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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067334
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】フィルムセット及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/325 20060101AFI20220425BHJP
   B65H 23/032 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
B41J2/325 A
B65H23/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175995
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昇士
【テーマコード(参考)】
2C065
3F104
【Fターム(参考)】
2C065AA01
2C065AB09
2C065AF00
2C065DA36
3F104AA03
3F104CA00
3F104KA16
3F104KA18
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、供給スプールと巻取スプールの中心軸の位置ずれに起因する転写フィルムの巻き乱れを抑制する。
【解決手段】インクを受容するインク受容層を有する長尺のフィルムと、未使用の前記フィルムが巻き付けられた供給スプールと、前記供給スプールに巻き付けられたフィルムの先端が取り付けられた巻取スプールと、を有するフィルムセットであって、前記フィルムは、前記インク受容層を有するインク受容部と、前記インク受容層を有しない不使用部と、を有し、前記不使用部は、前記巻取スプールに取り付けられたフィルムの先端を含み、前記フィルムの先端から前記インク受容部までの間に設けられ、前記インク受容部よりも前記巻取スプールの軸方向に変形可能な領域を備えている。
【選択図】 図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを受容するインク受容層を有する長尺のフィルムと、
未使用の前記フィルムが巻き付けられた供給スプールと、
前記供給スプールに巻き付けられたフィルムの先端が取り付けられた巻取スプールと、を有するフィルムセットであって、
前記フィルムは、前記インク受容層を有するインク受容部と、前記インク受容層を有しない不使用部と、を有し、
前記不使用部は、前記巻取スプールに取り付けられたフィルムの先端を含み、前記フィルムの先端から前記インク受容部までの間に設けられ、前記インク受容部よりも前記巻取スプールの軸方向に変形可能な領域を備えていることを特徴とするフィルムセット。
【請求項2】
前記フィルムの前記不使用部に設けた軸方向に変形可能な領域は、前記軸方向と直交する方向に切れた複数の第一スリットと、前記軸方向に前記フィルムの端部まで切れた複数の第二スリットと、が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフィルムセット。
【請求項3】
前記フィルムの前記不使用部に設けた軸方向に変形可能な領域は、前記インク受容部によりも伸縮性がある素材からなることを特徴とする請求項1に記載のフィルムセット。
【請求項4】
前記フィルムの前記不使用部は、前記インク受容部によりも伸縮性がある不織布であることを特徴とする請求項3に記載のフィルムセット。
【請求項5】
前記フィルムの前記不使用部に設けた軸方向に変形可能な領域は、第一の領域と、前記第一の領域よりも前記軸方向の幅が狭い第二の領域と、を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルムセット。
【請求項6】
前記フィルムの前記不使用部に設けた軸方向の変形可能な領域は、前記巻取スプールに取り付けられたフィルムの先端であり、
前記フィルムの先端は、前記巻取スプールに対して前記軸方向に移動可能に係合し、かつ、前記巻取スプールに対して回転可能に係合する係合部を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルムセット。
【請求項7】
前記フィルムの前記不使用部は、前記供給スプールに巻き付けられた未使用のフィルムを保護するための保護部材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のフィルムセット。
【請求項8】
前記フィルムは、前記インク受容層、前記インク受容層の表面を保護する透明の保護層、加熱により前記インク受容層および前記保護層を一体に剥離を促進するための剥離層、基材が順に積層されて形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のフィルムセット。
【請求項9】
転写フィルムに画像を形成する画像形成部と、前記転写フィルムに形成した画像を記録媒体に転写する転写部と、を有し、記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、
前記転写フィルムを有するフィルムセットとして、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のフィルムセットを有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを有するフィルムセット、及び前記フィルムとインクリボンを用いて記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクリボンを用いてカードやシート等の記録媒体に画像を形成する画像形成装置では、インクリボンを用いて記録媒体に直接画像を形成する直接印刷方式のほかに、間接印刷方式(再転写方式)が用いられている。間接印刷方式の画像形成装置では、インクリボンを用いて転写フィルム(転写媒体)に画像を形成し、次いで転写フィルムに形成された画像をカードなどの記録媒体に転写することで、記録媒体に画像を形成する。
【0003】
このような印刷方式の画像形成装置は、複数の加熱素子が配設されたサーマルヘッドと、このサーマルヘッドに対向配置されたプラテン(例えば、プラテンローラ)と、を有する画像形成部を備えている。間接印刷方式の画像形成部では、転写フィルムの背面側(画像形成面の反対面側)をプラテンで支持しつつ、前記転写フィルムとインクリボンとを同じ速度で搬送する。また画像形成部では、インクリボンに対して圧接されたサーマルヘッドの加熱素子を選択的に作動させる加熱制御を行う。このようにして、インクリボンを用いて間接的に転写フィルムに画像を形成する。
【0004】
また、複数色のインクによる各画像を重ねてカラー画像を生成するカラー印刷の場合には、例えば、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)毎の印刷データに従って、前記転写フィルムに前記YMCのインク毎の画像を重ねて印刷する。このため、カラー印刷では、複数色のインクパネルおよび必要に応じてBk(ブラック)インクパネルを面順次に繰り返したインクリボンが用いられる。なお、Bk(ブラック)インクは、例えば、輪郭をはっきりさせる場合やロゴ・文字等の画像を形成する場合に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-86075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、間接印刷方式の画像形成装置においては、転写フィルムと、未使用の転写フィルムが巻き付けられた供給スプールと、供給スプールに巻き付けられた未使用の転写フィルムの先端が貼り付けられた巻取スプールとからなるフィルムセットが設置される。
【0007】
しかし、転写フィルムを供給スプールから巻取スプールに巻き取るにあたって、供給スプールと巻取スプールの中心軸が平行に設置されていないと、巻取スプール上の転写フィルムに巻き乱れが発生する恐れがある。
【0008】
例えば、画像形成装置に設置された供給スプールと巻取スプールの中心軸の位置ずれがあった場合に、転写フィルムは巻取スプールの中心軸に対して傾いた状態で巻き取られ始めることになる。そして、巻取スプールに巻き取られ始めた転写フィルムは、巻取スプールの軸に対する傾きが解消されるまで、巻取スプールにおいて軸方向に徐々に移動することとなる。このようにして、巻き始めから記録媒体の数枚~数十枚分は転写フィルムの巻き乱れが生じるため、サーマルヘッドとプラテンが対向する記録位置において色ズレや余白量変化等の品質低下の原因となる。
【0009】
特許文献1には、フィルムを搬送するローラ軸を旋回可能にした構成が開示されている。しかし、特許文献1では、ローラ軸を旋回させるためのアクチュエータ、フィルム位置を検知する検知手段、アクチュエータの動作を制御する制御手段などが必要であるため、構成が複雑になり、コストアップを招くという課題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、簡易な構成で、供給スプールと巻取スプールの中心軸の位置ずれに起因する転写フィルムの巻き乱れを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、インクを受容するインク受容層を有する長尺のフィルムと、未使用の前記フィルムが巻き付けられた供給スプールと、前記供給スプールに巻き付けられたフィルムの先端が取り付けられた巻取スプールと、を有するフィルムセットであって、前記フィルムは、前記インク受容層を有するインク受容部と、前記インク受容層を有しない不使用部と、を有し、前記不使用部は、前記巻取スプールに取り付けられたフィルムの先端を含み、前記フィルムの先端から前記インク受容部までの間に設けられ、前記インク受容部よりも前記巻取スプールの軸方向に変形可能な領域を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で、供給スプールと巻取スプールの中心軸の位置ずれに起因する転写フィルムの巻き乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】画像形成装置を含む画像形成システムを示す図である。
図2】画像形成装置の構成を示す模式図である。
図3】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
図4】画像形成装置の待機ポジションの状態の印刷部の一部の模式図である。
図5】画像形成装置の搬送ポジションの状態の印刷部の一部の模式図である。
図6】画像形成装置の印刷ポジションの状態の印刷部の一部の模式図である。
図7】(a)(b)(c)画像形成装置で使用されるインクリボンの模式図である。
図8】(a)(b)(c)画像形成装置で使用される転写フィルムの模式図である。
図9】画像形成装置の待機ポジションの状態の印刷部の模式図である。
図10】画像形成装置の搬送ポジションの状態の印刷部の模式図である。
図11】画像形成装置の印刷ポジションの状態の印刷部の模式図である。
図12】転写フィルムを有するフィルムセットの構成を示す図である。
図13】実施例1に係る転写フィルムの形状を示す図である。
図14】実施例2に係る転写フィルムの形状を示す図である。
図15】実施例3に係る転写フィルムの形状を示す図である。
図16】実施例4に係る転写フィルムの形状を示す図である。
図17】(a)比較例の転写フィルムが巻取スプールに巻き取られた状況の図、(b)実施例の転写フィルムが巻取スプールに巻き取られた状況の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るフィルムカセット、フィルムカセットを設置する画像形成装置、および画像形成装置を有する画像形成システムについて説明する。
【0016】
<画像形成システムの構成>
画像形成システム200の構成について、図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0017】
画像形成システム200は、画像形成装置1と、上位装置201と、モニタ202と、入力装置203と、画像入力装置204と、を有している。
【0018】
画像形成装置1は、図示しないインターフェースを介して上位装置201に接続されており、上位装置201から印刷データ若しくは画像データ、又は磁気的記録データ若しくは電気的記録データ等を受信し、受信した各種データに基づいて記録動作等を行う。画像形成装置1は、後述のオペパネ部(操作表示部)5を有しており、上位装置201からの記録動作を指示する信号の受信に加えて、オペパネ部5からの記録動作を指示する信号の受信も可能である。画像形成装置1は、ここではプリンタを例示する。なお、画像形成装置1の構成の詳細については後述する。
【0019】
上位装置201には、画像形成装置1に加えて、モニタ202、入力装置203及び画像入力装置204が接続されている。上位装置201は、入力装置203からの命令により、モニタ202に表示された画像の若しくは画像入力装置204から入力された印刷データ若しくは画像データ、又は磁気的若しくは電気的記録データ等を画像形成装置1に送信して記録動作等を指示する。上位装置201は、例えばパーソナルコンピュータ等のホストコンピュータである。
【0020】
モニタ202は、上位装置201に接続されており、上位装置201によって生成されたデータ等に基づいて所定の表示を行う液晶ディスプレイ等である。
【0021】
入力装置203は、上位装置201に接続されており、上位装置201に対して命令又はデータを入力するためのキーボード又はマウス等である。入力装置203は、ここではキーボードを例示する。
【0022】
画像入力装置204は、上位装置201に接続されており、デジタルカメラ又はスキャナ等である。画像入力装置204は、ここではデジタルカメラを例示する。
【0023】
<画像形成装置の構成>
画像形成装置1の構成について、図2及び図3を参照しながら、詳細に説明する。
【0024】
画像形成装置1は、ハウジング2を有しており、ハウジング2内に情報記録部Aと、印刷部Bと、媒体収容部Cと、収容部Dと、回動ユニットFと、オペパネ部5と、制御部100と、電源部120と、を備えている。
【0025】
情報記録部Aは、回動ユニットFから搬送されてくる記録媒体としてのカードCaに対して、文字や画像を記録すると共に磁気的又は電気的な情報記録を行う。
【0026】
印刷部Bは、回動ユニットFから搬送されてくるカードCaの表面、又は表面と裏面とに顔写真又は文字データ等の画像を形成し、画像を形成したカードCaを収容部Dに向けて搬送する。
【0027】
媒体収容部Cは、複数枚のカードCaを立位姿勢で整列して収納し、収納しているカードCaを順次回動ユニットFに供給する。
【0028】
収容部Dは、印刷部Bより搬送されるカードCaを収容する。
【0029】
回動ユニットFは、媒体収容部Cから供給されるカードCaを情報記録部Aに向けて搬送する。回動ユニットFは、情報記録部Aにおいて文字や画像を記録すると共に磁気的又は電気的な情報記録を行ったカードCaを印刷部Bに向けて搬送する。回動ユニットFは、印刷部Bから搬送されてくるカードCaを保持した状態で所定角度旋回し、保持したカードCaの表面と裏面とを反対向きに引っ繰り返した後に、カードCaを印刷部Bに向けて搬送する。
【0030】
オペパネ部5は、操作表示制御部106の制御によって画像形成装置1に対する記録動作の指示を受ける。なお、オペパネ部5は、オペレーションパネル部(操作表示部)の略称である。
【0031】
制御手段としての制御部100は、画像形成装置1の全体の制御処理を行う。制御部100は、バッファメモリ101と、マイコン102と、センサ制御部103と、アクチュエータ制御部104と、サーマルヘッド制御部105と、操作表示制御部106と、を備えている。
【0032】
バッファメモリ101は、カードCaに記録するための印刷データ、カードCaの磁気ストライプ若しくはカードCaに収容されているICに、磁気的若しくは電気的に記録するための記録データ等を一時的に格納する。
【0033】
マイコン102は、いずれも図示を省略する中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、画像形成装置1のプログラムやパターンデータ等が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAM、及びこれらを接続する内部バスを備えている。マイコン102は、画像形成装置1の動作を制御する。
【0034】
センサ制御部103は、マイコン102の制御により、各種のセンサからの信号を制御する。
【0035】
アクチュエータ制御部104は、マイコン102の制御により各モータに駆動パルス又は駆動電力を供給する図示しないモータドライバ等を含んでいる。
【0036】
サーマルヘッド制御部105は、マイコン102の制御により、サーマルヘッド40に備えられた図示しない発熱素子から供給する熱エネルギーの供給量を制御する。
【0037】
操作表示制御部106は、マイコン102の制御により、オペパネ部5を制御する。
【0038】
電源部120は、商用交流電源に接続し、商用交流電源から供給される電源を交流から直流に変換して制御部100、サーマルヘッド40、オペパネ部5及び情報記録部A等に供給する。
【0039】
上記の構成を有する画像形成装置1は、上位装置201に接続する図示しないインターフェースを有している。このインターフェース、バッファメモリ101、マイコン102、センサ制御部103、アクチュエータ制御部104、サーマルヘッド制御部105、操作表示制御部106及び情報記録部A等は、互いに外部バスによって接続されている。
【0040】
<情報記録部の構成>
画像形成装置1の情報記録部Aの構成について、図2を参照しながら、詳細に説明する。
【0041】
情報記録部Aは、非接触式IC記録部23と、磁気記録部24と、接触式IC記録部27と、を備えている。
【0042】
非接触式IC記録部23は、回動ユニットFから搬送されてくるカードCaに対して非接触で電気的な情報記録を行い、電気的な情報記録を行ったカードCaを回動ユニットFに向けて搬送する。
【0043】
磁気記録部24は、回動ユニットFから搬送されてくるカードCaに磁気的な情報記録を行い、磁気的な情報記録を行ったカードCaを回動ユニットFに向けて搬送する。
【0044】
接触式IC記録部27は、回動ユニットFから搬送されてくるカードCaに対して接触しながら電気的な情報記録を行い、電気的な情報記録を行ったカードCaを回動ユニットFに向けて搬送する。
【0045】
<印刷部の構成>
画像形成装置1の印刷部Bの構成について、図2及び図4から図6を参照しながら、詳細に説明する。
【0046】
印刷部Bには、媒体搬送路65の延長上の上流側において記録媒体としてのカードCaを移送する媒体搬送経路P1と、下流側において収容スタッカ60に印刷後のカードCaを移送する媒体搬送経路P2と、が設けられている。印刷部Bは、フィルム状媒体搬送機構により搬送される転写フィルム46に対して、サーマルヘッド40によって画像を形成する転写手段としての画像形成部B1と、カードCaの表面に転写フィルム46に形成された画像を転写する転写部B2と、を備えている。
【0047】
具体的には、印刷部Bは、剥離コロ25と、搬送ローラ29と、搬送ローラ30と、プラテンローラ31と、ピンチローラ32a及びピンチローラ32bと、ヒートローラ33と、を備えている。また、印刷部Bは、デカール機構36と、搬送ローラ37と、搬送ローラ38と、インクリボンカセット42と、プラテンローラ45と、巻取スプール47と、供給スプール48と、フィルム搬送ローラ49と、を備えている。
【0048】
また、印刷部Bは、ブラケット50と、ブラケット50Aと、張力受け部材52と、張力受け部材52Aと、カム53と、カム53Aと、を備えている。更に、印刷部Bは、プラテン支持部材72と、基板87と、剥離コロ支持部材88と、バネ部材97と、ベルト98と、バネ部材99と、センサSe2と、を備えている。
【0049】
剥離コロ25は、ブラケット50Aがサーマルヘッド40に対して進出した際に、図5に示すように後述のインクリボンカセット42の剥離部材28と当接して、剥離部材28と共に転写フィルム46とインクリボン41とを挟持して剥離する。なお、図2の状態の剥離コロ25は、インクリボン41及び転写フィルム46を介して剥離部材28と当接している。
【0050】
搬送ローラ29は、媒体搬送経路P1に設けられていると共に、図示しない搬送モータに連結されている。搬送ローラ29は、搬送モータが駆動することにより回転して、回動ユニットFから搬送されてくるカードCaを媒体搬送経路P1において搬送ローラ30に向けて搬送する。
【0051】
搬送ローラ30は、媒体搬送経路P1に設けられていると共に、図示しない搬送モータに連結されている。搬送ローラ30は、搬送モータが駆動することにより回転して、搬送ローラ29から搬送されてくるカードCaを媒体搬送経路P1において転写部B2に向けて搬送する。
【0052】
プラテンとしてのプラテンローラ31は、ヒートローラ33と共に転写フィルム46及びカードCaを挟持して、転写フィルム46上の画像をカードCaの表面に転写させる。
【0053】
ピンチローラ32a及びピンチローラ32bは、フィルム搬送ローラ49の周囲に設けられている。ピンチローラ32a及びピンチローラ32bは、フィルム搬送ローラ49に当接する位置と、フィルム搬送ローラ49から離間する位置と、の間で移動可能に構成されている。なお、図2の状態のピンチローラ32a及びピンチローラ32bは、フィルム搬送ローラ49に圧接することで転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付けている。
【0054】
ヒートローラ33は、転写フィルム46及びカードCaを介してプラテンローラ31に圧接する位置と、プラテンローラ31から離間する位置と、の間で移動可能になっている。ヒートローラ33は、プラテンローラ31と共に転写フィルム46及びカードCaを挟持して、転写フィルム46上の画像をカードCaの表面に転写させる。なお、図2の状態のヒートローラ33は、プラテンローラ31から離間している。
【0055】
プラテンローラ31とヒートローラ33とは、媒体搬送経路P1を搬送されるカードCaの表面に転写フィルム46に形成された画像を溶融転写させる転写部B2を構成している。
【0056】
デカール機構36は、搬送ローラ37と搬送ローラ38との間に設けられている。デカール機構36は、搬送ローラ37と搬送ローラ38とによって保持されたカードCaの搬送方向の中央部を押圧することにより、ヒートローラ33による熱転写で生じたカードCaのカールを矯正する。デカール機構36は、図示しないカムを含む昇降機構により図2において上下方向に移動可能に構成されている。
【0057】
搬送ローラ37は、図示しない搬送モータに連結されている。搬送ローラ37は、搬送モータが駆動した際に回転して、媒体搬送経路P2において転写部B2から搬送されてくるカードCaを、デカール機構36を介して搬送ローラ38に向けて搬送する。
【0058】
搬送ローラ38は、図示しない搬送モータに連結されている。搬送ローラ38は、搬送モータが駆動した際に回転して、媒体搬送経路P2において搬送ローラ37からデカール機構36を介して搬送されてくるカードCaを、収容スタッカ60に向けて搬送する。
【0059】
インクリボンカセット42は、剥離部材28と、冷却ファン39と、サーマルヘッド40と、供給スプール43と、巻取スプール44と、を備えており、供給スプール43と巻取スプール44との間で張架された状態のインクリボン41を収納している。
【0060】
剥離部材28は、インクリボンカセット42に固設されている。剥離部材28は、図5に示すように剥離コロ25と当接した際に、剥離コロ25と共に転写フィルム46とインクリボン41とを挟持する。
【0061】
冷却ファン39は、サーマルヘッド40を冷却するためのものである。
【0062】
サーマルヘッド40は、プラテンローラ45に対向する位置に設けられていると共に、主走査方向に配列された図示しない複数の加熱素子を備えている。サーマルヘッド40は、図示しないヘッドコントロール用ICにより印刷データに従って選択的に加熱制御される加熱素子によって、インクリボン41を介して転写フィルム46に画像を形成する。この際に、インクリボン41と転写フィルム46とは同じ速度で搬送される。
【0063】
供給スプール43は、正転及び逆転可能なDCモータであるモータMr3に連結されている。供給スプール43は、モータMr3が正転駆動した際のモータMr3の駆動力で回転して、インクリボン41を巻出方向(図2において上方向)に搬送して巻き出す。また、供給スプール43は、モータMr3が逆転駆動した際のモータMr3の駆動力で回転して、インクリボン41を巻出方向と反対方向(図2において下方向)に搬送して巻き取る。
【0064】
巻取スプール44は、正転及び逆転可能なDCモータであるモータMr1に連結されている。巻取スプール44は、モータMr1が正転駆動した際のモータMr1の駆動力で回転して、インクリボン41を巻出方向に搬送して巻き取る。また、巻取スプール44は、モータMr1が逆転駆動した際のモータMr1の駆動力で回転して、インクリボン41を巻出方向と反対方向に搬送して巻き出す。
【0065】
プラテンローラ45は、印刷部Bが図4に示す待機状態である場合に、サーマルヘッド40から離間した離間位置に位置し、印刷部Bが図5に示す印刷状態に移行した際に、サーマルヘッド40に圧接する。即ち、プラテンローラ45は、サーマルヘッド40に圧接する位置と、サーマルヘッド40から離間する待機位置と、の間で移動可能になっている。プラテンローラ45は、サーマルヘッド40に圧接した際に、転写フィルム46の幅方向への圧接力が均一となるように作用する。
【0066】
プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは、搬送される転写フィルム46に対して画像を形成する画像形成部B1を構成している。なお、転写フィルム46は、未使用の転写フィルム46が供給スプール48に巻き付けられ、供給スプール48に巻き付けられた転写フィルム46の先端が巻取スプール47に取り付けられている。
【0067】
巻取スプール47は、図示しないギヤを介してモータMr2に連結されており、モータMr2の回転駆動力が伝達されて回転して、転写フィルム46を巻き出すか又は巻き取る。
【0068】
供給スプール48は、図示しないギヤを介してモータMr4に連結されており、モータMr4の回転駆動力が伝達されて回転して、転写フィルム46を巻き取るか又は巻き出す。
【0069】
フィルム搬送ローラ49は、図示しないステッピングモータに連結されており、ステッピングモータが駆動することにより回転して転写フィルム46を搬送する。フィルム搬送ローラ49は、転写フィルム46の搬送量及び搬送停止位置を決定するための主要な駆動ローラである。
【0070】
ブラケット50は、回動可能にハウジング2に取り付けられている。ブラケット50は、カム53の回動により回動する。
【0071】
ブラケット50Aは、回動可能にハウジング2に取り付けられており、基板87を備えている。ブラケット50Aは、カム53Aの回動によりサーマルヘッド40に対して進出又は退避する。
【0072】
張力受け部材52は、ブラケット50に固定されており、図4に示すように、ブラケット50の軸支81側の端部と反対側の端部に設けられている。
【0073】
張力受け部材52Aは、ブラケット50Aに固定されており、図4に示すように、ブラケット50Aの軸支71側の端部と反対側の端部に設けられている。
【0074】
カム53及びカム53Aには、ベルト98が張架されている。カム53及びカム53Aは、同一の図示しない駆動モータにより駆動される。
【0075】
プラテン支持部材72は、プラテンローラ45を回転可能に支持している。プラテン支持部材72には、バネ部材99が接続されている。プラテン支持部材72は、プラテンローラ45の両端にそれぞれ設けられており、サーマルヘッド40に対する転写フィルム46の幅方向の圧接力が均一となるように構成されている。
【0076】
基板87には、バネ部材97を介して剥離コロ支持部材88が設けられていると共に、バネ部材99の一端が当接している。
【0077】
剥離コロ支持部材88は、バネ部材97を介して基板87に一対設けられており、剥離コロ25を回転自在に支持している。剥離コロ支持部材88は、剥離コロ25の両端にそれぞれ設けられており、剥離部材28に対する転写フィルム46の幅方向の圧接力が均一となるように構成されている。
【0078】
バネ部材97は、基板87と剥離コロ支持部材88との間において伸縮自在に設けられており、転写フィルム46の幅方向における圧接力を均一にするために設けられている。
【0079】
ベルト98は、カム53とカム53Aとに張架されており、カム53及びカム53Aの駆動によって回転する。
【0080】
バネ部材99は、基板87とプラテン支持部材72との間において伸縮自在に設けられている。
【0081】
センサSe1は、後述の転写フィルム46に設けた位置出し用マークを検出するためのセンサである。センサSe1は、センサ制御部103の制御によって動作する。センサSe1は、位置出し用マークの検出結果を制御部100に出力する。
【0082】
センサSe2は、後述のインクリボン41に設けられているエンプティマークを検出するための透過型センサである。センサSe2は、センサ制御部103の制御によって動作する。センサSe2は、エンプティマークの検出結果を制御部100に出力する。
【0083】
<媒体収容部の構成>
画像形成装置1の媒体収容部Cの構成について、図2を参照しながら、詳細に説明する。
【0084】
媒体収容部Cは、分離開口7と、ピックアップローラ19と、を備えている。
【0085】
分離開口7は、収容されているカードCaを搬入ローラ22に供給する。
【0086】
ピックアップローラ19は、収容されているカードCaを最前列のカードCaから順次分離開口7に繰り出す。
【0087】
<収容部の構成>
画像形成装置1の収容部Dの構成について、図2を参照しながら、詳細に説明する。
【0088】
収容部Dは、収容スタッカ60と、昇降機構61と、を備えている。
【0089】
収容スタッカ60は、印刷部Bから搬送されてきたカードCaを収容する。
【0090】
昇降機構61は、収容スタッカ60を図2において下方に移動するように構成されている。
【0091】
<回動ユニットの構成>
画像形成装置1の回動ユニットFの構成について、図2を参照しながら、詳細に説明する。
【0092】
回動ユニットFは、ローラ対20及びローラ対21と、搬入ローラ22と、回動フレーム80と、を備えている。
【0093】
ローラ対20及びローラ対21は、回動フレーム80に回転自在に支持されている。ローラ対20及びローラ対21は、媒体搬送路65を形成している。ローラ対20及びローラ対21は、搬入ローラ22、搬送ローラ29、非接触式IC記録部23、磁気記録部24又は接触式IC記録部27によって搬送されてくるカードCaを回動フレーム80内に搬入する。
【0094】
ローラ対20及びローラ対21は、回動フレーム80内に搬入したカードCaを媒体搬送路65において、搬送ローラ29、非接触式IC記録部23、磁気記録部24又は接触式IC記録部27に向けて搬送する。ローラ対20及びローラ対21は、非接触式IC記録部23、磁気記録部24又は接触式IC記録部27から回動フレーム80内に搬入したカードCaを、媒体搬送路65において搬送ローラ29に向けて搬送する。
【0095】
搬入ローラ22は、分離開口7から繰り出されるカードCaを回動フレーム80に向けて搬送する。
【0096】
回動フレーム80は、ハウジング2に回動可能に軸支されている。
【0097】
<インクリボンの構成>
画像形成装置1に装着されるインクリボン41の構成について、図7を参照しながら、詳細に説明する。
【0098】
図7において、図7(a)は、インクリボン41の斜視図であり、図7(b)は、インクリボン41の平面図であり、図7(c)は、インクリボン41の側面図である。
【0099】
インクリボン41は、インクリボンカセット42に設けられたインクリボン41を供給する供給スプール43とインクリボン41を巻き取る巻取スプール44との間で張架された状態でインクリボンカセット42に収納されている。
【0100】
インクリボン41は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)のインクパネルとBk(ブラック)インクパネルとを長手方向に面順次に繰り返すことで構成されている。本実施形態では、YMCインクパネルに顔料インクが用いられている。顔料インクのインクリボン41は、各色の印画を形成するインク層411、412、413及び414と、サーマルヘッド40の過熱制御によりインクの剥離を促す剥離層415と、を備えている。インクリボン41は、インク層411、412、413及び414と剥離層415とを保持する基層416を備えている。インクリボン41は、インク層411、412、413及び414、剥離層415、基層416の順で構成されている。インクリボンの種類によっては、Bkインクパネルの後にPr(プライマー層)を備えるものもある。また、インクリボン41の終端部には、インクリボン41の使用限界を表す図示しないエンプティマークが付されている。
【0101】
<転写フィルムの構成>
画像形成装置1に装着される転写フィルム46の構成について、図8を参照しながら、詳細に説明する。
【0102】
図8において、図8(a)は、転写フィルム46の斜視図であり、図8(b)は、転写フィルム46の平面図であり、図8(c)は、転写フィルム46の側面図である。
【0103】
転写フィルム46は、カードCaの幅方向より若干大きな幅を有する帯状を呈している。転写フィルム46は、インクリボン41のインクを受容するインク受容層461と、インク受容層461の表面を保護する透明の保護層462と、を備えている。さらに転写フィルム46は、加熱によりインク受容層461および保護層462を一体に剥離を促進するための剥離層463と、基材(ベースフィルム)464と、を備えている。転写フィルム46は、上から順に、インク受容層461、保護層462、剥離層463、基材(ベースフィルム)646の順で積層されて形成されている。
【0104】
なお、転写フィルム46は、図12に示すように、未使用の転写フィルム46が巻き付けられた供給スプール48と、供給スプール48に巻き付けられた転写フィルム46の先端が取り付けられた巻取スプール47とともに、フィルムセットFSを構成している。フィルムセットFSは、画像形成装置1に対して交換可能に設置される。なお、フィルムセットFSについては後述する。
【0105】
<印刷部の動作>
画像形成装置1の印刷部Bの動作について、図9から図11を参照しながら、詳細に説明する。
【0106】
転写フィルム46は、モータMr4の駆動により回転する供給スプール48より繰り出されると共に、モータMr2の駆動により回転する巻取スプール47に巻き取られる。
【0107】
転写フィルム46の搬送量、搬送停止位置、サーマルヘッド40による印刷開始位置及び転写部B2におけるカードCaに対する転写位置は、フィルム搬送ローラ49の駆動を制御することによって決まる。
【0108】
具体的には、制御部100は、転写フィルム46の搬送による移動量、即ち印刷が施される印刷領域の搬送方向の長さを、フィルム搬送ローラ49に設けられた図示しないエンコーダによって検出する。制御部100は、このエンコーダによる検出結果に応じて、アクチュエータ制御部104よりフィルム搬送ローラ49を駆動する図示しないステッピングモータへ出力されるパルス数を管理し、又はフィルム搬送ローラ49の回転を停止する。これにより、制御部100は、転写フィルム46の搬送量、搬送停止位置、印刷開始位置及び転写位置を制御することができる。
【0109】
また、制御部100は、フィルム搬送ローラ49の回転を停止する際に、アクチュエータ制御部104によりモータMr1、モータMr2、モータMr3及びモータMr4の駆動も停止させる。
【0110】
印刷部Bが図9に示す待機状態である場合には、カム53及びカム53Aは図4に示す状態にあり、ピンチローラ32a及びピンチローラ32bはフィルム搬送ローラ49に圧接していない。また、プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは、圧接せずに互いに離間した離間位置に位置している。
【0111】
この待機状態において、カム53及びカム53Aは連動して回転を開始する。これにより、印刷部Bは、ピンチローラ32a及びピンチローラ32bがフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けると共に、張力受け部材52が転写フィルム46に当接して図10に示す搬送状態になる。
【0112】
この際に、ピンチローラ32a及びピンチローラ32bは、フィルム搬送ローラ49に対して進出及び退避するように移動可能に構成されており、フィルム搬送ローラ49に対して進出して圧接することで転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付ける。これにより、転写フィルム46は、フィルム搬送ローラ49の回転数に応じた距離の正確な搬送が行われる。
【0113】
そして、搬送状態において、カム53及びカム53Aは連動して更に回転する。これにより、印刷部Bは、ブラケット50Aがカム53Aの回動によりサーマルヘッド40に対して進出して、プラテンローラ45がサーマルヘッド40に圧接すると共に、剥離コロ25が剥離部材28に圧接して図11に示す印刷状態になる。このような印刷状態では、プラテンローラ45とサーマルヘッド40とによって転写フィルム46とインクリボン41とを挟持及び圧接すると共に、剥離コロ25と剥離部材28とによって転写フィルム46とインクリボン41とを挟持及び圧接する。
【0114】
この印刷状態において、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49の回転により搬送が開始されると共に、インクリボン41はモータMr1の動作により巻取スプール44によって巻き取られ、転写フィルム46とインクリボン41とは同じ方向に搬送される。また、フィルム搬送ローラ49が再び正方向への回転を行って転写フィルム46を印刷準備位置から印刷開始位置に移動させてサーマルヘッド40に対する位置合わせ(頭出し)行う。
【0115】
この際に、バネ部材99は、プラテンローラ45がサーマルヘッド40に圧接した際に、転写フィルム46の幅方向における圧接力が均一となるように作用する。これにより、転写フィルム46がフィルム搬送ローラ49により搬送される際におけるスキュー(斜行)を防止することができると共に、転写フィルム46の印刷領域が幅方向にずれることを防止することができる。従って、サーマルヘッド40による転写フィルム46への画像形成を正確に行うことができる。
【0116】
そして、転写フィルム46に設けた図示しない位置出し用マークがセンサSe1を通過して所定量移動し、転写フィルム46が印刷開始位置に到達した際に、転写フィルム46の所定領域にサーマルヘッド40による印刷が行われる。サーマルヘッド40の複数の加熱素子によってインクリボン41を介して転写フィルム46に画像を形成する際に、インクリボン41と転写フィルム46とは同一速度で搬送される。
【0117】
印刷が終了したインクリボン41と転写フィルム46とは、剥離コロ25と剥離部材28とによって挟持されて引き剥がされる。そして、引き剥がされたインクリボン41はモータMr1の駆動力で巻取スプール44に巻き取られ、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49により転写部B2まで搬送される。
【0118】
印刷中の転写フィルム46の張力は、大きく、フィルム搬送ローラ49からピンチローラ32a及びピンチローラ32bを離間させる方向、及び剥離部材28及びサーマルヘッド40から剥離コロ25及びプラテンローラ45を離間させる方向に働く。
【0119】
この際に、張力受け部材52及び張力受け部材52Aが転写フィルム46の張力を受けていることにより、ピンチローラ32a及びピンチローラ32bの圧接力が低下することがないため、正確な転写フィルム46の搬送を行うことができる。また、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力、及び剥離部材28と剥離コロ25との圧接力も低下することがないため、正確な印刷及び剥離を行うことができる。
【0120】
転写フィルム46の張力は、張力受け部材52Aが上述の張力受け部材52と同様にブラケット50Aに固定されているため、張力受け部材52A及びブラケット50Aを介してカム53Aで受けることになる。従って、張力受け部材52Aは、転写フィルム46の張力に負けることはない。これにより、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力、及び剥離部材28と剥離コロ25との圧接力が保たれるので、良好な印刷及び剥離を行うことができる。また、フィルム搬送ローラ49の駆動時に転写フィルム46の搬送量に誤差を生じることがなく、印刷領域の長さ分が正確にサーマルヘッド40に搬送されて精度よく印刷することができる。
【0121】
このように、印刷状態及び搬送状態の動作は、全て又は所定のインクパネルのインクによる印刷が終了するまで繰り返される。そして、サーマルヘッド40による印刷が終了した際に、転写フィルム46の画像形成領域をヒートローラ33まで搬送し、待機状態となって転写フィルム46への圧接を解除する。
【0122】
そして、転写部B2では、転写フィルム46はカードCaと共にヒートローラ33及びプラテンローラ31とで挟持されて、転写フィルム46上の画像がカードCaの表面に転写される転写処理を行う。また、カードCaの表面に画像を転写した後の転写フィルム46は、巻取スプール47によって搬送されて巻き取られる。この際に、転写フィルム46とカードCaとは同一速度で搬送される。
【0123】
制御部100は、転写処理において、アクチュエータ制御部104により、カードCaと転写フィルム46の所定領域(または次の領域)に形成された画像とが同期して転写部B2に到着するように制御する。
【0124】
転写処理されたカードCaは、デカール機構36においてヒートローラ33による熱転写で生じたカールを矯正された後に、収容スタッカ60に向けて排出される。これにより、印刷ルーチンを終了する。
【0125】
<フィルムセット>
ここで、画像形成装置1に設置されるフィルムセットFSについて、図12図17を参照しながら説明する。図12は転写フィルム46を有するフィルムセットFSの構成を示す図である。図13図16は、フィルムセットFSにおける転写フィルム46の構成を示す図である。図17(a)は比較例の転写フィルムが巻取スプールに巻き取られた状況の図であり、図17(b)は実施例の転写フィルムが巻取スプールに巻き取られた状況の図である。
【0126】
フィルムセットFSは、転写フィルム46と、未使用の転写フィルム46が巻き付けられた供給スプール48と、供給スプール48に巻き付けられた転写フィルム46の先端46aが取り付けられた巻取スプール47と、を有する。転写フィルム46は、前述したインク受容層461を有する長尺のフィルムである。
【0127】
本発明の実施の形態に係るフィルムセットFSにおいて、転写フィルム46は、前記インク受容層461を有するインク受容部46cと、前記インク受容層461を有しない不使用部46bと、を有する。
【0128】
そして、転写フィルム46の不使用部46bに、前記インク受容部46cよりも巻取スプール47の軸方向に変形可能な領域を設けている。転写フィルム46の不使用部46bは、供給スプール48に巻き付けられた転写フィルム46の先端46aを含む。
【0129】
次に図13図16を用いて、フィルムセットFSにおける転写フィルム46の構成、すなわち転写フィルム46の不使用部46bに設けた、軸方向に変形可能な領域について説明する。
【0130】
図13に示すフィルムセットFSにおいて、転写フィルム46の不使用部46bは、供給スプール48に巻き付けられた未使用の転写フィルム46を保護するためのフィルム保護部材であり、印刷では使用しない領域である。転写フィルム46の不使用部46bに設けた軸方向に変形可能な領域は、巻取スプール47の軸方向と直交する方向に切れた複数の第一スリット46b1と、前記軸方向に転写フィルム46の端部まで切れた複数の第二スリット46b2と、が設けられている。
【0131】
このように、転写フィルム46の不使用部46bに、転写フィルム46の送り方向に切れた複数の第一スリット46b1と、転写フィルム46の幅方向にフィルム端部まで切れた複数の第二スリット46b2を設ける。これにより、転写フィルム46の不使用部46bにおいて前記スリット46b1,46b2を設けた領域が、転写フィルム46のインク受容部46cに比べて軸方向に変形しやすくなる。
【0132】
図14に示すフィルムセットFSにおいて、転写フィルム46の不使用部46bに設けた軸方向に変形可能な領域は、前記インク受容部46cによりも伸縮性がある素材46b3からなる。ここでは、転写フィルム46の不使用部46bにおいて、前記伸縮性がある素材は、前記インク受容部46cによりも伸縮性がある不織布である。前記インク受容部46cによりも伸縮性がある不織布は、一例としてフェリベンディ(クラレクラフレックス社製、登録商標)やエスパンシオーネ(KBセーレン社製、登録商標)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0133】
このように、転写フィルム46の不使用部46bの変形可能な領域を、伸縮性がある素材46b3とする。これにより、転写フィルム46の不使用部46bにおいて前記伸縮性がある素材46b3を設けた領域が、転写フィルム46のインク受容部46cに比べて軸方向に変形しやすくなる。
【0134】
図15に示すフィルムセットFSにおいて、転写フィルム46の不使用部46bに設けた軸方向に変形可能な領域は、第一の領域46b4と、前記第一の領域46b4よりも前記軸方向の幅が狭い第二の領域46b5と、を有する。すなわち、転写フィルム46の不使用部46bに設けた軸方向に変形可能な領域は、短手方向に狭小となる箇所を設けている。図15に示す転写フィルム46の不使用部46bにおいては、第一の領域46b4と第二の領域46b5を、転写フィルム46の送り方向に交互に設け、かつ複数設けている。
【0135】
このように、転写フィルム46の不使用部46bに、第一の領域46b4と、第一の領域46b4より幅の狭い第二の領域46b5を設ける。これにより、転写フィルム46の不使用部46bにおいて幅の狭い第二の領域46b5が、転写フィルム46のインク受容部46cに比べて軸方向に変形しやすくなる。
【0136】
図16に示すフィルムセットFSにおいて、転写フィルム46の不使用部46bに設けた軸方向の変形可能な領域は、巻取スプール47に取り付けられた転写フィルム46の先端46aである。この転写フィルム46の先端46aは、巻取スプール47に対して前記軸方向(矢印z方向)に移動可能に係合し、かつ、巻取スプール47に対して矢印r方向に回転可能に係合する係合部46a1を有する。具体的には、転写フィルム46の先端46aが有する係合部46a1は、転写フィルムの送り方向に対して直交する幅方向に沿って設けられた長穴である。
【0137】
このように、転写フィルム46の不使用部46bに含むフィルム先端46aに、巻取スプール47に対して軸方向に移動可能に係合し、かつ回転可能に係合する係合部46a1を設ける。この係合部46a1の作用により、転写フィルム46の不使用部46bが、転写フィルム46のインク受容部46cに比べて軸方向に移動しやすくなる。
【0138】
ここで図17(a)および図17(b)を用いて、比較例の転写フィルムと比較して、本実施例の転写フィルムについて説明する。図17(a)に示す比較例の転写フィルム46は、インク受容部よりも巻取スプール47の軸方向に変形可能な領域を有しない構成である。図17(a)は、比較例のフィルムセットにおける巻取スプール側を示す図であり、十数枚のシートに印刷して、使用済み転写フィルムを巻き取った状態を示す。このように、比較例の転写フィルム46は、巻き取り開始から徐々に軸方向に移動するため、軸方向の移動がおさまって安定するまでに巻き取りに要するフィルム長が長くなる。
【0139】
一方、図17(b)は、本実施例のフィルムセットにおける巻取スプール側を示す図である。本実施例の転写フィルム46は、比較例の転写フィルムに対して、巻き取り初期に軸方向に大きく移動し、その後、安定している。そのため、本実施例の転写フィルム46は、比較例に比べて、軸方向の移動が治まって安定するまでに巻き取りに要するフィルム長が短くなる。
【0140】
以上説明したように、本実施例によれば、簡易な構成で、転写フィルム46は安定する位置まで巻き取り開始時から大きく移動できるため、安定するまでに巻き取りに要するフィルム長が短くて済む。すなわち、供給スプール48と巻取スプール47の中心軸の位置ずれに起因する転写フィルム46の巻き乱れを抑制することができる。よって不安定な状態で出力する枚数が少なくなり、品質の安定につながる。
【符号の説明】
【0141】
B1 …画像形成部
B2 …転写部
Ca …カード(記録媒体)
FS …フィルムセット
1 …画像形成装置
31 …プラテンローラ
33 …ヒートローラ
40 …サーマルヘッド
41 …インクリボン
42 …インクリボンカセット
43 …供給スプール
44 …巻取スプール
45 …プラテンローラ
46 …転写フィルム
46a …先端
46a1 …係合部
46b …不使用部
46b1 …第一スリット
46b2 …第二スリット
46b3 …素材
46b4 …第一の領域
46b5 …第二の領域
46c …インク受容部
47 …巻取スプール
47a …長穴
48 …供給スプール
200 …画像形成システム
461 …インク受容層
462 …保護層
463 …剥離層
464 …基材(ベースフィルム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17