(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067327
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20220425BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20220425BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220425BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20220425BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220425BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L27/18
C08L101/00
C08L33/06
C08L83/04
C08K5/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175980
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 恵子
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD152
4J002BG03Y
4J002CG011
4J002CG012
4J002CG021
4J002CG031
4J002CP03Y
4J002CP03Z
4J002EV256
4J002FD136
4J002FD13Z
4J002FD20Y
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】光拡散性と難燃性を維持したうえで、流動性を有し、外観の優れた成形品を作製することができる難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)重量平均分子量20000~32000の芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレンを含む複合樹脂粒子、および、(C)光拡散剤を含有する難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、(B)複合樹脂粒子中のポリテトラフルオロエチレンの含有量が、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子中に0.01~0.8質量%であり、(C)光拡散剤の含有量が、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子の合計100重量部に対して、0.05~5.0重量部である難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量20000~32000の芳香族ポリカーボネート樹脂、
(B)ポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレンを含む複合樹脂粒子、および、
(C)光拡散剤
を含有する難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、
(B)複合樹脂粒子中のポリテトラフルオロエチレンの含有量が、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子中に0.01~0.8質量%であり、
(C)光拡散剤の含有量が、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子の合計100重量部に対して、0.05~5.0重量部である難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、(D)難燃剤を、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子の合計100重量部に対して、0.005~1.0重量部含む請求項1に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(E)難燃助剤を、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子の合計100重量部に対して、0.01~0.5重量部含む請求項1または2に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
(B)複合樹脂粒子の製造に用いるポリテトラフルオロエチレンが水性分散体である請求項1~3のいずれか1項に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
(B)複合樹脂粒子が、その他の熱可塑性樹脂を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
(C)光拡散剤が、アクリル系光拡散剤またはシリコーン系光拡散剤である請求項1~5のいずれか1項に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
(D)難燃剤が、シリコーン系難燃剤である請求項2~6のいずれか1項に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
(E)難燃助剤が、有機スルホン酸金属塩系難燃助剤である請求項3~7のいずれか1項に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
(A)重量平均分子量20000~32000の芳香族ポリカーボネート樹脂、
(B)ポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレンを含む複合樹脂粒子、および、
(C)光拡散剤
を含有する難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、
UL94試験方法に基づく、厚さ1.5mmの試験片の難燃性がV-0等級であり、
JIS K7361に基づく、厚さ2.0mmの試験片の全光線透過率が40%以上、ヘーズが80%以上であり、
厚さ2.0mmの試験片の0°での輝度に対し、輝度が半減する角度である分散度が、20°以上であり、
ISO1133に基づき、300℃、1.2kg荷重で測定したMVRが6~35g/10分である難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED照明などに使用される樹脂製照明器具カバー、透過型ディスプレイ、光拡散シート等には、光拡散性だけでなく、難燃性、外観特性が求められ、さらには成形品の薄肉化に伴い、組成物の流動性も必要とされている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、光拡散剤と、ノンドリップ剤としてポリテトラフルオロエチレンを含むポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。しかしながら、ポリテトラフルオロエチレンはスチレンアクリロニトリル共重合体との混合物として配合しているため、組成物中でポリテトラフルオロエチレンが凝集し、成形品の表面にポリテトラフルオロエチレン粒子が浮き出るなど、成形品の外観が悪いという問題があった。
【0004】
特許文献2には、光拡散剤と、ポリテトラフルオロエチレンの代わりに難燃性の高い分岐状のポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。しかしながら、分岐状のポリカーボネート樹脂を配合しているため、組成物の流動性に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-168463号公報
【特許文献2】特開2011-116839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光拡散性と難燃性を維持したうえで、流動性を有し、外観の優れた成形品を作製することができる難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ポリカーボネート樹脂、ポリテトラフルオロエチレンおよび光拡散剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物において、ポリテトラフルオロエチレンをポリカーボネート樹脂との複合粒子として配合することにより、光拡散性と難燃性を損なうことなく、流動性に優れ、外観の優れた成形品を作製できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A)重量平均分子量(Mw)20000~32000の芳香族ポリカーボネート樹脂、
(B)ポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレンを含む複合樹脂粒子、および、
(C)光拡散剤
を含有する難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、
(B)複合樹脂粒子中のポリテトラフルオロエチレンの含有量が、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子中に0.01~0.8質量%であり、
(C)光拡散剤の含有量が、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子の合計100重量部に対して、0.05~5.0重量部である難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0009】
難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物が、さらに、(D)難燃剤を含む場合には、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子の合計100重量部に対して、0.005~1.0重量部含むことが好ましい。
【0010】
難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物が、さらに、(E)難燃助剤を、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子の合計100重量部に対して、0.01~0.5重量部含むことが好ましい。
【0011】
(B)複合樹脂粒子の製造に用いるポリテトラフルオロエチレンが水性分散体であることが好ましい。
【0012】
(B)複合樹脂粒子が、その他の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
(C)光拡散剤が、アクリル系光拡散剤またはシリコーン系光拡散剤であることが好ましい。
【0014】
(D)難燃剤が、シリコーン系難燃剤であることが好ましい。
【0015】
(E)難燃助剤が、有機スルホン酸金属塩系難燃助剤であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、(A)重量平均分子量20000~32000の芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレンを含む複合樹脂粒子、および、(C)光拡散剤を含有する難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、
UL94試験方法に基づく、厚さ1.5mmの試験片の難燃性がV-0等級であり、
JIS K7361に基づく、厚さ2.0mmの試験片の全光線透過率が40%以上、ヘーズが80%以上であり、
厚さ2.0mmの試験片の0°での輝度に対し、輝度が半減する角度である分散度が、20°以上であり、
ISO1133に基づき、300℃、1.2kg荷重で測定したMVRが6~35g/10分である難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリテトラフルオロエチレンをポリカーボネート樹脂との複合粒子として配合するため、光拡散性と難燃性を損なうことなく、流動性に優れ、外観の優れた成形品を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の本発明の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物は、
(A)重量平均分子量20000~32000の芳香族ポリカーボネート樹脂、
(B)ポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレンを含む複合樹脂粒子、および、
(C)光拡散剤
を含有し、
(B)複合樹脂粒子中のポリテトラフルオロエチレンの含有量が、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子中に0.01~0.8質量%であり、
(C)光拡散剤の含有量が、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子の合計100重量部に対して、0.05~5.0重量部であることを特徴とする。
【0019】
<配合成分>
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表的なものとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0020】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。しかしながら、ハロゲンで置換されていないジヒドロキシジアリール化合物を使用することが環境面から好ましい。
【0021】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0022】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000~32000である。重量平均分子量が20000未満であると、耐衝撃性が著しく低下し、製品化した際に割れや欠けなどの不具合を生じる可能性が高くなり、32000を超えると、流動性が低下し、薄肉、特に厚み2mm以下の薄肉成形品を製造することが極めて困難となる。重量平均分子量は、21000以上が好ましく、22000以上がより好ましく、23000以上がさらに好ましい。また、31000以下が好ましく、30000以下がより好ましい。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置で測定して得た値を、既知の分子量を有する標準ポリカーボネート樹脂を用いて検量線換算し得られる値である。
【0023】
また、重量平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して上記重量平均分子量となるように調整してもよい。また、必要に応じ、重量平均分子量が上記の範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよい。
【0024】
難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子中のポリカーボネート樹脂の合計量は、98~99.98質量%が好ましく、99~99.95質量%がより好ましい。
【0025】
(B)複合樹脂粒子
(B)複合樹脂粒子は、ポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレンをあらかじめ混合したものである。該複合樹脂粒子を用いることで、ポリカーボネート樹脂組成物に対して親和性の低いポリテトラフルオロエチレンの凝集を抑制し、均一性高く分散させることができる。
【0026】
(B)複合樹脂粒子に含まれるポリカーボネート樹脂は特に限定されず、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と同じものを使用することができる。
【0027】
(B)複合樹脂粒子に含まれるポリカーボネート樹脂の割合は、成形体に対して優れた難燃性、機械的強度および外観を付与する観点から、60~99.5質量%が好ましく、70~99.5質量%がより好ましく、85~99.5質量%がさらに好ましい。
【0028】
(B)複合樹脂粒子に含まれるポリテトラフルオロエチレンは特に限定されず、ポリテトラフルオロエチレンホモポリマー、ポリテトラフルオロエチレンの性能を損なわない程度のコポリマー又はターポリマーを含有するホモポリマー、ポリテトラフルオロエチレンコポリマー等が挙げられる。
【0029】
(B)複合樹脂粒子中のポリテトラフルオロエチレンの割合は、0.1~30質量%が好ましく、0.2~20質量%がより好ましく、0.3~15質量%がさらに好ましい。0.1質量%未満であると、難燃性の効果が得られにくく、30質量%を超えると、均一な分散が得られず機械的強度および外観を損なう傾向がある。また、(B)複合樹脂粒子におけるポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.1~33質量部が好ましく、0.2~25質量部がより好ましく、0.3~15質量部がさらに好ましい。
【0030】
さらに、(B)複合樹脂粒子中のポリテトラフルオロエチレンの含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子中に0.01~0.8質量%であり、0.05~0.5質量%がより好ましい。0.01質量%未満であると、難燃性を付与する効果が得られにくく、0.8質量%を超えると、機械的強度および外観を損なう傾向がある。
【0031】
(B)複合樹脂粒子の製造には、凝集物の発生が少なく、均一な分散性・再現性に優れる点で、ポリテトラフルオロエチレンの水性分散体を用いることが好ましい。ポリテトラフルオロエチレン水性分散体における固形分率は特に限定されないが、20~70質量%が好ましく、20~65質量%がより好ましい。水性分散体としては、例えば市販品を使用することができる。
【0032】
(B)複合樹脂粒子は、その他の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。(B)複合樹脂粒子がその他の熱可塑性樹脂を含む場合、ポリカーボネート樹脂組成物との親和性がより高まり、分散の均一性が向上する効果が期待できる。これにより、成形品の表面にフッ素樹脂が浮き出て筋状のラインが形成されたり、フッ素樹脂の凝集物が発生したりするといった外観の劣化が効果的に抑制できる。その他の熱可塑性樹脂としては、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリメタクリルスチレン重合体(MS)、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。
【0033】
熱可塑性樹脂は、水性分散体として使用することもできる。水性分散体における固形分率は特に限定されないが、20~70質量%が好ましい。水性分散体としては、例えば市販品を使用することができる。
【0034】
熱可塑性樹脂の含有量も特に限定されないが、(B)複合樹脂粒子に含まれるポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.1~33質量%が好ましく、0.2~25質量%がより好ましく、0.3~20質量%がさらに好ましい。
【0035】
(B)複合樹脂粒子は、ポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレン、必要に応じてその他の熱可塑性樹脂を混合して作製することができる。ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート樹脂及びその他の熱可塑性樹脂の配合割合は、それぞれの含有量が前述の範囲となるように調整すればよい。(B)複合樹脂粒子の製造方法については後述する。
【0036】
(C)光拡散剤
(C)光拡散剤の形態としては、ポリカーボネート樹脂組成物の内部で光を散乱させることができるものであれば特に限定されないが、例えば球状の形態のものが好適に用いられる。
【0037】
また、光拡散剤としては、シリコーン系光拡散剤、アクリル系光拡散剤、炭酸カルシウム、シリカ、タルク等が挙げられるが、特に有機微粒子であるシリコーン系光拡散剤、アクリル系光拡散剤が好ましい。シリコーン系光拡散剤としては、例えばモーメンティブジャパン社製トスパール120S、アクリル系光拡散剤としては、例えばガンツ化成社製ガンツパールGM0449Sおよび総研化学社製ケミスノーKMR-3TAが挙げられる。
【0038】
(C)光拡散剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子の合計100重量部に対し、0.05~5.0重量部が好ましく、0.1~4.0重量部がより好ましく、0.15~3.0重量部がさらに好ましい。0.05重量部未満では光が充分に散乱せず光源の視認性防止の効果に劣り、また5.0重量部を超えると透過率が著しく低下するおそれがある。
【0039】
(D)難燃剤
本発明の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物には、(D)難燃剤を配合することができる。
【0040】
(D)難燃剤は特に限定されないが、優れた難燃性と外観を発揮する観点から、シリコーン化合物を含有するシリコーン系難燃剤が好ましい。シリコーン化合物としては、主鎖が分岐構造で、かつ有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなり、下記一般式(1)にて示されるものが挙げられる。
一般式(1)
【化1】
【0041】
(式中、R1、R2およびR3は主鎖の有機官能基を、Xは末端の官能基を表わす。)
【0042】
シリコーン化合物は、分岐単位としてT単位(RSiO1.5)および/またはQ単位(SiO2)を有する(Rは有機官能基を表す)。これらの単位は、全体のシロキサン単位(R3~0SiO2~0.5)の20モル%以上含有することが好ましい。
【0043】
シリコーン化合物は、含有する有機官能基のうち20モル%以上が芳香族基であることが好ましい。芳香族基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、これらの誘導体等が挙げられるが、フェニル基が好適に使用できる。
【0044】
シリコーン化合物中の有機官能基で、主鎖や分岐した側鎖に結合するもののうち芳香族基以外の有機基としては、炭素数4以下の炭化水素基が好ましく、メチル基が好適に使用できる。さらに、末端の官能基は、メチル基、フェニル基、水酸基及びアルコキシ基から選ばれた1種またはこれらの2種から3種までの混合物であることが好ましい。
【0045】
シリコーン化合物の重量平均分子量は、溶融粘度が最適となり、良好な難燃性と成形性を達成することができるため、3000~500000が好ましく、5000~270000がより好ましく、10000~270000がさらに好ましい。3000未満では、シリコーン自体の耐熱性が低下して十分な難燃性効果が得られず、また、溶融粘度が低すぎて成形体表面にシリコーン化合物がブリードアウトして外観を損ねる場合があり、500000を超えると、溶融粘度が増加してポリカーボネート樹脂組成物中に均一に分散できず、難燃性および成形性が低下する場合がある。
【0046】
(D)難燃剤を含む場合、その配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子の合計量100重量部に対し、0.005~1.0重量部が好ましく、0.01~0.5重量部がより好ましい。1.0重量部を超えると、透明性が低下するおそれがある。
【0047】
(E)難燃助剤
本発明の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物には、(E)難燃助剤を配合することができる。
【0048】
(E)難燃助剤は特に限定されていが、有機スルホン酸金属塩系添加剤が好ましい。例えば、脂肪族スルホン酸金属塩、芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられ、中でも、芳香族スルホンスルホン酸金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩が好ましく、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩が特に好ましい。
【0049】
有機スルホン酸金属塩の金属としては、好ましくは、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。中でも難燃性と耐加水分解性との観点からはカリウムが好ましい。これら有機スルホン酸金属塩は、2種以上を混合して使用することもできる。
【0050】
芳香族スルホンスルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。具体例としては、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン-3-スルホン酸のカリウム塩、4,4’-ジブロモジフェニル-スルホン-3-スルホン酸のナトリウム塩、4,4’-ジブロモジフェニル-スルホン-3-スルホン酸のカリウム塩、4-クロロ-4’-ニトロジフェニルスルホン-3-スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸のジカリウム塩等が挙げられる。
【0051】
パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩としては、好ましくは、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、より好ましくは、炭素数4~8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ金属塩、炭素数4~8のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。具体例としては、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸のテトラエチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、特に、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムが好ましい。
【0052】
(E)難燃助剤の含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂と(B)複合樹脂粒子の合計100重量部に対して、0.01~0.5重量部が好ましく0.01~0.4重量部がより好ましく、0.01~0.2重量部がさらに好ましい。0.5重量部を超えると、成形体の光学特性が低下したり、樹脂の耐熱性が損なわれたりする場合がある。
【0053】
その他の添加剤
本発明の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて、他の種々の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、例えば、蛍光増白剤、安定剤、紫外線吸収剤、リン系酸化防止剤、離型剤、展着剤(流動パラフィン等)、加水分解抑制剤(エポキシ化大豆油等)、着色剤、帯電防止剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ等が挙げられる。
【0054】
リン系酸化防止剤、離型剤、加水分解抑制剤の配合量は、特に限定されないが、いずれも、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.002~0.8重量部が好ましく、0.005~0.5重量部がより好ましい。
【0055】
<製造方法>
本発明の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)複合樹脂粒子、(C)光拡散剤、さらに必要に応じてその他の成分を溶融混練することで得ることができる。
【0056】
(B)複合樹脂粒子製造工程
(B)複合樹脂粒子は、ポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレン、必要に応じてその他の熱可塑性樹脂を混合して作製する。
【0057】
混合方法としては特に限定されず、固体状態のポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレンの水性分散体を混合する方法や、固体状態のポリカーボネート樹脂と固体状態のポリテトラフルオロエチレンを混合するドライブレンドなどが挙げられる。中でも、均一な分散性が得られる点で、固体状態のポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレンの水性分散体を混合する方法が好ましい。
【0058】
その他の熱可塑性樹脂も混合する場合は、ポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレンとともに熱可塑性樹脂を混合しても良く、予めポリテトラフルオロエチレンと熱可塑性樹脂を混合した後に、ポリカーボネート樹脂と混合しても良い。この場合、ポリテトラフルオロエチレンおよび熱可塑性樹脂は、水性分散体を使用することが好ましい。
【0059】
混合手段は特に限定されないが、撹拌しながら混合することが好ましく、一般的なミキサー(例えば、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、バタフライミキサーなど)、ホモジナイザー、ブレンダーなどを使用できる。
【0060】
また、混合工程の後に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥手段としては、熱風乾燥、真空乾燥、蒸気乾燥、スピン乾燥、吸引乾燥などの各種乾燥手段が挙げられる。
【0061】
具体的には、以下の製造方法が挙げられる。
工程1:ポリテトラフルオロエチレン粒子の水性分散体と、熱可塑性樹脂粒子の水性分散体とを混合して、混合分散体を調製する。
工程2:ポリカーボネート樹脂粒子及び混合分散体を混合する。
工程3:得られた混合物を乾燥する。
【0062】
工程1において、混合分散体を調製する際には、酸または塩基を用いてpHを調整してもよい。
【0063】
工程2において、ポリカーボネート樹脂粒子の平均粒子径としては、特に制限されないが、ポリカーボネート樹脂組成物に対して、優れた難燃性及び外観を付与する観点から、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。ポリカーボネート樹脂粒子の粒子径がこの範囲内であると、本発明の複合樹脂粒子をポリカーボネート樹脂組成物中に均一に分散させやすくなる。
【0064】
ポリカーボネート樹脂粒子の嵩密度は0.1~0.9g/mlが好ましく、0.1~0.7g/mlがより好ましい。0.1g/ml未満または0.9g/mlを超えると、均一な分散状態が発現出来ない、または加工時の材料供給性が不安定になるおそれがある。ここで、嵩密度とは、JIS K 7370固め見かけ嵩密度に準拠して測定される値をいう。
【0065】
溶融混練工程
次に、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)複合樹脂粒子及び(C)光拡散剤、さらに必要に応じて(D)難燃剤、(E)難燃助剤及びその他の成分を溶融混練する。
【0066】
混練方法としては特に限定されず、例えば押出機(溶融混練機、溶融捏和機)、バッチ式混練機などを使用することができる。押出機としては、単軸でも多軸でも良く、多軸の場合、噛合い型同方向回転二軸押出機等の二軸押出機や、二軸以上の多軸押出機を好ましく使用することができる。通常、噛合い型同方向回転二軸押出機が好ましく使用される。
【0067】
混練温度は特に限定されないが、220℃~340℃が好ましく、240℃~320℃がより好ましい。340℃を超えると、樹脂・添加剤の分解や添加剤の凝集が起こり、成形品の外観不良を引き起こす傾向がある。
【0068】
また、第2の本発明の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物は、(A)重量平均分子量20000~32000の芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂とポリテトラフルオロエチレンを含む複合樹脂粒子、および、(C)光拡散剤を含有する難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、
UL94試験方法に基づく、厚さ1.5mmの試験片の難燃性がV-0等級であり、
JIS K7361に基づく、厚さ2.0mmの試験片の全光線透過率が40%以上、ヘーズが80%以上であり、
厚さ2.0mmの試験片の0°での輝度に対し、輝度が半減する角度である分散度が、20°以上であり、
ISO1133に基づき、300℃、1.2kg荷重で測定したMVRが6~35g/10分であることを特徴とする。
【0069】
難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物中の各成分とその含有量は、前述した通りである。
【0070】
MVRは6~35g/10分であるが、8~35g/10分であることがより好ましい。JIS K7361に基づく全光線透過率は40%以上であるが、45%以上がより好ましい。ヘーズは80%以上であるが、85%以上がより好ましい。厚さ2.0mmの試験片の0°での輝度に対し、輝度が半減する角度である分散度は、20°以上であるが、40°以上が好ましく、45°以上がより好ましい。
【実施例0071】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ質量基準である。
【0072】
実施例で使用した薬品を以下に示す。
・(A-1)直鎖状芳香族ポリカーボネート(PC)樹脂(Mw=27000、住化ポリカーボネート株式会社製)
・(A-2)直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(Mw=22800、住化ポリカーボネート株式会社製)
・(A-3)分岐状ポリカーボネート樹脂(Mw=35000、LGポリカーボネート社製)
・(B-1)製造例で製造した複合樹脂粒子
・(B-2)PTFE/MS(ポリメタクリルスチレン)=50/50の粒子(三菱ケミカル株式会社製A3800)
・(B-3)PTFE/SAN(スチレン-アクリロニトリル共重合体)=50/50の粒子(シャインポリマー社製SN3307)
・(B-4)PTFE粒子(ダイキン工業株式会社製FA500C)
・(C)サムソン社製 SL-200M
・(D)シリコーン系難燃剤(ジオルガノジクロロシラン、モノオルガノトリクロロシラン及びテトラクロロシランの共重合体、主鎖構造のD/T/Q単位の比率:40/60/0(モル比)、全有機官能基中のフェニル基の比率:60モル%、末端基がメチル基、有機官能基はフェニル基又はメチル基、重量平均分子量が15000程度、特開2012-097223号公報の段落[0041]に従って合成)
・(E)パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(ランクセス株式会社製BAYOWET C4)
・リン系酸化防止剤(クラリアントジャパン社製P-EPQ)
・離型剤(理研ビタミン社製リケマールS-100A)
・加水分解防止剤:(株式会社ダイセル製セロキサイド2021P)
【0073】
(製造例)
ポリテトラフルオロエチレン粒子水性分散液(一次粒子径0.15~0.25μm、固形分率60%、ダイキン工業株式会社製ポリフロンD210-C)と、スチレン-アクリロニトリル共重合体粒子水性分散液(一次粒子径0.05~1μm、固形分率43%、日本A&L社製K-1158)とを、50:50(PTFE粒子:SAN粒子)の質量比(固形分比)で混合した。得られた混合液を酸で中和して中和混合液を得た。次に、ポリカーボネート樹脂粒子(一次粒子径1mm、嵩密度0.3g/ml)の粉末に、中和混合液(固形分0.46質量部)を添加した。次に、80℃に加温して、スーパーミキサーを用いて0.5時間攪拌した後、乾燥させて複合樹脂粒子(B-1)を製造した。(B-1)中のPC樹脂粒子、PTFE粒子及びSAN粒子の質量比は、87.0:6.5:6.5である。また、複合樹脂粒子(B-1)の平均粒子径は、5mm以下であった。
【0074】
(実施例1~6及び比較例1~4)
各成分を表2に記載の組成(質量部)となるようにタンブラーに投入し、10分間乾式混合した。次に、二軸押出機(日本製鋼所社製のTEX30α)を用いて、溶融温度280℃で混練し、各ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを下の方法で評価した。
【0075】
<流動性>
得られたペレットを、ISO1133に基づき、300℃、1.2kg荷重でMVRを測定した。結果を表2に示す。
【0076】
<光学性能>
得られたペレットを125℃で4時間乾燥後、射出成形機(FANAC社製ROBOSHOT S-2000i)を用いて、試験片成形時の温度300℃、射出圧力100MPa、金型温度100℃の条件下で光学特性試験用試験片(80mm×52mm×1mmの平板及び80mm×52mm×2mmの平板)を作製した。
(1)分散度
上記光学特性試験用試験片(厚さ2mm)を用い、村上色彩技術研究所社製の変角光度計(ゴニオフォトメーター)GP-5で、入射光:0°、煽り角:0°、受光範囲:0°~90°、光束絞り:2.0、受光絞り:3.0の条件で2mm厚部の輝度を測定し、0°の輝度に対して、輝度が半減する角度を分散度(°)として求めた。分散度が高いほど、光拡散性が高く、照明カバーにした場合に、光源の光をより拡散し、より広範囲において照度を保て、かつ光源の視認性が低下する効果もあるため、好ましい。
(2)全光線透過率(Tt)及びヘーズ(Haze)
上記光学特性試験用試験片(厚さ1mm又は2mm)を用い、日本電色工業社製のNDH-2000型ヘイズメーターで、JIS K7361に準拠し全光線透過率(単位:%)を、また、JIS K7136に準拠しヘーズ(単位:%)を、それぞれ測定した。
以上の評価結果を表2に示す。
【0077】
<燃焼試験>
得られたペレットを125℃で4時間乾燥後に、射出成形機(日本製鋼所製J-100SAII)を用いて、設定温度260℃にて難燃性評価用試験片(125×13×1.5mm)を作製した。得られた試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室に72時間放置し、アンダーライターズ・ラボラトリーズ・インクが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価を行い、その等級を評価した。結果を表2に示す。なお、UL94の難燃性クラスは表1のとおり。
【0078】
【0079】
残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の試験片が、有炎燃焼を続ける時間の長さであり、ドリップによる綿の着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。
【0080】
<外観性>
得られたペレットを125℃で4時間乾燥後、射出成形機(FANAC社製ROBOSHOT S-2000i)を用いて、試験片成形時の温度300℃、射出圧力100MPa、金型温度100℃の条件下で試験片(80mm×52mm×2mmの平板)を作製した。次に、各試験片の視認できる領域を目視及び光学顕微鏡で観察して、直径が50μm以上の異物の数をカウントし、以下の基準により評価した。結果を表2に示す。
〇:異物の数が0~1個である。
×:異物の数が2個以上ある。
【0081】
本発明の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物は、優れた難燃性、光学特性、流動性及び外観が要求される用途に好適に適用でき、極めて工業的利用価値が高い。この樹脂組成物から得られる成形体は、例えば、LED照明などに使用される樹脂製照明器具カバー、自動車・電気電子機器・光学機器等の透過型ディスプレイ、光拡散シート、表示カバー等に好適に用いることができる。