IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タイカの特許一覧

特開2022-67342寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス
<>
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図1
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図2
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図3
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図4
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図5
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図6
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図7
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図8
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図9
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図10
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図11
  • 特開-寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067342
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】寝返り補助パッド及び寝返り補助マットレス
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/00 20060101AFI20220425BHJP
   A61G 7/07 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
A47C27/00 Z
A47C27/00 D
A61G7/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176005
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】306026980
【氏名又は名称】株式会社タイカ
(74)【代理人】
【識別番号】100205914
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 総明
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】豊島 直和
【テーマコード(参考)】
3B096
4C040
【Fターム(参考)】
3B096AB04
3B096AB07
3B096AD07
4C040AA04
4C040CC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】筋力が低下した使用者に対し、自力での寝返りの実現を支援するマットレスを提供する。
【解決手段】マットレス、敷き布団又は敷物の上に載置されて使用される寝返り補助パッド2であって、身長方向に配設された、使用者の上半身側が載置される第1パッド3と、使用者の下半身側の腰臀部が載置される第2パッド4とを備え、第2パッドは、所定厚さのクッション材で形成され、幅方向中央部には、使用者の骨盤の幅よりも狭い幅を有する第2支持部41が設けられ、幅方向の両端部には、一対の第2の硬度勾配部42が設けられており、第2支持部の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成され、仰臥姿勢の使用者の腰臀部の少なくとも一部を支持し、寝返り動作する際の使用者の大腿骨の大転子を支持するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マットレス、敷き布団又は敷物の上に載置されて使用される寝返り補助パッドであって、
前記寝返り補助パッドは、身長方向に配設された、使用者の上半身側が載置される第1パッドと、使用者の下半身側の腰臀部が少なくとも載置される第2パッドと、を少なくとも備え、
前記第1パッドは、所定厚さのクッション材で形成され、仰臥姿勢の使用者の背中の少なくとも一部を支持するように構成され、
前記第2パッドは、所定厚さのクッション材で形成され、
該第2パッドの幅方向中央部には、使用者の骨盤の幅よりも狭い幅を有する第2支持部が設けられ、
該第2パッドの幅方向の両端部には、一対の第2の硬度勾配部が前記第2支持部の長さ方向の少なくとも一部に設けられており、
前記第2の硬度勾配部は、前記第2支持部の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されるように調整する第2の硬度調整手段を有しており、
前記第2支持部は仰臥姿勢の使用者の腰臀部の少なくとも一部を支持し、前記第2の硬度勾配部は寝返り動作する際の使用者の大腿骨の大転子を支持するように構成されていることを特徴とする寝返り補助パッド。
【請求項2】
前記第1パッドの幅方向中央部には、使用者の肩幅以下の幅を有する第1支持部が設けられ、
前記第1パッドの幅方向の両端部には、一対の第1の硬度勾配部が前記第1支持部の長さ方向の少なくとも一部に設けられており、
前記第1の硬度勾配部は、前記第1支持部の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されるように調整する第1の硬度調整手段を有しており、
前記第1支持部は仰臥姿勢の使用者の背中の少なくとも一部を支持し、前記第1の硬度勾配部は寝返り動作する際の使用者の肩を支持するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の寝返り補助パッド。
【請求項3】
前記第1の硬度勾配部の硬度勾配S1と、前記第2の硬度勾配部の硬度勾配S2とが、異なるように調整されていることを特徴とする請求項2に記載の寝返り補助パッド。
【請求項4】
前記第2の硬度勾配部の硬度勾配S2よりも、前記第1の硬度勾配部の硬度勾配S1が大きく(S1>S2)なるように調整されていることを特徴とする請求項3に記載の寝返り補助パッド。
【請求項5】
前記第1支持部の幅W1は、前記第2支持部の幅W2よりも広い(W1>W2)ことを特徴とする請求項3又は4に記載の寝返り補助パッド。
【請求項6】
前記第1支持部を形成するクッション材の硬度H1は、前記第2支持部を形成するクッション材の硬度H2よりも高い(H1>H2)ことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の寝返り補助パッド。
【請求項7】
前記第1支持部の幅W1は、前記第2支持部の幅W2よりも広く(W1>W2)、
前記第1の硬度勾配部の硬度勾配S1と、前記第2の硬度勾配部の硬度勾配S2とは、略等しい(S1=S2)ことを特徴とする請求項2に記載の寝返り補助パッド。
【請求項8】
前記第1支持部を形成するクッション材の硬度H1は、前記第2支持部を形成するクッション材の硬度H2よりも高い(H1>H2)ことを特徴とする請求項7に記載の寝返り補助パッド。
【請求項9】
前記第1支持部の幅W1と前記第2支持部の幅W2とは、略等しく(W1=W2)、
前記第1の硬度勾配部の硬度勾配S1と、前記第2の硬度勾配部の硬度勾配S2とが、略等しく(S1=S2)、
前記第1支持部を形成するクッション材の硬度H1は、前記第2支持部を形成するクッション材の硬度H2よりも高い(H1>H2)ことを特徴とする請求項2に記載の寝返り補助パッド。
【請求項10】
前記第2の硬度調整手段が、異なる硬度を有する複数のクッション材であり、
前記複数のクッション材が、前記第2支持部の端部から外方に向かって、硬度が漸次低くなるように配置されて前記第2の硬度勾配部を形成することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の寝返り補助パッド。
【請求項11】
前記第1の硬度調整手段が、異なる硬度を有する複数のクッション材であり、
前記複数のクッション材が、前記第1支持部の端部から外方に向かって、硬度が漸次低くなるように配置されて前記第1の硬度勾配部を形成することを特徴とする請求項2~9のいずれか1項に記載の寝返り補助パッド。
【請求項12】
前記第2の硬度調整手段が、前記第2の硬度勾配部の上面又は下面に形成された複数の凹溝又はスリットであり、
前記複数の凹溝又はスリットは前記第2の硬度勾配部の長さ方向に配列され、前記第2支持部の端部から外方に向かって、
(i)各凹溝の空隙体積が漸次増加するように形成された配列領域を有する、
(ii)各スリットの切り込み長さが漸次増加するように形成された配列領域を有する、又は
(iii)隣接する凹溝又はスリットの間隔が漸次狭くなるように形成された配列領域を有する、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の寝返り補助パッド。
【請求項13】
前記第1の硬度調整手段が、前記第1の硬度勾配部の上面又は下面に形成された複数の凹溝又はスリットであり、
前記複数の凹溝又はスリットは前記第1の硬度勾配部の長さ方向に配列され、前記第1支持部の端部から外方に向かって、
(i)各凹溝の空隙体積が漸次増加するように形成された配列領域を有する、
(ii)各スリットの切り込み長さが漸次増加するように形成された配列領域を有する、又は
(iii)隣接する凹溝又はスリットの間隔が漸次狭くなるように形成された配列領域を有する、ことを特徴とする請求項2~9のいずれか1項に記載の寝返り補助パッド。
【請求項14】
前記凹溝の空隙体積の増加は、溝深さの増大、溝幅の拡大又はこれらの組み合わせにより行われることを特徴とする請求項12又は13に記載の寝返り補助パッド。
【請求項15】
前記第2の硬度調整手段が、前記第2の硬度勾配部の厚み方向に形成された複数の貫通孔又は有底穴であり、
前記複数の貫通孔又は有底穴は、前記第2支持部の端部から外方に向かって、前記貫通孔又は有底穴の空隙容積または個数の少なくとも一方が漸次増加するように配置されてなることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の寝返り補助パッド。
【請求項16】
前記第1の硬度調整手段が、前記第1の硬度勾配部の厚み方向に形成された複数の貫通孔又は有底穴であり、
前記複数の貫通孔又は有底穴は、前記第1支持部の端部から外方に向かって、前記貫通孔又は有底穴の空隙容積または個数の少なくとも一方が漸次増加するように配置されてなることを特徴とする請求項2~9のいずれか1項に記載の寝返り補助パッド。
【請求項17】
前記第1パッドと前記第2パッドとの間に、所定厚さを有するクッション材からなる第3パッドが少なくとも配置されていることを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の寝返り補助パッド。
【請求項18】
前記第2パッドの脚側に、所定厚さを有するクッション材からなる第3パッドが配置され、該第3パッドは、前記第1パッドと同じ構成を有していることを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の寝返り補助パッド。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の寝返り補助パッドを備えたマットレスであって、
前記寝返り補助パッドは、クッション材で形成されたベース層の上に配置されていることを特徴とする寝返り補助マットレス。
【請求項20】
前記第1パッドと前記第2パッドとが、前記ベース層上で離間配置されていることを特徴とする請求項19に記載の寝返り補助マットレス。
【請求項21】
前記ベース層の幅が、前記第1パッド及び前記第2パッドの幅よりも広く、
前記ベース層の幅方向の少なくとも一端には、高さ方向に突出する端部ブロックが前記ベース層の長さ方向の少なくとも一部に配置されていることを特徴とする請求項19又は20に記載の寝返り補助マットレス。
【請求項22】
前記寝返り補助パッドの上に、クッション材で形成された上層が少なくとも1層以上積層されており、
前記上層を構成するクッション材の硬度は、前記第1パッドの前記第1支持部を形成するクッション材の硬度よりも低いものであることを特徴とする請求項19~21のいずれか1項に記載の寝返り補助マットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝返り補助パッド及びマットレスに関し、特に、要介護者の自立を促すため、要介護者等の使用者が自らの力で寝返りできるようにするための寝返り補助パッド及びマットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
超高齢社会が進行する近年、要介護者の自立を促す自立支援介護が重要視されている。要介護者の自立支援プログラムとしては、仰向けで寝た状態から寝返りをし、座位を経て立ち上がるまでの床上動作(起居動作)に関するものと、離床後の動作(リハビリ、日常動作)に関するものとに大きく分けて実施されている。
【0003】
このうち、床上動作は最も重要な基本動作であり、自立のスタートとなるものであるため、床上動作をスムーズに行えるようになるための支援方法及び支援用具について、様々な提案及び検討がなされている。例えば、仰向けで寝た状態から立ち上がるまでの床上動作にあたっては、まず、仰向けで寝た体勢(仰臥位)から横向きで寝た体勢(側臥位)に姿勢を変えること、すなわち、寝返りが必要となる。
【0004】
そこで、特許文献1には、寝返り方向の肩部や上腕部を選択的にマットレスに沈み込ませることによって、マットレスに入り込んだ肩部が寝返りの回転軸となり寝返りが促進されるという知見に基づく、寝返りし易い構造のマットレスが記載されている。このマットレスは、マットレスの幅方向の中央部に配置され、仰臥姿勢の使用者の背中及び腰を支持する中央ブロックと、マットレスの幅方向の両端部に配置され、仰臥姿勢の使用者の肩部を支持する端部ブロックとを有し、中央ブロックは、端部ブロックの外方周縁部よりも柔軟に形成され、端部ブロックには、中央ブロックと接する方向に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されるように調整すると共に、仰臥姿勢の使用者の肩部と接する位置の見かけの硬度が中央ブロックの見かけの硬度よりも低くなるように調整する硬度調整手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-57712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
仰臥位から側臥位に姿勢を変える際の寝返り動作としては、頭部の転回→上半身の転回→骨盤の転回→下肢部の転回の動作からなる屈曲回旋タイプと、下肢部の転回→下肢部の転回と同時又はその後の骨盤の転回→上半身の転回→頭部の転回の動作からなる伸展回旋タイプとに大別される。このうち、上半身の転回において、特に肩部の転回動作は寝返り動作のうちで最も負荷がかかる動作である。それゆえ、肩部の転回動作が妨げられず、転回しやすい状態とすることにより、いずれの回旋タイプにおいても寝返りが容易となりやすい。その点、上述した特許文献1のマットレスでは、端部ブロックに設けられた硬度調整手段により、使用者の肩部や上腕部が端部ブロックの低硬度に調整された部分に選択的に沈み込みやすくなり、その部分に沈み込んだ肩部が寝返りの回転軸となり寝返りが促進されている。
【0007】
しかしながら、本願発明者らは、一般的に下半身および腹部の筋力が乏しい要介護者にあっては、上半身を動作の起点とする屈曲回旋タイプの寝返り動作を行うことが多く、上半身の転回動作は実現できても、骨盤の転回動作は困難となる傾向があることを見出した。具体的には、寝返りを試みた際に、ベッド脇の柵等を手で掴む等して上半身を横向きにすることはできるが、その後、下半身はなかなか横向きにすることができず、あきらめて上半身を元の仰向けに戻す、という動作となるために、寝返りが完遂できていないことが見出された。このように、下半身を転回させるための筋力が低下した使用者が自力での寝返りを試みる際には、骨盤の転回動作が大きなハードルとなっていることがわかった。この点、上述した特許文献1のマットレスは肩部の転回動作のみに着目したものであり、骨盤の転回動作にも着目して寝返りを完遂させることについての検討はなされていなかった。
【0008】
他方、一般的に健康のためには睡眠による回復が必須であるところ、近年では「睡眠の質」を高めることが注目され、睡眠中の自然な寝返りが睡眠の質の向上に寄与する要素の一つとして着目されている。この場合、すなわち睡眠中には、上半身を動作の起点とする屈曲回旋タイプの寝返りだけでなく、下半身を動作の起点とする伸展回旋タイプの寝返り並びにこれらに分類されない様々なタイプの寝返り動作が無意識下に行われることが知られている。それゆえ、様々なタイプの寝返り動作を促すことができ、よりスムーズな寝返りを可能とする用具やマットレスが求められている。
【0009】
したがって、本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、その目的は、筋力が低下した使用者が困難としている骨盤の転回動作を容易とし、自力での寝返りの実現を支援することができる寝返り補助用具及びマットレスを提供することにある。
【0010】
また、本発明のさらなる目的は、筋力が低下した使用者に対し、寝返りの一連の動作を容易とし、自力での寝返りの実現を支援することができる寝返り補助用具及びマットレスを提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、睡眠の質を向上させるため、様々なタイプの寝返り動作を促すことができ、よりスムーズに自然に寝返りすることができる寝返り補助用具及びマットレスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の寝返り補助パッドは、マットレス、敷き布団又は敷物の上に載置されて使用される寝返り補助パッドであって、この寝返り補助パッドは、身長方向に配設された、使用者の上半身側が載置される第1パッドと、使用者の下半身側の腰臀部が少なくとも載置される第2パッドと、を少なくとも備え、第1パッドは、所定厚さのクッション材で形成され、仰臥姿勢の使用者の背中の少なくとも一部を支持するように構成され、第2パッドは、所定厚さのクッション材で形成され、第2パッドの幅方向中央部には、使用者の骨盤の幅よりも狭い幅を有する第2支持部が設けられ、第2パッドの幅方向の両端部には、一対の第2の硬度勾配部が前記第2支持部の長さ方向の少なくとも一部に設けられており、第2の硬度勾配部は、前記第2支持部の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されるように調整する第2の硬度調整手段を有しており、第2支持部は仰臥姿勢の使用者の腰臀部の少なくとも一部を支持し、第2の硬度勾配部は寝返り動作する際の使用者の大腿骨の大転子を支持するように構成されている。
【0013】
仰向けで寝た姿勢において、使用者の上半身側は第1パッドで支持され、下半身側は第2パッドで支持される。このうち、頭部と背骨を中心とした背中部分は第1パッドで安定的に支持され、下半身の仙椎を中心とした腰臀部部分は第2パッドの第2支持部で安定的に支持される。そして、上半身を動作の起点とする、屈曲回旋タイプの寝返りをする場合には、上半身を転回させた後に、骨盤の転回が行われるが、この骨盤を転回させる際には、寝返り方向にあって転回動作に最も力を要する大腿骨の大転子及びその近傍にある腸骨等の骨盤周辺部が第2の硬度勾配部で支持される。第2の硬度勾配部は第2支持部の端部から外方に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されているため、寝返り方向にある大腿骨の大転子等の骨盤周辺部が第2の硬度勾配部に接地すると、硬度が漸次低下している分だけ接地点が沈み込む。それゆえ、大腿骨の大転子等の骨盤周辺部が第2の硬度勾配部に接地した点と使用者の体軸との距離が近くなって、骨盤の転回に要する力(トルク)が小さくなり、骨盤の転回から下肢部の転回に連動する下半身側の転回を容易にすることができる。これにより、下半身の転回に係る負荷が低減されるため、下半身の転回に関与する筋力が低下した使用者であっても、自力での寝返りを容易とすることができる。そして、寝返りを促す作用を有する第2の硬度勾配部は、その見かけの硬度が漸次低くなる構成とされており、大きな硬度差を有さない構成としているため、寝姿勢が安定し、寝心地に優れると共に、寝返り動作も安定して行うことが可能である。
【0014】
また、下半身を動作の起点とする、伸展回旋タイプの寝返りをする場合には、下半身側から転回が開始されるところ、骨盤を転回させる際に、寝返り方向にある大腿骨の大転子及びその近傍にある腸骨等の骨盤周辺部が第2の硬度勾配部で支持される。第2の硬度勾配部は第2支持部の端部から外方に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されているため、寝返り方向にある大腿骨の大転子等の骨盤周辺部が第2の硬度勾配部に接地すると、硬度が漸次低下している分だけ接地点が沈み込む。それゆえ、接地点と使用者の体軸との距離が近くなって、骨盤の転回に要する力(トルク)が小さくなり、下半身側の転回が容易になされる。
【0015】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第1パッドの幅方向中央部には、使用者の肩幅以下の幅を有する第1支持部が設けられ、第1パッドの幅方向の両端部には、一対の第1の硬度勾配部が第1支持部の長さ方向の少なくとも一部に設けられており、第1の硬度勾配部は、第1支持部の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されるように調整する第1の硬度調整手段を有しており、第1支持部は仰臥姿勢の使用者の背中の少なくとも一部を支持し、第1の硬度勾配部は寝返り動作する際の使用者の肩を支持するように構成されていることも好ましい。
【0016】
仰向けで寝た姿勢において、使用者の上半身側は第1パッドで支持され、下半身側は第2パッドで支持される。このうち、頭部と背骨を中心とした背中部分は第1支持部で安定的に支持され、下半身の仙椎を中心とした臀部部分は第2支持部で安定的に支持される。そして、上半身を動作の起点とする、屈曲回旋タイプの寝返りをする場合には、上半身を転回させる際に、寝返り方向にあって転回動作に最も力を要する肩が第1の硬度勾配部で支持される。第1の硬度勾配部は第1支持部の端部から外方に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されているため、寝返り方向にある肩が第1の硬度勾配部に接地すると、硬度が漸次低下している分だけ接地点が沈み込む。それゆえ、肩が第1の硬度勾配部に接地した点と使用者の体軸との距離が近くなって、上半身側の転回に要する力(トルク)が小さくなり、上半身側の転回を容易にすることができる。また、上半身側の転回に引き続いて、骨盤を転回させる際には、寝返り方向にあって転回動作に最も力を要する大腿骨の大転子及びその近傍にある腸骨等の骨盤周辺部が第2の硬度勾配部で支持される。第2の硬度勾配部も第2支持部の端部から外方に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されているため、寝返り方向にある大腿骨の大転子等の骨盤周辺部が第2の硬度勾配部に接地した点が沈み込み、この接地点と使用者の体軸との距離が近くなって、骨盤の転回に要する力(トルク)が小さくなり、骨盤の転回から下肢部の転回に連動する下半身側の転回を容易にすることができる。これにより、上半身だけでなく下半身の転回も負荷が低減されるため、自力での寝返りを容易とすることができる。そして、寝返りを促す作用を有する第1及び第2の硬度勾配部は、その見かけの硬度が漸次低くなる構成とされており、大きな硬度差を有さない構成としているため、寝姿勢が安定し、寝心地に優れると共に、寝返り動作も安定して行うことが可能である。
【0017】
また、下半身を動作の起点とする、伸展回旋タイプの寝返りをする場合には、下半身側から転回が開始されるところ、骨盤を転回させる際に、寝返り方向にある大腿骨の大転子及びその近傍にある腸骨等の骨盤周辺部が第2の硬度勾配部で支持される。第2の硬度勾配部は第2支持部の端部から外方に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されているため、寝返り方向にある大腿骨の大転子等の骨盤周辺部が第2の硬度勾配部に接地すると、硬度が漸次低下している分だけ接地点が沈み込む。それゆえ、この接地点と使用者の体軸との距離が近くなって、骨盤の転回に要する力(トルク)が小さくなり、下半身側の転回を容易にすることができる。そして、下半身側の転回に連動して上半身の転回に移行すると、転回動作において最も力を要する寝返り方向にある肩が第1の硬度勾配部で支持される。第1の硬度勾配部も第1支持部の端部から外方に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されているため、寝返り方向の肩が第1の硬度勾配部に接地した点が沈み込み、この接地点と使用者の体軸との距離が近くなって、上半身側の転回に要する力(トルク)が小さくなり、上半身側の転回を容易にすることができる。これにより、伸展回旋タイプの寝返りにおいても、上半身だけでなく下半身の転回も負荷が低減されるため、自力での寝返りを容易とすることができる。
【0018】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第1の硬度勾配部の硬度勾配S1と、第2の硬度勾配部の硬度勾配S2とが、異なるように調整されていることも好ましい。上半身側の第1パッドの第1の硬度勾配部と下半身側の第2パッドの第2の硬度勾配部の硬度勾配Sを異ならせることによって、寝返りに係る転回タイミングや、負荷の低減作用を上半身側と下半身側とで適宜調整することができるため、使用者の筋力や所望の寝返りタイプ等に応じた寝返り補助パッドを得ることができる。
【0019】
ここで、本発明において、第1の硬度勾配部の硬度勾配S1とは、第1の硬度勾配部の所定の幅方向長さあたりの、第1の硬度勾配部の見かけの硬度の変化度(減少度)のことをいい、具体的には、見かけの硬度を定押込み力による変形量とし、第1の硬度勾配部の幅方向の各位置の変形量と各位置間距離から求まる勾配の角度のことをいう。同様に、第2の硬度勾配部の硬度勾配S2とは、第2の硬度勾配部の所定の幅方向長さあたりの、第2の硬度勾配部の見かけの硬度の変化度(減少度)のことをいい、具体的には、第2の硬度勾配部の幅方向の各位置の変形量と各位置間距離から求まる勾配の角度のことをいう。なお、硬度勾配S1と硬度勾配S2、見かけの硬度の詳細な定義は後述する。
【0020】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第2の硬度勾配部の硬度勾配S2よりも、第1の硬度勾配部の硬度勾配S1が大きく(S1>S2)なるように調整されていることも好ましい。これにより、上半身側の転回を促進させる作用を高めると共に、下半身側を緩やかに転回させて寝返りさせることができる寝返り補助パッドを得ることができる。
【0021】
また、本発明の寝返り補助パッドの第1支持部の幅W1は、第2支持部の幅W2よりも広い(W1>W2)ことも好ましい。これにより、上半身側の第1パッドよりも下半身側の第2パッドの方が、寝返り補助パッドの幅方向中央寄りに硬度勾配部が位置するため、骨盤を転回させようとすると、寝返り方向の骨盤周辺部がこの第2の硬度勾配部に迅速に接地して支持され、骨盤を低トルクで転回開始するタイミングが早く設定される。それゆえ、使用者が屈曲回旋タイプの寝返りをする際には、上半身側が転回した後の骨盤の転回動作の動き出しが促進される。また、伸展回旋タイプの寝返りをする際には、骨盤の転回がスムーズに開始されて、上半身側の転回へと連動し易くなる。このように、骨盤の転回動作及び下肢部の転回動作の組み合わせからなる下半身側の転回動作(以下、下半身側の転回動作ともいう)と、上半身の転回動作とがより低トルクで連動するため、自力での寝返りをより容易とすることができる。
【0022】
また、本発明の寝返り補助パッドの第1支持部を形成するクッション材の硬度H1は、第2支持部を形成するクッション材の硬度H2よりも高い(H1>H2)ことも好ましい。これにより、使用者が仰向けに寝た姿勢において、第1支持部に支持されている部分よりも第2支持部に支持されている部分の方が、体が沈み込む。それゆえ、上半身側の第1パッドの第1支持部の上面と下半身側の第2パッドの第2支持部の上面との間に段差が生じ、この段差が使用者の臀部から腰椎部に至る体のラインに沿いつつ、これらを支持するため、自然な寝姿勢が得られるとともに、使用者が寝返りする際に、この段差によって骨盤の転回動作の動き出しが促進される。これによって、屈曲回旋タイプ及び伸展回旋タイプのいずれの寝返り動作においても、上半身の転回動作と下半身側の転回動作とがより自然に連動するため、自力での寝返りをより容易とすることができる。
【0023】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第1支持部の幅W1が第2支持部の幅W2よりも広く(W1>W2)、第1の硬度勾配部の硬度勾配S1と、第2の硬度勾配部の硬度勾配S2とは、略等しい(S1=S2)ことも好ましい。これにより、上半身側の第1パッドよりも下半身側の第2パッドの方が、寝返り補助パッドの幅方向中央寄りに硬度勾配部が位置するため、骨盤を転回させようとすると、寝返り方向の骨盤周辺部がこの第2の硬度勾配部に迅速に接地して支持され、それゆえ、使用者が屈曲回旋タイプの寝返りをする際には、上半身側が転回した後の骨盤の転回動作の動き出しが促進される。他方、伸展回旋タイプの寝返り動作をする際には、下半身側の転回がスムーズに開始され、上半身側の転回へと連動し易くなる。また、両硬度勾配部の硬度勾配を略等しく(S1=S2)することで、上半身側と下半身側の転回力を近しく設定できる。これらによって、上半身の転回動作と下半身側の転回動作とが連動するとともに、上半身側と下半身側の転回トルクのバランスが良好となり、自力での寝返りを容易とすることができる。
【0024】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第1支持部の幅W1が第2支持部の幅W2よりも広く(W1>W2)、第1の硬度勾配部の硬度勾配S1と、第2の硬度勾配部の硬度勾配S2とは、略等しい(S1=S2)とともに、第1支持部を形成するクッション材の硬度H1は、第2支持部を形成するクッション材の硬度H2よりも高い(H1>H2)ことも好ましい。これにより、使用者が仰向けに寝た姿勢において、第1支持部に支持されている部分よりも第2支持部に支持されている部分の方が沈み込み、上半身側の第1パッドの第1支持部の上面と下半身側の第2パッドの第2支持部の上面との間にさらに段差が生じるようになる。この段差が使用者の臀部から腰椎部に至る体のラインに沿いつつ、これらを支持するため、自然な寝姿勢が得られるとともに、使用者が寝返りする際に、この段差によって骨盤の転回動作の動き出しが促進される。また、第1支持部の幅W1を第2支持部の幅W2よりも広く(W1>W2)することで、使用者が屈曲回旋タイプの寝返りをする際には、上半身側が転回した後の骨盤の転回動作の動き出しが促進され、伸展回旋タイプの寝返りをする際には、骨盤の転回がスムーズに開始され、下半身側から上半身側への転回の連動がし易くなる。また、両硬度勾配部の硬度勾配を略等しく(S1=S2)することで、上半身側と下半身側の転回力を揃えるように設定できる。これらによって、上半身の転回動作と下半身側の転回動作とが連動するとともに、上半身側と下半身側の転回トルクのバランスが良好となり、自力での寝返りを容易とすることができる。
【0025】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第1支持部の幅W1と第2支持部の幅W2とが、略等しく(W1=W2)、第1の硬度勾配部の硬度勾配S1と、第2の硬度勾配部の硬度勾配S2とが、略等しく(S1=S2)、第1支持部を形成するクッション材の硬度H1は、第2支持部を形成するクッション材の硬度H2よりも高い(H1>H2)ことも好ましい。これにより、使用者が仰向けに寝た姿勢において、第1支持部に支持されている部分よりも第2支持部に支持されている部分の方が、体が沈み込むため、上半身側の第1パッドの第1支持部の上面と下半身側の第2パッドの第2支持部の上面との間に段差が生じるようになる。この段差が使用者の臀部から腰椎部に至る体のラインに沿いつつ、これらを支持するとともに、使用者が寝返りする際に、この段差によって骨盤の転回動作の動き出しが促進される。それゆえ、上半身の転回動作と下半身側の転回動作とが連動するため、簡単な構成で自力での寝返りを容易とすることができる。
【0026】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第2の硬度調整手段が、異なる硬度を有する複数のクッション材であり、複数のクッション材が、第2支持部の端部から外方に向かって、硬度が漸次低くなるように配置されて第2の硬度勾配部を形成することも好ましい。これにより、第2の硬度勾配部における、第2支持部の端部から外方に向かって見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配を形成する手段として、好適な手段が選択される。
【0027】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第1の硬度調整手段が、異なる硬度を有する複数のクッション材であり、複数のクッション材が、第1支持部の端部から外方に向かって、硬度が漸次低くなるように配置されて第1の硬度勾配部を形成することも好ましい。これにより、第1の硬度勾配部における、第1支持部の端部から外方に向かって見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配を形成する手段として、好適な手段が選択される。
【0028】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第2の硬度調整手段が、第2の硬度勾配部の上面又は下面に形成された複数の凹溝又はスリットであり、複数の凹溝又はスリットは第2の硬度勾配部の長さ方向に配列され、第2支持部の端部から外方に向かって、(i)各凹溝の空隙体積が漸次増加するように形成された配列領域を有する、(ii)各スリットの切り込み長さが漸次増加するように形成された配列領域を有する、又は(iii)隣接する凹溝又はスリットの間隔が漸次狭くなるように形成された配列領域を有する、ことも好ましい。これにより、第2の硬度勾配部における、第2支持部の端部から外方に向かって見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配を形成する手段として、好適な手段が選択される。
【0029】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第1の硬度調整手段が、第1の硬度勾配部の上面又は下面に形成された複数の凹溝又はスリットであり、複数の凹溝又はスリットは第1の硬度勾配部の長さ方向に配列され、第1支持部の端部から外方に向かって、(i)各凹溝の空隙体積が漸次増加するように形成された配列領域を有する、(ii)各スリットの切り込み長さが漸次増加するように形成された配列領域を有する、又は(iii)隣接する凹溝又はスリットの間隔が漸次狭くなるように形成された配列領域を有する、ことも好ましい。これにより、第1の硬度勾配部における、第1支持部の端部から外方に向かって見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配を形成する手段として、好適な手段が選択される。
【0030】
また、本発明の寝返り補助パッドは、凹溝の空隙体積の増加は、溝深さの増大、溝幅の拡大又はこれらの組み合わせにより行われることも好ましい。これにより、好適な凹溝の空隙体積の増加手段が選択される。
【0031】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第2の硬度調整手段が、第2の硬度勾配部の厚み方向に形成された複数の貫通孔又は有底穴であり、この複数の貫通孔又は有底穴は、第2支持部の端部から外方に向かって、これらの空隙容積または個数の少なくとも一方が漸次増加するように配置されてなることも好ましい。これにより、第2の硬度勾配部における、第2支持部の端部から外方に向かって見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配を形成する手段として、好適な手段が選択される。
【0032】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第1の硬度調整手段が、第1の硬度勾配部の厚み方向に形成された複数の貫通孔又は有底穴であり、この複数の貫通孔又は有底穴は、第1支持部の端部から外方に向かって、これらの空隙容積または個数の少なくとも一方が漸次増加するように配置されてなることも好ましい。これにより、第1の硬度勾配部における、第1支持部の端部から外方に向かって見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配を形成する手段として、好適な手段が選択される。
【0033】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第1パッドと第2パッドとの間に、所定厚さを有するクッション材からなる第3パッドが少なくとも配置されていることも好ましい。これにより、使用者の体格や体の動き易さ等に合わせて調整された寝返り補助パッドが形成される。
【0034】
また、本発明の寝返り補助パッドは、第2パッドの脚側に、所定厚さを有するクッション材からなる第3パッドが配置され、この第3パッドは、第1パッドと同じ構成を有していることも好ましい。これにより、寝返り補助パッドの長さ方向に対し、第2パッドの両側に第1パッドが配置された形態の寝返り補助パッドが得られるため、使用者がいずれの向きに寝て使用しても、本発明の作用効果を得ることができる。
【0035】
また、本発明の寝返り補助マットレスは、上述の寝返り補助パッドを備えたマットレスであって、この寝返り補助パッドがクッション材で形成されたベース層の上に配置されている。これにより、寝返り補助パッドが組み込まれたマットレスが得られる。
【0036】
また、本発明の寝返り補助マットレスは、第1パッドと第2パッドとが、ベース層上で離間配置されていることも好ましい。これにより、ベース層上において、寝返り補助パッドが配置される好適な位置が選択される。
【0037】
また、本発明の寝返り補助マットレスは、ベース層の幅が、第1パッド及び第2パッドの幅よりも広く、ベース層の幅方向の少なくとも一端には、高さ方向に突出する端部ブロックがベース層の長さ方向の少なくとも一部に配置されていることも好ましい。端部ブロックが設けられることにより、使用者が寝返りした際にベース層から落下することを防ぐことができ、より安全にマットレス上で寝返り動作を行うことができる。
【0038】
また、本発明の寝返り補助マットレスは、寝返り補助パッドの上に、クッション材で形成された上層が少なくとも1層以上積層されており、上層を構成するクッション材の硬度は、第1パッドの第1支持部を形成するクッション材の硬度よりも低いものであることも好ましい。上層のクッション材として、第1パッドの第1支持部を形成するクッション材の硬度よりも低いものが選択されることにより、寝返り補助パッドの機能は維持されつつ、使用者の体が柔軟な上層と接触するため、マットレスの寝心地が向上する。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する寝返り補助パッド及びそれを備えたマットレスを提供することができる。
(1)下半身の転回に係る負荷、特に骨盤の転回に係る負荷が低減されるため、下半身の転回に関与する筋力が低下した使用者であっても、自力での寝返りを容易とすることができる。
(2)上半身の転回動作と骨盤の転回動作とを連動させる構成としたため、筋力が低下した使用者に対し、自力での寝返りをより容易とすることができる。
(3)様々なタイプの寝返り動作を促すことができるため、睡眠中の自然な寝返りが促進され、睡眠の質の向上に寄与できる。
(4)仰向けで寝た体勢(仰臥位)において、胸椎を開くように作用するため、睡眠時の呼吸がしやすくなり、睡眠の質の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】第1の実施形態に係る寝返り補助パッドの(a)斜視図、(b)図1(a)のA-A’線断面図及び(c)図1(a)のB-B’線断面図である。
図2図1の寝返り補助パッドにおける仰臥姿勢の使用者の肩及び骨盤と接する位置を示す図である。
図3】(a)寝返りパッドの幅方向の位置と、第1の硬度勾配部の見かけの硬度との関係を示すグラフ及び(b)寝返りパッドの幅方向の位置と、第2の硬度勾配部の見かけの硬度との関係を示すグラフである。
図4】仰臥姿勢の上半身が回転する際のトルク(T=F×L)を示す説明図であって、(a)第1の実施形態に係る寝返り補助パッドを使用した際のトルクを示す説明図、及び(b)比較例として通常のマットレスを使用した際のトルクを示す説明図である。
図5】第1の実施形態に係る他の寝返り補助パッドの例を示す(a)斜視図、(b)図5(a)のC-C’線断面図及び(c)図5(a)のD-D’線断面図である。
図6】第1の実施形態に係る他の寝返り補助パッドの例を示す斜視図である。
図7図1に示す寝返り補助パッドの使用状態を示す説明図である。
図8】本発明の第1の硬度勾配部及び第2の硬度勾配部の見かけ硬度の測定方法を説明する図である。
図9】第2の実施形態に係る寝返り補助パッドの(a)斜視図、(b)図9(a)のE-E’線断面図及び(c)図9(a)のF-F’線断面図である。
図10】第3の実施形態に係る寝返り補助パッドの(a)斜視図、(b)図10(a)のG-G’線断面図及び(c)図10(a)のH-H’線断面図である。
図11】第4の実施形態に係る寝返り補助パッドの(a)斜視図、(b)図11(a)のI-I’線断面図である。
図12】寝返り補助パッドが組み込まれた寝返り補助マットレスの一実施形態を示す(a)分解斜視図、(b)図12(a)の第1パッドの頭側から見た側面図及び(c)図12(a)の第2パッドの脚側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る寝返り補助パッド2は、使用者の上半身側が載置される第1パッド3と、使用者の下半身側が載置される第2パッド4とからなり、第1パッド3と第2パッド4とが身長方向に一列に配置されて構成されている。なお、本明細書において上下とは、寝返り補助パッド2をマットレスや敷物等に設置して使用する状態での上下方向、すなわち、図1における上下方向をいうものとする。また、本明細書において幅方向とは、寝返り補助パッド2を使用する状態での幅方向、すなわち、図2における左右方向をいい、長さ方向とは、寝返り補助パッド2を使用する状態での長さ方向(身長方向)、すなわち、図2の中央図における上下方向をいうものとする。
【0042】
まず、使用者の上半身側が載置される第1パッド3について説明する。図1に示すように、第1パッド3は、その幅方向中央部に、長さ方向(身長方向)に延びる略平坦な上面を有する第1支持部31と、この第1支持部31の両側に配置され、その上面が第1支持部31の上面と略同一面上に位置する第1の硬度勾配部32とを備えている。本実施形態においては、第1支持部31と第1の硬度勾配部32とは別体に形成されている。第1支持部31と第1の硬度勾配部32とは、両者の配置がずれないように、両者の隣接面において接着剤等で固定されていてもよいし、組み込みされるマットレスのベース層8等に接着剤等で固定されていてもよい。
【0043】
第1パッド3における第1支持部31の幅方向の長さW1と、第1の硬度勾配部32の硬度勾配S1とは、第1パッド3に所望の作用をもたらすように設定することができる。第1支持部31の幅方向の長さW1を適宜設定することによって、上半身側の転回を開始するタイミングや転回開始トルク、仰臥位における背中の支持安定性を調整することができ、第1の硬度勾配部32の硬度勾配S1と協働させることで転回動作中のトルクを調整し、目的の上半身側の低負荷な転回動作を適宜設定することができる。具体的には、第1支持部31の幅方向の長さW1は使用者の上半身側の支持安定性が確保される範囲とするところ、その範囲内で第1支持部31の幅方向の長さW1を小さく設定するほど、上半身側の転回に要する力(トルク)が小さくなり、転回動作も早く開始される。また、第1の硬度勾配部32の硬度勾配S1を第1の硬度調整手段5により大きく設定するほど上半身側の転回に要するトルクは小さくなる。そのため、第1支持部31の幅方向の長さW1と第1の硬度勾配部32の硬度勾配S1との各々の設定値の組合せによって、上半身側の転回し易さを寝返りパターンや使用者の体型等に応じて調整することができる。以下、第1支持部31及び第1の硬度勾配部32について、詳細に説明する。
【0044】
図2に示すように、第1パッド3の第1支持部31は仰臥姿勢の使用者Bの体のうち、背中の少なくとも一部を支持するように構成されている。本実施形態における第1支持部31は、幅方向の長さW1が25cm、長さ方向(身長方向)の長さが80cm、高さ(第1支持部31のクッション材の厚み)が3cmの大きさに形成されており、仰臥姿勢の使用者Bの頭及び背骨を中心とした背中を支持することができるように設計されている。第1支持部31の幅方向の長さW1は、後述するように、仰臥姿勢の使用者Bの肩部Sが第1支持部31の外方の第1の硬度勾配部32に接する又は対向するように配置される必要がある関係から、第1支持部31の幅方向の長さW1は使用者Bの肩幅SW以下の幅、好ましくは使用者Bの一方の肩峰から他方の肩峰までの長さ(肩峰幅)以下で形成される。なお、使用者Bの肩部Sとは肩峰近傍であり、少なくとも肩峰から上腕骨の大結節までの領域を含んでいる。また、使用者Bの肩幅SWとは一方の肩から他方の肩までの長さであり、より具体的には、三角筋部の輪郭が最も外側に突出した位置において、矢状面に対して垂直に測った身体の最大横径である。第1支持部31の幅方向の長さW1は、使用者の肩幅以下の幅、好ましくは肩峰幅以下とすると共に、安定的に使用者Bの上半身を支持できるようにする観点から、使用者Bの左右の肩甲骨下角間の長さ以上とすることが好ましく、より具体的には、15cm~40cmとすることが好ましく、15cm~35cmとすることが好ましく、20cm~30cmとすることが特に好ましい。なお、後述するように、第1支持部31の幅方向の長さW1と第2支持部41の幅方向の長さW2が等しい構成(W1=W2)の場合には、第1支持部31の幅方向の長さW1は、第2支持部41の幅方向の長さW2の最大設定値である、使用者Bの骨盤の幅PW以下に設定される。また、第1支持部31の長さ方向(身長方向)の長さは、使用者Bの頭から背中を支持できるように適宜設定される。さらに、第1支持部31の硬度H1は、上半身の転回に要する力を低減して適度な寝返りができるように、第1の硬度勾配部32の硬度勾配S1や後述する第2支持部41の硬度H2と合わせて適宜設定される。また、第1支持部31の上面部分は、本実施形態では略平坦な面として形成されているが、仰臥姿勢の使用者Bの体の背中の少なくとも一部を支持することができれば、どのような形状に形成されていてもよく、その形状は平坦な面に限定されない。
【0045】
図1及び図2に示すように、本実施形態における第1パッド3の一対の第1の硬度勾配部32は、第1支持部31の長さ方向全体に亘って設けられており、寝返り動作する際の使用者Bの肩及び上腕全体が支持されるように形成されている。本実施形態における第1の硬度勾配部32は、幅方向の長さが12cm、長さ方向(身長方向)の長さが80cm、高さ(第1の硬度勾配部32のクッション材の厚み)が3cmの大きさに形成されている。第1パッド3の第1支持部31で使用者Bの背中が支持されるところ、第1支持部31で支持されていない、使用者Bの肩部S及びこの肩部Sと連続する背中側部分からなる領域(以下、肩周辺部SAという)は、第1支持部31の端部から外方に延びる第1の硬度勾配部32と接する又は対向するように位置している。それゆえ、使用者Bが上半身を転回させる際に、寝返り方向にある肩周辺部SAは第1の硬度勾配部32に支持される。本実施形態における第1の硬度勾配部32には4つの凹溝5a~5dからなる第1の硬度調整手段5が設けられている。この硬度調整手段5によって、第1の硬度勾配部32は、第1支持部31の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されるように調整されている。ここで、第1支持部31の端部とは、第1支持部31と第1の硬度勾配部32との境界を意味するところ、本発明において、第1支持部31と第1の硬度勾配部32との境界とは、第1の硬度勾配部32に設けられている硬度調整手段5のうち、幅方向において最も内方に位置している硬度調整手段(本実施形態では5a)の内方側の端部のことをいう。
【0046】
ここで、本明細書における第1の硬度勾配部32の「見かけの硬度」とは、第1の硬度勾配部32を形成するクッション材の素材自体の硬度ではなく、第1の硬度調整手段5が設けられた第1の硬度勾配部32そのものを測定した硬度であって、第1の硬度勾配部32を厚み方向(下方向)に所定面積で加圧して押圧変形させ、所定の反発力に達した時の変形量(沈み込み量)として求められる、測定部分における硬度のことをいう。具体的には、「見かけの硬度」は、図8に示すように、φ85mmの半球形のアルミ製加圧子INを直接、第1の硬度勾配部32又は第1支持部31の上面の測定部分に当接させ、100±20mm/分の速度で100Nまで荷重を加えた時のアルミ製加圧子INの沈み込み量を測定して求められる。なお、測定環境条件はJIS K6401-A法に準拠したものとする。
【0047】
また、本明細書における第1の硬度勾配部32の「硬度勾配S1」について、図3(a)を参照して説明する。第1の硬度勾配部32の「硬度勾配S1」とは、第1の硬度勾配部32の所定の幅方向長さあたりの、見かけの硬度の変化度のことをいい、下記式(1)で求められる傾斜角度θ1のことをいう。図3(a)には、第1パッド3の幅方向の位置とその見かけの硬度(変形量)との関係が例示されているところ、このグラフでは、第1支持部31及び第1の硬度勾配部32の幅方向の所定の位置における、それぞれの見かけの硬度を変形量としてプロットした際の、見かけの硬度の勾配(傾き)が示されている。ここで、この図3(a)に示されている、H2は第1支持部31と第1の硬度勾配部32との境界である第1支持部31の端部における見かけの硬度(変形量)であり、H1はH2の測定部分から幅方向内方に50mm移動した位置における第1支持部31の見かけの硬度(変形量)であり、H3はH2の測定部分から幅方向外方に50mm移動した位置における第1の硬度勾配部32の見かけの硬度(変形量)である。すなわち、本発明における、第1の硬度勾配部32の硬度勾配S1とは、第1の硬度勾配部32の勾配初期領域(第1支持部31の端部を起点として幅方向外方50mmまでの領域)における見かけの硬度の変化度を傾斜角度θ1として以下式(1)で求めたものである。ここで、H1、H2、H3の各見かけの硬度(変化量)は正の値として適用する。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、第1支持部31と第1の硬度勾配部32との境界である第1支持部31の端部を中心に3箇所の見かけの硬度を測定し、この3箇所の見かけの硬度から硬度勾配S1を求めている理由としては、第1支持部31と第1の硬度勾配部32との境界近傍は、見かけの硬度が小さくなり易い(変形量が大きくなり易い)ことから、この境界近傍の変形量を差し引きし、第1支持部31の端部を基準とした実質的な傾斜角度θ1を求めるためである。また、第1支持部31の端部を起点とした幅方向外方50mmまでの領域(第1の硬度勾配部32の勾配初期領域)に係る見かけの硬度の変化度を、第1の硬度勾配部32の硬度勾配S1と定義しているのは、寝返り時の転回の起点となる第1支持部31の端部から幅方向外方50mmまでの領域についての見かけの硬度の変化度が、寝返り時の転回の動き出しの際のトルク低減に寄与するためである。
【0050】
なお、図3(a)に示すように、勾配初期領域より外方の領域は、寝返り時の肩周辺部SAの転回が開始された後の上半身の転回動作を調整するための領域(以下、転回調整領域という。)として機能する。本実施形態において、この転回調整領域の見かけの硬度の勾配(傾き)は、勾配初期領域の見かけの硬度の勾配と略等しくなっているが、転回調整領域の見かけの硬度の勾配については、所望の寝返り動作に応じて自由に設定することが可能である。特に限定されないが、例えば、寝返り動作をゆっくりと安定的に行うために、勾配初期領域の見かけの硬度の勾配よりも転回調整領域の見かけの硬度の勾配を小さくなるように設定すること、又は、寝返り動作をさらに促進するために、勾配初期領域の見かけの硬度の勾配よりも転回調整領域の見かけの硬度の勾配を大きくなるように設定すること等が挙げられる。
【0051】
図1(b)及び図3(a)に示すように、本実施形態における第1の硬度調整手段5は、第1の硬度勾配部32の下面側に掘り込み形成された4つの凹溝5a~5dである。この複数の凹溝5a~5dは第1パッド3の長さ方向に連続して配列されており、第1パッド3の幅方向の端部、すなわち、第1の硬度勾配部32の幅方向の端部に向かって、凹溝の空隙体積が漸次増加するように形成されている。本実施形態における凹溝5a~5dの空隙体積の増加は、凹溝5aから凹溝5cまでは徐々に溝深さを増大させることにより行われ、凹溝5cから凹溝5dの空隙体積の増加は溝幅を拡大させることにより行われている。凹溝の空隙体積の増加については、空隙体積が漸次増加するように行われていればよく、例えば、溝深さの増大、溝幅の拡大、溝の断面形状の変化又はこれらの組み合わせ等により行われ、本実施形態で説明した方法に限定されない。また、凹溝の数は、第1の硬度勾配部32の幅長さ、クッション材の硬度又は凹溝の断面形状等により適宜決定され、本実施形態で示される溝数に限定されない。
【0052】
図3(a)には第1パッド3に関し、各幅方向の位置と見かけの硬度との関係がグラフに示されているところ、第1パッド3の見かけの硬度は、第1支持部31では略一定であるが、第1支持部31と第1の硬度勾配部32との境界近傍から見かけの硬度がやや小さくなり、第1の硬度勾配部32に係る部分では、空隙体積が漸次増加するように形成された凹溝により、第1パッド3の端部に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配を示している。これにより、図4(a)に示すように、使用者Bが寝返り動作する際、寝返り方向にある使用者の肩部Sを含む肩周辺部SAが第1の硬度勾配部32に沈み込みながら支持されるため、第1の硬度勾配部32との接地点Gと使用者の体軸Xとの距離が近くなり、上半身の転回に要する力が小さくなり、上半身側の転回が促進される。そして、この肩周辺部の転回を促進する作用を有する第1の硬度勾配部は、その見かけの硬度が漸次低くなる構成とされており、大きな硬度差を有さない構成とされているため、寝姿勢が安定し、寝心地に優れると共に、転回に係る動作も安定して行うことができる。ここで、肩周辺部SAとは、少なくとも、使用者Bの肩部S(肩峰から上腕骨の大結節までの領域)を含む部分であって、第1支持部31で支持されていない部分であるので、第1支持部31の幅方向の長さW1の設定によっては、使用者Bの上腕骨の大結節から背中側の肩甲骨下角に至る領域が含まれる。また、第1の硬度勾配部32は、仰臥姿勢の使用者Bの体のうち、少なくとも肩周辺部SAを支持するように形成されていればよく、それゆえ、第1支持部31の長さ方向に亘って設けられなくともよく、使用者Bの肩周辺部SAのみに第1の硬度勾配部32を設ける構成としてもよい。
【0053】
この第1パッド3の第1の硬度勾配部32による作用について、図4を参照し、より詳細に説明する。図4は仰臥姿勢の使用者の上半身が回転する際のトルク(T=F×L)を示す図であるところ、図4(a)では、本実施形態に係る寝返り補助パッドを使用した際のトルクを、図4(b)では、通常の平坦なマットレスを使用した際のトルクを示している。この図では寝返り動作に要する力を回転中心(体軸)Xについてのトルク(ねじりの強さ)として表している。トルクTは、回転円の接線方向に働く力Fと接地点Gと回転中心Xの距離Lとの積(T=F×L)で表される。それゆえ、接地点Gと回転中心Xの距離Lを短くすることにより、トルクTの値は低減する。図4(b)では、通常の(第1の硬度調整手段5が設けられていない)マットレスの例を示しているが、この例によれば、使用者Bの肩周辺部SAがマットレスに接地する位置Gは、肩部Sの比較的外側である。他方、図4(a)に示すように、第1パッド3に第1の硬度勾配部32を設けることによって、使用者Bの肩周辺部SAが第1パッド3に接地する位置Gは、図4(b)よりも内側に移動するため、接地点Gが回転中心Xに近づき、接地点Gと回転中心Xの距離Lが短くなってトルクTは低減する。それゆえ、上半身側の転回にかかる負荷が小さくなるため、少ない力で上半身側の転回を行うことができる。この一連の作用を得るためには、転回が低トルクで開始されることが重要であるため、使用者Bの肩周辺部SAが第1の硬度勾配部32に支持されつつ転回促進される領域である、第1支持部31の端部から幅方向外方50mmまでの勾配初期領域の硬度勾配S1の設定が重要である。
【0054】
第1パッド3の第1の硬度勾配部32は、第1の硬度調整手段5により調整された硬度勾配S1が大きくなると、肩周辺部SAの接地点Gと回転中心Xとの距離Lが短くなるため、上半身側の転回にかかる力が低減するが、その一方で転回動作が容易になり過ぎると仰臥位における使用者Bの体が不安定になるため、寝返り時の転回動作を調整する転回調整領域の見かけの硬度の勾配設計を考慮して、寝心地にも寄与する仰臥位安定性と寝返り(転回)容易性を両立する硬度勾配S1とすることが好ましい。具体的には、硬度勾配S1は、傾斜角度θ1として、0.2~90度以上となるように設定されることが好ましく、図3(a)のように転回調整領域の見かけの硬度の勾配(傾き)が勾配初期領域の見かけの硬度の勾配(傾き)と近い場合には、0.3~9度の範囲となるように設定されることがより好ましい。
【0055】
また、図1図3等に示すように、本実施形態の第1の硬度調整手段5を構成する凹溝5a~5dは、第1の硬度勾配部32の下面側に設けられているが、これに限定されず、第1の硬度勾配部32の上面側に設けられていてもよい。また、凹溝5a~5dは第1の硬度勾配部32の上面又は下面のみだけでなく、例えば凹溝の5dと5bは上面に、5cと5aは下面に設けるといったように、第1の硬度勾配部32の上面と下面を組み合わせて設けられていてもよい。さらに、本実施形態における凹溝5a~5dの断面形状は半円状又はカマボコ状であるが、これらの形状のほか、馬蹄状、円状、多角状、その他あらゆる形状又はこれらの組み合わせであってもよい。さらに、後述する第2~第4の実施形態にて示し、説明される他の硬度調整手段の形態(異なる硬度を有する複数のクッション材の組み合わせ、スリット、有底穴又は貫通孔)を本実施形態に係る第1の硬度調整手段5として適用することも、もちろん可能である。
【0056】
次に、使用者の下半身側が載置される第2パッド4について説明する。図1に示すように、第2パッド4は、その幅方向中央部に長さ方向(身長方向)に延びる略平坦な上面を有する第2支持部41と、この第2支持部41の両側に配置され、その上面が第2支持部41の上面と略同一面上に位置する第2の硬度勾配部42とを備えている。本実施形態においては、第2支持部41と第2の硬度勾配部42とは別体に形成されている。第2支持部41と第2の硬度勾配部42とは、両者の配置がずれないように、両者の隣接面において接着剤等で固定されていてもよいし、組み込みされるマットレスのベース層8等に接着剤等で固定されていてもよい。
【0057】
第2パッド4における第2支持部41の幅方向の長さW2と、第2の硬度勾配部42の硬度勾配S2とは、第2パッド4に所望の作用をもたらすように設定することができる。第2支持部41の幅方向の長さW2を適宜設定することによって、下半身側(骨盤)の転回を開始するタイミングや転回開始トルク、仰臥位における骨盤部の支持安定性を調整することができ、第2の硬度勾配部42の硬度勾配S2と協働させることで転回動作のトルクを調整し、目的の下半身側の低負荷な転回動作を適宜設定することができる。具体的には、第2支持部41の幅方向の長さW2は使用者の下半身側の支持安定性が確保される範囲とするところ、その範囲内で第2支持部41の幅方向の長さW2を小さく設定するほど下半身側の転回に要する力(トルク)が小さくなり、転回動作も早く開始される。また、第2の硬度勾配部42の硬度勾配S2を第2の硬度調整手段6により大きく設定するほど下半身側の転回に要するトルクは小さくなる。そのため、第2支持部41の幅方向の長さW2と第2の硬度勾配部42の硬度勾配S2との各々の設定値の組合せによって、下半身側の転回し易さを寝返りパターンや使用者の体型等に応じて調整することができる。以下、第2支持部41及び第2の硬度勾配部42について、詳細に説明する。
【0058】
図2に示すように、第2パッド4の第2支持部41は仰臥姿勢の使用者Bの体のうち、腰臀部の少なくとも一部を支持するように構成されている。本実施形態における第2支持部41は、幅方向の長さW2が13cm、長さ方向(身長方向)の長さが100cm、高さ(第2支持部41のクッション材の厚み)が3cmの大きさに形成されており、仰臥姿勢の使用者Bの仙椎を中心とした腰臀部を支持することができるように設計されている。第2支持部41の幅方向の長さW2は、後述するように、仰臥姿勢の使用者Bの大腿骨の大転子が第2支持部41の外方の第2の硬度勾配部42に接する又は対向するように配置される必要があるため、第2支持部41の幅方向の長さW2は使用者Bの骨盤の幅PW以下の幅で形成される。ここで、使用者Bの骨盤の幅PWとは一方の上前腸骨棘Pから他方の上前腸骨棘Pまでの長さである。なお、上前腸骨棘Pとは骨盤を構成する腸骨の腸骨稜の前縁にある突起部である。具体的に、第2支持部41の幅方向の長さW2は、使用者Bの骨盤の幅PW以下の幅とすると共に、使用者Bの下半身を安定的に支持できるようにする観点から、使用者Bの体の少なくとも上後腸骨棘(骨盤の腸骨稜の後縁にある突起部)間の幅以上とすることが好ましく、より具体的には、5cm~30cmとすることが好ましく、10cm~25cmとすることがより好ましく、10cm~20cmとすることがさらに好ましい。また、第2支持部41の長さ方向(身長方向)の長さは、使用者Bの下半身を支持できるように適宜設定される。さらに、第2支持部41の硬度H2は、下半身の転回に要する力を低減できるように、第2の硬度勾配部42の硬度勾配S2や第1支持部31の硬度H1と合わせて適宜設定される。また、第2支持部41の上面部分は、本実施形態では略平坦な面として形成されているが、仰臥姿勢の使用者Bの体の背中の少なくとも一部を支持することができれば、どのような形状に形成されていてもよく、その形状は平坦な面に限定されない。
【0059】
図1及び図2に示すように、本実施形態における第2パッド4の一対の第2の硬度勾配部42は、第2支持部41の長さ方向全体に亘って設けられており、寝返り動作する際の使用者Bの大腿骨の大転子が少なくとも支持されるように形成されている。本実施形態における第2の硬度勾配部42は、幅方向の長さが18cm、長さ方向(身長方向)の長さが100cm、高さ(第2の硬度勾配部42のクッション材の厚み)が3cmの大きさに形成されている。第2パッド4の第2支持部41で使用者Bの上後腸骨棘間を中心とした腰臀部が支持されるところ、第2支持部41で支持されていない、大腿骨の大転子及び骨盤の上前腸骨棘P並びにこの上前腸骨棘Pと連続する臀部側部分からなる領域(以下、骨盤周辺部PAという)は、第2支持部41の端部から外方に延びる第2の硬度勾配部42と接する又は対向するように位置している。それゆえ、使用者Bが下半身を転回させる際に、寝返り方向にある骨盤周辺部PAは第2の硬度勾配部42に支持される。本実施形態における第2の硬度勾配部42には7つの凹溝6a~6gからなる第2の硬度調整手段6が設けられている。この硬度調整手段6によって、第2の硬度勾配部42は、第2支持部41の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配が形成されるように調整されている。ここで、第2支持部41の端部とは、第2支持部41と第2の硬度勾配部42との境界を意味するところ、本発明において、第2支持部41と第2の硬度勾配部42との境界とは、第2の硬度勾配部42に設けられている硬度調整手段6のうち、幅方向において最も内方に位置している硬度調整手段(本実施形態では6a)の内方側の端部のことをいう。
【0060】
ここで、本明細書における第2の硬度勾配部42の「見かけの硬度」とは、第2の硬度勾配部42を形成するクッション材の素材自体の硬度ではなく、第2の硬度調整手段6が設けられた第2の硬度勾配部42そのものを測定した硬度であって、第2の硬度勾配部42を厚み方向(下方向)に所定面積で加圧して押圧変形させ、所定の反発力に達した時の変形量(沈み込み量)として求められる、測定部分における硬度のことをいう。具体的には、「見かけの硬度」は、図8に示すように、φ85mmの半球形のアルミ製加圧子INを直接、第2の硬度勾配部42又は第2支持部41の上面の測定部分に当接させ、100±20mm/分の速度で100Nまで荷重を加えた時のアルミ製加圧子INの沈み込み量を測定して求められる。なお、測定環境条件はJIS K6401-A法に準拠したものとする。
【0061】
また、本明細書における第2の硬度勾配部42の「硬度勾配S2」について、図3(b)を参照して説明する。第2の硬度勾配部42の「硬度勾配S2」とは、第2の硬度勾配部42の所定の幅方向長さあたりの、見かけの硬度の変化度のことをいい、下記式(2)で求められる傾斜角度θ2のことをいう。図3(b)には、第2パッド4の幅方向の位置とその見かけの硬度(変形量)との関係が例示されているところ、このグラフでは、第2支持部41及び第2の硬度勾配部42の幅方向の所定の位置における、それぞれの見かけの硬度を変形量としてプロットした際の、見かけの硬度の勾配(傾き)が示されている。ここで、この図3(b)に示されている、h2は第2支持部41と第2の硬度勾配部42との境界である第2支持部41の端部における見かけの硬度(変形量)であり、h1はh2の測定部分から幅方向内方に50mm移動した位置における第2支持部41の見かけの硬度(変形量)であり、h3はh2の測定部分から幅方向外方に50mm移動した位置における第2の硬度勾配部42の見かけの硬度(変形量)である。すなわち、本発明における、第2の硬度勾配部42の硬度勾配S2とは、第2の硬度勾配部42の勾配初期領域(第2支持部41の端部を起点として幅方向外方50mmまでの領域)における見かけの硬度の変化度を傾斜角度θ2として以下式(2)で求めたものである。ここで、h1、h2、h3の各見かけの硬度(変化量)は正の値として適用する。
【0062】
【数2】
【0063】
ここで、第2支持部41と第2の硬度勾配部42との境界である第2支持部41の端部を中心に3箇所の見かけの硬度を測定し、この3箇所の見かけの硬度から硬度勾配S2を求めている理由としては、第2支持部41と第2の硬度勾配部42との境界近傍は、見かけの硬度が小さくなり易い(変形量が大きくなり易い)ことから、この境界近傍の変形量を差し引きし、第2支持部41の端部を基準とした実質的な傾斜角度θ2を求めるためである。また、第2支持部41の端部を起点とした幅方向外方50mmまでの領域(第2の硬度勾配部42の勾配初期領域)に係る見かけの硬度の変化度を、第2の硬度勾配部42の硬度勾配S2と定義しているのは、寝返り時の転回の起点となる第2支持部41の端部から幅方向外方50mmまでの領域についての見かけの硬度の変化度が、寝返り時の転回の動き出しの際のトルク低減に寄与するためである。
【0064】
なお、図3(b)に示すように、勾配初期領域より外方の領域は、寝返り時の骨盤周辺部PAの転回が開始された後の下半身の転回動作を調整するための領域(以下、転回調整領域という。)として機能する。本実施形態において、この転回調整領域の見かけの硬度の勾配(傾き)は、勾配初期領域の見かけの硬度の勾配と略等しくなっているが、転回調整領域の見かけの硬度の勾配については、所望の寝返り動作に応じて自由に設定することが可能である。特に限定されないが、例えば、寝返り動作をゆっくりと安定的に行うために、勾配初期領域の見かけの硬度の勾配よりも転回調整領域の見かけの硬度の勾配を小さくなるように設定すること、又は、寝返り動作をさらに促進するために、勾配初期領域の見かけの硬度の勾配よりも転回調整領域の見かけの硬度の勾配を大きくなるように設定すること等が挙げられる。
【0065】
図1(c)及び図3(b)に示すように、本実施形態における第2の硬度調整手段6は、第2の硬度勾配部42の下面側に掘り込み形成された7つの凹溝6a~6gである。この複数の凹溝6a~6gは第2パッド4の長さ方向に連続して配列されており、第2パッド4の幅方向の端部、すなわち、第2の硬度勾配部42の幅方向の端部に向かって、凹溝の空隙体積が漸次増加するように形成されている。本実施形態における凹溝6a~6gの空隙体積の増加は、凹溝6aから凹溝6dまでは徐々に溝幅を拡大させることにより行われ、凹溝6dから凹溝6fまでは徐々に溝深さを増大させることにより行われ、凹溝6fから凹溝6gの空隙体積の増加はさらに溝幅を拡大させることにより行われている。凹溝の空隙体積の増加については、空隙体積が漸次増加するように行われていればよく、例えば、溝深さの増大、溝幅の拡大、溝の断面形状の変化又はこれらの組み合わせ等により行われ、本実施形態で説明した方法に限定されない。また、凹溝の数は、第2の硬度勾配部42の幅長さ、クッション材の硬度又は凹溝の断面形状等により適宜決定され、本実施形態で示される溝数に限定されない。
【0066】
図3(b)には第2パッド4に関し、各幅方向の位置と見かけの硬度との関係がグラフに示されているところ、第2パッド4の見かけの硬度は、第2支持部41では略一定であるが、第2支持部41と第2の硬度勾配部42との境界近傍から見かけの硬度がやや小さくなり、第2の硬度勾配部42に係る部分では、空隙体積が漸次増加するように形成された凹溝により、第2パッド4の端部に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配を示している。これにより、使用者Bが寝返り動作する際、寝返り方向にある使用者の大腿骨の大転子を含む骨盤周辺部PAが第2の硬度勾配部42に沈み込みながら支持されるため、第2の硬度勾配部42との接地点Gと使用者の体軸Xとの距離が近くなり、骨盤の転回に要する力が小さくなり、下半身側の転回が促進される。そして、この転回を促進する作用を有する第2の硬度勾配部は、その見かけの硬度が漸次低くなる構成とされており、大きな硬度差を有さない構成とされているため、寝姿勢が安定し、寝心地に優れると共に、転回に係る動作も安定して行うことができる。この下半身側の転回が促進される作用については、図4図4(a)で示した第1パッド3の第1の硬度勾配部32による作用と同様である。また、この一連の作用を得るためには、転回が低トルクで開始されることが重要であるため、使用者Bの骨盤周辺部PAが第2の硬度勾配部42に支持されつつ転回促進される領域である、第2支持部41の端部から幅方向外方50mmまでの勾配初期領域の硬度勾配S2の設定が重要である。ここで、骨盤周辺部PAとは、少なくとも、使用者Bの大腿骨の大転子及び骨盤の上前腸骨棘Pを含む部分であって、第2支持部41で支持されていない部分であるので、第2支持部41の幅方向の長さW2の設定によっては、使用者Bの骨盤の上前腸骨棘Pから臀部側の上後腸骨棘に至る領域が含まれる。また、第2の硬度勾配部42は、仰臥姿勢の使用者Bの体のうち、少なくとも骨盤周辺部PAを支持するように形成されていればよく、それゆえ、第2支持部41の長さ方向に亘って設けられなくともよく、使用者Bの骨盤周辺部PAのみに第2の硬度勾配部42を設ける構成としてもよい。
【0067】
第2パッド4の第2の硬度勾配部42は、第2の硬度調整手段6により調整された硬度勾配S2が大きくなると、骨盤周辺部PAの接地点Gと回転中心Xとの距離Lが短くなるため、骨盤の転回トルクが低減し、その結果として下半身の転回にかかる力が低減するが、その一方で骨盤の転回動作が容易になり過ぎると仰臥位における使用者Bの体が不安定になるため、寝返り時の転回動作を調整する転回調整領域の見かけの硬度の勾配設計を考慮して、仰臥位安定性と寝返り(転回)容易性を両立する硬度勾配S2とすることが好ましい。具体的には、硬度勾配S2は、傾斜角度θ2として、0.2~90度以上となるように設定されることが好ましく、図3(b)のように転回調整領域の見かけの硬度の勾配(傾き)が勾配初期領域の見かけの硬度の勾配(傾き)と近い場合には、0.3~9度の範囲となるように設定されることがより好ましい。
【0068】
また、図1図3等に示すように、本実施形態の第2の硬度調整手段6を構成する凹溝6a~6gは、第2の硬度勾配部42の下面側に設けられているが、これに限定されず、第2の硬度勾配部42の上面側に設けられていてもよい。また、凹溝6a~6gは第2の硬度勾配部42の上面又は下面のみだけでなく、第2の硬度勾配部42の上面と下面を組み合わせて設けられていてもよい。さらに、本実施形態における凹溝6a~6gの断面形状は半円状又はカマボコ状であるが、これらの形状のほか、馬蹄状、円状、多角状、その他あらゆる形状又はこれらの組み合わせであってもよい。さらに、後述する第2~第4の実施形態にて示し、説明される他の硬度調整手段の形態(異なる硬度を有する複数のクッション材の組み合わせ、スリット、有底穴又は貫通孔)を本実施形態に係る第2の硬度調整手段6として適用することも、もちろん可能である。
【0069】
本実施形態の寝返り補助パッド2は、第1パッド3の第1支持部31の幅方向の長さW1及び第1の硬度勾配部32の第1の硬度調整手段5による硬度勾配S1、並びに、第2パッド4の第2支持部41の幅方向の長さW2及び第2の硬度勾配部42の第2の硬度調整手段6による硬度勾配S2等の各種設計値の組合せによって、目的の寝返りタイプに応じた寝返りが容易になるように設計される。そこで、本実施形態の寝返り補助パッド2について、第1パッド3と第2パッド4に係る各構成の関係について以下説明する。
【0070】
本実施形態の寝返り補助パッド2において、第1パッド3の第1の硬度勾配部32の見かけ硬度の変化度を示す硬度勾配S1と、第2パッド4の第2の硬度勾配部42の見かけ硬度の変化度を示す硬度勾配S2とは異なるように構成されている。各パッドの硬度勾配を異ならせることによって、寝返りに係る負荷の低減作用を上半身側と下半身側とで適宜調整することができ、使用者Bの筋力や体型、寝返りタイプ等に応じた寝返り補助パッド2を得ることができる。さらに、主に屈曲回旋タイプの寝返りを促進させる観点から、第2パッド4の第2の硬度勾配部42の硬度勾配S2よりも、第1パッド3の第1の硬度勾配部32の硬度勾配S1の方が大きい(S1>S2)構成とすること、すなわち、第2の硬度勾配部42の勾配初期領域における見かけ硬度の変化度(傾斜角度θ2)よりも、第1の硬度勾配部32の勾配初期領域における見かけ硬度の変化度(傾斜角度θ1)の方を大きくする構成とすることが好ましい。これにより、寝返り動作のスタートとなる上半身の転回を促進させる作用を高めると共に仰臥姿勢の下半身の安定性を高め、骨盤の転回を緩やかに連動させる寝返り動作を促すことができる。
【0071】
本実施形態の寝返り補助パッド2において、第1パッド3の第1支持部31の幅方向の長さW1と、第2パッド4の第2支持部41の幅方向の長さW2とは、図5に示す寝返り補助パッド2のように略同じ長さに形成することも可能であるが、第1支持部の幅W1を第2支持部の幅W2よりも広く(W1>W2)形成することが好ましい。これにより、上半身側の第1パッド3よりも下半身側の第2パッド4の方が、寝返り補助パッド2の幅方向中央寄りに第2の硬度勾配部42が位置するようになり、骨盤の転回開始のタイミングが早くなるため、上半身の転回動作と下半身側の転回動作とが、より低トルクで連動し、自力での寝返りがより容易となる。具体的には、特に限定されないが、図1に示す寝返り補助パッド2については、第1支持部31の幅W1が25cm、第2支持部41の幅W2が13cmで形成されている。なお、促進すべき寝返りのタイプ等によっては、第1支持部の幅W1を第2支持部の幅W2よりも狭く(W1<W2)形成する構成とすることも可能である。
【0072】
また、図5には、第1パッド3の第1の硬度勾配部32の硬度勾配S1と、第2パッド4の第2の硬度勾配部42の硬度勾配S2とが異なる(S1≠S2)構成を有する本実施形態の寝返り補助パッド2の他の形態の例を示している。図5に示す寝返り補助パッド2では、第1パッド3の第1支持部31の幅W1と第2パッド4の第2支持部41の幅W2は略同じ長さで形成されている(W1=W2)ところ、第1支持部31の硬度H1は第2支持部41の硬度H2よりも高く(H1>H2)形成されている。これにより、上半身側の第1パッド3の第1支持部31の上面と下半身側の第2パッド4の第2支持部41の上面との間に段差が生じるため、この段差に沿って使用者Bの臀部から腰椎部に至る部分が支持されて自然な寝姿勢が得られ易くなるとともに、使用者Bが寝返り動作する際に、この段差によって骨盤の転回が容易となって下半身側の転回動作の動き出しが促進される。それゆえ、上半身の転回動作と下半身側の転回動作とが連動し易くなるため、自力での寝返りが容易となる。なお、図5では、第1支持部31の幅W1と第2支持部41の幅W2とが略同じ長さの場合(W1=W2)の例を示したが、それに限定されず、第1支持部の幅W1を第2支持部の幅W2よりも広く(W1>W2)なるように形成したり、逆に狭くする(W1<W2)ように形成することももちろん可能である。
【0073】
本発明に係る寝返り補助パッド2を構成する第1パッド3及び第2パッド4は、それぞれ上述した所定厚さ(高さ)を有するクッション材で形成されている。第1パッド3を形成する第1のクッション材としては、使用者が仰臥位に寝た状態で著しく厚み方向に変形して第1の硬度勾配部32の形状を大きく変形させることがない程度の硬度を有するものが好適に選択される。本実施形態に係る第1パッド3では、第1支持部31と、第1の硬度勾配部32とは別体として形成されているが、両者ともに同じ硬度のクッション材を用いることも、それぞれに合った異なる硬度のクッション材を用いることも可能である。なお、後者の場合には、第1支持部31を形成するクッション材として、第1の硬度勾配部32を形成するクッション材よりも柔軟なクッション材を選択することが好ましく、これにより、第1支持部31は体圧分散性に優れ、第1支持部31に接する使用者Bの体を柔軟に支持することができると共に、第1の硬度勾配部32は使用者の肩Sを沈み込みさせすぎることなく、接地点Gと回転中心Xとの距離Lを短く保ったまま、上半身の転回動作を促進する。さらに、第1支持部31及び第1の硬度勾配部32のいずれについても、複数の異なるクッション材を組み合わせて各々に相当する部分を得ることも可能であり、例えば、複数のクッション材を積層させて第1支持部31を得ることや、第1の硬度勾配部32に相当する部分のうち、肩周辺部SAとその他の部分とで異なるクッション材を組み合わせて形成することも可能である。なお、第1パッド3を構成する第1支持部31と第1の硬度勾配部32とを同じクッション材で形成した場合には、両者を一体として形成することが可能であり、さらに、第1支持部31にスリット加工等を施して見かけの硬度を低減させ、柔軟化させることも可能である。
【0074】
次に、第2パッド4を形成する第2のクッション材としては、使用者が仰臥位に寝た状態で著しく厚み方向に変形して第2の硬度勾配部42の形状を大きく変形させることがない程度の硬度を有するものが好適に選択される。本実施形態に係る第2パッド4では、第2支持部41と、第2の硬度勾配部42とは別体として形成されているが、両者ともに同じ硬度のクッション材を用いることも、それぞれに合った異なる硬度のクッション材を用いることも可能である。なお、後者の場合、第2支持部41を形成するクッション材として、第2の硬度勾配部42を形成するクッション材よりも柔軟なクッション材を選択することが好ましく、これにより、第2支持部41は体圧分散性に優れ、第2支持部41に接する使用者Bの体を柔軟に支持することができると共に、骨盤の転回動作時には第2の硬度勾配部42は使用者の骨盤周辺部PAと接地する部分を沈み込みさせすぎることなく、接地点Gと回転中心Xとの距離Lを短く保ったまま、下半身の転回動作を促進する。さらに、第2支持部41及び第2の硬度勾配部42のいずれについても、複数の異なるクッション材を組み合わせて各々に相当する部分を得ることも可能であり、例えば、複数のクッション材を積層させて第2支持部41を得ることや、第2の硬度勾配部42に相当する部分のうち、骨盤周辺部PAとその他の部分とで異なるクッション材を組み合わせて形成することも可能である。なお、第2パッド4を構成する第2支持部41と第2の硬度勾配部42とを同じクッション材で形成した場合には、両者を一体として形成することが可能であり、さらに、第2支持部41にスリット加工等を施して見かけの硬度を低減させ、柔軟化させることも可能である。
【0075】
上述した第1及び第2のクッション材としては、上述した硬度を有し、クッション性を有するものであれば特に限定されないが、樹脂発泡体、三次元網状構造体及び綿成形体が好適に用いられ、取り扱い及び加工のしやすさの観点から、樹脂発泡体がより好ましい。樹脂発泡体として、具体的には、発泡ポリウレタン、発泡ポリオレフィン又は発泡シリコーン等が挙げられる。また、第1及び第2のクッション材はお互いに同じ素材でもよいし、異なる素材としてもよい。
【0076】
本実施形態においては、第1パッド3と第2パッド4とは別体的に形成されている。そのため、第1パッド3と第2パッド4とは、両者の配置がずれないように、両者の隣接面において、面ファスナー等の係合手段で着脱自在に固定されていてもよいし、接着剤等で固定されていてもよい。また、寝返り補助パッド2が載置されるマットレスや敷物、後述するベース層8に係合手段や接着剤等で第1パッド3と第2パッド4がそれぞれ固定されていてもよく、このとき、第1パッド3と第2パッド4とは所定の隙間を有するように離間配置されていてもよい。さらに、第1パッド3と第2パッド4とが同じクッション材で形成されている場合には、第1パッド3と第2パッド4とが一体的に形成されていてもよい。
【0077】
また、本実施形態における寝返り補助パッド2は、第1パッド3と第2パッド4とから構成されているが、所定厚さを有するクッション材からなる第3パッドを、第1パッド3と第2パッド4との間や第1パッド3の頭側、第2パッド4の脚側に少なくとも1つ設けてもよい。主に使用者Bの頭部、腰部又は脚部を別途支持する第3パッドを設けることにより、使用者Bの寝心地の好みや体形等に応じ、頭部、腰部又は脚部を支持するクッション材を別途選定することができるため、寝心地を高めた寝返り補助パッド2を得ることができる。
【0078】
上述した第3パッドが第2パッド4の脚側に設けられた、本実施形態の寝返り補助パッド2の他の形態の例を図6に示す。この寝返り補助パッド2は、第2パッド4の脚側に設けられた第3パッドが下肢部を支持するところ、第3パッドは第1パッド3と同じ構成で形成されている。すなわち、第1パッド3が備える第1支持部31と第1の硬度勾配部32を第3パッドも備えている。このように、第1パッド3と第3パッドとを同じ構成とすることで、寝返り補助パッド2の長さ方向に対し、使用者がいずれの向きで寝て使用しても、本発明の作用効果を得ることができる。
【0079】
次に、図7を参照しつつ、本実施形態に係る寝返り補助パッド2の使用方法について説明する。まず、図7(a)に示すように、使用者Bが寝返り補助パッド2の上に仰向けで寝た姿勢を取る。このとき、使用者Bの上半身側が第1パッド3で支持され、下半身側が第2パッド4で支持されるようにし、第1パッド3の第1の硬度勾配部32に使用者Bの肩Sを含む肩周辺部SAが接する又は対向するように位置し、第2パッド4の第2の硬度勾配部42に使用者Bの大腿骨の大転子を含む骨盤周辺部PAが接する又は対向するように、使用者Bの横たわる位置を調整する。この状態では、頭部と背骨を中心とした背中部分は第1支持部31に安定的に支持され、下半身の仙椎を中心とした臀部部分は第2支持部41に安定的に支持されている。
【0080】
次に、屈曲回旋タイプの寝返りをする場合、図7(b)から図7(d)に示すように、使用者Bが寝返り方向に上半身を転回させようとすると、肩周辺部SAが第1の硬度勾配部32で支持される。第1の硬度勾配部32には第1支持部31の端部から外方に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配S1が形成されているため、寝返り方向にある肩周辺部SAが第1の硬度勾配部32に接地すると、硬度が漸次低下している分だけ接地点が沈み込み、使用者Bの体軸Xとの距離が近くなる。このように、使用者Bが寝返り動作する際に、寝返り方向にある使用者の肩周辺部SAと第1の硬度勾配部32との接地点Gと使用者の体軸Xとの距離が近くなるため、上半身の転回に要する力が小さくなり、上半身の転回が容易になされる。そして引き続き、図7(c)から図7(e)に示すように、上半身の転回動作に連動して下半身側の転回動作が行われる。詳細には、本実施形態に係る寝返り補助パッド2は、第1支持部31の幅W1よりも第2支持部41の幅W2が狭いため、下半身側の第2パッド4の第2の硬度勾配部42の方が、寝返り補助パッド2の幅方向中央寄りに位置しており、早いタイミングで、骨盤の転回が低トルクで開始する構成となっている。それゆえ、図7(c)に示すように、使用者Bの上半身側の転回動作が行われている際に、この寝返り補助パッド2の第2の硬度勾配部42に接地した骨盤の転回動作の動き出しが開始され、第2の硬度勾配部42上での転回動作が進行する。これによって、上半身の転回動作と下半身側の転回動作とが連動するため、自力での寝返りが容易となっている。そして、図7(d)に示すように、使用者Bが寝返り方向に骨盤を転回させようとすると、転回で最も力を要する使用者Bの大腿骨の大転子に向かって骨盤周辺部PAが第2の硬度勾配部42で支持される。第2の硬度勾配部42は第2支持部41の端部から外方に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配S2が形成されているため、寝返り方向にある大腿骨の大転子等の骨盤周辺部PAが第2の硬度勾配部42に接地すると、硬度が漸次低下している分だけ接地点が沈み込み、使用者Bの体軸Xとの距離が近くなる。これにより、骨盤の転回に要する力が小さくなり、下半身側の転回も容易になされ、図7(e)に示すように寝返りが完了する。なお、伸展回旋タイプの寝返りの場合には、下半身と上半身との連動順序が逆になるが、上半身の転回に寄与する第1パッド3の作用と、下半身の転回に及ぼす第2パッド4の作用は、上記の屈曲回旋タイプの場合と同じである。
【0081】
次に、第2の実施形態に係る寝返り補助パッド20について説明する。図9に示すように、本実施形態に係る寝返り補助パッド20は、使用者の上半身側が載置される第1パッド30と、使用者の下半身側が載置される第2パッド40とからなり、第1パッド30と第2パッド40とが身長方向に一列に配置されて構成されている。使用者の上半身側が載置される第1パッド30は、その幅方向中央部に長さ方向(身長方向)に延びる略平坦な上面を有する第1支持部310と、この第1支持部310の両側に配置され、その上面が第1支持部310の上面と略同一面上に位置する第1の硬度勾配部320とを備えている。また、第2パッド40は、その幅方向中央部に長さ方向(身長方向)に延びる略平坦な上面を有する第2支持部410と、この第2支持部410の両側に配置され、その上面が第2支持部410の上面と略同一面上に位置する第2の硬度勾配部420とを備えている。本実施形態においては、第1支持部310と第1の硬度勾配部320は一体的に形成されており、同様に、第2支持部410と第2の硬度勾配部420も一体的に形成されている。
【0082】
図9に示すように、本実施形態における第1の硬度勾配部320にはその上面側に4つのスリット50a~50dからなる第1の硬度調整手段50が設けられている。この硬度調整手段50によって、第1の硬度勾配部320は、第1支持部310の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配S10が形成されるように調整されている。なお、第1支持部310の端部とは、第1支持部310と第1の硬度勾配部320との境界を意味するところ、第1支持部310と第1の硬度勾配部320との境界とは、第1の硬度勾配部320に設けられている硬度調整手段50のうち、幅方向において最も内方に位置している硬度調整手段(本実施形態では50a)の内方側の端部のことをいう。図9(b)に示すように、本実施形態における第1の硬度調整手段50は、第1の硬度勾配部320の上面側からハーフカット様に形成された4つのスリットである。この複数のスリット50a~50dは第1パッド30の長さ方向に連続して配列されており、第1パッド30の幅方向の端部、すなわち、第1の硬度勾配部320の幅方向の端部に向かって、隣接するスリット間の間隔が漸次狭くなるように形成されている。なお、スリットを硬度調整手段50として採用した場合には、上述した方法に限定されず、各スリットの切り込み長さを漸次増加するように形成することによって、硬度勾配S10が得られるようにしてもよい。また、スリットの数は、第1の硬度勾配部320の幅長さ、クッション材の硬度等により適宜決定され、本実施形態で示される本数に限定されない。また、本実施形態において、スリット50a~50dは、第1の硬度勾配部320の上面側に設けられているが、これに限定されず、第1の硬度勾配部220の下面側に設けられていてもよい。
【0083】
他方、図9に示すように、本実施形態における第2の硬度勾配部420にはその上面側に7つのスリット60a~60gからなる第2の硬度調整手段60が設けられている。この硬度調整手段60によって、第2の硬度勾配部420は、第2支持部410の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配S20が形成されるように調整されている。なお、第2支持部410の端部とは、第2支持部410と第2の硬度勾配部420との境界を意味するところ、第2支持部410と第2の硬度勾配部420との境界とは、第2の硬度勾配部420に設けられている硬度調整手段60のうち、幅方向において最も内方に位置している硬度調整手段(本実施形態では60a)の内方側の端部のことをいう。図9(c)に示すように、本実施形態における第2の硬度調整手段60は、第2の硬度勾配部420の上面側からハーフカット様に形成された7つのスリットである。この複数のスリット60a~60gは第2パッド40の長さ方向に連続して配列されており、第2パッド40の幅方向の端部、すなわち、第2の硬度勾配部420の幅方向の端部に向かって、隣接するスリット間の間隔が漸次狭くなるか、又はスリットの切り込み長さを漸次増加させるように形成されている。具体的には、スリット60aからスリット60dまでは徐々にスリット間の間隔を狭くするように形成され、スリット60dからスリット60fまでは徐々にスリットの切り込み長さを増加させるように形成され、スリット60fからスリット60gについては、スリット間の間隔を狭くするように形成されている。また、スリットの数は、第2の硬度勾配部420の幅長さ、クッション材の硬度等により適宜決定され、本実施形態で示される本数に限定されない。また、本実施形態において、スリット60a~60gは、第2の硬度勾配部420の上面側に設けられているが、これに限定されず、第2の硬度勾配部420の下面側に設けられていてもよい。
【0084】
本実施形態の寝返り補助パッド20について、第1パッド30と第2パッド40に係る各構成の関係について、図9を参照し、以下説明する。本実施形態の寝返り補助パッド20において、第1パッド30の第1の硬度勾配部320の硬度勾配S10と、第2パッド40の第2の硬度勾配部420の硬度勾配S20とは、略同じとなるように構成されている。すなわち、第1の硬度勾配部320の勾配初期領域における見かけの硬度の変化度(傾斜角度θ10)と、第2の硬度勾配部420の勾配初期領域における見かけの硬度の変化度(傾斜角度θ20)とが略同じ変化度となるように設計されている。さらに、第1パッド30の第1支持部310の幅方向の長さW10と、第2パッド40の第2支持部410の幅方向の長さW20とは、第1支持部の幅W10が第2支持部の幅W20よりも広く(W10>W20)なるように構成されている。これにより、上半身側の第1パッド30よりも下半身側の第2パッド40の方が、寝返り補助パッド20の幅方向中央寄りに第2の硬度勾配部420が位置するようになり、骨盤を転回させようとすると、寝返り方向の骨盤周辺部PAがこの第2の硬度勾配部420に迅速に接地して沈み込みつつ支持され、下半身が低トルクで転回開始するタイミングが、早く設定される。それゆえ、使用者Bが屈曲回旋タイプの寝返り動作をする際には、上半身側が転回した後の骨盤の転回動作の動き出しが促進される。また、伸展回旋タイプの寝返り動作をする際には、骨盤の転回がスムーズに開始され、上半身側の転回へと連動し易くなる。これによって、上半身の転回動作と下半身側の転回動作とがスムーズに連動するとともに、上半身側と下半身側との転回動作のトルクバランスが良好となり、自力での寝返りが容易となる。
【0085】
また、本実施形態に係る寝返り補助パッド20において、第1パッド30の第1支持部310の硬度H10は、第2パッド40の第2支持部410の硬度H20よりも高く(H1>H2)形成されることも好ましい。これにより、上半身側の第1パッド30の第1支持部310の上面と下半身側の第2パッド40の第2支持部410の上面との間にさらに段差が生じるため、この段差に沿って使用者Bの臀部から腰椎部に至る部分が支持され、自然な寝姿勢が得られ易くなるとともに、使用者Bが寝返り動作する際に、上半身側が転回した後、この段差と、第1パッド30の第1の硬度勾配部320と第2パッド40の第2の硬度勾配部420との間に形成された段差との協働によって骨盤の転回動作の動き出しがさらに促進される。それゆえ、上半身の転回動作と下半身側の転回動作とが連動するため、自力での寝返りが容易となる。
【0086】
本実施形態における寝返り補助パッド20を構成する第1パッド30及び第2パッド40に関するその他の説明並びに第3パッド等のその他の構成に関する説明は、上述した第1の実施形態の第1パッド3及び第2パッド4等と同様であり、その作用効果も同様である。
【0087】
次に、第3の実施形態に係る寝返り補助パッド21について説明する。図10に示すように、本実施形態に係る寝返り補助パッド21は、2つの第1パッド301と、1つの第2パッド401とからなり、第1パッド301、第2パッド401、第1パッド301の順に身長方向に一列に配置されて構成されている。使用者の上半身側又は脚部が載置される第1パッド301は、その幅方向中央部に長さ方向(身長方向)に延びる略平坦な上面を有する第1支持部311と、この第1支持部311の両側に配置され、その上面が第1支持部311の上面と略同一面上に位置する第1の硬度勾配部321とを備えている。また、使用者の腰臀部が載置される第2パッド401は、その幅方向中央部に長さ方向(身長方向)に延びる略平坦な上面を有する第2支持部411と、この第2支持部411の両側に配置され、その上面が第2支持部411の上面と略同一面上に位置する第2の硬度勾配部421とを備えている。なお、本実施形態では第1パッド301は2つ備えられているが、上半身用の1つの第1パッド301と下半身用の1つの第2パッド401とからなる構成とすることも可能である。
【0088】
本実施形態における第1の硬度勾配部321には、第1の硬度調整手段51が設けられているところ、本実施形態では異なる硬度を有する4つのクッション材51a~51dから構成されている。この硬度調整手段51によって、第1の硬度勾配部321は、第1支持部311の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配S11が形成されるように調整されている。なお、第1支持部311の端部とは、第1支持部311と第1の硬度勾配部321との境界を意味するところ、第1支持部311と第1の硬度勾配部321との境界とは、第1の硬度勾配部321に設けられている硬度調整手段51のうち、幅方向において最も内方に位置している硬度調整手段(本実施形態では51a)の内方側の端部のことをいう。図10(a)及び(b)に示すように、本実施形態における第1の硬度調整手段51は、異なる硬度を有する細幅状の4つのクッション材である。この4つの細幅のクッション材51a~51dはそれぞれ第1パッド31の長さ方向に亘り配置されると共に、第1パッド31の幅方向の端部、すなわち、第1の硬度勾配部321の幅方向の端部に向かって、そのクッション材の硬度が漸次低くなるように配置されている。なお、本実施形態においては、第1の硬度勾配部321の幅方向の長さは12cm、長さ方向(身長方向)の長さが65cmであるところ、各クッション材の幅方向の長さは3cmで形成されている。また、第1の硬度調整手段51を構成している異なる硬度を有するクッション材の数は、第1の硬度勾配部321の幅長さ、各クッション材の硬度等により適宜決定され、本実施形態で示される数に限定されない。
【0089】
他方、本実施形態における第2の硬度勾配部421にも、上述した第1の硬度調整手段51と同様の第2の硬度調整手段61が設けられている。第2の硬度調整手段61は異なる硬度を有する4つのクッション材61a~61dから構成されている。この硬度調整手段61によって、第2の硬度勾配部421は、第2支持部411の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配S21が形成されるように調整されている。なお、第2支持部411の端部とは、第2支持部411と第2の硬度勾配部421との境界を意味するところ、第2支持部411と第2の硬度勾配部421との境界とは、第2の硬度勾配部421に設けられている硬度調整手段61のうち、幅方向において最も内方に位置している硬度調整手段(本実施形態では61a)の内方側の端部のことをいう。図10(a)及び(c)に示すように、本実施形態における第2の硬度調整手段61は、異なる硬度を有する細幅状の4つのクッション材である。この4つの細幅のクッション材61a~61dはそれぞれ第2パッド41の長さ方向に亘り配置されると共に、第2パッド41の幅方向の端部、すなわち、第2の硬度勾配部421の幅方向の端部に向かって、そのクッション材の硬度が漸次低くなるように配置されている。なお、本実施形態においては、第2の硬度勾配部421の幅方向の長さは12cm、長さ方向(身長方向)の長さが55cmであるところ、各クッション材の幅方向の長さは3cmで形成されている。また、第2の硬度調整手段61を構成している異なる硬度を有するクッション材の数は、第2の硬度勾配部421の幅長さ、各クッション材の硬度等により適宜決定され、本実施形態で示される数に限定されない。
【0090】
本実施形態の寝返り補助パッド21について、第1パッド301と第2パッド401に係る各構成の関係について、図10を参照し、以下説明する。本実施形態の寝返り補助パッド21において、第1パッド301の第1の硬度勾配部321の硬度勾配S11と、第2パッド401の第2の硬度勾配部421の硬度勾配S21とは、略同じとなるように構成されている。すなわち、各硬度調整手段51,61を同じ構成とすることにより、第1の硬度勾配部321の勾配初期領域における見かけの硬度の変化度(傾斜角度θ11)と、第2の硬度勾配部421の勾配初期領域における見かけの硬度の変化度(傾斜角度θ21)とが略同じ変化度となるように設計されている。さらに、第1パッド301の第1支持部311の幅W11と、第2パッド401の第2支持部411の幅W21とは、略同じ幅長さにて構成されている。そして、第1パッド301の第1支持部311の硬度H11と第2パッド401の第2支持部411の硬度H21については、第1支持部311の硬度H11が第2支持部411の硬度H21よりも高く(H1>H2)なるように構成されている。これにより、上半身側の第1パッド301の第1支持部311の上面と下半身側の第2パッド401の第2支持部411の上面との間に段差が生じるため、この段差に沿って使用者Bの臀部から腰椎部に至る部分が支持されて自然な寝姿勢が得られ易くなるとともに、使用者Bが寝返り動作する際に、上半身側が転回した後、この段差と、第1パッド301の第1の硬度勾配部321と第2パッド401の第2の硬度勾配部421との間に形成された段差との協働によって骨盤の転回動作の動き出しが促進される。それゆえ、上半身の転回動作と下半身側の転回動作とが連動するため、自力での寝返りを容易とすることができる。
【0091】
本実施形態における寝返り補助パッド21を構成する第1パッド301及び第2パッド401に関するその他の説明並びにその他の構成に関する説明は、上述した第1の実施形態の第1パッド3及び第2パッド4等並びに第2の実施形態の第1パッド30及び第2パッド40等と同様であり、その作用効果も同様である。
【0092】
次に、第4の実施形態に係る寝返り補助パッド22について説明する。図11に示すように、本実施形態に係る寝返り補助パッド22は、2つの第1パッド302と、1つの第2パッド402とからなり、第1パッド302、第2パッド402、第1パッド302の順に身長方向に一列に配置されて構成されている。使用者の上半身側又は脚部が載置される第1パッド302は、その幅方向中央部に長さ方向(身長方向)に延びる略平坦な上面を有する第1支持部312を備えている。また、使用者の腰臀部が載置される第2パッド402は、その幅方向中央部に長さ方向(身長方向)に延びる略平坦な上面を有する第2支持部412と、この第2支持部412の両側に配置され、その上面が第2支持部412の上面と略同一面上に位置する第2の硬度勾配部422とを備えている。このように、本実施形態に係る寝返り補助パッド22は、第1パッド302は通常の平坦なパッドからなる構成であるが、第2パッド402のみに第2の硬度勾配部422が備えられている形態となっている。また、本実施形態においては、第2支持部412と第2の硬度勾配部422とは一体的に形成されている。なお、本実施形態では第1パッド302は2つ備えられているが、上半身用の1つの第1パッド302と下半身用の1つの第2パッド402とからなる構成とすることも可能である。
【0093】
図11に示すように、本実施形態における第2の硬度勾配部422には、この第2の硬度勾配部422を厚み方向に貫通する3種類の貫通孔62a~62cからなる第2の硬度調整手段62が設けられている。この3種類の貫通孔62a~62cのセットは第3パッド302の長さ方向に一定間隔で連続して配列されている。この硬度調整手段62によって、第2の硬度勾配部422は、第2支持部412の端部から外方に向かって、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配S22が形成されるように調整されている。なお、第2支持部412の端部とは、第2支持部412と第2の硬度勾配部422との境界を意味するところ、第2支持部412と第2の硬度勾配部422との境界とは、第2の硬度勾配部422に設けられている硬度調整手段62のうち、幅方向において最も内方に位置している硬度調整手段(本実施形態では62a)の内方側の端部のことをいう。具体的には、図11(a)及び(b)に示すように、この複数の貫通孔からなる硬度調整手段62は、第2支持部412の端部から外方に向かって、第2の硬度勾配部422の幅方向に貫通孔の空隙容積が漸次増加するように配置されている。本実施形態においては、3種類の大きさの貫通孔62a~62cが配置されているが、その貫通孔の孔径は第2支持部412の端部から第2パッド402の端部に向かって、徐々に大きく形成されている。このように構成された硬度調整手段62によって、第2の硬度勾配部422は、その見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配S22が形成されるように調整されている。なお、貫通孔の形状や個数、それらの配置は本実施形態で示される配置や種類等に限定されない。さらに、硬度調整手段62としては、貫通孔に替えて有底穴としてもよく、貫通孔と有底穴とを組合せた構成としてもよい。有底穴の場合には、穴径や個数、配置に加えて穴深さによって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配S22が形成されるように調整される。また、有底穴を形成する位置は、第2の硬度勾配部422の上面側または下面側の一方のみでもよいし、両面に形成してもよい。
【0094】
本実施形態に係る寝返り補助パッド22の使用に係る作用について説明する。使用者Bが仰向けで寝た姿勢では、使用者Bの頭部と背骨を中心とした背中部分は第1パッド302で安定的に支持され、下半身の仙椎を中心とした腰臀部部分は第2パッドの第2支持部412で安定的に支持される。そして、上半身を動作の起点とする屈曲回旋タイプの寝返りをする場合には、上半身を転回させた後に骨盤の転回が行われるが、この骨盤の転回の際に、寝返り方向にあって転回動作に最も力を要する大腿骨の大転子及びその近傍にある腸骨等の骨盤周辺部PAが第2の硬度勾配部422で支持される。第2の硬度勾配部422は第2支持部412の端部から外方に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配S22が形成されているため、寝返り方向にある大腿骨の大転子等の骨盤周辺部PAが第2の硬度勾配部422に接地すると、硬度が漸次低下している分だけ接地点が沈み込み、接地した点と使用者の体軸との距離が近くなって、骨盤の転回に要する力が小さくなり、骨盤の転回から下肢部の転回に連動する下半身側の転回を容易にすることができる。これにより、下半身の転回に係る負荷が低減されるため、寝返りを容易とすることができる。そして、この転回を促進する作用を有する第2の硬度勾配部422は、その見かけの硬度が漸次低くなる構成とされており、大きな硬度差を有さない構成とされているため、寝姿勢が安定し、寝心地に優れると共に、転回に係る動作も安定して行うことができる。また、下半身を動作の起点とする伸展回旋タイプの寝返りをする場合においては、下半身側から転回が開始されるところ、骨盤を転回させる際に、寝返り方向にある大腿骨の大転子及びその近傍にある腸骨等の骨盤周辺部PAが第2の硬度勾配部422で支持される。第2の硬度勾配部422は第2支持部412の端部から外方に向かって、見かけの硬度が漸次低くなる硬度勾配S22が形成されているため、寝返り方向にある大腿骨の大転子等の骨盤周辺部が第2の硬度勾配部412に接地した点が沈みこみ、使用者の体軸との距離が近くなって、骨盤の転回に要する力が小さくなり、下半身側の転回が容易になされる。
【0095】
本実施形態における寝返り補助パッド22を構成する第1パッド302及び第2パッド402に関するその他の説明並びに第3パッド等のその他の構成に関する説明は、上述した第1の実施形態の第1パッド3及び第2パッド4等並びに第2~3の実施形態の第1パッド30、301及び第2パッド40、401等と同様であり、その作用効果も同様である。
【0096】
本発明の寝返り補助パッドは、第1パッドの第1の硬度勾配部及び第2パッドの第2の硬度勾配部における硬度調整手段を異ならせた構成としてもよい。例えば、第1の実施形態~第4の実施形態に例示した第1の硬度勾配部及び第2の硬度勾配部における硬度調整手段を用いて、第1の硬度勾配部と第2の硬度勾配部をそれぞれ異なった硬度調整手段で形成された形態や、第1(第2)パッドを構成する2つの第1(第2)の硬度勾配部がそれぞれ異なった硬度調整手段で形成された形態としてもよい。また、硬度勾配部の中で異なる硬度調整手段を複合した構成としてもよい。
【0097】
次に、上述した寝返り補助パッド2が組み込まれた、本発明の寝返り補助マットレス1について図12を参照して説明する。本発明の寝返り補助マットレス1は、下側から上側の順に、ベース層8、寝返り補助パッド2及び端部ブロック9、上層7が積層されて概略構成されている。寝返り補助パッド2はベース層8の幅方向の中央部分に載置されており、端部ブロック9はベース層8の幅方向の両端部分に、寝返り補助パッド2と所定の間隔をあけて、ベース層8の長さ方向に亘り載置されている。ベース層8、寝返り補助パッド2及び端部ブロック9、上層7といった寝返り補助マットレス1を構成する部材は、各々の配置がずれないように、各構成部材が接する面において係合手段や接着剤等で固定されていてもよい。なお、端部ブロック9は、寝返り補助パッド2と隣接するように配置してもよい。
【0098】
まず、ベース層8について説明する。寝返り補助マットレス1のベース層8は、比較的硬質で使用者の体を安定して支持できるクッション材で形成されている。本実施形態におけるベース層8は、一例として、幅方向の長さが91cm、長さ方向の長さが195cm、高さ2cmの大きさに形成されている。ベース層8のクッション材としては、その硬度が第1パッド3及び第2パッド4を構成するクッション材と同等以上のものが好ましい。ベース層8のクッション材としては、上述した硬度を有し、クッション性を有するものであれば特に限定されないが、樹脂発泡体、三次元網状構造体及び綿成形体が好適に用いられ、取り扱い及び加工のしやすさの観点から、樹脂発泡体がより好ましい。樹脂発泡体として、具体的には、発泡ポリウレタン、発泡ポリオレフィン又は発泡シリコーン等が挙げられる。
【0099】
次に、寝返り補助パッド2について説明する。本発明に係る寝返り補助マットレス1に組み込まれる寝返り補助パッド2については、上述した第1の実施形態に係る寝返り補助パッド2に限定されず、第2~第4の実施形態に係る寝返り補助パッドを当然に含むほか、上述したあらゆる実施形態に係る寝返り補助パッドを用いることができる。
【0100】
次に、端部ブロック9について説明する。端部ブロック9が設けられることにより、使用者Bが寝返りした際に寝返り補助パッド2から転がりすぎてベース層8から落下するのを防ぐことができ、安全にマットレス上で寝返り動作を行うことができる。本実施形態における端部ブロック9は、一例として、幅方向の長さが10cm、長さ方向の長さが195cm、高さ3cmの大きさに形成されている。また、端部ブロック9の材料を比較的硬質なクッション材で形成することにより、使用者が端部ブロック9の部分に手をついたときに踏ん張りが効いたり、端部ブロック9の部分に座ったときに各パッドの傾斜部32,42と端部ブロック9とで形成される凹部に臀部が保持されるとともに端部ブロック9で太腿裏近辺が支持されるため、座位のバランスがとりやすく、端座位安定性及び起き上がり安定性を有する。具体的には、端部ブロック9のクッション材としては、JIS K6401「耐荷重用軟質ポリウレタンフォーム」に準拠して測定された硬度が、180~440Nであるものが好ましく、200~300Nであるものがより好ましく、210~250Nであるものが特に好ましい。端部ブロック9のクッション材としては、上述した硬度を有し、クッション性を有するものであれば特に限定されないが、樹脂発泡体、三次元網状構造体及び綿成形体が好適に用いられ、取り扱い及び加工のしやすさの観点から、樹脂発泡体がより好ましい。樹脂発泡体として、具体的には、発泡ポリウレタン、発泡ポリオレフィン又は発泡シリコーン等が挙げられる。
【0101】
また、本実施形態においては、端部ブロック9はベース層8に載置された状態で配置されているが、端部ブロック9がベース層8上に配置されず、ベース層8の長さ方向の端部と接する状態で配置されてもよい。この場合には、ベース層8の上面よりも端部ブロック9の上面が突出している必要があるので、端部ブロック9の高さ(厚み)は、少なくともベース層8の高さよりも大きく形成される。
【0102】
さらに、本実施形態においては、端部ブロック9は、ベース層8の幅方向の両端部に設けられているが、いずれか一方の端部のみに設けられてもよい。また、本実施形態においては、端部ブロック9は、ベース層8の長さ方向に亘って設けられているが、長さ方向の中央周辺のみに設ける、といったように、ベース層8の長さ方向の一部に設けられることも可能である。さらに、寝返り補助マットレス1の保形性を高めることを目的として、ベース層8の幅方向の端部に端部ブロック9を設けることも可能である。
【0103】
次に上層7について説明する。図12に示すように、上層7は、上述した寝返り補助パッド2、端部ブロック9及びベース層8の上面を被覆する層であり、寝返り補助パッド2、端部ブロック9及びベース層8よりも柔軟なクッション材から形成されている。本実施形態における上層7は、幅方向の長さが91cm、長さ方向の長さが195cm、寝返り補助パッド2の上面からの高さが6cmとなるように形成されている。上層7のクッション材としては、寝返り補助パッド2の作用効果を維持しつつ、かつ、使用者Bの寝心地や体圧分散性を高める観点からJIS K6401「耐荷重用軟質ポリウレタンフォーム」に準拠して測定された硬度が、50~160Nであるものが好ましく、70~150Nであるものがより好ましく、90~140Nであるものが特に好ましい。上層7のクッション材としては、上記硬度を有し、クッション性を有するものであれば特に限定されないが、樹脂発泡体、三次元網状構造体及び綿成形体が好適に用いられ、取り扱い及び加工のしやすさの観点から、樹脂発泡体がより好ましい。樹脂発泡体として、具体的には、発泡ポリウレタン、発泡ポリオレフィン又は発泡シリコーン等が挙げられる。
【0104】
本実施形態においては、図12(b)及び図12(c)に示すように、上層7は一定の厚みを有する平坦なシート形状として形成されており、上層7とベース層8との間には、第1パッド3の第1の硬度勾配部32の外方と端部ブロック9とで囲まれた空間、及び第2パッド4の第2の硬度勾配部42の外方と端部ブロック9とで囲まれた空間が形成されているところ、上層7の形状のうち、その下面側について、上述した空間を略嵌合する形状に形成することも可能である。また、この空間に上層7とは異なるクッション材を配置させることもできるが、その場合には上層7のクッション材と同程度又はそれよりも柔軟なクッション材を選択することが好ましい。なお、上層7の積層や、上記空間に配置されたクッション材によって、寝返り補助パッド2の各硬度勾配部32,42の作用効果が低下する場合には、第1パッド3の第1の硬度勾配部32や第2パッド4の第2の硬度勾配部42の各硬度勾配を大きく設計調整することも可能である。
【0105】
なお、本実施形態における寝返り補助マットレス1は、ベース層8の上に寝返り補助パッド2と、端部ブロック9が積層され、さらに上層7が積層されて構成されているが、端部ブロック9又は上層7を省いた構成としてもよい。また、端部ブロック9及び上層7を省いた、ベース層8の上に寝返り補助パッド2が積層されたのみの構成とすることもできる。
【0106】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
【符号の説明】
【0107】
1 寝返り補助マットレス
2、20、21、22 寝返り補助パッド
3、30、301、302 第1パッド
31、310、311、312 第1支持部
32、320、321 第1の硬度勾配部
4、40、401、402 第2パッド
41、410、411、412 第2支持部
42、420、421、422 第2の硬度勾配部
5、50、51 第1の硬度勾配部の硬度調整手段
5a、5b、5c、5d 凹溝
50a、50b、50c、50d スリット
51a、51b、51c、51d 異なる硬度のクッション材
6、60、61、62 第2の硬度勾配部の硬度調整手段
6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g凹溝
60a、60b、60c、60d、60e、60f、60g スリット
61a、61b、61c、61d 異なる硬度のクッション材
62a、62b、62c 貫通孔
7 上層
8 ベース層
9 端部ブロック
W1、W10、W11、W12 第1支持部の幅
W2、W20、W21、W22 第2支持部の幅
H1、H10、H11、H12 第1支持部の硬度
H2、H20、H21、H22 第2支持部の硬度
S1、S10、S11 第1の硬度勾配部の硬度勾配
S2、S20、S21、S22 第2の硬度勾配部の硬度勾配
B 使用者
S 使用者の肩
SW 肩幅
SA 肩周辺部
P 使用者の骨盤の上前腸骨棘
PW 骨盤の幅
PA 骨盤周辺部
F 回転円の接線方向に働く力
L 接地点と回転中心の距離
G 接地点
X 回転中心(体軸)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12