状部材を備え、紐状体の基端は、ケーシングにおいてウォールボックスに当接しない側の開口端に設けられた開口部の内壁面に固定されていることを特徴とするものである。
このような構造のガス漏れ防止具においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加えて、ウォールボックスの壁面に当接していない側のケーシングの開口端において、簾状部材がランス管の側面と開口部の内壁面との隙間を塞ぐという作用を有する。
【0027】
第6の発明は、第5の発明において、簾状部材を構成する紐状体は、上記内壁面とランス管との間隔よりも短い又は太いことを特徴とするものである。
このような構造のガス漏れ防止具においては、第5の発明の作用に加えて、熱交換器の内部へ向かってランス管が移動した場合でも、簾状部材の先端がケーシングに噛み込まれてしまうおそれがないという作用を有する。
【発明の効果】
【0028】
第1の発明においては、スートブロワの一部を囲むように設置されたハウジングの外に排気管の出口を設けることにより、熱交換器の炉壁と、この炉壁に貫入されたランス管との隙間を通って熱交換器の外部に漏出したガスがケーシングを経由して排気管から上記ハウジングの外に排出されるため、ウォールボックス内に設置されたシールリングが破損した場合に、ハウジング内に熱交換器の内部から漏出したガスが充満して、ハウジング内で行われるスートブロワの点検作業が困難になるという事態を防ぐことができる。
また、支持部は、ランス管の径方向への変位を規制しつつ、ランス管の軸方向へ変位可能に支持するので、ランス管の中心軸方向への移動を行う際に、ランス管の移動を円滑に行いつつ、ランス管の径方向変位に伴ってシールリングに加わる負荷を軽減できる。さらに、ランス管は、支持部により支持されるので、ランス管の自重による負荷がシールリングに加わることを抑制できる。これにより、ガス漏れ防止具は、シールリングの長寿命化を図ることができ、シールリングの交換頻度を減らすことができる。その結果、ガス漏れ防止具は、シールリングの交換に伴う熱交換器の運転停止の頻度を減らすことができる。
【0029】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加え、ランス管に取り付けたり、ランス管から取り外したりする際の作業性に優れるという効果を奏する。このように第2の発明に係るガス漏れ防止具は、ランス管からの取り外しを短時間に行うことができるため、シールリングの交換作業の支障とならない。したがって、第2の発明によれば、シールリングの交換作業に要する時間を短縮することができ、シールリングの交換作業に伴う熱交換器の運転停止時間を短縮することができる。
【0030】
第3の発明によれば、第1の発明又は第2の発明の効果に加え、ランス管が中心軸を中心として回動しながら、中心軸方向へ移動する際に、万一、ランス管の側面が球体に接触したとしても球体とランス管の間に発生する摩擦抵抗が小さく、球体が故障し難いため、長期にわたって安全に使用できるという効果を奏する。
【0031】
第4の発明によれば、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の効果に加え、ウォールボックスの壁面とケーシングの開口端の間から熱交換器内のガスが漏出し難いため、熱交換器の炉壁と、この炉壁に貫入されたランス管との隙間を通って熱交換器の外部に漏出したガスがケーシングを経由して排気管からハウジングの外に排出されるという効果がより一層発揮される。
【0032】
第5の発明によれば、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、ランス管の側面とケーシングの開口部の内壁面との隙間からケーシング内のガスが漏出し難いため、当該ガスを排気管からケーシングの外へ効率よく排出させることができるという効果を奏する。
【0033】
第6の発明によれば、第5の発明の効果に加え、簾状部材の先端がケーシングの内部に入り込んでローラに巻き込まれてしまうおそれがないため、故障し難いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】(a)は本発明の実施の形態に係るガス漏れ防止具の実施例1の外観斜視図であり、(b)は
図2(b)におけるC-C線矢視断面図である。
【
図2】(a)はガス漏れ防止具の正面図であり、(b)は
図3(a)におけるD-D線矢視断面図である。
【
図3】(a)は
図5(b)においてウォールボックスにガス漏れ防止具が取り付けられた状態を示した図であり、(b)は同図(a)の縦断面図である。
【
図4】(a)は実施例1の支持部の変形例の外観斜視図であり、(b)は同図(a)に示した球体保持具がケーシングの内部に設置された状態を示した実施例2のガス漏れ防止具の縦断面図である。
【
図5】(a)は熱交換器にスートブロワが設置された状態を示した模式図であり、(b)は同図(a)におけるA部の拡大図である。
【
図6】(a)は
図5(b)におけるB-B線矢視断面図であり、(b)は
図5(b)におけるウォールボックスが炉壁の挿通孔の中心軸を通る鉛直平面で切断された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のガス漏れ防止具は、スートブロワのランス管が熱交換器の炉壁に貫入される箇所からガスが漏出しないようにウォールボックスに取り付けられるものである。以下、その具体的な構造と、それに基づいて発揮される作用及び効果について、
図1乃至
図4を参照しながら詳細に説明する。
【実施例0036】
図1(a)は本発明のガス漏れ防止具の外観の一例を示しており、
図1(b)は
図2(b)におけるC-C線矢視断面図である。
図2(a)は
図1(a)においてヒンジの回動軸を中心として第1の半割体が回動されてケーシングの上部が開放された状態を示した正面図であり、
図2(b)は
図3(a)におけるD-D線矢視断面図である。
図3(a)は
図5(b)においてウォールボックスにガス漏れ防止具が取り付けられた状態を示しており、
図3(b)は
図3(a)の縦断面図である。また、
図3(b)は破損したシールリングとランス管の間に隙間が生じている状態を表している。
なお、
図2(a)では
図1(a)に示した締結具の図示を省略している。また、
図5及び
図6を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付することにより、それらの説明の一部を適宜省略する。さらに、
図1(a)、
図1(b)、
図3(a)及び
図3(b)ではケーシングの中心軸を破線で示している。
【0037】
図1(a)及び
図1(b)並びに
図6(b)に示すように、本発明のガス漏れ防止具1aは、略円筒状をなし、熱交換器51の炉壁51aの外面側に設置されたウォールボックス62の壁面に設けられたランス管56の挿入孔62aを覆うとともに、スートブロワ55のランス管56を遊挿可能に形成され、開口部2eを有する開口端2aが上記挿入孔62aが設けられたウォールボックス62の壁面に当接するように設置されるケーシング2と、このケーシング2の内部に設置された一対の支持部3,3と、開口端2aに設置されたシート状のシール部材4と、ケーシング2の側面2cに設けられた排気口2dに一端が接続された排気管5と、弾性を有する多数の紐状体6aからなり、開口部2fを有する開口端2bに設置された簾状部材6を備えている。また、ケーシング2の側面2cには、ウォールボックス62にケーシング2をネジ留めするための連結具7が設置されている。
上述のようにガス漏れ防止具1aがシール部材4を備えている場合、ケーシング2は、シール部材4を介してウォールボックス62の壁面に開口端2aが当接した状態となる。また、簾状部材6を構成する紐状体6aは、ケーシング2の開口部2fの内壁面とランス管56の側面との間隔よりも短い又は太くなっている。したがって、熱交換器51の内部へ向かってランス管56が移動した場合でも、簾状部材6の先端がケーシング2に噛み込まれることがないため、後述のローラ13に簾状部材6が巻き込まれてしまうおそれがない。すなわち、ガス漏れ防止具1aでは、簾状部材6の先端がケーシング2の内部に入り込んでローラに巻き込まれてしまうおそれがないため、故障し難い。
【0038】
ケーシング2は、大径部と小径部からなる段付き構造を有する略円筒状をなしており、簾状部材6は小径部に設置され、一対の支持部3,3は大径部の両端の近くにそれぞれ設置されている。そして、排気口2dは支持部3が設置されていない箇所の側面2cに設けられている。
また、シール部材4には、ランス管56を遊挿可能な大きさを有する開口部4aがケーシング2の開口部2eと連通するように設けられており、簾状部材6の紐状体6aは、ケーシング2に遊挿されたランス管56の中心軸に先端を向けるようにして開口部2fの内壁面に基端が固定されている。
【0039】
ケーシング2は、第1の半割体8と第2の半割体9がヒンジ10を介して開閉自在に連結された構造であり、第1の半割体8及び第2の半割体9の開放縁部にそれぞれ設けられた固定部8a,9aには、ボルトとナットからなり、第1の半割体8を第2の半割体9にを固定するための締結具11が取り付けられている。
したがって、締結具11を緩めて固定部8a,9aから外した後、第1の半割体8をヒンジ10の回動軸10aを中心として回動させると、
図2(a)に示したように、ケーシング2の上部が開放された状態になる。
【0040】
図2(b)に示すように、支持部3は、ケーシング2に遊挿されたランス管56を囲むように設置された4本の軸体12によってそれぞれ回動可能に軸支された4つのローラ13を備えている。また、支持部3は、第1の半割体8と第2の半割体9にそれぞれ固定されるとともに2組の軸体12とローラ13がそれぞれ設置された半円筒状をなす2つの分割体3aに分割可能な構造であり、2つの分割体3aに分割される面が、第1の半割体8と第2の半割体9にケーシング2が分割される面と一致するように設置されている。
そして、4本の軸体12は回転の中心軸が、半円筒状をなす2つの分割体3aからなる支持部3の円筒の中心軸に直交する同一平面上に配置されるとともに、その中心を支持部3の中心軸が通る仮想円の接線方向に対して上記回転の中心軸がそれぞれ平行をなすように配置されており、ローラ13は、凹状をなす外周面13aがランス管56の側面に対して当接可能に配置されている。
なお、支持部3は中心軸がケーシング2の中心軸と一致しており、ケーシング2はランス管56に対して互いの中心軸が一致するように配置される。
【0041】
図2(a)に示した状態で、ランス管56の下方に第2の半割体9を配置した後、第1の半割体8と第2の半割体9の間にランス管56を挟むようにして、第1の半割体8を第2の半割体9に対して閉じる方向にヒンジ10の回動軸10aを中心として回動させると、
図3(a)に示すようにランス管56がケーシング2に遊挿された状態となる。また、ランス管56がケーシング2に遊挿された状態において、第1の半割体8を第2の半割体9に対して開く方向にヒンジ10の回動軸10aを中心として回動させると、ケーシング2が開放された状態となり、ガス漏れ防止具1aのランス管からの取り外しが可能になる
【0042】
このように、ガス漏れ防止具1aは、ランス管56に取り付けたり、ランス管56から取り外したりする際の作業性に優れている。すなわち、ガス漏れ防止具1aは、ランス管56からの取り外しを短時間に行うことができるため、シールリング63の交換作業の支障とならない。したがって、ガス漏れ防止具1aによれば、シールリング63の交換作業に要する時間を短縮することができ、シールリング63の交換作業に伴う熱交換器51の運転停止時間を短縮することができる。
また、ガス漏れ防止具1aでは、炉壁51aの外面側に設けられたウォールボックス62の挿入孔62a及びケーシング2の開口部2eを介してウォールボックス62にケーシング2が連通している。そのため、熱交換器51から炉壁51aに設けられた挿通孔51bとランス管56の隙間を通ってケーシング2に流入したガスが排気管5を経由してケーシング2の外部に排出される。したがって、スートブロワ55の一部を囲むように設置されたハウジング61(
図5(a)参照)の外に排気管5の出口を設けることによれば、ウォールボックス62の内部に設置されたシールリング63が破損した場合に、上記ガスが充満することによりハウジング61の中で行われるスートブロワ55の点検作業が困難になるという事態を防ぐことができる。
【0043】
また、ガス漏れ防止具1aでは、外周面13aがランス管56の側面に対して当接可能に複数のローラ13が設置されている。複数のローラ13をそれぞれ回動可能に軸支する複数の軸体12の回転の中心軸は、半円筒状をなす2つの分割体3aからなる支持部3の中心軸に直交する同一平面上に配置されるとともに、中心を支持部3の中心軸が通る仮想円の接線方向に対してそれぞれ平行をなしている。このような構造によれば、万一、ランス管56がローラ13の外周面13aに接触した場合でも、ランス管56は直径方向にそれ以上移動することがないため、ケーシング2の開口部2fの内壁面とランス管56の側面との間隔をローラ13が無い場合よりも狭くすることが可能になる。したがって、ガス漏れ防止具1aにおいては、ケーシング2の開口端2bの内壁面とランス管56の側面との隙間を可能な限り小さくして、熱交換機51からケーシング2に流入したガスをその隙間から漏出し難くすることができる。これにより、ケーシング2に流入したガスが排気管5から効率よく排出されるという効果が発揮される。
しかも、支持部3は、ランス管56の径方向への変位を規制しつつ、ランス管56の軸方向へ変位可能に支持するので、ランス管56の中心軸方向への移動を行う際に、ランス管56の移動を円滑に行いつつ、ランス管56の径方向変位に伴ってシールリング63に加わる負荷を軽減できる。さらに、ランス管56は、支持部3により支持されるので、ランス管56の自重による負荷がシールリング63に加わることを抑制できる。これにより、ガス漏れ防止具1aは、シールリング63の長寿命化を図ることができ、シールリング63の交換頻度を減らすことができる。
既に述べたように、シールリング63を交換する際は熱交換器51の運転を停止しなければならないが、熱交換器51の運転を停止すると、発電できない状態となる。しかし、発電を頻繁に停止することは困難である。そこで、従来、熱交換器51の運転を停止する頻度を減らすべく、シールリング63の交換を遅らせ、単位期間あたりの交換頻度を減らすことが望まれていた。上述のとおり、ガス漏れ防止具1aでは、シールリング63の交換頻度を減らすことが可能であるため、シールリング63の交換に伴う熱交換器51の運転停止の頻度を減らすことができる。
【0044】
さらに、ガス漏れ防止具1aでは、ランス管56が中心軸方向へ移動する際に、万一、ローラ13の外周面13aに接触したとしてもローラ13がランス管56の側面に沿って転動するため、ローラ13とランス管56の間に発生する摩擦抵抗が小さく、ローラ13や軸体12が故障し難いことに加え、ランス管56の移動に伴ってローラ13が転動しながら支持するので、シールリング63やランス管56にかかる荷重を低減して劣化を防止できるという効果を有している。したがって、ガス漏れ防止具1aは、長期にわたって安全に使用することができる。
【0045】
また、ガス漏れ防止具1aでは、シール部材4がウォールボックス62の壁面とケーシング2の開口端2aの間からガスが漏出することを防ぐため、炉壁51aに設けられた挿通孔51bとランス管56の隙間を通って熱交換器51の外部に漏出したガスがケーシング2を経由して排気管5からハウジング61の外に排出されるという効果がより一層発揮される。
さらに、ガス漏れ防止具1aにおいては、ケーシング2の開口端2bにおいて、簾状部材6がランス管56の側面と開口端2bの内壁面との隙間を塞ぐように作用し、隙間からケーシング2内のガスが漏出し難いため、当該ガスを排気管5からケーシング2の外へ効率よく排出させることが可能である。
球体保持具14は、外面15aがランス管56の側面に対して当接可能に配置された6つの球体15が2つの分割体14aに対してそれぞれ3つずつ、外面15aを露出させた状態で埋め込まれた構造となっている。ただし、6つの球体15は、分割体14aの中心軸が中心を通る仮想円の円周方向へ略等間隔に配置されている。そして、球体15は分割体14aによって、固定された回転軸が無く、あらゆる方向へ回転可能な状態で保持されている。
上記構造のガス漏れ防止具1bにおいては、外面15aがランス管56の側面に対して当接可能に6つの球体15が設置されており、万一、ランス管56が球体15の外面15aに接触した場合でも、ランス管56は直径方向にそれ以上移動することがないため、ケーシング2の開口端2bの内壁面とランス管56の側面との間隔を球体15が無い場合よりも狭くすることができる。また、6つの球体15が、固定された回転軸を持たず、あらゆる方向へ回転可能な状態で球体保持具14の分割体14aによって保持されていることから、ランス管56が中心軸を中心として回動しながら、中心軸方向へ移動する場合でも球体15がランス管56の側面に沿って転動するため、球体15とランス管56の間に発生する摩擦抵抗は小さい。
したがって、ガス漏れ防止具1bによれば、ランス管56が中心軸を中心として回動しながら、中心軸方向へ移動する場合でも球体15とランス管56の間に発生する摩擦抵抗が小さく、球体15が故障し難いため、長期にわたって安全に使用できるという効果を奏する。
なお、本実施例では、ケーシング2が円筒状をなしているが、ケーシング2はランス管56を遊挿可能な大きさを有し、両端が開放された構造であれば良いため、円筒以外の筒状をなしたものであっても良い。
また、軸体12及びローラ13並びに球体15の個数は、上述の実施例に示した場合に限定されるものではなく、適宜変更可能である。さらに、排気管5は第2の半割体9の代わりに第1の半割体8に設けられていても良い。