(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067333
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】センサ装置及び制御システム
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20220425BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G05B23/02 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175993
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】桐生 崇
【テーマコード(参考)】
2G064
3C223
【Fターム(参考)】
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064DD02
3C223AA23
3C223BA01
3C223CC01
3C223EB02
3C223FF35
3C223FF45
3C223GG03
(57)【要約】
【課題】制御対象機器の動作状態を検出すると共に、制御対象機器の故障を予測する。
【解決手段】センサ装置は、筐体110に収容され、制御対象機器200の動作状態を検出して状態検出情報を生成するセンシング部120と、筐体110における振動を検出して振動検出情報を生成する振動センサ150とを備える。コントローラ300は、状態検出情報に基づいて制御対象機器200を制御し、振動検出情報を参照して制御対象機器200の故障を予測する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(110)に収容され、制御対象機器(200)の動作状態を検出して状態検出情報を生成するセンシング部(120)と、
前記筐体(110)における振動を検出して振動検出情報を生成する振動センサ(150)と、
を備えるセンサ装置。
【請求項2】
前記筐体(110)内に設けられた基板支持部(110a)に基板(140)が取り付けられ、
前記基板(140)に前記振動センサ(150)が取り付けられている、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記筐体(110)内にスペーサ(143,144)を介して基板(140)が取り付けられ、
前記基板(140)に前記振動センサ(150)が取り付けられている、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記センシング部(120)は、前記制御対象機器(200)において回転運動または直線移動をする部位の動作状態を検出して状態検出情報を生成する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
筐体(110)に収容され、制御対象機器(200)の動作状態を検出して状態検出情報を生成すると共に、前記筐体(110)における振動を検出して振動検出情報を生成するセンサ装置(100)と、
前記状態検出情報に基づいて前記制御対象機器(200)を制御し、前記振動検出情報を参照して前記制御対象機器(200)の故障を予測するコントローラ(300)と、
を備える制御システム。
【請求項6】
前記コントローラ(300)は、前記振動検出情報を参照し、前記振動が予め定めた閾値を超えた場合、前記制御対象機器(200)を停止させる、
請求項5に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、センサ装置及び制御システムに関し、特に、制御対象機器の動作状態を検出するセンサ装置及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コントローラにより制御対象機器を制御する場合、例えば、制御対象機器として回転機器を制御する場合、回転機器の回転軸またはロータの回転状態をセンサ装置により検出する。また、コントローラによりリニアアクチュエータの直線移動を制御する場合、リニアアクチュエータのシャフトまたはアームの移動状態をセンサ装置により検出する。そして、センサ装置により生成された検出データに基づいて、コントローラが回転機器の回転、または、リニアアクチュエータの直線移動を制御する。
【0003】
以下の特許文献1には、複数の速度センサの検出結果に基づいて制御対象機器を制御する制御システムが提案されている。そして、特許文献1には、複数の速度センサの検出結果が特定の状態になったとき、センサの故障を判定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された制御システムは、制御対象機器を制御すると共にセンサの故障を判定することが可能であるが、制御対象機器に生じた振動などの異常を検出することができない。このため、制御対象機器の振動が増大したとしても、センサ装置及びコントローラは、その振動に対処することができない。
【0006】
制御対象機器の振動を検出するために新たなセンサ装置を別途設けると、コストの上昇、配線引き回しの煩雑さなどの新たな問題が生じる。一方、制御対象機器の振動の増大は故障の前駆症状の可能性があるため、センサ装置を利用して振動を検出して故障の予測を行えることが望ましい。
【0007】
本発明は、制御対象機器の動作状態を検出すると共に制御対象機器の故障を予測することが可能なセンサ装置及び制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るセンサ装置は、筐体に収容され、制御対象機器の動作状態を検出して状態検出情報を生成するセンシング部と、筐体における振動を検出して振動検出情報を生成する振動センサと、を備える。
【0009】
この発明に係るセンサ装置において、筐体内に設けられた基板支持部に基板が取り付けられ、基板に振動センサが取り付けられていてもよい。
この発明に係るセンサ装置において、筐体内にスペーサを介して基板が取り付けられ、基板に振動センサが取り付けられていてもよい。
【0010】
この発明に係るセンサ装置において、センシング部は、制御対象機器において回転運動または直線移動をする部位の動作状態を検出して状態検出情報を生成する。
【0011】
この発明に係る制御システムは、筐体に収容され、制御対象機器の動作状態を検出して状態検出情報を生成すると共に、筐体における振動を検出して振動検出情報を生成するセンサ装置と、状態検出情報に基づいて制御対象機器を制御し、振動検出情報を参照して制御対象機器の故障を予測するコントローラと、を備える。
【0012】
この発明に係る制御システムにおいて、コントローラは、振動検出情報を参照し、振動が予め定めた閾値を超えた場合、制御対象機器を停止させる。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るセンサ装置によれば、制御対象機器の動作状態をあらわす状態検出情報と、筐体における振動をあらわす振動検出情報とを出力するため、制御対象機器の動作状態を検出しつつ、制御対象機器の故障を予測することが可能になる。
【0014】
この発明に係る制御システムによれば、センサ装置からの状態検出情報を参照して制御対象機器を制御する際に、筐体における振動を参照して制御対象機器の故障を予測することが可能になる。このため、制御対象機器を破損または機能喪失といった不具合から保護することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1におけるセンサ装置の内部の構成を示す構成図である。
【
図3】実施の形態1におけるセンサ装置の内部の構成を示す構成図である。
【
図4】実施の形態1におけるセンサ装置の内部の構成を示す構成図である。
【
図5】実施の形態1におけるセンサ装置の内部の構成を示す構成図である。
【
図6】実施の形態1におけるセンサ装置を含む制御システムの構成を示す構成図である。
【
図7】実施の形態1におけるセンサ装置を含む制御システムの構成を示す構成図である。
【
図8】実施の形態1におけるセンサ装置の内部の構成を示す斜視図である。
【
図9】実施の形態1におけるセンサ装置の内部の構成を示す斜視図である。
【
図10】実施の形態1におけるセンサ装置の外観の構成を示す斜視図である。
【
図11】実施の形態1におけるセンサ装置を含む制御システムの構成を示す構成図である。
【
図12】実施の形態1におけるセンサ装置を含む制御システムの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のセンサ装置及び制御システムの実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0017】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1におけるセンサ装置100の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、実施の形態1におけるセンサ装置100の内部の構成を示す構成図である。
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図である。
【0018】
[センサ装置100の構成]
図1及び
図2において、センサ装置100は、主に、筐体110と、蓋111と、フランジ113と、センシング部120と、センシング部配線130と、基板140と、振動センサ150と、遮蔽板160とを備えている。
【0019】
筐体110は、センシング部120と振動センサ150とそれらの配線とを収容する筒状または箱状のケースであり、後述する制御対象機器200(
図6及び
図7を参照)に取り付けられる。フランジ113は、センサ装置100を制御対象機器200に取り付けて固定するためのネジ穴が設けられている。センサ装置100は、フランジ113により、制御対象機器200の被検出部材の近傍に取り付けられる。ここで、「収容」とは、筐体110の内部にあること、または、一部が筐体110から突出した状態で残余の部分が筐体110内にあることを意味する。筐体110には、基板140を筐体110に取り付けるため、筐体110の底部110bより高い位置に基板支持面を有する基板支持部110aが合計で6個設けられている。基板支持部110aは、筐体110aの底部110bに設けられた凸部あるいは段部である。基板支持部110aは、基板支持面の中心に雌ネジ穴を有している。
【0020】
筐体110には、センシング部120用の芯線11a1,11a2,11b1,及び11b2を有する多芯のケーブル11が接続されている。ケーブル11は、ケーブルグランド21を通して、筐体110に対して安定した状態に取り付けられている。筐体110には、振動センサ150用の芯線12aを有する多芯のケーブル12が接続されている。ケーブル12は、ケーブルグランド22を通して、筐体110に対して安定した状態に取り付けられている。
【0021】
蓋111は、センシング部配線130と、基板140と、振動センサ150と、遮蔽板160とを、筐体110に取り付ける際に、筐体110から取り外すことが可能に構成されている。
図1には蓋111を取り外した状態が示されており、
図2には蓋111が取り付けられた状態が示されている。なお、センサ装置100において、各部の配置、接続、及び調整を完了した時点で、ネジ等を用いて蓋111を筐体110に取り付け、筐体110の側壁に設けられた注入口110cから筐体110の内部に充填材またはポッティング材を注入し、その後に注入口を塞いでもよい。また、センサ装置100について各部の配置、接続、及び調整を完了した時点で、蓋111を取り付けるための開口部から、筐体110の内部に充填材またはポッティング材を注入し、その後に蓋111を筐体110に取り付けるようにしてもよい。これにより、各部は機械的及び電気的に安定した状態になる。
【0022】
センシング部120は、センシング部120aと、センシング部120bとを備え、筐体110に収容されている。センシング部120a及び120bのそれぞれの検知面は、所定の角度を有する状態で筐体110に取り付けられている。センシング部120a及び120bは、制御対象機器200の動作状態を検出し、制御対象機器の回転方向、回転速度、回転角度、または直線移動などの状態についての、状態検出情報を生成する。生成された状態検出情報は、ケーブル11を通して後述するコントローラ300(
図6及び
図7を参照)へ送信される。
【0023】
センシング部配線130は、センシング部120aのためのセンシング部配線130a1及び130a2と、センシング部120bのためのセンシング部配線130b1及び130b2とを備えている。センシング部配線130a1,130a2,130b1,及び130b2は、基板140と遮蔽板160の上側(
図1の紙面垂直方向手前側)において、圧着スリーブ170a1,170a2,170b1,及び170b2による圧着を介して、それぞれ芯線11a1,11a2,11b1,及び11b2に接続されている。芯線12aは、基板140のプリント配線を通して振動センサ150に接続されている。
【0024】
基板140には、基板支持部110aの雌ネジ穴に合致する取り付け穴が設けられている。基板140は、基板支持部110aに支持されると共にネジ止めされることにより、筐体110に取り付けられている。この基板140に、振動センサ150が取り付けられている。この場合、振動センサ150の取り付け空間を確保するように、基板140の取り付け位置を決定することが望ましい。また、基板140には、振動センサ150に関連する処理部などが取り付けられている。なお、基板140の一部の取り付け穴は、スペーサ161を介して遮蔽板160と共に基板支持部110aに対してネジ止めされている。
【0025】
振動センサ150は、基板140に取り付けられており、筐体110における振動を検出して振動検出情報を生成する。振動センサ150において生成された振動検出情報は、ケーブル12を通して、コントローラ300へ送信される。このように、基板支持部110aを介して筐体110に固定された基板140に振動センサ150を搭載することで、振動センサ150は、筐体110における振動を直接的かつ正確に検出することが可能になる。
【0026】
遮蔽板160は、基板140上に、スペーサ161を介して、基板140と共に基板支持部110aに対してネジ止めされている。遮蔽板160は、振動センサ150が搭載された基板140と、センシング部120からの各種配線との中間に配置されている。このため、遮蔽板160は、導電性の材質で構成されることにより、振動センサ150に対して電磁シールドとして作用する。
【0027】
なお、振動時において、振動センサ150が振動を正確に検出できるようにするため、基板140を筐体110に取り付けるための基板支持部110aの数を増やしてもよい。また、筐体110における振動を振動センサ150が正確に検出できるようにするため、基板支持部110の形状及び位置並びに個数、基板140の厚さ及び材質、並びに振動センサ150のケースの厚さ及び材質を調整してもよい。
【0028】
次に、センサ装置100の各部の配置の詳細を、
図3~
図5を参照して説明する。
図3~
図5は、実施の形態1におけるセンサ装置100の内部の構成を示す構成図である。
【0029】
図3は、センサ装置100の内部の構成を明らかにするため、筐体110の蓋111を取り外すと共に、基板140、遮蔽板160、及び各種配線を取り外した状態で示している。筐体110には、基板140を取り付けるため、筐体110の底部110bより高い位置に基板支持面を有する基板支持部110aが6個設けられている。基板支持部110aは、基板支持面の中心に雌ネジ穴を有している。基板支持部110aにおける基板支持面の高さは、基板140、振動センサ150、遮蔽板160、及び各種配線を配置可能なように決定される。基板支持部110aは、筐体110の側壁部と底部110bとに接した状態であり、筐体110の振動を基板140上の振動センサ150に伝達しやすいように構成されている。なお、基板支持部110aの形状及び位置並びに個数については、任意に変更することが可能である。
【0030】
図4は、センサ装置100の内部の構成を明らかにするため、筐体110の蓋111を取り外すと共に、遮蔽板160及び各種配線を取り外した状態で示している。
図4において、振動センサ150を備えた基板140は、基板支持部110aの基板支持面の上に、基板140の取り付け穴と基板支持部110aの雌ネジ穴とが一致するように載置されている。基板140は、ケーブル11及び12に近い側の2個の基板支持部110aに対してネジ止めされることにより、筐体110に取り付けられている。基板140の残りの取り付け穴については、後述するように遮蔽板160と共にネジ止めされる。基板140には、振動センサ150のほかに、振動センサ150において生成された振動検出情報を処理する処理部151及び152が取り付けられている。この振動検出情報は、振動の大きさの情報を少なくとも含んでおり、振動の方向の情報を含んでいてもよい。
【0031】
図5は、センサ装置100の内部の構成を明らかにするため、筐体110の蓋111を取り外すと共に、各種配線を取り外した状態で示している。
図5において、遮蔽板160は、振動センサ150を備えた基板140の上(
図5の紙面垂直方向手前側)に、スペーサ161(
図2参照)を介して、基板140と共に基板支持部110aに対してネジ止めされている。遮蔽板160は、基板140とセンシング部120からの図示しない各種配線との中間に配置され、振動センサ150に対する電磁シールドとして作用する。なお、遮蔽板160は、必要に応じて、振動センサ150の他に、処理部151及び152の一部または全部を覆うようにしてもよい。
【0032】
次に、実施の形態1における制御システム1の構成について、
図6を参照して説明する。
図6は、実施の形態1におけるセンサ装置100を含む制御システム1の構成を示す構成図である。
図6において、制御システム1は、主に、センサ装置100と、制御対象機器200と、コントローラ300とを備えている。センサ装置100には、センシング部120と、振動センサ150とが設けられている。ここで、センシング部120は、センシング部120aと、センシング部120bとを備えている。センシング部120a及び120bは、制御対象機器200の回転方向、回転速度、回転角度、直線移動などの動作状態を検出して状態検出情報を生成する。センシング部120a及び120bにおいて生成された状態検出情報は、ケーブル11を通してコントローラ300へ送信される。
【0033】
振動センサ150は、筐体110における振動を検出して振動検出情報を生成する。振動センサ150において生成された振動検出情報は、ケーブル11とは別のケーブル12を通して、コントローラ300へ送信される。この振動検出情報には、振動の大きさの情報ほかに、振動の方向の情報を含めてもよい。
【0034】
制御対象機器200は、コントローラ300から供給される駆動信号Pを物理的運動に変換する機械要素であり、モータまたはリニアアクチュエータなどが該当する。なお、制御対象機器200におけるロータ、シャフト、アームなどの被検出部材の動作状態が、センサ装置100のセンシング部120により検出される。コントローラ300は、センサ装置100のセンシング部120からの状態検出情報を参照して、駆動信号Pを制御対象機器200に供給する。ここで、コントローラ300は、制御対象機器に供給する駆動信号Pにより、制御対象機器200の状態、例えば、回転方向、回転速度、回転角度、回転停止などを制御する。
【0035】
コントローラ300は、以上の状態検出情報を参照して制御対象機器200を制御するのと並行して、センサ装置100の振動センサ150からの振動検出情報を参照して制御対象機器200の故障を予測する。例えば、コントローラ300は、予め定められたルックアップテーブルを参照し、振動の大きさにより、制御対象機器200における故障発生までの時間を算出する。また、例えば、コントローラ300は、予め定められたルックアップテーブルを参照し、振動の周波数または周期により、故障発生箇所を特定する。
【0036】
そして、コントローラ300は、センサ装置100の振動センサ150からの振動検出情報を参照し、振動が予め定めた閾値を超えた場合、図示しない表示部に警告を表示する。この警告には、振動の大きさ、故障が予測される旨のメッセージ、予測される故障発生箇所などを加えてもよい。また、コントローラ300は、振動が予め定めた閾値を超えた場合、制御対象機器200を停止させてもよい。なお、コントローラ300は、駆動信号Pの供給停止によって制御対象機器200を停止させてもよいし、ブレーキ機構を用いて制御対象機器200を停止させてもよい。このため、コントローラ300は、センサ装置100からの振動検出情報を参照することにより、制御対象機器200の振動を検出する新たなセンサ装置を別途設ける必要がなく、コストの上昇と配線引き回しの煩雑さを生じることなく、センサ装置100を利用して制御対象機器200の故障を予測することが可能になる。
【0037】
次に、実施の形態1における制御システム1の他の構成について、
図7を参照して説明する。
図7は、実施の形態1におけるセンサ装置100を含む制御システム1の構成を示す構成図である。なお、
図7において、
図6と同一部分には同一符号を付している。従って、
図7において、
図6と同一部分の説明を省略し、
図6と異なる部分についての説明を行う。
【0038】
図7において、コントローラ300は、センサ装置100のセンシング部120からの状態検出情報を参照して、制御対象機器200の動作状態、例えば、回転方向、回転速度、回転角度、回転停止などを監視する。また、コントローラ300は、センサ装置100の振動センサ150からの振動検出情報を参照して、制御対象機器200の故障を予測する。例えば、コントローラ300は、予め定められたルックアップテーブルを参照し、振動の大きさにより、制御対象機器200での故障発生までの時間を算出する。また、例えば、コントローラ300は、予め定められたルックアップテーブルを参照し、振動の周波数により、制御対象機器200における故障発生箇所を特定する。そして、コントローラ300は、センサ装置100からの振動検出情報を参照し、振動が予め定めた閾値を超えた場合、図示しない表示部に警告を表示する。
【0039】
実施の形態2.
はじめに、実施の形態2におけるセンサ装置100の構成について、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8及び
図9は、実施の形態2におけるセンサ装置100の内部の構成を示す斜視図である。なお、
図8は、センサ装置100の内部の構成を明らかにするため、筐体110の一部を切り欠いた状態で示している。また、
図9は、センサ装置100の内部の構成を明らかにするため、筐体110の一部を切り欠くと共に、基板140を取り外した状態を示している。なお、
図8及び
図9において、
図1~
図5と同一部分には同一符号を付している。
【0040】
[センサ装置100の構成]
図8において、センサ装置100は、主に、筐体110と、センシング部120と、センシング部配線130と、基板140と、振動センサ150と、を備えている。ここで、筐体110は、センシング部120と振動センサ150とそれらの配線とを収容するケースであり、後述する制御対象機器200(
図11及び
図12を参照)に取り付けられる。センシング部120は、センシング部120aと、センシング部120bとを備えている。また、センシング部配線130は、センシング部120aのためのセンシング部配線130aと、センシング部120bのためのセンシング部配線130bとを備えている。
【0041】
基板140は、後述するスペーサ143及び144(
図9を参照)と、ネジ141及び142とにより、筐体110に取り付けられている。この基板140に、振動センサ150が取り付けられている。この場合、振動センサ150の取り付け空間を確保するように、基板140の取り付け位置を決定することが望ましい。
【0042】
センサ装置100には、芯線10a~10dを有する多芯のケーブル10が接続されている。芯線10a~10dは、基板140の裏面側において、振動センサ150と、センシング部配線130aと、センシング部配線130bとに接続されている。
【0043】
センシング部120a及び120bは、制御対象機器200の動作状態を検出し、制御対象機器の回転方向、回転速度、回転角度、または直線移動などの状態についての、状態検出情報を生成する。生成された状態検出情報は、ケーブル10を通して後述するコントローラ300(
図11及び
図12を参照)へ送信される。
【0044】
振動センサ150は、筐体110における振動を検出して振動検出情報を生成する。振動センサ150において生成された振動検出情報は、ケーブル10を通して、コントローラ300へ送信される。
【0045】
図9において、センサ装置100は、破線で示す基板140の裏側に、圧着スリーブ170a1、170a2、170b1、170b2を備えている。ここで、
図9は、センサ装置100の内部の構成を明らかにするため、筐体110の一部を切り欠くと共に、基板140を取り外した状態を示している。
【0046】
2本の信号線を有するセンシング部配線130aと、2本の信号線を有する芯線10aとは、圧着スリーブ170a1及び170a2を介して互いに圧着され、電気的に接続されている。2本の信号線を有するセンシング部配線130bと、2本の信号線を有する芯線10bとは、圧着スリーブ170b1及び170b2を介して互いに圧着され、電気的に接続されている。なお、芯線10c及び10dと、振動センサ150の端子部との接続については、図示を省略する。
【0047】
筐体110内の基板140を取り付ける位置に、ネジ141及び142に対応したスペーサ143及び144が設けられている。基板140は、ネジ141とスペーサ143とによって一端が挟持され、ネジ142とスペーサ144とによって他端が挟持されて、筐体110に取り付けられている。このように、スペーサ143及び144を介して筐体110に接触しないようにされた基板140に振動センサ150を取り付けることで、振動センサ150は、筐体110の共振または共鳴の影響を受けず、筐体110における振動を正確に検出することが可能になる。
【0048】
なお、振動時において基板140が筐体110と共振することを防止し、振動センサ150が振動を正確に検出できるようにするため、基板140を筐体110に取り付けるネジ及びスペーサの数を増やしてもよい。また、筐体110における振動を振動センサ150が正確に検出できるようにするため、基板140の厚さ及び材質、並びに振動センサ150のケースの厚さ及び材質を調整し、基板140及び振動センサ150と、筐体110とが、振動時において共振しないように調整してもよい。また、筐体110または蓋111からの接触による圧力を振動センサ150が受けないようにするため、振動センサ150に保護カバーを設けてもよい。
【0049】
次に、センサ装置100の外観の構成について、
図10を参照して説明する。
図10は、実施の形態2におけるセンサ装置100の外観の構成を示す斜視図である。
図10において、センサ装置100は、主に、筐体110と、蓋111と、フランジ113と、を備えている。また、筐体110の先端部側には、センシング部120a,120bのそれぞれの検知面が所定の角度を有する状態で取り付けられている。
【0050】
ここで、蓋111は、ネジ112a~112dにより、筐体110の開口部に取り付けられている。なお、蓋111を筐体110に取り付けた状態で、図示されない注入口から、筐体110の内部に充填材またはポッティング材を注入し、その後に注入口を塞いでもよい。また、蓋111を取り付けるための開口部から充填材またはポッティング材を注入し、その後に蓋111を筐体110に取り付けるようにしてもよい。これにより、各部は機械的及び電気的に安定した状態になる。
【0051】
フランジ113には、センサ装置100を制御対象機器200に取り付けて固定するためのネジ穴が設けられている。センサ装置100は、フランジ113により、制御対象機器200の被検出部材の近傍に取り付けられる。ケーブル10は、ケーブルグランド21を通して、筐体110に対して安定した状態に取り付けられている。各部の配置、接続、及び調整を完了した時点で、なお、センサ装置100の内部に充填材またはポッティング材を注入してもよい。
【0052】
次に、実施の形態2における制御システム1の構成について、
図11を参照して説明する。
図11は、実施の形態2におけるセンサ装置100を含む制御システム1の構成を示す構成図である。
【0053】
図11において、制御システム1は、主に、センサ装置100と、制御対象機器200と、コントローラ300とを備えている。センサ装置100には、センシング部120と、振動センサ150とが設けられている。ここで、センシング部120は、センシング部120aと、センシング部120bとを備えている。センシング部120a及び120bは、制御対象機器200の回転方向、回転速度、回転角度、直線移動などの動作状態を検出して状態検出情報を生成する。センシング部120a及び120bにおいて生成された状態検出情報は、ケーブル10を通してコントローラ300へ送信される。
【0054】
振動センサ150は、筐体110における振動を検出して振動検出情報を生成する。振動センサ150において生成された振動検出情報は、ケーブル10を通して、コントローラ300へ送信される。この振動検出情報には、振動の大きさの情報ほかに、振動の方向の情報を含めてもよい。制御対象機器200は、コントローラ300から供給される駆動信号Pを物理的運動に変換する機械要素であり、モータまたはリニアアクチュエータなどが該当する。なお、制御対象機器200におけるロータ、シャフト、アームなどの被検出部材の動作状態が、センサ装置100のセンシング部120により検出される。
【0055】
コントローラ300は、センサ装置100のセンシング部120からの状態検出情報を参照して、駆動信号Pを制御対象機器200に供給する。ここで、コントローラ300は、制御対象機器に供給する駆動信号Pにより、制御対象機器200の状態、例えば、回転方向、回転速度、回転角度、回転停止などを制御する。
【0056】
コントローラ300は、以上の状態検出情報を参照して制御対象機器200を制御するのと並行して、センサ装置100の振動センサ150からの振動検出情報を参照して制御対象機器200の故障を予測する。例えば、コントローラ300は、予め定められたルックアップテーブルを参照し、振動の大きさにより、制御対象機器200における故障発生までの時間を算出する。また、例えば、コントローラ300は、予め定められたルックアップテーブルを参照し、振動の周波数または周期により、故障発生箇所を特定する。
【0057】
そして、コントローラ300は、センサ装置100の振動センサ150からの振動検出情報を参照し、振動が予め定めた閾値を超えた場合、図示しない表示部に警告を表示する。この警告には、振動の大きさ、故障が予測される旨のメッセージ、予測される故障発生箇所などを加えてもよい。また、コントローラ300は、振動が予め定めた閾値を超えた場合、制御対象機器200を停止させてもよい。なお、コントローラ300は、駆動信号Pの供給停止によって制御対象機器200を停止させてもよいし、ブレーキ機構を用いて制御対象機器200を停止させてもよい。
【0058】
このため、コントローラ300は、センサ装置100からの振動検出情報を参照することにより、制御対象機器200の振動を検出する新たなセンサ装置を別途設ける必要がなく、コストの上昇と配線引き回しの煩雑さを生じることなく、センサ装置100を利用して制御対象機器200の故障を予測することが可能になる。
【0059】
次に、実施の形態2における制御システム1の他の構成について、
図12を参照して説明する。
図12は、実施の形態2におけるセンサ装置100を含む制御システム1の構成を示す構成図である。なお、
図12において、
図11と同一部分には同一符号を付している。従って、
図12において、
図11と同一部分の説明を省略し、
図11と異なる部分についての説明を行う。
【0060】
図12において、コントローラ300は、センサ装置100のセンシング部120からの状態検出情報を参照して、制御対象機器200の動作状態、例えば、回転方向、回転速度、回転角度、回転停止などを監視する。また、コントローラ300は、センサ装置100の振動センサ150からの振動検出情報を参照して、制御対象機器200の故障を予測する。例えば、コントローラ300は、予め定められたテーブルを参照し、振動の大きさにより、制御対象機器200での故障発生までの時間を算出する。また、例えば、コントローラ300は、予め定められたテーブルを参照し、振動の周波数により、制御対象機器200における故障発生箇所を特定する。そして、コントローラ300は、センサ装置100からの振動検出情報を参照し、振動が予め定めた閾値を超えた場合、図示しない表示部に警告を表示する。
【0061】
[実施の形態により得られる効果]
実施の形態1及び2のセンサ装置100は、筐体110に収容され、制御対象機器200の動作状態を検出して状態検出情報を生成するセンシング部120a及び120bと、筐体110における振動を検出して振動検出情報を生成する振動センサ150と、を備える。このため、制御対象機器200の動作状態を検出しつつ、制御対象機器200の故障を振動に基づいて予測することが可能になる。
【0062】
実施の形態1及び2の制御システムは、筐体110に収容され、制御対象機器200の動作状態を検出して状態検出情報を生成すると共に、筐体110における振動を検出して振動検出情報を生成するセンサ装置100と、状態検出情報に基づいて制御対象機器の動作を制御し、振動検出情報を参照して制御対象機器200の故障を予測するコントローラ300と、を備える。このため、センサ装置100からの状態検出情報を参照して制御対象機器200を制御する際に、センサ装置における振動を参照して制御対象機器200の故障を予測することが可能になる。このため、制御対象機器200を破損または機能喪失といった不具合から保護することが可能になる。
【0063】
実施の形態1のセンサ装置100において、筐体110内に設けられた基板支持部110aに基板140が取り付けられ、基板140に振動センサ150が取り付けられている。すなわち、基板140上の振動センサ150は、基板支持部110aを介して基板140が筐体110にダイレクトに取り付けられているため、筐体110における振動を直接的かつ正確に検出することができる。
【0064】
実施の形態2のセンサ装置100において、筐体110内にスペーサ143,144を介して基板140が取り付けられ、基板140に振動センサ150が取り付けられている。すなわち、基板140上の振動センサ150は、筐体110に直接接触していないため、筐体110の共振または共鳴の影響を受けず、筐体110における振動を正確に検出することができる。
【0065】
実施の形態1及び2のセンサ装置100において、センシング部120a及び120bは、制御対象機器200において回転運動または直線移動をする部位の動作状態を検出して状態検出情報を生成する。すなわち、センサ装置100は、制御対象機器200におけるロータ、シャフト、アームなどの被検出部材の動作状態を検出する。このため、センサ装置100は、被検出部材の動作状態を検出することができると共に、被検出部材において発生する振動を振動センサ150において検出することが可能になる。
【0066】
実施の形態1及び2のセンサ装置100において生成された状態検出情報と振動検出情報とは、ケーブル10、またはケーブル11及び12を通して、制御対象機器200を制御するコントローラ300に送信される。このため、センサ装置100からの状態検出情報を参照して制御対象機器200を制御する際に、筐体110における振動を参照して制御対象機器200の故障を予測することが可能になる。
【0067】
[その他の実施の形態]
以上の実施の形態1及び2の説明において、センシング部120aとセンシング部120bとを備えるセンシング部120の具体例を示したが、センシング部120の構成は上記実施の形態に示した具体例に限定されるものではない。
【0068】
例えば、センシング部120を構成するセンサは2個に限定されず、1個、あるいは3個以上であってもよい。また、筐体110内のセンシング部120と振動センサ150との配置についても、
図1~
図5及び
図8~
図10に示した具体例に限定されるものではない。
【0069】
振動センサ150は、振動を検出することが可能な各種のセンサを使用することが可能である。例えば、加速度センサまたはマイクロフォン等を用いて振動センサ150を実現することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のセンサ装置100は、鉄道車両用の速度センサとして使用することができる。この場合、センサ装置100は、鉄道車両のモータまたは車輪などの速度を検出しつつ、回転軸に設けられたベアリングの故障を予測することが可能になる。
【符号の説明】
【0071】
1 制御システム、10,11,12 ケーブル、10a~10d,11a~11d,12a~12d 芯線、20,21,22 ケーブルグランド、100 センサ装置、110 筐体、110a 基板支持部、110b 底部、110c 注入口、111 蓋、112a~112d ネジ、113 フランジ、120,120a,120b センシング部、130,130a,130b センシング部配線、140 基板、141,142 ネジ、143,144 スペーサ、150 振動センサ、160 遮蔽板、161 スペーサ、170a1,170a2,170b1,170b2 圧着スリーブ、200 制御対象機器、300 コントローラ。